日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1980 巻, 10 号
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  • 城 昭典, 瀬戸 英昭, 石橋 信彦
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1423-1430
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    膜による非対立イオン(co-ion)の排除と膜内における電気的中性の二つの仮定を満足し,かつ親油性陰イオンを添加して膜組成を明確にしたニュートラルキャリヤー型イオン電極液膜のイオン選択透過性を理論,実験の両面から検討した6実験的検討はジベンゾ-18-クラウン-6の有機溶液を感応膜とする膜電池の起電力を測定して行なった。選択係数の測定はイオンの透過が膜律速であるとする理想的前提が満足される条件下で行なった。ニュートラルキャリヤー型イオン電極液膜系においても,膜電位に加成性が存在することを見いだすとともに,選択性が膜内ニュートラルキャリヤー濃度に大きく支配される場合があることを認めた。これらの結果は理論的予測とよく一致した。
  • 秋出 竜雄, 木下 浩二, 堀田 祐介, 仁木 栄次
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1431-1436
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    PVC膜にバリノマイシンをニュートラルキャリヤーとして分散させたカリウムイオン選択性電極を用い,その動特性を溶液濃度をステップ変換することにより,電位応答に影響を与える諸因子の検討を行なった。電位応答に影響を与える因子としては,測定回路の時定数,濃度境界層中のイオンの拡散,溶液と電極界面でのイオン交換反応,イオン感応膜中のイオンの拡散などが考えられる。測定回路の時定数による影響は,測定データをデコソボリューションすることにより補正した。その結果,このイオン電極の過渡応答特性は,濃度境界層中のイオンの拡散によることを確認した。
  • 梅澤 喜夫, 藤原 鎮男
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1437-1441
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らの開発した薄層ポテンシオメトリーの特長は被測定試料溶液を入れる特別の容器を用いず,試料は市販ないし自作のイオン電極下端のセソサー部分と自作の板状銀/ハロゲン化銀比較電極の間の薄層にはさみ込むようにして測定するものでμl レベルの微少量試料のポテンシオメトリーに適している。本報では薄層ポテンシオメトリー法を広く臨床,環境分析に用いる場合に問題となると思われるいくつかの因子,1)電極応答速度,2)長時間測定と試料液蒸発の関係,3)血清タソパクの比較電極への影響,4)その他に関し,実験的に詳しく調べた。
  • 片岡 正光, 上田 誠一, 神原 富民
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1442-1446
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    スルホコハク酸ビス(2-エチルヘキシル)ナトリウム塩(Na+EHSS-)は,純度検定済の日本油化学協会指定品が市販されており,アニオソ界面活性剤の総量は,この試薬のミリグラム数として表示される。ゼフィラミソ(Zeph+)とEHSS-とのイオソ対のニトロベソゼソ溶液をイオン交換膜とするEHSS-イオン選択性電極は,10-3~10-6mol/lのEHSS-イオンにNernst応答し,目的イオン濃度10-5mol/l溶液の電位はpH2-11の範囲で一定となった。また,濃度を10倍または0・1倍に変化させたときの90%応答に要する時間は5秒以下であった。共存イオンの妨害について検討したところ,作製した電極は,塩化物,硝酸,硫酸などの無機イオンに対して十分な選択性を示したが,ドデシルスルファートやドデシルベソゼソスルホナートなどのアニオン界面活性剤に対しては同程度に応答した。作製した電極を用いて,第四級アソモ=ウムイオンをEHSS標準溶液で,また市販洗剤などのスルポソ酸形アニオソ界面活性剤をゼフィラミソ溶液で電位差滴定し,吸光光度法およびEpton法と比較したところ,良好な一致を得た。
  • 日色 和夫, 川原 昭宣, 田中 孝
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1447-1452
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    天然樹脂の一種である漆をイオン選択性電極のマトリックス材料とし,液体イオン交換体を感応物質とする硝酸イオン感応性電極を開発した.イオン交換体にはCorningおよびOrion社製液体膜型硝酸イオン感応性電極用イオン交換液,およびそれらの濃縮物,トリナクチルメチルアンモニウム=ニトラートを,溶媒にはデシルアルコール,フタル酸ジオクチルをそれぞれ使用し,最適電極膜組成を決定した。電極は100~10-4mol・dm-3の活量範囲内で活量に対し直線の応答を示し,活量の10倍変化に対する電位変化は55mVである。電極電位のpH依存性,選択性,応答速度,内部抵抗,電極作成の再現性,電極の長期保存性,耐久性などを調べた。電極特性に影響する因子は感応物質および溶媒の種類,漆との混合割合,漆中の水分量などであることが判明した。またパイプ状の特殊形状の電極も作成して特性を調べた。
  • 増田 嘉孝, 石田 悦子, 平賀 恵子, 関戸 榮一
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1453-1461
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    簡易被覆線型コパルト(II)およびクロム(III)イオン選択性電極の試作とその分析の応用について記述する。クロロコパルト(II)錯体(CoCl42-)または(CoCl3-),チオシアナトコバルト(II)錯体(Co(SCN)42-)およびチナシアナトクロム(III)錯体Cr(SCN4-)の1,2-ジクロロエタンに溶解したAliquat 336 Sによるイオン対抽出物と,THFに溶かしたPVCとの適切な混合によって得られた電極活性物質の白金電極への被膜によって簡易被覆線型電極を得た。これらの電極はNernst応答を示す{30.1mV/pCo(クロロコバルト錯体),29.5my/pCo(チオシアナトコバルト錯体),58mV/pCr(チオシアナトクロム錯体)}。得られたそれぞれの検量線は10-5-10-3mol/l,10-5.5-10-2mol/l,10-5.5-10-2mol/l金属イオソ濃度領域で直線性を示す。クロム電極の場合,edta,ntaを含むと,下限の濃度が含まないときより広がる。チオシアナトコバルト錯体を用いる電極の場合に,ポリアミンポリ(N-酢酸)配位子nta,edta,cydta,dtpa,ttha,edta(OH)2,dpta(OH)用いて微量コバルトの電位差滴定が可能であり,これら滴定曲線から錯体の組成が決定された。とくにedta(OH)2を用いると非常に有効である。また曲線の解析にGranプロット法が併用された。混合溶液法を用いて妨害イオンの影響について検討され,選択係数についても記述されている。
  • 出川 久雄, 篠塚 則子, 早野 茂夫
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1462-1465
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    マクロテトロライド系抗生物質テトラナクチソ混合物をニュートラルキャリヤーとしたアンモニウム選択性PVC膜電極を試作した。ニュートラルキャツヤー量,可塑剤の種類と量について検討を行なった。その結果,PVCの可塑剤として通常使用されるものならば,可塑剤含有量が約80~50wt%,キャリヤー含有量が約O.1wt%以上のとき,アンモニウムィオソ1O-5~10-1 mol・dm-3に対してNernst応答を示すことが明らかになった。0.1mol・dm-3塩化アンモニウム中に保存した電極の寿命は3~5箇月,あるいはそれ以上であった。しかし,微量のニュートラルキャリヤーを含む電極膜は寿命が短いことが観察された。アソモニウムイオソ電極のカチオン選択係数はカリウムイオンに対して約0.23,ナトリウムイオンに対して約O.0024で,膜組成に依存しなかった。pH4-8において電極応答は正常であった。
    応答時間については,電極に2個の噴流をあてる方法によって測定し,アソモニウムイオンの濃度変化に対する応答時間が種々の溶液組成,濃度の変化幅,変化方向によって異なることがわかった。その値は実際の使用においては十分に小さいものであり,応答時間の面からも本電極が臨床用として使用可能な性能を有していることが判明した。
  • 猪熊 康夫, 落合 崇, 遠藤 丈, 日色 和夫
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1469-1474
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ステンレス鋼など,高合金鋼の酸洗には硝酸とフッ化水素酸の混酸が用いられており,この酸洗浴の濃度管理にはイオンメーター法が作業性の点で最適である。この場合,フッ化水素の定量にはその解離を考慮しなければならないので,水素イオン濃度を求める必要がある。上記分析法について検討を行なった結果,つぎのことがわかった。
    (1)水素イオン電極の電位感応膜としては強酸性陽イオン交換膜が最適であり,水素イオン濃度測定時,フッ化水素酸および陽イオソの妨害は,酸洗液をO.05Nの硝酸で50-100倍に希釈することにより抑制できた。
    (2)水素イオン電極と参照電極またはフッ化物イオン電極間の電位差を測定することにより,水素イオン濃度および未解離フッ化水素酸濃度を直接定量する方法を確立し得た。この場合,化学分析値との比較精度は,それぞれo.06mol/lおよび0.05mol/lであった。
  • 平田 寛, 新井 正直, 塔之岡 尚文
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1475-1484
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    約10年前,イオン選択性電極の分野に始めてセラミックを導入して以来,セラミック膜電極は水質の自動監視や自動制御の領域でもっとも有効に活用できることがわかり,シアン,カドミウム,鉛などの公害モニターが開発された。ホットプレス法によって作製した感応膜は,再現性,検出感度,応答速度などの応答性が常温で加圧成形した従来のものよりすぐれており,同時に硬度,破壊強度や耐摩耗性などの機械的性質が非常にすぐれている。そこで,このセラミック膜をマグネチックスターラー型電極に組み込んで膜面を鏡面研磨したところ,とくに再現性と寿命において,従来の棒状電極対よりもはるかにすぐれた応答性が発揮できるようになった。ちなみに,この電極の指示電極は測定の都度洗浄する必要がまったくなく,ゼロやスパンの校正も1年以上庶とんど必要がなく,比較電極も内部液の補充の必要がなくて4-5年以上の寿命がある。
    そこで本報では銅イオン用感応膜を例として,鏡面研磨が必要であること,鏡面研磨にはホットプレス膜が加圧成形膜よりすぐれていること,および,シアン化物イオン用電極を例として,マグネチックスターラー型電極が研磨によって再現性を長期間確保できること,を詳述する。
  • 中野 泰介, 鈴木 康雄
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1485-1489
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    希土類元素-ニトリロ三酢酸錯体の安定度定数を,カドミウム(II)-イオソ選択性電極を用いて測定した。カドミウム-ニトリロ三酢酸錯体の安定度定数を標準として,希土類錯体の安定度定数を計算することができ,得られた値はすでに報告された値とよく一致している。イオソ選択性電極法は通常のポテンシオメトリーよりもはるかに容易であり,計算法も単純であって,適当な条件下で用いられればきわめて有効な安定度測定法といえよう。使用上の問題点などを指摘し,その対策について考察を加えた。
  • 猿橋 正邦, 大関 邦夫, 神原 富民
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1490-1493
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    銅(II)イオン選択性電極を指示電極として,銅(II)イオンを3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミン四酢酸(通称エチレングリコールビス(2-アミノエチルエ-テル)四酢酸,以下EGTA,またはYと略記する)で電位差滴定すると,酢酸塩緩衝溶液(pH-4)中では,二核錯体Cu2,Yの生成に基づく終点が得られ,アンモニア緩衝溶液(pH-9)中では通常のCuY錯体の生成による終点が得られる。これらの結果を利用して銅(II)と亜鉛(II)の分別滴定を試みた。すなわち,酢酸塩緩衝溶液(pH-4)中の滴定で第1の終点が得られたのち,被滴定液にアンモニア緩衝溶液を加えてpHをおよそ9に調節し,第2の終点が得られるまで滴定をつづける。第1の終点から銅の半量が,第2の終点から銅と亜鉛の合計量が求められる。銅(II)と亜鉛(II)をモル比1:9-9:1で含む合成試料中(全濃度はおよそ2mmoldm-3)の両者を分別滴定できた。さらにコバルト(II),ニッケル(II),カドミウム(II),マンガン(III),鉄(III),アルミニウム(III)およびスズ(IV)の影響について検討した。
  • 浅野 泰一, 伊東 哲
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1494-1498
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    既知濃度溶液添加法を用いた硫化物イオン電極による大気中の硫化水素の定量法を検討した。吸収液に硫化水素を吸収したときに生じる硫化物イオンを,硫化物イオン電極を用いて既知濃度溶液添加法によって定量する方法であり,高感度で分析操作も容易である。吸収液として,水酸化ナトリウム,グリセリン,EDTA,L-アスコルビン酸の混合溶液を用いて硫化水素を捕集する。捕集後,試料溶液に既知濃度の硫化物イオン溶液を添加し,このとき生ずる電位変化から硫化水素を定量する。大気採取量が4.5lの場合,定量可能な硫化水素濃度の下限は0.03ppmであり,大気採取量や吸収液量を加減することにより,大気中の硫化水素はもちろんのこと,作業環境および排ガス中などの硫化水素の定量に用いることができる。本法を用いて某温泉地帯の住宅街と温泉街において,大気中の硫化水素を定量した結果,平均濃度は,それぞれ,O.093ppmおよび1.44ppmであった(1977年11月)。
  • 中嶋 秀樹, 江刺 正喜, 松尾 正之
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1499-1508
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    疎水性有機高分子膜をゲート表面イオン感応層に用いたISFETを製作し,そのpH-電位応答とアルブミンおよび界面活性剤を表面に吸着させたときの電位応答を調べた。pH-電位応答はこれまでの無機物をイオソ感応層にもつISFETとはかなり異なった非線形な特性であった。イオソ感応面での水素イオン解離平衡反応と電気二重層を考慮したモデルによるpH-電位応答の計算結果は,無機・有機どちらのイオン感応面をもっISFETでの実測値をもよく説明することができた。アルブミンや界面活性剤の吸着が界面電位に与える影響は,吸着物質の濃度,共存イオン濃度,および溶液のpH値に依存することがわかったが,共存イオン濃度依存性は吸着物質によらない共通な傾向で,特定の濃度以上で吸着の影響が観測されなくなることがわかった。吸着物質の大きさとイオン濃度から決まるDebye長を使ったモデル計算から,これは吸着物質の電荷が遮蔽されるために生じたものと解釈された。ISFETを生体内で使用する場合,タンパクなどの吸着物質による妨害は無視できる大きさであり,pH感度をもたない有機高分子膜ゲートISFETは参照電極として使用可能であると考えられた。
  • 穂積 啓一郎, 秋元 直茂
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1509-1515
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1価陽イオンに応答するガラス電極について,その電位発現時における特異な挙動や電位差滴定に応用した場合の滴定曲線を検討した。とくにナトリウムイオン選択性電極として知られるガラス電極はNa+,Ag+,Li+ の濃度の急変に対して新しい平衡電位に漸近する通常の応答を示すが,K+,Rb+,Cs+,NH4+ など選択性の乏しい1価陽イオンやほとんどの多価陽イオソに対しては,一時的な過渡電位を発現したのち,やがて時間とともにもとの電位に復帰してゆくことが観察された。このような過渡応答は電極膜表面の水和層における陽イオソの易動度が,ガラス本体内においてはいちじるしく小さぐなり,両相における拡散電位が時差発現するものと説明される。この過渡電位の発現は2価イオソによる電位差滴定の終点判定に有効に利用できる。また電極の複合応答性を電位差滴定に応用するとき,応答性イオンを少量副成分として含む試料溶液を,測の応答イオンの滴定液で滴定すれば,当量点で電極に対する応答イオンが交替し,鋭い屈折パターンを得ることができる。
  • 浅野 泰一, 伊東 幸哲, 小林 文恵
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1516-1519
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    比較電極の液間電位に影響するいくつかの実験的因子,すなわち,内部液,被検液中の電解質の種類ど濃度,被検液のpH,被検液のかきまぜ,などについて検討した。
  • 片岡 正光, 宮形 さゆり, 神原 富民
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1520-1524
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ヨウ化物イオソの酸性溶液中での臭素酸イオンによる酸化速度は,微量のバナジウム(V)やモリブデソ(VI)などの均一触媒の存在により,いちじるしく増大する。反応混液中のヨウ化物イオソの消費速度をヨウ化物イオソ選択性電極を用いて追跡することにより,反応速度と触媒量との関係から触媒金属イオンを微量定量した。種々検討の結果,ヨウイヒカリウム,臭素酸ナトリウム濃度お諮pHの最適値,は,モリブデン(VI)の定量では,それぞれ0.1mmol/l,30mmol/lおよび1.88であり,バナジウム(V)では,それぞれ0.2mmol/l,40mmol/lおよび1.94である。この条件でモリブデン(M)は1~100umo1/1まで,バナジウム(V)は0.1~1.5umo1/lまでの定量が可能である。共存イオソの影響についても検討したが,鉄(III)および銅(II)はやや妨害し,クロム(VI)は大きな妨害を示した。
  • 本仲 純子, 池田 早苗, 田中 信行
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1525-1531
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    L-アスコルビン酸(ビタミンC),p-(メチルアミノ)フェノール硫酸盧(商品名メトール), ならびにヒドロキノソにヨウ素を反応させ,生じたヨウ化物イオンをヨウ化物イオン選択膜電極と飽和カロメル電極(SCE)を用いて銀電位差滴定することにより,間接的に,これら3種類の有機化合物を微量定量する方法を確立した。まず,基礎的な条件として,試料溶液の安定性,ヨウ素-メタノール溶液添加量の影響,pHめ影響,滴定時の試料溶液温度の影響,有機溶媒の影響,ならびに共存物の影響を検討しメた。また,適当な条件を用いて,定量下限を検討したところ,0.2~44mgのL-アスコルピン酸を1.6%以内の相対誤差と相対標準偏差で, 0.25-35mg のp-(メチルアミノ)フェノール硫酸塩を1.7%以内の誤差と相対標準偏差で, 0.1-23mgのヒドロキノンを0.9%以内の相対誤差と相対標準偏差で定量できることが明らかになった。
    最後に,市販薬剤である錠剤ならびに顆粒中のレアスコルビン酸と,4種類の市販ヒドロキノンの定量を行ない,本法と日本薬局方あるいはJISの方法による分析値の比較を行なった。
  • 山里 昌春, 本橋 亮一
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1532-1536
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イオン電極を利用した血清中のナトリウム,カリウム,塩化物イオソの分析装置を設計した。ナトリウムイオンの電極はガラス膜型,カリウム,塩化物イオン電極はプラスチック膜型である。試料が徽量であるため非常に小型化した電極を作成し,ウレタン樹脂をモールドしてつくったフローセルに装着した。装置は標準液によって1サンプルごとに自動校正し,150μlの試料をサンプポットに注入すると60秒後にデータをプリントアウトするようにした。標準液およびプール血清の分析結果は,変動係数において1%以下,患者血清の分析結果は,従来法と較して相関係数において0.93以上であった。これは,O,2mV以下の起電力変動に相当し,液絡部を有する電位測定においては,高精度の測定が実現されていることになる。
  • 松永 是, 軽部 征夫, 寺岡 伸章, 鈴木 周一
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1537-1541
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    固定化乳酸オキシダーゼおよび隔膜酸素電極からなる乳酸センサーとロイシン要求株Leuconstocmesentereidesを用いロイシンのマイクロバイオアッセイを行なった。乳酸セソサーの応答時間は約1分であった。乳酸濃度が0.O5~0.8×10-4g・ml-1の範囲内で電流減少量と乳酸濃度との間に直線関係がなり立つことが認められた。試料のロィシンを含有するマイクロバィオアヅセィ用培地に L.mesente-roidesを植菌し,6時間培養した培養液を乳酸セサーシステムに導入すると,ロィシン濃度0.75~6×10-6g・ml-1の範囲で,電流減少値とロィシン濃度との間に同じく直線関係だ認められた。3.0×10-6g・mlのロィシンを含有する試料を用いて測定をくり返したところ,電流減少値±7%以内で再現されることがわかった。そこで,.乳酸センサーを用いるマイクロバイオアッセイシステムを.血清中のロイシン濃度(0.4~1・2×10-4g.ml-1)の測定に実際に適用した結果,高速アミノ酸分析装置により得た結果とよく一致した(6検体,相関係数0.98)。
  • 河鳥 拓治, 有馬 亜矢子, 畠山 直子, 富永 直友, 安藤 實
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1542-1548
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    尿酸酸化酵素であるウリカーゼ(EC1.7.3.3)を,溶液膜,コラーゲン固定化膜およびグルタルアルデヒド固定化膜の3種の状態で二酸化炭素電極のガス透過性膜の表面に被覆して尿酸センサーを組み立て(それぞれ,センサーI,II およびIIIとする),尿酸の定量に応用することを検討した。本センサーは,ウリカゼによる尿酸の酸化分解によって生成する二酸化炭素量を測定して尿酸量を求めるものである。測定は,37℃,pH6.5,酸素雰囲気下の条件で得られる平衡電位を求めて行なった。ウリカーゼ濃度が高いほどセソサーの寿命が長く,酵素活性が高いときのセンサーIとIIIの検量線の傾きは.計算値に近い58~65mV/(Δlog[尿酸]=1)であった。応答時間は,5~10分ほどで,尿酸濃度が高いほど速くなる。各酵素膜の安定性は,センサーIIとIIIが同程度で安定であり,1が安定性に劣る。しかし,各センサーとも10日前後の寿命しかなく,そのため銅イオンによる酵素の活性化を試みたところ, いずれも活性を回復することが認められた。活性化後のセンサーで尿中尿酸の測定を行なったが.酵素法による測定結果とよい一致を示した。
  • 芳賀 信, 板垣 宏, 岡野 定輔
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1549-1553
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    糖尿病治療薬であるインシュリンの血中レベルの測定を目的とした酵素免疫電極を検討した。基質濃度,温度,pHなど酵素免疫電極の感度および特異性に影響する諸因子の最適条件を検討した結果,4×10-8mol/l までのインシュリンの定量が可能であった。抗体結合膜および酵素標識インシュリンの特性について125I-インシュリンを用いてトレーサー実験を行なった。また抗体結合膜を使用したラジオイムノアッセイとの比較から,酵素免疫電極の感度はおもに抗体結合セルロース膜の特性に依存していることが示唆された。薬物の血中レベルは一般にホルモンより高いと考えられるので本研究で検討した酵素免疫電極により十分定量可能であり,本法はドラッグセンサーとして臨床面に適用できるアッセイ法と考えられる。
  • 池田 章一郎, 青山 夷仁, 伊藤 要, 大倉 國利, 市橋 秀仁, 近藤 達平
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1554-1561
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酵素電極の原理が麹単に述べられ,著考らの研究室で開発された新型グルコースセソサーについての研究成果がまとめられているの酵素電極型グルコースセソサーの形を棒状から管状に変更し,共有結台法で離したグルづ一ス才キノダーゼ飼定化酵素膜の前面にグルコースの透過を部分的に制限する特殊な遭茨透過膜を設げるζ とにより,被検液を希釈する二となしに700mgμ 以上のグルコース濃度に直接応答しうるグルコースセンサーを開発した。固定化酵素膜の活性低下は5℃ での保存で3箇月後に8%以下であり,セソサーの応答性は37℃ での連続使用で10日以上変化しなかった。犬の頸動脈一頸静脈外シヶントに新型セソサーを接続し糖負荷試験を行なった結果,グルコースの静脈からの投与に対し,センサーは1分以内に応多し始め,6分で一定出力を示した。しかしイソシュリソの投与による血糖値の降下に対してセンサー出力は約20分の応答遅れがあった。
  • 山本 直登, 首藤 定伸, 坪村 宏
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1562-1567
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    抗体や酵素などを化学修飾した電極をつくり,溶液中において,その電極電位を測定することにより生体物質の検出を試みた。
    溶液にhCG(human chorionic gonadotropin,抗原)を滴下すると,anti-hCG電極(hCGの抗体を電極に化学修飾したもの)の電極電位が変化する。また,トリプシソで修飾した電極の場合でも,アプロチニソのような阻害剤を溶液に滴下すると電位が変化する。このよ,うな電位変化の機構を電極表面での複合体の形成される反応にまると,レて説明した。一度使用した電極を再生するための処理法をいくつか試み,弱い酸性液でもっともよく再生ができることがわかった。また,これらの電極の電気応答をpHを変えて測定し,pH7~10でもっとも大きな応答かみられた。石英板の表面をトリプシンで化ン学修飾し,超高感度紫外・可視分光装置により,吸収スづクトルの測定を行ない,その結果,臭化シアソ法による方法で確実に化学修飾がなされることがわかった。
  • 大林 秀仁, 工藤 徹一
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1568-1572
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一般式Ln1-xSrxCoO3(Ln:ランタノイド元素)で表わされるベロブスカイト型結晶構造を有する化合物を用いたアルコールセソサーについて検討した。この化合物群は室温において100-10-3Ω.crnの比抵抗を有し,600~800℃の高温においては空気中においても酸素欠損型非化学量論組成をとり,この組成変化に対応して比抵抗が急増する。La0.5Sr1-xCoO3の場合に,比抵抗にこの効果が現われてくるのは,全酸素の約1.6%以上欠損したi組成である。この酸素欠損は酸素分圧変化に対応して可逆的に変化することから,還元性ガスが存在する場合にも同様の組成変化が生じ,これにともなって比抵抗が変化するものと予想し,これをアルコールセソサーに適用した。La0.5Sr1-xCoO3素子についてアルコール検出特性を検討した結果,ランタノイド元素の原子番号が増すにしたがって慈答率は増大し,応答速慶は遅くなることが明らかとなった。応答速度改善にはIn2O3,PbO2などを数パーセント添加することが有効である。Sm0.5Sr0.5CoO33+In22O33を用いたアルコールセンサーを試作し,200PPmエタノールに対し40%以上の応答率を有する安定なセソサーを得た。
  • 荒川 剛, 足立 吟也, 塩川 二朗
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1573-1579
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らは,新しいセンサー材料の開発を目指して磁性材料など機能性材料として注目を集めている希土類元素複合酸化物に着目し, その触媒物性について検討を行なった。実験はアルミナ糎上にLn2CuO4(Ln=La~Gd)の酸化物粉末を焼結させたものを検出素子とし,メタノール吸着にともなう電導度変化を窒素および乾燥空気をキャリヤーガスとして測定した。さらに,Ln2CuO4の磁化率および光電子スペクトルを測定した。その結果,Ln2CuO4の触媒物性は含まれる希土類元素によって大きく異なり,ガス吸着の面からみるとLn2CuO4およびPr2CuO4はp型半導体の,他はn型半導体の性質を示すことがわかった。これは磁化率の測定から,Ln2CuO4中の銅イオンが,前者は一部1価で,後者は2価で存在するためであると推論した。またLn2CuO4のCuL3M4,5M4,5 ,AugerおよびOlsのスペクトルに化学シフトが観測されるが,これをLn2CuO4の格子エネルギーの面から議論した。さらに得られたシフトと応答活性の間によい相関があることから,Ln2CuO4中の金属イオソー酸化物イオンの結合の強さが活性に大きく影響をおよぼしていると結論した。
  • 米山 宏, 李 元博, 田村 英雄
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1580-1584
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化亜鉛焼結体に数種の金属塩をその水溶液から含浸させ,酸化物粒界の電位障壁の異なる試料とした。これら試料について,空気に水素を導入したときに現われるコンダクタンス変化の測定を120℃で行なった結果,電位障壁高よりも金属塩の化学特性が,コンダクタンス変化の出現に対して根本的な役割を有していることがわかった。しかし,コンダクタンス変化が現われるときには,電位障壁高の変化をともなうことが見いだされた。もっとも活性な塩化パラジウム(II)を含浸したいくつかのn型酸化物半導体間にはコンダクタンス変化の度合に明瞭な差異があった。この現象には, これら酸化物の電子エネルギー準位の相対的な高さが関係しているように思われる。電導率の異なる酸化チタソ(IV)試料についての検討から,水素を導入したさいに現われるコンダクタンス変化は;試料の導電率に大きく影響され,低い導電率で大きいことが確かめられた。
  • 外村 正一郎, 松岡 継文, 山本 直登, 坪村 宏
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1585-1590
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    n型半導体である酸化チタソ(TiO2),酸化亜鉛(ZnO)にバラジウム(Pd)を蒸蒼して作成したダイオード(Pd-TiO2, Pd-ZnO)の整流特性は,空気中に含まれる還元性ガスの濃度に応じて大きく変化することを見いだし,この素子がガスセンサーとして応用できることを指摘した。
    PdおよびTiO2, ZnOについて,仕事関数の測定を行ない,還元性ガスによるその変化を調べた結果,Pdでは仕事関数が表面にアニオソ的に吸着している酸素の量に応じて大きく変化することがわかった。このことから,還元性ガスにより素子の整流特性が変化するのは,Pd上の吸着酸素が還元性ガスと反応し消費されるためPdの仕事関数が減少し,それにともなってPdと半導体との界面の電位障壁の値が小さくなるためであると結論した。
    PtまたはAuを用いた金属-半導体接合素子でも,還元性ガスに対して,電気応答することがわかった。金属の種類により応答感度は異なるが,金属に吸着した酸素の還元性ガスに対する反応性がそれぞれの金属で異なるとして説明できる。金属酸化物焼結体でつくられた従来の半導体式ガスセソサーの作動機構および焼結体に触媒として添加されたPdやPtの化学的,電気的な役割は,本研究で明らかにした,金属-半導体界面に生ずる電位障壁が還元性ガズの存在により変化する機構と本質的には同じ考えで説明できる,
  • 兼房 慎二, 新田 正義, 原留 美吉
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1591-1595
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化スズを母材としたメタンガス検出素子を厚膜印励技術を利用して試作した。厚膜ガス検出素子は1wt%の塩化パラジウムおよび0.5wt%の酸化マグネシウムを含有する酸化スズ母体粉末に,親水性シリカ,疎水性シリカまたはメタノールシリカを混合して試作した。これら厚膜ガス検出素子のシリカ混合量に対する感度および機械的強度を調べた。その結果,メタノールシリカを含有した厚膜ガス検出素子はすぐれた機械的強度と高い検出感度を示すことがわかった。これらの実験結果から, ガス検出素,子の表面に吸着しているヒドロキシル基の感度におよぼす影響について検討した。
  • 和田 憲治, 山添 舜, 清山 哲郎
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1597-1602
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化スズガスセンサーに添加されるパラジウムの効果を知るために,Pd担持SnO2(Pd-SnO2),Pd担持SiO2(Pd-SiO2),およびSnO2単成分の3種の試料について,酸素の昇温脱離,電気電導度および炭化水素の酸化触媒能を調べ比較した。昇温脱離実験においてSnO2は,α(分子状吸着O2およびO2-),β(O-あるいはO2-営)およびγ(格子酸素)の脱離ピークを与え,Pd-SiO2ではPdOの分解による酸素脱離のみが観測される。これに対しPd-Sn2では,Pd担持量の増加にともないα,β 脱離が減少しPd担持量約1%でほとんど消失する一方,PdOの分解による酸素脱離はほぼ理論量に達し単調に増大した。対応する条件下で測定したPd-Sn2の電気伝導度は,SnO2のそれよりつねに小さく,かつ大きな温度依存性を示した。これらの結果から,Pdの添加はSnO2の酸化を促進して,酸素吸着点となるべき表面欠陥の濃度低下をもたらすとともに,Sn2の浅い準位にあるドナー濃度を低下させると考えられる。メタン,イソブタンの接触酸化反応において,Pd-SnO2は他の二つの系よりもはるかに触媒活性が高く,かつ他の場合と異なり酸素分圧に対する反応次数が0となることを認めた。このことからPd-SnO2ではPdとSnO2間での酸素移行が起こるものと推定した。
  • 井藤 壮太郎, 内田 直也, 山本 敏雅, 越智 英次, 東 和寿
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1603-1608
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究は有機化合物の液相酸素酸化速慶の測定法として酸素隔膜電極型酸素分析計の適用を試みたものである。30℃,pH7.6におけるヒドロキノン(H2Q)の酸素酸化を標準反応として,H2Q初濃度0.02~0.20mol/l(1mol/l=1mol・dm-3),酸素初濃度0.235~1.12×10-3mol/lの範囲で酸素酸化を行なった結果,速度式
    -d[O2]/dt=d[H2Q]/dt=k2Q[O2]
    が成立し,速度定数k=10.5±0.54l/mol・min(30℃,pH7.6)が得られた。従来法(酸素ガス吸収量測定法)で得られた速度定数はk=10.4±0.36l/mol・min(30℃,pH7.6)であり,本法は従来法より簡便でかつ精度がよく(n=6で変動係数3.7%以下),従来法による値とよく一致した速度論的パラメーターを与えることが明らかになった。
    本法による酸化速度の測定範囲の上限は,酸素電極の隔膜の膜厚によって決まる酸素分析計の応答特性によって規定され,凝一次速度定数kox(=k[H2Q])として2.3minkox,また下限は酸素電極自体による酸素消費速度によって規定され,koxとして0.003minkoxと推算された。
  • 中川 益生, 山本 勲, 藤原 宜通, 光藤 裕之
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1609-1614
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    n型半導体の表面にアクセプター性の準位があるとき表面の負電荷と同数の正電荷が内部に空間電荷層をつくる。半導体膜厚がこの層の厚さ(Debye長さ)より小さいとき,膜面内電導路は空間電荷ポテンシャル障壁によってピンチオフされる。表面準位の種類と密度の変動は,条件によりDebye長さを増して,ピソチオフを強める場合,あるいはその逆の場合を生ぜしめるユニポーラ・トラソジスター作用をひきおこす。この作用を化学吸着により行なわせ,吸着されるべき分子またはイオンを検出するセソサーを吸着効果トラソジスター(AET)とよぶ。湿雰囲気はAET動作に異常をひきおこす。水のドナー吸着によると考えられる電気抵抗の減少のほかに,湿度と印加電圧それぞれの増加にどもなう異常抵抗増が観灘された。一方,n型半導体膜をカソード,白金をアノードとして,精製水中で1Vの直流電圧を加えて電極反応を生ぜしめたとき,半導体の膜抵抗は,その電気化学処理の前にくらべて増大した。
    これらを説明するために,水の“電気化学吸着”によるアクセプター生成と,水を吸着した表面上におけるイオン電導路形成の仮説を導入した。
  • 中田 隆二, 岡崎 敏, 藤永 太一郎
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1615-1620
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    クーロポテンシオグラフィーによる環境水,とくに海水中のトレース量金属の自動分析システムを開発した。本法はグラッシーカーボン粒を充てんしたカラム電極をセンサーとするとともに,同電極を多段階に使用して,それぞれキャリヤー溶液の精製,妨害金属の除去およびトレース量目的金属の電解濃縮と選択的溶離などの諸機能をもたせ,それらをミニコソピューターで自動制御するオシライン分析システムである。本法はクーロメトリーによる絶対定量法であるため,とくにトレース分析において有効であると考えられる。
    本法により白浜沖7kmの表面海水中の銅,鉛の定量を行った。このさい,試料の前処理法と定量値との関係について検討した。銅,鉛ともに酸性にするほど炉過可能な量が増加することがわかった。鉛について,酸処理をせずに炉過した海水からは0.2PPL,および0.1mol dm-3塩酸酸性としたのち炉過した海水からは1.6ppbを検出した。
  • 野村 俊明, 嶺村 昭子
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1621-1625
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水晶発振子の電極上に物質が付着すると基本振動数が変化し,その変化量は付着した物質の重量に比例するが,このことは水晶発振子が乾燥状態にあるときにのみあてはまるものとされていた。しかし,水晶発振子が水溶液中にあるときにも発振することがわかり,その振動数の変化量(4F)は溶液の比重dと比導電率k(Ω-1・cm-11)に依存していた。
    ΔF=2,87×103k0.611-8.69×103(d-1)1.02(Hz)
    さらに溶液中に水晶発振子の電極と反応する物質が存在する場合には,その振動数の変化量は溶液中の物質の濃度,すなわち反応の結果生じた電極の重量の変化量に比例した。したがって,試料溶液の比重および比導電率を一定にすればその溶液中に存在する微量の反応物質の定量を行なうことができる。たとえば,0.01mol/lホウ砂一水酸化ナトリウム緩衝液(pH9.60)中に存在するシアン化物イオン(濃度:M,mol/l)は銀電極と反応して振動数が変化し,その変化量(ΔFCN,Hz)は
    ΔFCN=46.5×105M (Hz)
    であり,1×10-6~5×10-5mol/lのシアソ化物イオンが再現性よく(2×10-5mol/lシアソ化物イオン溶液を用いて,6回のくり返し測定を行なったときの変動係数は2.16%)定量できた。
  • 朝倉 祝治, 美田 邦彦
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1626-1632
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らは腐食を受けている金属の挙動から溶液の情報を得る方法を提案し,コローソメトリと名づけている。アルカリ性溶液中で腐食を受けているアルミニウムの分極コンダクタンスが水酸化物イオン濃度によく比例することを利用して,ガラス電極では測定の難しい水酸化物イオン高濃度の計測を試みた。電流駆動された微小な矩形波をアルミニウム電極に与えて,それに対する電位応答から分極コソダクタソスを求めた。分極コンダクタンスの値は[OH-]=10-4~10-1mol・dm-3の範囲でよく[OH-]に比例し,しかも時間的なドリフトはほとんどなかった。その比例定数は溶液の酸化還元雰囲気および塩化物イオンの存在によって影響を受けなかった。このような方法はガラス電極法にくらべて,原理的に液間起電力を初めとする測定系の不測の電位に影響されないこと,および出力がpHではなく水酸化物イオソ濃度と直接線形な関係にあり,高濃度域で感度のよいことが特徴的である。電極表面が腐食反応によってつねに更新されていることを考え合わせると,この方法は水酸化物イオン高濃度の工業的計測法として有用であると思われる。
  • 及川 充, 楢岡 清威
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1633-1640
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    PbS,InSb,HgCdTeなど赤外線センサーの雑音に対する電極の接触状態,ならびに素子を構成する結晶の状態の影響を調べる目的をもって,試料がつくりやすく,室温での測定も可能であり,かつ微結晶界面を多く含むPbSを例として取り上げ実験を行なった。灘定は化学的沈積法によるPbS膜を用い,選択周波数帯域幅5Hzのスペクトラムアナライザーによって,試料の雑音一周波数スペクトルを求めた。PbSのような薄膜素子における電流雑音では,1/fならびにG-R雑音が支配的であるが,雑音の低周波成分にはPbS膜と電極との接触性が大きく影響している。金,透明酸化スズ,コロイド状黒鉛などの化学的に安定な電極では接触雑音成分である1/f雑音が少なく,G-R雑音によって支配される雑音スペクトラムの屈折する周波数は素子の応答時定数に依存する。
    一方,A1,In,Ag,Cuなど酸化あるいは硫化されやすい金属の蒸着電極では,PbSと金属との間に金属の酸化あるいは硫化層を生じ,接触雑音が支配的になる。またPbS膜を500℃近くの温度で酸化熱処理すると雑音が高くなるが,これはPbS微結晶膜の結晶粒界面におけるPbO-PbSのP-nジャンクションのほかに4PbO・PbSO,のような高抵抗介入物が生成されるためであることを示した。
  • 梅澤 喜夫, 田先 功, 藤原 鎮男
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1641-1644
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Memory effect for ion-selective electrodes (ISE) is the hysteresis of electrode responses caused by the sudden change of analyte concentration to a lower direction. This memory effect was studied using a Ca(II) ISE as an illustrative example of the liquid membrane type ISE: Time-resolved response curves were obtained by an on-line computer (PDP 11/10) controlled ISE measuring system. The influence of the memory effect on the electrode response was systematically simulated using standard Ca(II) solution. It was found that time resolved log C vs. potential curves were influenced by the memory effect in terms of the deviation from the Nernst response. This is particularly true when the magnitude of the concentration change (to a lower direction) is greater than a factor of 3. When the analyte concentration is lower than 10-4mol/l, the concentration change of only one order of magnitude still causes a serious memory effect. The results obtained in this study would be useful for the continuous analysis of clinical and environmental samples where the analyte concentration changes up and down in fairly short time periods.
  • 原 博一, 岡崎 敏, 藤永 太一郎
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1645-1647
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    An electrode having as active substance, hexadecyltrimethylamrnonium dodecyl sulfate (10-2mol dm-3) and p-t-octylphenol (0.5 mol dm-3. ) in o-dichlorobenzene, responds to dodecyl sulfate anion with a slope of 60 mV/decade in the 2 ×10-6 ∼3× 10-3mol dm-3 concentration range. Common inorganic anions do not interfere owing to the presence of p-t-octylphenol. This electrode enables the potentiometric titration of anionic surfactants. The differential titration of binary mixture of alkyl sufates is also feasible, only a total amount can be estimated in the case of the mixture of dodecyl sulfate and dodecylbenzenesulfonate. Effect of pH on the electrode potentials is examined. The interference of hydroxide ion is significant when the concentration of dodecyl sulfate Ion becomes lower than 10-5mol dm-3.
  • 田村 奪裕, 木村 恵一, 庄野 利之
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1648-1650
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Caesium-selective PVC membrane electrodes based on bis(crown ether)s [I], [II], [III] containing benzo-18-crown-6 moiety as a neutral carrier were prepared by using o-nitrophenyl octyl ether (NPOE) or dipentyl phthalate (DPP) as a plasticizer. Bis(crown ether)s were synthesized by potassium salt of maleic, fumaric and succinic acid with 4'-(chloromethyl)benzo-18-crown-6. The selectivity coefficients for various monovalent ions were measured in order to elucidate the effect of complexing property of these crown ether derivatives on the electrode response. [I] and [III] were found to exceed [II] in the selectivity coefficient, which reflects the formation of the stable 2: 1 complexes of crown ether ring and ion. The selectivity of the NPOE systems was generally superior to that of the DPP systems.
  • 篠塚 則子, 早野 茂失
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1651-1652
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    An enzyme electrode for urea, consisting of immobilized urease held on a laboratory-made neutral carrier ammonium ion electrode by a dialysis membrane is prepared. The urease is easily immobilized from its Tris b4fer solution (pH 7.7) by adding acetone and ethanol, and can be used as the enzyme layer' of the electrode specific for urea for more than two weeks without loss of activity. This enzyme electrode can be employed for the determination of urea in aqueous and serum samples with satisfactory results.
  • 金子 克美, 井上 勝也
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1653-1665
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The utilization of α-FeOOH, γ-FeOOH, and amorphous iron(III) hydroxide for an NOx sensor has been explored. The change in electrial current through the compressed specimen of each sample by injecting gases containing NO of 1-104 ppm was measured at 60°C in a stream of dry air. The current dropped within 10 s by 1% for 7-FeOOH and 4-5% for a FeOOH and amorphous iron (III) hydroxide when exposed to 100 ppm NOx(Fig.3 and 4). The reproducibility of signals at 100 ppm NOx ±10%. The lowest NOx concentration detectable was 1-2 ppm. Almost no effect of coexisting SO, (up to 1: 3 NOx/SO2) was shown on the performances of the γ-FeOOH sensor (Fig.5). The possible use of FeOOH for an NOx sensor is suggested.
  • 伊豆津 公佑, 中村 俊夫, 奥 隆志
    1980 年 1980 巻 10 号 p. 1656-1659
    発行日: 1980/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A TOPO-coated glassy carbon (GC) electrode was used for the voltammetric determination of uranyl ion (5 ×10-9∼2× 10-7mol·dm-3) after preconcentration of it on a TOPO-layer. To obtain a TOPO-coated electrode μ/4 of TOPO-ethanol solution (5 x 10-3mol. dm-3) was added to the GC disk (3 mm in diameter) and dried. The electrode could concentrate uranyl ion effectively from the solution (0.5 mol dm-3 NaC1 and pH 3.8) at 0 V vs. SCE and the concentrated uranyl ion, when the electrode potential was scanned to negative direction, gave a reduction wave at ca. -0.7 V. The method was fairly selective to the uranyl ion because a TOPO-layer masked electrochemically some metal ions which gave reduction waves at a GC electrode without TOPO-coating.
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