新潟医療福祉学会誌
Online ISSN : 2435-9777
Print ISSN : 1346-8774
最新号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
症例・事例・調査報告
  • 荒木 恵子, 松井 由美子, 山田 真衣
    2025 年 24 巻 3 号 p. 19-26
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/21
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    看護教育の質的向上を図るために、都道府県は看護職員臨地実習指導者養成講習会を開催している。本研究の目的は、実習指導者の指導上の困難感について、体験型学習を取り入れた講習会受講前後の変化を見ることである。研究対象者は2018年度A県講習会を受講した53名とし、受講前後のアンケート回答に欠損のない47名の実習指導上の困難感の変化について、対応のあるt検定を用いて受講前後の比較を行った(有効回答率94.0%)。質問項目は、先行研究により明らかにされている実習指導上の困難感に独自の項目を加えた40項目である。対象者の平均年齢は33.48歳(SD5.22)、看護職経験年数は平均11.75年(SD4.63)、指導者経験年数は平均1.88年(SD2.33)であった。講習会受講後は実習指導上の困難感が有意に減少した(p<.000)。特に「指導者自身の力量に関する困難」については、受講後多くの項目で困難感が減少した。困難感が軽減した要因として、中堅看護師にとって講習会で実習指導のための知識や指導技術を学んだことで自信をもち、自己効力感を高めることにつながったと考える。また、受講者はロールプレイを活用した体験型学習により、他者を理解し、実習指導の具体的な展開方法を学ぶことができた。学生を観察する視点を身につけることや、学生の行動を理解することが困難感の軽減につながることが示唆された。

原著論文
  • 石綿 啓子, 瀧口 徹, 宇田 優子
    2025 年 24 巻 3 号 p. 27-36
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/21
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    目的:定年退職後に訪問看護ステーション(VNS)への就業を希望する看護師(プラチナナース:PN)の専門性意識や生活環境特性を明らかにし、今後の就業促進に寄与する体系的な提案をする。

    方法:日本病院協会に所属し、承諾の得られた288施設に所属するPNに郵送法調査を実施し、就業意思のある695人を対象とし、VNS就業意思の有無で2群に分け、χ二乗検定と、二値ロジスティックス回帰分析を実施し、関連要因を検証した。

    結果:就業意思あり群は項目数で、養成3、配置1、および定着2で、意思無し群より有意に高かった。また意思あり群は車での訪問に1.6倍積極的で、学ぶ機会への支援を1.5倍求め、単独訪問の不安は1.4倍低かった。更に、意思あり群はインタ-ン・リスキリング・オンコール担当を、意思無し群よりオッズ比で9.32倍希望していた。

    結論:VNSへの就業意思があるPNは、経験を生かして新しい分野にチャレンジする学習意欲が高い。PNがVNSへの就業を促進するための対策は、 訪問看護の専門性と必要性に関してattitudeの高い人を早期に見出し、在職中に訪問看護を学習する機会を増加させる制度の構築であると考え、病院に対する研修費の補助等の施策が望まれる。

  • 荒川 大靖, 寺田 貴美代, 渡邉 恵司, 森田 裕之
    2025 年 24 巻 3 号 p. 37-46
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/21
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    児童館は児童福祉法40条に基づく児童福祉施設であり、運営にあたっては、児童館のない地域に出向いて遊び等の体験機会を提供する、移動児童館活動を行うことが児童館ガイドラインで定められている。先行研究では、移動児童館活動は児童館外でニーズを把握し、支援につなげる予防的効果が期待できるとされているが、実態は十分に把握されていない。そこで本研究では、移動児童館活動の実施内容を明らかにした上で、遊び等の提供を中心とした活動が地域ニーズの把握や充足に向けた取り組みへと発展する過程を分析し、地域における健全育成の環境づくりに対する移動児童館活動の新たな可能性を考察した。

    全国の児童館を対象とした調査結果からは、移動児童館活動において子育て支援活動や運動遊びの提供等が行われている実態が把握された。また、地域ニーズの充足に向けた取り組みに関しては、個別支援や社会資源を活用した支援を提供していることが明らかになった。さらに、これらの活動の展開過程では、多くの地域住民が関わり、地域における多様な組織の連携が促進されることが示された。そのため、移動児童館活動は児童の健全育成に関する地域住民の意識向上に結び付き、住民同士が主体的に地域ニーズの充足に向けて取り組む過程にもつながることが明らかとなった。また、これらの過程をとおして移動児童館活動は、地域住民による主体的な活動へと発展する可能性があることが示唆された。

  • 皆川 璃子, 眞田 悠希, 熊倉 真穂, 髙野 晃輔, 相馬 涼加, 白井 菜々, 井上 彩花, 佐藤 真琴, 高橋 柚葉, 渡辺 奈央, ...
    2025 年 24 巻 3 号 p. 47-55
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/21
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    COVID-19感染症は変異株出現やワクチン接種の加速化に伴い、感染者数および死亡者数は大きく変動している。本研究は地域相関分析の手法を用い、新潟県内30市町村と全国47都道府県における感染者数の増加に関連する要因、特にワクチン接種効果を特定することを目的とした。本研究では、収集したオープンデータを基に人口10万対感染者数を目的変数とし、全国は、人口密度、生活保護率、ジニ係数、人口10万対COVID-19対応確保病床数、ワクチン接種率、人口10万対死亡者数、高齢化率を説明変数とする重回帰分析を行った。新潟県ではジニ係数および人口10万対死亡者数が公表されていないので、この2要因を説明変数から除いた。その結果、県及び都道府県ともに感染者数の減少に大きく寄与しているのはワクチン接種率であった。県データではワクチン接種率が高いほど感染者数が有意に少なかったが、人口密度や生活保護率、高齢化率は有意差がなかった。一方都道府県データでは、死亡者数と人口10万対確保病床数が多いほど、また、高齢化率が低いほど、感染者数が多かった。高齢化率が高い地域で10万対感染者数が低い理由として、ワクチン接種効果に加え、高齢者は重症化リスクが高いため外出自粛が呼びかけられ、人との接触による感染が抑えられた可能性があること、さらに、65歳以上の高齢者から優先的にワクチン接種を開始したことも、感染拡大の抑制に寄与した可能性がある。

症例・事例・調査報告
  • 萩原 康雄, 古澤 妥史, 澤田 純明, 奈良 貴史
    2025 年 24 巻 3 号 p. 56-65
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/21
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    本稿は、2024年4月27日から5月4日まで行われた、岩手県住田町小松洞穴遺跡発掘調査の概要報告である。本調査では、弥生時代人骨の発見を目指して、小松洞穴第1洞口の洞内1m×2mの範囲の発掘調査を実施した。調査では発掘区の東側に近現代以降の人為的撹乱土坑が確認され、この土坑内から散乱人骨、縄文中期後半~晩期後半の土器、動物骨、石器などが出土した。人骨は撹乱を受けており、年代等は不確定であるが、少なくとも3個体以上存在する。本調査で出土した人骨の存在と、弥生中期の表採人骨が存在することから、第1洞口内に墓域がする可能性は依然として高く、今後撹乱の影響が確認されなかった洞内西側の調査を計画している。

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