日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1973 巻, 2 号
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  • 横野 哲朗, 下川 繁三, 福井 洋之, 相馬 純吉
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 201-206
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ピリミジン系ヌクレオシド(シチジン,チミジン)と反磁性2価金属イオンの相互作用をDMSO溶媒中でプロトンNMR(PMR)法により調べた。2価金属塩としてMgCl2, CaCl2, SrCl2, BaCl2, ZnCl2, CdCl2, HgCl2を用いた。Mg2+, Ca2+, 金属イオンはシチジン塩基部の3Nと4NH2に結合している。一方,Sr2+, Br2+, Zn2+, Cd2+,Hg2+ の場合にはシチジン塩基部の3Nまたは4NH2のいずれかに結合していることが判明した。またそれらの金属イオンによりシチジンのアミノ基は自由回転が束縛されて二本線が観測された。その障害ポテンシャルはMgCl2, CaCl2, ZnCl2でほぼ10kcal/molと求められた。シチジン塩基部と金属イオンが1:1錯体を形成すると仮定して平衡定数を求めた。
    チミジン塩基部はIIa族金属イオンと弱い錯体を形成し,金属イオンはチミジン塩基部の分子面上に存在することが判明した。他方IIb族金属とはなんら相互作用は認められなかった。
    核オーバーハウザー効果(NOE), によりグリコシド結合に関する立体配座を決めた。シチジ-Ca2+系はsyn-likeが優勢であり,チミジン-Ca2+系はsynとantiの中間域が優勢であった。
  • 中垣 正幸, 嶋林 三郎
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 207-213
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    低分子電解質水溶液の比導電率κは,粘度ηの増加とともに低下することはWaldenの法則として知られている。しかし実験結果の解析の結果,これは媒質の粘度の増加によるものではなく,添加した非イオン性溶質がイオンの移動を妨げているためであることがわかった。
    添加物質が低分子物質の場合,溶液の比粘度よりEinsteinの式を用いて求められる溶質の体積分率φに対しては,κの低下は物質にかかわりなく1本の直線であらわされることがわかった。φは溶質に水和する水の体積をも含むものであり,したがって水和した溶解がイオンの流れを妨げると考えられる。この考えを,ポリピニルピロリドン(PVP),ポリゼニルアルコール(PVA)にも拡張して残基あたりの水和量N(モル H2O/残基モル)を求めたところ,それぞれ2~5, 1.5~2.0となり既報の結果とよく一致した。
     このことから水溶液中の高分子は,流体力学的には膨潤した糸まりの中を溶媒は通過することができず,糸まり全体が粘度に寄与するとみなされるが,比導電率測定のさいにおけるイオンの流れは高分子の糸まりの中をも通過することができ,強く水和した高分子の体積のみがイオンの移動を妨げていると結論できる。また電解質濃度を一定にして電解質の種類をかえると,高分子の水和量Nは離液順列にしたがって低下し,この傾向は高分子の固有粘度[η]の低下の順序と一致する。しかしLiCl, Na22SO4の場合には,イオンの水和半径が大きいためにNの値に見かけ上異常の生じることがわかった。
  • 小出 力, 尼子 東吉, 高木 幸延, 沢田 和弘
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 214-219
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    示差熱分析法によりBr2(CH3)C-C(CH3)3[1]の固相転移点は-59℃であることがわかった。固体の誘電率は転移点で急激な変化を示し高温相では高い値を,低温相では低い値を示した。室温における粉末X線解析により,室温における結晶は単位格子に2分子を含む稜長7.71Aの体心立方格子であることがわかった。結晶と分子の対称の比較から結晶格子中での分子は分子軸を単位格子の四つの体対角線のおのおのに平行ならびに逆平行方向に配向するとともに,C-C軸のまわりに少なくとも3回の対象をもつ統計的構造をとることがわかった。
    Br(CH3)2C-C(CH3)2Br[2]の-89~90℃の温度範囲における結晶とCCl4溶液における分子形を赤外,ラマンスペクトル法によって研究し,これらの分子形はトランス形であることを明らかにした。
    転移エントロピーの解析を行ない[1][2]の転移のメカニズムについて考察した。[1]においては転移点で前に記した統計的分子配向をとるとともに,分子内回転が励起されるものとみられる。[2]の-89℃の転移においては分子内のBr-Br軸のまわりに4回の対称を得るものと結論される。
  • 林 良一, 久野 洋
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 220-224
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水を分散媒とする炭酸カルシウムのサスペンジョンについて,ラウリル硫酸ナトリウムおよびピロリン酸ナトリウムを分散剤として用い,分散度とサスペンジョンの流動性の関係を求めた。
    分散のよいものはNewton流動を示し,分散の悪いサスペンジョンは擬塑性流動を示したが,これらの系について,Cassonの与えた-の関係が成立した。さらに,この定数k1,およびk2からJ=α+β(η0D)の定数αおよびβを求めた。
    分散質の分散単位粒子の大ききと関係するαは,分散度と関係なくほぼ一定の値となり,凝集力と関連する定数であるβは,分散度をあらわす50%粒径と並行した変化を示した。この結果から,サスペンジョンの流動性と分散度との関係は,Cassonの式およびその定数により関係づけられるものと考えた。
  • 鳥居 一雄, 堀田 正己, 小野寺 嘉郎, 浅賀 質
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 225-232
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2種の天然産含フッ石凝灰岩およびM.S.5Aによる窒素,酸素混合ガスの吸着実験結果を報告する。宮城県白沢産のモルデンフッ石系凝灰岩および秋田県ニツ井産の斜プチロルフッ石系凝灰岩を実験に用いた。窒素,酸素混合ガス吸着実験は25,50,75および100℃の温度および1,3および5kg/cm2の圧力の条件下で行なった。0~7kg/cm2の圧力範囲における3種のフッ石に対する窒素および酸素の吸着等温線を25,50,75および100℃の各温度で測定した。25℃,3kg/cm2および気相中の窒素モル分率0.5の条件下におけるモルデンフッ石系凝灰岩,斜プチルロルフヅ石系凝灰岩およびM.S.5Aの分離係数はそれぞれ4.7,3.0および3.3であった。純ガスの吸着等温線から混合ガス吸着データを予測する熱力学的解析法により,上記3種のフヅ石に対する窒素,酸素混合ガス吸着について検討したところ,モルデンフッ石系凝灰岩の場合にのみ,うまく適用できることがわかった。
  • 樋口 光夫, 鈴木 恭治, 千手 諒一
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 233-239
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セルロース,デンプン,およびポリビニルアルコールのアミノエチル誘導体を用いて,希薄懸濁液の凝集に対する凝集剤の分子量,アミノ基密度,および分子形状の影響を検討した。凝集程度の判定は30分静置後の上澄液濁度によって行なった。また懸濁粒子に対する高分子アミンの吸着および粒子の電気泳動実験をあわせ行なって凝集機構を検討した。
    高分子アミンの凝集能はアミノ基密度にほぼ比例的であるが,分子量の効果(約2万から8万の範囲では)はそれほど大きくなく,出組のフレキシビリティや形状の影響も比較的小さい。
    凝集に要する高分子アミンの最小添加量は飽和吸着量の約10%であり,粒子の再分散は添加量が飽和吸着量に達するまでは起こらない。電気泳動実験から,良好な凝集が起こる領域においては表面電位がプラスの粒子とマイナスの粒子が混在することがわかった。これらの観察から,高分子アミンの不均一な吸着が起こって表面荷電プラスの粒子,マイナスのままの粒子,あるいは表面の一部プラスー部マイナスというように分極した粒子が生じ,このため粒子は相互に反対荷電部で結合して凝集す為,と推定した。
  • 山口 力, 田部 浩三
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 240-244
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルミナおよびシリカ・アルミナを触媒とするイソプロパノールの脱水反応を行ない,その水素同位体効果を反応温度160℃および170℃,アルコール圧5~18 mmHgで求めた。アルミナでは得られた一次同位体効果の値が大きいことから,反応はE2一理想型の反応中間体を通ることを,また,シリカ・アルミナでは同位体効果の値が小さいことから,E1型反応であることを結論した。
  • 中村 隆一, 森田 好則, 越後谷 悦郎
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 244-249
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    混握法MoO3-Al2O3触媒およびMoO3-SiO2触媒上でのプロピレンの不均化反応を通常の固定層流通系反応装置を用いて行なった。
    原子比の異なる混捏法MoO3-Al2O3触媒での不均化反応活性は,窒素処理の場合10 atom%Moで最大となり,この組成のものは経時変化もなかったが20atom%Moでは活性は低く経時変化もいちじるしかった。一方,水素処理の場合には20atom%Moがもっとも活性が高かったが,含浸法の場合と比較して10 atom %Mo以下の触媒では窒素処理の場合との差はかなり小さかった。またMoO3-SiO2触媒は含浸法の場合と同様に窒素処理では活性を示さず,水素処理では10 atom%Moで最大活性を示し,MoO3の量が増加するにつれて活性は減少した。
    これらの結果は,触媒の酸性度,Mo5のESR相対強度,触媒の水素による還元性状,およびErling Rostらによる磁化率の測定値など触媒物性と深い関係があり,前報で示唆したように活性点がMQ5+より低原子価で,しかも比較的分散しているMoと考えると実験結果がよく説明できる。
  • 大倉 一郎, 慶伊 富長
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 250-253
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報でナッタ,プロピレン重合中に2種類のESR吸収,すなわちg値1.94と1.97が存在することを報告した。本論文ではg値1.94のESR吸収に焦点を絞り,この吸収と重合活性点との関連およびいかなる構造を有するか解明することを目的とした。ESR測定は直径4mmの石英製測定管を使用し,室温で行なった。
    g値1.94の吸収は三塩化チタンからの塩素引き抜き作用を有する物質の添加あるいは放電処理により出現し,この吸収が塩素欠陥によるものであることを示唆する。さらにg値1.94のスピン濃度はTiCl3表面積に比例し,定常重合活性も表面積に比例することおよび単位表面積あたりの重合活性点数とスピン数とがほぼ同一であることは,重合活性点に関与していると思われる。このESR吸収スペクトルの非対称性はg値の異方性によるものであり三角形のひずみを受けた八面体構造が考えられる。
  • 野綺 文男, 市川 文雄
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 254-259
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エチルベンゼンのスチレンへの酸化脱水素反応を酸化ウラン触媒および酸化ウランにP2O5,K2O,Sb2O3あるいはBi2O3を混合した触媒上で420~540℃,流通法により検討した。その結果つぎのことがわかった。すなわち酸化ウラン単味触媒よりも混合触媒の方が活性,選択性ともすぐれ,とくにP/U原子比0.7~1.0の範囲でP2O5を添加混合した触媒はCO2生成およびC6H6生成の副反応をほとんど抑制してスチレンを選択率よく生成した。K2O添加触媒はCO2生成の副反応を抑制したが, C6H6生成の脱アルキルを促進した。P2O5添加酸化ウラン触媒によるスチレン生成反応速度は近似的にエチルベンゼン分圧に1次,酸素分圧に0次と整理され,反応の見かけ活性化エネルギーは20kcal/molであった。
    また触媒のX線回折およびIR吸収スペクトルの検討から,酸化ウラン単味触媒はU8O8とUO3の混合物であること,酸化ウランにP2O5を添加した触媒はU8O8と酸化ウランリン酸塩との混合物であること,K2Oを添加した触媒では触媒中酸化ウランはUO3の酸化状態にあることなどがわかった。そして触媒構造上触媒反応における選択性との関係について若干の考察がなされた。
  • 相 衛, 鈴木 貞雄
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 260-264
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Mo含有量を0~30atom%の範囲で変えたV2O5-MoO3系触媒を用いて,ブテン,酢酸の酸化反応,ブテンの異性化反応を空気過剰下で行ない,MoO3含有量の変化に基づくこれらの活性の変化を調べた。また,この触媒のイソプロピルアルコール(IPA)脱水活性が,表面酸性度を表わすものとして,その変化も調べた。IPA脱水活性は,MoO3添加により増加し,Mo=15~20 atom%で最大となり,それ以上では減少する。ブテン酸化活性,異性化活性は,IPA脱水活性とよい対応関係にある. ブテン酸化反応のブテンに対する次数は,MoO3を10~20 atom%添加すると,0.9次からO.5次に低下する。酢酸に対する酸化活性は,MoO3の量を変えても変わらない。触媒と被酸化物の酸塩基性という観点から,これらの結果の説明を試みた。MoO3の添加によって,V2O5-MoO3系触媒の酸化活性が増加することは,表面酸素の活性化によるとされているが,少なくともオレフィンなどの塩基性被酸化物の部分酸化反応においては,被酸化物の活性化に起因するものと考えられる。
  • 田村 英雄, 岩倉 千秋, 山本 壮一郎
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 264-270
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸性水溶液中における白金電極上での鉄(III)イオンとサリチル酸および5-スルホサリチル酸との錯形成反応をボルタンメトリーによって検討した。サリチル酸を含むpH2ないし3の溶液中では鉄(III)イオンのアノード酸化によって生成した鉄(III)イオンと1段解離したサリチル酸,HZ(C6H4(OH)COO-)の間で錯形成反応が起こり,この反応は2.54ないし2.70のpH領域では鉄(III)イオンに関して一次,HZに関して二次式あるが,pH約2.15ではHZに関して一次であると推論された。その反応速度定数は前者のpH領域で2.3x107 mol-2.l2sec-1,後者のpH値で約104 mol-1.l.sec-1と評価された。5-スルポサリチル酸を含むpH 1.8ないし2.2の溶液の場合には2段解離した5-スルポサリチル酸,HZ(C6H4(OH)COO-)が鉄(III)イオンと錯形成し,この反応の次数は鉄(III)イオン,HZの両方に対していずれも1であると推論された。その反応速度定数は5.5x103 mol-1.l.sec-1と計算された。
  • 木原 博, 岡本 郁男, 大森 明, 中野 博文
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 271-275
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    はんだ付けに用いられているアミン塩酸塊のフラックス作用をフラックスと母板(銅)との反応,およびその反応生成物とはんだ(Sn-Pb系合金)との反応がはんだの銅板上におけるぬれに対していかに作用しているかを研究した。 その結果,塩酸アニリンのフラックス作用機構はつぎのとおりであることが明らかにされた。まず塩酸アニリンは母板の銅と反応し,CuCl2と銅アミン錯体を与え,それらの銅化合物は,さらに溶融はんだ中のスズと主として反応し金属銅を与える。その生成した銅ははんだ中に溶け込みその結果,はんだが母板上をぬれていく現象を生じる。
  • 小林 悦郎, 鎌上 三郎
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 276-281
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    耐熱性物質を開発するため,製造工程を単純化し,仕込原料をすべて製品化する鎖状塩化窒化リンのアルコキシ誘導体の合成と性状について研究した。また反応系にベンゼンを加えることによって少量のフェニル基を含む生成物が新たにできることを究明した。
    塩素化に不活性な溶媒としてsym-四塩化エタン中で五塩化リン,塩化アンモニウム,ベンゼン,そして脱塩化水素触媒として金属粉末(Al, Zn, Co)の混合物を加熱し,はじめ五塩化リンとべンゼンが反応するように100~108℃,つづいて118~130℃で還流して脱塩化水素を完結し,過剰の塩化アンモニウムと転化した金属塩化物を反応溶液から炉別,炉液に各種アルコールを添加してふたたび沸点で還流し,溶媒を蒸留し去ることによって樹脂状,さらに減圧乾燥によって粉末状,あるいは塊状の鎖状塩化窒化リンのアルコキシ誘導体が得られた。
    反応生成物は水-アルコール混合液に溶解し,組成はリン18~28%,窒素9~13%,塩素0.7~20%で,P:Nのモル比は約1:1であった。Al, Zn添加の生成物は金属をほとんど含有していなかったが,コバルトを添加した生成物はそれを少量含有していた。反応生成物の分子量は約300~550であった。重合体と結合したフェニル基の存在は赤外吸収スペクトルから明らかでなかったが,核磁気共鳴スペクトルから証明された。反応生成物を数%含むポリエステル樹脂は不燃性であったので,この塩化窒化リンのアルコキシ誘導体は難燃剤として有効である。
  • 沢本 博道, 溝淵 勉, 藤永 太一郎
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 282-286
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    t-ペンチルアルコールの濃度を一定(O.05 mol/t)にして,支持電解質の濃度を変化させて,テンサメトリー波を測定した。このような場合二つのことが考えられる。一つは塩析効果により,有機物が吸着しやすい状態になることであり,もう一つはイオンの特異吸着により,有機物の吸着を減少させるか,あるいは吸着電位領域を狭くする働きをすることである。支持電解質としては,KF, KCI, KBr, KI, KSCN,を0.1Nから0.5~3Nまで変化させて用いた。
    その結果,KFとNa2SO4の場合は,塩析効果が勝り,支持電解質の濃度の増大とともに,吸着電位領域,吸着-脱着ピークとも増大する。KIとKSCNの場合は逆に,イオンの特異吸着が勝り,支持電解質の濃度の増大とともに,吸着電位領域,ピークとも減少する。KCIとKBrの場合は,塩析効果と特異吸着の両方が作用する。すなわち1Nぐらいまでは,特異吸着の効果により吸着電位領域が狭くなるが,塩析効果により吸着領域内の吸着量は増大する。IN以降は塩析効果が勝り,吸着量,吸着電位領域とも増大すると考えられる。
  • 鎌田 薩男
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 287-292
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トルイジン(T),ニトロアニリン(NA),ニトロ-N,N-ジメチルアニリンなどアニリン誘導体の巨大網状スルホン酸樹脂-非水溶媒系における分配平衡と非水溶媒中のNAおよびNDAの各異性体の相互分離について検討した。この結果,これらの塩基は極性,無極性のどの溶媒中からもスルホン酸樹脂へ酸-塩基反応すなわち, によって分配され,この平衡には質量作用の法則がよく適合し,平衡定数(K)は水溶液中における塩基の共役酸の酸解離定数(Ka)との間につぎの関係式が成立することがわかった。
    このlog K対pKa(H2O)の間の直線の傾斜は各溶媒中のスルホン酸樹脂に対する塩基の相対的強度の尺度と考えられ,またK値は塩基の強度や構造,溶媒の性質にいちじるしく影響された。これらの結果を応用して,NAおよびNDAの異性体混合物を溶離剤として酸-塩基の平衡を変える純溶媒または混合溶媒を用いることにより良好に分離することができた。
  • 田中 順太郎, 鈴木 敏弘, 高部 圀彦, 片桐 孝夫
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 292-295
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酢酸類を溶媒としたイソプレンの二酸化セレン酸化を行ない,酸化生成物として,二重結合のアリル位のメチル基が酸化された生成物のほかに,フラン化合物,環状セレン化合物およびC10-アルデヒドなどを確認した。これらの生成物の組成は,モル比および溶媒によりいちじるしく変化した。すなわち,酢酸溶媒中,反応温度100~105℃の反応では,イソプレン:二酸化セレンのモル比が10のときには,2-ヒドロキシメチル-1,3-ブタジエン(1)が,モル比が2のときには,環状セレン化合物が主生成物として得られた。また,無水酢酸を溶媒とした場合には,2-ホルミル-4-アセトキシ-2-ブテンが主生成物として得られた。さらに(1)および2-メチル-1,4-ジアセトキシ-2-ブテンの二酸化セレン酸化を試みることにより,反応径路についても考察した。
  • 松田 住雄, 内田 章, 山路 禎三
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 296-301
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アセトアルデヒドを反応開始剤とする1-ブタノールの液相空気酸化を酢酸中 50-90℃で検討し,各種反応条件の生成物組成に与える影響を検討した。この反応によってn-ブチルアルデヒドと酪酸が生成し,また酢酸-ブチルが副生した。検討した6種類の触媒(ナフテン酸マンガン,ナフテン酸鉄(II),酢酸スズ(II),酢酸銅(II),酢酸コバルト(II),酢酸クロム(II))のうち,ナフテン酸マンガン,ナフテン酸鉄(II)は酸化触媒として有効でなく,また酢酸コバルト(II),酢酸クロム(II)が有効な触媒であることを認めた。酢酸クロム(II)触媒存在下における1-ブタノールの液相空気酸化を動力学的に検討した結果,n-ブチルアルデヒドを経由して酪酸を生成する酸化反応と,1-ブタノールのエステル化反応とが並発していること,およびこれら反応の速度式が,関与する反応体に関して一次式で示され,その反応速度定数が10-2~1(hr-1)の範囲内にあり,その活性化エネルギーが10 kcal/mol以下であることが明らかとなった。
  • 有田 静児, 平井 伸子, 西村 幸雄, 竹下 健次郎
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 302-307
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    安息香酸によるN,N-ジメチルアミド,(CH2)2NCORの電解ベソゾイルオキシ化反応を試みた。電解溶媒をみつけるために,安息香酸によるDMFの電解ベンゾィルオキシ化をベンゼン,DMSO,アセトニトリルなどの溶媒中で行なった。ベンゼン-DMF,DMSO-DMF,アセトニトリル-DMFの混合溶媒中での安息香酸の電解はDMFのみのときと同様の反応が起こり,選択的にN-ベンヅキシメチル-N-メチルホルムアミド(1)が得られた。とくに,アセトニトリル-DMFの混合溶媒中で支持塩に過塩素酸テトラエチルアンモニウムを用いての安息香酸の電解は,槽電圧は低く,高い反応率を示した。その結果,以下の実験には溶媒としてアセトニトリルを用いることにした。アセトニトリルを溶媒として各種のN,N-ジメチルアミドと安息香酸との電解反応を行なうと, N-ベソゾキシメチル-N-メチルカルボキシアミド(2)が選択的に生成し,DMFの場合と同様の反応がやはり起こっていることがわかった。(2)生成の電流効率は,Rがイソプロピル,シクロヘキシルとかさ高くなってもあまり変化しないが,フェニルのときには非常に低くなった。しかしアミドのカルボニル基とフェニル基の間にメチレン基が入ることによっていくぶん電流効率は増加した
  • 浅原 照三, 妹尾 学, 伊吹 忠之, 森田 博
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 308-313
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ナフタレンをヘキサメチルリン酸,トリアミド-アルカリ金属-種々のプロトンドナー系で還元した。試薬の添加順序によっては,ナフタレンの転化率,反応の選択性は変化しなかった。 アルカリ金属の種類によって,転化率も,選択性も,アルカリ金属の効率(還元に用いられた割合)も変化する。したがって反応活性種は,単に溶媒和電子だけではなくアルカリ金属イオンと溶媒和電子との会合錯体であると考えられる。
    プロトンドナーの酸性度と逡元の程度,転化率,効率との間に密接な関係は認められず,酸性度の大きいプロトンドナーでは副反応としてプロトンドナーと金属との直接反応の害与が大きいと思われる。
    シクロヘキシルアミソを用いると,1,2-ジヒドナフタレンが選択的に生成する。反応の時間追跡から,反応は大きく二段階にわかれて進むことがわかった。
    反応系組成により反応の選択性こいちじるしい差があり,Naがプロトンドナーの当量以上のとき ジヒドロ体生成の割合が増し,当:量以下のときテトラヒドロ体が増加した。これは,liq.NH3-Na-H2O系でのべソゼン環の還元の場合とは逆の傾向であった。
  • 浅原 照三, 妹尾 学, 伊吹 忠之, 森田 博
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 314-319
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トルエン,テトラリンのヘキサメチルリン酸トリアミド-アルカリ金属-プロトンドナー系における還元反応を検討した。
    アルコールおよびアミンをプロトンドナーとして用いたが,プロトンドナーの酸性度とその効率(還元に用いられた割合)との間に密接な関係は認められなかった。これはナフタレンの還元の場合と同様の傾向である。
    アルカリ金属の種類により,効率はほとんど変化しないが,選択性は大きく変わる。
    Na-エタノール系でNaをエタノールの当量以上に用いると,テトラヒドロ体が選択的に得られた。これは同様の条件下でのナフタレンの還元の場合とは異なっている。ジヒドロ体生成の割合が極大になるエタノールとアルカリ金属の比はLiとNaでは異なっている。これらのことから,反応活性種は溶媒和電子だけではなく,アルカリ金属イオンと溶媒和電子との錯体も関与すると考えられる。
    ジヒドロ体を選択的に生成する条件下での反応の時間追跡はナフタレンの還元の場合とは異なっている。
    溶媒和電子が存在する系において,共役ジエン構造をもつジヒドロ体が生成することは特徴的である。
  • 小西 謙三, 山瀬 二郎, 石原 嘉孝, 吉田 勝平, 本郷 保博, 北尾 悌次郎
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 319-324
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニトリルとヒドラジン水和物の反応系にある種の硫黄化合物を添加すると,3,6-二置換-1,2-ジヒドロ-S-テトラジン類が高収率で生成する。ベソゾニトリルの反応系では,硫黄,チオール,ジスルフィドおよびポリスルフィドが有効な触媒作用をもち,約20℃から80℃の温度条件できわめて容易にジフェニルジヒドロテトラジソが得られる。そしてチオグリコール酸とエチレンチオグリコールはこの反応においてとくに有効な触媒であり,その作用には一種の隣接基関与が示唆される。またベンゾニトリル,ヒドラジン水和物およびチオグリコール酸の反応系に多量のアミンを添加しても,生成物の収率は変わらないが,水酸化ナトリウムを加えると生成物はまったく得られない。これらの事実に基づいて,この反応における硫黄化合物の触媒的役割とその反応機構を考察した。
  • 高谷 晴生, 細矢 忠資, 大塩 秀樹, 峰岸 俊郎, 藤堂 尚之
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 325-330
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    微量の塩化水素が存在する条件下でのシリカアルミナ触媒を用いる流通式高圧液相m-キシレン異性化,不均化反応について調べた。乾燥m-キシレン中に溶解させた0.1~0.25%の塩化エチルを解媒上で分解させて微量の塩化水素を発生させた。微量の塩化水素は不均化,異性化反応を促進し,また高沸点副生成物生成量ノトルエン生成量の値を減少させ,さらに活性低下を抑制した。微量の酸が共存しても,ジフェニルメタン,アントラセンは異性化活性に強く影響し,それらの2%m-キシレン溶液を用いると異性化活性は低下する。しかし,活性低下後微量の塩化水素のみを含むm-キシレンを反応させると活性は回復し,ジフェニルメタンの場合は初期の活性にもどる。以上の結果から,異性化,不均化反応とジフェニルメタンの吸着に有効な活性点が共通であり,さらにプロトン酸とLewis酸の両者の特性をもつ酸点と考えられることを示した。
  • 米田 徳彦, 山口 正俊, 大塚 博
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 331-335
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    t-ブチルベンゼン-フェノール間のトランスアルキル化反応をAlCl3-CH3NO2触媒(AlCl3とCH3NO2のモル比O.574)およびBF3触媒により行なった。反応はマグネチックスタラー,温度計,還流器などを付した三つロフラスコで20~60℃の反応温度で行なった。主たる反応は(1)および(2)の反応であり,p-t-ブチルフェノール(P-B)とベンゼンならびに若干量のdi-t-ブチルベンゼンが主生成物であった。
    P-Bの選択率(反応したt-ブチルベンゼン基準)は一般にAlCl3-CH3NO2触媒の場合よりBF3触媒の場合に高く,最大97%の値が得られた。行なった反応条件下で反応はt-ブチルベンゼンに関して一次反応であり,見かけの活性化エネルギーおよびA因子はいずれの触媒の場合もそれぞれ18.4kcal/mol, 1.1x109sec-1と求められた。
  • 柴谷 治雄, 木下 久夫
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 336-342
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-ペンテンの熱分解を反応温度480~750℃,滞留時間O.05~48秒,窒素対1-ペンテンモル比6および15の範囲で常圧下流通式反応装置を用いて行なった。総括反応速度は1-ペンテンに対して一次で整理され,速度定数はlog k(sec-1)=12.2-52000/4.575Tと観測された。反応生成物は生成量の大きい順に,エチレン,プロペン,ブタジエン,1-ブテン,メタン,エタン,水素,1,5-ヘキサジエンおよび1,3-ペンタジエンであった。
    反応は主として遊離基連鎖機構によって説明され,本機構に基づく反応モデルから計算される生成物組成および反応速度は,その大部分がほぼ実測値と一致した。しかし,エチレンおよびプロペンについては,連鎖機構によって生ずると推定される量は実測された値より小さく,1-ペンテンが直接に開裂する分子機構によっても生成することが示された。全反応中に占める分子反応の比率は低温ほど大きくなり,500℃において約20%と推定された。
  • 松尾 昌季, 井爪 晴美
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 343-347
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    スチルベン系ケイ光増白剤の活性塩素による分解挙動(遮光下)を,紫外吸収スペクトル,薄層クロマトグラフィー,イオン種の分析などで追跡した。同時に活性塩素量やpHの変化も調べた。この結果,これら誘導体(水溶液,濃度5~10ppm)は,活性塩素(次亜塩素酸ナトリウム使用,濃度20ppm)によって,短時間に分解し,無ケイ光の一次分解生成物を与えた。反応の半減期(τ1)は約30分であった。この間,活性塩素量はケイ光増白剤1molに対して1原子比減少したが,pHには大きな変化はなかった。
    一次分解生成物は,各生成物とも,270nm近辺に鋭いピークをもち,無ケイ光で1分子中に1個の塩素原子を含有する。ついで,この一次分解生成物は徐々に分解し,最終的にはNH3, HSO4-, SO42-, CO32-およびカルボン酸残基となった。分解の半減期(τ2)は約30時間であった。この間,活性塩素量はいちじるしく減少し,またpHも9から7に変化して,上記イオン種の生成と呼応した。
    なお,一次分解反応中に紫外吸収スペクトル変化に等吸収点が観測された。これはτ2>>τ1であるため,反応の初期段階で,[ケイ光増白剤]+[一次分解生成物]=一定なる関係がなり立つためと結論した。
  • 須田 昌男, 秋山 勝男
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 348-354
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    テトラクロロエチレンを媒体としたときの,セルロース=アセタートに対する17種の分散染料の45~75℃における等温吸着曲線と分配係数ならびに30~60℃における溶解度とを求め,溶解性と染着性との関係を中心として平衡吸着を検討した。
    その結果によると,等温吸着曲線は染料の種類や温度には関係なく分配律にしたがっている。異常に小さな分配係数を示す2種の染料を除けば,同一温度における分配係数と溶解度との間にはかなり近似的ではあるが負の相関関係が認められる。
    アントラキノン系染料についてはさらに染着熱(Hdyoing)と溶解熱(Hsoin.)との関係を求めたところ,モノアミノ系,ジアミノ系のそれぞれについて式(1)が成立した。(1) ここでαはアミノ基の数に依存する定数である。
    これらから,溶解性と染着性との関係は,近似的には溶解度と分配係数とで,より厳密には溶解熱と染着熱とでそれぞれあらわせることが結論できる。
  • 岡崎 具視, 大須賀 昭夫, 小竹 無二雄
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 355-359
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ササユリ(Lilium Makinoi Koidz.)とヤマユリ(L.auratum Lindle.)の花の精油を精査して,ササユリからは天然物としては初めて見いだされた2,6,6-トリメチル-2-ビニル-5-ケトテトラヒドロピラン(2)を含む12種の成分を単離,同定し,4種の微量成分をGLC-MSによって確認した。一方,ヤマユリからは25種の成分を単離同定し,そのほか6種の微量成分をGLC-MSで確認した。
    ササユリの精油はcis-2,6,6-トリメチル-2-ビニル-5-ヒドロキシテトラヒドロピラン[1]が主成分で,リナロオールは少なく,その酸化生成物が多く,フェノール性物質が少ししか含まれていない。それに対して,ヤマユリの精油ではリナロオールが主成分の一つで,その酸化生成物が少なく,フェノール性物質が種類,含有量とも非常に多く含まれているのが特徴である。
  • 岡崎 具視, 大須賀 昭夫, 小竹 無二雄
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 359-362
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ササユリ(Lilium Makinoi Koidz)の精油中に含まれるリナロオール(2),trans-リナリルオキシド(2),cis-リナリルオキシド(3),trans-2,6,6-トリメチル-2-ビニル-5-ヒドロキシテトラピドロピラン(4),cis-2,6,6-トリメチル-2-ビニル-5-ヒドラキシテトラヒドロピラン(5),2,6,6-トリメチル-2-ビニル-5-ケトテトラヒドロピラン(6)においてC位の絶対構造がすべて生合成の前駆体と考えられるリナロオールの絶対構造を保持していることを決定した。これらのリナロオール酸化生成物の立体構造についてはKleinらの研究があるが,そのうち(3)と(5)の旋光度の符号が誤って報告されていることがわかった。
  • 草野 孝衛, 村上 謙吉
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 363-367
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ブレンド加硫ゴムについて化学変化をともなった系での粘弾性的性質について検討した。一般に二成分ブレンドしたゴムは均一には分散せず,球状かまたは層状になり不均一系であることが知られている。なお,これらの系の物理的粘弾性についての報告は多いが化学的な構造変化をともなう場合の粘弾性的性質についてはほとんど研究されていない。このために著者らは化学レオロジー的手段を用いて,NR-SBRおよびNR-NBR系ブレンドゴムに関する研究を行なった。もっとも問題となることは,それらの二成分ブレンド試料を加硫すると,ホモポリマーの網目のほかに第三成分的性質を有すると考えられる共加硫の起こることである。
    化学レオロジーの手段による実験結果からブレンドした加硫ゴム中にはかなり多くの共加硫成分の存在することがわかった。そしてブレンドすることによりもとのホモポリマーにくらべてエンタルピー弾性項がかなり減少した。
  • 岩間 真道, 西田 昌三, 本間 輝武
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 367-375
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ゴム状高分子の濃厚溶液粘度に対する分子特性(分子量,分子量,分布,枝わかれ)の影響について実験的検討を行なった。試料の各種平均分子量,分子,量分布,分岐度はすべてGPCと固有粘度の測定から計算して求めた。濃厚溶液粘度測定はワイセンベルグレオゴニオメーターにより,ジエチルベンゼンを溶媒とし1~12wt%の濃度範囲で行なった。SBRと2種類のBRのゼロせん断粘度は,直鎖高分子では分子量分布に関係なく,重量平均分子量の3.4乗に比例した。分岐高分子では同一分子量の直鎖高分子の粘度にくらべて値も小さく,べき指数も小さくなること,および10 Wt%程度の濃厚溶液では分岐高分子と直鎖高分子の粘度の差はBuecheの理論で十分説明されることがわかった。IRとNRとではゾル分とゲル分とに分離して,それぞれを素練って分子量の異なる試料を得た。ゾル分はほとんど分岐高分子を含まないが,素練りによって分子量が低下するとともに分岐高分子が生成した。また,ゲル分を素練って可溶化した部分はほとんど分岐高分子であり,分岐度もゾル分から生成したものにくらべると大きいことがわかった。直鎖高分子の粘度とせん断速度の関係はGraessleyの理論によく適合したが,分岐高分子では多少はずれる傾向がみられた。
  • 竹村 富久男, 森田 えり子, 朝倉 純子
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 376-380
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水溶液中のアシドペンタアンミンコバルト(III)錯塩[CoL(NH3)5]X2によるアクリルアミドの増感光重倉において,その増感能は酸基配位子(L)の種類によって大いに異なる。酸基配位子がCl-, Br-の場合には紫外線(365nm)を照射しなければならないが,N3-, NCS-およびNO2-の場合は波長470nm以上の可視光でも有効な増感剤となる。
    可視光照射のもとで重合速度(Rp)は光源強度(Io),錯塩濃度(c)および単量体濃度[M]に依存し,アジド錯塩ではRp ,チオシアナト錯塩ではRp ,そしてニトロ錯塩ではRp で表わされる。また錯塩の分解によってできたラジカルのうちで重合を開始する割合,すなわち重合開始効率はアジド錯塩で0.15, ニトロ錯塩で0.06以下で比較的小さい。
    これらに基づいて重合機構を検討すると,アジド錯塩では生長ラジカルの二分子停止のほかに錯塩自体による停止反応が含まれており,チオシアナト-およびニトロ錯塩では配位子ラジカルと単量体の相互作用でできるラジカルの一部が重合を開始し,チオシアナト錯塩で二分子停止が,ニトロ錯塩で一次ラジカル停止が優勢に起こっていると考えらえれる。
  • 宮野 壮太郎, 大竹 利一, 徳舛 弘幸, 橋本 春吉
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 381-384
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    テトラヒドロフラン(THF)中,ヨウ化メチレンと亜鉛とから生成する亜鉛-ヨウ化メチレン試薬によるべンズアルデヒドからのスチレン生成反応における亜鉛試薬の活性種について検討した。ヨウ化メチレンに対し2g原子以上の亜鉛をTHF中,35℃,2時間反応させて得た亜鉛-ヨウ化メチレン試薬はヨードとの反応ではヨウ化メチレンを再生するが加水分解してもヨウ化メチルは生成しないことから,この試薬はメチレン基に亜鉛が2個結合した"CH2(ZnI)2"型の有機亜鉛化合物のみを含むものと考えられる。これはシクロヘキセンとは反応しないがベンズアルデヒドをスチレンに変えた。一方,ヨウ化メチレンに対し1g原子以下の亜鉛から得た亜鉛-ヨウ化メチレン試薬は,加水分解によリヨウ化メチルを生成するような活性種を含むがスチレンはまったく生成せず,低収率ながらシクロヘキセンからノルカランが得られた。Simmons-Smith反応の活性種が一般に"ICH2ZnI"とされているのに対し,ベンズアルデヒドからのスチレン生成の活性種が"CH2(ZnI)2"と考えられること,またこれら両者の間につぎの反応が存在すると考えられることを示した。
  • 白井 汪芳
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 384-389
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール-銅(II)錯体水溶液は,TCU2+/THL比を0.0125から0.125まで変化させ,pH10.5, イオン強度0.1で生成させた。その溶液を24時間,30℃に放置し,余剰イオンを透析によって除き,ポリエチレンフィルム上でキャスティング法でフィルムを作成した。PVA分子中のOHグループと銅(II)イオンの配位構造は電子スペクトル,赤外吸収スペクトルによって確認した。これらのフィルムの結晶性と熱的性質におよぼすTCU2+/THL比の影響はつぎのようになった。すなわち,結晶化度,微結晶の大きさ,融点は,いずれもTCU2+/THL比が0.031以上ではこの値の増加にともなって低下し,熱分解の活性化エネルギーは,TCU2+/THL比の大きいものほど小さかった。以上から分子内橋かけ錯体の形成によってPVAの分子鎖の配列が乱され,結晶化が阻害されることがわかった。
  • 白井 汪芳
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 390-396
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール(PVA)-銅(II)錯体フィルムを銅(II)アンミン錯体水溶液で処理する方法で作成した。PVAフィルムへの銅(II)イオンの吸着量は銅(II)アンミン錯体濃度2x10-2 mol/l,pH 10.8で処理されたとき最大値を与えた。この銅(II)イオンを吸着したPVAフィルムは620nm,赤外領域605cm-1に吸収をもち,これはPVA中のOHグループと配位結合を形成しているものと考えられる。この錯体フィルムの結晶化度,融点,膨潤度,溶解度は銅(II)イオンの吸着量が増加するほど減少した。つぎに熱処理,および,一軸延伸を施したPVAフィルムを銅(II)アンミン錯体水溶液中で処理し,錯生成におよぼす配位子フィルムの熱処理延伸の効果を調べた。熱処理PVAフィルムへの銅(II)イオンの吸着量は150℃より高い熱処理温度では,高くなるほど減少した。一方,延伸フィルムでは,その吸着量は延伸率1.0以下では延伸率が高くなるほど増大し,その値以下では減少した。これらの配向PVAフィルムは錯生成によって,延伸率2.0を除き無配向に変化した。
  • 根来 健二, 斎田 健一
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 397-402
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N,N-ジメチルアルキルアミン(アルキル:ドデシル,ヘキサデシルおよびオクタデシル)と4-ニトロ-および4-クロロベンジルクロリドとの四級塩を6種合成した。ついで得られた各試料の種々濃度の水溶液の表面張力,粘度,電気伝導度,Orange OT可溶化量,流動パラフィン乳化力および布片への濡れ力などの界面活性を主とする物理化学的性質ならびに抗細菌と防カビカの測定を行なった結果,合成試料のうちオクタデシルまたはヘキサデシル基を有するものの方がドデシル基のものより界面活性であり,CMCも小であった。一方,抗細菌と防カビカの点からみると,合成試料のうち最短鎖のドデシル基のものがすぐれており,従来のジメチル-ベソジル-ドデシルアソモニウムクロリド(DBA)に近い性能を有し,また同一アルキル霊長のものを比較すると,クロロ基を有するものの方が二トロ基のものより抗細菌と防カビ力がすぐれていることがわかった。
  • 林 貞男, 柳沢 多恵子, 北条 舒正
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 402-407
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコールを乳化剤とした酢酸ビニルの乳化重合を過酸化水素を開始剤として行ない,ポリマーエマルジョンの性質におよぼす開始剤量の影響を調べた。モノマーは連続的に滴下し,開始剤はモノマーの滴下開始直前と,その後30分の間隔で分割添加した。ポリマーエマルジョンの見かけの粘度は開始剤量につれて増大し,極大値を経て低下した。この傾向は,モノマーの滴下開始直前に添加する開始剤量を一定にして重合開始後に分割添加する開始剤量を増加させる系よりも,重合開始後に分割添加する開始度量を一定にしてモノマーの滴下開始直前に添加する開始剤量を増加させる系の方が顕著であることが明らかになった。これらの結果は,得られたポリ酢酸ビニルの粒子径の変化やポリマーフィルムの性質から,重合系に存在したポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルの粒子表面に存在するグラフト重合物のポリビニルアルコール部分や開始剤に由来したポリマー末端の水酸基などとの相互作用によるものと考えられる。
  • 伊奈 勉, 黒沢 俊英, 小松 哮, 山本 哲久, 紙屋 南海夫
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 407-412
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アクリルゴムの一種である,エチルアクリレートと2-クロロエチルアクリレート(95/5)共重合体を加硫剤としてテトラエチレンペンタミン(TEPA)を用いて加硫した。その結果,分別試料について,橋かけ点間分子量(Mc)と試料の分子量Mnを両対数の関係で求めると,Mnには,それより上では末端効果がほとんど現われないMn, すなわち一種の臨界点が存在することがわかった。この臨界点は,TEPA量,すなわち橋かけ点密度の値が大きくなると小さくなった。また,ゾル量と試料の分子量,および加硫剤量との関係についても検討した。
  • 笠岡 成光, 妻木 尚武, 東風平 正
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 413-420
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫黄酸化物の乾式接触還元処理による浄化プロセスの開発の資料とするために,13種の二成分系共沈触媒[mol%組成:10~90 CuO-90~10Al2O3,50CuO-50Cr2O3,50Fe2O3-Al2O3, ]上の,二酸化硫黄の一酸化炭素による還元反応 を常圧流通法(反応管内径:12.Omm)によって検討した。触媒は,平均粒径1.0mmの酸化物系250mgを550℃で1時間水素還元したのち,300~550℃(主として550℃),500Ncm3()/minで操作した。その結果,SO2-CO-N2系におけるSO2の全変換に対する見かけの活牲においては,Co3O4-Al2O3がもっとも高かったが,硫黄への選択率はきわめて悪く,相対的に見て,CuO-Al2O3系がすぐれており,しかも銅含量の少ないものほど,CO+1/ySy→COSの反応によるCOSの副生は少なく,10CuO-90Al2O3では,COSはほとんど生成しなかった。また逆にCr2O3を含む触媒は,硫黄への選択佐がかなり劣ることなどを定量的に明らかにした。しかし,水蒸気,O2が共存すると,COSの副生ばかりでなく,水蒸気の吸着による一時的触媒毒作用に加えて,CO+H2O→CO2+H2の反応,つづいてSO2+3H2→H2S+2H2Oなどの反応による著量のH2Sの副生,さらに触媒金属の酸化・硫酸塩化などの変質による触媒の劣化・失活など,種々の望ましくない付随反応が起こり,これらの難題を指摘するとともに今後の解明の一助とした。
  • 今中 利信, 林 安夫, 寺西 士一郎
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 421-422
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    細孔径の揃った多孔性ガラスは表面積が大きく,かつその強度が大きいために触媒の担体としてすぐれた性能をもっている。著者らはこの点に注目して,多孔性ガラスに銅を担持した触媒のエタノルの脱水および脱水素反応の選択性を研究し,銅を担持する場合に用いたアルカリの種類が反回の選択性に影響することを報告した。このさいアルカリによって多孔性ガラスの表面水酸基のプロトンが交換されるが,その交換イオンによるアルコールの脱水反応活性に対する影響は興味がある。この点を明らかにするために,イオンの価数の異なるイオン交換多孔性ガラスを用い,種々の交換率でその残存表面水酸基の赤外吸収スペクトルとエタノールの脱水反応活性との関係を研究した。
  • 小野打 喬, 松比良 伸也
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 423-425
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酢酸中におけるパラジウムの銅(II)塩による酸化反応を,パラジウム線を用いて行ない,酸化速度に対するCu(II)濃度,Cl-濃度,共存金属塩などの影響につき調べた。なお,パラジウム黒を用いた実験結果についてはすでに報告されているが,この場合は酸化速度がはやいため,速度的な検討はされていない。
  • 池田 早苗, 平田 純子
    1973 年 1973 巻 2 号 p. 425-427
    発行日: 1973/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らは,さきに中性溶液中におけるセレノシアン酸イオン,およびセレノシアン酸イオンとシアン化物イオンとの混合溶液の短絡電流滴定法について報告した。本報では,共存の可能性のあるセレノシアン酸イオンとチオシアン酸イオンとの混合溶液の逐次定量を目的として,アンモニアアルカリ性におけるセレノシアン酸イオンの滴定条件を吟味したのち,上記混合溶液中の2成分の分析方法を確立したので報告する。
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