海水中に溶存するPPbないしPPt濃度の銅,カドミウム,鉛が,
65Cu,
116Cdおよび
206Pbスパイクを併用する同位体希釈-表面電離質量分析法によって定量できる。銅,カドミウム,鉛より,Cu
+,Cd
+,Pb
+イオン電流が,イオン源のレニウムシングルフィラメントから発生する温度にはそれぞれ差があって,低温度でまずCu
+が発生し,高温度になってCd
+とPb
+とが発生するから,逐次的に3成分の同位体存在比を測定することができる。本法の感度は銅,カドミウム,鉛に対して,それぞれ10
-11,10
-13~10
-12,10
-13~10
-12gであり,質量分析上の精度は同位体比測定の変動係数として0.3~2.8,0.2~1.9,0.2~1.8%である。なお,化学成分含有量のくり返し分析の精度は,銅,カドミウム,鉛において,それぞれ0.6~8.5,0.3~7.5,0.0~2.5%である。海水中の3成分は,スパイク添加後にジチゾン塩としてクロロホルムに抽出され,さらに硝酸塩に合成され,硝酸塩水溶液としてイオン源にロディングされる。試料調製中に受ける汚染量が銅,カドミウム,鉛について1.5±0.1,0.10±0.07および0.31±0.02ngあって,本法の実質的な定量限界は10
-9,10
-10,10
-10gである。本法は,単一スパイクを用いる方法にくらべ,定量限界では劣るが,実用上の感度,精度をもち,分析時間,労力,経費,試料量を節減することができる。
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