アルカリ電池の正極板としての銀電極の容量増加を目的として,電解質としてのアルカリ溶液中に銅,亜鉛,イットリウムおよびスズの各金属塩を微量添加したとき,銀電極の酸化。還元挙動におよぼす影響について検討し,つぎのような結果を得た。
(1)充放電曲線および電流-電位曲線から,銅,亜鉛,イットリウムおよびスズのいずれの添加によっても,銀電極の容量が顕著に増大することが認められた。とくに,第1サイクルよりすべての酸化・還元ピークがいちじるしく増大し,銀電極の活物質量の増加が認められた。また,イットリウムを添加した場合の充放電特性は良好であつた。充電の第1段階での中間の小さな極大波は,いずれの金属塩添加溶液の場合にも,無添加溶液におけると同様に認められた。また,第2段の放電電位急落後OVより卑な電位での電位停滞部は,いずれの金属塩添加の場合にも認められなかった。
(2)充放電曲線電流一電位曲線および電子顕微鏡観察から,添加された銅,亜鉛,イットリウムおよびスズの各金属は電析することなく,充電時にイオン状態またはコロイド状態で吸着され,銀電極の活性点での結晶生長を抑制し,他点への析出を強制することにより活物質を微細化し,その結果銀電極の容量が増大するものと推定した。
(3)各種金属塩を添加した電解質のうちで,イットリウム添加の場合にみられるコロイド状電解質は,銀電極の充放電特性の改善にもっとも有効であった。
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