日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1978 巻, 7 号
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  • 柴田 瑩, 山下 伸典, 山下 卓哉
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 917-922
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    気/水界面における合成ポリペプチドとコレステロールとの相互作用におよぼす尿素の影響を,単分子膜法および崩壊膜の偏光赤外吸収スペクトルにより研究した。
    ポリ(δ-ベンジルオキシカルボニル-L-オルニチン)(PLO(Z))またはポリ(ε-ペソジルオキシカルボニル-L-リシン)(PLL(Z))とコレステロールの混合単分子膜では,純水上(0.01mol/l HCI)においてその二成分は混合しないが,尿素水溶液上においては濃度の増大とともに混合性を増す傾向がある。一方,PLO(Z),PLL(Z)にくらべて側鎖の組成が異なるポリ(γ-ベンジル-L-グルタマート)(PBLG)は,コレステロールとの間で純水上では特異的な相互作用を示すが,尿素水溶液上においては濃度の増大とともに純水上とは異なった混合性を示す,これは単分子膜周辺の配向した疎水牲水和構造が尿素により破壊された結果,膜を構成している成分の親水性が増大したことによるものと考えられる。崩壊膜の赤外二色性から,ポリペプチド分子は仕切板に平行に配向し,配向におよぼす尿素の影響はほとんど認められなかった。
  • 曾我 和雄, 今村 速夫, 池田 朔次
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 923-929
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水素化合金の選択的水素化能を調べる目的で,Coの代表的な合金であるLaCo5Hnを用い,1,3-ブタジエンの水素化反応を行なった。また,反応機構を明らかにするため,1-ブテンの異性化反応も試みた。
    まず,LaCo5H2.4を調製し,これを用いて-65~-40℃の温度域で気相に1,3-ブタジエンのみを導入して水素化反応を行なった。水素化速度は1,3-ブタジエン圧にはよらず,吸蔵水素濃度に比例した。また,その速度は吸蔵水素の真空下での脱離速度にほぼ等しかった。このことから,本反応の律速段階は原子状吸蔵水素が合金内部から表面へ移行する過程であると結論した。一方,生成物の組成[1-ブテン:65%cis-2-ブテン:3%trans-2-ブテン:18%(cis/trans=0.17)およびブタン:14%]は反応温度,および反応時間によらず一定であった。またLaCo5H2.4を用いた1,3-ブタジエンの水素化反応生成物のNMR分析から,1-ブテンおよび2-ブテンはそれぞれ1,2-付加および1,4-付加で生成することがわかった。
    つぎに,LaCo5H2.4を-65.0および350℃で1時間排気したのち,-65~-40℃の温度城で,1,3-ブタジエンと水素との混合ガスを導入して,1,3-ブタジエンの水素化反応を行なった。水素化速度はLaCo5H2.4を用いた上記の系にくらべ非常におそく,速度式は水素圧に1次,1,3-ブタジエン圧に0次であった。さらに,同様の触媒系を用い,1-ブテンの反応を気相水素の有無両条件下で検討したところ,2-ブテンへの異性化速度(cis/trans=15~20)は水素圧によらず,一方,ブタンの生成速度は水素圧に1次,1-ブテン圧に0次であった。以上の結果から,このように排気処理した触媒系での水素化反応は気相水素の吸着過程を律速として進行していると結論した。
  • 曾我 和雄, 佐野 庸治, 今村 速夫, 佐藤 優, 池田 朔次
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 930-934
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    LaNi5を水素雰囲気下で昇温・冷却をくり返してLaNi5H6.0を調製し,これを触媒に用いてアクリロニトリル,1-ヘキセンおよび2-メチル-1,3-ブタジエンなどの液相水素化反応を行ない吸蔵水素の化学反応性を調べた。水素化反応は,室温付近の温度域で,(A)反応基質のみを導入した系,および,(B)反応基質と水素を導入した系,に.ついてそれぞれ行ない,反応の進行はガスクロマトグラフにより追跡した。
    水素化反応は,反応基質によらず(A),(B)両系でほぼ等しいはやさで進行した。なお,ベンゼンおよび酸酢メチルの水素化は起こらなかった。また(A)の場合には,水素化反応の進行と同時に気相に水素分子が生成し,その量は反応基質の種類に大きく依存した。反応基質の存在する場合の吸蔵水素の全放出速度(水素化反応に用いられた水素および気相に放出された水素分子の和)は,反応基質の存在しない真空下での水素分子の放出速度にくらべて一般にかなり小さかった。反応基質を含まないとき,ヘキサン,エタノールおよびオキソランなどの溶媒中での水素の放出速度が遅いという結果をも考慮して,これらの水素化反応においては,吸蔵水素が合金内部から,強く吸着した反応基質によりその大部分が被毒されたサイトを経て,表面に移行する過程が律速であると結論した。また,吸蔵水素を含まないLaNi5上では気相に水素を導入してもこれらの水素化反応はほとんど進行しなかった。
  • 五十嵐 哲, 藤原 秀悦, 荻野 義定
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 935-939
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    180℃,1atm下における銅触媒上でのメタノールのギ酸メチルへの転化反応を行ない,信頼できる動力学的データの求め方を提出した。すなわち,銅触媒はかなり顕著な活性の経時変化を示し,通常の方法では動力学的データを測定し難いので,標準条件下での活性の経時変化から活性低下率を求め,実験データを補正して基準化を行なった。このようにして得られた反応初速度は,V0=なる実験式で表現できた。この実験式は,理論的反応速度式
    の近似式とみなすことができ,銅上のメタノールの反応初速度式としては,客観的にも妥当なものであった。
  • 白木 健一, 桑野 泰彦
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 940-944
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    引き上げ法によって育成したNdを含有するY3Al5O12(YAG)単結晶中のNdの含有量を知ることをおもな目的として,蛍光X線分析によりNdのYAG結晶中および原料融液中の濃度を測定し,また結晶中のNd濃度に対する光吸収係数を測定した。つづいて種々の濃度のNdを含有したYAG結晶6本を順次に育成し,この試料について,光吸収測定を行なってさきに求めた光吸収係数を用いNd濃度を求めた。同時に蛍光X線分析によって求めた結晶中および原料中Nd濃度の比を実効偏析係数として6本の結晶中のNd濃度を計算で求めた。
    光吸収測定から求めたNd濃度と計算で求めたNd濃度は良好な一致を示し,用いた実効偏析係数値keff=0.21は,実験を行なった結晶中のNd濃度O.1~1.3atom%の範囲内では正しい値であると考えられる。
  • 牧 俊夫
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 945-955
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸チタン(IV)水溶液に室温で液の最終pHが3.0,4.5,6.0および8.0になるまでアンモニア水を加えて含水酸化チタン(IV)を調製した。これらの試料について化学繊の決定,結晶化度,比表面積および弱アルカリ溶液中の微量のウランに対する吸着能の測定などを行なった。x線回折法により認められた結晶はすべてアナタースであり,その結晶化度はpH増大とともに直線的に低下した。比表面積はpH増大とともに増大したが,吸着能はpH4.5~6.0で最大となり,それよりpHが大きくなるとかえって低下した。また硫酸チタン(IV)溶液の濃度の大小はpHに対する試料のH2O/TiO2比の変化にかなり影響をおよぼすことがわかった。しかし濃厚,希薄溶液のいずれの場合もH2O/TiO2比の最大になるpH値と吸着能の最大になるpH値とが一致した。以上の結果を硫酸チタン(IV)の加水分解機構,含水酸化チタン(IV)ポリマーの生長と集合のモデルおよび乾燥後の試料の構造式を用いて説明した。
  • 佐々木 義典, 植田 四郎
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 956-959
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    クロム片のリン化反応を反応温度800~1000℃,リン蒸気圧10~760Torrのもとで行なった。
    生成層をX線回折およびX線マイクロアナライザによって調べた結果,(P4およびP2蒸気)/CrP/Cr2P/(Cr)なる層構造をとることが明らかとなった。反応はいずれも放物線速度則にしたがったので,律速段階は拡散過程であるものとみなされる。マーカ実験法で拡散種を調べたところ,クロムであることが判明した。リン蒸気圧1atmにおける放物線速度定数Kpは絶対温度Tの関数として次式で表わされた。
    Kp=0. 14 exp(-35 x 103/RT),g2・cm-4・min-1,(800~1000℃)
    しかしながら,Kpの圧力依存性は明確には認められなかった。
    リン化物層中のクロムの濃度曲線からクロムの律速格子拡散の場所はCrP-Cr2P間であり,また拡散係数はその場所(あるいは濃度)で異なるということが明らかとなった。
  • 溝口 忠昭, 中村 順二, 石井 一
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 961-966
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アンモニア性炭酸アンモニウム水溶液による金属ニッケルの酸素加圧浸出におよぼす諸因子の影響について研究した。金属ニッケルがアンミン錯イオンとなって溶解するためには酸素以外にアンモニウムイオンが不可欠であり,アンモニウムイオン量がニッケルの溶解量を決定することがわかった。ニッケル量が6g/200=ml以下(領域A)ではニッケルの粒子表面に隣接する液境膜内を酸素が拡散する過程が律速であるのに対し,ニッケル量が6g/200ml以上(領域B)では溶液中へ酸素が溶解する過程が律速になるものと推定された。領域Aにおける溶解初速度は外形変化型の球状モデルでよく説明され,見かけの活性化エネルギーとして拡散律速を示す値1.5kcal/mol(30~110℃)が得られた。酸素分圧およびかきまぜ速度は溶解速度をいちじるしく増大させ,これらの結果も本溶解反応の律速過程が酸素の拡散にあることを示した。
    石炭の水蒸気ガス化灰中のニッケルは金属状態で存在する場合には,本加圧浸出法によって容易に浸出されたが,酸化物態ニッケルの浸出は不可能であった。
  • 山谷 和久
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 967-971
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フッ素含有鉱物中の微量の水を定量するには,試料を加熱したとき水とともに放出されたフッ化水素を定量的にフッ化物と水に変換させなければ定量値に負の誤差をもたらす。そこで試料として高純度の二フッ化水素カリウムを用い,この熱分解によって定量的に生成したフッ化水素を水再生管(仮称)内の充てん剤と反応させ,生じた水をKarl Fischer滴定法で定量し,充てん剤の検討を行なった。充てん剤としては,約400℃に加熱したパラジウムアスベスト-酸化銅(II)がもっともよく,その回収率は100.1±0.49%であった。この充てん剤を用いて白雲母中のいわゆるH2O(+)を定量した。またこの試料に一定量の二フッ化水素カリウムを添加して定量した結果,添加した二フッ化水素カリウムから生成した水を差し引いた白雲母中の水の値と,二フッ化水素カリウムを添加しないときの値とがよく一致した。
  • 山重 隆, 重富 康正
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 972-975
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    大気粉じん中のアソチモンの定量法を確立した.すなわち,一定量の粉じん試料を過酸化水素含有の硫酸で分解抽出し,抽出液中の過酸化水素を加熱分解後,アンチモンをヨウ化物として硫酸溶液中からベンゼン層に抽出し,これをEDTA溶液で逆抽出する。水層中のEDTAを硫酸-過酸化水素で分解後6N塩酸溶液とし,この中に亜鉛末錠剤を加えてスチビンを発生させ,加熱石英セルへ圧送し原子化させ定量する。セル温度は950℃,スチビンの導入速度は2.5l/minがもっとも高感度であった。
    抽出液に直接亜鉛末錠剤を加える方法とヨウ化物抽出分離を併用する方法とで共存元素による影響を調べた。その結果,直接法ではFe,Cu,Ni,Co,Cr,Seが強く妨害を示すが,ヨウ化物抽出分離を併用するとこれらの元素による妨害は完全に除けた。
    本法の感度は1%吸収で4ng/25mlであり水素炎を用いる方法より数倍高感度であった。また10回くり返しによる誤差は1.1%以下と非常に小さかった。
  • 野崎 亨, 坂本 政臣, 後藤 寿久, 檜垣 尚秀, 上田 勝俊, 大井 辰夫, 金沢 潤哉
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 976-980
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    過塩素酸ナトリウムでイオン強度を0.4に調節したオキシニ酢酸塩(X2-)水溶液中で,銅(II),鉛(II),カドミウム(II)およびマンガン(II)のポーラログラフ的挙動を調べた。SchaapおよびDeFord-Humeの方法により,銅ではMX,MX2,MX3,M(OH)X,M(OH)X2,M(OH)2X2M(OH)2X2,M(OH)3Xの,鉛ではさらにM(OH)4Xの錯体の,カドミウム(II)およびマンガン(II)ではpH8,7および10.1以上で沈殿生成のため,MX,MX2,MX3の3種の錯体の濃度全安定度定数を求め,これら金属の溶存組成を明らかにした。これら錯体の安定度の順序はPb>Cu>Cd,Mnであった,銅,ビスマス,鉛,カドミウム,亜鉛およびマンガンのク形波ポーラログラムの分離性はよく,定量下限は0.06,2.0,0.2,0.3,0.5および0.3ppmであった。
  • 八尾 俊男, 和佐 保, 武者 宗一郎
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 981-984
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プリンアルカロイド類(カフェイン,テオフィリン,テオブロミン)は中性DMF溶媒中でかなり陰電位(-3.0V vs.Ag/Ag+付近)のほぼ同電位でポーラログラフ波を示した。カフェインは中性および塩基性DMF中で-3.14V vs.Ag/Ag+に拡散支配の1段のポーラログラフ波を示した。テオフィリンとテオブロミンの還元波は塩基姓DMF中で消失し,新たにテオフィリンについて-0.74Vvs.Ag/Ag+に1段の,テオブロミンについて吸着前置波をともなう2段(-0.92Vと-1.00Vvs.Ag/Ag+)の明瞭な酸化波を与えた。この酸化波は次式で示したテオフィリン,テオブロミンアニオン(R-)と滴下水銀電極との反応に起因するものと考えられた。
    R-+Hg R-Hg++e
    これらの酸化波はDMF中の水分が3%までは水の影響をまったく受けず,波高は濃度に比例した。このような塩基性DMF溶媒を電解液として用いることにより,プリンアルカロイド類の同時定量分析について検討したところ,0.01mol/lの水酸化テトラエチルアンモニウムと0.25mol/lの尿素を含むDMF溶媒中で,1x10-4~2x10-3mol/lのプリンアルカロイド類をどんな分離手段をも必要とせずに,精度よく同時定量することが可能であった。
  • 徳丸 利秋, 今田 清久
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 985-990
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンズアミド誘導体の環炭素およびアミド基のカルボニル基の13CNMRにおける化学シフトの加成性を検討した。環炭素について,加成姓はきわめて精密に成立し,これによって,±0.5ppmよりも小さい誤差でこれらのシフト値を予測することができる。カルボニル炭素の場合には,第2および第3置換基の効果は,第1置換基の効果にくらべて減少している。置換基に対しパラ位にある炭素の化学シフト値とHammettσ値との相関は,加成則の精度ほどよく成立するものではない。アルキル基はいくぶん低磁場側に,またハロゲンは高磁場側にシフトさせる傾向がある。このため相関図には,±2ppmの幅をもった帯域が認められる。カルボニル炭素のシフト値と置換基のHammettσ値との相関も同様に±2ppmの領域の中に認められる。
  • 本間 恒行, 山田 哲夫
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 991-996
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    加圧下で使用できる熱てんびんおよび示差熱分析装置を用いてBaCl2・2H2OおよびSrCl2・6H2Oの熱分析を行ない,脱本反応過程について検討した。
    実験はN2下1~40atmの加圧下でTGおよびDTA曲線を測定し,圧力による影響について考察した。
    BaCl2・2H2OではTG曲線が1~40atmでは2段階であるが,40atmでは高温側の1分子の脱水が1/2分子ずつ二つにわかれている。DTA曲線では常圧では二つの吸熱ピークが認められるが,4atm以上の圧力下では三つまたは四つのピークがある。SrCl2・6H2OではTG曲線は常圧では3段階,圧力下では2段階であるが,40atmでは2段目の脱水が1/2H2Oの重量減少に相当している。DTA曲線では五つの吸熱ピークが認められた。この実験で用いた水和物の脱水反応の共通的な圧力の影響とし宅は,圧力が高くなるとTG曲線は高温側に移行するが,DTA曲線では圧力が高くなっても位置が移行しないいくつかの吸熱ピークがあり,これらの吸熱ピークに対応するDTGピークが存在していない。これらの位置が変わらないDTAピークは結晶水がH2O(l)として解離することによるものである。
  • 新井 五郎, 小野塚 峰子
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 997-1002
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メチル置換p-ベンゾキノン類と亜硫酸ナトリウムとの反応生成物について,メチル置換p-ベンゾキノン類の酸化還元電位(EMPQ)と亜硫酸ナトリウムの酸化電位(ESS)を比較することにより検討すると,ΔE(=EMPQESS)≧0では,メチルヒドロキノン類とメチルヒドロキノンスルホン酸塩類がおもな生成物であるのに対して,ΔE≦0では,キノン環のメチル基のついた炭素をHSO2-イオンが攻撃した型-たとえば,トリメチル-p-ベンゾキノン-Na2SO3反応系においては,3,4,6-トリメチル-2,5-ジオキソ-3-シクロヘキセン-1-スルホン酸塩がおもな反応生成物であるとポーラログラフ法および分光光度法から判断された。したがって,メチル置換p-ベンゾキノン類-Na2SO3反応系では,ΔEの値の正負によって異なった反応が進行することが確認された。
  • 飯田 弘忠, 佐藤 寿保, 川本 博, 高橋 一公, 山田 和俊
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 1003-1006
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニトロソベンゼン類と一酸化窒素の反応を種々の条件下で検討した。ピリジンを加えたエタノール水溶液中か,弱酸性のエタノール水溶液中では,ニトロソベンゼンは一酸化窒素によって容易にジアゾ化されたが,ジアゾニウム塩を90%以上の収率で得るためには,ニトロソベンゼン1molに対して3mol以上の一酸化窒素が必要であった。ニトロソベンゼンと一酸化窒素の反応を,アンモニアを加えたエーテルまたはジオキサン溶液中で行なうと,N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩を生じることを見いだした。このアンモニウム塩の収率は,反応系にヒドロキノンを加えることにより増加した。そこで,これらの反応の機構についても考察した。
  • 林 隆俊, 五島 正信
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 1007-1012
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オルト位やパラ位に電子求引性から電子供与性にわたる種々の置換基を導入したアリルフェニルエーテル類のClaisen轍反応臨化亜鉛(ZnCl2)によって触媒効果をうけることが認められた。パラ置換化合物の場合には,転位反応率におよぼす触媒効果の大きさの順位は,
    CH3O>CH3>H>t-Bu>Cl>CHO≒COCH3>NO2
    となり,電子求引能力の大きい置換基をもつ化合物ほど低い触媒効果を示した。
    しかし,オルト置換化合物の場合には,その順位は,
    CH3O>COOCH3>COCH3>CH3,CHO>H>Cl>NO2>t-Bu
    となり,必ずしも電子供与能力の大きさの順位と触媒効果の大きさの順位とは一致せず,とくにカルボニル基をもつ場合の触媒効果がパラ置換化合物のそれにくらていちじるしく大きいことが認められた。IRスペクトル,溶媒効果などによる検討の結果,Claisen転位反応におよぼすZnCl2の触媒効果の大きさは,エーテル酸素へのZnCl2の配位のしやすさによって支配されており,その配位のしやすさはオルト置換基のI効果,立体効果やキレート効果などによって影響をうけていると判断された。
  • 染川 賢一, 下茂 徹朗, 厚地 幹人, 隈元 実忠
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 1013-1019
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4,6,6-トリメチル-5,6-ジヒドロ-2-ピリドン[1]とエチルピニルエーテル[2]との光化学反応でexo-7-エトキシ-4,4,6-トリメチル-2オキソ-cis-3-アザビシクロ[4.2.0]オクタンを主生成物とする4種のcis[2+2]環化付加物を得た。これらの生成には70kcal/mol以上の三重項エネルギーをもつ増感剤が有効であった。
    [1]とアクリル酸メチル[7]との光化学反応では,[2]の場合とは付加配向が逆である。4,4,6-トリメチル-2-オキソ-cis-3-アザビシクロ[4.2.0]3オクタン-exo-8-カルボン酸メチルを主生成物とする3種のcis[2+2]環化付加物と3-[2-(メトキシカルボニル)エチル]-6,6-ジメチル-4-メチレン-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-ピリドンを得,[2]の場合と同様の増感作用を認めた。一方で[7]は[1]のケイ光を消光した。[2]との反応性は[7]の場合より高く,溶媒としては非プロトン性の極性溶媒が有効であった。また[1]と[2]との反応の量子収率を測定し,常法により数個の反応速度定数を求めた。
  • 功刀 利夫, 古賀 久敬, 橋本 穂
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 1020-1024
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の配向度をもつポリアミド酸フィルムとポリイミドフィルムの動的粘弾性を測定し動的粘弾性挙動に与える分子鎖の配向の影響を検討した。
    ポリアミド酸フィルムは昇温によりイミド化が進行し,E',E''値の温度依存性に大規模な変化をもたらす。イミド化はほぼ220℃で完了するが,この間イミド化以外に残存溶媒の散逸,生成水の可剤的効果,水素結合の切断などの諸現象が併起するので複雑である。ポリイミドのα分散ピークが350~390℃の温度範囲で検出され,対応するE'値の減少がとくに延伸倍率の高いフィルムで明瞭に認められた。分散ピークの温度位置は延伸倍率の高いほど低温側にシフトし,分子鎖の環状構造部分がフィルム面に平行に並び分子鎖の相互すべりが容易になるためと考察された。355~400℃付近から橋かけ反応をともなう熱劣化に起因するE'値の増大が認められた。E'の増大が開始する温度は延伸倍率の高いほど低温側でみられ,分子鎖の配列が橋かけ反応を促進すると推察された。また,空気中測定と窒素ガス中測定との結果を比較すると後者の方がE'値の増大開始が低温で現われた。このことは空気中測定では橋かけ反応を生ずる分子鎖の反応基部分が酸化され,橋かけしにくくなることを示唆するものである。
  • 野中 敬正, 桃野 英治, 三成 紀夫, 江川 博明
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 1025-1031
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水溶性ポリメタクリル酸ヒドラジド(PMH)と2価遷移金属イオン(Mn(II),Co(II),Ni(II),Zn(II),Cu(II),Hg(II))との水溶液中における錯体生成反応を25℃,イオン強度0.10においてpH滴定法によって検討した。PMHの酸解離定数を25℃,イオン強度0.10(KNO3)で求めた結果,pKa1=3.20,PKa2=10.61であった。錯体の生成定数および金属イオンに結合する配位子の平均配位数nは修正Bjerrum法により計算した。生成曲線の収れん値からCu(II),Hg(II),Co(II),Zn(II),Mn(II)およびNi(II)イオンは,高pH領域において,それぞれ約6,4,4,3,2および1個の酸ヒドラジド基と結合していることが予想された。PMH-金属(II)錯体の各段階での生成定数の順序は
    Ni(II)<Mn(II)<Zn(II)<Co(II)<Cu(II)<Hg(II)
    であった。またHg(II)は他の金属(II)にくらべて低pH領域でPMHと安定な錯体を生成することが認められた。
  • 安岡 高志, 光沢 舜明
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 1032-1036
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルカリ土類金属過酸化物の充てん層にガスを通すのみの低濃度一酸化窒素の簡単な除去法についての検討を行なった。除去率は試料ガスの相対湿度に依存し,湿度0においてはアルカリ土類金属過酸化物による一酸化窒素の除去率は低いが,各過酸化物ごとに一定の相対湿度において除去率の極大が現われ,極大を示す相対湿度は過酸化バリウムがもっとも大きく,BaO2>SrO2>CaO2>MgO2の順になっている。アルカリ土類金属過酸化物による一酸化窒素の吸収機構は水と過酸化物が反応して生じた原子状酸素により,一酸化窒素が二酸化窒素に酸化され,これがアルカリ土類金属の水酸化物に吸収されることがわかった。
    一酸化窒素を酸化する原子状酸素の発生は相対湿度の増加にしたがって増すけれども水分が多量になると原子状酸素が水分に消費されるために,一定の相対湿度以上においては一酸化窒素の酸化が悪くなるために,一定の相対湿度において除去率の極大が現われるものと推定された。試料ガスの相対湿度に適した吸収剤の選択は一酸化窒素の除去において有効な方法であり,耐用試験では粉末を直径3mmφ,長さ5mmのタブレットに成形した吸収剤30g,一酸化窒素濃度2.5ppm,激25℃,SV400/hrの条件において湿度を調整することにより90%以上の一酸化窒素の除去率が1箇月間持続した。
  • 鈴木 伸, 松本 和雄, 古賀 修
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 1037-1042
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Nラジカルは窒素のマイクロ波放電によって生成し,一酸化窒素とつぎのように反応することが知られている。
    N + NO → N2 + O
    このマイクロ波放電による一酸化窒素分解に関する研究を行なった。
    実験はつぎの二つの方法で行なった。
    (I)一酸化窒素を含む混合ガスを直接マイクロ波放電させる。
    (II)マイクロ波放電を行なった窒素ガスに一酸化窒素を混合させる。測定はすべて流通法で行ない,種々の反応圧力,流量,マイクロ波出力および添加物による分解への影響を調べた。
    上記両方法(IとII)において一酸化窒素が分解されることを確認した。マイクロ波出力の増加は一酸化窒素の分解を高めるが圧力,流量の増加は減少させた。本実験において温度の影響はみられなかった。マイクロ波放電には放電可能な上限圧力が存在し,この上限圧力は,マイクロ波出力,流量に依存する。
    種々の実験条件におけるこれらの結果を窒素ラジカルの生成,反応,失活によって説明した。
  • 江川 博明, 前田 弘憲
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 1043-1048
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸ヒドラジド基および少量のカルボキシル基を有する巨大網状構造キレート樹脂(RMH)のZn2+選択吸着牲をパッチ法およびカラム法で検討した。
    パッチ法では,RMHは([Zn2+]/([Zn2+]+[Ca2+]))>0.6の溶液からCa2+を吸着せず,Zn2+に対して良好な選択性を示すことが認められた。しかし,([Zn2+]/([Zn2+]+[Ca2+]))>0.6の溶液をRMHカラムに通液した場合には,かなりのCa2+がZn2+とともに吸着された。一方,Na+,Zn2+およびCa2+などを含むレーヨン工場排水をRMHカラムに通液した場合には,Ca2+吸着量は少なかった。これはRMHへのCa2+吸着量が排水中のNa+により影響を受けているためと考えられる。RMHのCa2+吸着量は溶液中の硫酸ナトリウムの量の増加とともに減少し,また吸着時の流速を遅くすることによっても減少した。Zn2+濃度445mg/l,Ca2+,Mg2+37mg/l(Ca2+として),総塩濃度18.2g/lの排水をpH6.7において空間速度15で通液した場合の亜鉛漏出容量は22.2g/l-Rであった。この値はさきに報告したポリエチレンポリアミン型キレート樹脂の亜鉛漏出容量13.2g/l-Rより大きい。吸着したZn2+は2~3N硫酸を通液することにより100%溶離できる。回収した硫酸亜鉛溶液中には不純物として数パーセントの硫酸カルシウムが含まれている。
  • 鈴木 仁美, 中野 清, 三品 正, 花房 昭静
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 1049-1052
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Several title compounds have been prepared by treatment of the corresponding benzyl alcohols with nitrosyl chloride in pyridine, and their decompositions in acetic acid and carbon tetrachloride have been investigated under various conditions. With lightly substituted benzyl nitrites, decompositions in both media led to the predominant formation of the benzaldehyde, while the benzyl acetate and benzyl nitrate were the respective, major products from the decompositions of hindered benzyl nitrites such as 2, 4, 6-trimethyl- and 2, 3, 4, 5, 6-pentamethylbenzyl nitrites. Hindered polymethylbenzyl nitrites and nitrites were found to behave differently towards the action of lithium aluminium hydride; the formers gave the expected benzyl alcohols while the latters were mostly reduced to the parent hydrocarbons.
  • 円満字 公衛, 高橋 健造, 草川 英昭
    1978 年 1978 巻 7 号 p. 1053-1055
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    In air or in vacuo, photo- and thermal polymerization of methyl methacrylate (MMA) in the presence of α-tocopherol or its acetate were investigated. It was found that α-tocopherol inhibited the photopolymerization of MMA sensitized by benzoin ethyl ether and the thermal polymerization induced by benzoyl peroxide. On the other hand, it was confirmed that α-tocopherol acetate was able to initiate photopolymerization of MMA in the presence of oxygen. α-Tocopherol acetate acted as plasticizer and lowered glass transition temperature of the polymers. A fraction of α-tocopherol actate was presumed to be contained in the polymer chains from their spectral data.
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