東北日本の漸新世,中新琶,鮮新世,洪積世および現世の堆積物から採集した二枚貝の貝殻(海棲種5種類,48例および淡水種2種類,9例)中の銀,金,バリウム,臭素,コバルト, クロム, セシウム, ハフニウム,ルビジウム,アンチモン,スカンジウム,ストロンチウム,タンタル,トリウムおよびウラン含量を,非破壊法による中性子放射化分析で定量した。
殻体を構成する炭酸カルシウムの結晶形別では,現世貝殻の場合ストロンチウムが,また洪積世の化石貝殻ではアンチモン,ストロンチウムおよびウランが,アラレ石型のものに多量に存在し,鮮新世以前の化石貝殻の場合は,トリウムが方解石型のものに多量に存在した。
貝殻中の微量元素含量の年代変化は,元素によりまたアラレ石型と方解石型のものとで多少異なるが, 地質時代の古いものほど銀,バリウム,セシウム,ハフニウム,スカンジウムなどが多く,臭素,ストロンチウムなどが少ない傾向がみられ,化石化過程における化学成分の挙動の多様性が認められた。
現世貝殻中の微量元素含量を環境水中のそれにくらべると,臭素を除き含有率が増大する。
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