日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1978 巻, 6 号
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  • 小村 照寿, 服部 耕三, 今永 広人
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 779-784
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硝酸カリウム溶液中において25℃でシリカゾルの電位差滴定を行なうことによって,シリカの表面ヒドロキシル基の酸・塩基的性質を研究した。単位面積あたりの酸解離しうる全表面サイトの数は,0.1mol/lのイオン強度において2.1個/nm2であった。無電荷点における表面ヒドロキシル基≡SiOHの酸解離定数の値は,pK20=7.0であり,シリカが一ケイ酸よりも強い酸であることを示している。このK20の値と無電荷点のpH値(Pzc≡3.5)から推定される≡SiOH2+の酸解離定数の値は,PK10≡0であった。また,これらのpK01とpK20の値から計算されたPzcにおける帯電表面サイトの分率は約3×10-4であり,この値からシリカ表面がPzcでは事実上中性の表面サイトからなることがわかる。表面酸性度パラメーターであるPzcとΔpK(=pK20-pK10)の値によって酸化物を分類し,表面の酸・塩基性の強さとカチオンの吸着性との関連を調べた。その結果,大きなΔpKの値と酸性のPzcを有するシリカでは吸着順がCs+>K+>Li+であり,ΔpKの小さいすなわちよりイオン性の表面をもつ他の酸化物ではLi+>Cs+になっていることがわかった。
  • 中垣 正幸, 嶋林 三郎, 山崎 昌弘
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 785-790
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリビニルピロリドン(PVP)と硫酸ドデシルナトリウム(SDS)を混合した水溶液中におけるカオリナイトの凝集性と分散性を調べ,分散する濃度領域ではカナリナイトの平均粒径dmを沈降テンビン法で測定した。
    添加したPVP濃度が3.2×10-5~2.5×10-3%の範囲ではカオリナイトは凝集してフロックを形成するが,これにSDSを添加するとふたたび分散すること,再分散に要するSDS濃度は共存するPVP濃度とともに増大すること,カオリナイトにまずPVPを加え,つぎにSDS水溶液を加えてカオリナイト懸濁液を調製する方法(調製法I)よりもこの逆の添加順序で調製する方法(調製法II)の方が再分散するSDS濃度の低いことがわかった。
    カナリナイトが分散する濃度領域において,PVP濃度を一定にしてSDS濃度によるdmの変化を調べると,調製法(I)によればdmに極大,極小がみられるが,調製法(I)によればdmはSDSとともに低下することがわかった。調製法(I)によればSDSの低濃度領域において,調製法(II)によればカオリナイトの秀散する全濃度領域にわたってPVPとSDSの協同分散効果がみられた。これらの結果をもとにしてdmのSDS濃度とPVP濃度に関する等高線図および凝集と分散の領域を表す相図を描いた。
    一定濃度のカオリナイト懸濁液の平衡pHは添加したSDS濃度およびこれと共存するPVP濃度とともに大となった。これらの結果をPVPとSDSのカナリナイトへの吸着とカナリナイト表面におけるPVPとSDSの複合体形成によって説明した。
  • 坂田 勘治, 内島 俊雄, 米田 幸夫
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 791-798
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    担持白金触媒や種々の金属酸化物触媒および両者の物理的混合系,さらに金属酸化物に白金を直接担持した触媒系について,パルス法によるNO分解活性の比較検討を行なった。いずれの触媒でも触媒の還元によりNO分解活性はいちじるしく上昇し,酸化により低下する。このとき,NO分解による生成酸素が触媒上に不可逆的に吸着し,活性低下の原因となっている。物理的混合触媒系におけるNO分解活性については,定常的には金属酸化物の共存効果は認められなかった。
    しかし,[Pt15(CO)80]・2N(C2H5)4/アセトンや[Pt(NH3)2](NO3)2/H2Oから調製した種々の金属酸化物担持白金触媒系では,担体によって活性値にかなりの差異がみられ,活性の順にZnO,Cr2O3>γ-Al2O3,Co3O4,NiO>MgO,Fe2O3,SiO2,SiO2,Al203,Pr6O11,Mn2O3>CuO>V2O3の序列が得られた。また,N2/N2O生成比や見かけの活性化エネルギー(3~19kcal/mol)にも担体による差が認められた。
    担体の効果を比較するため,一部の触媒,すなわちγ-Al2O3,SiO2,Al2O3,MgO,SiO2,ZnOに担持した白金触媒について白金分散度を測定して,400℃の活性を白金分散度で規格化した結果,白金粒径が大きいほど比活性が高い傾向があり,顕著な白金の分散効果が認められた。
  • 高宮 信夫, 角田 裕孝, 鈴木 重仁, 村井 資長
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 799-804
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    B2O3系二元酸化物触媒を用い,アセトンオキシムのBeckmann転位反応を通常の常圧固定床流通法反応装置によって研究した。本反応における触媒活性と固体酸性との関連を検討するために,示差熱分析,酸量,酸強度測定をあわせて行なった。その結果,本反応は反応温度350℃,W/F=47g-cat/mol/hrにおいて最適条件を示し,P2O5-B2O3,Al2O3-B2O3,SiO2-B2O3が転位生成物であるN-メチルアセトアミドに対し好活性を示した。これらの触媒はいずれも-3.0≧H0>-8.2の酸点を多くもっており,それに対し,H0>-3.Oの酸点は副反応であるアセトニトリル生成と相関があり,これより本反応には最適酸強度が存在することがわかった。また,B2O3系触媒におけるB2O3含量にも最大の転位活牲を示す最適量があり,この最適量よりB2O3含量が増加すると遊離B2O3による影響がでて活性が低下することがわかった。
  • 秋元 正道, 常木 英昭, 越後谷 悦郎
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 805-810
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    担持銅とビスマスヒ酸塩およびリン酸塩触媒を用いてイソブチレンを気相酸化し,メタクリルアルデヒド(MAA)中に取り込まれる酸素種を比較した。MAA生成に選択的な触媒構造のCu2Oとイソブチレンを340℃で反応させると二酸化炭素のみが得られた。これに対し十分酸化した担持銅触媒(CuO)ではMAAが生成したが,表面上の吸着酸素種を除くとMAAへの選択率が激減した。Cu2O,担持銅触媒いずれも脱水素能があることから吸着酸素種は取り込まれる酸素種として不可欠と考えられた。銅触媒の場合と異なり吸着酸素種を有しないビスマス系触媒とイソブチレンを550℃で反応させるとMAA,ベンゼンおよびトルエンが生成し,触媒の格子酸素が取り込まれうることが判明した。さらにBiAsO4,やBiPO4では主にMAAが,Bi2O3-Cs2Oではむしろ上記の芳香族炭化水素が生成し,収率比(MAA/芳香族炭化水素)は触媒上に存在する酸が強く多量である程増大した。またCu2O状態の担持銅触媒上のイソブチレンとブタジエンの共酸化においてMAAとフランの生成がみられたがCuO状態ではいずれも生成しなかった。
    以上の結果をもとにして酸素の取り込み機構が議論され,ピスマスヒ酸塩およびリン酸塩触媒上ではBi3+上のπ-アリルに格子酸素O2-が,担持銅触媒上ではCu+上のπ-アリルに負に帯電した吸着酸素種が親核的に付加しMAA中に取り込まれると考えられた。
  • 江頭 誠, 勝木 宏昭, 川角 正八, 鹿川 修一
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 811-816
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    針状晶,粒状晶,板状晶の3種のZnOを調製し,プロピレン酸化触媒能の相違を500℃で調べた。針状晶はZn蒸気の空気酸化により得た。その成長方向はc軸方向であった。粒状晶には市販のKadox25と酢酸亜鉛およびシュウ酸亜鉛の熱分解によるZnOの3種を用いた。板状晶は硝酸亜鉛の液滴分解により調製した。板状の面はc軸に垂直であった。
    いずれの触媒も,1,5-ヘキサジエンおよびベンゼンへのアリル型酸化活性と,完全酸化活性を示した。気相酸素が十分存在する反応条件下では,結晶形態の影響は小さく,アリル型酸化の選択率はいずれも15%以下であった。一方,気相酸素がほとんど消費されてしまう還元性反応条件下では,とくにベンゼン生成に対していちじるしい触媒能の相違が認められた。針状晶がもっとも活性であり,その選択率は40%以上に達したのに対し,板状晶はいぜん低活性で,ベンゼン選択率は5%以下であった。3種の粒状晶は板状晶よりやや高い活性を示した。これらの事実から,ベンゼン生成の活性点はc軸に平行な面({1010}面など)上の裸のZn2+イオンであると結論した。
  • 木谷 晧, 佐々木 和夫
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 817-821
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    NADHモデル反応における均一相触媒としての金属イオンの作用機構を電気化学的に検討した。金属イオンとしてMg2+,モデル基質としてベンゾイルギ酸エチル(EBF),ベンジル,2-アセチルピリジン(2-AP)および4-アセチルピリジン(4-AP)を用いた。モデル基質のMg2+存在下でのポーラログラムには,基質のアニオンラジカルとMg2+とのイオン対形成に基づく還元電位の正方向へのいちじるしい移行が観測される。EBF,ベンジル,2-APの三つの基質の均一相還元における相対反応性はその還元電位により説明可能であるが,均一相還元を受けにくい4-APについては還元電位では説明不可能である。分光学的検討によると,4-AP以外の三つの基質はMg2+と錯体を形成し,この錯形成が均一相還元における相対反応性を大きく支配する。Mg2+存在下でのモデル反応は[モデル化合物-Mg2+-基質]のような錯体の形成をともなうMichaelis-Menten型の機構で進行する。
  • 三好 正信, 玉利 信幸, 加藤 昭夫
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 822-826
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ZrCl4-H2-N2系からの窒化ジルコニウム(ZrN)の黒鉛基板上での結晶成長を600~1400℃で行ない,反応条件が成長速度および形態におよぼす影響を調べた。そして,つぎの結果を得た。600~1400℃においてコーティングが析出し,1100~1300℃ではコーティング上にウィスカーが成長した。ウィスカーの成長速度は全圧1atm,[ZrCl4]0=0.6~0.9%のもとでは[H4]0=50~80%,[N2]0=20~50%で最大となった。ウィスカーの軸方向の成長速度は[ZrCl4]0に対して極大を示した。実測された最大成長速度は軸方向が~1.3mm/hr,径方向が~0.04mm/hrであった。ウィスカーの成長方献〈111〉または〈100〉であり,側面はほとんどが{110}面であった。ウィスカーの格子定数から,成長温度1100℃以上では炭素の固溶が推定された。
  • 土屋 正臣
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 827-831
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    鉄(II)イオンの新しい発色剤を得る目的で,系統的にピリミジン環の置換基を変えた37種について検討した。その結果,2-ジメチルアミノ-5-ニトロソ-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-4,6-ジオン(DNPD)はもっとも鋭敏に青色に発色し,呈色した錯体は長時間安定であることが判明した。DNPD-鉄(II)錯体の生成につき基礎的な諸条件を検討して微量鉄の簡易な定量法を確立した。最終pH10.3においてDNPD-鉄(II)錯体は波長660nmに極大吸収を有し,Beerの法則には鉄(II)3μg/mlまでしたがう。モル吸光係数および吸光度0.001に対する感度は2.40×104l・cm-1・mol-1および2.32×10-8μg・cm-2であった。多量の銅(II),コパルト(II)が妨害するが,1N塩酸を添加することによりしゃへいできる。鉄濃度1μg/mlの場合,5回のくり返し実験により求めた標準偏差パーセントは0.42%で再現性がよい。錯体の組成を検討した結果,金属:DNPD=1:3と推定した。
  • 野村 明, 森田 弥左衛門, 小暮 幸全
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 832-835
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)と酸という安価な原料から,乳化法による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用球形多孔質シリカゲルの調製法とその特性について検討した。その結果,脂肪族直鎖アルコールと流動パラフィンからなる極性-非極性溶液の混合物を分散媒とすることにより,良好な球形シリカゲルが得られることを見いだした。
    炭素数C4~C9の脂肪族直鎖アルコールを流動パラフィンに対して20~60%(v/v)の範囲で混合した分散媒が,シリカゾルの乳化には適しており,かきまぜ機の回転数および分散媒の粘度がいずれも大きいほど,得られる球形ゲルの粒径は小さくなる。また,この両者の条件を適当に選ぶことにより,任意の粒径のゲルを得ることができる。本法により得られた球形多孔質シリカゲルのHPLC用充てん剤としての性能は,破砕型シリカゲルと比較して非常にすぐれており,さらに各種の後処理により細孔径を変えることができる。
  • 柴田 知津子, 武内 次夫, 山崎 満, 丹羽 淳
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 836-839
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    7種のβ-ジケトンの13C-NMRスペクトルを重クロロホルムおよびジメチルスルポキシド-d6中で測定したところ,両溶媒中におけるカルボニル炭素の化学シフト差(HFAA,TFAA;1位のカルボニル炭素の化学シフトの両溶媒中の差,FTA,TTA,BFA;3位のカルボニル炭素の化学シフトの両溶媒中の差)は1位,3位の置換基によっていちじるしく変化することがわかった。このとき,化学シフト差とβ-ジケトンの解離定数pKdとの間に相関が見いだされた。
  • 鎌谷 博善
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 840-845
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二三の有機溶媒中で種々のアミン(A)の存在下にエチレンオキシド(EO)と安息香酸(BA)から2-ヒドロキシエチル=ペンゾアート(C6H5COOCH2CH2OH,以下ESと略記する)を合成する反応について検討した。反応生成物の単離および速度論的結果からエステル化反応はアミソ単独の触媒作用によるのではなく,安息香酸,エチレンオキシドおよびアミンからなる遷移状態を経て生成する第四級アンモニウム=カルボン酸塩(C6H6COON(Rs)CH2CH2OH,以下Qと略記する)が触媒となっていることを明白にした。第四級アンモニウム塩およびエステルの生成反応はそれぞれ次式にしたがって進んでいる。
    置換安息香酸とエチレンオキシドとのエステル化反応を検討したところ,置換基のσ値が-0.27から0.78の範囲でHammett則にしたがい得られるρ値は正の値を示す。この結果は,第四級アンモニウム塩,エチレンオキシドおよび置換安息香酸からなる遷移状態において,置換安息香酸とエチレンオキシドとの水素結合の生成がエステル化反応を促進する上で重要な役割を果たしていることを示唆している。
  • 岩村 淳一
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 846-849
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4種の二環式,5種の単環式,および2種の鎖状テルペン系アリルアルコールと2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ペンゾキノン(DDQ)の反応生成物について検討した。
    アリルアルコールとDDQを等モル比でシクロヘキサン,ベソゼンあるいはトルエン中,室温または還流下で反応させた。生成物はカラムクロマトグラフィーあるいはガスクロマトグラフィー(GC)で単離し,標品のGCの保持時間(tE),およびスペクトルデータとの比較により確認した。
    二環式アルコール:l-ミルテノール〔1〕はミルテナールを,l-trans-ピノカルベオール〔2〕,l-trans-ベルペノール〔3〕,d-trans-サピノール〔4〕,とくに〔3〕と〔4〕は好収率で相当するケトンを生じた。
    単環式アルコール:1-カルベオール〔5〕,l-カルボタナセトール〔6〕,d-イソピペリテノール〔7〕,l-trans-ピペリトール〔8〕,l-cis-プレゴール〔9〕は対応するケトンを好収率で生じた。
    鎖状アルコール:ネロール〔10〕,およびゲラニオール〔11〕からはシトラール-b,およびシトラール-aの混合物を生じた。また,2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノヒドロキノン(DDQH2)はすべての反応から検出された。
  • 山口 八郎, 西 竜夫
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 850-853
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アミノアルコールのリン酸二水素塩を加熱融解し,その組成をイオン交換クロマトグラフィーにより分別定量して,アミノアルコールのリン酸エステル化の反応機講を考察した。
    2-アミノエタノールのリン酸二水素塩(リン酸二水素2-ヒドロキシエチルアミニウム)〔1〕の加熱温度が120℃以下では,リン酸モノ(2-アミノエチル)〔3〕のみが生成し,その転化速度は遅かった。140℃以上では,〔3〕のみでなくリン酸ビス(2-アミノエチル)〔4〕,およびニリン酸が生成した。そのさい,[AE]/[リン酸]のモル比を0.5から2.0まで変えると〔3〕の生成率は直線的に減少した。
    AEとニリン酸とは,すばやく反応して高収率で〔3〕を与えた。一方,エステル化不能の2-エトキシエチルアミンのリン酸二水素塩を同じ条件で加熱すると,〔1〕から得られる〔3〕に匹敵する量のニリン酸が生成した。
    これらの結果から,〔1〕から〔3〕への転化反応は,まず〔1〕が脱水縮合してAEの酸性ニリン酸塩となり,それがすばやく〔3〕に転化したものと推定した。
  • 松井 隆尚, 安楽 好正, 中山 充, 福井 憲二
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 854-857
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2種類の異性体,5-メトキシ-4,8,8-トリメチル-2H,8H-ベンゾ[1,2-b:5,4-b']ジピラン-2-オン〔1〕,および5-メトキシ-2,2,10-トリメチル-2H,8H-ベソゾ[1,2-b:3,4-b']ジピラン-8-オン〔2〕をジヒドロピラノン環をもった4-メチルクマリン誘導体を水素化ホウ素ナトリウムで還元し,得られたアルコール体の脱水反応により合成した。これら4-メチルクマリン誘導体の1H-NMRスペクトルにおいて4-フェニル誘導体の場合と同様,芳香環のプロトンの化学シフトは一方の異性体(〔1〕,〔5〕~〔7〕,〔11〕~〔14〕)が他方の異性体(〔2〕,〔8〕~〔10〕,〔15〕~〔18〕)に比較して,すべて低磁場に現われた。
  • 宮田 敏行, 遠藤 嘉則, 平島 恒亮
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 858-863
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    活性炭-塩化鉄(III)触媒によるp-ニトロトルエンのp-トルイジンへのヒドラジン還元を検討した。
    実験条件下では鉄イオンは活性炭に完全に吸着されており,ヒドラジンも0.2g/1g活性炭吸着されていることがわかった.触媒を乾燥状態にしなければ反復使用できる。反応時に発生するガスは窒素で,その発生量は定量的であること,中間体にp-トリルヒドロキシルアミンが生成することから,この反応は次式で表わされる。
    Ar-NO2 + N2H4→Ar-NHOH + H2O + N2
    Ar-NHOH + 1/2 N2H4→Ar-NH2 + H2O + 1/2 N2
    Ar-NO2 + 3/2 N2H4→Ar-NH2 + 2H2O + 3/2 N2
    Ar=p-Me-C6H4
    活性炭および塩化鉄(III)のp-トルイジン収率におよぼす効果を種々の条件下で行なった結果,速度式は次式で表わされることがわかった。
  • 森 紀夫
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 864-869
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(グルタミン酸エステル)濃厚溶液の形成するコレステリック液晶のらせん構造の回転方向の変化が,系に含まれている微量の色素の誘起円偏光二色性の測定から判断された。測定は,温度,濃度,溶煤および溶質の側鎖構造を変化させて行なった。得られた結果はつぎのように要約される。(1)コレステリックピッチ(P)にらせんの向きに対応して正負の符号をつけるとき,ピッチの逆数の温度微分d(1/P)dTの符号は1,2-ジクロロエタンおよびジクロロメタン溶液と,他の大部分の溶液系とではたがいに反対である。(2)ポリ(γ-ペンジル-L-グルタミン酸エステル)-1,2-ジクロロエタン系液晶は溶質の体積比が0.164以下とO.191以上ではコレステリックらせんの向きを異にしている。(3)いくつかの系では,液晶構造は温度上昇にともない,コレステリック→ネマチック→コレステリックと変化し,再出現したコレステリックらせんの向きはもとのそれから逆転している。(4)クロロホルム溶媒中のポリ(γ-アルキル-L-グルタミン酸エステル)液晶は側鎖の長いものと短いものとで,らせんの向きを異にしている。
  • 岡本 佳男
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 870-873
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(Nα-メタクリロイル-L-ヒスチジン)(PMHis)およびそのモデル化合物としてNα-ピパロイル-L-ヒスチジン(PHis)を合成した。これらを触媒としてD-およびL-フェニルアラニン(Phe-PNP),N-メトキシカルボニル-D-および-L-フェニルアラニン(M-D-およびM-L-Phe-PNP).L-アスパラギン酸α-イソブチル(Asp-PNP)および酢酸のP-ニトロフェニルエステルの加水分解を水-エタノール(31:1,vol/vol)混合溶媒中26℃で行ない,触媒の活性と不斉選択性について調べた。pH7.20,8.25,9.31の緩衝液中ではPHisの方がPMHisよりすべてのエステルに対して,より有効な触媒であった。イミダゾール残基に対して約10%の銅イオン(Cu2+)を添加すると,Phe-PNPとAsp-PNPに対する緩衝液のみによる加水分解速度とPHisによるそれはいちじるしく増大した。しかし,PMHisの存在下では銅イオンの効果は非常に抑制された。いずれの加水分解反応においても不斉選択性はほとんど認められなかった。
  • 笠岡 成光, 笹岡 英司, 山中 徹, 小野 貢
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 874-881
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    NOxのNH3による還元機構を明確にし,ダーティガスに耐える有力な長寿命触媒ならびに低温活性触媒を見いだす資とするために,V2O5系,Fe2(SO4)3系,CuSO4系ならびにCu(II)イオン交換Y型ゼオライト触媒上のNOx(NO系,NO2系,NO-NO2共存系)の還元反応,さらに関連反応のNOのNO2への酸化,NO2のNOへの分解,NH3のO2による酸化における,それぞれの反応速度の相違,還元に対する共存O2の役割,所要NH3量やO2量の量論関係などについて種々,定量的に検討を重ねた。還元実験は主として500ppmNOx(NO,NO2)-667ppm NH3-0~5% O2-10%H2O-N2を空間速度1.2×105hr-1で供給し,200~450℃(主として350℃)の定温下で行なった。その結果,いずれの触媒においても,NO-NO2の等モル共存系の還元速度がいちじるしく大きくなること,酸素の役割がきわめて重要であることを明らかにするとともに,NO2の入口組成(NO,NO2,NO-NO2共存系)のいかんにかかわらず,見かけ上,NOとNO2が触媒表面上で等モルでかつNO2として等モルのNH3によって還元が進行することが示唆された。すなわち,NO系ではNO2はNOのO2による酸化によって生じ,NO2系ではNOがNO2のNH3による還元によって生じ,反応はNO-NO2等モルで進行するということで実験結果を説明することができた。さらに量論的検討結果から,見かけの反応式は,つぎのように表わされることがわかった。
  • 指宿 堯嗣, 作間 京子, 今上 一成
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 882-887
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ガスパーミエイション・メンブラン法に基づいた装置を用い,一酸化窒素,一酸化炭素,メタン,エタンおよびプロパンについて大気汚染計測機器の校正に必要な低濃度ガスの調製を行なった。原料純ガスのメンブラン(FEPテフロン,厚さ125および813μ)透過量はFickの拡散理論に一致するガス圧力依存性およびテフロン温度依存姓を示し,ガス圧力および温度の選択により希望する濃度のガスを調製できる。しかし,調製されるガスの濃度のバラツキはテフロンの温度の低下およびガス分子の大きさの増大(NO<CO<CH,<C2H6<C3H3)にしたがい,大きくなった。ガス透過に要する活性化エネルギーがこの順に増加することから,テフロンの温度調節精度がバラツキに影響する重要な因子と考えられる。ガス透過性のパラメーターである拡散係数(D)および遅れ時間(M0)をガス濃度の時間変化の解析から決定した。本装置の実用性と密接に関連するガス透過が定常になるのに要する時間(Ta)は,M0の約3倍となっていることが推察された。Taのガスの種類,テフロンの温度や厚さによる変化もDおよびM0によってよく説明されるものであった。
  • 蓮井 寛, 三木 久也, 押尾 浩, 高畠 正温
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 888-892
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    燃焼排ガス中に含まれるNOおよびSO2をFe(II.III)-edta錯体水溶液に吸収させたあと濃縮放散するプロセスにおいて,SO2は,ガス中の酸素により酸化されて生成したFe(III)ヒドロキソ錯体(Fe(III)(OH)-edta)に反応吸収される。
    本研究では,Fe(II)-edta錯体水溶液を一部酸化してヒドロキソ錯体を含有する溶液を調製し,この溶液の亜硫酸による滴定曲線を作成するとともに,SO2の飽和吸収量および放散量を求める実験を行なった結果,SO2はヒドロキソ錯体に対し等モルだけ反応吸収されることを認めた。また,Fe(II,III)-edta錯体水溶液に吸収されたSO2とFe(II)ニトロシル錯体(Fe(II)(NO)-edta)との反応を行ない,この反応は,pH4.2以下,温度60℃以下の条件で無視できる程度まで抑え得ることを認め,この条件は吸収されたSO2を濃縮放散するプロセスの必要条件と考えた。さらに,充てん塔を用いた工業化試験により,ヒドロキソ錯体を塔内でSO2供給量に対し,モル比で1.2以上生成させれば,吸収液のpH4.0~4.2すなわち,吸収されたSO2とFe(II)ニトロシル錯体との反応を抑える条件でSO2吸収率の95%,出口ガス濃度50ppmになることを確認した。
  • 西嶋 昭生, 栗田 穣, 佐藤 利夫, 清住 嘉道, 萩原 弘之, 上野 晃史, 藤堂 尚之
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 893-898
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Fe2O3-Al2O3およびV2O5-Al2O32触媒を用い,アンモニア接触還元法を焼結炉排ガス脱硝に適用した場合の問題,主としてダスト成分中触媒に付着しNOx還元能を低下させる成分の検討を行なった。
    焼結炉排ガス脱硝試験は,鉄鉱石焼結炉煙道の途中から排ガスの一部を吸引し,1000Nm2/hr移動層反応器によって行なった。排ガス処理に用いた触媒は100時間ごとに反応器から一部抜き出し,実験室で模擬ガスによる活性試験,触媒劣化要因を検討するための付着ダスト成分,表面積および細孔容穣などの分析,物姓測定を行なった。
    その結果,活性は経時的に低下するが,排ガス中のSOxによる影響は少なく,アルカリ成分とくにカリウム塩の付着量の増加と触媒の活性低下がよい対応を示すこと,Si,Ca成分など微細ダスト成分による触媒細孔の閉塞が認められることから,活性低下は,主としてダスト成分の付着に起因することが明らかになった。
    また,Fe2O3系触媒とV2O5系触媒で活性低下速度が大きく異なる原因として,K成分はFe成分が存在する場合容易に触媒に付着し,両者は複塩を形成すること,V2O5系触媒では触媒毒成分であるK成分の蓄積が主として触媒粒表面から数10μ程度にかぎられるのに対し,Fe2O3系触媒ではK成分は触媒粒内(150μ以上)まで侵入していることなどを明らかにした。
  • 金子 克美, 井上 勝也
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 899-900
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The electrical conductivity changes of SOx-chemisorbed FeOOH with pretreatment temperature (30∼100°C) were compared with those of pure FeOOH crystals. Above 60°C of pretreatment temperature, the increase in conductivity of SO2-chemisorbed samples was larger than that of pure samples for all FeOOH. The increase in conductivity of SO2-chemisorbed γ-FeOOH with the rise of pretreatment temperature was more noticeable than α- and β-FeOOH. Chemisorptive sites for SO2 are surface oxygens for α- and β-FeOOH, whereas the oxygens in hydroxyls on surface for γ-FeOOH. The formation of oxygen defects in γ-FeOOH was promoted by the detachment of the chemisorbed SO2 during the heat treatment.
  • 渡辺 信淳, 川口 俊夫, 喜田 康
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 901-902
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The residual carbon, formed upon pyrolysis of graphite fluoride, is amorphous in analogy with carbon black or petroleum coke, but has smaller interlayer spacing and larger specific surface area due to its microporous structure than amorphous carbon.
    Upon direct fluorination of the residual carbon a more crystalline graphite fluoride was obtained even at a low temperature than the case of amorphous carbon. The reactivity of the residual carbon with fluorine gas at a room temperature was comparable to that of active carbon, and the graphite fluoride obtained from the residual carbon has a similar high ther- mostability to that of graphite fluoride, obtained from graphite at a high temperature under an atmosphere of fluorine gas.
  • 渡部 正利, 橋本 雄吉, 吉川 貞雄
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 903-905
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Three isomers of iminodiacetato(L-ornithinato)cobalt(III) have been prepared and their CD spectra are analysed and understood in terms of configurational and vicinal effects. These three isomers isomerized in water in the presence of active carbon. The measurement of the molar distribution of these isomer after equilibrium revealed that mer-cis N existed almost 100% and mer-trans N and fac isomers have not existed within experimental errors.
  • 謝 博進, 森口 彰人, 松原 義治
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 906-908
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    9-Oxoisologifolene [6] was synthesized from longifolene [1] and isolongifolene [2].
    The treatment of [1] with molecular oxygen for 32∼48 hr at 110∼130°C in polar aprotic solvents (DMSO, DMF and HMPA) yielded 9-oxoisolongifolene [6] as a major product accompanying longicamphene hydrate [3], longi-β-fenchyl alcohol [4], and longiborneol [5] as minor products. Similarly, the olefin [2] selectively gave [6] in good yield.
  • 岩室 一, 大汐 孝, 松原 義治
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 909-911
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Air oxidation of p-menthadienes (1, 4( 8 )-p-menthadiene [ 1 ], 2, 4( 8 )-p-menthadiene [2], 1, 3-p-menthadiene [3], 1, 4-p-menthadiene [4]), or p-cymene [ 5 ] at 100°C in dimethyl sulfoxide (DMSO) selectively gave p-methylacetophenone [7]. It has been shown that the formation of [7] from [1] or [2] was accompanied by the appearance of 1-methyl-4-isopropenylbenzene [6] as an intermediate and that the formation of [7] from [3] or [4] proceeded via [5].
    In N, N-dimethylformamide (DMF) or hexamethylphosphoric triamide (HMPA), the oxidation of [1] or [2] predominantly gave 2- (p-methylphenyl)-2-propanol [8] whereas the oxidation of[3] or [4] merely gave [5].
  • 纐纈 銃吾, 早川 秀樹, 北浦 一明, 安藤 文雄, 石井 義郎
    1978 年 1978 巻 6 号 p. 912-914
    発行日: 1978/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The substituent effect on the reaction of (diethylamino)dialkylarsine and -stibine with ethylene carbonate has been studied. In the case of the aminoarsines, the rate varied according to the class of the alkyl substituent on arsenic atom in the order: secondary alkyl>primary alkyl>methyl. The correlations with the Taft's equation were fairly good in each class of the alkyl substituents, and p value was calculated to be positive. The results are consistent with the four-centered mechanism. In the case of the aminostibine, there was no acceleration or retardation of the rate depending on the class of the alkyl substituents. These results show the fact that the hyperconjugation effect of the substituent on the electron density of group V element decreases with the increase of the atomic size of the group V element.
  • 1978 年 1978 巻 6 号 p. 915a
    発行日: 1978年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1978 年 1978 巻 6 号 p. 915b
    発行日: 1978年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1978 年 1978 巻 6 号 p. 915c
    発行日: 1978年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1978 年 1978 巻 6 号 p. 915d
    発行日: 1978年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
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