日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1973 巻, 1 号
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  • 趙 承深, 武藤 信也, 目黒 謙次郎
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ドデシルピリジニウム=クPリド(DPC1)の水溶液にヨウ素を添加するとDPC1の濃度がCMC以下のときはDPC1分子とヨウ素の間で電荷移動錯体ができ,288 nmと464 nmに電荷移動吸収帯が現れる。IDPCiの濃度がCMC以上ではDPCIミセルとヨウ素の間で電荷移動錯体ができ,366 Rmに電荷移動吸収帯が現われる。
    この電荷移動錯体を利用し,非イオン性界面活性剤ヘプタエチレングリコール=ドデシルエーテル(C,2E7)と陽イオン性界面活性剤DPCIの相互作用を,(1)C,2E7とDPCIの濃度がともにCMC以下,(2)Ci2E7の濃度がCMC以上でDPCIがCMC以下,(3)C,2E7の濃度がCMC以下でDPClがCMC以上,(4)Cl,E7とDPCIの濃度がともにCMC以上,の四つの混合系について研究した。
    その結果C12E7どDPCIの濃度がともにCMC以下の場合には相互作用がなくC12E7の濃度がCMC以上でDPCIがCMC以下の系ではDPCIがC,E,ミセルに溶けこんだ混合ミセルを形成していることが推測できた。またDPCIの濃度がCMC以上の場合にはC,2E7の濃度がCMC以上,CMC以下のいずれの場合もDPCIミセルにC12E7が溶けこんだ混合ミセルができていることが推測できた。
  • 盛岡 良雄, 小杉 宏子, 竹内 靖幸, 小林 純一, 井本 文夫, 樋口 泉
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 5-12
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ホウケイ酸ガラス(Na20,5 B20,12.7 SiO2)を熱処理して分相を起こさせ,それを2NHCIで溶出して多孔性ガラスを得た。熱処理条件(温度と時間)の異なる種々の多孔性ガラスについて0Cでベンゼンあるいはメタノールの収着等温線を測定した毛管凝縮理論に基づいて実験結果から細孔構造の変化を検討し,熱処理温度および時間とともに鼠径孔が規則的に増加することから,シリカに富む分相粒が成長すること,分相粒粒間の可溶相が溶出したあとが細孔になることを結論した。このことは分相こ粒径が5~600Aに成長した試料ではHCI溶出量と飽和収着量とが,体積的によく対応する実験事実からも支持された,熱処理温度が500C以下の試料では(1)型の等温線を与え,その主要な細昇半径かは20A以下であり,ベンゼンならびにメタノール分子に対して分子ふるい効果のある微細孔も混在することが明らかになった。この実験結果から得た結論はガラス分相に関する従来の知見と大綱において等しい。毛管凝縮理論に基づく蒸気収着法は細孔検出能がすぐれているからガラスの分相研究に有用なことを明らかにした。
  • 疋田 晴夫, 石川 治男, 江阪 直樹
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩酸溶液中での塩化銅(1)の溶解平衡を解明することを目的として,過塩素酸を添加してイオン強度を一定にたもった塩酸中への塩化銅(1)の溶解度を測定した.つぎに溶解した銅(1)がすべて数種の錯体の形で存在するものとして3種のモデルを考え,これらのモデルに基づいて溶解度データを検討した結果,CuC1, CuC132, CuC1,3-の3種のクロロ錯体の共存を仮定したモデルがもっとも合理的に溶解度データを説明できることがわかった.そこでこのモデルに基づいて溶解度データを解析し,上に述べた3種のクロ錯体に対する平衡定数の値を求めてこれらをイオン強度と温度の関数としてあらわした実験式を作製した.さらに,既往の研究者によって測定された溶解度の実測値および本研究での全実測値を,上に述べた実験式による錯体平衡定数の値を用いて算出された溶解度の推算値と比較した結果,塩酸濃度0.05~3.Omo1/1,イオン強度O.2~6,5mo1/1,温度15~35.Cの溶液に対する溶解度の実測値がすべて土10%以内の誤差で推算値とよく一致することがわかった.
  • 高梨 茂敏, 藤井 修冶
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    NaXとNaYの触媒活性点の相違を明らかにするためアニソールのメチル基移動反応について275~425℃の温度範囲で検討した。本反応の触媒活性はNaX>NaYであり,通常の触媒活性のY型>X型とは異なる。またNaXの触媒活性はREXと同様に450℃以上では焼成温度の上昇により低下したが,NaYには焼成温度の影響は認められなかった。アニソール転化率は水の添加によりNaXではいちじるしく増加するがNaYではその影響はあまりなく,またピリジンの添加によりNaXでは減少しNaYでは逆に増力した。
    一方,2プロパノールの脱水反応にピリジンを添加すると,いずれの触媒でも活性は低下したが,とくにNaXでは顕著に認められた。
    NaXとNaYを脱カチオンするとアニソール転化率はともに増加し,また脱カチオンしたNaXの反応中に水を添加すると転化率はさらに増大し,脱カチオン前の触媒に水を添加したときの値とほぼ同一となった。アニソールの反応の活牲化エネルギーはNaX, NaYそれぞれ16,6,25.8kcal/m 1であり,しかもNaXに水を添加しても活性化エネルギーはほぼ同一の値を示した。
  • 上松 敬禧, 鈴木 正樹, 橋本 栄久
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫化亜鉛がブテソ異性化活性をもつことを見いだし,その活性と表面物性との関連を検討する目的で,BET表面積,アミン吸着による表面噛癖を測定し,また不純物金属イオン添加を行なって,触媒活性との対応を検討した。 用いた硫化亜鉛粉末は,500C以下の加熱脱気によりきわめて容易に焼結が進行し,表面積が減少した。また1atom%以下の不純物イオンの影響を強くうけ,Li+では焼結の促進 Ga3 A18+では抑捌効果がみられた。硫化亜鉛の表面酸性の強度は比較的弱いが,Ho 6,8に相当する野点の数は,シリカーアルミナなどの従来の固体酸上の野点の数に匹敵した。単味の硫化亜鉛の加熱脱気では,H 1.5-の比較的強い等量の増加が目立ち,GaS の添加では,おもに弱酸点が増加した。脱気処理および不純物の影響の結果を検討し,硫化亜鉛の表面酸性の原因について考察した。単味の硫化亜鉛では高温脱気によりむしろ触媒活性は減少し,酸量と触媒活性との間には単純な比例関係はみられなかった。不純物として微量のLi を添加すると活性低下がA13 とくにGa3を添加するといちじるしい活性の増加がみられた。これらの挙動は単に酸量の変化だけでは説明がつかず,酸性点の不均一性や触媒作用に対する酸性以外のものの寄与が予想された。
  • 高須 義雄, 近藤 栄一, 山之内 昭夫, 三井 再男
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    下記一般式を有するシアニン色素およびスチリル色素を用いて,光導電性高分子ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)の分光増感能に与えるR1,R2の影響を調べた。
    A1基板上に上記色素を添加したPVK被膜を作製し,コロナ放電により帯電後,表面電荷の光減衰を測定した。光減衰曲線から,PVK被膜はコンデンサーモデルに近似できることを確かめ,これにより,光電導に対する量子効率が表面電位の減衰比1n V0/V(ただし,Vは初期電位,Vは露光後の電位を表わす)に比例する関係式を導いた。この量子効率を基に各色素の増感能を比較した。まずR,の効果は,色素のPVKへの溶解性に影響し,とくに,かオクチル基のような高級アルキル基を導入すると高溶解性となり,増感効率もいちじるしく高くなることを見いだした。つぎに,R,はCH8,CH3,H,1,C1,BfおよびNO訟どの電子吸引性の異なる基を置換したもので,この官能基の影響はベンゾチアゾール環のシアニソまたはスチリル色素においては,R,の電子吸引性の増加とともに高増感能となる傾向にあった。しかしインドール環からなる色素はRの効果がそれほど顕著に認められなかった,これらの関係をHammett定数および溶媒効果の相関として示した。
  • 西久保 忠臣, 一條 太郎, 高岡 恒郎
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ヘキサメチルポスホルアミドなどの非プロトン性極性溶媒中で,ポリエピクロヒドリソゴムとケイ皮酸カリウムを縮合反応させることによって,ポリ(グリシジルシンナマート)を合成した。合成条件についての若干の検討を行なつた結果,ヘキサメチルポスホルアミドは他の非プロトン性極性溶媒に比較してよい反応溶媒であった。またエステノを化反応の副反応としてポリマーの主面の切断が起こることが粘度測定およびゲルパーミエーシンクロマトグラフィーから明らかになった。別法としてグリシドールをカチオソ重合し,さらにケイ皮酸クロリドと縮合反応を行なうことによってもポリ(グリシジルシンナート)を合成した。こうして得られたポリマーのガラス転移点,橋かけ速度,相対感度を測定した結果,ポリ(グリシジルシンナ,v,ト)はガラス転移点が室温付近であった。またその橋かけ速度はケイ皮酸ビニルより速く,KPRの約8倍の感度を示すものが得られた。
  • 李 汝桐, 古川 勝敏, 大野 新一
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水中におけるアルミニウム金属の電極過程に対するe,Co 線照射効果を調べた照射(2.4×1 osR/hr)により,アルミニウム電極電位は負方向に数百mVにわたって移動し,またアノード分極電流は増加し,カソード分極電流は減少した。実験結果は,アルミニウム表面のバリヤー層における照射による電子一正孔対の生成に基づいて定性的に説明される。
  • 武本 長昭
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    さきに報告したシュリーレンーダイヤゴナル法を用いて,強聴流動を行なわない場合の水分解時におけるイオン交換膜の脱塩側境膜の状態を観察し,つぎの結果を得た。
    (1)カチオソ膜においてもアニオン膜においても,電圧一電流曲線から求めた限界電流密度は,膜面濃度が0になる条件と一致する。
    (2) カチナソ膜の限界電流密度はアニオン膜のそれよりも高くなり,一方,境膜の厚さもカチオソ膜の方が大であった。しかし境膜における溶質のバランスは,境膜内の濃度分布を考慮することにより,矛盾なく説明できるようである。
    (3) カチオン膜においては,境膜形成時に膜面濃度の低下の方が境膜の厚さの増大よりも先行し,その結果限界電流密度以下でも境膜形成の初期に,短時間の一時的な水分解現象が見られる場合がある。
    (4) カチオン膜においては,水分解条件下では膜面薄層中で振動的濃度変化が観察され,その機構は山辺および妹尾によって見いだされたパルス電流と同一のものと考えられる。一方,アニオン膜では水分解条件下でも境膜内の濃度分布は安定である。
    (5)水分解条件下では,カチオン膜の境膜内の濃度分布は,ほぼ4区分からなる複雑な形態となる。
  • 松本 昭, 平田 和彦, 塩川 二朗
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水溶液中のオキサラトチタン(N)錯体は低圧水銀灯の光照射によりオキサラトチタン(III)錯体に還元され,さらに加水分解を行なって水酸化チタン(III)を析出した。この加水分解のような二次的反応を抑制するために,試料溶液に過剰のシュウ酸を加えてpHを一定にたもち,この状態で光照射を行なってオキサラトチタン(lv)錯体の光分解過程を検討した。
    オキサラトチタソ(llV)錯体およびオキサラトチタソ(III)錯体の組成,ならびに過剰のシュウ酸溶液中におけるこれら二つの錯体の安定性を分光光度法を用いて調べ,それぞれ[Tio(C,O,)2]2,[Ti(C20d)2]の錯イオンとして存在するものと推定した。
    光照射における生成物および発生ガス量の測定結果から,オギサラトチタン(N)錯体は二酸化炭素を発生してオキサラトチタン(III)錯体を生成する還元反応と,二酸化炭素と一酸化炭素を発生して水酸化チタン(N)を析出する加水分解反応を行なうことが認められた。さらに光還元により生成したオキサラトチタソ(III)錯体の光増感反応により,シュウ酸が分解して二酸化炭素と一酸化炭素を発生した。
    光還元反応における還元速度および最終の還元率の値は,試料溶液のpH値と直線関係にあり,水素イオンが光還元反応に関与することを見いだした。
  • 石川 博, 中根 正典, 三宅 義造
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化ユウロピウムと二硫化炭素の反応による硫化ユウロピウムの合成について検討し,さらにその生成物の種々の雰囲気中における加熱変化を調べた。残留酸素の分析には高速中性子放射化法を用い,ユウロピウムの原子佃状態は常磁性磁化率の測定により推察した。
    酸化ユウロピウムは二硫化炭素との反応により500~600℃で若干過剰の硫黄を含むEUsS'を生成し,900~1000℃でEuSを生成した。このとき,高温では生成したEuS中に微量の遊離炭素が認められた。また,Eu3S,は不活性ガス菟流中での熱分解あるいは水素還元によりEuSを生成した。
    これらの方法により生成したEuS中にはいずれも0.2~0.3%の酸素が認められた。またEuSは酸素雰囲気中ではきわめて不安定であり,200℃付近から酸化をうけEu202SおよびEu3Saを生成し,650~670℃で若干の硫黄を遊離したのち,750~800℃でEu20,SO4とEu2(SO4)3の混合物を生勢成した
  • 岩瀬 秋雄, 多田 修一
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 60-63
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジメチルスルホキシドを含むランタノイド錯体のMD結合の性質について直接的な情報をうるためにこれらの錯体を合成し,そのIR吸収特性を調べた。すなわちアゼトソ溶媒を用いて合成したものはM(CIO4)s,n DMSO(MLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,GdおよびTb,n,8MニDy,Ho,Er,Tm,YbおよびLu, n z 7)の組成を有することがわかった。さらに遠赤外領域に現われるM-O(DMSOの酸素の伸縮振動に基づく吸収帯)(408~426 cm-iおよび395~410 cmwwi)の波数ならびに吸収強度はランタノイドイオンのイオン半径に依存して変化することが見いだされた。このことよりM-O結合の強度がランタノイドィオソのイオン半径の減少にともなって増加すること,またはこれらの化合物は7配位錯体と8配位錯体の混合物であることなどが判明した。Dy-Luの間でみられるn値の減少はイナソ半径の減少によって配位子間の立体的障害が大になるために起こるものと推定された。
  • 高橋 辰男, 小磯 武文, 田中 信行
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酢酸塩緩衝溶液中におけるインジウム(III)と亜鉛(III)-trans-1, 2-シクロヘキサンジアミン四酢酸錯体(Zn(III)CyDTA)および亜鉛(1)-エチレンジアミン三酢酸錯体Zn(1)[EDTA]との置換反応について,インジウム(III)のポーラグラフ限界拡散電流の経時変化を追跡する速度論的研究を行ない,置換反応の反応径路を検討し,また,各素反応の速度定数を決定した。
    これらの反応の速度式は,インジウム(III)および亜鉛(III)錯体の濃度に関しそれぞれ一次反応である。このことならびに見かけの速度定数のpH,遊離亜鉛(Ir)の初濃度および酢酸イオンの濃度に対する依存性から,インジウム(III)と亜鉛(1)EDTA錯体どの置換反応は,複核中間体を経て進行する反応と亜鉛(II)錯体の解離をともなって進行する反応とを同時に含む併発反応であり,他方,亜鉛(II)CyDTA錯体との置換反応はインジウム(III)と亜鉛(III)錯体との直接反応は認められず亜鉛(III)CyDTA錯体の解離をともなって進行する反応径路のみを含む反応であると結論した。
    また,各反応径路において,ヒドロキソィンジウム(III)錯イオンを通じての反応がもっとも速く,モノアセタトイソジウム(III)錯体,水和インジウム(III)イオンを通じての反応の1頂に反応速度は減少する。インジウム(III)とEDTAとの錯形成反応速度定数は対応するCyDTAとの速度定数より大きい。この反応速度および反応=機構の相違を配位子の形状の相違および配位状態における立体構造の相違などから考察した。
  • 中村 俊夫
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    銀(1)イオンをつぎの二つの操作(AおよびB)により定量した。
    操作Aの原理銀(1)と(DDC)2C錯体中の銅(1)との交換反応後,遊離した銅(III)をEDTAで滴定する。操作Bの原理:銀(1)試料溶液ec,定過剰量の(DDC)Naおよび定過剃量の銅()を加え,生成する(DDC)Agおよび(DDC)2Cu沈殿を炉過したのち,過剰の銅(IIII)をEDTAで滴定する。
    操作A : o. 01 mol/l(DDC)2Cuクロロホルム溶液10 mlを入れた100 mlの分液漏斗に,クロロホルム10,ml,銀(1)試料溶液およびリン酸一水素ナトリウムークエン酸系緩衝溶液(pH 5. 0)10 mJを入れる。水溶液相の全容を水で正確に30m1にする。約15分間ふりまぜたのち,約10分間瀞置する。水溶液相から正確に一定量(15~20 ml)をエルレンマイヤーフラスコにとる。メタノール10 m1を加え,さらに水で30,mlに希釈してPANを指示薬とし,0. OO1 mo1/l EDTAで滴定する。
    操作B銀試料溶液を水で25 mlにうすめて,4 × 102:mo1 1(DDC)Naの10%メタノール水溶液5,mlを加える。約10分間静置後(DDc)Ag沈殿を済過,洗浄し,炉液に2×10-2 mol/lの銅(五)溶液5m1を加える。約10分間静置したのち,(DDC)2Cu沈殿を炉過し, pH 4.0の酢酸一酢酸ナトリウム緩衝溶液を用いて洗浄する。このミ戸液にメタノール20 mlを加えてこの溶液中の銅(III)をPAN指示薬在存下で。 01 mo1/l EDTAで滴定する。
    操作Aによってa05~6mgの銀(1)が,また操作Bによって6~14 mgの銀(1)が定量できる。
  • 内海 喩, 奥谷 忠雄
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ヨウ素とアジ化ナトリウムはそのままでは反応しないが,硫黄化合物が微量でも存在すると,これが 触媒になりつぎの反応が進行することが知られている。
    2NaN3+12 . 2 Nal+3N2
    この硫黄化合物の触媒作用により,ヨウ素が還元されることを利用する極微量のチオ硫酸塩の吸光光度定量法を研究した。
    KIO3-KIの混合溶液(KIO3として1×10 3 N, KIとして1N)1 mlを共せん付ガラス管にとり,1N酢酸1 mlと20 9/100 mlのアジ化ナトリウム溶液を3mz加える。25℃に準もってあるこの溶液に同じ温度の試料溶液5 mlを加えて混合する。混合してから3分後の溶液の吸光度を350 nmの波長で測定する。
    本法によれば5mZの試料溶液中O, 01~0,15 PPmのチオ硫酸塩の定量が可能であり,チオ硫酸塩:0.1PPmにおける標準偏差は0,001で標準偏差パーセントは0.91%で再現性がよい。なお鉄(III),銅(III),亜硫酸イオンおよびシアソィオソはチオ硫酸塩の定量を妨害する。
  • 本里 義明, 平山 忠一, 諸富 耕一, 国武 典彦
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酢酸ビニルと塩化ビニル,酢酸ビニルと塩化ビニリデンの共重合体を懸濁重合によって製造し,これ.らをイオウを用いて橋かけして2種類の橋かけ共重合体を製造した。メタノール,水酸化ナトリウムの水溶液を用いて上記共重合体をケン化して,橋かけビニルアルコール,塩化ビニル共重合体ゲル,橋かけビニルアルコール,塩化ビニリデン共重合体ゲルを得た。ゲルを充テンしたカラムを通して,ポリエチレングリコールやポリ酢酸ビニルを溶出すると,分子量の大きな物質はゲル相から完全に排斥され,一方,分子量の小さな物質はゲル粒子に浸透することが明らかとなった。その結果,溶質分子はゲル床を通過する間に二つのグループに分別された。この挙動は一般のゲルの挙動といちじるしく異なっている。この原因として,ゲルの表層は薄く橋かけし,ゲルの内部はゆるぐ橋かけしているかまったく橋かけしていない構造からなることが考えられる。
  • 牧 康行, 村上 悠紀雄
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    薄層クロマトグラフィーによってモリブデン酸過テクネチウム酸,ヨウ素酸,ヨウ化物およびルテニウム酸の各イオンの分離を行なった。吸着剤にセッコウ5%を含むアルミナを,展開剤にアセトソーアンモニア,メタノールーアンモニアおよび水 アンモニアの混合液を用い,血液のアンモニアの混合比を変えて検討したところ,水 アンモニア混合液を用いたとき,各イオンを同時に分離することができた。水 アンモニアの混合比に関係なく,これらのRf値はMoO2":0.55, TcO, :0.82, IO3 :0.30,1":0. 92,RuOS :0.00であった。さらにこの展開系において各イオンの挙動を調べるとRuO,2 はRuO3に還元されて原点にとまり, TcO4"と はアンモニアの有無に関係なく移動し, MoOi2 とIOゴはアルミナに吸着したアンモニア蒸気によって移動状態が大きく影響される。すなわち,アルミナ吸着剤へのアンモニア蒸気の吸着は急速に行なわれ飽和状態になるeMoOa2-およびIO3雨のRS値の変化も同じような傾向がみられることがわかった。
  • 川本 博, 赤岩 英夫
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 90-94
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-テノイルトリフルオロアセトソ(TTA=Htta)によるバナジウム(V, IV)のベンゼンへの抽出で起こる協同効果について検討した。バナジウム(V)-TTA系での1-ブタノール(BuOH)による協同効果はエステル化した錯体の生成に起因し,抽出反応は VOボ+2 Httaerg+BuOH。rg F it VO(tta)s(BuO)。9+HaO+H で表わされ,抽出定数はK=1,7x103であった。一方,トリ-n-オクチルポスフィソナキシド(TOPO)を付加錯体形成剤に用いた場合の抽出機構は VO+Htta,,g+TOPO。r Ptt VOs(tta)(TOPO)。rg+H" によるとして説明される。
    バナジウム(N) TTA系では VOS+ 2Htta。9 Pt VO(tta)x,e,g 2 にしたがってベンゼン 抽出されたTTA錯体が中性配位子(S)と付加錯体(1;1)を生成するために協同効果が起こり, VO(tta)2.。,9+S。,g a VO(tta)sS。,9 付加錯体の安定度は配位能力の高い中性配位子を用いた場合に大きく,協同効果はTOPO>イソキノリソ>キノリン>1-ブタノールの順序で減少した。
  • 村井 幸一, 竹内 せい, 木村 誓
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    臭化ドデシルによる置換ピリジソの四級化速度をメタノールおよびジメチルホルムアミド(DMF)中で測定し,ピリジソの反応性におよぼす置換基および溶媒の効果を検討したe反応速度はメタノール中よりもDMF中において大きく,置換基の電子供与性とともに増大を示した と 5 との間に4 アミノ基をのぞいて等動力学的関係が認められた.置換ピリジソのPKaとlog kとの間には, DMF中の4 アミノ基をのぞいてlog k=0.157 1 5,250(DMF中,50.C),1 g k=O.136 Ka 4. 856(メタノール中,75℃)であらわされるよい直線関係が得られた.σを用いたHammett則関係からは4 位のアミノ,ベンゾイル,アルコキシカルボニル,シアン基などが を示した.これらの偏僑はピリジソ環の窒素原子に基づく 電子の局在化と置換基における溶媒和変化に起因するものであることを考察した.
  • 松田 勗, 山田 善三
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 99-105
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    6種の鎖状および環状ヘキサジエソを酢酸中,130~140Cにおいて当モル量の酢酸水銀(皿)と反応させ,アセトキシル化生成物と原料ジエソの構造との関連を検討した.1,5-,1,4-および1, 3-ヘキサジエソからはモノおよびジアセタートの混合物が得られ,モノアセ馬脳ト対ジアセタートの生成比は酢酸水銀(皿)に対するジエソの割合を増すと増加した.2,4-ヘキサジエソ,1,3-シクロヘキサジエンからはジアセタートのみが生成し,1,4-シクロヘキサジエソからの生成物はベンゼンのみであった.1,5-ヘキサジエンから少量の4-アセトキシシクロヘキセソと1,4-ジアセトキシシクロヘキサンが,1, 3-シクロヘキサジエンからはフェノールが副生したが,主なるアセトキシル化物の構造上の特長はつぎのとおりであった.1)1,5-,1,4-ならびに1,3-ヘキサジエンから得られたモノエステル,ならびに前二つの非共役ジエソからのジエステルは2個の二重結合を含む.2)共役ジエンからは-C(OAc)-CH=CH:-C(OAc)-あるいは-C(OAc)-C(OAc)-CH=CH-の構造単位をもつモノエンのジアセタートが生成する.
    このようなアセトキシル化物が生成することは,Winsteinの提面している,アリル型水銀化合物の生成,ひきつづく-frozen型反応およびアリル型アートの部分の異性化を含む径路によってうまく説明できた.
  • 小暮 政邦, 対馬 好文, 立薗 邦人, 藤井 修冶
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 105-109
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報において,BF3一水系錯体のうちジプノソから安息香酸を得る反応(A切断反応)に強い触媒活性をもつものはBF3.H20であることが明らかになった.
    本報では,BF,,H20を前もって加熱して反応に使用した結果, BF3,H20は加熱によりB F3を遊離 して触媒活性が低下することがわかった.さらに,BF3の遊離を防止する目的で,ジプノンあるいはアセトフェノソとBFS,H,Oの反応系中にBF3ガスを導入した結果, BF3,H20に対して2倍モル以上のBF3ガスを導入した場合にはBF3の遊離による触媒活性の低下を防止できた.
    また,上に述べた反応条件下で錯体量の変化を検討した結果,ジプノンとB F3,H20の反応ではBF3,HaO量がジプノンと等程度になるまで安息香酸収率が急激に増加するのに対し,アセトフェノンとBFg,H20の反応ではBF3,H O がアセトフェノンの121程度になるまで急激に増加した.これらの結果は,アセトフェノソ2分子からジプノン1分子が生成されることを考えあわせるとよく一致する.
  • 山口 彰宏, 岡崎 光雄
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 110-113
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    亜リソ酸ジフェニルと5-ニトロフタルアルデヒド酸との反応により,好収率で6-ニトロフタリド-3-ホスホソ酸ジフェニル[1]を合成した。[1]をジメチルホルムアミド中,水素化ナトリウムの存在の下で芳香族アルデヒドと反応させると,相当する3-ベソジリデン-6-ニトロフタリド誘導体が室温において高収率で得られることを見いだした。
    [1]と芳香族ニトソ化合物との反応において,対応するフエニルイミノ化合物は得られず, N-フェニル-4-ニトロフタル酸イミド誘導体が得られた。[1]とヨウ化メチルとの反応で,3-メチル-6-ニトロフタリド-3-ホスホン酸ジフェニルが得られた。
  • 篠田 喜一, 志田 隆文, 大束 貴章, 卯月 正, 横山 英司
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 114-117
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    anti-2,3,4, 5,6-ペシタクロロベンズアルデヒド=オキシム[1 b]が,ペソタクロロベンズアルデヒド[2]のヒドキシルアミンモノスルホソ酸[3]によるオキシム化によって,蒋異的に生成する,従来から知られている2,3,4,5,6-ペンタクロロベソズアルデヒド=オキシム[1]はsツ-オキシム[la]である。これらの異牲体関係をアセチル化物[5a],[5b]の脱酢酸速度, NMRから決定した。熱,酸でanti→synの異性化が起こり,光でsyn→antiの異性化が起こる。
  • 小西 謙三, 梅本 弘俊, 山本 雅司, 北尾 悌次郎
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 118-122
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    チオフェノールとジケテンとの反応に少量の濃硫酸を添加するとアセトアセチルチオフェニルエステルがきわめて容易に生成する。とくに等モル量の100%硫酸がこの反応における有効な触媒となり,70%硫酸,70%過塩素酸,濃塩酸などの含水酸触媒やP-トルエソスルホン酸のような有機酸触媒,さらにはトリエチルアミシのような塩基触媒は有効でなく,濃硫酸の量を多くしても不利であった。この反応を置換チナフェノールやチオナフトール類に適用しても,対応するアセトアセチルチオアリールエステルをそれぞれうることができた。これらの事実に基づいて,この反応の機構を考察した。またこのアセトアセチルチオアリールエステルをポリリン酸によって画図脱水すると4-メチル-2H-ペソゾチオピラソ-2-オン誘導体をうることができた。4-メチル2Hベソゾチオピラソ2オン誘導体のケイ光性は対応するクマリンやカルボスチリル類にくらべ,エタノール中では劣るけれども過塩素酸中ではすぐれたケイ光強度を示す。
  • 宮腰 哲雄, 大道 弘昭, 斎藤 鐘次郎
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 123-125
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メチルビニルケトン(MVK)[1]はアルコール溶媒中において,塩化コバルト(II)-または塩化ニヅケルの水和物とトリフェニルボスフィソの混合系を触媒として,空気中,室温で容易に二量化し,収率約50~60%,選択率100%で3-メチレン-2, 6-ヘプタンジオン[2]を与えることを見いだした。収率はホスフィン/金属モル比約3で一定となる。塩化ロジウム-,塩化ルテニウム-あるいは塩化パラジウム-トリフェニルポスフィン系触媒を用いた場合には[2]のほかにB-エトキシエチルメチルケトン[3]も生成した。
    触媒として,金属塩のみを用いた場合はMVKの二量化反応は起こらず,一方,トリフェニルポスフィソのみを用いた反応では数%の収率で[2]が生成した。プロトン性溶媒の存在が二量化症応には不可欠である。
  • 田中 基雄, 関口 辰夫, 関谷 茂
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 126-131
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フルオレソを酸化してフルオレノソとしたのち,五塩化リンで塩素化することにより9,9-ジクロロフルオレソが生成する。これを芳香族ジアミンあるいは複素環ジアミンとともに不活性有機溶媒に混合し,ジアミンの種類により反応促進剤として塩化亜鉛を加えて加熱した。実験の結果,13種類の顔料が得られた。これらはフルオレソ2分子とジアミン1分子がアゾメチン基によって結合した対称型構造を有すると考えられ,つぎのような性質を示した。
    まず色調は全般的に緑黄色ないし黄カッ色を呈し,ベンジジン系顔料では置換基の影響で,またアンラキノソ系顔料では共役系の影響でそれぞれ黄色ないし黄カヅ色になった。耐溶媒性はP-フエニレンジアミソ,ペソジジン系および1,4-ジアミノアントラキノから賦した顔料は数種類の有機醗にわずかに溶けたのに対し,複素環系ジアミン,1,5-および2,6-ジアミノアントラキノンから誘導した顔料はすぐれた堅冒ウ度を示した。一方,耐光性は4,6-ジアミノ-5-ニトロピリミジンから誘導した顔料以外はいずれも良好で,ジアミンの種類による影響は少ないことが認められた。
  • 榎 吉二, 谷 敏行, 桶田 秀雄, 山神 喜三郎
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 132-136
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    無溶媒系におけるテレフタル酸とエチレンオキシドとの反応に対する触媒の効果について検討した。反応はオートクレーブを用いて行ない,結果は反応速度に対する触媒効果と,反応生成物をそのまま重合して得られるポリエチレソテレフタレート(PET)の色調におよぼす影響から評価を行なった。 有機アミンと第四級アンモニウム塩を主体とする約100種の化合物について検討した結果,つぎの事項が明らかになった。
    (1) 触媒作用は主として分子構造により左右される。 第一級,第二級,第三級アミンについては,(a)触媒作用はつぎの順に増加する。一級く第二級く第三級。(b)触媒作用は炭素鎖の長さによっては影響されない。(c)直鎖アルキルアミンは相当する分枝アルキルアミンよりも有効である。(d)アルキル基にOH基を導入すると触媒作用が減少する。
    第四級アンモニウム塩については,(a)メチル基の存在により触媒作用は低下する。(b)アニオンの種類による触媒作用の差はほとんど認められない。
    (2) 複素環式化合物は一般的に好結果を示さない。
    (3)有機アミンについて,その塩基性度(塩基牲の強さ)と鯨媒作用の間に相関関係は認められない。
    (4)触媒作用と直接重合により得たPETの色調に基づいて判断した結果,トリアルキルアミン,第四級アンモニウム塩が本反応に対しすぐれた触媒であることが判明した。
  • 中山 充, 江口 鎮子, 松尾 昭彦, 林 修一, 菱田 真三郎, 加藤 義昭
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 137-145
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4-メトキシ-[6],3,4-ジメトキシ-(ハルケンジン)[1],4-エトキシ-3-メトキシ-[12]-プロ(31,2 6,7)クマリンとこれらのジヒドロ体[7,8,13]の質量スペクトルを示す。これらの開裂様式を高分解能質量スペクトル,準安定イオンの測定,重水素メチル誘導体の質量スペグトルとの比較などから種々検討した。
    ハルケソジソ[1]のスペクトルは主径路としてまず3位のメトキシ基のメチルラジカル(CH3)が脱離し,引きつづきCO, CO, CHs(4位), COと開罪する。4-エトキシクマリン[12]はまず4位の側鎖からエチレンが脱離してm/e232のイオンが生成し,その後は4Lヒドロキシクマリンと類似の開裂を示す。
    以上の結果,3,4-ジアルコキシフクマリンの質量スペクトルは構造に関する重要な情報を与えることを見いだした。
  • 林 治助, 末岡 明伯, 大北 順二, 渡辺 貞良
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 146-152
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セルロース1および皿からおのおの生成した皿またはNの間には赤外吸収スペクトルなどの相違があるが,X線的にはその差は認あられていない。そこで従来ほとんど注目されていない子午線干渉の測定ちを中心に,これらをX線的に詳細に検討した。1およびIIからおのおの生成した皿はともに赤道線干渉強度曲線がよく類似している。しかしながら子午線干渉強度曲線には明確な相違がみられ,相対干渉強度比r,1(02。)11(od。),は1からの皿が2/1であるのに対し,皿からの皿は=1/2であった。また層線干渉にも差のあることを認めた。したがって前者は皿1,後者は皿と区別さるべき異なる構造であることは明らかである。yにも同様の現象がみられた。すなわち1および皿からおのおのの生成しte Nはほとんど同一の赤道線干渉強度曲線を示すが,子午線干渉に差がみられ1からのNは 1/8,皿からのNはr=2/3であった。前者をNI,後者をN llと区別した。
    皿1と皿1 llの間では近接分子鎖問の相互配置は近似しているが,分子鎖形態が相違しているものと考えた。NIとN llの場合も同様に考えた。
  • 林 治助, 末岡 明伯, 渡辺 貞良
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 153-159
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らはセルロースの結晶変態にはセルロース1および皿のほかにIII1,IIIll NIおよびNnの存在することをX線的に明らかにした。本論ではこれら6種の結晶変態の相互転移を詳細に検討した。
    その結果,相互転移において最初の出発原料の結晶構造がセルロ一ス1か1かによって生成される結晶変態は限定され,2グループにわけられることが明らかとなった。すなわちセルロース1系のL皿1およびNIとlll系の皿,皿および恥である。1系の中では自由に相互転移ができる。しかし系外へはマーセル化によって皿になり得るのみである。一方,皿系内での相互転移は可能であるが,野外へは1へはもちろん皿1へもNIへも転移できない。この二つの系の分類において単位胞の類似性はなんら影響を与えず,子午線干渉にみられる相違による分類と一致した。これら構造履歴現象を説明するために1系および皿系ではおのおの分子鎖自身の形態に相違があると考え,1系の結晶変態はいずれも"bent型",皿系の結晶変態はいずれも"bent-twisted型"の共通した分子鎖形態を有すると結論した。また1VIを長時間酸加水分解処理することにより1へ直接転移しうることを見いだした。
  • 林 治助, 末岡 明伯, 渡辺 貞良
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 160-167
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セルロースの各種結晶変態から得られる酢化物およびそのケソ化物の結晶構造をX線回折法により検討した。
    繊維状醇化反応において,セルロースl系のl,lll1およびNIからは三酢酸セルロース(T,A,C)lが,ll系のll,lllおよびN llからはT. A. C llまたは1と皿の混合物が得られ,原料セルロースの結晶構造と得られるT.A.Cの結晶構造との問に関連性は見いだされなかった。しかしこれら結晶化しない酢化物をケソ化すると1系からのものはいずれもセルロース(Ce11.)1に,五系からのものはいずれもCe11. illに再生される。すなわち,セルロースは酢化およびケン化後も原料の系を記憶している。この現象は両系の問で分子鎖形態に相違があるためとして合理的に説明できる。また1系内ではCe1LIが,皿学内ではCell.皿がもっとも安定な構造を有していることがわかった。
    溶解法門化反応において,1系および皿系ともにT.A,C皿を生成する。また,これら酢化物はすべてCe11,1にケン化される。溶解過程で工系の分子鎖形態はより安定な1系の分子鎖形態に転移すると考えられる。
  • 三崎 敏一, 大津 隆行
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 168-174
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1, 3-ジオキンランおよびテトラヒF Pフランがある種の金属アセチルアセトナート[Me(acac)x]で,塩化アセチルの存在下0℃で重合し,ポリエーテル構造からなるポリマーを与えることを見いだした。Me(acac)謬および塩化アセチルそれぞれ単独では開始活性を示さず, Me(acac)xのうちではFe(acac)3との二元系がもっとも高い活性を示した。Fe(acac)3-CH3COCI系を用いた場合,重合は[CH3COCl]/[Fe(acac)3]のモル比が2以上で起こり,それ以上モル比が大となるとともに重合速度は大となった。また,生成ポリマーの収率および還元粘度は重合時間とともに増大した。この場合,誘導期が現われるが,それはこの開始幽遠を熟成することによって短縮された。ESRスペクトルをFe(acac)3と塩化アセチルの反応を通じて測定したところ,塩化鉄の生成が確かめられた。したがって,重合はFe(acac)3と塩化アセチルの反応を通じて生成したアセチルカチオソあるいは塩化鉄によって開始されることが明らかとなった。
  • 吉永 俊一, 松本 勝, 永石 俊幸, 原 泰毅, 長田 英世
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 175-182
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル(PVC)にSb,03を含有せるPVCを試料として,脱塩化水素機構,難燃効果およびその機構を検討した。 PVC単独の場合よりやや低温200℃から脱塩化水素し,400℃以上で分解生成物の酸化,燃焼は485℃以上である。また初期の反応はSb203によるPVCの酸化反応である。180℃で二酸化炭素を発生したり,カルボニル類を生成し,PVCの脱塩化水素が促進される。それとともにPVCとSb203,脱塩化水素とSb203の併発反応によりSbCl3が認められる。このSbCl3の融解熱 蒸発潜熱によりPVCの温度上昇を抑え,またSbC13の雰囲気ガスが分解生成ガスの酸化を抑制する。さらに発火温度,発火待ちの活性化エネルギー,発熱量においてもSb203の難燃効果が認められた。 i熱分解ガスクロマトグラフィーの結果から熱分解生成物にPVC単独の場合より, Sb208含有のPVCに,ベンゼン,クロロベンゼンに減少の傾向が認められた。
  • 大西 隆一郎, 石倉 精三, 田部 浩三
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 183-184
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The surface acidities of nickel and cobalt sulfates were measured by using. a series of nitr6aniline iridic'slators having very similar structures with the aid of a visible sp. ectrophot-omgtgr The present method may be applicable to the aci dity measurem. ept. of s. trongl golo, red s. opm/i. dEBoth nickel and cobalt Sulfates were found to show maximum acidities when. calciped a-t 3sOoC, fiith is result was in good agreement with that ebtained for nickel. sulfaite by usin. g. Han paett fi-d-ich-i6-rsrm etc. The acirdity m-aximum of nickel sulfate was highgT tban tha t. of coba t. sulfate, gV eVx pueu6 ffrom the diffe rences between the electronegativities of both metal ions and between their catalytic activities already repoxted.
  • 完戸 俊助, 増田 芳男
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 185-188
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Thermal decempesition of Na, Mg, K, Ca, Mn, Co, Ni, Cu, Zn, Sr, Cd, Ba and Pb formates were investigated by use of gas chromatography and thermogravimetry.
    (1) Upon the decompositions of Na, Mg, K, Ca, Mn, Zn, Sr, Cd and Ba fermates, H2, CO and CO2 were formed as the main gaseous products, together with small amounts of CH4, HCHO, HCOOCH3 and CH30H. These organic compounds were formed by secondary reactions from the othetgaseous products under the catalytic actions of the solid products (carbonates or oxides), (2) The deconipositions of Co, Ni, Cu and Pb formates proceeded through main proCess (a)and side process (b).
    The molar ratio of MO te M in the products was highest in the case of the decompqsition of Co formate and was about 50%. ln the case of Pb formatei, two kihds of weak catalytic action of solid products were observed, i. e. Pb metal produced autocatalyzed the decomPosition reacti n itself, but, PbO catalyzed the formation of organic compounds except for CH4. How- ever in the other cases, the autocatalysis of metal was pred minantly observed.
  • 田中 啓一
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 188-190
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The role of functional grodPs of gel atin to combine with zinc ions was studied by means of polarography and equilibrium dialysis.
    Carboxyl, imidazole and amino groups of gelatin were blocked chemieally by esterification, carboxamidomethylation and aoetylation, respectively. Polarography and equilibrium dialysis experiments showed that zinc ions bound less with each modified gelatin than with original gelatin.
    If the binding sites were assumed to be imidazole groups, an approximate calculated value for the associatioti constant of zinc-gelatin complex (log K=3, 8 at pH 7.5) was much larger than the first association constant of zinc-imidazole complex.
    The result suggests that zinc ions form chelate compound with gelatin.
  • 藤永 太一郎, 伊豆津 公佑, 桜 幸子
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 191-192
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The equivalent iconductivities of alkali, alkaline earth, and tetraalkylammonium perchlorateg were mehsured in hexamethylphosphoramide(HMPA). The ionic equivalent conductivities of catiens obtained on the assumption that of the perchlorate ion to be 15, 5 were Li 5.2, Na 5, 8, K+ 6.1 Rb+ 6.1, Cs; 6.4, Ca2 8.6, Sr 8.6, Ba2 8.4, Me4N 7.9, Et N 9.3, Pr. pt 6.8, BuiN.5.9, and Hex, N 4.5. The Stokes law radius of a monovalent cat-ion is smqll-est for Et 4N. The solvation number obtained from the effective ionic radius of Robinson and Stokes is from one to two for a lkali ions and apProximately three for alkaline earth ions.
  • 北脇 六郎, 勝田 収
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 193-195
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    During the/ study on a flame retardant. for cellulesic materials, plastics, etc., it has been found that water-insoluble guanylureq, polyphosphate precipitates when an aqueous solution of guanylurea sulfate is added to that of sodium polyphosphate, h, , aying a mean chain length more than 5, and that this substance has a good fiame retardancyt The precipitated guanylurea polyphosPhate was a white fine powder insoluble in most organi solvents and decompbsed at 314to 317oC.
    To test the flame reta'rdancy of guanylurea polyphosphate following to JIS A 1321 (Testing Meth' d f, r, mbustibility, fll terna1 ish Material and Pr cedure, f Buildings), was prepared he e Preof paint whic 1 ontains the ame retardant ased, : n. this substance Fro the result of a face test with the paint, it has been con med that guanylurea polyphosphate has not only a good flame retardancy but also the function. to reduce the generation of. smoke.
  • 香山 滉一郎, 橋本 雍彦
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 195-197
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    High purity TiFs was prepared by the thermal decor sition of arpmonium tetrafluorotitanate(III). TiF3 was prepared: m re easily by this: method than the previdusly rep rted ones. When titanium metal was dissolved in 55 wt% hydrofluoric acid in an argon atmospherc until hydrogen ev 1uti n stoPPed, the dar: k vi let precipitate was formed Ammonium tetrafluorotitanate(III)was formed by the addition of excess ammonium fluoride to the solution containing this precipitate. TiFs was easily prepared by the thermal decomposition of ammonium tetraflueretitanate (III)in a hydrogen or an arg n atmosphere at 600-650 C.
    Ammonium tetrafluorotitanate(III)colered yellowish pin: k and oxidized gradually in an air.
  • 岩野 俊彦, 横田 俊幸, 大沢 俊行
    1973 年 1973 巻 1 号 p. 197-200
    発行日: 1973/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The possibilites of applying the zone-melting technique to a separation of xylene-ev, a'diamine(XDA) isomers were investigated.
    The starting sample(f, p.14.0)used in this experiment was a mixture containing about 30fe 50f P-XDA in m-XDA.
    In a glass tube container of 9 mm 1, D., the zone passages were carried out for 1. v8 times at a fixed zone travel rate of 32 mm/hr in the room kept at 5"C.
    After the repetition ef refining operatiens in series, a material of freezing point 62, 1"C was finally obtained, The final product was identified as highly pure p-XDA by compqFing-!tS'infraied spectrum and freezin- @point with those of an auihehtic sample ef prXDA, The yield of the final product in the last operation was 18%.
    t Studies on Zone Melting for Purification ef Organic Cempeund. IV.
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