水素化合金の選択的水素化能を調べる目的で,Coの代表的な合金であるLaCo
5H
nを用い,1,3-ブタジエンの水素化反応を行なった。また,反応機構を明らかにするため,1-ブテンの異性化反応も試みた。
まず,LaCo
5H
2.4を調製し,これを用いて-65~-40℃の温度域で気相に1,3-ブタジエンのみを導入して水素化反応を行なった。水素化速度は1,3-ブタジエン圧にはよらず,吸蔵水素濃度に比例した。また,その速度は吸蔵水素の真空下での脱離速度にほぼ等しかった。このことから,本反応の律速段階は原子状吸蔵水素が合金内部から表面へ移行する過程であると結論した。一方,生成物の組成[1-ブテン:65%cis-2-ブテン:3%trans-2-ブテン:18%(cis/trans=0.17)およびブタン:14%]は反応温度,および反応時間によらず一定であった。またLaCo
5H
2.4を用いた1,3-ブタジエンの水素化反応生成物のNMR分析から,1-ブテンおよび2-ブテンはそれぞれ1,2-付加および1,4-付加で生成することがわかった。
つぎに,LaCo
5H
2.4を-65.0および350℃で1時間排気したのち,-65~-40℃の温度城で,1,3-ブタジエンと水素との混合ガスを導入して,1,3-ブタジエンの水素化反応を行なった。水素化速度はLaCo
5H
2.4を用いた上記の系にくらべ非常におそく,速度式は水素圧に1次,1,3-ブタジエン圧に0次であった。さらに,同様の触媒系を用い,1-ブテンの反応を気相水素の有無両条件下で検討したところ,2-ブテンへの異性化速度(cis/trans=15~20)は水素圧によらず,一方,ブタンの生成速度は水素圧に1次,1-ブテン圧に0次であった。以上の結果から,このように排気処理した触媒系での水素化反応は気相水素の吸着過程を律速として進行していると結論した。
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