従来の大規模観光開発における主たる政策目標の一つは、大きな雇用創生による地域の活性化を促すことであった。それらは、雇用創出を通じ地域の厚生を高める一方で、一大観光産業に関連する諸施設の建設や社会基盤整備により、地域が固有に持つ歴史的景観を痛めつけてしまうことが多かった。このことに対する反省を踏まえ、観光開発にかかわる政策が、地域固有の美しさや魅力を住民自らが主役となり発見し高め、来訪者を迎え交流するを促す新たなものに転換されつつある。このような主旨にかかわる論文、報告、資料などの結論および合意に基づき、その政策の実現可能性を考察した。その結果、新しい政策を実現するためには、地域社会に関わる多様な主体が、新しい観光開発に関連する資源の価値を認識することを保障するシステムが必要であることが明らかとなった。すなわち、観光資源に対する多様な主体の価値認識と対価を結び付ける(1)資金調達方法の開発と,(2)そのための制度設計とが今後の重要な課題であるとの結論に達した。
抄録全体を表示