日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1976 巻, 7 号
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  • 永田 親清, 浜田 修, 田中 誠之
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1029-1033
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アニリン誘導体についてジメチルスルポキシドおよびメタンスルホン酸溶液中で13C-NMRを測定し,水素付加による環炭素の化学シフト変化について検討した。その結果,アミノ基の結合している環炭素は約20ppmと大きく高磁場シフトし,置換基の種類や結合位置による差はみられなかった。オルトおよびパラ位炭素では8~15ppmの低磁場シフト,メタ位炭素ではシフト変化は非常に小さく,環炭素で交互誘起効果がみられた。
    CNDO/2MO法により計算した電子密度の水素付加による変化値は実測シフト差と非常によく対応することがわかった。したがって,アニリン誘導体における水素付加による環炭素のシフトに対してはアミノ基の窒素原子がp2からp3が混成をとることによる電子的効果が大きく寄与していると考えられる。
  • 中村 照雄, 村上 幸夫, 藤代 亮一
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1034-1039
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二成分溶液の過剃熱容量の測定は溶液中の分子間相互作用に関する知見を得る有用な手段の一つである。最近,Pickerらは溶液の熱容量を測定するためにフロー形の熱量計を製作した。著者らは二成分溶液の過剰熱容量を測定するために,同じ形の熱量計をつくり,NaCl水溶液を用いて熱量計の性能テストを行なった。その結果,
    見かけのモル熱容量Cp,φとして次式を得た。Cp,φ=-82.46+20.59 m1/2+35.86 m-11.37 m3/2この結果はPickerらの値にくらべやや小さいが,50JK-1・mol-1位の熱容量を約1%で測定できることがわかった。
    この熱量計を用いて,つぎの溶液の過剃熱容量Cpeを測定した。
    1)ヘプタン十シクロヘキサンおよびベンゼン
    2)四塩化炭素十ベンゼンおよびトルエンヘプタン系ではCpe<0であり,四塩化炭素系ではCpE>0になる。この実測結果はPrigogine-Floryの相応状態理論では説明できない。Pattersonらによって指摘された純粋成分と溶液中で分子の配向が異なることを考慮し,エントロピーパラメーターを代入すると説明できる。
  • 黒岩 茂隆, 松田 英臣, 藤松 仁, 宮沢 明
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1040-1045
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    非イオン性界面活性剤の濃厚水溶液が形成する液晶構造と溶液物性に関する知見をうることを目的として,(アルキルフェニル)エーテル系,ならびにアルキルエーテル系非イオン性界面活性剤3種を用い,まずこれら水溶液のゲル化温度と曇り点の濃度変化を測定し,ついで散乱光の偏光解消度および非対称係数の濃度変化を測定した。その結果,いずれの場合も濃度40~70%のゲル領域は,光学的に異方性で,液晶を形成していることが明らかとなった。またX線小角散乱測定および偏光顕微鏡観察の結果,この濃度領域は円筒状ミセル(複屈折性負)が六方配列したmiddlephaseで,したがって少なくともこの濃度までは層状ミセル(複屈折性正)の形成はないことが確認された。一方,流動複屈折度ははじめ負の値を示すが,その絶対値は濃度とともに増大し,極大を経たのち減少する。そしてさらに濃度を増大すると,界面活性剤の種類によってきまる特定濃度,それもゲル領域以下のかなり低い濃度で負から正に変化し,その値は濃度とともにいちじるしく増大する。この流動複屈折度にみられる特異な現象については,濃度の増大につれ,ミセルの外側にあるポリオキシエチレン基が水を媒介にしてたがいに結合し,しだいに網目構造を形成するようになるという考えに基づき,詳細に考察した。
  • 石塚 庸三, 黒招 春雄, 山田 裕憲, 今井 久雄
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1046-1049
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の活性炭を窒素,水素,水蒸気および空気のような種々のガスで処理し,これらの活性炭上でのSO2の酸化速度を100℃で煙道排ガス類似組成の混合ガスを用いて測定した。これらの表面処理をした活性炭上でのSO2の酸化速度は既報と同様な速度式で表わされた。活性炭のSO2酸化活性は,800℃ における窒素あるいは水素処理により増加するが,350℃における空気処理によりいちじるしく減少することを見いだした。同一の活性炭が350℃ において空気でまた800℃において窒素で順次処理されたとき,酸化活性は可逆的に変化した。800℃における水蒸気処理は単位表面積あたりの活性にほとんど影響を与えなかった。活性炭の昇温脱離スペクトルの測定から,比較的低温で分解されまたCO2として脱離する割合の大きい表面酸化物が,350℃における空気処理により生成されることがわかった。これらの結果を,炭素表面における酸性および塩基性酸化物の生成の見地から考察し,活堆炭のSO2酸化活性は炭素表面に存在する塩基性酸化物と密接に関係づけられると結論した。
  • 乾 智行, 上田 孝, 新宮 春男
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1050-1056
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    平均粒子径1.3μ の鉄粉末に対する20%水蒸気を含む02気流中300~600℃の酸化処理によって粒子表面に成長するひげ結晶について,電子顕微鏡を用いて速度論的に研究した。
    2種のひげ結晶,柱状晶(CW)と剣状晶(SP)が,400℃以上でほぼ均一に,それぞれ長さ0.45および0.8μ,表面密度108~109gcm-2た成長することが観測された。300から470℃ への昇温にともない,主として,CWの径とSPの底辺がそれぞれ9nmから67nm,20nmから320nmに変化し,前者は高温域で急激に減り,後者はあまり変わらなかった。その結果としてCWとSPの体積成長量は470℃付近で最大となることが認められた。
    CWとSPの伸び速度は,温度にかかわらず2。5~2.7分の潜伏期を経たのち,対数則にしたがった。一方,表面密度の増加速度は自己加速的な特性を示し,その誘導期0.1~0.5時間は高温ほど長くなった。この誘導期は,潜伏期の過程が準備されるのに要する時間とみなされ,また,CWの径およびSPの幅は,一定の潜伏期間内に金属の転位部分にある成長核において形成されることが示された。
    以上の速度論的な結果はすべてひげ結晶の根本成長機構を指示することが結論された。
  • 浅岡 佐知夫, 藤元 薫, 功刀 泰碩
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1057-1061
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    活性炭あるいは,Cu,FeないしCoを浸漬担持した活性炭を触媒としたイソペンタンの脱水素反応の機構(水素の逆スピルオーバー現象)について研究した。反応生成物の一つである水素を系に加えたときの定常での活性,選択性を調べた。
    水素分圧の変化に対して,金属無添加活性炭では,反応速度,選択性ともほぼ一定であり,Cu-,Fe-あるいは低担持量(1wt%以下)のCo一活性炭触媒では,選択性は一定に近いが,反応速度は水素分圧の増大とともに低下した。この金属担持活性炭触媒の脱水素反応速度に対する水素の抑制効果は,さきに提出した反応機構(水素の正・逆スピルオーバー現象)に基づいて,水素の水槽モデルにより整理された。
    反応速度に対する水素分圧効果の速度論的検討から金属が十分量担持された触媒では炭素表面からの水素の脱離は律速的ではなく,炭素表面によるパラフィンからの水素の引き抜きが律速的であることが示唆された。この場合,気相に水素を共存させるとスピルオーバーにより炭素上の水素濃度が高くなったため炭素による水素の引き抜き速度も抑剃された。金属担持量があまり多くない場合は炭素上の水素凍子が金属上に移行する過程が律速と考えられた。また速度論的に導出された炭素によるイソペンタンからの水素引き抜きの活性化エネルギーは6.4kcal・mol-1であった。
  • 藤元 薫, 正水 孝二, 浅岡 佐知夫, 功刀 泰碩
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1062-1067
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    各種の水素受容体の存在下において,活性炭を触媒とし,400~500℃ でイソペンタンの脱水素反応を行なった。エチレン,酸素および一酸化窒素を水素受容体に用いると,脱水素生成物の収率は数倍上昇したが水素の生成はほとんど認められず,おのおのエタン,水および窒素が生成し,エチレンおよび低濃度の酸素の存在下で反応を行なった場合には生成物の選択性は単純脱水素反応の場合とほとんど変わらなかったが,1/12~1/3atm程度の一酸化窒素あるいは酸素が存在する場合にはイソプレンの選択率が上昇し,より深い脱水素反応が進行した。ブタジエン,二酸化硫黄も水素受容体として有効であった。
    反応を速度論的に解析して,水素受容体は炭素表面上の水素と反応することによって水素脱離反応の進行を熱力学的に有利にし,そのため反応速度が上昇し,見かけ活性化エネルギーが低下していると結論した。
  • 湯沢 恩, 日戸 文昭, 架谷 昌信, 杉山 幸男
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1068-1071
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    含有重金属廃棄物の溶出抑止にはいろいろの方法が考えられているが,本研究では,一つの方法としてスピネル生成による安定化処理をとりあげ,試料として酸化カドミウムを選びCdFe2O4スピネル生成によるCdOの溶出抑止について検討を行なった。実験は,CdOの混合割合を2および45wt%とし,800~1000℃で0.5~3時間反応させたのち,スピネル生成率とCdOの溶出濃度との関係を測定した。その結果,不溶性スピネル生成にともなう未反応CdO量の減少に加えて,スピネルがCdOを閉じこめる効果をもつことを確かめ,このことがCdOの溶出抑止に重要な影響のあることを明らかにした。また,スピネル生成の反応速度について検討を加え,実験によって,次式の反応速度式を提示した。dx/ dθ=k(xe-x)θ,k,x,xeはそれぞれ反応時間,反応速度定数,反応率,平衡反応率である。
  • 松崎 緬子, 加藤 明美, 佐伯 雄造
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1072-1075
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    炭素の存在のもとでのタングステン酸ナトリウムと塩素ガスとの反応について調べた。
    さらにタングステン酸ナトリウムの塩素化過程に生成する二タングステン酸二ナトリウムおよび四タングステン酸二ナトリウムと塩素ガスとの反応についても調べた。炭素の存在のもとでのタングステン酸ナトリウムと塩素ガスとの反応は室温でも起こり,二タングステン酸二ナトリウムが生成する。約270℃以上の温度では生成したニタングステン酸二ナトリウムと塩素ガスとの反応により四タングステン酸二ナトリウムが生成し,さらに約290℃以上の温度では四タングステン酸二ナトリウムと塩素ガスとの反応により三酸化タングステンが生成する。これらの反応によって塩化ナトリウムが副生する。さらに,このようにして生成した三酸化タングステンは約350℃ 以上の温度で塩素ガスと反応して揮発性の二塩化二酸化タングステンと四塩化酸化タングステンの混合物が生成する。
  • 太田 直一, 戸村 健児, 大森 昌衛
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1076-1083
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    東北日本の漸新世,中新琶,鮮新世,洪積世および現世の堆積物から採集した二枚貝の貝殻(海棲種5種類,48例および淡水種2種類,9例)中の銀,金,バリウム,臭素,コバルト, クロム, セシウム, ハフニウム,ルビジウム,アンチモン,スカンジウム,ストロンチウム,タンタル,トリウムおよびウラン含量を,非破壊法による中性子放射化分析で定量した。
    殻体を構成する炭酸カルシウムの結晶形別では,現世貝殻の場合ストロンチウムが,また洪積世の化石貝殻ではアンチモン,ストロンチウムおよびウランが,アラレ石型のものに多量に存在し,鮮新世以前の化石貝殻の場合は,トリウムが方解石型のものに多量に存在した。
    貝殻中の微量元素含量の年代変化は,元素によりまたアラレ石型と方解石型のものとで多少異なるが, 地質時代の古いものほど銀,バリウム,セシウム,ハフニウム,スカンジウムなどが多く,臭素,ストロンチウムなどが少ない傾向がみられ,化石化過程における化学成分の挙動の多様性が認められた。
    現世貝殻中の微量元素含量を環境水中のそれにくらべると,臭素を除き含有率が増大する。
  • 古川 睦久, 横山 哲夫
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1084-1087
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェニルウレタン,4一メチルーm一フェニレン系ジウレタン,ジフェニルメタン系ジウレタンの高速液体クロマトグラフィーによる分離を,充てん剤にスチレンージビニルベンゼン共重合体であるポーラスポリマ一を,検出器にUV254nmを用いて検討した。
    移動相にメタノール,エタノール,ヘキサン/メタノールを用いた場合分離は不可能であった。メタノールにヘキサンを添加すると保持時間は小さくなった。ヘキサンでは同定可能な程度分離し,極性の小さい分子ほど溶出がはやかった。メタノールに水を添加することにより,保持時間は大きくなり,水の濃度と保持時間の対数にはよい直線関係があった。また溶出順序は極性の強いものから溶出し,逆相ク律マトグラフィーの挙動を示した。水の添加量の増加によりカラム効率は悪くなるが,分離能は大幅に向上した。
    ウレタン類の分離には移動椙としてメタノール/水=80/20(vol%)が好適であることがわかった。 また6×10-2mol/l以下の濃度でピークハイト法,ピーク面積法により求めたピーク強度と濃度の関係は直線関係にあり,精度よく定量できることがわかった。
  • 古家 義朗, 伊藤 和夫
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1088-1092
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酢酸中でのベンゾィルアセトンとその誘導体の過酢酸酸化反応の速度をヨウ素滴定法で追跡した。本反応の初速度は次式を満足した。Rate= {k2 + k3 C H2SO4}CBACAcO2Hここで,CBAはベンゾィルアセトンおよびその誘導体の初濃度を表わす。初項および第2項は無触媒酸化および酸触媒酸化を表わしている。log k2対(σ+1.OOΔσR+)およびlogk3対σ のプロットは,それぞれ傾斜-0.79および-0.85の直線を与えた。
    酸化生成物として,最終生成物である安息香酸と二酸化炭素のほかにベンズアルデヒド,ピルビン酸フェニルグリオキサール,ベンゾイルギ酸および安息香酸アセトニルなどの中間反応生成物をGCおよびTLCで確認した。
    これらの諸事実から,過酢酸の陽性酸素原子の攻撃によってベンゾイルアセトンはエポキシドを形成し,これが開裂して生じる多数の中間酸化生成物を経て最終生成物としての安息香酸を与える経路が主反応と考えられる。しかし,エポキシド経由では生じない安息香酸アセトニルを与えることからBaeyer-Villiger反応も一部起こっているものと考えられる。
  • 柴田 純行, 大橋 九萬雄, 纐纈 銃吾
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1093-1096
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N,N一二置換アミノジメチルスチビン(Me2SbNR2)によるβ-プロピオラクトン(β-PL)の開環反応の速度論的研究をβ-プロピオラクトンの減少量を赤外スペクトルで追跡することにより検討した。反応には二次速度式が適用できる。窒素上のアルキル置換基の反応速度への影響はメチル基,イソプロピル基,シクロヘキシル基の場合を除いてTaft式が適用され,この反応は窒素によるカルボニル基への求核攻撃であることを見いだした。
  • 手塚 敬裕, 成田 望
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1097-1099
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンゾフェノンおよびシクロヘキサノンのヒドラゾン類〔7〕,〔8〕,〔10〕あるいは,それらのオキシム類〔9〕,〔11〕は酸素存在下光照射により,相当するケトン体を与える。しかしその場合,生成収率に大きな違いがみられた。すなわちベンゾフェノンのオキシムあるいはヒドラゾン類〔7〕,〔8〕,〔9〕は好収率で相当するケトン体を与えるのに対し,シクロヘキサノンのオキシム〔11〕あるいは,そのフェニルヒドラゾン〔10〕では,相当するケトン体の収率はほぼ10%程度である。これらの差の原因を以前手塚らによって提出されている反応機構に照し合わせ考察した。
  • 辛 重基, 三上 一利, 野村 勇二, 吉村 寿次
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1100-1104
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ヒドロベンズァミド〔1〕と水あるいは反応基質内の活性プロトンによる開裂反応を利用して,α 位に官能基を有する脂肪酸エステルとの反応を行ない,ピロリジン-2-オン誘導体を得た。脂肪酸エステルとしては,α-オキソカルボン酸エチル〔3〕およびα-ヒドロキシイミノカルボン酸エチル〔4〕を用い,〔1〕と50%エタノール中,100℃ で封管反応を行なった。〔3〕および〔4〕からの反応生成物はいずれも3-ピロリジン-2-オン誘導体であった。生成物の構造を決定し,さらに生成機構についても検討した。
  • 伊藤 博徳, 平山 精孝, 武谷 愿, 大内 公耳
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1105-1110
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ピッチ類の化学構造解析の一環として,平均構造を構成する構造単位のうちわけを調べるために,ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるコールタールピッチのヘキサン可溶成分の分別を試み,分別フラクションについて,NMR,UV,MW,元素分析および分析用GPCによって化学構造を調べた。
    ヘキサン可溶成分の分子量分布は,200~280,芳香族性指数0.76~0.95であり,平均構造単位を構成する芳香族縮合環数は2~5環程度であり,各分別フラクション平均1分子はほぼ1個の平均構造単位から構成されていることが認められた。また平均構造単位を構成している縮合環系は,分析用GPCの溶出挙動およびUVスペクトルから,ほとんどがペリ型であることを推察できた。
  • 稲池 稔弘, 木戸 邦男, 吉川 俊夫
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1111-1117
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1H-NMRを用いて直鎖状脂肪族飽和ポリエステルジオールの末端構造を解析した。そのさい,シフト剤としてトリス(ジビバロイルメタナト)ユウロピウム(III)(Eu(DPM)3)を利用した。次式の反応で得られるような各種ポリエステルジオールについて末端構造を解析した。
    各プロトンに対するEu(DPM)3のシフト効果に差があり,分子末帰に所属する-COOCH2CH2CH2CH2CH2CH2OH・-OCOCH2CH2C1-12CH2COOCH2CH2OH, -OCOCH2CH2CH2Cl2CH2OHの各メチレンプロトンシグナルと分子内部に所属する各メチレンプロトンシグナルとが区別できた。
    -COO(CH2)nCH2OH(n=1,3,4,5)および-OCO(CH2)4CH2OHの末端モノマー単位が同時に存在する混合物あるいは共重合物の場合,末端モノマー単位の違いにより水酸基に隣接するメチレンプ揖トンの化学シフトに差を生じ,これらを分離確認することができた。これら分離されたメチレンプロトンシグナルの面積比から各モノマー単位の存在量を定量することができた。
  • 田村 紀義
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1118-1124
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン系不均質陽イオン交換膜の性能発現において,後処理工程が膜性能を左右する重要なポイントであると考えられるので,膜の後処理法について詳細な検討を行なった。
    陽イオン交換樹脂の容積が高濃度電解質水溶液中では,純水中よりも膨潤が抑綱されることを利用して,ポリプロピレンと微粉末陽イオン交換樹膳とを混練,成形して得られた膜状成形物を熱高濃度電解質水溶液で後処理することによって,高イオン輸率,低比抵抗の不均質陽イオン交換膜が得られた。
    電解質として塩化ナトリウムを用いて後処理条件の最適化を検討した結果,処理温度は100℃ 以上,処理時間は20分以上が望ましく,水溶液濃度は飽和に近いほど膜性能が優秀であることが明らかになった。熱,高濃度電解質水溶液中で膜の後処理を行なうことにより,膜中の陽イオン交換樹脂の膨潤が抑剃され,ポリプロピレン層に作用する力も比較的弱く抑えられるため,ポリプロピレン層と陽イオン交換樹脂粒子の間に形成されるCaVityおよびポリプロピレン層に発生するmicro-Crackが微細に制御された結果,不均質陽イオン交換膜の比抵抗はあまり大きくならず,イオン輸率が大幅に向上したものと思われる。
  • 池田 博昭, 高橋 敏清, 榎本 忠茂, 増田 勇三
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1125-1131
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    溶液中の超音波音速度を測定すると斑Hz領域の圧縮率を求めることができ,溶質の量として“微分比圧縮率”κ20と“混合単位の圧縮率”κ22'の2種類を算出することができる。
    増田・宮原らはポリ酢酸ビニル溶液で測定されたκ20が鎖の広がりに依存し,一方,κ2は溶媒にかかわらず一定値を示すことを報告している。本報告では種々の高分子溶液のκ2022'について系統的な測定を行ない,MHz領域の高分子溶液の挙動を考察することとした。その結果,κ20は高分子の分子量の変化には依存せず,溶媒の良貧性にしたがって変化することがわかった。このことを通常の零周波数の高分子溶液論により検討すると,κ20はセグメントの排除体積βに依存する量であり,セグメント間の平均力のポテンシャルに基づく量であることがわかった。一方,κ22'は溶媒の種類や高分子の分子量にかかわらず高分子の種類に固有の値を示した。
    以上から,MHz領域の溶液中の高分子はその状態のセグメントと同じ大きさの化学ポテンシャルをもち,溶媒とほぼ同じ容積の仮想的混合単位からなるものと考えられ,高分子溶液はこの仮想的混合単位と溶媒分子からなり,それら成分間にはLennard-Jones型分子間ポテンシャルが作用している混合液体系とみなされた。この混合単位同志の分子間ポテンシャルを直接的に反映するのがκ2とκ2'であり,その平均力のポテンシャルを反映するのがκ20である。なお,θ 状態に近い貧溶媒からなる系では上に述べたκ20 についての見解は適用できなかった。
  • 山本 清香, 辰巳 正和, 正本 一夫
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1132-1136
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸を触媒とし,1,2-ジクロロエタン溶媒中で,ジメチルスチレン(DMS)類の重合を行なった。重合はスチレンと同様に,すべてのDMSで大きな重合速度と飽和重合率が認められた。したがって,非定常状態の取り扱いにより,生長速度定数を求めることができた。生長速度定数と停止速度定数はともに,2,4->3,4->2,6->2,5->3,5-DMSの順序になった。生成ポリマーの分子量から,モノマー移動定数比を求めた。モノマー移動定数と生長速度定数から,各DMSの移動反応定数が求あられた。これらの結果,DMS類のカチオン重合の生長反応では,オルト位とパラ位メチル置換体の反応性は大きく,また移動反応は,メタ位置換DMSでより起こりやすいことが明らかとなった。
  • 山本 清香, 辰巳 正和, 正本 一夫
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1137-1140
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸を触媒とし,ジメチルスチレン(DMS)類とスチレンとの共重合を行なった。共重合の結果から,各DMSのモノマー反応性は,スチレン(M1)-DMS (M2)として,2,4-DMS: 1=0.60, r2= 4.3 2,5-DMS: r1=0.70, r2=2.1 2,6-DMS: r1= 3.70, r2= 0.2 3,4-DMS: r1=0.25, r2=4.6 3,5-DMS: r1= O.40, r2=2.0であった。また,このモノマー反応性比と前報で求めた生長速度定数とから,交互生長速度定数が算出された。2,4-DMS: k12=710, k21= 430 (l/mol・min)2,5-DMS: k12=600, k21= 46 (l/mol・min)2,6-DMS: k12=110, k21= 3300 (l/mol・min)3,4-DMS: k12=1680, k21= 190 (l/mol・min)3,5-DMS: k12= 1050, k21= 16 (l/mol・min)
  • 岡本 正雄, 高瀬 公一, 皆川 雅朋, 石塚 修
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1141
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリアクリロニトリル中のシアノ基の二部がアミドに変わった場合,ポリマーの熱挙動がどのような影響を受けるかを調べた。
    アミドへの水和は,ポリアクリロニトリルをN,N-ジメチルホルムアミド溶液中で濃塩酸処理することによって行なった。しかし,このシアノ基の水和のさいに馬いる塩酸量が多すぎると,導入されたカルパモイル基の一部がプロトン化され,その結果,3400cm-1に新しい赤外吸収パンドが現われることがわかった。
    3400cm-1バンドが認められない部分アミド化試料についての窒素雰囲気中での示差熱分析結果を,ポリアクリロニトリルについての結果とくらべると,鋭い発熱ピークの開始温度は同じであったが,ピーク温度は高温側にずれており,示差温度ΔTは小さくなることがわかった。一方,プロトン化されたカルバモイル基を有する試料では,上記の発熱よりずっと低温で,幅広い発熱が観測され,この発熱もシアノ基間での重合によるものであることが,赤外分析の結果からわかった。したがって,カルパモイル基はポリマーを加熱したさいのシアノ基間での重合開始になんら寄与しないが,プロトン化されているカルパモイル基は,重合開始能を有すると結論することができた。
  • 松本 和秋, 平山 忠一, 本里 義明
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1145-1149
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らの方法でポリ酢酸ビニル球状粒子からポリビニルァルコール球状粒子をつくり,引きつづきホルマール化し,さらにエピクロロヒドリンでエーテル化するか,またはブロモアセトアルデヒド=ジエチルアセタールでアセタール化した。これらの球状粒子をトリメチルアミン,トリエタノールアミン,N,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミンでアミノ化して麹塩基性アニオン交換体を製造した。得られた交換体は総イオン交換容量~2.4meq/g,膨潤度~40ml/gであり,反応したアミンによって総イオン交換容量の20~100%の第四級アンモニウム塩基を有している。また球状粒子をメチルアミン,エチレンジアミン,ジエチレントリアミン,トリエチレンテトラミン,テトラエチレンペンタミンでアミノ化して弱塩基性アニナン交換体を製造した。交換体の交換容量,膨潤度はそれぞれ~7meq/g・~24ml/gであった。交換体の粒子サイズは広範囲に変えることができ,耐酸耐アルカリ性は良好であった。
  • 越智 光一, 高畑 英人, 吉村 平, 新保 正樹
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1150-1155
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ビスフェノール型エポキシ樹脂の硬化剤としてポリラウロラクタムを用い,このような高分子硬化剤で硬化したエポキシ樹脂の性質を明らかにするとともに,硬化物の構造を究明しようとした。その結果,この硬化物は橋かけ網目をもたない鎖状高分子を形成すると考えられる根拠を得るとともにその化学構造を推定することができた。またこの系では硬化の進行にともなって引っ張り強さ,引っ張りせん断強さ,伸びおよびはく離強さのいずれもが増大し,一般の橋かけ網目をもつ硬化エポキシ樹脂が硬化の進行にともなって前二者が増大し,後二者が減少するのといちじるしい対比を示した。
    この両者の差異はこの系が鎖状高分子を形成するものと考えられ,流動や緩禾呵能のからみ合いによる拘束をもつのに対して,一般の橋かけ網目をもつエポキシ樹脂硬化物が,硬化剤による比較的短い連鎖の化学結合によるリジッドな橋かけ網目の拘束をうけるためとして説明することができる。このエポキシポリラウロラクタム系のからみ合い密度を硬化物の引っ張り強さと伸びに対してプロットすると,それぞれについてほぼ直線とみなし得る関係が得られた。
  • 鎌中 隆義, 杉岡 正敏, 青村 和夫
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1156-1158
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    In the dehydrosulfurization of ethanethiol over alumina catalyst, diethyl sulfide were predominantly formed at lower reaction temperature, and ethylene was the main product at higher temperature.
    Diethyl sulfide was also formed at lower temperature in the thermal desorption of ethanethiol adsorbed on alumina. Infrared absorption spectra of ethanethiol adsorbed over alumina indicated that the -SH group of the ethanethiol was dissociated and that the interaction with the catalyst surface produced the hydrogen bonding hydroxyl group.
    The adsorption scheme of ethanethiol in the dehydrosulfurization was proposed.
  • 宮原 正樹, 大坪 義雄
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1159-1161
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Binodal solid-solubility curves of ternary isomorphous oxide systems were estimated by the assumption of the regular solution. For the ternary system in which only pairs of components, 1-3 and 2-3, form continuous series of solid solutions, s 1 and s 2 respectively, it was assumed that the tie-lines were parallel to the side 1-2 (Fig.1). Then, the solubility of the binary system of s1(x3)-s2 (x3) was obtained by the equal tangents method through the calculation of Gibbs energy of mixing, ΔmG (x2, x3) = ΔmH* ( x2, x3) T ΔmSid( x2, x3), where ΔmSid is the entropy of ideal mixing of a ternary system, and ΔmH* is the enthalpy of mixing of s (x3)2(x3) binary system. The values of TΔmH* were calculated by applying the emp irical formula. Good agreement between estimated solubilities and experimental binoda l curves was found for the ternary systems of Al2O3-Fe2O3-Cr2O3 (1520 K) and CaTiO3-BaTiO3-SrTiO3(1530 and 1700 K), for which experimental data had been available.
  • 土屋 正臣, 佐々木 洋興
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1162-1164
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The method of spectrophotometric determination of cobalt(IIII) with 6-hydroxy-5-nitroso-1, 2, 3, 4-terahydro-2, 4-pyrimidinedione (HNPD) was investigated. HNP D reacts easily with cobalt to form a water-soluble complex. Cobalt(M)-HNPD complex has an absorption maximum at 367 nm against a reagent blank. The calibration curve obeys the Beer's law over the range from 0 to 2 μg/ml of cobalt(III) at 367 nm; the molar extinction coefficient of the complex and the sensitivity are 4.05 x 104 cm-1mol-1/ and 1.46 X 10-3 μg⋅cm-2, respectively, for log(l0/l)=0.001. Large amount of iron interfered with the determination. The variation co efficient was 0.54% in the case of 10 pg/10 ml of cobalt(III). The ratio of cobalt(III) to HNPD in this complex was confirmed to be 1: 1 by the the mole ratio method.
  • 田辺 敏夫, 石川 延男
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1165-1166
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Upon treatment of 1-fluoro-, 1, 4-difluoro and 1, 2, 3, 4-tetrafluoroanthraquinones with concentrated sulfuric acid, 1-hydroxy-, 1, 4-dihydroxy and 1, 2, 3, 4-tetrahydroxyanthraquinones were readily obtained, respectively. Similarly, 2-fluoroanthraqUinone was also converted into 2-hydroxyanthraquione despite the low yield. Upon treatment of 3-fluorophthalic anhydrid e and p-chlorophenol with sulfuric acid, 1, 4, 5-trihydroxyanthraquinone was directly prepared. Reaction mechanism of these hydroxylation was discussed.
  • 広陽 素子, 膳昭 之助
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1167-1170
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The thiocarbonyl compounds [1]- [11] were found to be effective as corrosion inhibitors in acidic media.
    The mo st effective compound was 2-mercaptobenzimidazole which showed 92.1 % and 100%inhibitive effect at the concentration of 32 and 250 ppm, respectively.
    The effect of these compounds was found to be due to t he formation of an insoluble chelate film on the copper surface. The structure of the chelate taken from the film was identified by the comparison of its IR and FIR spectra with those of the authentic samples prepared directly from CuCl2 (or CuSO4) and the compounds [1]- [11].
    In FIR spectra of these compounds, the characteristic absorp tion bands considered to be due to γ( Cu-ligand) and γ(Cu-C1) were observed in the range of 245-280 and 300-530 cm-1, respectively.
  • 山口 格, 上口 泰司, 伊藤 利通, 大北 哲, 後藤 塞雄
    1976 年 1976 巻 7 号 p. 1171-1174
    発行日: 1976/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The catalytic degradation of polyethylene, polypropylene, poly-1-butene and polystyrene in the presence of anhydrous aluminum chloride was carried out. The results obtained were compared with those of thermal degradation.
    ( 1 ) The catalytic degradation reactions occur in the temperature range of 150-250°C which was lower as far as 100-150°C than that of the thermal degradation. ( 2 ) Cracked oil contains a large amount of isoparaffins. ( 3 ) A good deal of carbonaceous solid with small HiC value is formed. ( 4 ) In catalytic degradation of polystyrene, benzene is a main product.
    On the basis of these results, the catalytic degradation reaction was assumed to proceed via carbonium ion species.
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