日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1978 巻, 5 号
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  • 峰岸 常之, 星 敏彦, 谷崎 義衛
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 649-653
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    延伸PVA膜法による偏光吸収スペクトルの測定とPPP法によるMO計算とから,クマリン,4-ヒドロキシクマリンおよび7-ヒドロキシクマリンの各吸収帯の分極方向を決定した。いずれの化合物においても,第1および第II吸収帯は分子長軸方向に分極し第III吸収帯は分子短軸方向に分極していることが明らかとなった。これらの結果はconfiguration analysisの方法によってよく説明することができた。
  • 浅井 孝, 信岡 聰一郎, 阿度 和明
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 654-658
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    黄色酸化鉄(α-FeOOH)の特牲改善を目的とし,その水熱処理効果を検討した。硫酸鉄(II)の加水分解法により合成したα-FeOOHを1Nの水酸化ナトリウム中に分散し,200℃,5時間水熱処理して得られた試料について,顔料特性,熱安定性および摩砕変化について調べた結果,つぎのことがわかった。
    (1)粒子形態が針状から棒状に変化し,粒子の大きさが均一になった。その結果として比表面積,吸油量,カサが減少し,色調も鮮明になった。また摩砕による影響が少なくなった。
    (2)未処理試料が220~250℃の温度範囲で2段階に分解するのに対し,水熱処理することにより分解温度は260℃以上になった。また水熱処理試料の熱分解により空孔の少ないα-Fe2O3が得られた。
  • 角田 光雄, 大場 洋一, 千葉 克義, 福村 勉郎
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 659-664
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリエチレン,テフロン,ポリ(テレフタル酸エチレン)の表面処理と接着性との関係について調べた。ポリエチレンに対しては,クロム酸混液浸せき,紫外線照射,放電,火炎処理,テフロンに対しては放電処理,ポリ(テレフタル酸エチレン)に対しては紫外線照射と化学処理を行なった。表面処理による接着強度増加の機構を臨界表面張力,水中および空気中における各種液体の付着張力のデータから諭じた。表面処理によって表面に生成した極性基と接着剤間の水素結合性相互作用が接着強度の増加の説明として考えられる。
  • 石川 達雄, 井上 勝也
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 665-669
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    含水酸化鉄(α-,β-およびγ-FeOOH)のSO2吸着能に対する2価金属イオンの添加効果を知るため,Mg(II),Mn(II),Co(II),Ni(II),Cu(II)およびZn(II)を0~50金属/Fe原子比パーセント添加したFe(II)またはFe(III)塩溶液から,金属イオンを種々の量含む含水酸化鉄を合成し,SO2吸着,X線回折,比表面積測定および金属の定量を行なった。
    α-FeOOHでは,金属イオン添加により構造がくずれ,その程度は金属イオンによって異なる。SO2化学吸着量は,5%添加で極大になる。また,Mn(II)を25%以上添加すると吸着量は多くなった。β-FeOOHにCu(II)を添加しても結晶性はほとんど変わらないが,添加限界値に近い5.2%試料は異常に大きい吸着量(0.81mg/m2)を示した。γ-FeOOHでは,Cu(II)添加により結晶化がおさえられるが,SO2化学吸着量はあまり変わらない。Cu(II)以外の金属イオンは,γ-FeOOH中に取り込まれにくいが,結晶性を悪くし吸着量を下げる。
  • 山本 善史, 山下 大二郎
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 670-675
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルカリ電池の正極板としての銀電極の容量増加を目的として,電解質であるアルカリ溶液中にタリウム,鉛およびインジウムの各金属塩を微量添加したときの効果について検討し,つぎのような結果を得た。
    1)充放電曲線から,タリウム,鉛およびインジウムのいずれの添加によっても,銀電極の容量はかなり増大することが認められた。とくに,インジウムを添加した場合の充放電特性は良好であった。また,充電の第1段階での中間の小さな極大波は,タリウムおよび鉛の添加によって消失した。
    2)電流-電位曲線から,タリウム,鉛およびインジウムのいずれの添加によっても,酸化・還元ピークは第1サイクルより顕著に増大し,銀電極の活物質の増加が認められた。
    3)充放電曲線,電流-電位曲線,電子顕微鏡による電極表面状態の観察および蛍光X線分析の結果から,タリウム,鉛およびインジウムのいずれの添加によっても銀活物質の結晶の微細化が認められ,そのため銀電極の容量が増加するものと考えられる。また,そのさいタリウム添加の場合は電析により,鉛添加の場合は電析と吸着により,インジウム添加の場合は吸着により結晶の微細化が進むものと推定した。
  • 津波古 充朝, 池内 小百合, 松尾 恒雄, 本岡 達, 小林 正光
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 676-681
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化ネオジムとオルトリン酸との反応から得られるNdPO4・0.5H2O,NdPO4,Nd(PO3)3およびNdP3O14の生成条件,組成分析,赤外吸収スペクトルおよびそれらの熱変化について検討した。
    NdPO4・0.5H2Oは原子比P/Nd(R)が1で,500℃以下の低温度で生成しやすく,NdPO4はRが1で500~800℃でよく生成する。一方,Nd(PO3)3はR=3で500℃以上の高温度およびR≧10で300℃で20時間加熱することによってX線的に純粋に合成することができる。またNdP3O14はR≧10で500℃以上で加熱すると得ることができる。一方,NdPO4・O.5H2OおよびNd4(P4O12)3・13H2Oの結晶は水溶液反応法により容易に得ることができた。NdPO4・O.5H2O,NdPO4,Nd(PO3)3,Nd4(P4O12)3・13H2OおよびNdP5O14の組成分析値は蛍光X線分析の結果および計算値とよく一致し,それらの化合物の化学式の妥当性を示している。
    NdPO4・0.5H2O(六方晶系)は210℃付近でNdPO4(六方晶系)に変化し,600℃以上で加熱すると徐々にNdPO4(単斜晶系)に変化する。一方,Nd4(P4012)3・13H2Oは100℃で約7.5H2Oを失い,160℃ですべての結晶水を失ってX線的に無定形物質に変化する。このものは670~700℃で結晶性の未知物質になり,830℃でNd(PO3)3になる。NdP5O14は1000℃以上で加熱するとP2O5蒸気を出してNd(PO3)3に分解する。一方,このNd(PO3)3は1100℃付近まで安定であるが,1200℃で溶融する。
  • 松林 宏, 山県 竣郎
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 682-685
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸法による酸化チタン製造工程から副生するチタン含有物質を希硫酸に溶けやすい形に変える方法として水酸化ナトリウムによる熱処理を検討した。試料としてチタン鉄鉱の硫酸未溶解残分および不純物を多く含む含水酸化チタンを用い,これに水酸化ナトリウムをNaOH/TiO2重量比で0.44~1.10に相当する量を加えて混合し110~500℃の温度で反応させた場合の組成の変化,反応生成物を水で処理したときの化学変化と不純物の溶出,および得られた生成物の組成と希硫酸への溶解性を調べた。NaOH/TiO2の重量比および温度が高くなるにしたがって試料の結晶性は減少し,酸化チタンナトリウムが生成するが,比が0.44の場合は酸化チタンナトリウムは生成しない。各条件下での反応生成物中の未反応NaOHを分析しTiO2/反応Na2Oのモル比を求めると1.8~3.1であった。水で処理して得られた生成物が非晶質に近いほど,希硫酸への溶解性が大きくなることを認めた。
  • 石井 一, 高 英昌, 奥田 善昭
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 686-690
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メソ置換ポルフィリソの1種であるα,β,γ,δ-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィン[T(4-CP)P]の水溶液中における性質,金属イオンとの反応性を検討し,銅(II)-T(4-CP)P錯体のSoret帯を利用するppbレベルの銅の実用的な吸光光度定量法を開発した。銅(II)とT(4-CP)Pとの錯形成反応は室温では遅いが,ヒドロキシルアミン塩酸塩を添加し,pHを5.5付近に調節して100℃で5分間加熱すれば定量的に進み,波長416nmにSoret帯を有する安定な1:1錯体を形成する。検量線は少なくとも銅濃度140ppbまでぼ原点を通る直線となり,見かけのモル吸光係数は421×105l・mol-1cm-1,吸光度0.001に対する感度は0.15ng Cu・cm-2,38.6ppbの銅を9回定量したさいの変動係数は0.18%であった。33種のイオンおよび塩類の影響を検討し,共存許容限界を示した。パラジウム(II)の許容限界は高くはないが,その他の成分はかなりの濃度まで許容できるので,本法は感度のみならず選択性も良好である。本法を家庭用湯わかし器の水の中の銅の定量に応用したところ好結果が得られた。
  • 川名 秀治郎, 仁平 一男, 高田 芳矩, 中島 史登
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 691-694
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    化学ルミネセンス分析計をガスクロマトグラフィーの検出器として用い,硫黄化合物を300nm,炭化水素を310nm,窒素化合物を610nmの波長で測定した。この結果,ガスクロマトグラフ法による試料の分離操作との組み合わせにより,化学ルミネセンス分析法は各種成分の検出に有効であることが明らかになった。
    本方式の検出感度は硫黄化合物に関しFPD法と比較して約1/5倍と劣り,炭化水素化合物に関してTCD法と比較して約1ケタすぐれていた。またカラムで窒素(N2)と一酸化窒素(NO)が分離できなくてもNOを選択的に検出できるなどの特徴を有することがわかった。
  • 康 智三, 加藤 正秀
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 695-699
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水銀(II)はメチレンブルーとは反応しないが,シアン化物イオン共存下では水銀錯陰イオンを生成し,それがメチレンブルーとのイオン対として1,2-ジクロロエタンに抽出される。この抽出水銀(II)錯体の生成とその抽出条件を検討した結果,微量水銀(II)の定量法を確立した。抽出物は波長657nmに吸収極大を有し,pH7.7~8.0範囲内でもっとも高い一定の吸光度を与えた。発色液はきわめて安定で,室温で3日間放置したのちでも吸光度の変化は見られなかった。水銀濃度と吸光度との間には良好な直線関係が得られ,波長657nmにおける見かけのモル吸光係数と吸光度0.001に対するSandell表示感度はそれぞれ9.02×104cm-1・mol-1・lと2.2×10-3μgHg・cm-2であった。6×1-3mol/l水銀(II)溶液10ml(12μgHg)について6回くり返し実験を行なったところ,対ブランクの平均吸光度は0.541で,標準偏差と相対標準偏差は吸光単位でそれぞれ0.002と0.4%であった。抽出化学種の組成はメチレンブルー:水銀錯体=1:1,シアノ水銀(II)酸錯体はHg:CN=1:3と推定された。
  • 村上 和雄, 丸山 正生
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 700-707
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)水(0,1%以上)系,緩衝溶液系のピリミジン,キナゾリンの滴化水銀電極における電気化学的還元の種々の方法で検討した。ピリミジンは含水量0.1%で一電子1段波のみを与え,このとき生じたモノアニオンラジカルはアニオン性の二量体を生成すると予想された。含水量0.1%~5%まではプロトン付加反応を含むECE機構であり,5%以上では新しく活性二量体の還元波が観測された。また,含水量2%以上では-2.7Vにジヒドロ体からテトラヒドロ体への還元波が観測された。緩衝溶液系ではpH2~2.5で一電子波を与え,後続反応で二量化し,pH2.5以上では第1波の二電子過程でジヒドロ体あるいは第1波,第2波の四電子過程でテトラヒドロ体を生ずると考えられた。一方,キナゾリンは含水量0.1%では一電子ずつの2段波を与え,0.1~15%の第1波はプロトン付加反応を含むECE機構であり,また3%以上ではピリミジンと同じく-2.7Vに還元波(第3波)が現れ,第3波の波高は水分含量とともに増大した。15%以上では,二電子ずつの2段波(第1波と第3波)でテトラヒドロ体を生ずると予測された。緩衝溶液系では,pH2~7で二電子還元波,pH7~12では2段波(全過程四電子)を与えた。
    水銀プール陰極を用いた定電位電解後の電解液のUVスペクトルから,ピリミジンは二電子還元後には,緩衝溶液系,含水量15%以上のDMF系では,加水分解されてカルボニル化合物となり,キナゾリンは二電子還元後には,pH7~12の緩衝溶液系,含水量15%以上のDMF系では,3,4-ジヒドロキナゾリン,pH3~7の緩衝溶液系では,3,4-ジヒドロキナゾリンカチオンを生じ,四電子還元後には,すべて1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリンを生ずることがわかった。
  • 中栄 篤男, 降矢 一美, 山中 実
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 708-713
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    球状ポーラス型強塩基性イオン交換樹脂(TSK-ゲルLS-222)を固定相に,0.1%エチレソジアミン四酢酸ニナトリウム(EDTA-2Na)を含むpH9.2の0.23mol/l塩化カリウム溶液を移動相に用いる高速液体クロマトグラフィーにより,洗剤中に含まれる代表的な無機ビルダーの一つである縮合リン酸塩を分析した。カラム溶出液中のリン酸イオンの検出には,リン酸イオンとバナドモリブデン試薬が硝酸溶液中で反応して生成するモリブドパナドリン酸の可視吸収を利用するポストカラム法を採用した。本法によれば,洗剤中の縮合リン酸塩をオルト,ピロ,三リン酸塩に短時間に分離でき,得られたクロマトグラムよりその組成比を求めることができる。また別に作成した検量線を用い総リン酸塩含量を算出することも可能であった。
  • 伊藤 邦明
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 714-717
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸素を含む複素環ヒドロペルオキシド(2-テトラヒドロピラニル=ヒドロペルオキシド,1,4-ジオキサン-2-イル=ヒドロペルオキシドおよび2-テトラヒドロフラニル=ヒドロペルオキシド)とシクロアルキル=ヒドロベルオキシド(シクロヘキシル=ヒドロペルオキシドおよびシクロペンチル=ヒドロペルオキシド)との水素結合性相互作用の違いを赤外吸収スペクトルおよびNMRスペクトルを用いて研究した。
    酸素を含む複素環ヒドロペルオキシドの会合OHの吸収強度は低濃度でも大きく,溶媒(四塩化炭素,クロロホルム,ベンゼン)依存性も少なかった。そして遊離OHの吸収帯からの波数シフトも160~190cm-1と大きく,このヒドロペルオキシドは水素結合性相互作用が大きいことを示した。しかし吸収強度および化学シフトに濃度依存性があり,OOH基がアキシアル位にあって,酸素原子の非共有電子対とOOH基のプロトンとの相互作用を示す位置になく,したがって,分子内水素結合はつくらない。酸素複素環ヒドロペルオキシドのOOH基のプロトンの化学シフトはδ=8.5ppmにあり,このプロトンはより酸性をおびており,環内のα位の酸素原子の誘起効果が分子間水素結合に大きく効いていることがわかった。
  • 作道 栄一, 稲垣 信夫, 大饗 茂
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 718-722
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    三臭化アンチモンによる2-メチル-2-ブタノールの脱水反応の初期に顕著な反応誘導期が認められた。この誘導期は触媒濃度の増大とともに短縮した。誘導期値の逆数の対数と触媒濃度の対数のプロットから誘導期と触媒との間には一次の比例関係があることが認められる。また誘導期は具化水素量および触媒量との間に密接な関係があることが認められた。すなわち,触媒の存在下で臭化水素を導入すると誘導期は0になり,ただちに脱水反応が起こった。さらに,誘導期値は反応温度の上昇とともに減少した。誘導期値の逆数のArrheniusプロットから8~11kcal/molのEaが得られる。この値は脱水反応のEaの約1/2にあたる。これらの結果から誘導期は反応の初期に生成した2-メチル-2-ブタノール-三臭化アソチモン1:1付加体からの脱臭化水素反応過程の期間に相当するものであると推定される。
  • 稲田 正作, 倉田 隆一郎, 石田 寿延, 宇陀 泰介, 岡崎 光雄
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 723-729
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アリル基として,1-メチルアリル〔1a〕,2-メチルアリル〔1b〕,trans-2-ブテニル〔1c〕,3-メチル-2-ブテニル〔1d〕ならびにtrans-シンナミル基〔1e〕を含むN-置換アリル-N-トシル-1-ナフチルアミンの熱転位反応を検討した。生成物としては,〔1d〕の場合を除いて,2位に反転したアリル基を含むClaisen型のオルト転位体が期待どおり得られ,これらが[3,3]シグマトロピー反応によるものであることを確認した。アリル基の3位に置換基を含む〔1c〕,〔1d〕および〔le〕からはさらに,非反転のアリル基が4位に転位しているパラ転位体が,副生成物としてあるいは主生成物として得られた。各生成物中のパラ/オルト比は,〔1c〕<〔1e〕<〔1d〕の順に増し,とくに〔1d〕の場合はパラ転位体が唯一の生成物であった。
    以上の結果から,パラ転位体の生成は2回連続して起こる[3.3]シグマトロピー反応で説明でき,第二段階の転位(パラ転位)を誘起する原因は,最初のオルト転位によって生成する1-トシルイミノ-1,2-ジヒドロナフタレン中間体(A)におけるかさ高いトシルイミノ基と,反転して1位に置換基を含むアリル基の間の立体的な相互作用であろう,と推論した。
  • 洪 邦夫, 山崎 博史
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 730-736
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    コバルト錯体触媒の存在下でアセチレンとイソシアナートおよびカルボジイミドを環状共三量化し,2-オキソ-および2-イミノ-1,2-ジヒドロピリジンを合成した。たとえば,フェニルプロピオル酸メチル〔2a〕とフェニルイソシアナートをコバルタシクロペンタジエソ錯体〔1a〕(またはコバルトセン〔6〕)を触媒として反応させると1,3,6-トリフェニル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4,5-ジカルボン酸ジメチル〔4a〕と1,4,6-トリフェニル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3,5-ジカルボン酸ジメチル〔5a〕がそれぞれ40,26%の収率で得られた。また,〔2a〕とジフェニルカルボジイミドの反応では〔4a〕および〔5a〕に対応する2-イミノ-1,2-ジヒドロピリジン〔8a〕および〔9a〕が生成した。いくつかのアセチレンおよびイソシアナートについても検討し,対称アセチレンからは1種類の,また非対称アセチレンからは2種類の目的物を得た。2-チオキソ-1,2-ジヒドロピリジンを得る目的でイソチオシアナートとの共三量化についても検討したが,硫黄原子の脱離が優先的は起こるため目的物は得られず,イソチオシアナート,その脱硫生成物であるイソニトリルおよびアセチレンの3分子が付加した2-イミノ-5-チオキソ-3-ピロリン誘導体が生成した。
  • 洪 邦夫, 山崎 博史
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 737-741
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プロピオル酸メチル〔1〕とイソシアナート〔2〕がコバルトセン〔3〕を初めとするコバルト錯体触媒の存在下で1:2共三量化し,1,3-二置換5-(メトキシカルボニルメチレン)ヒダントインの幾何異性体混合物((Z)-体〔4〕と(E)-体〔5〕)を与えることを見いだした。両生成物の構造をスペクトルデータおよび化学反応性に基づき決定し,その立体構造をNMRスペクトルにより決定した。
    異性体の生成比率は反応条件により変化し,高温および高触媒濃度で〔4〕の比率が増した。また,〔4〕および〔5〕がコバルトセンなどにより異性化し,125℃,5時間でいずれも〔4〕/〔5〕=4/1の混合物となる事実から,共三量化反応で〔5〕が動力学的支配生成物であり,〔4〕が熱力学的安定生成物であることがわかった。これらの結果に基づき,共三量化機構を推定した。
  • 好野 則夫, 圷 英弘
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 742-747
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,脂肪族アルデヒド,RCH2CHO(R=H,Me,Et),の種々の縮合反応に対する金属(IV)アルコキシド,M(OR')4(M=Ti,Zr,Hf,Si,Ge,SnおよびR'=tPr,tBu),の触媒活性を検討したものであるe反応は,アルデヒド:M(OR')4=100:1のモル比で,反応混合物の沸点で行なわせた。Ti-,Zr-およびHf-アルコキシドを用いた場合,Al-アルコキシドを用いたアルデヒドの縮合反応から主として得られるRCH2COOCH2CH2R型の単純エステルよりも,むしろRCH2CH(OH)CH(R)CH2OCOCH2R型の三量化グリコールエステルに対して選択的であった。しかし,Si-,Ge-およびSn-アルコキシドを用いた場合,主として脱水されたプルドール型縮合生成物,RCH2CH=C(R)CHO,が得られた。グリコールエステルは,触媒の二官能性(bifunctionaiactivity),すなわち,アルドール縮合が起こり,つづいてこのアルドール型化合物と出発物質であるアルデヒドとの交差エステル縮合が起こることにより生じたものと思われる。
  • 堀江 徳愛
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 748-752
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    6-ヒドロキシ-5,7,4'-トリメトキシフラボン〔2a〕のアセトニトリル中無水塩化アルミニウムによる脱メチル反応において,A環のメトキシル基は選択的に開裂され,5,6-ジヒドロキシ-7,4'-ジメトキシフラボン〔3a〕と5,6,7-トリヒドロキシ-4-メトキシフラボン〔1a〕の混合物を生ずる。この混合物は無水酢酸0-ピリジンによる温和なアセチル化により,〔3a〕はモノアセタート〔4a〕,〔1a〕はトリアセタート〔5a〕として容易に分離できることを見いだした。
    このような選択的脱メチル反応は6-ヒドロキシ-5,7-ジメトキシフラボン類〔2〕からB環にメトキシル基を有する5,6,7-トリヒドロキシフラボン類〔1〕の一般的合成法として有用である。この方法で5,6,7-トリヒドロキシ-4'-メトキシフラボン(スクテラレイン-4'-メチルエーテル)〔1a〕,5,6,7,4-テトラヒドロキシフラボン〔1b〕,5,6,7-トリヒドロキシ-3',4'-ジメトキシフラボン〔1c〕,5,6,7,4,-テトラヒドロキシ-3'-メトキシフラボン(ノルジフロレチン)〔1d〕,5,6,7,3',4'-ペンタヒドロキシフラボン〔1e〕と5,6,7-トリヒドロキシ-3',4',5'-トリメトキシフラボン〔1f〕を対応する6-ヒドロキシ-5,7-ジメトキシフラボン類〔2〕から合成した。
  • 三軒 斉, 山本 吉威
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 753-759
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    テレフタル酸ジメチル(DMT),および1,2-ビス(p-メトキシカルボニルフェノキシ)エタン(BME)と,ポリ(オキシエチレン)系グリコールH-(OCH2CH2)n-OH〔1〕,およびポリメチレングリコールHO-(CH2)m-OH〔2〕との間のエステル交換反応に関し,酢酸亜鉛触媒下,190℃における生成メタノールを定量,反応率を求め,反応性におよぼすグリコール鎖長の影響を反応系の含有水分,触媒の溶解性との関係も交えて検討した。〔1〕ではn=1よりもn=2,3の方が反応率高く,nがそれ以上大きくなると反応性は低下した。〔1〕のn=1では両端OH基で,またn>2のグリコールでは末端OH基と分子内エーテル結合酸素とで亜鉛キレート環状配位化合物を形成し触媒活性を低下させるが,エーテル結合酸素をもたない〔2〕(m=4,5,6)ではキレート化の傾向が少なく〔1〕のいずれよりも反応率は高かった。〔1〕,〔2〕のグリコールはすべてZn(OAc)2・2H2Oとともに190℃に加熱すれば不溶性沈殿を生ずるがDMTが共存すれば沈殿を生じない。
    エステル交換は亜鉛上に配位したDMTのエステル基とグリコールのOH基との配位子間反応により進行すると推定した。
  • 佐藤 俊彦, 大野 泰雄, 田村 敏雄
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 760-764
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セルロースと脂肪族ジイソシアナートの高空素含量の付加反応生成物を得る反応条件およびセルロース分子鎖間の橋かけを明らかにするため,Cottonリンターとヘキサメチレン=ジイソシアナート(HMDI)の繊維状での反応を検討した。その結果,あらかじめN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中で膨潤処理した精製Cottonリンター1.00gに対し,DMF50ml,HMDI量9.36g(理論量の6倍),窒素雰囲気中で,153℃,7時間反応させることにより最高窒素量3.02%の付加反応生成物を得た。また,その付加反応生成物の構造を明らかにするため,反応過程におけるセルロースIの結晶化度,エチレンジアミン銅(II)錯体による溶解残留物量および赤外吸収スペクトルなどを検討した。これらの結果はHMDIによってセルロース分子鎖間にウレタン結合が存在すること,またHMDIがセルロースの非結晶領域と反応し,さらに結晶領域へと進行する不均一な反応であることを示している。
  • 江崎 俊之
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 765-767
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The 13C-NMR lanthanoid-induced shifts of antipyrine by tris-(1, 1, 1, 2, 2, 3, 3-heptafluoro7, 7-dimethyl-4, 6-octanedionato) praseodymium were analyzed using a modified ApSimonBeierbeck method. Contributions of the contact and complex-formation terms were found to be significant as well as the pseudo-contact term, when it was assumed that the contact term was proportional to the carbon 2S orbital spin density of the antipyrine cation radical in the INDO MO calculation and that the complex-formation term contributed only to the 5-position carbon of antipyrine.
  • 北原 重登
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 768-770
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Removal rate of C1∼C4 alkoxyl groups on alkoxylated silica gel surface by heating was investigated, and their pyrolysis products in vacuum were identified.
    The change in amount of the alkyl groups with heating time was followed by IR spectroscopy. The removal rate in air increased with increasing carbon numer for straight chain alkyls, and for branched chain alkyls they followed the order: primary>secondary>tertiary; while that in vacuum decreased in this order and was independent of the carbon number of straight chains.
    The main constituent of the pyrolysis products was alkene except for methyl group. In air, the removal reaction was considered to be the oxidation of alkyl groups; while in vacuum, it was considered mainly to be the following decomposition:
  • 山本 忠
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 771-772
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    In the presence of micelles of HTAB and TBAB in aqueous basic media, new trans-α, β-unsaturated sulfones [2]∼[6] were prepared in good yield (Table 1) from methyl phenyl sulfone and aldehydes. Whereas dichloromethane, toluene or dioxane proved to be a good solvent for the reaction, the condensation reaction did not take place in alcoholic solvents. The reaction of bis(trimethylsilyl)methyl phenyl sulfone with aldehyde was also discussed.
  • 藤波 達雄, 芦田 道孝, 酒井 鎮美
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 773-774
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Decomposition of O-ethyl N-lithio-N-substituted thiocarbamates was accelerated by the addition of excess carbon disulfide or sulfur dioxide, and isothiocyanates were obtained in moderate yields even at room temperature.
    O-Ethyl N-lithio-N-phenyl carbamate reacted with carbon disulfide to give phenyl isothiocyanate, but it reacted with sulfur dioxide to afford phenyl isocyanate as the trimer.
  • 井上 正志, 馬木 信行, 杉田 利夫, 市川 克彦
    1978 年 1978 巻 5 号 p. 775-777
    発行日: 1978/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Friedel-Crafts reaction of benzene with 1, 2-dihalogenated propanes, allyl alcohol, 2-phenyl-1-propanol, 1-phenyl-2-propanol, and the related compounds gave a mixture composed of 1, 1- and 1, 2-diphenylpropanes, propylbenzene, and 1, 1-diphenylpropene. The latter two are hydrogenation-dehydrogenation reaction products which are concluded to be formed by intermolecular hydride transfer from 1, 1-diphenylpropane to the intermediate, 1-methyl-2-phenylethyl or 1-phenylpropyl cation. In the case of allylbenzene, the hydride transfer reaction was not observed except at a high reaction temperature. A mechanism which can explain all of the results reported so far is proposed.
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