日本語の研究

表記史資料の普遍性と特殊性

矢田勉

原稿種別: 本文
2008 年 4 巻 2 号 p. 1-12
発行日: 2008/04/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.4.2_1

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表記史研究資料の分析に要請される視点として、普遍性-特殊性ということを取り上げる。表記史研究資料における普遍性-特殊性には、(1)当該資料を生み出した文字社会そのものの普遍性-特殊性、(2)文字社会内部における当該資料の普遍性-特殊性、という二つの階層があるが、それぞれが表記史の変化原理及び変化速度と密接な関係を持っていることを指摘し、併せてその観点から表記史を概観することを試みた。

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『桑名日記』にみる近世末期下級武士の待遇表現

佐藤志帆子

原稿種別: 本文
2008 年 4 巻 2 号 p. 13-28
発行日: 2008/04/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.4.2_13

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近世末期下級武士とその家族の日常会話における言語実態を知りうる『桑名日記』を対象として、日記の内容や桑名藩の分限帳からわかる人物の属性と関わらせながら「来ル」を意味する尊敬語の使用実態を考察し、近世の武家社会における待遇表現の一端を明らかにした。その結果、『桑名日記』にみられる日常的な会話場面における「来ル」を意味する尊敬語は、御出ナサル・ゴザラシル・ゴザル・来ナサル・来ナルの5形式であることがわかった。そのうち前者の3形式は(ア)相手との社会的関係によって使い分けられる尊敬語といえる。一方、後者の2形式は(イ)相手との社会的関係に関わらず使用される尊敬語といえ、身内や親しい間柄の打ち解けた場面で使用される。また、これらの尊敬語より待遇価値の低い語として基本形来ルがある。この基本形来ルは、上記の5形式が使用される人より下位の人に使用される。

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『細雪』四姉妹の待遇表現 : 尊敬語に見られる特徴

安井寿枝

原稿種別: 本文
2008 年 4 巻 2 号 p. 29-44
発行日: 2008/04/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.4.2_29

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谷崎潤一郎『細雪』の中心人物である蒔岡家四姉妹の使用する、尊敬語について以下のことを論述する。四姉妹が使用する尊敬語には、関西方言であるものと、標準語であるものが存在する。中でも姉妹が最も使用している尊敬語は、はる敬語であり、姉妹によって接続に差があるものが見られた。五段動詞に注目すると、次女の幸子は、aはる型を多く使用し、末の妹である妙子は、やはる型の拗音を多く使用している。また、一段動詞では、姉妹に共通して「出る」「見る」のような語幹部分が一音節のものは、やはる型を使用し、「できる」「見せる」のような語幹部分が二音節のものは、i/eはる型を使用するという使い分けが見られた。その他、関西方言の尊敬語では、船場言葉としての「なさる」が存在している。その使用は船場言葉としては動詞+なさる型であり、標準語としては本動詞「する」の敬意型であった。標準語の尊敬語では、れる/られる型・お〜になる型・御〜型・いらっしゃる型・特定単語型が存在する。特に、れる/られる型では、不特定の人物に対する使用が確認された。このような使用は従来、はる敬語に限って見られる特徴とされている。

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東北方言における基本的時間表現形式について : 形式の変化と文法体系との相関

吉田雅昭

原稿種別: 本文
2008 年 4 巻 2 号 p. 45-60
発行日: 2008/04/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.4.2_45

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東北諸方言の基本的時間表現形式の考察を行った。過去継続相としてテアッタ・テデアッタ形が秋田市,タッタ形が青森市,テラッタ・テダッタ形が平鹿町・八戸市・盛岡市,テタッタ形が福島市方言で使用される。過去・現在継続相としてテタ形が見られるが,平鹿・八戸・盛岡ではテラ形も使用される。完成相ではタッタ形が平鹿・八戸・盛岡・福島で使用される。東根市では文末詞のケとタが共起することが多い。元々存在した過去継続相のテアッタ形が音変化によりタッタ形へ変化していった。変化当初は継続相として機能しながらも,継続相表示の「テ」の消失のため,やがて完成相(タの連続)として意識される。そして完成相と継続相の2項対立を実現させるためにテタッタ形を生じる,というプロセスを主張した。時間表現を通して,安定した体系を成立させるために言語変化が生じていく様を,各方言を対照させ論じた。

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日本語資料としての朝鮮語会話書〔明治前期〕

成玧妸

原稿種別: 本文
2008 年 4 巻 2 号 p. 61-68
発行日: 2008/04/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.4.2_61

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近代語の資料として,従来ほとんど研究されて来なかったものに,明治期朝鮮語会話書がある。近代日本語の資料として,これをどのように扱うべきかを明らかにするため,まず,朝鮮語会話書の特徴・変遷を十分に検討する必要がある。そこで,本稿では明治期朝鮮語会話書の目録を示し,朝鮮語会話書の概要と特徴について,形式・内容と構成・表記・言語意識に分けて述べる。朝鮮語会話書は,日朝会話書から日清朝会話書へ,外交・貿易のためのものから戦争への活用のためのものへ,ハングルと片仮名による表記から片仮名のみの表記へと変化が認められ,その変化は時代背景と密接な関連がある。また,当時の口頭語がただちに反映されているとみなすには困難な点もあるが,時代による語法等の推移が観察できる資料群であり,当時の言語意識・著者や出版地による語彙の差異なども窺える。

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台湾における日本語クレオールについて

真田信治, 簡月真

原稿種別: 本文
2008 年 4 巻 2 号 p. 69-76
発行日: 2008/04/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.4.2_69

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日本語と台湾のアタヤル語との接触によって生まれた日本語クレオールが台湾東部の宜蘭県大同郷と南澳郷に住む一部のアタヤル人(のすべての世代)によって用いられていることが観察される。が,その日本語クレオールの存在はほとんど知られておらず,今日までこれに関する学術的な研究は皆無である。本稿では,日本語クレオールの存在を指摘し,その運用状況を紹介するとともに,その言語構造について,公表された教科書3冊を主たる対象として,語順,語彙,名詞の語形,動詞(ヴォイス,アスペクト,テンス等)などに関する分析を行った。これまでのクレオール研究では主に欧米諸語を基盤としたクレオールが取り上げられ,日本語が視野に入れられたことはほとんどなかった。その意味で,本研究は斯界に貴重な事例を提供するものである。

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追悼藤原与一博士(藤原与一博士追悼)

小林芳規

原稿種別: 本文
2008 年 4 巻 2 号 p. 77-80
発行日: 2008/04/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.4.2_77

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藤原与一先生を偲ぶ(藤原与一博士追悼)

神部宏泰

原稿種別: 本文
2008 年 4 巻 2 号 p. 81-83
発行日: 2008/04/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.4.2_81

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藤原与一博士年譜および著述目録

江端義夫

原稿種別: 付録等
2008 年 4 巻 2 号 p. 84-91
発行日: 2008/04/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.4.2_84

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井出祥子著, 『わきまえの語用論』, 2006年11月15日発行, 大修館書店刊, A5判, 248ページ, 2,300円+税

滝浦真人

原稿種別: 本文
2008 年 4 巻 2 号 p. 92-97
発行日: 2008/04/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.4.2_92

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遠藤好英著, 『平安時代の記録語の文体史的研究』, 2006年9月25日発行, おうふう刊, A5判, 408ページ, 16,000円+税

堀畑正臣

原稿種別: 本文
2008 年 4 巻 2 号 p. 98-104
発行日: 2008/04/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.4.2_98

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