日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1972 巻, 10 号
選択された号の論文の47件中1~47を表示しています
  • 川泉 文男, 大嶽 利行, 野村 浩康, 宮原 豊
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1773-1776
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    DewarびんおよびBeckmann温度計を用いた溶液用熱量計を試作し,エチレングリコール,プロピレングリコール,1,3-ブタンジオール水溶液の30℃における熱容量を測定した。標準液体,n-ヘプタンの熱容量を測定し,溶液の蒸発による誤差は無視しうることを確かめた。
    無限希釈における部分比熱容量を求めたところ,いずれもその値は正で,またそれぞれの溶質液体の熱容量よりも大きかった。これらグリコール類の水への溶解のさいの水の構造変化について議論した。
  • 渡辺 昭, 杉山 幸男
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1777-1782
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    数種類の有機液体の正化合物同族列の誘電率を0°と50℃の間で測定し,つぎの実験式を得た。logD=α+bt,α=c/Tb+d,そしてb=e/Tb+f,ここにDは誘電率,t(℃)は温度,Tb(°K)は各化合物の標準沸点,αとbは各化合物固有の定数,そしてc,d,eおよびfは各同族列によって決まる定数である。これらの式で計算したDの値は実測値とよく一致した。
  • 岩野 俊彦, 横田 俊幸, 大沢 俊行
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1783-1788
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    帯融解によって物質を分離,精製する場合,融解帯内の混合状態が処理後の不純物の濃度分布に大きな影響を与える。
    帯融解に関する基礎的研究として,融解帯内を強制的にかぎまぜる装置を試作し,有効分配係数とかきまぜ速度,融解帯移動速度との関係について検討した。
    実験試料は,m-,p-クロロニトロベンゼン2成分系を用い,m-体が約0.05重量分率.になるように調製した。試料カラムは直径20mm,融解帯の長さは約20mm,融解帯移動速度は62,74,94mm/hrとし,それぞれについて,かきまぜ速度を0~200rpmに変化させ実験を行なった。
    融解帯を1回通過させたのち試料を切断し,ガスクロマトグラフ分析法により不純物の定量を行ない,有効分配係数を求めた。
    有効分配係数は,かきまぜ速度を増加ざせると,いずれの融解帯移動速度においても,指数関数的に減少し,精製効果を高めた。この影響を定量的に表わすため,強制かきまぜ効果を考慮した,有効分配係数と融解帯移動速度の関係式を導いた。
  • 綱島 真, 高橋 浩
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1788-1794
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カドミウム系顔料について,その加熱処理過程の雰囲気が結晶構造と色調の変化におよぼす影響を研究した。
    実験に使用した試料はCdS,β-CdS,2CdS,ZnSおよび1.5CdS(CdCO3,Se)の組成をもった合計4種類の沈殿物である。雰囲気ガスとしては高純度の乾燥酸素,窒素およびヘリウムを用いた。沈殿物は200℃,10-3mmHgの条件で1時間脱気されたのち,所定の雰囲気ガス中で所定の時間加熱処理された。
    加熱処理による物理化学的変化は,各試料の化学組成にかかわらず同じ傾向を示した。試料に対して活性な酸素と不活性な窒素およびヘリウムを比較すると,結晶溝造および色調の両面で差異があることが認められた。酸素雰囲気は結晶化度を促進し,色調の刺激純度(鮮明度)を増加させる傾向を示した。さらに加熱処理した試料を硝酸処理した試料を解析した結果,試料の結晶化と多形転移は硝酸処理によって溶解する部分(粒子の表面および微細粒子)について優先的に起こることが確かめられた。
  • 綱島 真, 高橋 浩
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1794-1800
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報に引きつづきカドミウム系顔料の加熱処理過程における諸物性の変化を検討した。試料は表1に示した4種類の沈殿物を用いた。各試料の加熱処理は窒素雰囲気中で所定時間保持し,放冷した。加熱条件は,加熱処理時間を1,5および25時間とし,温度を400,500,600および700℃とした,さらに各試料にイオウ粉を1wt%混合して加熱処理を行ない,このイオウと雰囲気の窒素および酸素との相関関係を検討した。加熱処理された試料はX線回折図形,表面積径,電子顕微鏡写真,分光反射率曲線および湿式分析による測定結果から解析を行なった。
    以上の結果,同一温度および同一雰囲気における加熱処理によって,六方度(図5),粒子径(図6)および色調(図14)の変化が5時間を越えると急激に小さくなり飽和することが認められた。また加熱処理前の試料にイオウ粉を1wt%混合すると加熱処理の効果は抑制される。前報に示された雰囲気酸素による加熱処理の促進効果を合わせると,イオウと酸素がたがいに逆の効果をもつことが確かめられた。
  • 堤 和男, 高橋 浩
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1800-1805
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シリカゲルをブタノール処理することによりシリカゲル表面を改質し,DTA,赤外吸収,水分吸着能,浸漬熱の測定などを行なった。シリカ表面の水酸基はブタノール処理することによりブトキシ基に変わることが,-OHの伸縮振動強度の減少と-CHの伸縮振動の発現から示された。また改質シリカの水への親和性は低下する。すなわち,水分吸着能はもとのシリカにくらべていちじるしく減少する。水への浸漬熱はブタノール処理することによりもとのシリカの50~70%に低下する。生成したプトキシ基は400℃に排気してもわずかに分解するだけである。
  • 中垣 正幸, 舟崎 紀昭
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1805-1808
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1mol/lの電解質水溶液上のα-モノステアリン単分子膜の表面圧-面積曲線および蒸発比抵抗-表面圧曲線を25℃で測定した。電解質中の界面活性な不純物は水溶液から活性炭で除去した。表面圧-面積曲線は電解質の添加によってほとんど影響されなかったが,よく見るとLiCl,NaCl,KCl,KBr,Kl,およびKSCNのような1価-1価電解質は占有面積をわずかに小さくし,-方,Na2SO4のような1価-2価あるいはCaCl2,MgCl2およびSrCl2のような2価-1価電解質は占有面積をわずかに大きくする傾向が見られた。
    蒸留水上の単分子膜の蒸発比抵抗に対する電解質の添加の影響については,LiCl,MgCl2およびNaClのように水の構造を形成するといわれる電解質は比抵抗を大きくし,-方,KI,KBr,KClおよびKSCNのように水の構造を破壊するといわれる電解質は比抵抗を小さくした。さらに電解質溶液上の単分子膜の比抵抗は電解質溶液中の水の自己拡散係数と相関性があることがわかった。これらの事実はα-モノステアリンの親水基の近くの水の易動度の変化に基づいて説明された。
  • 中谷 博, 大杉 治郎
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1809-1815
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニッケル(II),コバルト(II),亜鉛(II),カドミウム(II)とL-ヒスチジン,およびDL-ヒスチジン溶液の温度ジャンプ法による測定からつぎの反応の速度定数を求めた。
    (M2+は金属イオン,L-,D-はおのおのヒスジンアニオンのL型,D型)
    25℃,イオン強度o,1mol/lにおいてニッケル(II)の場合はk2=4.1×105mol-1,l.sec-1,k-2=0.059sec-1,k3=4,3×105mol-1ニッケル(II),コバルト(II),亜鉛(II)では生成速度定数馬,秘は実験誤差内で-致しているが,解離速度定数2翫3は亙2の約半分である。錯体反応におよぼす光学活性の効果は2配位錯体の解離速度に直接あらわれる。錯体生成反応の速度定数の結果は律速段階がイオンML+の内部配位圏からの水分子の脱離を含む2段階機構を支持している。
  • 中谷 博, 大杉 治郎
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1816-1818
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    L-ロイシル-L-チロシンとD-イシル-L-チロシンはpK値,金属イオンとの錯体安定度定数の値に違いがあることが知られている。ジペプチドの光学活性の速度論的な効果を検討するためにつぎの反応の速度定数を温度ジャンプ法で求めた。
    (A=L-ロイシル-L-チロシン,あるいはD-ロイシル-L-チロシン)
    速度定数は25℃,イオン強度0,15でL-ロイシル-L-チロシンでは1=2.2×103mol,Z,sec-1,k=1,3sec-1,k2=1.7×103molk=,Z,sec-1,k1=3.0sec-1;D-ロイシル-L-チロシンではD1=2.4×103mol/Z,sec1,k1=0.4sec1,k2=2.0×103morl,l,sec脅裏,梶=2.4sec-三であった。錯体生成速度定数姦の値は実験誤差内でD-ロイシル-チロシンとLロイシル-L-チロシンとで等しいが,解離反応k1の値は約1:3である。これらのジペプチドの光学活性の錯体反応におよぼす効果は速度論的には錯体の解離反応にあらわれる。これらの結果はヒスチジンの2配位錯体の場合と同等である。
  • 菖蒲 明己, 加納 久雄
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1819-1823
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Ag-K2SO4触媒のエチレン酸化反応活性に与えるC2CHO,CO2およびH2Oの影響を固定床流通系(250℃)で検討した。
    C2H4Oはこの反応にいちじるしく大きな被毒作用をもち,定常活性の約2/3を失活した。この被毒された触媒の溝性は一部分回復するが完全には回復し得なかった。一方,CO2,C2H4,H2Oは触媒被毒を抑える作用を示した。H2Oの被毒抑制効果はもっとも大きく,定常活性をほとんど変動させなかった。
    定常活性を示す触媒をHe中,260℃で加熱したとき,触媒活性は一時的に回復した。空気中,250℃で5時間加熱した触媒の活性は通常の値より0.156低いが,定常化曲線は酷似した傾向を示した,反応初期の被毒効果は定常活性時にくらべ大きかった。
    これらの結果からつぎのことが示唆された。
    1)触媒被毒は吸着C2H4Oを骨格とする表面残留物の生成にある。
    2)被毒抑制作用はH2O,CO2の吸着酸素上への吸着により表面残留物隼成を阻害することにある。
    3)定常活性(定常状態)は被毒作用とその抑制作用との間に平衡が成立するときに得られる。
    4)定常化過程の活性低下はシンタリングによる効果は小さく,C2H4Oによる被毒の進行に起因する。
  • 岡田 正秀, 浅見 幸雄, 白垣 国治
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1824-1827
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    最高10-2wt%の白金を含む酸化ユヅケルーアルミナ共沈物(Ni!A1の原子比1.3/1)を水素還元し,各還元ニッケル触媒の活性を常圧下100。Cにおいてベンゼンの気相水素化で決定した。無白金触媒はまったく無活性であったが,白金添加触媒では自金量を増すにつれて活性が高くなった。さらに150℃で高転化率水準において本反応を実施したとき,無白金触媒で観測された活性の経時劣化は白金の添加により防止できることが知られた。これらの効果を発現する触媒中Pt1Ni比は1r7のオーダーとして与えられ,Nowakらめ報告値を3~4ケタも下回ることが見いだされた。
    白金の導入はまた上記組成物の還元されやすさ,したがって誘導触媒の活性に影響を与えた。104wt%程度の白金を含む触媒は前還元にさいし約40℃低い温度で無白金触媒と同じ活性(シク濤ヘキサン収率9%)を示すことが認められた。
    ベンゼン水素化速度は調べた範囲内では触媒中白金の有無によらず同-表式によって,すなわち水素に-次,ベンゼンに0次として与えられた。
  • 岩瀬 秋雄, 多田 修一
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1828-1831
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ランタノイドイオンの存在するジメチルスルホキシド(DMSO),亙N-ジメチルホルムアミド(DMF)およびアセトニトリル(AN)中において,0.05mol/1過塩素酸ナトリウムを支持電解質として酸素の電解還元を行ない,つぎの化合物を単離した。すなわちDMSO-白金電極系ではランタノイド超酸化物(M(02)3DMSO)を,DMSO-水銀電極系ではランタノイド過酸化物(M2(02)3DMSO)を,またDMF-白金あるいは水銀電極系ではM(0鶉)3を得た。これらの赤外吸収スペクトルには酸素で配位しているDMSOのS零0の伸縮振動ならびに0-0の伸縮振動による吸収がそれぞれ1010~1020,845~850cm層1に認められた。なおっぎの不均化反応において配位しているDMSOのS原子と水銀電極との相互作用が推進力に大きく寄与しているものと推定した。
    2M(02)sDMSO-→M2(02)3DMSO十DMSO十302
  • 武本 長昭
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1832-1837
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イオン交換膜法で海水を濃縮するさいに,生成する炭酸カルシウムスケールが,ほとんどすべてアラゴナイトになる理由について,共存するイオンの影響を検討した。実験でぽ海水とほぼ同濃度のカルシウムイオンおよび炭酸水素イオンを含む塩化ナトリウム溶液に,マグネシウム,カリウム,硫酸の各イオンをそれぞれ添加して調製した溶液を原液とし,水分解を生じない程度の過脱塊条件で電気透析濃縮を行ない,生成した炭酸カルシウムスケール結晶の形状,変態との関係を,顕微鏡観察およびX線園折分析によって検討した。得られた結果はつぎのとおりである。(1)ナトリウム,塩素および硫酸の各イオンが共存してもアラゴナイトは生成せず,カルサイトが生成する。(2)海水濃縮のさいのスケールがアラゴナイトになるのは,マグネシウムイオンが共存するためであるが,カリウムイオンの共存によってもアラゴナイトを生ずる。(3)カリウムイオンの共存量とアラゴナイトの生成比との間には,析出速度が小さいときにはほぼ比例関係があるが,析出速度が大になるとアラゴナイトの生成がほとんど認められなくなる。
  • 佐藤 誠, 松木 健三, 菅原 陸郎
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1838-1841
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α05~1凱01/z硫酸マンガン,o.5~2魚。1μ硫酸酸性溶液中における二酸化マンガンの電析反応について検討をした。
    ポテンシャルスィープ法により分極曲線を測定すると,スィープ速度2V/min以上では-段波を示すが,スィープ速度が遅くなると二段波を示すようになる。-段波はMn2+からMn3+への酸化電流であるが,スィープ速度が遅くなると白金電極上にはこ酸化マンガンの析出が認められ,第二波は二酸化マンガン電極上での反応と考えられる。また,-定電位のもとでの電流の経時変化には,誘導時間があらわれ,ついで電流は増加しピークを示したのち,定常値に達する。誘導時間は,電位が貴になるのにしたがって短くなるが,0。9V以上では逆に長くなる。電流もまたマンガンイオンがこく,電位が貴になるほど大きくなるが,マンガンイオンo,5mol/1,電位o,gv以上では逆に小さくなる傾向を示す。
    これらのことから,Mn錐はMn3+に酸化されるどともに電極上に吸着され,不均-化反応により二酸化マンガンを生成するものと考えた。
  • 岩倉 千秋, 山本 壮一郎, 田村 英雄
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1841-1864
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    電解質としてNa露SO4,NaNO3,KNO3あるいはKClを含む弱酸性水溶液中における白金の電解挙動をサイクリックボルタンメトリーによって調べた。これらの溶液で得られたボルタングラムは強酸性,中性およびアルカリ性溶液の場合に通常観測されるものとは非常に異なっていた。とくに弱酸性溶液中で白金電極を電位走査すると,-α5Vvs.SCE付近に-対の可逆な酸化還元電流が観測された。拡散律速の水素イオン放電反応に帰属されるこの可逆波の出現は走査電位領域,走査速度,電解質の種類,pH値などに依存することがわかった。また,これらの系での電極反応を評価するための,適当な電極の前処理法についても弱干の考察を行なった。
  • 黒沼 春雄, 小島 博光, 清浦 雷作
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1847-1853
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,五酸化バナジウムー硫酸カリウムーシリカゲル系触媒による二酸化イナウの接触酸化反応において,とくに二酸化イオウ低濃度(0。1~1.5%)の場合の反応速度を検討し,低濃度領域での反応機構についての知見を得るとともに,排煙脱硫装置設計の-助とする目的で行なった。
    実験は拡散の影響を無視できる条件を選び初期反応速度を測定した。その結果,(i)初期反応速度γはPb2の-次に比例する,(ii)γs~馬O2-曲線に極大点がある,(iii)その極大点の位置は反応温度によって変化し,Pによってはあまり影響を受けないなどの結論を得,つぎのような初期反応の速度式を提出した。
    γs=ゐPb2P語O2-/(1十κ1Pso2)2
    また,反応の定常状態における触媒中のv5÷/v5÷十v4つ比は,反応ガス中の酸素分圧にはあまり影響を受けず,主として二酸化イオウ分圧の変化にともなって変化した。
  • 北島 圀夫, 大門 信利, 酒井 康司, 楯 功
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1853-1859
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高温工業材料としての合成フッ素金雲母結晶F2KMg3(AISi3010)の用途を十分明らかにするためには耐高温性のみならず,その熱分解特性について基本的知見を得ることが必要である。この報告においては各種の粒度の粉末試料およびシート状結晶を用いて大気中における熱分解反応が二つの熱重量法(等温法と非等温法)によって動力学的に検討された。つぎの結果が得られた。
    1)等温法によると,温度範囲1145~1305℃において粒度325メッシェ以下のフツ素金雲母粉末の熱分解反応の動力学は-次元拡散律速式[F(α)=認2]によって適切に表現される。熱分解反応の活性化エネルギー(E醸.)の値は46kcal/m。1であった。
    2)等温法によると結晶粒度(32~42メヅシュ)が大きい場合の試料の熱分解反応は-次元拡散律速式よりも-次反応速度式(F(α)=ln(1-α))によって,いっそう適切に表現されることが明らかとなった,Eact.は43kca1/m。11)の場合とほぼ同じであった。
    3)TG曲線をFr鈴man-Carro11法で解析した結果によると,試料の熱分解反応の動力学は明らかに試料の結晶粒度に影響される。すなわち本試料の場合,Freeman法によって得られるEct,と反応の次数の値は-義的なものではなく,むしろ方法論に依存するパラメーターとして理解される。
    4)フヅ素金雲母結晶の熱分解の動力学は明らかに実験条件(おもに結晶粒度および解析方味)に影響される。
  • 太田 直一, 戸村 健児, 大森 昌衛
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1860-1867
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    東北日本の漸新世,中新世,鮮新世,洪積世および現世の堆積物から採集した二枚貝の貝殻(海棲種5種類,42例および淡水種2種類7例)中のナトリウムおよびマンガン含量を,非破壊法による中性子放射化分析で定量した。
    現世貝殻中のマンガン含量は,炭酸カルシウムの結晶形や貝殻構造によっていちじるしく相違する。すなわち,葉状構造で力解石型の貝殻中には,アラレ石型の貝殻や均質構造または複合稜柱構造で方解石型の貝殻中より多量のマンガンが存在する。ナトリウムは1000PP塒以上含まれ,炭酸カルシウムの結晶形や貝の種類による差異は認められなかった。
    貝殻中のナトリウム含量は,現世から洪積世にかけて急激に減少する傾向を示すが,この傾向は鮮新世以前では弱まる。これは貝殻中の残存有機物の年代変化とよく類似している。-方,マンガン含量は,同-過程に沿って逆の傾向で増加し,とくに葉状構造で方解石型の貝殻の場合に顕著である。これらの結果から,ナトリウムは,化石化の過程で分解された有機物とともに貝殻から脱離し,マンガンは環境水より,'残った景殻中に吸着富化されたものと想像される。
  • 尾形 強, 佐藤 治代, 吉田 弘, 猪川 三郎
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1868-1871
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    立体的に大きさの異なる5種類の脂肪族ケトンオキシムR(CH3)C二NOH(R=Et,[1];"-Pr,[2];`-Pr,[3];レBu,[4];渉-Bu,[5])について塩化チオニル,五塩化リン,塩化ベンゼンスルポニル,塩化トシル,硫酸,ギ酸,三フヅ化ホウ素-酢酸錯体の7種類の転位試薬でBeckII藁ann転位反応を行ない,アルキル基の立体的な大きさ,転位試薬による影響を研究した。
    その結果,相対転位率は転位試薬によりかなりの差がみられた。すなわち,塩化チオニル,ギ酸はオキシムの異性化を促進し,伽だ-アルキルメチルケトンオキシムがトランス転位して生成する1隣アルキルアセタミドのみを与えた。三フツ化ホウ素-酢酸錯体での相対転位率はオキシムのベンゼン,ジメチルスルポキシド(DMSO)溶液中での砺彦`-アルキル,ッ循アルキル両異性体の存在比,4裏,42から大きくずれた。他の試薬は反応の速さには差がみられたが,その相対転位率はほぼノL1,,42に近い値となり,反応中異性化がほとんど起こっていないことがわかった。またアルキル基が立体的に大きくなるにつれてご4,.42からのずれが大きくなった。
  • 今井 淑夫, 阿部 崇
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1872-1875
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-(エトキシカルボニル)フタルイミド(ECPI)とアニリンとの反応について検討した。その結果,1-フェニルフタルイミド(イミド体[3])の生成にいたる2種の新しい中間体として,1V-エトキシカルボニルー1V'-フェニルフタルアミド(開環付加体[1])と1-エトキシカルボニルアミノー1-ヒドロキシー2-ブェニルインインドリンー3-オン(インインドゴン体[2])を安定な化合物として単離することができた。これらの中間体[1]と[2]は,いずれも150~180℃に加熱することにより脱ウレタン環化反応して定量的にイミド体[3]に転化する。また,ECPIとアニリンとの反芯は,熱や酸,塩基などの存在によって大きく影響を受ける。テトラヒド讐フランのような中性の反応系では,室温反応により開環付加体[1]が生成するが,加熱するとイミド体[3]が生成する。反応系に塩基が存在すると選択的にイミド体[3]が生成する。一方,酸が存在する場合にはインインドロン体[2]が選択的に得られる。これらの知見を総合すると,この反応は初めに開環付加体[1]を与え,引きつづいて異性化してインインド戸ン体[2]となり,最終的にこれからウレタンを脱離して1V-フェニルブタルイミドを生成するものと結論することができる。
  • 黒田 勝彦, 石川 延男
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1876-1881
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    境界潤滑性のよいシリコーン油を合成する目的で,その単量体としてフッ素あるいはフルオロアルキル基をペンゼン環にもつ(フルオロアリール)メチルジエトキシシラン類を合成した。フルオ律アリール基の種類はつぎの13種類である。
    o-,甥-,および1ウーフルオロフェニル;o-,欝-,およびpトリフルナロメチルフェニル;4-フルオ律-32-フルオロー4-および4-フルオ掴-2-(トリフルオロメチル)フェニル;3,4-および3,5-ジフルオロフェニル;3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル;4-(ヘプタフルオμインプロピル)フェニル。
    合成法はいずれもメチルジエトキシク律纏シランと相当する臭化(または竃ウ化)フルオロアリールマグネシウムとの反応によった。原料となる多くの含フッ素プロモおよびヨードベンゼン誘導体の合成についても述べた。
  • 岡本 勇三
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1881-1885
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エナミノケトンの金属キレート錯体,ビス[4(p-置換アニリノ)-3-ペンテンー2-オナト]銅(III)[1](置i換基;a:H,b:CH3,c:OCH3およびd:Cl)と塩化ベンゾイルとの反応を試みた。[1]をベンゼン中,室温で塩化ベンゾイル(2.1モル比)と1~1,5時間反応させ,3-ベンゾイルー4-か置換アニリノー3-ペンテンー2-オン[2](収率63~66%),4な置換ベンズアニリド[3](微量),3-クロロー4-p-置換アニリノー3-ペンテンー2-オン[4](5~9%)および塩化銅(1)を得た。ピリジン(2,0モル比)の存在下で[1a]または[1c]と塩化ベンゾイルを反応させると,[2a]と[2c]の収率はそれぞれ約20%増加することを認め,同時に,[3a],[3b](微量)およびジクロ葎ビス(ピリジン)銅(1)を得た。また[1c]と塩化銅(Ir)を同様の条件で反応させ,[4c](1b%)と塩化銅(1)を単離した。以上の結果から,[1]と塩化ベンゾイルとの反応にさいしての,ベンゾイル化と塩素化の機構を考察した。
  • 吉田 諒一, 前河 涌典, 石井 忠雄, 武谷 愿
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1885-1891
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    初期反応に特色を有する北海道炭の高圧水素化分解反応を詳細に検討するために,石炭化度の異なる北海道炭7種について,化学反応律速と考えられる反応条件下で反応速度を測定し,北海道炭の炭種による高圧水素化分解反応性の相違を試料炭の各種構造指数との関連において定量的に検討した。
    北海道炭の高圧水素化分解反応は2段階にわかれ,それぞれが-次反応として表現された。初期の速度の速い第1段階の反応速度は-般的に石炭化度の増加とともに減少し,また熱的反応にもっとも密接な関係を有する固定炭素または揮発分の含量,燃料比との間には明瞭な相関関係を有することが明らかとなった。一方,速度の比較的遅い第III段階の反応速度は,第1段階に関与した成分を除いた残留物炭中のエーテル型酸素に密接に関係するものと推測された。
  • 吉田 諒一, 石井 忠雄, 武谷 愿
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1892-1899
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石炭の高圧水素処理反応過程を研究する目的で,大夕張炭および太平洋炭について,その骨格構造に大きな変化を与えないような温和な反応条件で高圧水素処理を行ない,生成物中のベンゼンに可溶な部分の芳香族環構造の反応温度およ瑛反応時間による変化を,高分解能NMRスペクトル分析によって追跡し,主として初期反応過程を研究した。あわせてこの結果から,もとの石炭の構造単位をその芳香族縮合環を中心に考察した。
    転化率20%前後までの初期反応過程では,転化率の増加とともにベンゼン可溶分の構造単位が順次大きくなり,また同時にベンゼン不溶残留物の内部表面積も増大する。したがって,この反応過程では本来的に石炭質の構造単位に大小のばらつきのあったものが留出,あるいは分解によってベンゼン可溶分になるものと推察された。一方,転化率が20%以上の反応過程においては,反応物は軟化熔融状態を経過し,転化率の増加とともにベンゼン不溶残留物の内部表面積が減少した。またペンゼン可溶分の構造単位の大きさは,曝化率によらずほぼ一定であり,この反応過程に関与する石炭質の構造単位は比較的ばらつきが少ないものと推察された。ベンゼン可溶分の水素は大部分脂肪族水素からなり,芳香族性ムの値も原炭にくらべて低いところから,石炭中の主として脂肪族構造部分が当初に反応をうけるものと推定された。この結果から,石炭の構造単位の芳香族縮合環に大小のばらつきがあり,その程度は亜歴青炭(太平洋炭)では小さく,歴青炭(大夕張炭)では大きいということを琴験的に明らかにした。
  • 山田 仁穂, 小出 善文, 田上 普一
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1900-1906
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リン酸モノアルキル(AP)を用いて,水溶液中の金属イオンを選択的に除去することを検討した。円筒ガラス内の試料溶液に捕集剤を加え,底部から多孔板を通して空気を送気し,試料溶液中の金属イオンをスカムとして水面に浮上させた。捕集剤としては,炭素数が8(C8),10(Clo),12(Cl2),14(Cl4),16(Cl6)および18(Ci8)のAPをニナトリウム塩として用いた。
    いずれのAPも,lpH7~10付近でもっとも除去率が大であったが,選択性はpH4で認められ,APと2価の金属イオンの結合モル比はいずれも1:1であった。なかでも炭素数の多いq8がもっとも除去率と選択性に富み,pH4で鉛イ=オンを0.6ppmまで定量的に除表し,亜鉛イオン,カドミウムイオン,銅イオンおよびカルシウムイオンの混合溶液においてもこれら金属イオンに妨害されなかった。生成したスカムを希硫酸で熱処理することにより,APと金属イオンを約95%の収率で回収できた。AP-金属錯体の安定度の順序は,金属イオンに関してPb>Zn>Cd>Cu>Caであった。
  • 飛田 満彦, 小平 泰子, 山田 裕子, 矢部 章彦
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1906-1913
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ケイ光増白剤,1,2-ビス(5-メチルベンズオキサゾリル)エチレンおよびその誘導体は溶液中,高分子膜中ともに紫外線光により二量化し,異常なCF曲線を示す。高分子膜中,この傾向は顕著である。本報告では,速度論的な立場から溶液中,高分子膜中の退色挙動を検討した。
    高分子膜中,染料分子の拡散が抑制されているとして,種々の初期条件で速度式を解いた。しかし計算結果からは拡散の抑鋼が全体の退色には効果がないことがわかっか。また,減速効果を仮定して組み立てた速度式も,実測の退色曲線を合理的に説明できなかった。他方,トランスーシス光異性化と光二量化が同時に起こり,かつ光反応が二相(一方は単分子分散相,他方は集合相)で進行し,かつかなりの染料分子が単分子分散相に拘束されているとして説明した。
  • 中垣 正幸, 嶋林 三郎
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1914-1921
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水溶液中におけるポリ(ビニルピロリドン)(PVP)とアミノ酸およびその類縁化合物との相互作用を,PVPの固有粘度[η]を測定し,膜平衡法によって結合量を測定することによって研究した。
    その結果,トリプトファン(Tτy)のように分子の-端に疎水基をもつアミノ酸はPVPと結合して[η]を上昇させることがわかった。またTryは塩酸塩よりもナトリウム塩の方がPVPに対する結合量が少ないにもかかわらず,[η]は後者と共存する場合の方が大きいことがわかった。
    一方,アスパラギン酸(Asp)やグルタミン酸(Glu)のように極性基を多くもつアミノ酸はPVPの[η]を低下させ,Tryとは逆に堪析作用のあることがわかウた。この塩析作用はこれらの物質のモノナトリウム塩よりもジナトリウム塩の方が強く,この傾向はAsp,Gluに対応するα,ω-ジカル宋ン酸であるコハク酸,グルタル酸でも申和度が増大するにつれてPVPの[η]を低下させる作用が強くなることがわかった。
    α,ω-ジカルボン酸ではアゼライン酸モノカルボン酸では吉草酸とカルボキシル基あたり3,5単位のメチレン基よりも,添加物の炭化水素鎖長の短いときには,これらの物質の極性基によるPVPの脱水和のためにPVPの糸まりが収縮し[η]が低下するが,逆に炭化水素鎖長がこれよりも長くなると[η]が上昇し,これはPVPに対してこれらの物質の炭化水素鎖が結合してPVPの糸まりがひろがるためであると結論した。
  • 今井 淑夫, 阿部 崇
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1922-1925
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N,N'-ビス(エトキシカルボニル)ピ獅メリトイミドとビス(4-アミフェユル)エーテル(OPA),その他の芳香族ジアミンとの開環重付加反応を,1V-メチルー2-ピ胃リドン(NMP)中,室温で5日間以上行なわせて,高重合度のポリアミドを合成した。重合速度を大きくしようとして70℃で反応を行なわせると,ポリアミドの-部がイミド化するために,重合溶液はゲル化する。仕込モノマー濃度は高い方が,より高重合度のポリアミドを得ることができる。芳香族ジアミン成分の中ではODAがもっとも高重合度のポレアミドを与える。重合溶媒としてテトラヒド導フランを使用すると,重合中にポリマーの沈殿が析出するために,低重合度のポリアミドしか得られない。ポリアミドのNMP溶液は,水の添加によっても,良好な加水分解安定性,溶液粘度安定性を示した。このポリアミドは,DTAによると160。Cに脱ウレタン環化反応による吸熱ピークを示し,またこの温度はTGAにおける最大減量温度とよく対応する。
  • 卯西 昭信, 田中 義男, 石川 始, 本田 格
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1926-1930
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,4-ジヒドラジノー6-置換(R')-1,3,5-トリアジン(R'=アミノ基,ジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基,ジプロピルァミノ基,ジブチルアミノ基,メチル基,フェニル基)と2,4-ジフェノキシー6-二置換アミノ(R2N-)-1,3,5-トリアジン(R=水素,メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基)のよう融重合によりポリ(ヒドラジノーL3,5-トリアジン)を合成した。1,3,5-トリアジン環にアミノ基をもたないポリ(ヒドラジノー1,3,5-トリアジン)の固有粘度(ギ酸,30℃)はo.07~o.73dJ/9であった。1,3,5-トリアジン環に噛アミノ基をもつポリマーの固有粘度はo,01~0.06dη9であった。これは2-アミノー4,6-ジヒドラジノまたはジフェノキシー1,3,5-トリアジンの3官能性化合物のためである。ポリマーは,ギ酸,酢酸,硫酸,硝酸,壇酸およびエチレンク饗ロヒドリンに溶解したが,獅-クレゾール,非プ貿トン系極性溶媒には不溶であった。1,3,5-トリアジン環にアミノ基またはメチル基を有するポリマーの溶解性は悪かった。このポリマーの窒素中の熱安定性をTGAおよびDTAで測定したところ310~340。Cで分解した。
  • 山下 那都樹, 西原 正, 朝倉 順一, 吉原 正邦, 前嶋 俊寿
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1930-1933
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    数種の核置換フェニルニアリル;エーテルおよびスルフィドとアクリロニトリル(M1)とのラジカル共重合を行なった。Halnmettのσ値と1091/γ1との間には直線関係が成立し,酸素化合物ではp,=-0,35,イオウ化合物ではp=0。17が得られた。また,ポリスチリルラジカルの攻撃に対するこれらアリル化合物の連鎖移動定数を測定したところ,酸素化合物ではp=-128,イオウ化合物ではp=0,08が得られた。これらの結果をもとにして,生母および連鎖移動反応の遷移状態について考察した。
  • 松本 昭, 大岩 正芳
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1934-1938
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジカルボン酸ジアリルエステル同志の共重合を環化共重合の観点から検討した。すなわち,まず動力学式の誘導をジアリルエステルとモノビニルモノマーとの共重合についての環化共重合の取り扱いに準拠して行なった。ついで,フタル酸ジアリルとインフタル酸ジァリル,テレフタル酸ジァリルおよびシェウ酸ジァリルとの共重合を取り上げ,その共重合結果の解析を誘導した動力学式を用いて行なった。その結果,(i)最小二乗法的手法を用いれば各素反応速度定数比の決定が可能である,(ii)逆に,ジアリルエステル同志の共重合を行なうことにより単独重合あるいはモノビニルモノマーとの共重合のさいの解析結果のチェックを行ないうるといった両面から動力学式を利用しうることが判明した。
  • 川瀬 薫, 早川 浄
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1938-1943
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    共存照射法を用いてポリプロピレン繊維に対するメタクリル酸メチルの気相γ線グラフト重合を行ない,反応過程をスプリングバランス法で追跡した。ポリプ鐸ピレン繊維へのモノマーの収着は60~180分でほぼ飽和に近づくが,高温ほど収着率は低い。収着はグラフト率の増加とともに増大する。グラフト反応による繊維の重量増加は高温ほどはやい。モノマー蒸気圧およびγ線照射線量率が増加するとグラフト反応速度も増加する。一般に重量増加は反応時間の増加により加速的に進行する。グラフト繊維は多量の包含ホモポリマーを含むことが知られた。グラフト反応過程のモノマー蒸気圧,γ線照射線量率および反応温度に対する依存性をグラフト率の増加にともなうモノマー収着量の増大を考慮した反応機構から説明した。
  • 小嶋 邦晴, 鈴木 隆雄, 岩淵 晋, 樽見 二郎
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1943-1948
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トリブ千ルボラン(TBB)を重合開始剤として,メタクリル酸メチル(MMA)の絹へのグラフト共重合について究した。
    絹が存在する場合は,絹のない場合にくらべて重合が促進され,絹のグラフト共重合体が生成する,この反応は温度が低い方が,グラフト勅率が高く,温度が高くなるとホモポリマーが余計にできて,グラフト効率は減少する。グラフト重合率,グラフト効率は,MMAと水,TBBの間に最適濃度が存在し,MMAと水がほぼ同容積のときグラフト重合率は最大となる。水が存在しないときにはグラフト重合体はほとんど得られない。絹の量を増した場合は全重合率も生成するホモポリマーの分子量も増大する。MMA以外には,メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル,メタクリル酸グリシジルなどメタクリル酸エステルはグラフト化するが,酢酸ビニル,スチレン,アクリゴニトリルなどではグラフト化は起こらなかった。
    またグラフトポリマーの加水分解生成物のアミノ酸分析を行ない,-部のアミノ酸残基がグラフト化に関与していることを推定した。以上の事実からTBBと絹とMMAの間で活性コンプレヅクスを生成し,グラフト共重合が起こると考えられる。
  • 村田 健一
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1949-1953
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前照射ポリエチレンへの1V-ビニルフタルイミドおよび1隣ビニルスクシンイミドのグラフト共重合,得られたグラフトポリマーからのアニオン交換膜の製造について検討した。
    ポリエチレンとしては三菱油化製のユカ擢ンフィルムを用い,空気中室温下で総線量1α5Mrを照射した。
    グラフト共重合は各種条件下で行ない,つぎのような結果を得た。(1)グラフト率は前照射ポリエチレンフィルムの保存期間が3~45日間の範囲で-定であった。(2)雰囲気の影響は大きく,空気中では〆ラフト率はいちじるしく減少した。(3)重合温度の影響も大きく,110℃において最高のグラフト率を示した。得られたグラフトポリマーをヒドラジン分解してアニオン交換膜を製造し,その電気化学的諸性質を測定して考察した。
  • 白井 汪芳, 北条 舒正
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1954-1957
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコールと2価遷移金属イオン,コバルト(III),ニッケル(III),銅(III),亜鉛(II)イオンとの錯体生成の生成定数をGregorらの修正Bjerrum法により,水溶液中,イオン強度0ユ,25℃で求めた。生成曲線苑の収れん値はCu(II),Zn(III)でほぼ2となり,OH4個と金属イオン1個が結合しているものと思われる。またCo(II),Ni(III)では苑の収れん値は2以上であった。生成定数,109ゐ1,109砿109κは金属イオンの種類によってつぎの序列となった。
    C。(III)<Ni(III)<Cu(III)<Zn(III)
    これは,Irving-Williamsの序列と-致した。またこの反応の熱力学的諸定数をRingbomの方法によって求めた。
  • 加門 隆, 斎藤 和美, 三輪 泰彦, 佐伯 健作
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1958-1963
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々のアミンからの三フッ化ホウ素アミン錯体(BF3-AC)およびフヅ化ホウ素酸アミン塩を硬化剤とするエポキシ樹脂の硬化反1芯をDTAを用いて検討した。
    得られたDTAサーモグラムにはBF3-ACを用いたとき2個の発熱ピークが1認められ,BFザASでは1個のピークしか認められなかった。8F3-ACの高温側のピークはBF4-ASのピークを示す温度とほぼ-致し,その活性化エネルギーもほぼ-致することからエポキシ基の重合によるものと考えられる。低温側のピークを示す温度では,IRおよびニトロンー酢酸法での分析の結果,BF8-ACがエポキシ基の当モルと反応して,BFボASを生成することを見いだした。
    それらの結果から,BF3-AC-エボキシ樹脂系では硬化にさき立ち,BF3-ACはエポキシ樹脂と反応してBF4-ASとなり,結局BF3-AC系もBF4-AS系も,"真の硬化触媒"はBFぺASであり,そのアミンに存在する水素原子による硬化機構を示した。
  • 古茂田 瞭三, 西 泰英
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1964-1970
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    個々の粒子に未反応核モデルが適用できるような固体粒子群-気体系反応において,反応途中で粒子内の固相反応物濃度を均-化したのち,さらに反応を行なう場合の反応所要時間について考察を行なった。均-粒径粒子群および対数正規粒径分布にしたがう粒子群にっいて反応時間対反応率の関係式を導出した。
    数値計算を行なった結果,固相反応物濃度の均-化操作を途中にはさんだ2段反応操作を行なうことにより,均-化操作を行なわない通常の1段反応操作の場合よりも反応時間を短縮できることがわかった。また,対数標準偏差σ≦0,2の範囲では粒径分布の広がりが大きくなるほど上記の2段反応操作による反応時間短縮効果が大となった。なお,最終到達反応率F抄が小さくてよい場合,あるいは気相境膜拡散律速であってσ=0,またはσ=0の場合には,本2段反応操作による反応時間短縮効果が小さいかあるいはまったくない。-般にこの2段反応操作を行なう場合,ユ段目の反応に全反応所要時間の112をあてておれば,FンTくc乱1碑おいては最短時間で,また,乃7=1においては最短時間にかなり近い時間で所望の1醇7に到達させることができる反応時間のみについて考察を行なっている。
  • 松田 応作, 吉田 章
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1970-1974
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    溶媒添加晶析法による硫酸アルミニウム溶液からの硫酸アルミニウム含水結晶の回収の基礎として,5,15,25,35。σにおける2-プロパノールー水-硫酸アルミニウム系の溶解度曲線と液液平衡値を求めた。混合溶媒中に占める水のま重量分率が,大略0.941から0.811の間では溶解度は温度の上昇とともに減少する傾向にあった。その他の領域では,温度の上昇とともに増大する傾向にあった。液液平衡値はすでに提出されている予知法のうちHand法,Mal。r法,中村法などで直線による表示が可能であった。この外に10gX3/2ぐc:1。gX8/ろも直線を与えた。Othmer法では折れ曲った相関を与えるが,成分の選択によってOthmer型の変換でも直線表示は可能である。固相が存在した場合の液液平衡値のX却X蚤と余分水量恥201の積は,溶媒添加晶析法を適用する場合の溶媒の理論必要量を与えるが,平衡値からX卸X憲の温度変化を得た。
  • 谷 忠昭
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1975-1977
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Hexachlororhodate0n, hexachloroosmate(N), hexachlororuthenate(V), and hexacl: iloroplatinate (N) decreased both surface and internal speeds of silver bromide emulsions, and increased surface speeds of silver iodobromide emulsions, although they decreased the internal speeds of the silver iodobromide emulsions, when they were added to the emulsions before coating. The degree of sensitization increased and that of desensitization decreased with the increasing ratio of internal/ surface speed of primitive emulsions: These results are consistent with the idea that the complex ions act as electron traps at the grain surface which are not necessarily efficient for latent image formation, since the surface speed is low owing to the capture of photoelectrons by internal sites in the case of grains with high ratio of internal/surface speed.
  • 尾中 証
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1978-1980
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    I3Sn-Mn(CO)5 has been synthesized bythe reacti, n, fCl3Sn-Mn(CO)5 withNalinTHF, The IR and lase rRaman spectra of I3Sn-Mn(CO)5 have been measured, A linear relationship between the Sn-Mn stretching wave number and the electronegativity of X was observed for a series of X8Sa-Mn(CQ)6 compounds(X=Cl, Br, andI), An efect of X on the Sn-Mn bonding nature was discussed based on the CO and MnC stretching frequencies.
  • 池田 早苗, 平田 純子, 佐竹 弘
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1980-1983
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Selenocyanate ion in a neutral supporting electrolyte (such as potassium nitrate) was titrated with a silver nitrate solution by the use of short-circuit amperometry using a rotating platinum wire electrode (1000 rpm) as an indicator electrode and SCE as a reference electrode.
    It was found that selenocyanate ion could be titrated at the concentration range of 0.01, 0.00001 moll and a 0.001 molg selenocyanate solution was titrated most precisely with the relative error and the coefficient of variation of less than 0.1%.
    A method for the determination of a mixture of selenocyanate and cyanide ions was as follows: The sum of selenocydnate and cyanide was titrated similarly for an aliquot of the sample solution. Another aliquot of the same solution was titrated to the end point of seleno- cyanate after masking cyanide ion with excess formalin and adjusting the pH to 6 with the dilute nitric acid.
  • 高木 靖弘, 清谷 寿雄, 佐竹 正忠
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1983-1985
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The determination of cadmium in unpolished rice has been made by an atomic absorption spectrophotometric method. This work involved the extraction of cadmium with n-butyl acetate solution of dithizone and the measurements of absorbances of the extract.
    The trace amounts of cadmium in unpolished rice ranging from 0.07 to 0.19 ppm was determined with satisfactory reproducibility and without interferences with other heavy metals. The recommended procedures are as follows: The test solution is taken into a separating funnel together with 5 m/ of acetate buffer solution (pH 5.3) and 10 ml n-butyl acetate solution of dithizone solution is added. The extract is sprayed into the flame of an atomic absorption spectrometer. For example, the standard deviation was 0.0O36 for the mean absorbance of 0.426 during 5 runs, the coefficient of variation being 0.8%.
  • 伊藤 正英, 野村 典子
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1985-1987
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The acid catalyzed ring opening of trans-stilbene oxide was investigated in DMSO, DMF, THF, and dioxane and the products, meso and dl-hydrobenzoins and diphenylacetaldehyde, were determined. In the solvents of high polarity, inversion of configuration was observed in most products, and the opposite was true in the solvents of low polarity. There was no direct relation between rearrangement products and polarity of solvents.
  • 山田 恵敏, 小野 二荒, 片桐 孝夫, 田中 順太郎
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1987-1990
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The reactions of resorcinol with isoprene gave prenylresorcinols ([1] and [2]), 2, 2-dimethylhydroxychromans ([3] and [4]), 2, 2-dimethylhydroxyprenylchromans ([5] and [6]) and dichromans ([7] and [8]). The fair amounts of the products in which the prenyl group was attached to 2-position of resorcinol were obtained under suitable conditions.
    On the basis of the results under various reaction conditions, the reaction schemes were discussed.
    The dehydrogenation of compound [8] with DDQ(dichlorodicyanobenzoquinone) gave chromene [9] and dichromene [10].
  • 山上 允之, 中尾 廉, 福元 次夫, 劔 実夫
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1991-1993
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    γ-Induced addition of dimethyl, diethyl, and di-n-propyl phosphites to vinyl acetate yielded the 1: 1 and 1: 2 adducts. Similar addition of dimethyl phosphite to allyl acetate gave the 1: 1 adduct. Dimethyl 2-acetoxyethylphosphite and dimethyl 3-acetoxypropylphosphite thus obtained as the 1: 1 adducts were pyrolyzed to yield dimethyl vinylphosphite and dimethyl allylphosphite, respectively. However, diethyl and di-n-propyl 2-acetoxyethylphosphites gave complicated pyrolytic products, ethylene and propylene, respectively, besides acetic acid.
  • 松尾 昌季, 坂口 忠夫
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1994-1996
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Photodegradation of 4, 4'-bis(1, 3, 5-triazin-2-ylamino) stilbene-2, 2'-disulfonate derivatives was studied both optically and chromatographically.
    The results are as follows.1) The trans-form of each derivative is isomerized to the cis-form in ca.70% yield by irradiation of UV-light (>300 nm). A trans-cis equilibrium is established.2) The CF-plots in these photo-degradation have positive slope.3) Through prolonged irradiation of UV-light, each equilibrium mixture (probably the cis-form is responsible) is degraded gradually to NH3, SO42-, HS0, -, CO32-, and organic acid residues, which may suggest complete decomposition of the molecule.
  • 広瀬 昭夫, 石井 大道
    1972 年 1972 巻 10 号 p. 1996-1998
    発行日: 1972/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A new separation and concentration method of traces of Au, Hg, Pt and Pd in silver, copper and lead metals using sulfur as collector is described. One ml of radioactive standard solution and 0.05-3 ml of (NH4)2S solution (Assay (as S): minimum 0.6%)were added to 35 ml of 0-5.5 HNO3 solution containing 0.5 g (as metal base) of matrix element. Then, sulfur was produced by the following two procedures. (1) Rapid decomposition method: To the solution heated previously, 10-12 ml of conc. HNO3 was added with stirring. (2) Slow decomposition method: 10-12 ml of conc. HNO3 was added to the cold solution and the solution was heated with stirring.
    The yield was determined by the measurement of r-activity with a 3 95x 3 NaI(T1) or 41 ml GOLD detector coupled to a multi-channel pulse height analyser. Test results: Better recovery and reproducibility were obtained by the former method. Optimum amount of (NH4)2S solution to be added was about 0.5 ml. Presence of excess of HNO3 and HCl showed the tendency to decrease the concentration factor and recoveries of trace elements.
    Au, Hg (in silver, copper and lead) and Pt (in copper) were collected almost quantitatively in sulfur. Recoveries of Pt (in lead) and Pd (in copper and lead) were not quantitative but reasonably high. Recoveries of Ag, Ir, Sb (in silver, copper and lead) and Pd (in silver) were low. Behavior of Hg in silver was interesting, because although Hg did not co-precipitate with Ag2S, it was collected almost quantitatively in sulfur.
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