日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1976 巻, 1 号
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  • 青山 智夫, 山川 仁
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    旋光性をもつ天然化合物におけるα,β-不飽和発色団のモデルとしてねじれたアクリルアルデヒドについて計算した。その結果(π → π*)遷移については経験的なDjerassi-Snatzke則を満足したが,(n→ π*)遷移ではtransoidについてのみ経験則と一致し,cisoidでは経験則と逆の符号でその強度は小さい。乳酸では回転異性体とその旋光性との相関関係が理論的に計算されたが,アニオンについてはそのような相関関係はなかった。これらの計算結果はCDスペクトルの実測値をよく説明する。
  • 下飯坂 潤三, 中塚 勝入, 中鉢 良治, 佐藤 惟陽
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 6-9
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    湿式法によるマグネタイトコロイドにオレイン酸イオンの単分子吸着を行なわせて表面疎水性とし,これにアニオン性あるいは非イオン性の界面活性剤を作用させ,水相で安定な分散液を得た。この2層目の界面活性剤としては,ドデシルベンゼンスルポン酸ナトリウム,オレイン酸ナトリウムおよびHLBが12以上のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが効果を示した。コロイド溶液の分散性のpH変化は,界面活性剤の解離特性により影響される。得られた分散液中のマグネタイトコロイドは,5kOe以下の磁場中では濃縮が認められず,いわゆる磁性流体とみなされる。一定磁場のもとでの磁性流体の磁化は,懸濁液のマグネタイト含有率に依存する。また,磁性流体の磁化曲線はマグネタイトコロイドの超常磁性によって説明される。高い磁化値を与えるためマグネタイト含有率を高めた場合,推定体積分率約40%付近から繊維状の凝集相が生じ,48%でほぼ完全にゲル化することが認められた。
  • 勝沢 英夫, 樋口 泉
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    市販の球状シリカを3,7,11,20t/cm2で圧縮成型し,0℃におけるベンゼンの収着等温線を測定した。3t/cm黎圧縮試料の実測等温線は,半径 R0=4nmの単位構成粒子が単一立方格子型に充てんした場合の理論的毛管凝縮等温線に,また,20t/cm2圧縮試料では最密充てん型の理論線にそれぞれ一致した。これから,試料は微粒構造をなし,各圧力によって粒子の充てん構造が変化するものと考え,空孔全容積の変化から計算して微粒子の配位数が5.8~10.5になることを示した。これらの結果は,著者らの既報におけるカーボンブラック,微粒シリカ(R0≒10nm)圧縮試料の実験およびAveryらのシリカ,ジルコニア微粒子 (R0=2nm)圧縮試料の実験結果と比較検討し,加圧にともなう等温線の変化は,単位構成微粒子の充てん構造のみならず,その粒径によることを示した。
  • 宮田 定次郎, 作本 彰久, 鷲野 正光, 阿部 俊彦
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    亜硫酸水素ナトリウムのアリルアルコールへのラジカル付加反応の研究を,亜硫酸ナトリウムの共存下で,反応の開始手段としてγ線を用いて行なった。その結果,亜硫酸水素ナトリウムの反応速度は,アリルアルコールの反癒速度と等しく,HSO3-濃度に比例し,アリルアルコール濃度に逆比例.することが判明した。この結果に基づいて,反応機構を推論し,連鎖停止反応はHOCH2CHCH2SO3- + CH2=CHCH2OH → HOCH2CH2CH2SO3- + CH2=CHCHOHであることを明らかにした。また,反応の速度論から求めた見かけの反応速度定数は,線量率6.4 0x 1015 eV/g・secにおい てk=1.28x10-5 exp (1.66 x 103/RT) mol/l・secであった。_
  • 服部 英, 住吉 孝, 田部 浩三, 津波古 充朝, 本岡 達, 小林 正光
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2種のリン酸アルミニウム;α -アルミナとリン酸からつくったもの(AP-I),および塩化アルミニウムとリン酸からつくったもの(AP-II)を触媒とし,直鎖ブテンの異性化反応を研究した。130~250℃の反応温度範囲で,反応生成物はすべて直鎖プテンで,骨格異性化は観測されなかった。AP-IIはH0≦-8.2の強い酸点を有し,その触媒活性は,H0>+0.8の弱い酸点しかないAP-Iよりはるかに商かった。触媒活性はCO2被毒により変化しないが,NH3被毒により減少した。AP-IIでは,0.24mmol/gのNH3を導入することにより,活性が完全に失われたが,AP-I1では多量のNH3を導入しても活性は約50%減少するだけであった。重水素交換した触媒上でcis-2-ブテンからの反応を行ない,生成物中のD原子分布から活性点の種類と吸着ブテンの状態を考察した。
  • 今中 利信, 水野 英孝, 松本 昇一, 寺西 士一郎
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    きわめて少量の臭化パラジウみと臭化銅ならびに臭化鉄の均一水溶液を触媒として用いた一酸化炭素の液相酸化反応において,その反応機構および反応速度に対する各種操作変数の影響をカキマゼ反応器を用いて研究した。その結果,臭化パラジウム系の触媒活性は塩化パラジウム系のそれよりも高く,定常反応速度式はr=k[Pd(II)]1.1・[CO]1.7で表わされる。この速度式からパラジウムの四配位平面錯体[Pd(CO)2Br2]を触媒反応中間体として含む機構で進行すると推定される。また,一酸化炭素濃度が低く,反応速度が拡散と反応との両速度によって影響される律速領域における気液界面積aあるいは液相物質移動係数KL*のカキマゼ速度Nによる効果を境膜説と表面更新説とに基づいて研究した。その結果はほかの文献値とよく一致した。
  • 佐田 進, 平田 隆
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水酸化ニッケルを分散したホスフィン酸ナトリウム溶液を窒素雰囲気で50℃ に加熱してニッケル・リン触媒を製造し,この触媒によるベンジルアルコールの気相常圧水素化分解を流通法により反応温度160~180。Cで行なった。おもな生成物はトルエンであり,数パーセント以内のベンズアルデヒドと微量のベンゼンが副生した。トルエン生成の活性は触媒の熱処理による結晶化で変化し,結晶化前は一定の低活性であるが,結晶化後は無活性状態から一定の高活性まで急激に増加した。結晶性触媒を用いて速度論的実験を行なった結果,トルエン生成速度はベンジルアルコール分圧に0次,水素分圧に1次であり,活性化エネルギ藁セま22.4kcal/molであった。ベンズアルデヒド生成速度はほぼ0であるが,反応中のベンズアルデヒドとベンジルアルコールのモル比xB /xAは反応時間とともに一定値に近づいた。反応経路を仮定してこれらの結果をつぎのように説明した。トルエンは被覆率がほぼ1である吸着ベンジルアルコールの水素化分解過程の速度で生成し,xB /xAの飽和現象はベンズアルデヒドがほぼ吸着平衡にあり,その被覆率が劣8/娠に比例し,小さいながら吸着ベンジルァルコールに対して平衡被覆率まで増加することによるとした。
  • 佐田 進, 平田 隆
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    表題の反応を常圧流通式で行なった。反応条件は反応温度160~180℃ベンズアルデヒド分圧0.02~0.08atm ,水素分圧0.5~1atmとした。生成物はおもにベンジルアルコールとトルエンであり,少量のベンゼンが副生した。触媒活性は触媒の熱処理による結晶化で前報のベンジルアルコール水素化分解の場合と同傾向の変化を示した。結晶性ニッケル・リン触媒によるベンズアルデヒドならびにベンズアルデヒド-ンジルアルコール混合系の反応速度はつぎの速度式で整理された。-γB=-dxB/d(W/F)=kBKBpHpB/KBpB+KApA γT=dxT/d(W/F)= kTKApHpA/KBpB+KApA γA=(-γB)-γT kB=7.2×109exp(-22×109/RT)mol(g-cat・hr・atm)-1 kT=5.9×1010exp(-24×109/RT)mol(g-cat・hr・atm)-1 KA/KB=51.2×10-4exp(8.4×109/RT)ここで,r,K,p はそれぞれ反応速度,吸着平衡定数,分圧を,添字B,A,T,Hはベンズァルデヒド,ベンジルアルコール, トルエン,水素を示す。kBおよびkTは吸着ベンズアルデヒドおよびベンジルアルコ0ルの表面水素化反応の速度定数である。
  • 岩瀬 秋雄, 工藤 節子
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    0.1mol/l TBAPを含むジメチルスルホキシド系で,ビス(1,3-ジケトナト)コバルト(II)錯体が共存するときの酸素のポーラログラフ的還元機構を検討した。その結果,(Co HFA)2, Co(FTA)2, Co(BFA)2, Co(fod)2, Co(TAA)2, Co(TTA)2, Co(PTA)2, Co(AA)2およびCo(DPM)2などの錯体はいずれもO2-と相互作用し,接触電流を与えることが見いだされた。これらの接触電流は酸素の再生成に基づくものと解釈され,Kouteckyの近似式を用いて酸素の再生成速度定数(25℃)が決定された。また定電位電解法によってO2-を発生させ,Co(AA)2とO2-の反応を追跡した結果から,電解初期に得られる黄色溶液はおもにCo(AA)2O2-を,また電解中止後,化学反応によって生ずる緑色溶液はおもに[(AA)2CoO2Co(AA)2]2-を含むものと考えられ,つぎのような電極反応過程が推定された。2+e→O2- O2-+Co(AA)2→Co(AA)2O2- 2Co(AA)2O2-→[(AA)2CoO2Co(AA)2]2- + O2.
  • 山田 約瑟
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    実用的な連続分析法に使用可能であるウォールジェット電極系における対流拡散の特性を詳細に検討する目的で,ウォールジェットリング電極における限界拡散電流の理論式を導き,これを実験的に検討した。対流ボルタンメトリーにおける限界拡散電流の一般式により,ウォールジェットリング電極に対しては次式が得られる:Id= 1.60nFC0D2/3v-5/12V3/4a-1/2[RoR9/8-RiR9/8]2/3ウォールジェットリング電極における限界拡散電流は種々な因子に依存するがiこれらのうち,復極剤の濃度(C0),溶液の体積速度(V),ノズルの径(a),リング電極の内,外径(Ri,Ro)などについて,カーボンペーストリング電極および金リング電極を指示電極として用い,それぞれヨウ化物イオンの酸化波およびヘキサシアノ鉄(III)酸イオンの還元波を測定し,理論的結論を実証した。さらに約150の実験データから上記理論式の係数の妥当性を確かめた。
  • 牧 俊夫, 大久保 正敏
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 50-58
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    市販のリン酸水素カルシウムおよびリン酸水素マグネシウムの粉末(直径1~100μ の範囲の粒子から構成される)を100~2500ppmの銅(II)イオンを含む硫酸銅(II)または塩化銅(II)溶液に室温で0~48時間浸湊後,残留液中の銅(II),カルシウム(II)またはマグネシウム(II)およびリン(V)イオンの量を測定することによって,また吸着前後の試料をX線回折分析することによって,溶液中の銅(皿)イオンを試料が吸着する能力およびその吸着機構を調べた。その結果つぎのことがわかった。1)試料の少量が液に溶解するとはいえ,吸着はpH3.0~7.0の範囲にある溶濠中で試料が不溶性の銅(III)イオン含有リン酸塩に変化することによって進行する。2)試料を1500または2500pμRの銅(II)イオンを含む溶液に浸漬するとき,その吸着能はほかのリン酸塩や布販吸着剤にくらべてかなり大きかった。その吸着容量はどちらも約7.0meqCu/gに達した。3)銅(II)イオン吸着機構をつぎの式によって説明した。すなわち塩化銅(II)溶液に試料を浸漬するとき,(1)式で示される反応の結果生成するCuHPO4・H2Oが液中に過剰の銅(II)イオンが存在する場合には,瞬時に(2)式のように反応してCu3(PO4)2・ 3H2O MgHPO4(Ca)+ Cu2+ + 2Cl-→CuHPO4+ Mg2+(Ca2+) + 2Cl- (1) 2CuHPO4 + Cu2+ + 2Cl-→Cu3(PO4)2 + 2H+ + 2Cl- (2) を生成する。しかし液の銅(II)イオン濃度が吸着によってある値まで減少すると,銅(II)イオン濃度の小さい溶液の場合のように(1)式の反応のみがふたたび進行する。
  • 露木 尚光, 笠井 順一
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二酸化硫黄の除去法として,いちじるしい効果をあげている石灰セッコウ法で副産されるCaSO3・1/2 H2Oは,将来重要なセッコウ資源となり得る。本報では前報に引きつづいて,CaSO3・1/2 H2Oの脱水,転移の過程を赤外吸収スペクトルによって解析した。その結果,従来の報告とは異にする結果が得られた。すなわち,CaSO3・1/2 H2Oはその焼成過程で結晶水が脱離してCaSO3となったのち,酸化してII CaSO4になるとされているが,著者らの実験では酸化の過程で一 部 IIIβ-CaSO4が認められ, これとCaSO3(ΔH2O)とが混在した相を経るものと判明した(ΔH2O:きわめて微量と考えられる結晶水)。この過程をつぎのように表わす。CaSO3・ 1/2 H2O 335℃ → [CaSO3(ΔH2O) + IIIβ - CaSO4(Δ H2O)]
    382~401℃ → [CaSO3(Δ H2O) + II CaSO4]459~-470℃ → II CaSO4 → I CaSO4
  • 完戸 俊助, 増田 芳男
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    熱テンビンを主体としてギ酸リチウム,ギ酸ナトリウム,ギ酸カリウム1ギ酸ルビジウムおよびギ酸セシウムの熱分解反応を解析した。(1)これらギ酸塩の熱分解は二段にわかれて進行した。第一段として2HCOOM → H2+CO+M2CO2 (a) 2HCOOM → H2+M2C2O4 (b) 第二段として M2C2O4 → CO + M2CO3 (c) 第一段のアルカリ金属ギ酸塩の分解温度はシュウ酸塩の分解温度より低いにもかかわらず,第一段での(b)の割合は対応するシュウ酸塩の熱安定性と相関する。(2)ギ酸塩の熱分解はC-H結合の開裂によって開始されると考えられ,分解温度とC-H結合強度の関係をアルカリ金属の電気陰性度と関連づけて考察した。(3)シュウ酸塩は主として第一段後半の高温部で生成されるが,シュウ酸塩の生成はコバルト,ニッケル,銅および白金などの重金属と同様に雰囲気中の酸素や第0段で生成される無定形炭素によって阻害された。
  • 宮原 正樹, 大坪 義雄
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    同形酸化物からなる二成分系に正則溶液を仮定して固溶度曲線の推定を行なった。イオン結晶モデルをもとに作成した経験式による混合のエンタルピーと理想混合のエントロピーとから,各温度における混合のGibbsエネルギーを算定し,共通接線法によって固溶度曲線を描いた。固溶度は両成分の格子エネルギーU(T),結合距離r(T),電気陰性度Xに依存し,両成分のUおよびrの差が大きい系では固溶度が小さく,これらの差が小さくXの差が大きい系では固溶度が大きかった。推定した固溶度曲線あるいは共溶臨界温度を文献による実測値と比較したところ,MgO-CaO,Al2O3-Fe2O3, CaTiO3-BaTiO3, Na2SO4-Na2MoO4, NaNO3-KNO3系など,多くの系について満足すべき結果を得た。
  • 武藤 文夫, 滝 貞男
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化チタンと水酸化カリウムの水熱反応では繊維状チタン酸カリウムが生成するが,水酸化リチウムを添加した系について実験を行なったところK2Li2Ti6O14が析出することがわかった。この化合物は長さ数mmにおよぶ斜方両錐i形の結晶として得られ1このさい微細なLi2TiO3および繊維状K2Ti6O13,K2Ti2O5が同時に生成していた。K2Li2Ti6O14はTiO2:LiOH:KOH=1.5:1.0:7.5(モル比),アルカリ濃度10N,充てん率35~45%,400℃ 以上,70時間以上の条件で反応を行なったときもっともよい収率で生成する。またその生成過程は,酸化チタンとアルカリとの直接反応により生ずるのではなく,いったん生成したK2Ti6O13とリチウムイオンとの反応によることが明らかとなった。結晶構造解析の結果によれば斜方晶系に属し,空間群はF222,格子定数はa=16.43Å,b=5.80Å,c=11.28Åで,z=4である。密度の実測値および計算値はそれぞれ3.69,3.73g・cm-3であった。構造はTiO6のゆがんだ八面体が稜あるいは隅を共有して三次元網状構造を形成し,その間の大きな隙間にアルカリ原子が位置している。なお,カリウム原子は10個の酸素原子に囲まれている。
  • 潮 真澄
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Ca(OH)2とSiO2を出発原料として,フォシャジァイトの長繊維を,400℃,120~230atm,最高1週間保持の処理条件で,鉱化剤としてアルカリ金属の水酸化物の0.5~4N溶液を用いて水熱合成を行なった。NaOH鉱化剤を用いた場合,0.5Nのときフォシャジァイトの長繊維が高収率で合成された。しかし繊維の長さはまちまちであり,また鉱化剤の濃度が増すとともに長さが減少する傾向がみられた。LiOHの場合は,最高0.6mmの短繊維が低収率で隼成し,繊維の長さも多種多様iであった。またほかの鉱物もときどき伴生した。一方KOHの場合は,最高1.8mmであったが,長さと太さが比較的整っており,その収率は鉱化剤の濃度が増すとともに増大した。濃度の効果はつぎのとおりである。4 N> 2N > 0.5 N > 1N以上のように鉱化剤のフォシャジァイトに対する効果の差異は,おそらく高温高圧下でのフォシャジァイトにおけるK+, Na+ と Li+イオンの配位数が主として異なるためであろう。X線回折と電子線回折図形から合成フォシャジァイト繊維は結晶化度が高く,また赤外吸収スペクトル測定結果から, vOH伸縮振動によると思われる,3600cm-1付近に二つの吸収が認められた。化学分析の結果,合成フォシャジァイトは0.1~0.2wt%のアルカリ金属を含有していた。
  • 引地 康夫, 福尾 券一
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 88-92
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    六方晶系リン酸セリウムを800℃ で2時間加熱してつくったモナズ石粉末を500kg/cm2で数分聞加圧し,10φ ×5mmのペレットに成形した。ペレットの焼成前カサ密度は2.54g/cm3であった。これらのペレットを空気中t900。Cから1500℃ の温度範囲で5分から200分焼成した。その結果焼結は9500Cからはじまる。1500℃で15分焼成したペレットのカサ密度は5.0g/cm3であり,密度比(焼成ペレットのカサ密度/理論密度5.16g/cm3)×100%は97%となる。初期焼結段階における収縮割合と焼成時間との関係を両対数で表わすと直線となり,このときの勾配は0.4である。粒子は1100℃から成長しはじめる。1200℃から1500℃ の温度範囲における粒子成長は,よく知られた式D2=Ktにしたがう。1500℃で60分焼成したペレットの熱間線膨張係数は9.9×10-6(~1000℃)であり,このペレットは20℃から800℃ の温度範囲で急熱急冷による耐熱衝撃抵抗試験を20回行なっても亀裂などを生じなかった。合成モナズ石の凝固点は2045±22℃である。
  • 井上 貞信, 四ツ柳 隆夫, 佐々木 満雄, 青村 和夫
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニッケル(lr)および亜鉛(0)はpH2 .5~12においてジメルカプトマレオニトリル(H2mntまたはH2Lと略記する:pKa1, < 2,pKa2 = 3.92±0.02)と反応し,水溶性の1:2錯体,NiL22-(logβ2=21.84±021,ε312nmmax 蟹F=27600)およびZnL22-(logβ2=15.07±0.14,ε355nmmax=17600)を生成する。また亜鉛(II)イオン大過剰の条件で1:1錯体ZnL(logK1=6.86±0.090, 355nmmax=11200)を生成する(μ=0.3(KCl)0.25±0.1℃)。遊離のL2-イオンは溶存酸素によって徐々に酸化されるが,その金属キレートは安定である。mnt錯体中の亜鉛(II)をニッケル(II)で定量的に置換でき,かつそのさいの両金属錯体の吸光度差が十分に大きいこと(Δε312nm=2.4×104)を利用して,ニッケルを吸光光度定量することができる。Beerの法則は0~44μg Ni2+/25mlにおいて成立し,その吸光度0.001に対する感度は,0.0024μg Ni2+/cm2である。鉄(II),コバルト(II),銅(II)は定量を妨害する。
  • 野村 毅
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    o-アミノフェノールは溶存酸素微量の銅(II)イオンが共存すると酸化反応が接触的に促進されてキノンを生じ,さらに重合して二量体(3-アミノフェノキサジン-2-オン)を生成する。一方,o-アミノフェノールはそれ自体直流および交流ポーラログラフ波を示さないが,生成した二量体は非常に感度の高い交流波が得られる。この交流波はpH6~8で一定波高を示し,二量体濃度との関係はLangmuirの吸着等温線型を示す。また温度依存性,電気毛管曲線の測定結果から,この交流波は二量体の電極表面への吸着に基づくテンサメトリー波であることがわかった。この接触酸化反応を応用して微量の銅(II)イオンを定量する方法を検討したところ2×10-5mol/l o-アミノフェノールを含むホウ砂-酢酸緩衝溶液中(pH8.0)で30℃,2時間放置後に示す波高から0.15~3.2μgの銅(II)を精度よく定量することができた。水銀(II),マンガン(VII),シアン化物イオンおよび10倍量以上の銀(I),セリウム(IV)のなどの共存が本法の妨害となる。
  • 中村 淳, 松本 勲
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 104-108
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水素炎イオン化検出器を接続した高速液体クロマトグラフィーで,脂肪酸グリセリドの分離および定量法について検討した。Zorbax-SILを充てんしたカラムを用いて,ヘキサンとアセトンとを組み合わせた移動相液体でグラジエント溶離すれば,トリ,1,3-ジ,1,2-ジおよび1-モノグリセリドの分離が達成できた。この場合,グリセリド構成脂肪酸種類は保持時間に影響を与えなかった。内部漂準法と補正係数法を検討し,簡便な補正係数法で市販5試料の組成を求めた。このさい,ガスクロマトグラフィーで検出されなかった約10%含有のトリグリセリドを高速液体クロマトグラフィーで定量することができた。
  • 平山 忠一, 宇都 宮昭, 本里 義明
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 109-113
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    懸濁重合して得たポリ酢酸ビニル粒子をケン化液組成およびケン化時間を調節してケン化すると外層はPVA,内層はPVAcの二層構造球状粒子が得られる。この粒子の外層PVAをγ線照射またはエピクロロヒドリン処理によって橋かけし,ひきっづきケン化すると外層に橋かけPVA,内層に線状PVAをもつ二層構造ゲルが得られた。このゲルを充てんしたカラムを通して重合同族体を溶出すると,ゲル床を通過する間に,ある分子量域を境として二つのグループに分溺された。この現象は一般のゲルの場合とくらべていちじるしく異なる。これらの溶出現象は溶出分子の分配係数Kdが0またはほぼ1に等しいとすると説明できる。橋かけ程度の違いによって,境となる分子量(Mnで28000,15000,10000,6000,4000,1500)が異なる数種のゲルが合成された。
  • 丸山 正生, 掛本 道子
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 114-119
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ガスクロマトグラフィーにおける検出手段として回転水銀電極を指示電極に用いたポーラログラフィーの利用を試みた。すなわちガスクロマトグラフ出口に連結したステンレス細管を用いて分離管からの溶出成分を試作した電解セルに導き,一定電位で電流を測定した。本検出器は積分型であり,得られたクロマトグラムは階段状を示す。この検出器を用い,アニリン中のニトロベンゼンおよびo-,m-,p-ニトロフェノール異性体の検出,定量を行なった。1×103 (10-4~10-7g)の範囲で直線性が認められ,検出限界は約1ppmであった。電解液の除酸素はキャリヤーガスで行なうことができた。回転水銀電極の使用は水銀滴の乱れがなく安定に測定ができ,電解液中に導入された溶出成分を電解液中で電極によるかきまぜにより,すみやかに濃度を均一にすることができ,また滴下水銀電極を利用した場合にくらづて感度が10~15倍程度向上できるなどの利点があった。,本検出手段を利用した場合の好適な対象は本研究の応用例でも示したようにポーラログラフ的に不活性な大量成分中の微量活性成分,あるいはガスクロマトグラフの分離管中でたがいに分離しにくい多成分中のある特定成分の検出,定量が考えられる。
  • 加藤 清, 垣花 秀武
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 120-127
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イオン交換樹脂粒を発色の担体とし,シアン化物イオン,チオシアン酸イオン,ヘキサシアノ鉄(III)酸イオンおよびヘキサシアノ鉄(II)酸イオンの微量検出法を検討した。上記の各イオンの検出に対して共通に使用でき,良好な結果が得られた樹脂粒は,MR形強塩基性陰イオン交換樹脂粒Diaian PA-304[Cl] または Amberlite IRA-900[Cl]であった。発色試薬としては,シアン化物イオンおよびチオシアン酸イオンの検出にピリジンーピラゾロン試薬による発色(青色)法,またチオシアン酸イオンの検出に壇化鉄(III)による発色(赤榿色)法を, ヘキサシアノ鉄(III)酸イオンおよびヘキサシアノ鉄(II)酸イオンの検出に硫酸鉄(II)による発色(青色)法を適用して,それぞれ良好な結果が得られた。検出感度は,いずれのイオンに対してもほぼ等しく,シアンの量に換算して検出限界量0.01~0.003μg,限界濃度1:3×106~1:107が得られた。また本検出法を前記4種のイオンが共存している試料液中からそれぞれのイオンを検出するのに適用したところ,ヘキサシアノ鉄(III)酸イオンとヘキサシアノ鉄(II)酸イオンとを区別して検出することはできなかったが,そのほかのイオンの検出についてはほぼ満足できる結果が得られた。
  • 吉野 純子, 河合 久夫, 星 敏彦
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 128-132
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1一および2一ナフタレンチオールの偏光吸収スペクトルの測定およびPPP計算から各遷移モーメントの方向などを決定し,メルカプト基のπ-電子系への効果について考察した。PPP計算に必要なメルカプト基のempiricalパラメーターの値はつぎのように評価した。すなわち硫黄原子の第2イオン化電圧はIp(S+) =Ip(S) + (SS|SS) =22.30 eVで近似した。ここで,Ip(S)は硫黄原子の第1イオン化電圧である。炭素一硫黄問の共鳴積分βCSは偏光吸収スペクトルの結果を参考にして推定した(最適のβCS=-2.8eV)。 これらのempiricalパラメーターを用いた1-および2-ナフタレンチオールについての計算結果は遷移モーメントの方向も含めて実測値と非常によく一致している。メルカプト基のπ-電子系への共鳴効果の大きさを他の置換基(アミノ基など)と比較した。その結果共鳴効果の大きさはつぎのような順序であった。--0H < -SH < -NH2 < -O-
  • 福永 公寿, 吉田 照正, 木村 允
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 133-137
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トリフルオロアセチル基で保護したいろいろの芳香族アミンのニトロ化を行ない,一般によく行なわれているアセチル保護した場合とのニトロ化における配向性を比較検討した。用いたアミンのうちアニリン誘導体およびナフチルアミンでは配向性の変化はみられないが,p-アミノビフェニル,2-フルオレンアミン, 3-ジベンゾフランアミンではアセチル保護した場合と異なるニトロ化異性体が得られ配向性が変化することがわかった。そこで,いろいろの芳香族アミンについて保護基の相違による電子スペクトルの変化を調べて,トリフルオロアセチル基で保護したアミノ基がアセチル保護したアミノ基より大きな電子効果をもつことを明らかにして配向性との関連を考察した。
  • 飯田 弘忠, 山崎 道雄, 高橋 一公, 山田 和俊
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 138-143
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    p-ニトロアニリン[1]は t-BuOK-HMPA中で解離して,p-ニトロフェニルアミドイオンとなり,ニトロベンゼン誘導体[2a~g]に対して求核置換反応を行なう。この求核置換反応は置換基の置換と水素原子の置換の二つの反応型にわけることができる。一般に,水素原子の置換はいずれの場合にも起こり,ニトロ基に対してパラ位またはオルト位の水素原子が置換される。置換基がメタ位にある場合には置換基の置換はおきないが,オルト位またはパラ位にある場合には置換される。両方の反応がともに起こる場合には,t-BuOKの量が少ない場合に置換基の置換が優先し,多い場合に水素の置換が優先する。また,生成物のp-ニトロアニリノ基の位置およびESRの測定結果から反応機横についても考察した。
  • 高橋 一公, 坪井 哲夫, 山田 和俊, 飯田 弘忠
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 144-147
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンジルトリ土チルアンモニウム=クロリド(TEBACl)を相間移動触媒として加えた50%水酸化ナトリウム-ニトロベンゼン混合溶液中で,フェニルアセトニトリルを処理すると,1-アニリノ-2-シアノ-1,2-ジフエニルエチレン[1]と(p-ニトロフェニル)フェニルアセトニトリル[2]および4-(α -シアノベンジリデン)-2,5-シクロヘキサジエン-1-オン=オキシム[3]が生成することがわかった。[1],[2],[3]の収率は触媒(TEBACl)の添加量および水酸化ナトリウムの濃度によってかなり影響を受け,TEBAClの不在下では,[3]が微量生成されたに過ぎなかった。TEBAClの添加量がフェェルアセトニトリルに対して約1.5倍モル以上の条件下では,[1]と[2]が,それぞれ50%43%の収率で選択的に得られた。この反応条件下による[1]と[2]の生成は電子移動を含む過程を経由するものであり,新しい反応例である。[3]の生成はイオン反応で進行したものと推定した。
  • 橘 陽二, 中川 邦男, 府川 秀明
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 148-152
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩基によってペニシリンS-オキシドからイソチアゾロンが生成することはよく知られているが,いずれも収率は低く,反応メカニズムも明らかでない。著者らはピリジンアルコール類,ヒドロキシピリジン類とペニシリン S-オキシドとの反応によりイソチアゾロンが好収率で生成することを見いだし,反応メカニズムを推定した。ピリジンメタノール,ピリジンエタノール,ピリジンプロパノール類はすべて好収率でイソチアゾロンを生成するが,ヒドロキシピリジン類のうち,3-ピリジノールでは好収率を与えるが,2-および4-ピリジノールを用いた場合収率は極端に低下する。また,4-メチルモルホリン, N-メチルピペリジンではイソチアゾロンの生成はほとんど認められないが,N-モルホリンエタノール,1-ピペリジンエタノールでは好収率でイソチアゾロンを与える。以上の事実と用いた有機塩基の構造から考えて,イソチアゾロンが選択性よく生成するためには,ヒドロキシル基と塩基との協奏的な作用が必要であると推察される。2-および4-ピリジノールでは,その共鳴構造が大きく関与して協奏的に反応が進行しないものと考えられる。
  • 白石 稔, 真田 雄三
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 153-160
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4種の出発物質から得た炭化初期段階生成物について,X線回折および顕微鏡観察によってその積層構造を熱処理条件との関連において明らかにし,光学的異方性組織との相関性につめて検討した。その結果,つぎのことが明らかになった。炭化初期段階生成物の積層構造の熱処理時間にともなう変化はその出発物質の種類によって異なるけれども,平均的な積層構造としては層面がたがいに平行に3層程度積み重なって形成され,約15~25Åの間隔で存在する。炭化初期段階生成物の光学的異方性が流れ模様を示すようになると積層構造のc軸の配向度が増し,積層構造がたがいにゆるやかな平行性をもって連なるようになる。
  • 岡野 光夫, 青柳 重郎, 篠原 功
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 161-165
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    親水性モノマーの2-ヒドロキシエチル=メタクリラート(HEMA)と疎水性モノマーのスチレン(St)およびメチル=メタクリラート(MMA)の共重合反応を行なった。HEMA-MMA系ではピリジン溶媒中でNMRスペクトルを測定し,共重合体組成を決定した。HEMA(M1)-St(M2)系,HEMA(M1)-MMA(M2)系のモノマー反応性比を求めそれぞれγ1=0.85, γ2=0.33およびγ1=0.66,γ2=0.86を得た。それぞれの系の共重合体とブレンドマーのフィルムを作製し,水に対する接触角を測定するとブレンドマーで鉢租成の変化に対して接触角はゆるやかに変化するが,共重合体の接触角はHEMA-St系ではHEMAのモル分率が0.8付近に,HEMA-MMA系では0.5付近に立ち上がりが認められた。これはぬれが組成だけではなく共重合体中の連鎖,フィルム表面の構造の違いによって,親水性と疎水性の機能の発現が影響されるためであると考えることができる。
  • 内藤 郁夫, 木下 発博, 鉛山 洋一
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 166-170
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    7種類のアルキルビニルケトン(AVK,M2)を合成し,スチレン(St,M1)との共重合を行なった。AVKは二つの安定な立体配座.S-cisとs-transを任意の割合でもつが,反応性比r1はほぼ同じ値であった。優先的にs-cis体であるt-BuVKとPhVKを除き,共重合パラメータ,Q値,e値はアルキル置換基のTaftのσ*値に比例しており,(1),(2)式で示された。t-BuVKの反応性比r2(2.42)はほかのAVKにくらべいちじるしく大きい。このことは重合中における立体反発により説明できる。
    Q=-0.87σ*+1.25 (1)
    e=0.29σ*+0.69 (2)
    他のAVKと明確に異なるt-BuVKのQ値,e値はs-cis体の値である。
  • 長田 義仁, 斎藤 裕
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 171-174
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリエチレングリコール(PEG)とポリメタクリル酸(PMAA)膜との間のコンプレックス形成反応を作動原理とするメカノケミカルシステムについて研究した。橋かけ不溶化したPMAA膜を荷重(490mg)をつけてPEG(分子量2000)希薄水溶液に浸漬し,浸漬液温度を変化させるとPMAA膜は温度上昇,下降に対応してそれぞれ可逆的に収縮,伸長した。その伸縮距離は乾燥膜自重の100倍の荷重をつけて10~40℃ の間で90%(乾燥膜長さに対し)にも達し,とくに20~30℃において急激であった。本原理に基づくメカノケミカルシステムは浸漬液中PEG濃度を変えることによって伸縮温度領域をコントロールできることも明らかになった。さらに,浸漬液中に少量のエタノールをPEGとともに共存させると温度変化に対する膜の伸縮方向を逆転する(すなわち温度上昇は膜の伸長を,温度降下は膜収縮をもたらす)ことも可能であることを明らかにした。
  • 長田 義仁, 佐藤 通彦
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 175-179
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    電位差滴定を用いた平衡論的取り扱いから,ポリメタクリル酸(PMAA)とポリエチレングリコール(PEG)との高分子間コンプレックス反応における安定度定数K,結合率θを求めた。分子量66000のPMAAに対し等モルのPEG(分子量2000)を反応させると高温ほどより容易にコンプレヅクス反応が進行し,55℃前後においてθ=0.6,K=500に達する。さらに昇温すると再解離をすることがわかった。PEG(分子量3000)の場合には高温においてより安定なコンプレヅクス(θ=0.7, K=1000)を形成し,60℃においても再解離することはない。分子量の大きいPEG(7500, 20000)の場合には低温(たとえぽ10℃)においてすでに60~70%もの結合を完了しており,温度上昇によってもいちじるしい増大はない。熱力学的パラメーター(ΔG0,Δh0,Δs0)を求め反応論的考察を行なった。,Δh0, Δs0,ともにコンプレックス生成時には大きな正の値-すなわちコンプレックス形成は吸熱反応-であり,大きなエントロピー増加をともなっていることが明らかとなった。
  • 新保 正樹, 喜田村 哲二, 木田 宏
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 180-184
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレンを加熱空気によって表面処理するにあたって,あらかじめポリプロピレンに有機ジカルボン酸を添加すると,加熱空気による表面酸化が促進され,接着強さが向上した。この過程でメチレン鎖のくり返し数(n)が0~8の有機ジカルボン酸を添加し,その処理効果を調べた結果,n:2~4の間でにく離強さが最大となることを認めた。またこの領域で球晶直径は最小,X線散乱による(040)面の反射強度は最大となった。
  • 三浦 則雄, 峠 成二, 佐々木 和夫
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 185-190
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    熱分離管を傾斜して使用する効果について検討した。気体を対象として,しかも岡心二重管型分離管についてのこのような用法は初めての試みである。特性定数をいちじるしく異にする3種の分離管を製作し,Ar-N2等モル混合気体について実測比較した結果,傾斜して使用することは,単位長さあたりの分離を増大させる利点があること,同時に分離に要する時間を長くする欠点があることが判明したが,両者は完全に相殺するものではなく,最適傾斜角があると推定される。また, 分離速度が遅くても単に傾斜させるだけで,分離を増大できることは実用上の応用面が広いと考えられる。傾斜して分離が上昇する理由は,定性的には重力が実効的に減少し,対流速度を抑えることにあるとして説明できる。この点は,管内流を模型を用いて視覚化し,写真記録することからある程度の保証を得た。
  • 桜井 雅男, 小松 剛, 中川 鶴太郎
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 191-193
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The densities of dilute aqueous solutions of 1, 1, 3, 3-tetramethylbutylammonium chloride and sodium 3, 5, 5-trimethylhexanoate have been determined at 5, 25, and 45° using a buoyancy technique. The apparent and limiting partial molal volumes of the salts have been derived. The partial molal volume of branched-chain isomer is smaller than that of corresponding straight-chain isomer as well as the calculated value. The results have been compared with those for the isomeric butylammonium and butanecarboxylate salts. The effects of hydrophobic and ionic groups on the structure of water have been discussed.
  • 佐藤 耕一, 橘 芳碗, 小倉 勲
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 194-195
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The only product isolated from the reaction of guaiazulene with mono-, di- or trichloroactic acids in the presence of iron(III) oxide and potassium bromide as catalyst has been proved to be 3-(7-isopropyl-1, 4-dimethylazulene)acetic acid. When anhydrous aluminium chloride was used in place of iron(III) oxide and potassium bromide, only a trace of the product was obtained.
  • 袖山 享, 小泊 満生, 板橋 国夫
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 196-197
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Primary aromatic or aliphatic amides were allowed to react with tris(diethylamino)phosphine P(NEt2)3 under reflux in THF to give the corresponding nitriles in good yield with the evolution of diethylamine. Similarly, thiobenzamide reacted with P(NEt2)3 more readily than benzamide and was converted into the nitrile quantitatively. In the case of aliphatic amides, the yield of nitriles de creased with the increase of the number of carbon atoms. The dehydration reactions using other phosphine compounds P(NMe2)3, PCl3, P(OEt)3, , PPh3were also described in the next.
  • 石川 延男, 北川 克之助
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 198-199
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2, 4-Dinitro-1 (heptafluoroisoproyl) benzene was catalytically hydrogenated in the presence of hydrochloric acid to give 1- (heptafluoroisopropyl) -2, 4-phenylenediamine dihydrochloride, which was subsequently phosgenated to 1- (heptafluoroisopropyl) -2, 4-phenylene diisocyanate. Polyurethane elastomer was prepared from this diisocyanate and poly (oxypropylene) glycol. The introduction of heptafluoroisopropyl group scarcely brought about an effect on thermostability of polyurethane, but it gave inflammability.
  • 石翔 延男, 鈴木 勝雅, 田辺 敏夫
    1976 年 1976 巻 1 号 p. 200-202
    発行日: 1976/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Tetraflurophthalimide [2] underwent self-condensation in the presence of alkali or potassium fluoride in aprotic polar solvents. The product was perfluorooligoimide, [4] (n=2-3), mp > 360° C, carrying a terminal dicarboxyl group, and was readily soluble in aqueous alkali. Several reactions of [2] and its derivatives were carried out to establish the structure of [4].
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