オーストラリア政府は、21世紀に入り国をあげて観光を推進している。その一策として200 4年に先住民観光ビジ
ネス準備プログラム(Indigenous Tourism Business Ready Program)を発足するなどアボリジニ観光に注目する
ようになった。本稿では、彼らの生活文化を観光資源としたアボリジニ観光を考え、観光はアボリジニにとってど
のように貢献できるか考察する。アボリジニ観光はアボリジニが主体となることができる事業であり、観光が盛んに
なっている現代において収入という面でビジネス効果が大きいため、経済的地位の低さからの経済的自立に役立つ
と考えられる。また、観光によって彼らの生活文化が価値あるものとして評価されることは、“誇り”高きこととし
て受け継がれ、観光は文化継承という意味でも大きな役割を果たしている。また、観光を通して彼らの生活文化を
文化的財産として再考し文化慣習の異なりの理解を促すことは、彼らの社会的地位の改善につながるものと考える。
アボリジニ美術が注目を集めたと同様にアボリジニ観光は今後多くの可能性を秘めている。観光は、アボリジニの
人びとが平等な国民としてオーストラリア社会へ参入することを一層促進させるために力を発揮するだろう。
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