日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1977 巻, 9 号
選択された号の論文の30件中1~30を表示しています
  • 黒岩 茂隆, 小笠原 真次, 高橋 泰信
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1260
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(オキシエチレン)基の平均重合度約9.3のドデシルエーテルを実験の試料とし,その25%水溶液にアミノアントラキノン系分散染料,すなわち,1,4,5,8-テトラアミノ,2,3-ジアミノおよび2-アミノアントラキノンをそれぞれ可溶化した溶液(LO~1,2×10備4m。1μ)の流動二色性を測定して,これらが非イオン性界面活性剤ミセル中へどのような状態で可溶化するか検討した。その結果,これら3種の染料はいずれもミセルの親水部に可溶化することが確認された。しかも1,4,5,8-テトラアミノアントラキノンは分子軸をミセルの円筒軸方向に向けて可溶化するのに対し,β-置換体である2,3-ジアミノおよび2-アミノアントラキノンは,分子軸がミセルの円筒軸と直角に近い角度をとって可溶化し,とくに後者は速度勾配の増大とともに,分子面がいくらか水平に傾くような状態で可溶化することが推察された。
  • 鎌倉 勝善, 岸川 敏治
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1261-1263
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ガラス管に-対の白金線を封入したセルをつくり,寒天ゲルを詰め,電解質をそのゲル内に拡散し,-定時間ごとに電極点での電導度を測定して濃度を求め,拡散係数Dを算出した。測定されたD値は電極点濃度の増加とともに少しずつ低下した。そこでDと時間との間には直線関係があることを利用して,時間0での外挿値(D,)を拡散係数の代表値とした。このD。値は無限希釈における拡散係数であると推定された。よって拡散開始前にゲル中にあらかじめ電解質を含ませておくことにより,その濃度における微分拡散係数とみなされる値を得た。また拡散溶液濃度のD。値への影響は,ほとんどなかった。さらに接触面から電極点までの距離(1~2cm),およびセルの管径(4~8mm)をいろいろ変えたセル(No.1~13)を試作し,D。を測定した。そのD.値は(1.841~1.892)×10環5cm21sの範囲にあり,ほぼ-定の値(1.867±0.016)×10画5cm黛1sとなった。
  • 長本 英俊, 井上 博愛
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1264-1270
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    パラジウム板による水素の収着過程について,水素圧1atm,温度-19~60℃の範囲で実験を行ない検討した。その結果,収着水素量は時間の平方根に比例し,収着速度は板の厚みに関係しないことがわかり,α→β相の転移をともなったβ相内での水素の拡散過程が律速であることで,収着過程が説明されることがわかった。1また,,1atmで水素を収着したパラジウム板からの水素の脱離過程についても,140~310°Cの範囲で実験を行ない,検討した結果,脱離の初期にいわゆる誘導期が存在し,この後に脱離水素量が時間の平方根に比例し,脱離速度は板の厚みに関係しないことがわかった。パラジウム板表面での相転移と,内部での相転移をともなったα相内での水素の拡散との二つの過程によって支配されることによって,脱離過程が説明されることがわかった。
  • 大桑 恒通
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1271-1274
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    老酸の水溶液およびジオキサン水溶液中での超音波吸収スペルを超音波パルス法で6~110MHzの範囲で測定した。超音波速度をパルス波と連続波の干渉で5MHzで測定した。比較的うすいギ酸の水溶液およびジオキサン水溶液中で二つの緩科吸収が見いだされた。低い振動数で現あれる緩和は,すでにKarpovichにより見いだされているギ酸の水素結合によるものと考えられ.るので,高い振動数で現われる緩和について検討した。超音波吸収スペクトルの測定値から,ギ酸の解離による体積変化および会合,解離反応速度を計算して求め,他の方法から求められている値と比較したところ,これらの間の-致はかなりよい。それゆえ高い振動数で見いだされた超音波吸収はギ酸の解離平衡の緩称によるものと考えられる。
  • 渡辺 稔
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1275-1281
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    低速電子回折(LEED)とAuger電子分光(AES)を使って,Fe(100)清浄面の0糞による初期酸化を研究した。また,Fe多結晶表面の初期酸化についても,同じ条件で初期酸化の研究を行ない,比較検討した。まず,室温におけるFe(100)清浄面の酸化では,不規則配列酸化物層が形成され,酸化は結晶内部へ進行する。そして酸化速度は直線剛にしたがう。多結晶面でも同様の結果が得られたが,その酸化速度は(100)面の場合よりも遅い。これは,表面の酸素が結晶粒界に沿って,内部へ拡散していくためと考えられる。つぎにこの室温で酸化された面を加熱すると,表面の酸素濃度は減少する。これは結晶内部への拡散が加熱により促進されることが原因していると考えられ,この活性化エネルギーは(100)面で約23kca1!mol,多結晶面では結晶粒界の存在のため約17kcallmoLと小さい。またこの加熱処理によって,拡散と同時にFeO-1ikδ面が形成される。
  • 岡崎 進, 茅根 忠利, 黒崎 章人
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1282-1287
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸イオンを含有する酸化チタンが触媒およびその担体として高活性を示すことが明らかになってきた。含有形態が化合物になっているとマた場倉鱒は,まず酸化硫酸チタン(W)およびその含水塩Tio,Sq吻H20,さらに,合成過程に硫酸アン牽ニウムを添加共存させる場合には酸化硫酸チタン(W)アンモニウム(NH4)2SO4,TiOSO4,nH2Uなどの存在の可能性が考えられる.そこで硫酸イオンを含有する酸化チタンの結果と対比させながら,これらの化合物の加熱時の分解転移過程,その中のSO3分の結合状態の変化を調べ,さらに指示薬を用いる酸塩基滴定,2-プロパノ._._ルの気相接触分解反応などにより固体酸塩基性の変化を求め,組成,形態との関連を検討した。その結果,熱分解挙動において酸化硫酸チタン(W)は硫酸イオン含有酸化チタ歌に近似している,しかし,固体酸性は硫酸イオン含有酸化チタンの場合より高温の550℃で最大になり,この温度で無水の酸化硫酸チタン(y)生成量も最大になっていた。またIR吸収分析によると2-プロパノール脱水反応にへきを対する触媒活性が顕著に認められる焼成温度(400℃ないし600°C)に事いて硫酸根含有酸化チタンの場合には見られなかったスルホン基の存在が認められ,焼成温度によるスルホン碁童の増減の傾向は脱水触媒活性の高低の傾向に-致した。したがって酸化硫酸チタン(W)の酸点は結晶水を脱離したTio,SO4の形態に帰属させられる。さらにこのTiOSO4生成量が最大となる焼成温度で得た試料について加熱排気後ピリジンを吸着させIR吸収分析により調べた結果,Br伽sted酸点とともにLewis酸点が認められ,したがってTiOSO4表面においてスルホニル基により電子吸引され活性化された空の配位座をもつチタンィオンが酸性原因になり,これに水が配位分極された場合恥6nsted酸点となり,本研究における低い反応温度(180°C)において,このBrcinsted酸点が直接的に2-プロパノールの脱水を捉進するものと考えられる。他方,(NHS)…を加熱する場合には500℃以上でAnatase型TiO欝,また600℃でTiOSO4の生成淋確認されたが,分解は実際に250℃付近でも進行し,NH4HSO4を生成し,TiOSO4とともにこれが酸化硫酸チタン(W)アンモニウム焼成の場合の酸性原因成分となる可Mが大きい。
  • 高橋 三視, 加藤 朋子, 桑原 豊
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1288-1292
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シアノ(2,2なビピリジン)コバルト但錯体の存在下におけるアクリルアミドと水素との反応を常圧,30℃の均-溶液中で調べた。その結果,(i)溶液中のアクリルアミドノ錯体のモル比が1か,それ以下の場合はアクリルアミドの水素化が進行してプロピオンアミドが生成すること,(ii)アクリルアミド1錯体が1~10の範囲内では水素化と同時に重合反応も誘起されてポリアクリルアミドが副生すること,(iii)アクリルアミド1錯体10になると主として重合反応が進行すること,などが見いだされた。つぎに,アクリルアミド1錯体≦1の濃度条件下でアクリルアミドの水素化を行ない,水素化速度におよぼす基質濃度,錯体濃度,水素圧および温度の影響などについてそれぞれ調べたところ,水素化の速度式はつぎのように与えられた。R=k[Co-CN-bpy],[アクリルアミド]o,2[H2]o,aまた,この水素化反応の見かけの活性化エネルギーとして,15.7kcalmolの値を得た。 これらの結果からシアノ(2,2なビピリジン)コバルト(III)錯体の触媒作用機構について考察した。
  • 秋元 正道, 市川 和義, 越後 谷悦郎
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1293-1298
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Bi2O2-M。08系触媒上のインブチルァルデヒドの気相酸化脱水素反癒を行ない,メタクリルァルデヒ.ドを高選択率で生成する触媒組成と反応条件を検討し本反応に関与する酸素種の性質を推定した。450°Cにおける反応では転化率,メタクリルァルデヒドの収率および選択率はMoO3含有量がr%を越えると急激に増大し,MoO3触媒でおのおの最大値82.0,59.8およびG,%を示した。同様な傾向はフランとの共酸化におけるフランからの無水マレイン酸の生成においても観察され,これよりMoO3含有量が40atm%以下ではおもにBi2O2-の格子酸素が,同50atm%以上では主にMoO8中の格子酸素Mo60がレドックスをくり返し脱水素反応に関与する機構が提出された。これはさらにインブチルァルデヒドの反応中に生成するMo肝量とメタクリルァルデヒドの収率との間に見られる密接な相関,アルカリ金属酸化物を添加したMoO3触媒上におけるメタクリルデヒド生成速度のアルカリ金属イオンの電気陰性度に鮒する反比例性,およびインブチルァルデヒドによる,,.。O,系触媒の還元におけるビスマス金属(M。O2-含有量40atm%以下)やM。0,(同50atm%以上)の優先的な生成によっても支持された。Bi2O2-中のσ-結合性格子酸素-Bi3÷-O-Bi8÷-も有効であるが,MoO8中の二重結合性格子酸素Mo60はさらに有効な酸素種であると推定され,酸化脱水素反応の選択性が酸素種の結合の型によって強く影響されることが示された。
  • 曾我 和雄, 今村 速夫, 池田 朔次
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1299-1302
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    PrCo5を水素雰囲気下で昇温,冷却をくり返して活性化しPfCo5H2.4を調製し,これを触媒に,用いてエチレンの水素化反応を行ない,吸蔵水素の化学反応性を調べたgエチレンの水素化反応は閉鎖循環装置を用い,-70℃付近の温度域で,(A)気相にエチレンのみを導入した系,および,(B)気相に遊チレンと水素の混合ガスを導入した系についてそれぞれ行ない,反応遠度はガスク携マトグラフにより追跡した。 まず(A)の場合,気相の全圧は反応中つねに-定値を示した。したがって,脱離した吸蔵水素はすべて水素化反応によって消費されたことになる。エチレンの水素化速度は,エチレン圧にはよらず吸蔵水素濃度に比例して増大した。さらに,この水素化速度は,真空下で測定したPrCo5H脳からの水素の脱離速度とよく-致した。 -方,(B)の場合,水素化速度はエチレン圧にはよらず,気相の水素圧の増大にともないほぼ直線的に増大した。これらの結果から,(A)では合金表面への吸蔵水素の移行過程が律速であり,また(B)では,(A)の過程で進行する水素化反応以外に気相水素に由来する吸着水素分子の関与する表面反応が同時に進行しているとして説明できた。阜 さらに,比較のために,吸蔵水素を含まないPrCo5を用いて同様の水素化反応を試みた。
  • 曾我 和雄, 今村 速夫, 池田 朔次
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1304-1310
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水素化合金中に吸蔵された原子状水素の化学反応性を検討する目的で代表的な水素化合金であるLa,Ni5H3。影を調製し,これを用いて-160~-196℃(低温域)および-85~-110°C(高温域)の二っの温度域でHゴD2交換反応を行なった。まず,-196℃で気相にD2のみを導入したが,交換反応はほとんど進行しなかった。したがって低温域においては気相にHゴD2混合ガスを導入して反応を行なった.交換反応の初期速度はr=kaexp(-1.lkcal/RZ")PH21,fl,PD2-1.fl(1)で整理できた。(1)式は,D2分子でほとんどおおわれた触媒表面へのH2の吸着過程を律速とする反応機構で説明できた。--方,高温域においては,気相にD2のみを導入しても交換反応が進行し,吸蔵水素はすべて交換反応に関与することがわかった。いくつかの温度で,D2圧を変えて実験を行なったところ,交換反応の初期速度はγ=ゐo'exp(-7.4kca1配丁)PD,-1,o(2)で整理できた。(2)式は,Da分子でほとんどおおわれた触媒表面への吸蔵水素の移行過程を律速とする反応機構で説明できた。さらに,同位体効果についても検討した。
  • 乾 智行, 三橋 一夫
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1311-1318
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    担持金属触媒による都市ガスの接触燃焼において,表面反応速度が周期的に変動する自動周波現象を見いだし,このときの触媒表面温度を赤外線温度計を用いて連続的に測定し,反応条件および触媒組成との対応を調べて,この現象の機構について考察した。 自動周波現象は,Cuを1.8%担持した板状触媒でもっとも顕著に観測された。この触媒によれば,雰囲気温度の上昇にともない,周波の下限温度が上昇して上限温度(θ。)に接近し,振幅と周期は単調に減少した。可燃ガス濃度が高いと定常的酸化となったが,O2-濃度を増すと周波が起こりθ醤が上昇して振幅が増大した。周波へのガス流速の影響は少なかった。この触媒に微量の白金族金属を添加するか,銅自身の濃度を上げると周波が消え,θ.において定常酸化となった。添加効果の強さは,RhPtPdCu,の順であった。また, Rh, Pt触媒の80μの薄片を厚さ1.Ommの1。8%Cu触媒に密着ゐヒさせて用いると周波が消え,拡散律速となる高温での定常酸化が得られた。とくにRh触媒は,わずか0.001%担持品でも効果があった。 これらの結果から,自動周波現象は,表面反応速度,酸素と被酸化物の吸着濃度,および反応生成物の吸着にともなう反応抑制の相互関係が複合的に変化して生じる表面現象であることを考察した。
  • 山崎 澄男, 大浦 博樹, 住吉 正史, 津留 寿昭, 中森 -誠
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1319-1323
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸水溶液中での塩素酸ナトリウムと過酸化水素の反応生成物は二酸化塩素,酸素それに塩素である。物質収支および塩素酸ナトリウム濃度に対する過酸化水素濃度の変化から,この系の主反応は2Cl08嗣十H20a十2H÷--→2ClO2-十〇2十2H20(1)で表わされる。ここで塩素の生成過程は(1)式で生成した二酸化塩素が過酸化水素の存在のもとに,塩化物イオンと塩素酸イオンに不均化し,その塩化物イオンが存在する塩素酸イオンと酸性溶液中で二次的に反応し塩素を生成するものと推定される。(1)式の反応機構は,二酸化塩素の生成速度が塩素酸イオンおよび過酸化水素に関してそれぞれ1次であること,またHaber-Weiss,BaxendaleおよびSteinらの過酸化水素による金属イナンの酵化輩よび還元機構を参考にし推定し,アリルチオ尿素,p-ニトロフェニルアセタートなどを用いて検討したところ,つぎのよう粟考えることができる。H2O2-十H+=H30a+(p窃嵩-4.7)(2)ゐ裏ClO3漏十H3O2-+OCIO黛十H20十HO2。君(3)海_翼H,,,+Cl,,-+H+ムCl0,+,2+H,,(4)過酸化水素自己分解は(3)および(4)の反応にくらべると無視できた,ここで馬為-1で,硫酸濃度が-定ならば二酸化塩素および酸素の生成速度は2次反応で表わされ,この見かけの速度定数ん1は,たとえば30℃において6mol!1硫酸溶液で1.85ηmol,min,7mol硫酸溶液で13.62mol,minであることがわかった。
  • 飯野 顕, 中村 弘之, 水池 敦
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1324-1327
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    溶融硝酸カリウム(350~450℃)に浸したパィレヅクスガラスにおけるカリウムとナトリウムの相互拡散を二次イオン質量分析法,および化学エッチングとフレーム光度法による測定によって研究した。 相互拡散係数はカリウム濃度に依存し,ウリウム濃度約2原子%において0=8,2×10-4exp(-26000cal,斑oPIR T)2,s-1であった。
  • 勝岡 求仁, 中井戸 靖明
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1328-1333
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    自己会合錯体として知られているアルミニウムトリインプロポキシドの結晶を示差走査型熱量計を用いて定速加熱してゆくと,2箇所に吸熱ピークが現われる。この2種の吸熱ピークの低温側のものを第-吸熱点とした,この吸熱点は結晶調製時の調製条件により変わり,この実験の範囲では2種の結晶を生成することが認められ,いわゆる多形であることを示している。本試料の特徴である会合の状態は第-吸熱点では変化せず四会合状態をたもっている。この試料をさらに加熱しつづけると第二の吸熱ピークが現われ,熱的には中間相の存在を暗示している。この第二吸熱点は,第-吸熱点と異なり,調製条件による影響を示さず,どの試料も-致した値を示し,熱変化の内容が同等であることを示している。この吸熱部の終末温度は約200°Cであるが,この温度付近における分子量測定から,本試料はいずれも単量体化していることがわかる。このことから第二吸熱点は会合解離による変化と関連しているものと考えられる。この物質を液晶形成物質と比較してみると,液晶物質の液晶-→等方性液体への変化時のエンタルピー変化は分子配向の乱れから生ずるわずかなエネルギーによるものであるのに射して,本試料による第二吸熱点のエンタルピー変化がけたはずれに大きく会合解離がその変化により大きく寄与していることを示している
  • 吉村 長蔵, 森本 豊文
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1334-1337
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フレーム原子吸光分析において,カーボンブラック(CBE)を試料液中に分散させ,噴霧,燃焼,原子化をさせることにより,リン酸イオンやフッ化物イオンの干渉防正を検討した。あわせて,その干渉防止作用をEDTAや有機溶媒添加の場合乏比較した。 その結果,適当量のCBを添加すると,リン酸イオンや,フッ化物イオンなどの陰イオンの干渉を防止できることがわかった。EDTAは,バーナーの汚染が大きく,高濃度の陰イオンに対する干渉防止作用はCB添加にくらべると劣り,有機溶媒の添加効果も, CB添加にくらべて小さいことがわかった。 つぎに,CB添加による増感作用を検討するため,試料の吸い込み量,フレーム中の温度などを調べ,水溶液の場合と比較した結果ほとんど変わらなかった。 とくに,CB(三菱#600)を用いた場合,吸着金属イオン,バックグランド,ブランクの影響もほとんどなく,感度も水溶液にくらぺすぐれており,工0回のくり返し測定値から算出した標準偏差,変動係数も小さかった。
  • 徳光 隆雄, 林 隆之
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1338-1343
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    鎖状のα,β-不飽和β--置換アミノケトン(エナミノケトン)およびβ-(-置換アミノ)クロトン酸チル(エナミノエステル)(置換基二H,Me,Ph)のアセチル化およびo-ニトロフェニルチオ化反応について検討を与えおよび第二級1977の反応ではいずれもC-(o-ニトフェニルチオ)仁物[4]のみを与えた。C-アセチル化物[2]はそれぞれα-アセチルーまたはα-(エトキシカルボニル)エナミノケトン形分子内水素結合キレト構造であると結論された。水素結合キレート環のπ電子の非局在化におよぼすもぎサしきけゆN-アセチル,α -アセチルおよびα-エトキシカルボニル基の効果についても考察した。
  • 松村 昇, 八久 義雄, 井本 英二
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1344-1348
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩基-MgCl露系は二酸化炭素による種々の活性メチレン化合物のカルボキシル化を促進し,モノカルボン酸のみを好収率で与える。反応条件と収率の関係はつぎのようである:(1)トリエチルアミンやトリエチレンジアミンのような塩基性の大きい第三級アミンはカルボキシル化を促進する。(2)塩基く性の小さいピリジンやN,1脇ジメチルアニリンはカルボキシル化を促進しない。(3)第-級,第二級アミンは塩基性の大小にかかわらずカルボキシル化を促進しない。(4)1価2価および3価金属イナンの塩化物のうちでMgCl2がカルボキシル化にもっとも効果的である。
  • 山口 八郎, 福野 英美
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1349-1353
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N--置換アミド硫酸の塩および酸塩化物を塩化ボスホリルおよびピリジンと加熱すると瓦Nな二置換硫酸ジアミドが収率よく合成できたOまた条件を変えると瓦N-ビス(置換スルファモイル)アルキルプミンの副生が認められた。.この化合物は文献に記載がない。また-方,2V,N-二置換アミド硫酸塩からは同じ条件で硫酸ジアミド誘導体は生成しない。これらの事実を説明するためR-NSO2を中間体とする式(6)のような機構を推定した。
  • 棒田 栄-, 山下 治雄, 田中 英夫
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1354-1358
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    均相系におけるベンゼンならびにトルエンの硫酸によるスルホン化反応速度を紫外分光光度計で追跡した。それらの反応速度はそれぞれベンゼンならびにトルエン濃度について-次となり,それらの化学反応速度は硫酸濃度の指数関数で表示することができた. つぎに,液-液静止界面異相系におけるベンゼンならびにトルエンの硫酸によるスルホン化厘応速度を硫酸相界面積,硫酸相容積,硫酸濃度を変化させて測定した。これらの実験結果を境膜説に基づく反応係数の概念によって考察した。その結果,異相系でのスルホン化反応は硫酸相境膜内で進行し,化学反応速度とくらべ拡散速度が小さいことがわかった。この結果を基にして異相系でのトルエンスルホン酸異性体の生成比率を解析的に求めると,それは化学反応速度定数の比のみで表わされた。このことは異相系で各異性体の生成する反応が,それぞれトルエン濃度について-次であり,並列的に硫酸相境膜内で進行するものとしてよく説明できた。
  • 伊藤 邦明
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1359-1364
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    テトラヒドロフラン(THF)中,スチルペンジブロミドと2-テトラヒドロフリル=ヒドーロペルオキシド(THFOOH)との反応を行ない,その反応経路について検討した。郷850-スチルベンジブロミドを空気存在下,環状工-テル('i'HF,2,5-ジメチルテトラヒドロフランおよびジオキサン)溶液中で加熱すると脱臭素反応が起こった。そのとき,環状工-テルのヒドロペ座オキシド(HPO)を除去するか,ラジカル禁止剤を加えると,反応は進行しなかった。したがって,この反応は環状工-テルのHPOによって引き起こされるラジカル連鎖反応であると考えた。0~5℃の低温下,THF溶媒中,THFOOHを硫酸鉄(III)とのレドックス反応により分解させジハロゲン化物と反応させた。オレフィンとともに臭化水素,3-ハロプロピル=ホルマートを始めTHFOOHの分解生成物を得たが,これらの生成率の関係からジハロゲン化物よりのハロゲン引き抜きは2-テトラヒドロブリルオキシルニラジカルが起こすと推論した。このオキシルラジカルに対するジハロゲン化物の反応性はdlスチルベンジブロミド配解850-スチルベンジブロミドスチレンジブロミドtrans-1,2-ジブロモシクロヘキサンrスチルベンジクロリドの順に小さくなって行くが,これはハロゲン引き抜きによって生じたラジカルの共鳴安定化が大きく寄与していると考えた。
  • 直井 嘉威, 中野 光雄, 坂井 紘司, 藤井 潔省, 若麻績 盛夫
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1365-1368
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3,5-二置換フラン,とくに5-ベンジルー3-フリルメタノール(ピレスロイド系殺虫剤のアルコール働の化合物)を工業的に容易で,かつ収率のよい反応の組み合わせにより合成した。すなわち,出発原料として3-メチルー2-フランカルボン酸メチルを用い,まず3位のメチル基を臭素化を経由してアセトキシメチル基に変え,さらに5-位をクロロメチル化を経てベンジル化し最後に加水分解して2,3,5-三置換フランである3-ヒドロキシメチルー5-ベンジルー2-フランカルボン酸を得た。このようにして得られたフランカルボン酸を少量の炭酸カリウムの存在下に水とともにオートクレープ中で加熱脱炭酸することにより5-ベンジルー3-フリルメタノールを収率よく得ることができた。 本法は従来用いられている非常に困難な方法とは異なり,3,5-二置換フランの-般的な合成方法としも適当な方法である。
  • 犬飼 吉彦
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1369-1372
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アゾ系高分子色素の耐光性を改善する目的で,4-[(m-メタクリルァミドラェニル)アゾ]-3-メチルー1-フェニルー2-ピラゾリンー5-オン(1-M)および2-[(〃z-メタクリルァミドフェニル)アゾ]アセト酢酸アニリド(III-M)の単独重合により2種類のポリ色素を合成した。GPC分析およびVPO分子量測定の結果から,これらポリ色素はともに幅広い分子量分布をもち,かつ,平均重合度は使用した重合開始剤の濃度によって異なるが,15から28の間にあるごとがわかった。可視および赤外吸収スペクトルから,これらポリ色素は使用したモノ々-色素とともに,ヒドラゾン形で存在していることが,また,ポリ色素はその対応するモンマー色素にくらべて浅色的であることがわかった。 これらポリ色素とモノマー色素の耐光性をポリ(メタクリル酸メチル)キャストフィルム中で比較したところ,両者の耐光性にはほとんど差がなかった。-方,1-Mから誘導したポリ色素は,対照として使ったC.1.Pigment Ye11ow 1よりもかなり良好な耐光性を示したが,III-Mから誘導したポリ色素は大きく退色した。また,耐ブリード性は両方のポリ色素とも良好であった。
  • 岩垂 芳男, 長山 芳子, 岡部 瑞穂
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1373-1378
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ホルマール化(1)および酸処理ホルマール化(III)PVA繊維の直接染料による染色速度を無限染浴(塩化ナトリウムo.1m。111共存)で,温度80°cおよび90℃で検討した。見かけの拡散係数Dおよび見かけの染色速度定数Kはいずれも温度の上昇により増大し,ホルマール化度の増加とともに減少した。繊維IIIのDおよびK値は繊維1の値よりもかなり大となった。平衡染着量C。.は温度の上昇により減少したが,繊維IIIのC..は繊維1の値よりもいちじるしく増大した。これらの結果から,直接染料によるPVA繊維の染色速度にはホルマール化反応によって形成される分子間の橋かけ結合がかなり影響をおよぼすことが示唆された。
  • 福永 公寿, 井手 茂, 森 道徳, 木村 允
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1379-1384
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    従来,第四級塩を用いた有機相一シアン化物水溶液系相間移動触媒法によるハロゲン化アリールや塩化ベソジル〔1a〕のような活性ハロゲン化物のシアン化物への変換はアルコールへの加水分解が主反応で〔1a〕からはシアソ化ベンジル〔2a〕は得られないとされていたが,触媒によっては選択的に〔2a〕を生成することがわかった。このような触媒とレてはテトラブチルアソモニウム=プロミドがもっとも画効果的で,この方法はほとんどの置換ベソジル漂ハロゲニド類〔1a-19〕に対して適用できる一般的な方法であることがわかった。そこで,全液一液不均一反応速度式を導いて有機相中での反応が律速段階であり,反応は〔1a〕および触媒濃度に関しそれぞれ一次で進行することを明らかにした。また,得られむ全反応速度から見かけの反応速度定数を求めて触媒の定量的評価,触媒効果との関連性および反応:条件などについての検討を加えた。
  • 神谷 保, 溝口 勝大, 土田 英俊, 篠原 功
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1385-1389
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-メチルアクリジニウムー7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン錯体MA。CQ慧つと各種の高分子からなる分散系導電体の特性におよぼす高分子の効果を検討した。電子供与性の高分子を用いると,試料は良好な均-性と導電性を示したが,電子供与性が大きくなるほどMA,CQ2単独の場合より安定性に劣り導電性も低下した。高分子としてポリカルボナートを用いると,MA,CQの結晶の析出が観察され,高い導電性は発現しなかった。このとき安定性の低下はわずかだった。均-性の乏しい系では,両成分の間に相互作用は存在しないのに対し,電子供与性の高分子とTCNQ錯体の間には電荷移動に基づく相互作用が春在し,新しい複合体を形成したと考えられる。このような相互作用力を介して高分子は試料の特性に影響をおよぼす。
  • 森 邦夫, 中村 儀郎, 早狩 都々子
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1390-1394
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    PVCプラスチゾルの粘度をE型回転粘度計を用いて30±0.1。Cで測定した。このPVCプラスチゾルは,6-ジプチルアミノー1,3,5-トリアジンー2,4-ジチオール(DB)金属塩とポリエーテル類(RpCH2。モCH20CH2莞CH20R2)の共存下でのみ高い粘度を与えた。このPVCプテスチゾルで高い粘度を与えるポリエ.._.テルは二つの末端基の-方がOCH3,i,OC4Hgのようなアルコキシル末端基で,もう.__.,方がOH末端基を含む,この場合,PVCプラスチゾルの粘度はエーテル鎖数の増加とともに高くなった。しかし,二つのOH末端基かまたは二つのOCHs末端基をもつポリエーテルはほとんどPVCプラスチゾルの粘度を増加させない。D8金属塩の金属の種類もプラスチゾルの粘度と関係し,1VigCaBaNaの順で増加し,この順序は金属の電気陰性度の増加の順序と-致した。以上の結果と電子顕微鏡写真の測定から,PVCプラスチゾルの高い粘度挙動はPVC粒子の表面層に吸着したエー,テル基群がDB金属塩に配位し,PVC粒子間が静電気力によって結ばれるためであると考えた。
  • 高橋 正博, 竹内 寛
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1395-1399
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    寒天ゲル中のイオンの拡散現象について検討を行なうために,ゲル中に内部電解質を含む系と含まない系について外部電解質の拡散実験を行ない,寒天中の各イオンの濃度分布ならびに周期性沈殿の位置と時間の関係を測定した。 内部電解質を含まないゲル中におけるK2CrO4およびCuSO4の拡散係数は,種々の寒天濃度に対するイオンの濃度分布から決定された。つぎに,寒天ゲル中における反応生成物の溶解度が比較的大きい系での反応をともなうイオンの濃度分布を測定し,Fickの非定常拡散式に基づく瞬間反応モデルにより検討した結果,連続沈殿域にっいては,CrO42-およびCu2乎ともに理論値との-致が認められた。また,周期牲沈殿を形成する場合にも,この反応モデノレが,近似的に適用できることを見いだした。
  • 本間 英夫, 三井 秀雄, 阿部 裕士
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1400-1404
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水溶液中の鉄シアノ錯イオンヘキサシアノ鉄(III)酸イオン,ヘキサシアノ鉄(III)酸イオンは,アルカリ性溶液で光照射によりペンタシアノアクア鉄(II)酸イオンを経て,シアン化物イオンを遊離し,同時に水酸化鉄(III)を生じた。それは照射時間に比例して増大している,種々の光源を用いて光照射したときのシアン化物イオンの遊離および水酸化鉄(III)の生成速度は,低圧≧超低圧高圧水銀灯の順であり,また水酸化物イオン濃度の増加とともに,この反応は増大の傾向を示した。このようにして遊離したシアン化物イオンは,さらに電解酸化によりいちじるしい分解が認められている。そこで紫外線照射に電解酸化を併用したところ,これら鉄シアノ錯イオンはほ蔭完全に分解した.
  • 大坪 微, 浜中 寧, 外村 征洋
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1405-1406
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Polymerization of cyclic dimer of 6-hexanelactam catalyzed by sodium hydroxide in the presence of polyhexanamide was studied. The polymerization proceeded according to the firstorder kinetics and the rate constant was expressed by the sum of the catalytic term (k_cocm) and the non-catalytic term (k_cooNa) On the basis of the experimental results, k_comi and k-cooN. at 310°C were calculated, respectively, as7follows k-cooH =0.31 x 10-2(//hr)/ (-NH2 meq/kg), k_cooN. ---=0.10 x 10-2(//hr)/(-NH2 meq/kg).
  • 太田 悦郎, 井上 定夫, 大谷 杉郎
    1977 年 1977 巻 9 号 p. 1407-1409
    発行日: 1977/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Polychlorinated biphenyl (PCB) was effectively decomposed by heating it in a molten mixture (mp: ca.110°C) of A1Cl3 (60 mol%), NaCl (20 mol%), and KCl (20 mol%). As shown in Table 2, 53.9g of PCB, consisting mainly of trichlorobiphenyl, was decomposed giving 23.9g of carbonaceous matter by treating it with the above mixture for 10 hours at 400°C under airbubbling. The amount (12g) of unchanged PCB, recovered as benzene soluble matter, diminished to a few grams after twice treatment. Another kind of PCB, consisting mainly of pentachlorobiphenyl, reacted rarely as above, while it decomposed in the presence of aluminium powder yielding an insoluble and infusible carbon-like matter.
feedback
Top