日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1972 巻, 4 号
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  • 柴田 昌男, 中溝 実, 垣山 仁夫
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 681-686
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フルオレセインのハロゲン誘導体6種(DC'F,TCF,TB'F,TI'F,DCTB/F,TCTB'F)について,水-ジオキサン混合溶媒における吸収・ケイ光スペクトルの水素イオン濃度による変化から,各スペクトルのイオン種(+1価,中生,-1価,-2価)への帰属および各イオン種間の基底状態における解離平衡定数の計算を行なった。pK値はハロゲン原子の電子吸引性が大きいとき,小さい値を示した。吸収スペクトルのシフトから,ハロゲン原子の深色効果があらわれていることが認められ,かつ,その効果は+1価のイオン種よりも-2価のイオン種において大きいことがわかった。ケイ光スペクトルにおいても,ハロゲン原子によるシフトが認められた。重原子効果によるケイ光スペクトルの強度の減少は,-2価のイオン種におけるよりも,+1価のイオン種における方が大きい。
  • 岩島 聰, 小林 孝嘉, 青木 淳治
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 686-689
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高温タールピッチから抽出したクリセンには・除去が困難なアソトラセン,ナフタセンなどが不純物として混入してくる。この不純物を除去するには,10gのクリセソと150gの無水マレイン酸および8gのクロロアニルとともに.2時間煮沸後,トルエンを添加しさらに1時間煮沸し,熱ロ過し,そのロ液が50℃付近になったとき析出するクリセンを集め,ベンゼンから再結晶後,帯域融解をくり返すことがもっとも効果的であることがわかった。不純物の検出には,固体状態のクリセンのケイ光スペクトルおよびケイ光寿命の波長依存性から求めた。高純度クリセンのケイ光極大位置は,室温および液体窒素温度ともに390,412,435nm付近に現われる。また,純度があまりよくない試料では,400,425nmにケイ光極大が現われる。一方,ケイ光寿命は室温で高純度試料では平均値として30.2n,sec,低純度の試料では20n,secである。
  • 市村 博司, 小松 和蔵
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 690-695
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    四三酸化コバルト(Co3O4)の不純物陽イオン(Li+,Al3+,Ga3+,In3+)の分布を研究した。不純物を固溶させた四三酸化コバルトのX線回折強度の解析から,Li+およびGa3+はコバルトスピネル結晶内のA位置に固溶し,Al3+はB位置,In3+はA位置とB位置の両方に固溶することを確かめた。電気伝導度に与える固溶した陽イオンの影響は,L計は電気伝導度をいちじるしく増加させ,Ga3+,In3+はいちじるしく減少させたが,Al3+の薗溶はいちじるしい影響を与えなかった。これらの結果はCo3O4の電導機溝のWagnerの推定を支持するものである。ドープしたコバルトスピネルの欠陥構造から,Co3O4の分解反応機構を推論した。
  • 中原 佳子
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 695-701
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α-酸化鉄(ヘマタイト)粉末-ピロリン酸ナトリウム水溶液系懸濁液において,その分散機構を明らかにし,また,酸化鉄-ピロリン酸ナトリウム水溶液界面における界面電気化学的性質について検討した。試料の比表面積は7.55m2/gであり,その表面荷電ゼロ点(ZPC)はpH=7.9であった。酸化鉄の水性懸濁液はpHの高いほど,また,ピロリン酸ナトリウムの濃度の高いほど分散がよく,濃度が4x10-4molμで完全分散となることが見いだされた。しかし,酸性領域において,ピロリン酸ナトリウムの添加量によってはかえって分散を妨げるという特異現象がみられた。ピロリン酸ナトリウムの酸化鉄表面への吸着量は,分散媒のpHに依存した。このことと,酸化鉄表面の荷電状態のpH依存性とを考慮し,ピロリン酸ナトリウムはイオンとして酸化鉄表面の正電荷サイトに吸着するものと推論した。また,分散は酸化鉄粒子表面に発生する荷電と,ピロリソ酸ナトリウムイオンの吸着に依存する有効電荷量に基づくものと考えられる。
  • Makoto KOYAMA
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 701-705
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    交換性カチオンの異なる(Na+・Ca2+およびAl3+)モンモリロナイト(Mtm)によるリグニンスルホン酸(LSA)の吸着実験を行なった。LSAは平均分子量36000の画分を用いた。Na-,Ca-およびA1-Mtmによる吸着はそれぞれ0.4N塩化ナトリウム・0.04および0.2N塩化カルシウムおよび0.03N塩化アルミニウム水溶液中で行なったので・溶液中のLSA分子の拡がりは実験中ほぼ一定にたもたれた。また塩溶液中ではLSA分子相互聞に静電的反発力のおよぶ距離が小さいので,LSA分子は粘土表面にほとんどすき間なく吸着できると考えられる。したがってLSAの吸着によって得られる表面積は吸着量だけの関数として計算できる。実験の結果,吸着はすべてLangmuir型であった・Na-およびCa-Mtmの齢吸着量とそのときの吸着面積はpH1.6から7.1の範囲でそれぞれ40~60mg/gおよび50~70m2/gであった。一方,A1-Mtmのそれらの値はpH1.8から3.3の細で,Na-およびCa-Mtmの値の約3倍(それぞれ150mg/gおよび190m2/g)に達した。以上の結果から,Na-およびCa-mtmによる吸着は粘土粒子の端面にかぎられるが・Al-Mtmによる吸着は全外表面におよんでいるものと判断される。
  • 藤元 薫, 井内 謙輔, 功刀 泰碩
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 706-711
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    活性炭上に担持した塩化パラジウムを触媒として水蒸気の存在下一酸化炭素の酸化反応を行なった。生成物は二酸化炭素のみであった。オレフィン酸化の場合と同様塩化銅(II)などのレドックス剤が存在しない場合にも活性は十分安定であり,またその反応速度はエチレンの場合の約10倍であった。上記触媒を還元することによって得た金属パラジウム活性炭触蜘洞一反応条件下においていちじるしく低活性であり,活性種はパラジウム塩と考えられた。
    反応を速度論的に検討した結果総括反応速度は下式で近似された。
    本速度式の解釈は基本的にはPdCl2(CO)(HaO)なる錯体が水によってレドックス分解する過程が律速的であると結論されるが,一酸化炭素および水蒸気分圧の依存性はその他の種々の錯体の生成を考慮することにより合理的に説明された。
    パラジウムの再酸化反応はきわめて速く,一酸化炭素のパラジウムによる酸化がいちじるしく速いにもかかわらず,再酸化過程は律速的とはならなかった。
  • 手島 英夫, 角 敏昭, 森田 徳義
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 711-716
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    橋かけ度の異なる4種類の陽イオン交換樹脂による酢酸エチルおよび酢酸メチルの加水分解をカキマゼ槽反応器を用いて行ない, 反応速度におよぼす反応物の樹脂内拡散抵抗ならびに樹脂相への吸着の影響と樹脂構造との関係について検討した。
    粒径の異なる樹脂による反応速度から触媒有効係数およびThieleモジュラスを推定し,樹脂内拡散抵抗の影響を補正して真の反応速度および有効拡散係数を求めた。樹脂相と溶液本体との間の反応物の濃度差の影響を考慮するために,H形膨潤樹脂へのエステルの吸着係数を,Na形膨潤樹脂について測定したエステルの吸着平衡値から換算して求め・補正係数として用いた。このようにエステルの樹脂内鉱散抵抗と樹脂相への吸着の影響を補正すれば,橋かけ度にかかわらずほぼ一定の反応速度定数が得られた。このことはイオソ交換樹脂触媒の活性度におよぼす反応物の樹脂内拡散抵抗ならびに樹脂相への吸着の影響が,橋かけ度によってどのように異なるかに対する本研究の評価方法が妥当であることを示すものと考えられる。
  • 近藤 厚実, 山田 旬
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 716-721
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    電子写真用液体現像液のゼータ電位を測定するための新しい方法として低電界電着法を提案する。試料液に平行平面型電極を浸たし,トナーの泳動速度がその拡散速度より十分小さくなるような低い直流電圧を電極間に印加した状態で電着を行なうと,外部回路を流れる電着電流または現像液の吸光度は指数関数的減衰を示すことが理論的に期待され,電流または吸光度の減衰の時定数からトナー粗子の電極間移動時間Trを決定できる。ゼータ電位の値はこのTrの値と溶媒の粘度および比誘電率の実測値とから理論的に計算できる。さらに液中のトナー全質量とトナーの比重とを測定すれば,トナー粒子の平均の質量,電荷量,半径などの値も理論的に決定できる。本報告には,上に述べた理論の誘導と実測結果による確認とを与えてある。
  • 中重 治, 塙 琢志, 野田 稲吉
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 722-727
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ピストンとシリンダーの円錐角90。のガードル型高圧装置について,試料室内の発生圧力の圧力分布を調べ,試料室の幾何学的配置とガスケット構成を検討した。
    ピストン端部の直径とシリンダーの内径が等しい形状の装置では,図2-(b)に示す複合ガスケットが適当であった。試料室内の圧力の静水圧的条件はほぼ満足できるが,ピストンまたはシリンダー側面の圧力負担が大きく耐用回数が短い。
    ピストン端部の直径をシリンダーの内径より小さく改良した装置では,図8-(c)に示す複合ガスケットが適当であった.試料室内の静水圧性は劣るが,圧力発生に増圧効果がみられ試料中心部に圧力が集中し・ピストンまたはシリンダー側面の圧力負担が減少した。この改良型装置は15~60kbの圧力条件下で十分長期間使用できる。
  • 大谷 杉郎, 大谷 朝男, 北爪 良彦
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 727-733
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ピッチカ一ボンの諸性質が測定され,他の炭素材と比較された。ピッチカーボンは普通の人造黒鉛製造におけるバインダーピッチとフィラーコークスの両方の役割をもった変質ピッチだけからつくられた。
    高強度,低電気比抵抗のピッチカーボンは低軟化点の,すなわち焼結性の高い変質ピッチからつくられた。ピッチカーボンの最大曲げ強さは約700kg/cm2で,この値は炭素電解板の約2倍,比較的弱い方のガラス状炭素に匹敵する。またピッチカーボンの細孔率分布も焼結状態に影響され,それは炭素電解板とビトロカーボン(ガラス状炭素)の中間の値を示した。
    耐酸化性や熱膨張においては,ピッチカーボンは炭素電解板に類似していた。ビトロカーボンと比較すると,熱膨張率は大きく,耐酸化性はすぐれていた。ピッチカーボン,炭素電解板ともにピッチからつくられるので,これらの性質は粒子の焼結状態よりも,もっと本質的な炭素の構造に依存すると考えられる。
  • 菅野 竹雄, 北川 達夫, 津田 雄二, 渋谷 健司, 久保 一彦
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 734-739
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    pH滴定法によってピロおよびトリリン酸-アルカリ土類金属錯体(金属:マグネシウム,カルシウムおよびストロンチウム)の熱力学的安定度定数を求めるとともに,熱量測定あるいは安定度定数の温度変化から25℃における1:1錯体形成反応の反応熱を求めた。そして,それらの結果から1:1錯体形成反応にともなう熱力学的諸量の変化の値を算出した.
    その結果,ΔH0の値は正(吸熱)できわめて小さく,それに対しては非常に大きな正の値を示すこと,すなわち以上の錯体の安定性はその大きなエソトロピー増加に基づくことを認めた。また,同一金属イオンの錯体について比較すると,トリリン酸錯体のはピロリン酸錯体のそれよりも大きいこと,の値は金属イオンの種類をかえてもあまり大きく変化しないのに対し,の値はMg(II)>Ca(II)>Sr(II)の順に大きく変化することも認めた。そして,これらの結果をピロあるいはトリリン酸イオンがその錯体中でキレート環を形成することに基づくものとして説明するとともに,以上の結果からトリリソ酸キレートの構造についても考察した。
  • 大橋 弘三郎, 山本 勝巳, 横内 鋼三郎, 栗村 芳実
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 740-744
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    trans-Co(N3)2(en)2+,trans-Co(N3)2(Pn)2+,trans-CoN3(H2O)(en)22+,trans-CoN3(H2O)(pn)22+,sis-co(N3)2-(en)2+,cis-Co(N3)(pn)2+,cis-CoN3(H2O)(en)22+およびcis-CoN3(H2O)(en)2n+の過塩素酸酸性溶液中における鉄(II)による還元反応を分光光度法によりΣ[ClO4-]=1.0mol/l,25℃の条件で研究した。trans-Co(N3)2(en)2+の還元反応の速度式は-d[Co(III)]/dt=[k0+kh+[H+]][Co(III)][Fe(II)で示され,k0およびkH+の値としてそれぞれ9.0x10-4M-1,sec-1,1.5x10-2M-2,sec-1が得られた。trans-Co(N3)2(en)2+の反応性は水素イオン濃度とともに増大するが,これはtrans-N3-に水素イオンが付加することによりtrans-N3-をコバルト(III)中心から引き伸ばすのに要するエネルギーが減少するためと考えられる。一方,cis-Co(N3)2(en)2+の鉄(III)による還元反応では水素イオンの影響がみられない。このことはシス錯体が二重橋かけ機構で還元されることを示している。
    trans-CoN3X(en)2N+の鉄(III)との反応性はX=H2O>C1->N3-の順に増大し,反応性には橋かけ配位子に対してトランス位の配位子をコバルト(III)中心から引き伸ばすのに要するエネルギーが影響していると考えられる。
  • 染谷 武, 大沢 茂樹
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 744-747
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アンモニアをクロモトロープ酸により発色させ赤紫色とし,この吸収極大が520nmにあることを利用してアンモニア窒素の吸光度を測定し,鉄鋼中の窒素分析に応用する定量法を試みた。鉄鋼試料を塩酸で分解後,水酸化ナトリウム溶液を加えて水蒸気蒸留しアンモニアとなった窒素を塩化銅(II)溶液に吸収する。そのとき生成された銅アンミン錯イオンにクロモトロープ酸を加えて加温発色させ,あらかじめ作成した検量線か窒素を定量した。窒素量500μgまでBeerの法則にしたがい検量線埴線を示した。定量所要時間は約60分であり,鉄鋼標準試料に適用して標準値とよく一致した。
  • 長谷川 肇, 徳力 正成, 佐竹 孝
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 748-752
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アセチレンジカルボン酸ジメチルおよびブロピオール酸メチルをジエチルエーテルおよびテトラヒドロフラン溶媒中で紫外線照射を行なうと,エーテルのα-位の水素が引き抜かれて1:1の付加物が生成することが見いだされた。これらの生成物につき,石英反応管を十分に脱気後溶封して,メリーゴウランド式光照射装置を用いて,定量反応を行ない,おのおののエステルとエーテルとの反応性の比較を行なった。また,アセチレンジカルボン酸ジメチルとテトラヒドロフランにおいて,消光および増感反応を行ない,Stern-Volmerプロットが直線にのること,および三重項増感剤の効果から,反応がアセチレソジカルボソ酸ジメチルの励起三重項状態を経ることを見いだし,また増感反応の結果から,アセチレンジカルボン酸ジメチル,(テトラヒドロ2-フリル)フマール酸ジメチル,および(テトラヒドロ-2-フリル)マレイン酸ジメチルの最低励起三重項エネルギーはそれぞれ58~59.5,58~59.5,76.3~kcal/molであると推定された。
  • 杉田 嘉一郎, 田村 修治
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 753-755
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    trans-2-ベンゾイル-4-シクロヘキセン-1-カルボン酸[5],およびそのメチルエステル[6]とベンゼンとを・無水塩化アルミニウム存在下で反応させたところ,t-5-フェニル。c-2-ベンゾイルシクロヘキサン-γ-1-カルボン酸[8]溝よびそのメチルエステル[9]をそれぞれ立体選択的に得た。また,メチル-trans-2-クロロホルミル-4-シクロヘキセン-1-カルボキシレート[7]とベンゼンとからもそのエステル[9]が同様に得られた。
    その反応機構は,つぎのように考えられる。すなわち,シクロヘキセン[5,6,7]の二重結合へのプロトン(コン跡の水と無水塩化アルミニウムから生じる)化で生成するカルボニウムィオンの空のか軌道と,アキシアルカルボキシル基のエーテル酸素の不対電子が,1,3-相互作用するために,ベンゼンの攻撃がアキシアルカルボキシル基に対して反対の方向に指定され,フェニル基とカルボキシル基とがtrans3-配置である1,2,5-トリ置換シクロヘキサンを生成する。
  • 滝川 雄治, 滝沢 三郎
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 756-760
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報の実験より,液体アンモニア-硫化水素ナトリウム系中では,ハロベンゼソのハロゲン原子がチオール基によって容易に求核置換されることを知った。本報告では,著者らの研究をハロニトロベンゼソとNaSHとの反応に拡張した。ペンタクロロニトロベンゼン[1]とNaSHとの反応を,液体アソモユアおよびメタノール中で行ない,2,3,4,5-テトラクロロ-6-ニトロベンゼンチオールとペソタクロロベンゼンチオールを得た。しかしながら生成物の収率は,前者の溶媒中ですぐれた結果を得た。そこで,さらにつぎのポリハロユトロベンゼン,すなわち,2,3,5,6-テトラクロロニトロベソゼン[2],2,3,4-[3],2,4,5-[4]および2,4,6-トリクロロニトロベンゼン[5],2,5-[6]および3,4-ジクロロニトロベソゼン[7],2-メチル-4,6-ジクロロニトロベンゼン[8],2-[9]および4-クロロニトロベソゼン[10]とNaSHの反応を液体アソモニア中で行なった。
    その結果,つぎのようなことがわかった。1)[2]との反応では,2,3,5,6-テトラクロロベンゼンチオールが生成した2)[3],[4],[5],[6]および[8]のようなポリクロロニトロベソゼソとの反応では,o-塩素原子がチオール基によって優先的に置換された。[γ]との反応では,p-塩素原子が容易に置換された。3)[9]および[10]との反応では,相当するニトロベンゼンチオールが容易に生成した。
  • 滝川 雄治, 滝沢 三郎
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 761-765
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    液体アンモニア中,ハロベンゼンおよびハロニトロベンゼンとNaSHとの反応では,求核置換反応が容易に起こることがわかったので,芳香族ニトロ化合物とNaSHとの反応に拡張した。
    9-ニトロアントラセン[1]および1,2-ジニトロベンゼン[2]とNaSHとの反応では,それぞれms-ジアントリルジスルフィドおよび2,2'-ジニトロフェニルジスルフィドがほぼ定量的に得られた。1-ニトロナフタリン[3]とNaSHとの反応では,4,4'-ジニトロジナフチルジスルフィドと4,4なジアミノジナフチルジスルフィドが得られた。2-[4]および4-ニトロトルエン[5]とNaSHを125℃,20時間反応させた結果,メチル基が酸化されると同時にニトロ基が還元された生成物を得た。その他のニトロ化合物とNaSHとの反応では,相当する置換アニリンおよび置換アゾベンゼンを得た。なお,これらの反応機構についても考察した。
  • 滝川 雄治, 滝沢 三郎
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 766-770
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一連の研究から液体アンモニア中,芳香族化合物とNaSHとの反応では,求核置換反応および酸化還元反応が容易に起こることを知ったので,著者らの研究を芳香族ニトリルとNaSHとの反応に拡張した。液体アンモニア中ベンゾニトリルとNaSHおよびNH4C1との反応ではH2Sの付加と同様の付加が起こり,高収率でチオベンズアミドを与えた。一方,液体アンモニア中ベンゾニトリルと97%NaSHとの反応では,低収率でチオベンズアミドを与えるが68%NaSHとの反応ではチオベソズアミドは生成せず,ベンズアミドだけを選択的に生成する。また液体アンモニア中ベンゾニトリルとH2Oは反応しない。液体アンモニア中シアノフェノールおよびそのトシラートとNaSHおよびNH4Clとの反応では相当するチオアミドを得た。液体アンモニア中4-クロロベンゾニトリルとNaSHおよびNH4Clの反応では4-クロロチオベンズアミドと塩素原子が求核攻撃を受けた生成物を与えた。
  • 南谷 晴子, 前川 悦朗
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 770A-779
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    o-アシルペンゾフェノンはアンモニアおよび第一アミンと反応して青色または青紫色を呈することが知られ,アンモニアとの反応で生成した青色色素の構造は著者らの一人によって確かめられた。ところが第一アミンとの反応によって生成する色素が,これと類似の構造をもつことは不可能である。
    o-アセチルベンゾフェノンとシクロヘキシルアミンとをベンゼン中で酢酸の存在下に放置すると結晶性深青色の安定な色素[3]C35H29NOが得られる。[3]はそのIR,NMR,質量スペクトルと化学的挙動から2-[2-シクロヘキシル-3-フェニル-1-イソインドリル]3-フェニルインドンであると考えられ,さらにその生成機構を推定した。
  • 堀江 徳愛, 津嘉山 正夫, 増村 光雄, 中山 充, 林 修一, 福井 憲二
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 773A-779
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3-メトキシ-2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノン[3]の部分ベンジル化反応を検討し,カラムクロマトグラフィ-を用いて,4,6-ジベンジルオキシ-2-ヒドロキシ-[4](mp140~141℃),2,4-ジベンジルオキシ-6-ヒドロキシ0[5](mp70~71℃),5-ベンジル-2,4-ジベソジルオキシ-6-ヒドロキシ-[6](油状物)と少量の2,4,6-トリベンジルオキシ-[7](油状物)-3-メトキシアセトフェノンを分離した(表1)。
    得られたひベンジルアセトフェプン[6]を用いて,つぎの方法で種々のc-ベンジルフラボン誘導体[12~15]に誘導した。[6]と5種の置換安息香酸塩化物とのエステル化反応,ついでBaker-Venkataraman転位反応,引きつづいての酢酸中無水酢酸ナトリウムによる閉環反応で8-ベンジル-7-べンジルオキシ-5-ヒドロキシ-6-ゾトキシフラボン誘導体[12]を得た。[12]をパラジウム-炭素で加水素分解して,3,4なジメトキシ(a),4なヒドロキシ3-メトキシ-(b),3なヒドロキシ-4'-メトキシ-(c),3ノ,4-ジヒドロキシ-(d),3',4'-ジメトキシ-5'-ヒドロキシ-(e)-8-ベンジル-5,7-ジヒドロキシ-6-メトキシフラボン[13]を得た。
    得られたこれらフラボンのUV,NMRスペクトルについて比較検討した。
  • 表 美守, 小松 俊彦, 小林 隆一郎, 杉山 登
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 780-782
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カルコソのフェロセン類似体である1-ベンゾイル-2-フェロセニルエチレン[1]と4種のチオール類(n-ペンタン,フエニルメタン,ペンゼン,かトルエンチオール)の付加物[2]を合成した。対応するカルコンの付加物[3]とNMRを比較した結果,フェロセニル基の場合とフェニル基の場合とで規則的な変化が見いだされた。すなわち,[2]と[3]におけるFcまたはPhのα-位とβ-位の水素のτ値につきΔτα=ταFe-τβPhおよびΔτβ=τβFe-τβPhを計算したところ,は0.05~0.17ppmであり,Δτα脂肪族チオールの場合 -0.13~-0.15ppm,芳香族チオールの場合0.06~0.04ppmであった。これらの結果を考察し,[2]の分子内に鉄とイオウ両原子間の弱い結合の可能性を推定した。
  • 飯田 博子, 飛田 満彦
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 782-787
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らの一人はすでに反応染料の固着率を定義し,その測定法について新簡便法を提案した。
    本研究では,この固着率の定義,および測定法を染色化学的に検討した。すなわち,染色布上の全染料が染料の直接性に基づいて繊維内部に吸着した染料(φ)と,繊維上に単に付着しているのみの染料(σ)とからなると考えてφ量とσ量とを測定し,つぎの結果を得た。
    1)(1)式で求めた固着率は真の固着率に近い。
    2)尿素の存在によってφ量は減じたが,σ-部分からの固着に対する寄与は増した。
  • 青柳 重郎, 篠原 功
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 788-792
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/11/21
    ジャーナル フリー
    臭化ビニル(VB)の熱重合を行なうと脱HBr反応が起こり,二重結合が生成する。そこで脱HBr反応をともなわない乳化重合を検討した。開始剤がFe-H2O2系の場合重合温度0±0.5℃,4時間の重合では収率10%であるが,Fe-H2O‐アルコルビン酸系では同じ重合条件で94.0%となった。しかも,脱HBr反応はほとんど認められなかった。
    つぎに,塊状重合および乳化重合系で臭化ビユルとそれぞれブクリル酸ブチル(BA),アクリロニトリル(AN),酢酸ビニル(VA),メタクリル酸メチル(MMA)との共重合を行ない,重合挙動を調べるとともにモノマー反応性比を求めた。VB(γ1)-BA(γ2)の系ではγ1=0.19,r2=3.70(塊状重合r1=0.018,r2=13.80(乳化重合),VB(γ1)-AN(γ)の系ではγF0.055,γ2=2.25(塊状重合);γ1=0.007±0.003,γ2=0.94±0.02,VB(γ1)-VA(γ2)の系ではγ1=1.82,γ2=0.68(塊状重合);γ1=3.00±0.65,r2=0.38±0.016(乳化重合),VB(γ1)-MMA(γ2)の系ではγ1=0.33,γ2=17.1(塊状重合),γ1=0.0024,γ2=27.4(乳化重合)。
  • 田中 孝昭
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 792-795
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セリウム(IV)塩を開始剤とするアクリロニトリルの水溶液中の重合における溶存酸素の影響について検討した。その結果,1)溶存酸素が存在すると,ある誘導期の後に重合が開始され酸素の濃度が=増すにしたがって収率も増加する。2)溶存酸素は誘導期中にほとんど消費される。3)セリウム(IV)イオンは誘導期中には濃度は変化せず,重合が開始されると時間とともに濃度が減少する。などのことがわかった。
    これらのことから,溶存酸素は重合の開娘反応に関与しセリウムイオンの存在下にモノマーと反応して一次ラジカルを生成することが推定され,この場合途中の経過としてセリウムイオソとモノマー間の錯体の生成が考慮された。
  • 荒井 健一郎, 荻原 允隆
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 796-799
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    繊維状セルロース物質のセルラーゼ加水分解反応の見かけの活性化エネルギーを求め,検討した。この反応は非常に複雑であり,さらに反応速度の測定法自体が確立していないこともあって活性化エネルギーの測定は容易ではない。本報ではまずこの反応における試料の重量損失からグルコシド結合切断率を理論的に推定し,このグルコシド結合切断率をHofsteeブロットすることにより最大速度およびMichaelis定数を求めた。ついでこの最大速度の温度依存性から見かけの活性化エネルギーを求めた.このようにして得た値は5.4~8.9kcal/molの範囲にあり,反応時間,ふりまぜ条件,膨潤能力およびセルロ一ス試料の種類などの反応条件によって異なるが,酸加水分解の場合の29.8kcal/molの値よりいちじるしく低く,酵素反応の特徴を明瞭に示している。この値の変動は試料の化学的組成に加えて,構造的な因子の相違によって生ずると思われる。ただし,ここで述べる横造的因子は,以前に報告したように,酸加水分解の場合のそれとは異なった意味をもっている。
  • 柘植 盛男, 宮林 達也, 田中 誠之
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 800-806
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ゲルバーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりフェノール樹脂の数平均分子量(Mn),重量平均分子量(Mw)および分子量分布を測定する場合の二三の問題点を検討した。フェノール樹脂のようなオリゴマーの不連続なGPC曲線に適用できる計算法を得るために,ピーク幅を考慮した簡易補正法を試み,またその他の補正をもあわせて行ない,Mn,Mwおよび分子量分布曲線測定の正確度を向上させることができた。このうちMwは測定法上の問題で従来ほとんど測定されていなかったので,各種フェノール系樹脂のMwを測定し,Mnとの関係を求めた。MwはMnに比較して高分子量成分の寄与がとくに大きいので,フェノールノボラックおよびレゾール樹脂の縮合度指数として適切であることを認めた。また従来法である分別沈殿法の分別効果が小さいことを分別物の.Mw/MpをGPCにより測定して明らかにした。すなわち未分別試料(Mw/Mn=1.44)の分別物のMw/Mnは低分子量分別物を除けば約1.3~1.4であった。さらにノボラックおよびレゾール未硬化樹脂中の多大多量体を測定した結果,少なくとも50量体以上の多量体が少量ではあるが存在することを認めた。これは従来考えられていた値よりもかなり大きい多量体が未硬化樹脂申に存在していることを示している。
  • 金沢 孝文, 門間 英毅, 内村 文夫
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 807-808
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Effect of aluminium phosphate (AP) on defluorinating-reaction of fluorapatite (FAp) was studied. The decomposion rate of FAp and its fluorine volatility were measured under several atmospheres and various heating conditions.
    The decomposition was active above 1050°. The decomposition reaction was more preferable to the volatilization reaction in a nitrogen atmosphere, whereas the rate of above reactions were nearly equal in nitrogen-water vapor atmosphere. In the FAp-AP-H2O system, H2O acted to accelerate the decomposition and the volatilization. On the other hand, when SiO2 was used in place of AP, SiO2 itself was considered to accelerate the above reactions.
  • 高橋 義明, 中谷 光久, 大内 昭
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 809-810
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    New metal monothiobenzoates SnL4 (where HL is monothiobenzoic acid) as well as SbL3 have been synthesized. The former was obtained from tin (IV) chloride and potassium monothiobenzoate in an absolute ethyl alcohol medium. The same complex was also obtained by the reaction of free monothiobenzoic acid with tin (IV) chloride. The latter, SbL3, was obtained from antimony (III) chloride as well as antimony (V) chloride and potassium monothio- benzoate or the free acid. Sn(II) and Sb(V) complexes were not yet obtained. This fact is probably due to the higher stability of the Sn(V) and Sb(II) complexes when compared with the Sn(II) and Sb(V) ones, respectively.
    In these complexes, the ligand coordinates to the central metal ion only through the sulfur atom as shown in the Hg(II), Cu(I) and Ag(I) complexes of the ligand. The infrared spectra of the products were shown and discussed.
  • 小野 葵
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 811-812
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Separation behavior of positional isomers of alkylbenzenes was studied by gas liquid chromatography with liquid crystals, 4, 4'-dimethoxyazoxybenzene and 4, 4'-diethoxyazoxybenzene, as stationary phases.
    It was found that the separation of m- and p-isomers of dialkylbenzenes, in the nematic state of liquid phases, depends upon the polarity of alkyl groups in the alkoxy group of liquid phases, the separation of o- and (m, p)-isomers depends slightly upon the polarity of them and the separation behavior of mono-alkylbenzenes with long alkyl group is the same as that of p-dialkylbenzenes which have the same carbon number in the side chain.
  • 帰山 享二
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 813-815
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カルボン酸金属塩によるビニル化合物のラジカル重合については,いくつかの研究が報告されている。Lingamurtyらはラウリル酸鉄(III)によるメタクリル酸メチル(以下MMAと略記する)の重合を行なった。青木らは酢酸鉛(IV)がMMAの重合を開始することを見いだした。青木らはシクロヘキサンカルボソ酸コパルト(III)塩によるMMAの重合について報告している。重合速度はMMAの1.4乗と塩の0.5乗に比例する。この挙動がアセチルアセトナト金属キレート(以下Me(acac)nと略記する)による重合と類似しているので,Me(acac)nの場合と同様な金属一酸素結合のラジカル解離をともなう重合開始反応を推定している。カルボニル化合物,キレート化試薬,および四塩化炭素のような添加物が,Me(acac)箆によるビニル重合の開始におよぼす効果について調べてきた。本報においては,これらの添加物がカルボン酸金属塩によるMMAの重合におよぼす効果について調べて,Me(acac)nの場合と比較検討する。
  • 宮崎 栄三, 布施 一範
    1972 年 1972 巻 4 号 p. 815-816
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Catalytic activity and surface area of powdered tantalum monocarbide(TaC) evacuated under high vacuum (∼10-5 mmHg), were investigated as a function of the evacuating temperatures between 400 and 1100°C. It was found out that the conversion activity for hydrogenation of benzene was negligibly small at the lower evacuation temperature than 900°C; the sample was, however, abruptly activated when it had been evacuated at above 1000°C, and that the surface areas measured by BET method using krypton, were nearly constant (1.5 m2/g) regardless of the evacuating temperatures. These results suggested that the activation created catalytically active sites on the surface.
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