日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1974 巻, 1 号
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  • 藤本 明, 桜井 昭雄, 緑川 浩, 岩瀬 栄一
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4-アミノ-2-メチル-6-オキサベンゾ[f]イソキノリソ-5-オン(2-メチル誘導体)と酢酸との水素結合およびプロトン移動について詳細に検討した。2-メチル誘導体を酢酸から再結晶させると白色針状の析出物が得られる。この析出物の元素分析および示差熱分析から2-メチル誘導体と酢酸とがほぼ1対1のモル比で水素結合体を形成していることがわかった。この水素結合体のIRスペクトルを測定した結果,2-メチル誘導体のアミノ基と酢酸のカルボニル基と力驚水素結合していることを確認した。UVスペクトルの結果から無極性溶媒中,4-アミノ-6-オキサベソゾ[f]インキノリン-5-オン誘導体とカルボン酸との水素結合形成によるエンタルピー変化が約13 kcal/mo1であることから,さらにイソキノリン核の窒素原子と酢酸の水酸基も水素結合しているものと結論した。
    以上述べたような基底状態の様相にくらべ,最低励起状態では酢酸の水酸基からイソキノリン核の窒素原子にプロトン移動が起こり,イオン対が形成される。そして析出物はこの状態からいちじるしく強いケイ光を発することを知った。
  • 林 宏哉, 水谷 惟恭, 加藤 誠軌
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    銅とチタンとの混合原子価複酸化物,Cu3Tio4の結晶構造を解析した。 cu3Tioは六方晶系(a=3.04 A,c= 11.46 A)の空聞群P 631m mcに属する結晶(Z=1)である。単結晶試料について4軸自動X線回折計を用いて研究した結果,1価の銅イオンには直線状に2個の酸素イオンが配位し,2価の銅イオンと4価のチタンイオンは同一の格子点に統計的に分布していることが判明した。Cu3Tio,の示性式としてはCu2+(Cu2÷Ti+)042"が適当である。
  • 掛川 一幸, 毛利 純一, 白崎 信一, 山村 博, 高橋 紘一郎
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Pb1-xTiOs-xもしくはPbi-xNavTiOs.x,(v/2)型のチタン酸鉛がPbO,TiO2,Na2CO3混合物(Pb1Ti≦1.0)の固相反応によって合成された。上記化学式はTio2過剰の反応体混合物が焼成によってペロブスカイト単一相になる事実から妥当と思われる。得られた欠陥チタン酸鉛のtetragonalityの温度変化を追跡した結果,tetragonalityもしくは正方ヒズミは,組成パラメータ-xによってかなり変化するが,Curie点はxの変化にかかわらずほぼ一定であったeこの事実は,この欠陥体が組成変動をもつこととして説明された。Pb Na7TiO3.針(v/2)試料ペレットの1MHzでの誘電率の温度変化が測定された。そのε~T曲線は,Curie点付近でのεの"拡散現象"により特徴づけられる。この拡散現象"はある欠陥ペロブスカイトが組成の異なった局所領域からなり,したがってこれらの領域は異なったCurie温度をもつとしたモデルによって説明された。
  • 山口 喬, 松村 一夫, 久野 洋
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    BaCO3-SiOa系の反応において,工業的に広く用いられているボールミル処理によって反応がどのように影響を受けるかを主として速度論的な立場から調べ,熱力学的考察などとあわせて,反応機構を明らかにしょうとした。
    水溶液からの沈殿によりf乍製したBaCOsと無定形SiO2の等モル混合物を,9.5~192時間の箆囲でボールミル処理し,800~900℃の温度範囲で加熱し,熱テンビンにより反応を追跡した。この他に電子顕微鏡による観察,DTAも併用した。
    無定形のSiOaを使用した場合は,ボールミル時間に関係なく,反応の主要部分にはJanderの式が適用でき,活性化エネルギ一はすべて53 kcal/mo1であった。一般に反応はつぎに示す三段階で進行する。
    BaCOs+SiOs=BaSiOs+CO2 (1)
    BaCOs+BaSiOs==Ba2SiO+CO2 (2)
    Ba2SiO‘+SiO2=2 BaSiOs(3)
    反応(1)ではCO,の影響がないが,反応(2)は高温,低CO2分圧におけるほど促進された。ボールミル処理の影響は,ボールミル処理の初期ではBaC Osの粉砕が,後期ではSio,粒子の分散が主として反応速度の増加に寄与していることが明らかにされた
  • 岩野 俊彦, 横田 俊幸
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    帯域融解によって物質を分離,精製する場合,融解帯の移動速度やかきまぜ速度は有効分配係数に大きな影響を与える。また融解帯が移動し結晶が生長するさい,溶融体の一部が結晶内に包含され精製効果を減ずることが知られている。
    そこで,固液界面における固体の溶質濃度は部分的に液相の濃度:と平衡にたもたれ,結晶が生長するさいには液相の一部を取り込みながら析出すると仮定し,有効分配係数におよぼす融解帯移動速度や,かきまぜ速度の影響について検討した。
    実験は分配係数が1より大きいナフタレン-β-ナフトール混晶系(A),および1より小さいフェノールール3-クレゾール混晶系(B)の二つの系について行なった。試料は溶質濃度が3wt%になるよう調製し,融解帯は移動速度20~100 mm/hrで下方に移動させ,かきまぜ速度は0~200 rpmに変化させ実験を行なった。
    その結果,析出する結晶に溶融体の包含される割合は,系Aでは87%,系Bでは12%となり,分配係数が1より大きい系ではかなりの割合で液相が取り込まれることがわかった。融解帯のかきまぜは,さきに報告した共晶系の場合と同様に,A,Bいずれの系においても精製効果を高めることがわかった
  • 勝沢 英夫, 小林 純一, 樋口 泉
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らは,既報において球形単位粒子が単一立方格子型(SC)および最密充テン型(CP)に充テンした多孔体模型に基づいて多孔体内の有効拡散係数D,を理論的に求めるため,開孔率と迷路係数の比θ01Lを計算した結果,それぞれ123および,0672~o.0798の値を得ている。本報では,SC型充テン多孔体の理論曲線と一致する収着等温線をもつネオビードC-5(球状アルミナ)について450~1200。Cの範囲でそれぞれ焼成した試料を作成し,ヘリウム,アルゴン,窒素の有効拡散係数を直接測定し,細孔内拡散係数Dとの比,すなわちθoLを実験的に求めて理論値と比較した。各気体に関するDの比は,分子量の平方根の比に逆比例したので拡散は体積拡散のみであったとした。また,各焼成試料に関するθo/Lは実験的にほぼ一致した。以上のθo/しの平均は0.12となり,SC型充テソ模型から計算:した結果と一致し,モデルの妥当性を支持する結果を得た。
  • 岡本 政実, 大杉 治郎
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ラジカル捕捉剤であるDPPHが,高圧下でブチルアルデヒドの重合触媒になることを認め,これを触媒として,圧力5600~8240 kg/cm2,温度7~34。Cで塊状重合を行ない重合収率の圧力,温度による影響を検討した。生成ポリマ一は無触媒,高圧下で得られたものと同様にポリアセタール構造をもち,常温常圧下で解重合を起こす。反応は時間とともに飽和値をとり,この値は反応温度,圧力によって大きく影響を受けるが,触媒濃度には依存しない。一定温度または圧力下で,これらの収率を0に外挿して各圧下での天井温度を決定した。天井温度は5500kg/cm2で12。Cから8240 kg/cm2で36℃まで上昇した。一方,重合にともなうエントロピー変化Sp*,エソタルピ-変化4 H,*は,重合にともなう体積変化dVを測定することによって, Clausius-Clapeyronの式から決定し,∠Sp*= -21 e, u, aH,*= -6.3 kcal/mo1(7000 kg/cm2)の値を得た。常圧への外挿値は,天井温度-53℃,aHe*-4.2kcal/mo1,dS -19 euであった。
  • 上原 勝也, 三角 研策, 功刀 泰碩
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    パラキノンとジアゾ化したべソジジソから縮合多環化合物である耐熱性ポリアリーレンキノソを合成し,これを触媒として幽閉存在下でクメンの酸化脱水素反応を反応温度250~350。c,接触時間W/F=6~22(9-cat,hr/mol)で行ない,触媒活性,生成物分布について調べ,ポリアリーレンキノソの触媒作用について検討した。反応は酸素存在論で定常的に進行し,生成物としては,脱水素生成物であるα-メチルスチレンが主生成物で他にアセトフェノン,二酸化炭素が生成した。触媒の活性点は,パルス反応の結果および触媒の赤外吸収スペクトル測定結果からキノン基であると思われる。キノンが脱水益してヒドロキノンとなり,酸素によりふたたびキノンとなり触媒反応が進行するものと思われる
  • 小松 進, 山口 悟郎
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    原油の接触分解油ガス装置に使用されている,MgO-CaO-A1霧03-NiO系触媒の劣化について,その原因を明らかにするため,化学分析,X線分析などを行なった結果,触媒の表面部分に多量:のV205が検出され,またこの部分に未使用触媒にない鉱物が,新たに生成しているなどのことが判明した。
    このV205に由来すると思われる鉱物についてX線解析などにより,結晶系,格子定数,鉱物組成などの解析を行なった結果,つぎの2種類の鉱物であることが判明した。
    1)斜方晶形,格子定数,a=8.32,b=11.43,0=6.05,鉱物組歳,3MgO,V205
    2)六方墨形,格子定数,a=10.365,e= 37.058,鉱物組成,3(Ca,Mg)O,2 V20s
    さらに触媒中に生成するこれらの鉱物は,MgOの一部門NiOと置換された3(Mgi.x,Ni.) O。V20G,および3(Ca,Mgi.x,Ni.) O。2 V205となっている可能性が強い。
  • 西久保 忠臣, 一条 太郎, 今浦 雅一, 田戸 俊秀, 高岡 恒郎
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ビニルオキシエチルシンナマート(VEC)と無水マレイン酸(MAH)のラジカル共重合により測鎖にケイ皮酸エステル基をもった光橋かけ性ポリマーを合成した。等モル濃度で共重合したポリマーは交互共重合物であり,エチルメチルケトン中70。Cでアゾビスイソブチロニトリルを開始剤としたVEC(M,)-M AH(M,)のプ1=O.21,r2=O.14であった。またVEC-MAHコポリマーに増感剤として5-ニトロアセナフテソ,かニトロアニリン,N-アセチル-P-ニトロアニリン, N-アセチル-4-ニトロ-1-ナフチルアミンを加えた場合の相対感度はそれぞれ,200,281,281,790であった。さらにVECMAHコポリマ-に4-ニトロ-1-ナフチルアミンを加えて反応させ,KPRと同程度の相対感度を示すポリマーが得られた
  • 荒井 康夫, 安江 任, 山口 勇, 杉野 徹夫
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メカノケミカル脱水物の表面活性を触媒機能に利用することを目的として,摩砕によるジブサイト-含水シリカ混合物の挙動について検討を行なった。
    ジブサイトAI(OH)3と含水シリカSiO2,n H:20をSiO,/Al,03組成比10/90となるよう混合し,摩砕を行なうと,メカノケミカル脱水によってスピネル欠陥構造のγ-A1203と無定形シリカが生成するが,両者の間にA13+Pt Sit の相互置換が行なわれ,その表面に固体酸性度が発現する。しかし,摩砕の継続につれて,凝集による二次粒子の生成,大気中よりの水分の表面吸着が起こり,固体酸性度はそれほど大きくならないが(最高値02mmo1/g),加熱により表面をクリーニングすると,800~1000℃の高温域における固体酸性度は急増し(最高値O.9 mmg) ,同組成比の市販シリカーアルミナ触媒と同程度の機能を示すにいたる。水分の表面吸着をさけるため真空中で摩砕を行なうと,メカノケミカル脱水が促進されてすみやかにα-A120sに転移する。
    高温度域における固体酸性度の急増はγ-A120sの熱安定性の向上に起因することが指摘された。
  • 柏瀬 弘之, 佐藤 源一, 成田 栄一, 岡部 泰二郎
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    クロム鉱石を水酸化ナトリウム硝酸ナドリウム系溶融塩で分解しクロム酸ナトリウムを生成させる反応について270~350℃の温度域で速度論的検討を行なった。
    反応前後において鉱石の粒径はほとんど変化せず,この反応を外形不変の抽出型コア,モデルに基づいて検討すると,酸化率曲線は化学反応律速の場合の式
    1- (1-x) 1/3 = kt
    によく適合することが見いだされた。ここでXはクロム酸化率, kは定数, tは反応時間である。Arrheniusプロヅトから得られる見かけの活性化エネルギーは南ア,トランスバール産鉱石の場合29。2kcallmolであり,インドやブラジル産鉱石についてもほぼ同じ結果が得られた。
    さらに,関連物質のX線分析結果から,この反応にさいして溶融誌面の水酸化ナトリウムがクロム鉱石の安定なクロマイト講造を破壊してCr203成分を易反応性にし,硝酸ナトリウムがこれをCr6"に酸化するとともにそれ自体は亜硝酸塩に還元される役割を果たすことが推察される。
  • 青木 繁樹, 荒井 康夫
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 60-64
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    縮合リン酸基を含有する液体複合肥料は微量要素としての各種重金属を可溶化する性質をもっている。この性質を解明するため,低鎖長縮合リソ酸アンモニウム溶液中のMn2"の挙動をおもにポーラログラフィー,ペーパークロトグラフィーにより検討し,オルトー,ピロトリポリリン酸基のマンガンに対する錯イオンおよび沈殿の生成機構,安定領域,組成の差異を明らかにした。結果を要約するとつぎのとおりとなる。
    ピロリン酸アンモニウム溶液中ではM n2"の大部分はオルトーと同様に析出するが,Mn2Pρ5モル比0.5以下ではその一部は錯イオン[Mn P207 2] fi"として液相中に溶存する。析出する沈殿の結晶相はモル比1.5を境として異なるが,その組成はともに(NH4)2Mn3(P207)2,n H20で表わされ,水和量だけを異にする。
    トリポリリン酸アンモ=ウムはMn2÷の溶存能力が大きく,Mn2"/p20sモル比。 67以下で(1)式により錯イオン(MnP3010)3-として溶存するが,モル比0。67以上では(2)式により錯イオンが分解し,NH,Mn2P30in H20の組成の沈殿として析出する。(Mn2"+P30io5-) [MnP30ig]3- (1) [MnP,O,]3"m + Mn2:NUt1:1SHIU 20 NH"Mn2P30ie.n H201 (2)
  • 高橋 辰男, 小磯 武文, 田中 信行
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水溶液中におけるヘキサアンミソクロム(III)イオンおよびトリス(エチレンジアミン)クロム(III)イオンとヨウ化物イオンおよび過塩素酸イオンとの間のイオン会合定数を電気伝導度法ならびに分光光度法で決定した。
    電気伝灘度法から得た25℃における熱力学的会合定数,Keen,Mx,および過塩素酸イオンを含まない溶液条件で分光光度法から得た会合定数,Ksp,Mx,はそれぞれ,K n,(NNi sr=19 ± 4,K,p (NH)d =22±7,K,(eR):= 26±6,およびK,po(en),1=21±4であった。さらに,過塩素酸イオンが共存する条件で分光光度法より間接的に得た錯イナソと過塩素酸イオンとの会合定数はそれぞれ,K,p,r(eP,Clo=16±4,K,p,(N,II3),clo,=10 ± 8であり,これらは亀気伝導度法で得たKe cr(en),clo,=11±4,K。c,(NI,13),CIOi=,15±3と実験誤差を考慮すればほぼ一致すると考えられることからも,電気伝導度法ならびに分光光度法から得た会合定数にはなんら本質的な違いは認められなかった。また,クロム(III)錯イオンはその対応するコバルト(III)錯イオンに比較して過塩素酸イオンおよびヨウ化物イオンについては会合能がやや低いものと考えられる
  • 中川 良三
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    温泉水中の水銀の還元気化による無炎原子吸光分析法の検討を行なった。さらに,実試料について水銀を定量し,温泉水中の水銀とほかの成分との関係について調べた。
    温泉水中のヨウ化物イオンと硫化物イオンは水銀の原子吸光に強く干渉を示すが,過マンガン酸カリウムを添加することにより抑制できる。
    定量した55源泉の水銀含量は 0.01~26.0 Ptg/1であり,青森県恐山温泉,下風呂温泉,秋田県後生掛温泉,群馬県草津温泉,万座温泉に比較的多く含まれていた。
    一般に水銀含量の大きな温泉は,塩化物含量あるいは硫酸含量が大きい酸性泉である。酸性泉(pH ;5)の平均水銀含量は3.13μ9μであった。それに対して,弱酸性,中性泉(5;pH 7.5)では0.49Ptg/l,アルカリ性泉では, 33 /eg/1であった。
  • 山崎 満, 武内 次夫
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 74-78
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-テノイルトリフルオ"アセトン(TTA)およびその金属キレートのISC NMRスペクトルを測定して,スペクトルの帰属を行ない,金属キレートの1℃化学シフト,およびスピン結合定数の傾向を検討した。
    金属キレートのキレート環の1-位と3-位炭素の13C化学シフトは配位金属の電気陰性度の増加とともに低磁場シフトし,キレート環の=CH-炭素は配位金属のイオン半径の増加とともに高磁場シフトすることが見いだされた。また,=CH-炭素の13C化学シフトと=CH-プロトン化学シフトとの間にはよい相関関係が見いだされた。CF3置換基の13C化学シフトと19F化学シフトとの問には一定の相関は見られなかった。チオフェン置換基の炭素は配位金属から4結合も遠隔にあるにもかかわらず,1SC化学シブトは金属の種類により9ppmもシフトすることがわかった。
    スピン結合定数JFは配位金属のイオン半径の増加とともに増加し,σFはイオン半径の増加とともに減少することが見いだされた。また,これらスピン結合定数は配位金属のグループ別に,電気陰性度とも相関があることがわかった。
  • 大沢 茂樹, 永末 浩猷
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Meisenheimer錯体および類似錯体のシクロヘキサジエニリドイオンとアルカリ金属イオン,およびアルカリ土類金属メトキシドイオンの相互作用は,シクロヘキサジエニリド環と結合しているNO,基の同一平面性とシクロヘキサジエニリド環のπ電子の非局在化の度合に関連しているe 金属陽イオンとシクロヘキサジエニリドイオンとの相互作用の研究から,反応速度,IRスペクトル,NMRスペクトルおよび誘電率を測定した。その結果から錯体の安定度と構造との関係についてつぎのようないくつかの知見が得られた。
    (1)錯体の安定度はNO,基の数と陽イオンの電荷の強さの順に決定される。すなわちNao<R<Cs+<K÷およびCa+OCH3 Sr℃CH,(Ba"OCH3である。
    (2)錯体のケタール結合および〓R齢のIRスペハルは,そ妨の陽イナンの影獣よって異なる。
    (3)錯体が不安定であるほどNO2基のIRスペクトルの強度は大きい。そして錯体がより安定になれぽそれは現われない。
    (4)錯体のyasm NO2とysm NO2の波数は錯体が不安定になるにしたがって,最終生成物の波数に近づく。
  • 藤田 佳平衛, 山本 和正, 庄野 達哉
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 86-91
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェニルプロピオール酸メチルおよびフェニルエチニルメチルケトンとアルケンシク ヘキセンデテトラメチルエチレン,プロペソ,ピ シクロ[2.2,1]ヘプト-2-エン,ピシクpa(2.2.1コヘプタ-2,5-ジェソ)との光付加反応を行なった。その結果,光一次生成物として収率よくシクロブテソ誘導体が生成することが認められた。後二者のアルケンの場合は,生成物はエキソ付加物であった フェニルプ ピオール酸メチルとプロペンとの反応において,付加にかなりの配向性が見られた。フェニルエチニルメチルヶトンとビシクロ(2.2)ヘプタ-2,5-ジェンとの光反応で,シクロプテン誘導体以外にホモ-Diels-Alder-付加反応生成物,およびオキセタン誘導体が生成した。相当する二重結合化合物であるケィ皮酸メチルおよびベンザルァセトソとアルケソとの光反応を行なったが,付加体はまったく生成せず,それ自身のシスートランス異深化のみが認められた。
  • 植田 昭男, 村松 広重, 犬飼 鑑
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 92-97
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリフルオPtシクPブテン類,(CF2)2CH,CC1〔1〕,(CF2)2CF=CC1〔2〕および(CF2)2CH=CF 〔3〕とアルコール類,メチル-,エチル-,n-プPtピルーおよびイソプロピルアルコールとのγ線照射によるラジカル付加反応について研究した。
    〔1〕および〔2〕の場合には,α-ヒドロキシアルキルラジカルがそれぞれ二重結合の=CH:側および=CF側から付加した1:1付加物のみが得られたが,〔3〕の場合には=C F側から付加した(C F2)2CH2CFCRRtOH〔7〕と=CH側から付加した(CF2)2CFHCHCRRiOH:〔8〕が得られた。
    〔7〕と〔8〕の生成割合はアルコールの構造と密接な関係にあり,立体効果の影響が認められた。
  • 植田 昭男, 村松 広重, 犬飼 鑑
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 97-102
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,3,3,4,4-ペンタフルオロシクロブテン〔1〕とアルデヒド類,アセト-プロE" t-,かブチル-およびイソブチルアルデヒドとのγ線照射によるラジカル付加反応について研究した。
    その結果 アシルラジカルが二重結合の=CF 側から付加した(CF2),CH2CFCOR〔4〕と=CH側 I Iから伽した(e) CHFgHCOR〔5〕 不飽和1:1伽物(iF) CH=gCOR〔6〕および対州造の1:2付加物ROCCH(CF2),CHCOR〔7〕が得られた。
    1:1付加物 〔4〕と〔5〕の生成割合はアルデヒドの構造と無関係につねに 一定であり,〔4〕:〔5〕=1:2であった。
    〔5〕は不安定な化合物で温和な条件下でも脱フヅ化水素し〔6〕を生成するが,〔4〕は安定な化合物であった。
    アルデヒド類の見かけ上の反応性はつぎの順序で減少した。
    n--CsH7CHO>C2HsCHO2CHsCHO>>i-CsH7CHO
  • 結城 康夫, 毛利 俊甫
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 103-107
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニトロ化試薬として硫酸とKNO3を用いて4種のアニリノおよびフェニル置換1,3,5-トリアジンのニトPt化を行なった。生成物の確認は別途:合成あるいはNMRにより行なハた。その結果,2-アミノ-4-アニリノ-1,3,5-トリアジンのニトロ化ではまず2-アミノー4-(P-ニトロアニリノ)-1,3,5-トリアジソが生成し,ついで2-アミノ-4-(2,4-ジニトPアニリノ)-1,3,5-トリアジンが生成した。2-アミノ-4-アニリノ-6-メチル-1,31 5LトリアジンのニトPt化でも類似のニトロ化合物が得られた。2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5- 5リアンのニトロ化では2,4-ジアミノー6- (m-ニトロフェニル)-1,3,5- 5リアジソが得られた。2-アミノ-4-アニリノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジンのニトP化では,初めに2-アミノ-4r (ρ-ニトロアニリノ)-6-フェニル-1,3,5-トリアジンが生成し,ついで2-アミノ-4-(2,4-ジニトロアニリノ)-6-フェニル-1,3,5-トリアジソが生成し,最後に2-アミノ-4-(2,4-ジニトロニリノ)-6-(m-ニトロフェニル)-1,3,5-トリアジソが生成することがわかった。
  • 滝口 利夫, 藤川 恵里, 山本 靖, 植田 政良
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 108-111
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    (1)カリウムフェニルシラソトリナールの水溶液と無水酢酸とのMIBK層を介しての反応,(2)ジラノラート水溶液とクロロホルムとの反応,(3)フェニルトリクロロシランとアミン水溶液とのMIBKl層を介しての反応,をいずれも還流温度において行ない,高収率で可溶性ポリフェニルシルセスキオキサンを得た。生成物の(η)(ベンゼン,25℃)はO. 06~0。13であり,0.1%のKOHとの加熱で徐々に高分子化し,[η]=0.33,分子量7.2×1 O姦に達する。同様の方法を,(1)フェニルトリクロロシラソージフェニルジク恩命シラン(1:1),(2)フェニルトリクロロシラソーメチルフェニルジクロロシラン(1:1),(3)フェニルトリクロロシランービニルトリクロロシラン(1:1)について行ない,いずれも可溶性共重合ポリシロキサンを得た。(1)の生成物は:mp 75~85 Cの固体であり (2)の生成物は高粘度のガム状物質であった。( ),(2)の生成物はともにアルコール以外の多くの溶剤に可溶であり,IRスペクトルよりシクロテトラシロキサンを主体とする鎖状ポリマーと考えられる。(3)の生成物は可溶性固体であり,融点を示さず350 C以上で徐々に溶解性を失う。
  • 吉川 彰一, 林 隆俊, 大津 昇, 野村 正勝
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 112-117
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らは,NaCI,KCIとCuC1またはZnC12との混合溶融塩存在下でC6H: C CH3とCI2,の反応を250~450℃で試み,混合溶融塩の組成と生成物分布との関係を検討した。
    生成物はおもにスチレン系化合物とβ-クロロエチルベンゼンであり,反応温度350。Cではスチレン系化合物の生成率は:Lewis酸型のZnCI2存在下よりもイオン型のCuCI存在下の方が大きいことな認めた。この反応を無触媒気相下で行なうと,おもにC,H5CH(Cl)CH3とC6H5-CH2CHC1が得られ,スモチレン系化合物はあまり得られなかった。
    他方,C6H5-CH2CH2C1とC,H5CH(Cl)CH3をそれぞれ,溶融塩中に吹き込んで脱塩化水素反応を試みたところ,前者はほとんど脱塩化水素反応を起こさなかったが,後者は塩の種類に関係なく定量的にスチレンを与えたことから,溶融塩中で生成するスチレン系化合物は,CGH5-CH(C1)CH3を中間体としているものと推察される。
    また,エチルベソゼソと塩素の反応を,芳香核とコンプレックスを形成する作用をもつHCIガス共存下で試みた。その場合,側鎖エチル基のα-位:とβ-位の塩素原子との相対的反応性を便宜的に示す比率(スチレン系化合物+α-クロPtエチルベンゼン)×1/2/(β-クロPt =チルベンゼン)×1/3が,窒素気流下の反応のそれよりも小さくなる傾向をもつことが認められた。
    以上のことから判断すると,ZnC12塩存在下の反癒でC廿C1塩よりもスチレン系化合物が少なくなるのは,HC1と類似したLewis酸型のZnC12とエチルベンゼンの芳香核とがコンプレヅクスを形成する結果,側鎖エチル基のα-C-Hと塩素原子との反応性が相対的に低下し,スチレンの前駆体であるC,H,CH(C1)CH3の生成量が減少することに起因していると推察された。
  • 橋本 静信, 藤井 宏紀
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 117-121
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α-ニトロナフタレンの硫化ナトリウム還元に関して,工業的に還元を行なうために,いろいろの検討を行なった。この結果,硫化物の濃度が高くなるにしたがいα-アミノナフタレンへの選択率は低下することが判明したが,硫化水素ナトリウムと水酸化ナトリウムと硫黄のモル比を変えることによって,高濃度の場合(約20%の硫化水素ナトリウム)でも高い収率でα-アミノナフタレンを得ることができた。さらに工業的に必要な条件の検討を行なった結果,調製した硫化物の溶液は1日放置したのち使用するのが好ましい。還元剤の必要モル数は,理論の3倍以上使用することが好ましい。反応温度は高いほどよい。塩化鉄(III)の存在は,α-アミノナフタレンへの選択率をよくするが,水酸化物イオンの増加は悪くすることが判明した。-方,被還元物質の品質もα-アミノナフタレンへの選択率に大きな影響を与えることがわかり,CU-ニトロナフタレンでは,温水洗浄したものが好ましいことが判明した。これらの各条件を組み合わせることにより,最適条件を定めることができた。この結果選択率93%でα-アミノナフタレンを得る方法を確立することができた。
  • 亀尾 貴, 西村 信司, 真鍋 修
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 122-126
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の撞体上に保持された芳香族スルホン酸類を触媒として硝酸でトルェソをニトロ化した場合,担体を使用しないときにくらぺてモノニトロ化生成物の収率およびP/o値を大きく増大させ得ることが℃きた。スルホン酸としてはニトロ化反応条件下で粘い液状であるスルホン酸,たとえば,トルエン-2,4-ジスルホン酸,m-ベンゼン:ジスルホン酸,o-m-,ρ-ニトロベンゼンスルホン酸の混合物などがとくに効果的であった。また担体としてはケイソウ土(セライト545)が適当であると思われた。セライト-545に保持されたトルエン-2,4-ジスルホン酸, m-ベンゼソジズルホン酸,o-,m-,P-ニトロベンゼンスルホン酸の混合物,クロロベンゼソ-2,4-ジスルホγ酸およびポリスチレンスルホン酸をニトP化触媒として使用した結果,モノニトロ化生成物のρ 。値および収率はそれぞれ,1.61,96%1.53,92%o,1.5,91%,1。47,90%,1 42,77%であった。セライト-545を使用せずスルポソ酸のみを触媒としたとき のそれぞれの値は,1.05,72%e,1.08,81%,1.25,84%,0.91,83%,0.70,50%であった。
    トルエンのニトロ化における芳香族スルホン酸類および担体の作用機作についても検討した。
  • 藤田 安二, 藤田 真一, 香山 信博, 長谷川 幸雄, 川合 広信
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 127-131
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    サフロ一ル〔1〕をアニリン塩酸塩〔2〕,アニリン〔3〕とともに油浴で230~240。Cに加熱すれば,まず脱アリル反応が起こりメチレンジオキシベソゼン〔5〕が生ずる。そしてこのものの脱メチレソ反応によりさらにカテコール〔4〕ができるe脱離したアリル基は〔3〕に付加して複雑な転位反応を起こして,o-プロピルアニリン〔9〕, P-プロピルアニリン〔7〕,P-エチルアニリン〔8〕,P-トルイジソ〔6〕を生じ,さらに2-メチル-2,3-ジヒドロインドール〔10〕などもできる。なおこのさい脱離したメチレソ基は〔3〕と反応し,主として4,4i-ジアミノージフェニルメタソ〔11〕となる。
    イソサフロール〔12〕もまったく同様の生成物を与えるが,反応性は〔1〕よりもはるかに大きい。〔1〕の場合にも。-アリルアニリソ〔14〕から-プロペニルアニリン〔17〕に異性化し,つついて不均化反応が起こるもののようで,〔14〕の前駆物質はN-アリルアニリン〔13〕である。
    3,4-メチレンジオキシケイ皮酸〔18〕の場合も同様,少量の〔5〕のほか主として〔4〕を生じ,塩基性部には少量の〔6〕とやや多量の〔8〕ができる。このさいには〔18〕の脱炭酸によってまず3,4-メチレンジオキシスチレン〔19〕を生じ,さらに脱ビニル反応により〔5〕となり,このものから〔4〕になるもので,脱離したメチレン基は〔3〕と反応して,ジアミノージフェニル尊勝ンとなり,脱離したビニル基はまた〔3〕と反応し,中間にN-ビニルアニリン〔21〕,o-ビニルアニリン〔22〕,P-ビニルア,ニリン〔23〕となり,最後に不均化反応によって〔8〕および少量の〔6〕となり,一方にタール状物質ができる。
  • 藤田 安二, 藤田 真一, 大倉 久栄
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 132-135
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リナロオールの三フヅ化ホウ素またはヨウ素による脱水異性化によってβ-ピネンができるという報告が現われたので,これらの反応の再検討を行なった。
    三フッ化ホウ素の場合にはまずリナロオールの脱水によってβ-ミルセソができ,このものの脚部がリモネシに異性化し,さらにα-テルピネソ,イソテルピノレンなどに異性化後,不均化反応によってP-シメンとなり,一方にρ-メソタンもできる。しかしこのさいβ-ミルセソはジヒドロミルセソのほか多数のCi6HisF zおよびCieHig F 3化合物へも変化する。
    ヨウ素との反応の場合も同様な近似反応が起るが,三フッ化ホウ素の場合よりもさらに複雑であり,いずれの場合にもβ-ピネン,α-ピネソ,カンフェンなどの生成は起こらない。
  • 野老山 喬, 西川 隆也, 安藤 和夫, 野村 雅庸, 久保田 尚志
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 136-146
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    スクレリン(1)の芳香環上のメチル基の置換の異なる7個の同族体のすべてを合成した。大部分は既存のスクレリン合成法を適用して合成したが,2個の化合物はそれぞれ独自の方法によって合成した。得られた同族体のスペクトルデータおよび化学的性質について考察を行ない,とくに後者は著者らがスクレリンの無水物環の異常な安定性について加えていた推察を定性的に支持するものであることがわかった。
  • 仲川 勤
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 147-154
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酢酸ビニルの含有量が11.2および13.8mo1%であるエチレソ-酢酸ビニル共重合体(EVAc)の膜をつくり,これを0~400Cの所定温度のナトリウムメトキシドのメタノール溶液に浸漬した。加水分解の条件により,EVAc膜の表面からかぎられた深さだけ加水分解された部分加水分解の膜(EVA1-EVAc-EVAI)および膜の内部まで十分加水分解された膜(EVA1)を得た。
    これらの膜の透過係数(P),拡散係数(D)および溶解度係数(S)を,10~60。Cの温度範囲で,ヘリウム,水素二酸化炭素,酸素,アルゴンおよび窒素について測定した。13.8:mo1%の酢酸ビニルを含むEVAcから得たEVA1のP,DはもとのEVAcに比較して1/8~150に減少したが,透過および拡散の活性化エネルギーはそれほど変化せず,ポリエチレンの値と類似していた。EVAc膜の加水分解で得たEVA1の結晶化度は変わらないことから,このP,Dの減少は膜に生成した水素結合による高分子鎖の不動性によるものと考えられる。部分加水分解の三層膜,EVAI-EVAc-EVAIの溶解度係数は,ヘリウムや窒素の気体については,平衡溶解を与える式から得られた値と,P/Dから得られた値と比較的よい一致を示した。
  • 井本 稔, 大内 辰郎, 上納 勇, 諌山 康行
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 155-158
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    HCONH2,C,H,CONH2,η-C3H7CON,CH2=CHCONH2の4種の脂肪酸アミドとホルムアルデヒドとの反応をNaOHの存在にて速度論的に研究した。Q-CONH,でQ基が電子吸引性であるほど反応は速く進行する。またホルムアルデヒドのある濃度以上では,ホルムアルデヒドの濃度に関係なく速度は一定になる。これらから,反応は Q-CONH,+OH-Q-CONH-+H,Oなる段階が律速的で,そのアニオンがケージをつくり,ケージの中に平衡的に存在するホルムアルデヒドのみがアニオンと反応してゆくことを考えた。
  • 李 武男, 箕浦 有二
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 159-163
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2価の酢酸クロム(Cr2+)-CHCI3系を開始剤としてジメチルホルム7ルミド中でスチレン(St)が重合することを明らかにしてきたが,[Cr2"]/[CH:CI8] 20の場合,重合速度はCr2÷濃度が増大しても大きくならないことが認められた。そこでα,α,-アゾピスイソブチ士爵トリルを開始剤としてCr2+の存在下で重合を行ないCr2"による重合の停止作用について詳しく調べた Stの重合はCr2÷により遅延されポリマーラジカルとの停止反応速度定数として74.6 1/M。1 secが得られた。さらに得られたポリマーのGPC分析からも検討を加えた。一方,メタクリル酸メチル,アタリロニトリルの重合はCr2+により完全に禁止された。この停止効果の差についてモノマーのe値から考察した。
    Stの重合系にCr2÷とP-ペソゾキノソ(P-BQ)が共存するとCr2+による遅延効果とρ-BQによきる禁止効果はともに消失することが認められ,これはかBQがCr2+と反応し酸化生成物形成するためであることが明らかにされた。
  • 箕浦 有二, 三刀 基郷, 平井 靖男
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 164-168
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    MMAの重合をいろいろのエーテル中(プロピレン オキシド(PO),テトラヒ.ドロフラン(THF),エピクロロヒドリン(ECH),3,3-ビス(クロロメチル)オキサシクロプタン(BCMO ,β-クロロフェネトール(β-CPT))で重合を行なった結果,THF,PO中では重合速度はベソゼソ中と変わりなかったが,BCMO,ECH,β-CPTでは重合速度および重合度がこれらのエーテルの添加量の増加にどもなって増加することを見いだした。この加速効果が重合系の粘度増大による停止速度の減少にあることを明らかにし,これらのエーテルの連鎖移動定数を粘度による=補正を行ない求めた。
  • 伴野 亟計, 長谷川 悦雄, 土田 英俊
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 169-173
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリアミン重合体とヨウ素との電荷移動(CT)錯体形成を経た1ゴイオン生成反応において,その生成速度が重合体系でいちじるしく促進されることを見いだし,その原因が重合体系では反応活性点付近の局部的なドナー基濃度の増大と誘電率の増大が起こるためであることを明らかにした。また,π-アクセフターであり立体的に大きい7,7,8,8-テトラシアノキノジメタソ(CQ)とポリアミン重合体との反応によるCQアニオンラジカル生成速度(va一次反応)は重合体系とその低分子モデル化合物系で差がなく,この場合には重合体鎖の立体障害が原因で,1ゴイオン生成反応で認められた高分子効果が阻害されたためと考えられる。この反応は,CT錯体形成を経ることなく進行する直接一電子移動反応であることが示唆された。
  • 土田 英俊, 雁野 幸生, 重原 淳孝, 栗村 芳実
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 174-177
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    cis-[Co(III)(en)2PVPCI]C12(PVP:ポリ(4-ビニルピリジン))のFe2+およびFe(H)エチレンジアミン四酢酸2 -(FeEDTA2-)による還元(電子移動)反応を検討した。F÷による還元は同種イオン間反応であるため反応速度は小さく,対応する低分子ピリジソ(Py)錯体にくらべ 反応性嫡113~15程度に低下した。一方,FeEDTA2-による還元は異種イオン間反応であるため迅速反応となるが,PVP錯体ではPy錯体とくらべ約20倍反応性が高い。また,配位度の増加にともない速度定数比(kpvp/ky)は増大し,イオン強度を増加すると比はいちじるしく小さくなった。PVP錯体での反応性増大は,高分子の主鎖に沿って[Co(III)]2÷が高密度化されているため,domain中にFeEffTA2-が濃縮されるからである。この静電場効果をイオン間反応における高分子電解質の触媒作用と比較議論した。
  • 松本 恒隆, 中前 勝彦, 大久保 政芳, 陶 正史, 嶋尾 正行
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 178-184
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリアクリル葭水溶液にエチレンジアミンを混合すれば,特定の中和度領域でのみ白濁粒子が形成されることを認めた。そこで,その生成機構について系の濁度,粘度,電気伝導度などから検討を加えた。得られた主な結果はつぎのようである。(1)系の粘度は1価アミンによる中称の場合に比較していちじるしく低く,その中和度一粘度曲線は極大値,極小値を有した。(2)系の電導度の測定より,エノチレソジアミソがポリアクリル酸に吸着固定されることがわかった。(3)アクリル酸一アクリル酸エチメル共重合体においては,そのアクリル酸エチル共重合モル比の増大につれて白濁中和度領域は減少し,10m1%以上ではもはや自濁粒子は生成しなかった。(4)エチレンジアミン以外のアミンでは,ジエチレントリアミン,トリエチレンテトラミンなどのようなエチレン炭素鎖を有した多価アミンのみが白濁粒子を形成させた。以上の結果から,ポリアクリル酸一エチレンジアミン系の白濁粒子の生成は,ポリアクリル酸の隣接カルボキシル基間にエチレンジアミンの2価カチオンが吸着固定され,しかも,ポリアクリル酸の主鎖にそってエチレン炭素鎖が規則的にうまく配列されることにより,ポリアクリル酸が疎水化されるためと推定した。
  • 西久保 忠臣, 今浦 雅一, 三岡 恒郎
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 185-186
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A new photosensitive polymer with pendant cinnamic ester group was prepared from poly(vinylalcohol) bY graft ring opening alternating copolymerization with glycidyi cinnamate and phthalic anhydride in hexamethyl phosphoramide.
    The relative photo sensitivity of the obtained graft polymer containing 5-nitroacenaphthene as a sensitizer was ca. 22.4 times higher than that of KPR, and ca. 4 times higher than that of poly(vinyl cinnamate), which has the same degree of polymerization as the graft of polymer.
  • 宮原 正樹, 大坪 義雄
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 187-191
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A new simple notation describing close-packed structures was given. The layer sequence of close-packed anions was represented by the symbols of polytypism, and the arrangement of cations in the tetrahedral and octahedral voids was indicated briefly by the fractions of the voids occupied. A rhenium trioxide and a cristobalite.q, tructures were expressed in terms ofdefect of anions fromclose-packing.The arrangement of cesium chloride was also represented by a stackingof ionic layers.The structures of about a hundred inorganic compounds were described (Table 2N7), and the correlation of these structures was discussed.
  • 北野 孝久
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 191-193
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The detection of a short circuit of electrodes in the mercury cell was successfully carried out by passing by-pass current to the Pt anode probe. The amalgam ripple on the cathode was found to be unexpectedly high (the thickness of the amalgam ripple:0 5-1.Omm), for which fact the technological analysis would be expecte
  • 大部 芳広, 土井 清人, 松田 勗
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 193-195
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The reaction of butylmagnesium bromide and allyl chloride in the presence of nearly equal amount of the nickel or cobalt complexes coordinated with phosphine yielded large proportions of octane (56-v61%) and 1, 5-hexadiene (40N59%), which is in marked centrast to those propylene 70%e and butenes 71% obtainedin the presence of catqlytic amount of the metal chlorides.
    The addition of hexamethylphosphortriamide (2 equives to BuMgBr) to the latter reaction conditiengave the similar effect as in the case of the coordinated metal complexes.
    The principal effect of the ligand was deduced to lie in the stabilization of thedibutyl metal interrmediate from'butylmagnesium bromide rather than rr-allylmetal intermediate.
    TheLdependence of the products on the quantity of a, a'-dipyridyl nickel and cobalt chlorides showed that the ligand effect becomes appreciable only at a higher concentration ( 10-S) of the metal complexes.
  • 亀尾 貴, 真鍋 修
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 195-197
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The products obtained by the nitration of ethyl benzen, isopropyl benzene and halobenzenes with nitric acid and 2, 4-teluenedisulfonic acid (TDS), supported on diatomaceous earth (Celite-545), showed considerably higher para-ortho ratio (P/o) than that observed in the nitration with nitric acid and sulfuric acid (mixed acid nitration), similarly as the case ef nitration of toluene.
    The results are shown in Table 2.
    The nitration of e-xylene in a similar manner gave also high 4-nitro-o-xylene/3-nitro-e-xylene ratio and mononitration yield (3.02 and 90%) than those observed in the nitration with nitrie acid and sulfuric acid (O, 99 and 80%).
  • 松田 敏雄, 成瀬 昭一, 林 征男, 高田 善之
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 198-200
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Sulfur monochloride and carboxylic acids do not reqct without catalyst, but react, easily in the presence of catalyst such as reduced iron powder, ferrous chloride, sulfate, oxqlate and formate, and ferric chlQride, sulphate and acetate giving acid chlorides. Arematic mpno- and dicarboxylic acids (isophthalic and terephtha1ic acids, with exception of phthalic acid)'and lower fatty acids produced acid chlorides in geod yields. Adipic aid, aliphatic dicarbexylic acid, produced small quantity of acid chloride in the presence of ferric acetate enly, . but in the presence of ferric acetate and pyridine the yield of acid chloride rose to about 5Q%.
  • 菊池 康男, 福田 洋
    1974 年 1974 巻 1 号 p. 200-202
    発行日: 1974/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Electroinitiated polymerization of N- Vinylcarbazole was studied in various solvents It was found that the polymerization proceeded in acetic anhydride and acetonitrile solutions containing lithium perchlorate.
    UV-and IR-spectroscopic studies showed that the structures of the polymers so formed were similar to those of the polymers produced by the usual cationic polymerization. Furthermore, the presence of very active species in the electrolyzed solution suggests that acyl grgups or hydrogen cations which were produced by electro1ysis of acetic anhydride or acet6nitrile, initiated the polymerization.
    Moreover, it was assumed that the polymerization initiated by electrolysis proceeds via a cationic mechanism.
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