日本化学会誌(化学と工業化学)
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1975 巻, 12 号
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  • 永田 親清, 永田 秀雄, 田中 誠之
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2045-2048
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    安息香酸誘導体18種について13C-NMRを測定し,CNDO/2MO法による全電子密度の計算を行なって,化学シフトと物理定数との関係について検討した。その結果,m-およびp-置換体において,pKαとカルボキシル基のヒドロキシ酸素の全電子密度との問に,それぞれ並行関係のあることがわかった。また,カルボキシル炭素の化学シフトとpK,との間にも,それぞれ非常によい直線関係が成立した。p-置換体においてはカルボキシル基の結合している環炭素の化学シフトとpKαとの問にもよい直線関係が成立するがカルボキシル炭素の場合とは勾配は逆であった。
    m-およびp-置換体のカルボキシル炭素の化学シフトとπ-電子密度との間にも,それぞれ直線関係があるが,勾配はたがいに逆であることがわかった。
    これらのことから,p-置換体においては置換基と環との共鳴効果が安息香酸誘導体の物理定数を支配しているのに対して,m-置換体では置換基による誘起効果が支配的であると考えられる。
  • 磯野 俊秋
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2049-2053
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    液状イオン交換体を隔膜に用いて電解質水溶液系のDonnan膜平衡を測定する目的で,容器中に液状イオン交換体が滴下する形式の測定容器を試作した。この滴下法は,電解質溶液と液状イオン交擦との問の界面を安定にたもってイオン交換を進める従来のU字管形式のような方法とくらべて,平衡到達時間の短いこと,膜の爾側の水溶液が測定中に混り合うおそれのないこと,かきまぜ装置を要しないこと,などの利点をもっている。測定の実例として0.5mol/μ塩化アンモニウム/液状陰イオン交換体/0.5~4mol/l硝酸ナトリウム系の膜平衡を決定した。
  • 上平 初穂, 上平 恒
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2054-2059
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    グルクロン酸ナトリウム(NaGlcA)およびグルコサミン塩酸塩(GlcNH3Cl)の水溶液中の活量係数を,等蒸気圧法によって25℃で測定した。両者の活量係数は濃度とともに減少するが,GlcNH3Clでは1.3mol/l付近に最小値をとる傾向を示したのに対し,NaGlcAでは測定した全濃度範囲(~1.5mol/l)で活量係数が減少した。25℃における比重の測定から,無限希釈における部分分子容を求めた。これらは,NaGlcAおよびGlc1寸H3Clに対してそれぞれ,94.4および131(ml/mol)であった。NaGlcAと尿素と水の三成分系におけるNaGlcAの活量係数は,尿素によって減少した。その減少量は,尿素濃度の高いほど大きいが,NaGlcAの濃度が高くなると尿素による減少の程度が小さくなった。また,尿素の活量係数もNaGlcAにょって減少したが,減少の程度は尿素濃度に強く依存した,水から5m尿素溶液へNaGlcAが移動するさいの自由エネルギー変化の値は,NaGlcAが無限希釈の場合には-360(J/mol),NaGlcAが1mの場合は+140(J/mol)であった。
  • 宮嶋 孝一郎, 北村 桂介, 稲荷 恭三, 中垣 正幸
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2060-2064
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    グアニジニウム塩水溶液の水構造におよぼす影響を調べるために,種々の対イオンをもつグアニジニウム塩水溶液の濃度,温度pHをかえてNMRスペクトルを測定した。これら塩水溶液の水のプロトンのシグナルは,対イオンがSO42-,CH3COO-,CO32-のときは,純水のプロトンよりこの順により低磁場側へ,また対イオンがNO3-,Cr,Br-,r,SCN-のときはこの順序でより高磁場側にシフトした。グアニジニウムイオンのモルシフトはNH4+のモルシフトを0としたとき-0.044(負は高磁場側)となりモルシフトの温度変化は正となった。これらの結果からグアニジニウムイオンは水構造破壊イオンと結論された。一方,グアニジニウムイオンと水のプロトンとのプロトン交換反応がOH-によって触媒されることを見いだした。この反応はグアニジニウムイオン濃度の1次に比例し,その速度定数として1.5x1010l/mol,sec(15℃),4.5x1010l/mol,sec(32℃),1.4×1011l/mol,sec(45℃)を得,反応の活性化エネルギーは15kcal/molを得た。
  • 盛岡 良雄, 柏田 茂, 青山 一樹, 小林 純一, 樋口 泉
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2065-2068
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルミナおよびシリカの多孔体試料について,数種の液体による密度および収着等温線の測定を行なった。各試料は種々の温度で加熱処理し,細孔構造や表面積を大輻に変化させて用いた。シリカでは浸潰液の違いによる密度の測定値の差はなかったが,表面積の大きいアルミナ試料ではいちじるしい差が認められた。
    アルミナ試料について得られた密度値の差の原因を細孔内での液体の圧縮に帰し,各浸漬液の場合についてヘリウムによる真密度の値との違いから圧縮容積ΔV,を計算した。ΔVは多孔体のBET容量,つまり比表面積に比例することから,液体の圧縮はアルミナの表面効果によるものであると結論づけた。
    さらにこのような圧縮現象は収着等温線の測定における細孔内疑縮液についても同様に起こっていることを明らかにし,収着法による細孔構造の解析にはこの影響をも考慮すべきであることを示唆した。
  • 高宮 信夫, 福田 隆, 堀井 純, 村井 資長
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2069-2073
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    多孔性の強酸性陽イオン交換樹脂を触媒としてエタノールとプロピオン酸によるプロピオン酸エチル合成反応を常圧固定床流通法で行なった。プロピオン酸エチル収率はH+型樹脂を使用して,実験温度範囲内では120℃で最高87.5mol%を得た。
    反応温度が上昇するにつれ,プロピオン酸エチルは減少し,反対にジエチルエーテルの増加する傾向が見られた。
    樹脂のスルホン基のプロトンを他の金属イオン(Li+,Na+,K+,Mn2+,Ca2+,Ni2+,Mg2+,Al3+)で部分的に交換して触媒活性を比較すると,同交換度において1衝ではLi+>Na+>K+,2価ではとくに差がなかった。3価のAl3+の場合は高交換度でも活性が存在し,他の金属イオンにくらべていちじるしい違いを見せている。
    初期速度付近でのエタノー,ル,プロピオン酸分圧変化より本反応はLangmuir-Hinshelwood機構によくあてはまることが明らかにされた。
  • 角田 隆弘, 山岡 亜夫, 高山 蹊男
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2074-2079
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-アジドピレンの光分解により生成する1-ピレニルニトレンは脱気ベンゼン中では1,1アゾピレンを,メタノール中では1,1'ーアゾピレンおよび1-アミノピレンを,ベンゼン-フェノール混合溶媒中では1,1'ーアゾピレン,1-アミノピレンのほかにキノンイミン型化合物であるN-(1-ピレニル)-p-ベンゾキノンモノィミンを生成する。また,フェノール樹脂マトリックス中では1,1'-アゾピレン,1-アミノピレンとともにフェノール核との反応によるキノンィミンを生成し,フェノール樹脂をアルカリ水溶液に不溶化する。溶媒中に酸素が溶存する場合にはこれら化合物のほかに1-ニトロピレン,1,1,-アゾキシピレンが生成する。1-ピレニルニトレンの溶媒からの水素引き抜きにより生成する1-アミノピレンの量から求めた水素引き抜きの速度定数は,トルエン,p-キシレン,エチルベンゼン,クメン,メタノール,ジフェニルメタン,フェノールでそれぞれ1.1×103,1.8x103,3.7x103,1.8x103,4.0x103,6.0x104,~2x105mol-1,sec-1である。また,ベンゼンの水素はほとんど引き抜かれない。1-ピレニルニトレンと2,4-キシレノールからはN-(1-ピレニル)-2,4-ジメチルク-ベンゾキノンモノィミン2,6-キシレノールからはN-(1-ピレニル)-2,6-ジメチル-p-ベンゾキノンモノイミン,また,ベンジルフェノールからはN-(1-ピレニル)-4-ベンジル-o-ベンゾキノンモノイミンが生成する。
  • 山下 嗣人
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2080-2083
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    濃厚亜鉛酸アルカリ溶液中における電析亜鉛の樹枝状化およびコケ状化は溶液中の微量鉛イオンによって抑劉され,微細結晶を得た。本研究においては鉛イオンの亜鉛樹枝状化の抑制機講を調べる目的で,鉛の亜鉛中への共析量を求めた。また鉛イオンの充放電サイクルならびに電析結果におよぼす影響を含めて検討した。
    鉛の亜鉛中への共析量は溶液中の鉛イオン濃度に比例して増加する。また電解初期および小さい電流密度で共析しやすいが,カンード電位には依存しない。鉛の析出量は亜鉛析出量の0.1~1%であり,これはさきに報告したテルル析出量の20~400倍に相当する。鉛は比較的多量共析して亜鉛の樹枝状化を抑制し,なめらかな結晶を与えるものと考えられ,テルルとの抑制機構の相違を明らかにした。
    充放電をくり返すとコケ状ならびにスポンジ状析出物を生じやすいが,鉛イオンはこれらを抑制し,充放電のくり返しにおける亜鉛の平滑化に対しても大きな効果を示した。これらはとくに充放電時間の短い場合に顕著であった。
  • 岡崎 進, 木次谷 富康
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2084-2088
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    環状オレフィンと酸化チタン表面との反応について知るため,プロピレンオキシドを例として,その沸点で常圧循環法で反応を行ない,反応の進行度,反応生成物の推定構造,物性などについて調べた。
    その結果,反応進行度は酸化チタン表面のOH基量の多少により大きく支配され,表面OH基量の多い低温焼成酸化チタンの場合,表面OHはほぼ完全にプロピレンオキシドと反応するだけではなく,後者の一部の重合をも促進すること,とくにアンプル内でさらに高温60℃で長時間(68時間)反応させると重合度は10以上にも達することなどがわかった。
    IR吸収スペクトルより,生成物の構造は,下図のように推定され,このTi-0結合には極性的性格が強いため,熱的にはかなり安定で,空気中250℃くらいまでの加熱に耐えるが,いちじるしく加水分解しやすい。
  • 吉田 章, 松田 応作
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2089-2097
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    南九州地方に広く分布するシラス火山灰に水酸化ナトリウム溶液を加えて,200~1000℃の間で加熱焼成し,生成する焼成物に水を加えて90℃で水熱処理して得られるゼオライト種をX線回折法で調べ,ホージャサイト型ゼオライトの生成率と焼成および水熱処理条件との関係を検討した。ホージャザイト型ゼオライトの生成は,焼成温度,焼成物の粒度,90℃処理時のH2O/Na20モル比,焼成物のNa20/sio2モル比に依存する。Na2O/SiO2モル比が0.6~1.2の範囲では,シラスにNaOH溶液を加えて蒸発乾固する過程でヒドロキシンーダライトが生成し,800℃以下の温度で焼成したものにはヒドロキシンーダライトとシラス中の結晶質(長石と石英)とが残留し,これを90℃処理したときのホージャサイト型ゼオライトの生成率は低い。700~800℃の温度領域でヒドロキシンーダライトは一部カーネギアイトに変化し,シラス中の結晶質も溶融しはじめ,この温度の焼成物を90℃で処理するとP二型ゼオライトとホージャサイト型ゼオライトが生成する,焼成温度が800~1000℃のとき轄ヒドロキシンーダライトは完全にカーネギアイト化し,シラス中の結晶質もアルカリと反応し,温度が高くなるとガラス化しはじめる。この800~1000℃焼成物からは主として無定形状態を経てホージャサイト型ゼオライトが生成し,時間の経過とともにP,型ゼオライトが副生する。P,型ゼオライトの生成する速度は主として90℃処理時のH2O/Na2Oモル比と焼成物の粒度に依存し,ホージャサイト型ゼオライトの生成率はゼオライト全体の生成率とPユ型ゼオライトの生成速度に依存する。
  • 小林 悦郎, 鎌上 三郎
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2098-2104
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    難燃剤を開発するため,原料として塩化ホスホリルと芳香族ジオールを用い,混成異核化合物PO(X)20R,OPO(X)2(1)と(POXOR/O-)n(III)(R'=芳香族原子団,X=アルコキシル基,アミド基)を合成し,その性状について検討した。
    芳香族ジオール(HOR/OH)としては,2,2-ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパンが1,IIIの合成に適当であった。1の中間体としてのPOCl20R/OPOCl2(1')はPOCl2の2molとHOR/OHの1molとの混合物の還流によって生成し,湘状1はrのエステル化あるいはアミド化によって得られた。AICI3のような脱塩化水素触媒を添加したとき,反応は促進され,同時に橋かけ結合を含むものが生成した。IIIの中間体としての塩化物(POCIOR/0-)π(r)は,POCl2とHOR℃Hとの等量混合物を溶媒として少量のジオキサン中で還流することによって得られた。またガは,POCl2の数molとHOR/OHの1molとの反応混合物から過剰POCl2の除去によって得られるPOCl20R/OHの加熱脱塩化水素によって生成した。粘稠な油状IIはIIノのエステル化またはアミド化によって得られた。だが油状1,1正はその中に含まれている少量の溶剤を除くことによって塊状あるいは粉末状にすることができた。
    反応生成物は種々の有機溶剤に可溶である。リン含有量は1において13~14%,IIにおいて8~9%であった。窒素含有量は不完全なアミド化によって予期した値より少なかった。生成物はいずれもわずかの塩素を含んでいた。反応生成物はリン酸基と芳香族原子団との縮合からなるということが,分子量,溶剤中への溶解性,赤外吸収スペクトルによって結論された。これら生成物を10%以上含有している樹脂は難燃性を示した。
  • 野崎 亨, 末光 長雄
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2105-2110
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    pH2.5~5.6,過剰の鉛(II)イオンが存在するイオン強度0.1,20℃の水溶液中で,EDTA,EDTA,OH,CyDTAおよびDTPA(HnX)の鉛(III)錯体とイットリウム(III)との置換反応の初期速度式を,正,逆両反応について求め,各反応径路の全反応速度に対する寄与率を計算した。EDTA,EDTA,6HおよびDTPA系では複核中間体生成径路と解離経路の両径路により,CyDTA系では解離径路のみにより進行することがわかった。解離径路の正反応では鉛錯体の速い解離平衡反応が先行し,逆反応ではイットリウム錯体の解離が律速段階である。また,YHXの生成速度定数を求めて,解離径路におけるYHX(4)の生成反応機構についても検討した。
  • 渡辺 範夫, 高本 進
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2111-2113
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二座配位子であるエチレンジアミン(en),三座配位子であるジエチレントリアミン(dien)とN-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン(aepd),さらに四座配位子である手リエチレンテトラミン(trien)との銅(III)キレートおよびニッケル(II)キレート溶液と,種々の濃度の水酸化カリウム溶液との混合の体積変化を比重びんを用いて測定した。その結果ヒドロキン錯体の生成量と混合の体積変化値とp間の相関関係を見いだした。
    さらにつぎの平衡の[Cu(aepd)(OH)]+錯体の安定度定数を決定した。
  • 柴田 昌男, 吉田 久良, 有田 静児, 垣山 仁夫, 中村 高遠
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2114-2118
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    廃水中の塩化メチル水銀(MMC)を除去する方法として,MMCの捕集剤にN-アミジノチオ尿素誘導体(R-ATU),起泡剤にドデシルベシゼシメルホン酸ナトリウム(D8S)を用いる浮選除去法について検討した。R-ATU,はチオ魁ボニル基鮪しており,これにMMCが配位しで難を磁し,この錯体がDBSと結合してMMCは浮選除去されるものと考えられる。N-アミジノチオ尿素誘導体のうちフェニル誘導体がとくにMMCの捕集剤としてすぐれており,メチルおよびエチル誘導体はMMC捕集剤としての効果がなかった。
    MMCの浮選除去の条件して嬬P翠乳phrATU溝度,DBS濃度,および共存塩濃度kっいて検討した。MMC浮選除去の最適pHは3~8であり,bBS抵起泡性を維持するのに足る濃度があればよいことがわかった。またMMC捕集剤の戸h-ATUは,濃度が高いほどMMCの除去率は高くなった。共存塩としての塩化ナトリウム,塩化カルシウム,および塩化マグネシウムは数十ppm程度の濃度ならば,MMCの浮選除去の効率にほとんど影響をおよぼさない。
    Ph-ATu:25PPm,DBs:100PPm,pH5.5,送気量:80ml/minの条件下に1PPmのMMC溶液を20分間浮選処理した結果,約99.9%(残留濃度約1PPb)の除去率で水中からMMCを除去することができた。
  • 丸山 正生, 村上 和雄
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2119-2126
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N,N-ジメチルホルムアミド(DMF),DMF-水系における5種のクロロピリジンとピリジンの電気化学的挙動を直流,交流ポーラログラフィー,サイクリックボルタンメトリー,定電位クーロメトリーにより検討レ,脱塩素反応とその速度論的パラメーター,電極反応機構を研究した。
    観測されたポーラログラフ波はピリジン核の還元波と分子中の塩素数に等しい脱塩素波とである。脱塩素波はすべて二電子波であり,また,ピリジン核の還元波はDMF系では,,すべて一電子波であり,DMF-水(1%以上)系ではすべて二電子波である,DMF系における脱塩素の過程を定電位電解と紫外吸収スペクトルから明らかにした。
    サイクリックボルタンメトリーにより求めた脱塩素反応の速度論的パラメーターは,電極反応速度定数々,=(0.72~1.20)x105cm,s-1,移動係数α=0.1~0.2であった。脱塩素反応が完全な非可逆過程であるのでこれらの値はほぼ妥当と考えられる。
  • 高木 勉, 大岩 正芳
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2127-2131
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    質量スペクトルの開裂様式を考察するため,励起状態を考慮に入れ,次式で示すパラメーターΔHを考えた。
    ここで,H,およびH,はそれぞれ生成系および励起状態にある始原系のエンタルピーを示す。
    その結果,ΔH+の大小関係が開裂イオン分布に対応し,ΔH+またの小さい値をもつイオンへの開裂が優先的に生することが明らかになった。すなわち,この取り扱いにより,不飽和炭化水素の質量スペクトルを半定量的によく説明できる。
  • 西脇 徹, 碓井 正雄, 津田 充利, 案田 欣二
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2132-2137
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    紫外線照射法により高濃度PCB(4.4×10-1mol/1)について脱塩素反応を行なわせる場合,光源部と反応液との境界を構成する石英ガラス(ジャケット)面に塩化ナトリウムが析出し,反応系内への光の進入をいち'じるしく悪化させるが,4.6x10-2mol/1以下の濃度ではそのような汚れはほとんど見られない。
    光源の出力特性,PCBのモル吸光係数,量子収率の波長依存性などについて検討し,反応器内で反応の生する場所はPCB濃度が4.6x10-2mol/1および4.4x10-1mol/1の場合それぞれジャケット表面から8.00mmおよび0.92mm以内に集中すると推定された。ジャケット表面での汚れを抑制しつつ,反応器に対するPCB添加量を増加させる方法を検討した結果,反応器外から逐次的または連続的にPCBをアルカリ性アルコール上に滴下し,完全混合系(4.6x10-2mol/1)の場合とくらべて,1.6倍の脱塩素速度で8倍量のPCBを99.5%反応させることができた。
  • 布本 貞明, 山下 雄也
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2138-2141
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ビニルGrignard試薬とカルボン酸の反応をカルボン酸の種類,溶媒を変え詳細に検討した。ケトン[1]RCOCH2CH2CH=CH猛の生成しやすさは(CH3)3CCOOH~C6Hl1COOH>C6H5COOH>(CH3)諸CHCOOH>CH3(CH2)4COOH>CH3(CH2)2COOH>CH3COOHの順で,立体的に大きな基をもつビバリン酸シクロヘキサンカルボン酸では定量的にケトン[1]を生成し,立体障害によるものと考えられる。溶媒効果については塩基性溶媒ほどケトン[1]を生成し難く,ビニルGaignard試薬とα,β-不飽和カルボニル化合物との反庵はカルボン酸の反応の場合と類似した反応性を示す。この結果からビニルGrignard試薬とカルボン酸の反応は相当するビニルアルキルケトンを中間体として進むと推定した。
  • 安部 悌四郎, 洞口 高昭, 清水 隆八
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2142-2145
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    それぞれ相当する2-ホルミルベンゾフランとα-(2-アセチルフェノキシ)アルカンカルボン酸エチルとからα-[2-(β-ベンゾフラニルアクリロイル)フェノキシ]アルカンカルボン酸[6]を経て,1-(2-ベンゾフラニル)-2-(3-ベンゾフラニル)エチレン[7]が合成された。[7]をエタノールまたはベンゼン中,パラジウム-炭素触媒で還元すると,それぞれ相当するエタシ[3]を与える。同じ条件で[3]はさらに水素化されるが,1-(3-メチル-2-ベンゾフラニル)-2-(3-ベンゾフラニル)エタン[3a]は(2,3-ジヒドロ-3-ベンゾフラニル)誘導体[11a]を経てビス(ジヒドロベンゾフラニル)誘導体[12]を与えたのに対し,1-(2-ベンゾフラニル)-2-(2-メチル-3-ベンゾフラニル)エタン[3b]はジヒドロベンゾフラン誘導体の二つの異性体([13]と[11b])を与えた。
    [3]をエタノール中塩化水素または硫酸で処理すると分子内閉環が起こり,それぞれ相当するテトラヒドロベンゾフラノ[2,3-α]ジベンゾフラン([4]および[5])をほとんど定量的に与えた。
  • 佐藤 幸蔵, 岡崎 光雄
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2146-2149
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-アセチル安息香酸とサリチルアルデヒド類との縮合反応を検討した。アルカリ性縮合により相当する2-ヒドロキシ-2'-カルボキシカルコン誘導体を合成し,ついで熱または脱水剤による閉環反応でスピロ[2H-1-ベンゾピラン-2,3'-フタリド]誘導体[1]を得た。酸性縮合では直接[1]が得られ,さらに[1]は3-メチレンフタリドとサリチルアルデヒドとを硫酸中で反応させても得られた。同様に2-アセチル安息香酸と2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒドとのアルカリ性縮合によってスピロ[3H-ナフト[2,1-b]ピラン-3,3'-フタリド][2]を合成したが,酸性縮合では[2]は得られず,2-アセチル安息香酸の自己縮合物が得られることを見いだした。
  • 佐藤 幸蔵, 岡崎 光雄
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2150-2153
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    スピロ[2H-1-ベンゾピラン-2,3'-フタリド]誘導体[1]と酸,アルカリおよびヒドラジン類との反応を検討した。[1]は酸の存在下ではラクトン環の開いた2'-カルボキシフラビリウム塩と平衡にあり,その平衡は[1]の置換基に大きく依存することがわかった。
    [1]に電子供与基を導入すると開環は容易となり,その傾向はジメチルアミノ誘体の場合にとくに顕著で,酢酸などの弱酸によってもきわめて容易に開環する。[1]はアルカリ水溶液により容易に開環して2-ヒドロキシ-2'-カルボキシカルコンとなり,さらにカルコンは2-アセチル安息香酸とサリチルアルデヒドとに加水分解される。また[1]とヒドラジン類との反応では相当する環状ヒドラジド,スピロ[2H-1-ベンゾピラン-2,1'-テトラヒドロフタラジン]4-オン誘導体が得られた。
  • 今井 淑夫, 上田 充, 石森 元和
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2154-2160
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-(メシルオキシ)フタルイミド(MSOP)と各種アミンの反応によるo-ウレイドベンズアミド体[1]とキナゾリンジオン体[2]の生成機構について検討した。MSOPとアニリンを受容剤としてピリジンを用いて室温で反応させるとo-(N'-フェニルウレイド)ベンズアニリド[1a]が生成したが,一方,同じ反応をトリエチルアミンの存在下に行なうと3-フェニルキナゾリン-2,4-ジオン[2a]が得られた。また,MSOPとベンジルアミンをトリエチルアミンの存在下に反応させた場合にはN-ベンジル-o-(Nし歳ンジルウレイド)ベンズアミド[1b]が生成した。この反応の生成物は反応溶媒によりほとんど影響を受けないが,アミンや酸受容剤の塩基性度に大きく依存する。これらの結果から,本反応には,中間体のしo-インシアナトベンズアミド体[6]ともう1分子アミンの分子間付加反応により[1]の生成する径路Aと,中間体[6]の分子内付加反応により[2]の生成する径路Bが存在することを推測した。一方,N-(メシルオキシ)スクシンイミドど各種アミンの反応は,反応条件によちずにすべて径路Aにしたがって進行し,3-ウレイドプロピオンアミド体[8]を与えることを認めた。
  • 犬飼 吉彦
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2161-2165
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジアゾ成分の方に重合可能基をもったナフトールAS系アゾ色素の単独重合物の組成(重合度および重合度分布)と,その互変異性と耐光性の関連を調べるため,3-ヒドロキシ-4-(3-メタクリルアミドフェニルアゾ)-2-ナフトエ酸=アリールアミド類の単独重合体を合成した。モノマー色素は,m-メタクリルアミドフェニルジアゾニウム塩と3-ヒドロキシー2-ナフトエ酸アリールアミドとのカップリング反応により合成した。アリール基としては,C6H5,3-NO2C6H4,2-CH3C6H4,2-CH30C6H4,4-ClC6H4,β-C10H7である。GPC分析により,これらポリ色素は2~10量体の混合物であり,その平均重合度は4~5であった。可視吸収スペクトルでケト-エノール互変異性を調べたところ,ポリ色素はモノマー色素にくらべてケト形の含量が減少していることがわかった。互変異性と色素の耐光性との関連をポリ(メタクリル酸メチル)フィルム中で調べたところ,モノマー色素ではケト-エノール比が退色中ほとんど変化しなかったが,ポリ色素は退色につれてケト形が大きく減少する傾向を示した。ポリ色素の耐光性がモノマー色素よりも劣るのは,ケト-エノール間の転移が重合によって,ある程度妨害されるのが,その原因の一つではないかと考えられる。
  • 松岡 賢, 織田 博則, 北尾 悌次郎
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2166-2170
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    毒性の無機顔料であるカドミウム黄に代替可能な有機顔料の開発を目的として,臭素化3'-ヒドロキシベンゾ[b]キノフタロン誘導体を合成した。そしてこれら化合物の色調,耐光性,耐熱性,耐溶剤性など顔料諸物性におよぼす臭素置換基の数と位置の効果について検討考察した。その結果,顔料の色調は臭素原子の数とともに赤色移動すること,ナフタレン骨格への臭素原子の導入はその数とともに顔料諸物性の向上をもたらすが,キノリン骨格の4'-位または8'-位への導入は耐溶剤性に不利であり,また6'-位への導入は耐光性に対して位置特異的に不利であった。また耐熱性は臭素原子の導入とともに向上するが,テトラブロモ体以上に臭素原子を導入しても効果がなしか,かえって不利になることがわかった。以上の点から5,6,7,87テトラプロモ-3'-ヒドロキシベンゾ[b]キノフタロンをカドミウム黄に代替可能な新規有機顔料として提案した。
  • 渋沢 崇男, 浜寄 卓哉, 佐々木 路登
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2171-2177
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4-アミノアゾベンゼン誘導体(非イオン染料7種,酸性染料1種)とβ-シクロデキストリン(βCD)との水溶液中における相互作用を分光法で検討した。反応によるスペクトル変化,染料構造による熱力学関数値の変化などから,染料のアミノ基をもたないフェニル核部分がβCDの空洞内に包接され,1:1型のコンプレックスが形成されると推定された。
    コンプレックスは染着せず,遊離の染料のみが基質に吸着,拡散するとすると,平衡でコンプレック濃度βCD濃度の有限浴ではβCDを添加したときの非イオン染料の平衡染着率A..は次式で表わされる。
    ここで,Kは分配係数,Lは浴比,bはβCDの初濃度,K'はコンプレックスの形成定数である。染色速度の変化は上式のAを用いて理論的に予測することができる。ポリアミド~非イオン染料~βCDの染色系ではA,染色速度とも理論値と実験値はよく一致した。
    βCDは上記の非イオン染料に対して染料親和性緩染剤として作用した。βCDは親和力が大きく,繊維内拡散係数の小さな染料に対して良好な緩染効果を示した。
  • 大坪 栄一郎, 黒田 敏男, 橋田 洋二, 関口 自然, 松井 弘次
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2178-2182
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    弱塩基性芳香族第-アミンをジアゾ成分とするアゾ色素に関する研究の-環として,弱塩基性芳香族第一アミンのジアゾ化中に起こる副反応を解明するため,2,4-ジニトロ-6-プロモベンゼンジアゾニウム化合物[1'],および2,4-ジニトロ-6-クロロベンゼンジアゾニウム化合物[2']とご三の無機塩との反応を硫酸中で検討した。[1']はNaNOaとの反応で,濃硫酸中,銅触媒がなくとも-N2基が優先的に置換された2,3,5-トリニトロブロモベンゼンと3,5-ジニトロ-1,2-ジブロモベンゼンを与えることがわかった。
    一方,無機ハロゲン化合物(KF,NaCl,NaBr,KI)との反応では[1ノ]はKFの場合を除き,-N露基の置換により対応したハロゲン化合物を与えた。ハロゲン化合物の収率はつぎの順序であった。
    F<CI<Br<1
    同様な結果は[2]の反応においても得られた。
    同様に,2,4-ジニトロアニリン,p-ニトロアニリン,アニリンから誘導されるジアゾニウム化合物と無機ハロゲン化合物との反応を調べたが,ハロゲン化合物の収率は芳香核中のニトロ基の数が少なくなるにともなって低下することがわかった。
    これらの結果は,これらの反応における-N2基の置換が2分子反応機構によって起こったことを示唆している。一般に,塩基性が弱く,適度な求核性をもつ求核試薬は硫酸中においても[1']および[2']と反応して-N2が脱離し,対応した置換生成物を与えることができるといえよう。
  • 高橋 忠雄
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2183-2187
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    原料モル比1:1の2成分系C4オレフィン混合物のWO3-SiO2触媒上における共不均化反応について,オレフィンの組み合わせの異なるおのおのの系の,各種の一次メタセシスの初速度比を求めた。その初速度比は,450℃において,1-ブテン-インブチレン系では,r1B-1B:r1B-tB:riB-iB=90:50:1,cis-2-ブテン-インブチレン系では,rcB-tB:riB-1B=100:1,trans-2-ブテン-インブチレン系では,riB-1D:r1B-tB=120:1であった。1-ブテン-cis-2-ブテン系および1-ブテン-trans-2-ブテン系においてはr1B-1B:r1B-CB=1B-1B:r1B-iB=1:6であった。3種の2成分系直鎖ブテン-インブチレン系について,原料組成と生成物組成の関係を調べた。この研究の反応条件においては,二重結合の異性化がかなり急速に進行したので,不均化反応の選択性は低かった。2-ブテンーインブチレン系の反癒による生成C5オレフィンのインアミレン選択率を高めるためには,インブチレンの比較的高濃度の原料を用いる必要がある。
  • 松尾 昭彦, 内尾 康人, 中山 充, 林 修一
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2188-2191
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アブラギクおよびリュウノウギクの茎葉部精油を化学的方法に機器分析を併用して検索し,30種のテルペノイドを確認した。アブラギクの精油が主としてα-ピネン,β-ピネン,サビネン,α-ツヨンおよびクリサンテノンからなるのに対して,リュウノウギク精油の主成分はカンフェン,ショウノウ,ボルネオールおよびモノテルペンアルコール類のアセタートであった。
  • 高岡 大輔, 高松 信子, 佐伯 幸子, 河野 慶子, 中岡 ちはる, 広井 満
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2192-2196
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    樟は葉精油の主成分により5種類にわけられる。そのうちでテルペン系化合物を精油の主成分とするものは,葉に多量のリグナン類を含むが,サフロール(C5-C3化合物)を主成分とするものはほとんどリグナンを含まない。主成分はジメチルマタイレジノール[1]で,そのほかにジメチルセコインラリシレジノール[2],クスノキニン[3],クスノキノール[4],シンナモノール[5],ヒノキニン[6]を含む。このうちで[1],[2]は天然に見いだされたのは最初であり,[3],[4],[5]は新物質で,これらの構造について報告する。
  • 三橋 重信
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2197-2204
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(インブチレン=オキシド)のo-ジクロロベンゼンの熱希薄溶液を蒸発させて六角形および円形結晶を成長させた。これらの結晶を光学および電子顕微鏡によって観察し,結晶の成長機構および構造を検討した。
    六角形結晶は分子鎖折れたたみ様式によって成長したラメラからなる単結晶であり,中心の孔はFrankの理論によって予言されたように,らせん転位に起因して形成される初期過程のものであることがわかった。円形結晶についても分子鎖折れたたみによって形成されたラメラからなるが,この場合には中心に孔がなく,その構造は中心からラメラが放射状に配列した組織であり,従来の二次元球晶と同-の構造である。そして,これらの結晶を中心として成長した同心状の六角形および円環は,放射状に配列したラメラからなり,それらは中心からの距離に対して周期的に厚さが変化しているためであることがわかった。この薄い部分ではラメラが担体上に平らに堆積しているが,厚さが増加するにつれてラメラは傾斜し始め,-番厚い部分でその傾斜は最大に達している。この組織の厚い部分においては放射方向に対して負の複屈折を示し,十字状の消光模様に重複して同心円状の明暗が認められた。この現象に関して,この場合にはラメラのhalf twist mode1によって説明できることがわかった。
  • 林 治助, 升田 重嘉, 五十嵐 卓弥, 渡辺 貞良
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2205-2210
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ラミーを十分乾燥状態でNO2ガスにより酸化した。結晶化度は最初酸化とともに低下するが,途中から増加に転じ250mmolCOOH/1009の酸化度のものは原料ラミーのそれの1,3倍にも達する。またこれらの試料では[101]方向に微結晶幅の増大が見られた。しかしこの点から結晶化度はふたたび減少に転じ,急速に非晶化が進む。これら酸化セルロースをCa2などの塩にすると結晶化度が低下し,その度合は酸化によって結晶化度が増加した試料ほど大きかった。しかしこれらを希塩酸で処理し脱塩したところ,ほぼ完全に元の結晶化度に復した。HIO4-HCIO2酸化セルロースでは,結晶化度は酸化の進行とともにほぼ直線的に低下し,造塩および脱塩によって変化しなかった。NO2酸化ではセルロースのC6位の第-級水酸基が選択的にカルボキシル基になるが,この水酸基は分子間水素結合によって(101)面を貼り合わせている。酸化によってもメチレン基のH2をカルボニル基の0に代えるだけでC6の位置をまったく変えることなく,セルロースと同じ分子間水素結合を形成できる。このため酸化による非晶化が少ないばかりか(101)プレーンラティス構造である非晶部を結晶構造に取り込んで結晶化度は増大する。このことは[101]方向の微結晶幅の増大をもたらすことになる。
  • 溝口 勝大, 都甲 文雄, 土田 英俊, 篠原 功
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2211-2214
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    次式で示される構造のポリカチオンー7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(CQ)塩のESR吸収スペクトル,とくに中性CQ(CQ)分子の添加比が異なる場合のESR吸収強度1の温度変化を測定し,電導性と根関させ考察した。
    CQsimplesaltでは,絶対温度丁が210°K以下で1(1/T),210°K以上で1(1/T)[3+exp(/T)]の関係が観測され,温度上昇にともない-重項,三重項状態の縮退状態から分離状態へ移行する。しかし,分離エネルギーと電導の活性化エネルギーE.が-致しないことからCQsimplesaltの電導には三重項状態が関与しているとは考えられない。一方,CQcomplexsaltでは,CQoの増加にともない1がTに無関係な状態が観測され,320°K以上では一重項,三重項の分離状態に移行して強いスピン相互作用が認められた
  • 蜷川 彰, 森田 俊明, 松田 治和
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2215-2220
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    過塊素酸を触媒として酢酸中で,3-フェノキシプロピレンジアセタート(POAc2)および3-フェノキシプロピルアセタート(POAc)とホルムアルデヒド(F)との反応を行ない,いろいろの反応条件が樹脂の分子量におよぼす影響を検討した。POAc2およびPOAcからはモル比(F/P)1.2,反応温度90℃で,分子量がおのおの3300,5020の樹脂を得た。また,これらのモノマーおよび樹脂中間体関連化合物とFとの反応速度をFの消費速度から求め,次式を得た。
    ただし,P=POAc2または3-(p-トリルオキシ)プロピレンジアセタート(TOAc2).
    おのおのの反応の反応速度定数(々×1021/mol,min,30℃)および活性化エネルギー(kcal/mol)として,つぎの値を得た。
    POAc2:1,54,19,5,POAc:4,32,18,6,TOAca:1,12,19.6,3-(p-トリルオキシ)プロピルアセタート
    (TOAc):2.79,20.1
    POAcおよびTOAcの二核体化合物とFとの反応のF消費曲線はモノマーとは異なった挙動を示した。
  • 小嶋 邦晴, 善国 麻佐子, 石津 純一, 梅田 正造
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2221-2224
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トリブチルボラン(TBB)-金属アセチルアセトナート系によるメタクリル酸メチルの重合について研究した。金属アセチルアセトナートはTBBとコンプレックスを生成することにより,TBBの重合活性を保持することができるが,その中でVO(AcAc)2がもとも勅果があることがわかった。また,TBBIVO(AcAc)2の比を変えて実験した結果,1:1のときに最大の重合活性を示すことを見いだした。重合速度(Rp)は次式で表わされ,見かけの活性化エネルギーは5.5kca1/molとなった。
    このことからTBB-VO(AcAc)2コンプレヅクスがMMAと作用してラジカルを生成するものと推論された。
  • 今泉 文武, 池田 弘治, 平柳 滋敏, 森 寛
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2225-2228
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メチルアセチレンの反塔生成物におよぼすニヅケル錯体の原子価の影響を知る目的で,0価および1緬のニッケル錯体を用い,メチルアセチレンの接触作用を調べた。用いた0価のニヅケル錯体は,ビス(L5-シクロオクタジエン)ニヅケル,ビス(π-アリル)ニッケル,ビス(アクリロニトリル)ニッケル,ビス(かブチルインシアニド)ニヅケル,およびこれらの誘導体であり,1価の錯体はπ-アリルニヅケルハライドである。
    0価錯体によるメチルアセチレンの反応では,主として低分子量化合物(メチルアセチレンの数量体程度まで)が生成するが,1価錯体では低分子量物は生成せず,ポリマー(メチルアセチレンの20量体程度)のみであった。
    二,三量体の構造を調べたところ,鎖状二量体,鎖状および環状三量体であった。π-アリルニッケルハライドによるメチルアセチレンの重合では,生成ポリマーの分子量および収率が,π-アリルニヅケルハライドのハβゲン原子により影響を受けることがわかった。また,π-シンナミルニッケルクロリドを触媒に用いたところ,ポリマーにフェニル基が結合しており,π-シンナミル基から重合が開始したと考えられる。
  • 森 邦夫, 菅原 隆男, 中村 儀郎
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2229-2232
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エチレンジアミンおよびエチレンジアミンーテトラヒドロフラン中でのポリ塩化ビニル(PVC)のチオエーテル化反慈と塩化5-ブチル,1,3-および1,4-ジクロロブタンなどのモデル化合物の反応を比較し,本反応の高分子効果を明らかにした。
    PVCのチオエーテル化反応の速度は[PVC]と[チオール]の一次に比例し,塩化5-プチルのそれと大差なかった。
    1,3-および1,4-ジクロロブタンのチオエーテル化反応において,最初に生成したチオエーテル基がもう一つの未反応塩素を活性化することから,PVCの塩素も導入されたチオエーテル基によって,たぶんスルポニウム塩の形成のような機構で活性化されると推測され,とくに脂肪族チオエーテル基のこのような隣接基効果は芳香族チオエーテル基のそれより強いと思われる。
  • 白井 汪芳, 北條 舒正
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2233-2237
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    家蚕絹フィブロインとNi(II)イオンの錯生成を種々のpH,八丁肌(反応種のモル比)で行ない,その二次構造を調べた。pH9以下ではNi(III)イオンの存在でゲル化が起こる。このゲルの赤外吸収スペクトルとX線回折からクロスβ構造を有することがわかった。さらにpH10以上にするとNi(N4)平面キレート構造を含む分子内錯体が生成した。このときフィプロィン溶液の粘度は低下した。この溶液を透析して,ポリエチレンフィルム上でフィルムとした。このフィルムはランダムコィル構造を有することがX線回折によって示された。
  • 松浦 二郎, 滝沢 正男, 佐々木 幸夫
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2238-2240
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The differences among the Fe (III) and Fe (II) -halide complexes produced in three solvents with different donor numbers, i. e. dimethyl sulfoxide, N, N-dimethylformamide and propylene carbonate were studied. The number of complex species formed in these solvents decreased in the order of propylene carbonate> N, N-dimethylformamide> dimethyl sulfoxide, and the case of formation of higher complexes decreased in the order of >Br- >I-. The compositions of the complexes which are in equilibrium with Fe" ion in each solvent were determined by the observation of isobestic points.
  • 林 宏哉, 加藤 誠軌
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2241-2243
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Polytypism has been observed among delafossite-type compounds; AgFe02, AgCoO2 and AgCrO2. This phenomenon was also observed in Cu3TiO4. The crystal structure of Cu3TiO4 (2 H) has been reported in the previous paper. A polytype-Cu3TiO4 (3 R) has a trigonal lattice with the unit cell dimensions; a0=5.995 A and a=29.27°.
    The 3 R-type of Cu3TiO4 was synthesized by heating the mixture (3 mol Cu0+1 mol Ti02) at 1050° C in an oxygen stream for several hours followed by rapid quenching. The above two types usually coexist and their ratio depends on the oxygen pressure. At higher oxygen pressure and at lower one, Cu3TiO4 (3 R) and Cu3TiO4 (2 H) are mainly produced, respectively.
  • 高橋 和行, 伊熊 成章, 加藤 信博, 三橋 啓了
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2244-2245
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Imidazole-4-carboxylic acid [1] and imidazole-4, 5-dicarboxylic acid [2] reacted with phosphorus pentachloride or thionyl chloride to give diimidazo[1, 5-a, 1', 5'-d]pyrazine-4, 9-dione [3] and 4, 9-dioxo-4, 9-dihydrodiimidazo[1, 5-a, 1', 5'-d]pyrazine-1, 6-dicarbonyl dichloride [4], respectively. The dioxopyrazine rings of the resulting dimers [3] and [4] were cleaved in their reactions with methanol or amines, giving the corresponding esters or amides of imidazole4-carboxylic acid and imidazole-4, 5-dicarboxylic acid.
  • 片桐 孝夫, 鈴木 敏弘, 高部 圀彦, 田中 順太郎
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2246-2247
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The oxidation of prenyl chloride [1], prenyl acetate [2] and prenyl methyl ether [3] by selenium dioxide in acetic acid, dioxane and/or ethanol was investigated. [1] was oxidized in dioxane to give 4-chloro-2-methyl-2-butenal [4] selectively. From [2] and [3], 4-acetoxy-2- methyl-2-butenal [6] and 4-methoxy-2-methyl-2-butenal [10] were obtained respectively.
  • 梅原 忠, 矢野 武夫, 末高 透
    1975 年 1975 巻 12 号 p. 2248-2250
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The study of oxidation of ethylene in liquid medium in terms of Wacker-process was carried out experimentally in wetted-wall column.
    The average absorption rate of ethylene in wetted-wall column, estimated by using the reaction rate constant obtained in an agitated vessel, was in good agreement with that obtained experimentally.
    It was found that this reaction can be dealt with as gas absorption accompanied by pseudofirst order reaction and that the constant rate of gas absorption observed in an agitated vessel can be regarded as that of initial absorption.
  • 1975 年 1975 巻 12 号 p. 2251
    発行日: 1975年
    公開日: 2011/05/30
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