日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1980 巻, 2 号
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  • 広岡 紘一, 白井 満
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    最近,変電機器に多く用いられている六フッ化硫黄(SF6)ガスに関し,その応用上,有用な知見の一つである熱分解について調べた。SF6ガスと各種金属とを容器に封入して加熱した結果,SF6ガスの熱分解開始温度は150~200℃であり,250℃までの熱分解生成ガス成分はSO2であることを確認した。また,この潴熱後の容器の内壁などの洗浄水からフッ化物イオソが検出された。このようなSF6ガスの熱分解の量は,温度,系内に存在する水分量,接触金属の種類に影響されることが明らかになった。SF6ガスと接触している金属の種類と,250℃におけるSO2生成量との関係は,ケイ素鋼板>銅>黄銅>鋼>アルミニウム=亜鉛めっき=ステンレス鋼の順であった。つぎに,電気絶縁用各種積層板をSF6ガス中で加熱した結果,シリコーン樹脂積層板では機械的・電気的特性の変化が認められた。シリコーン樹脂(ポリメチルフェニルシロキサン)をSF6ガス中で250℃に加熱すると,フェニル基がベンゼンとして離脱することを見いだした。これらの結果に基づいてSF(6)ガスの熱分解反応機構を考察した。
  • 上岡 龍一, 松本 陽子
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 170-175
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々のモノマーヒドロキサム酸による一連のアシル鎖長の異なるカルボン酸のp-ニトロフェニルエステル(S(SUB)n(/SUB),n=2~16)の加水分解反応を試みた。ヒドロキサム酸を単独に用いた場合はフェニルエステルの疎水部の増大とともに反応速度定数は減少した。一方,カチオン性界面活性剤との混合系では用いたすべてのヒドロキサム酸でミセルによる加速効果が観測された。とくに適当な疎水部を有するp-ニトロフェニル=デカノアート(S(SUB)10(/SUB))基質に選択的加速効果が見られた。
  • 津波古 充朝, 小山 ちぬよ, 松尾 恒雄, 成相 裕之, 本岡 達, 小林 正光
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 176-180
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化鉄(III)とオルトリン酸との反応におけるリ酸鉄(III)の生成について,Fe2O3とH3PO4との混合割合(モル比R=P2O5/Fe2O3),加熱温度,加熱時間,昇温速度および種々の水蒸気圧を有する加熱雰囲気下で詳細に検討した。Fe2O3とH3PO4との反応において,100~700℃の加熱温度で生成する結晶性のリン酸鉄(III)はオルトリン酸二水素鉄(III)Fe(H2PO4)3のA型とB型,ピロリン酸水素鉄(III)FeHP2O7,中性ピロリン酸鉄(III)Fe4(P2O7)3,三リン酸二水素鉄(III)FeH2P3O10のII型,ポリリン酸鉄(III)Fe(PO3)3のA型とC型および未知化合物の8種類であった。1)Fe(H2PO4)3のA型およびB型はモル比Rが3~4で,大気中で200℃以下の低温度で生成する。A型はとりわけR=4で125℃で,B型はR=3で125℃でよく生成した。2)FeHP2O7,はRが3付近で大気中(電気炉中),封管中,水蒸気溝中あるいは乾燥空気中で5時間加熱すると容易に得られる。またFe4(P2O7)3はR=1.5付近で250~300℃でよく生成する。3)FeH2P3O10のII型はR=3~4で,大気中275~400℃の温度範囲で生成するが,つねにピロリン酸鉄(III)あるいはポリリン酸鉄(III)との混合物として得られるにすぎない。4)大気中でのFe(PO3)3の生成温度はモル比Rによって異なり,モル比が大きくなるにしたがって生成温度は低温度側ヘシフトしてくる。R=4では275℃付近から生成してくる。Fe(PO3)3のC型は500℃,R≧3で大気中,封管中および水蒸気流中で容易に得られる。一方,Fe(PO3)3のA型はR=3で真空中で加熱すると得られるが,その生成量は第一次熱処理時の昇温速度と密接な関係があった。すなわち昇温速度が大きいほど,A型の生成が支配的であった。5)大気中でR=1~2・150~250℃の温度範囲においては未知化合物が生成するが,このものはつねに原料のFe2O3と混在して得られた。
  • 佐藤 次雄, 横島 孝雄, 岡部 泰二郎
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 181-187
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    亜硫酸ナトリウム水溶液(0.25~0.40mol/l,25~70℃,pH5.78~8.92)にNOガス(780ppm,2.8l/min)を送入し反応を行なわせた。Fe(II)-edta不在化ではpH8以上においてNOはHSO3-とわずかに反応しN2OとSO42-を生成した。Fe(II)-edta存在下でのNOとHSO3-の反慈はすみやかに進行し,HON(SO3)22-,N(SO3)33-,HN(SO3)22-などの窒素一硫黄化合物を生成した。反応生成物は反応条件によりきわめて異なり,25℃ではHON(SO3)33-がおもに生成し,70℃ではさらにN(SO3)33-,HN(SO3)22-,SO42-なども生成し,pH8以上ではN2Oもわずかに生成した。また反応ガス中に酸素が含まれている場合はS2O62-の生成がいちじるしく増加した。これらの結果に基づきNOによる亜硫酸壌水溶液の酸化経路についても考察を行なった。
  • 岡部 安三, 北條 純一, 加藤 昭夫
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 188-193
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    SiH4-CH4-H2系気相反応による炭化ケイ素系気相反応(1000~1400℃)による炭化ケイ素粉体の合成を行なった。生成粉体はケイ素とβ-SiCからなるが,反応温度1400℃ではほぼ純粋なSiC粉体が生成した。SiC粒子は球状で粒径は0.01~0.15μmであり,反応ガスの加熱速度を増すと粒径は減少した。SiC粒子は中空状であるが,反応ガスの加熱速度を大きく増して有効反応温度を高めると空孔をもたないSiC粒子が生成した。SiH4-CH4-H2系気相反応による中空状のSiC粒子の生成は,SiH4の気相熱分解によるケイ素粒子の生成とそのメタンによる炭化の二段過程により起こる。有効反応温度が高い場合には,SiCの核生成と粒成長によってSiC粒子が生成し,粒子は空孔をもたない。
  • 並河 建, 毛利 豪志, 伊藤 福蔵, 佐藤 実
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 194-198
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二酸化クロム(CrO2)針状微粒子表面に無電解めっき法によりコバルトを被着すると,保磁力がいちじるしく増大することを見いだした。被めっぎ体として用いたCrO2粉末は粒子の平均長軸寸法は約8μ,形状比約1:15の形状を有し,磁気特性はσa=92emu/g,Hc=500Oe,σra=0.46である。無電解めっき法は硫酸コバルト(II)のホスフィン酸塩還元による方法を用いた。微粒子表面に均一にコバルトを被着させるため,めっき浴を十分かきまぜることにより,浴中の粒子がつねに良妊な分散状態にあるよう配慮してめっきを行ない,析出量はめっき時間たより制御した。得られたコバルト被着CrO2粉末の保磁力(Hc)はめっき時間初期に急激に増大し,めっき時間1.5分間において本実験で得られた最大値の970Oeに達し,その後800Oe程度まで減少しほぼ一定値をたもった。同時に磁化(σa)はめっき初期に保磁力に反比例する傾向を示したが,その後はコバルト被着量に比例して増大した。コバルト被着CrO2の温度特性は非被着CrO2とくらべ大幅に改善されていることがわかった。保磁力増大の原因としてはなんらかの表面磁気異方性の増大によるものと考えられるが,これらについて若干の検討を行なった。
  • 北岡 馨
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 199-202
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ボーキサイトからアルミナを製造するさいの赤泥の処理は困難で,多くの未解決の問題を残している。著者はこの点に着目し,赤泥の処理方法を研究した。その結果ボーキサイトをアルカリ溶液中で磁化還元し,磁力濾過を行なって,アルミン酸塩溶液と赤泥を完全かつ迅速に分離する方法がすぐれていることを見いだした。また磁化された赤泥の物理化学的性質についても観察し,新しい知見を得た。
  • 石井 一, 高 英昌
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 203-208
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    吸光光度分析においてアナログ微分方式により高次微分スペクトルを記録し,吸光度のかわりに高次微分値を測定すれば定量感度を飛躍的に増大できることがわかった。一例としてα,β,γ,δ-テトラキス(1-メチルピリジニウム-3-イル)ポルフィン[T(3-MPy)P]およびその銅(II)錯体を選び,そのSoret帯の高次微分スぺクトルを測定した場合には,n次微分値(n=1~4)を用いると感度は,約4.5n倍に増大することがわかった。高次微分吸光光度法の超微量分析への応用として,銅(II)-T(3-MPy)P錯体のSoret帯の2次微分スペクトル測定による超微量銅の定量について基礎的な諸条件を検討し,0.2~3.2ppbの銅の簡単かつ実用的な定量方法を開発し,提案した。この方法により飲用水中に含まれる1ppb程度の銅を前濃縮なしに良好な精度で定量することができた。
  • 桜庭 建, 小島 益生
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 209-214
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    界面活性剤と亜硝酸イオンのような単座配位子共存下においてフェニルフルオロンと各種金属イオンとの反応について検討し,コバルト,ニッケルについてはすでに報告した。銅もヘキサデシルピリジニウム=プロミドとピリジンなどの窒素をドナー原子とする単座配位子が存在すると安定な錯体を生成することを知った。この銅-フェニルフルオロン錯体は共存ずる単座配位子の種類によって組成比の異なった錯体を生成することを知った。すなわち亜硝酸イオンが共存するとき,またピリジンが共存する場合についてそれぞれ,つぎのような結果が得られた。錯体の一定吸光度を示すpH範囲は4.5~5.0,9.0~10.0で極大吸収を570,595nmに有していた。またモル吸光係数は4.54×104,8.84×104lmol-1cm-1で,銅濃度1.88×10-5,1.26×10-5mol/lまでBeerの法則にしたがった。つぎにこれらの錯体の銅:フェニルフルオロンの組成比は1:2,1:1であった。亜硝酸イオンが共存している場合には.ピリジンが共存しているのにくらべて定量感度の点でややおとるが,定量範囲が広く,ニッケルが共存しても定量の妨げにならなかった。相対標準偏差を求めると,それぞれ0.66,0.42%でどちらも再現性のよい方法といえる。
  • 西浦 克, 市村 彰男, 北川 豊吉
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 215-219
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リチウムのテノィルトリフルオロアセトンによる電子供与性酸素をもつ四系列の溶媒中への抽出において,その抽出種はLiA・2S(A:テノイルトリフルオロアセトン,S:溶媒)であり,溶媒が配位性試薬としても作用していることが明らかにされた。さらに,この抽出系での規則性は,媒体としての効果と配位性試薬としての効果によって半定量的に説明された。
  • 吉田 烈, 竹下 亮一, 上野 景平
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 220-226
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    13種の鉄(III)イオン担持型陽イオン交換樹脂吸着体によるリン酸およびし尿処理場二次排水中のリンイオンの吸着をバッチ法で検討した。単位吸着体あたりのリン吸着量Qと水相の平衡リン濃度Cは,リン酸および排水中のリンイオンの両方ともに,Freundlichの吸着等温式Q=KC1/nの関係を満たした。定数Kと1/nを各吸着体について求め,吸着体としての性能を検討した。その結果13種の吸着体の中の一部はリン酸吸着体として有用であることがわかった。また,吸着体からリンイオンを回奴したのち鉄(III)型のまま再生利用する方法についても検討した。
  • 作道 栄一, 平岡 誠司
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 227-232
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    臭化アルミニウムによる2-メチル-3-(置換フェニル)-2-プロパノール(置換MPP)の脱水反応において,反応の初期に比較的顕著な反応誘導期が認められた。この誘導期は置換MPP中の置換基の電子供与性が増大するとともに短縮した。脱水速度は置換MPPに対して一次,触媒に対して二次の見かけ上三次式で示された。この結果は他の無水塩化アルミニウム系Lewis酸による2-メチル-2-プロパノール(TBA)または2-メチル-2-ブタノール(TPA)などの脂肪族第三級アルコールの脱水反応に対する結果と同じであった。脱水速度は置換基の電子供与性が増大すると増大した。反応定数の符号は負でその値は0.8であった。そして反応の律速段階はカルボニウムイオンの生成過程にあると考えられた。Eaは10~14kcal/molであり,各置換MPPのEa値と活性化エントロピー値との間にはたがいに対償関係が認められた。この関係は他の各種のLewis酸によるTBAまたはTPAなどの脱水反応に対しても成立ずることが認あられるので,これらの脱水反応は同一機構で進むことを示している。これらの結果から本反応の機構を検討した。
  • 森村 正治, 畠 忠, 田村 千尋
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 233-239
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    POCI3-ホルムアミド付加物とp-クレゾールをホルムアミド中,100~120℃で反応させると,新しい骨核を有するN-ホルミル-6,12-エピミノ-2,10-ジメチル-6H,12H-ジベンゾ[d,g][1,3]ジオキソシソ[1a]が得られた。2,4-ジメチルフェノール,2-t-ブチル-4-メチルフェノール,2-プロモ-4-メチルフェノールも同様に反応して対応する化合物[1b~d]を与え,これらの化合物の構造は[1d]のX線結晶解析により確認された。[1a]を塩酸酸性エタノール中で加水分解すると室温では,N-ホルミル-1,1-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチルアミン[2a]が得られ,また50~60℃に加温した場合には1,1-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチルアミン[3a]が得られた。[3a]は2,2′-ジヒドロキシ-5,5′-ジメチルベンゾフェノンオキシムを,LiAlH(4)で還元して得られたものと一致することによって構造が証明された。また,[2a],[3a]はともにPOCI3-ホルムアミド付加物を反応させると[1a]となった。p-クレゾール誘導体から[1a~d]が生成するのは図4に示すような経路によるものと考えられる。
  • 榊原 保正, 八木 宗治, 酒井 睦司, 内野 規人
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 240-244
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Ni(acac)2-Al2(C2H5)3Cl3-P(C6H5)3(Ni:Al2:P=1:10:5)触媒による2,3-ジメチル-1,3一ブタジエソ(DMBD)のモノエンへの選択的水素化について研究した。DMBDはトルエン中,40℃,1atmH2下で水素化され,選択的にモノエン,2,3-ジメチル-1-および-2-ブテン(初期生成比,約2:1)を生成した。これらモノエンは,本選択的水素化の完結直前に急速に異性化したが,選択的水素化の完結後も2,3-ジメチルブタンへ事実上,水素化されなかった。本水素化速度はDMBD濃度に0次となり,総括速度式R=k[H2][Ni],k=109.1exp(-13200/RT)lmol-1sec-1が得られた。ここで,[H2]は水素濃度.[Ni]は使用したNi(acac)2濃度である。活性パラメーターはΔH=12.6kcalmol-1,ΔS=-19caldeg-1mol-1である。以上の結果および参考知見から,反応機構に関して,ヒドリドニッケル錯体とDMBDから反応性中間体としてπ-アリルニヅケル錯体をすみやかに生成し,ついで起こるこれの水素化分解がおそく,律速になっていることが考察された。
  • 曾根 孝明, 狩倉 正実, 新海 征治, 真鍋 修
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 245-249
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニトロベンゼン[1a]およびo-ニトロトルエン[1b]を硫酸-メタノール中Pt-C触媒を用いて室温,常圧下で接触還元を行ない,アニリン[2a]およびo-トルイジン[2b]と還元中間体のフェニルヒドロキシルアミン類[9]のBamberger型転位生成物であるo-およびp-メトキシアニリン類を得た。転位生成物の収率は[1b]の場合には4-メトキシ-2-メチルアニリン[4b]が最高56%の収率で得られ,このとき6-メトキシ-2-メチルアニリン[3b]の収率は1%以下であった。反応系に少量のDMSOを加えることにより[4b]の収率渉70%に向上した。[1a]の還元では転位生成物o-およびp-アニシジン([3a],[4a])の合計収率は最高でも13%と低くo/p値は硫酸量により0.2~12と大きく変化した。フェニルヒドロキシルアミン[9a]の硫酸-メタノール中でのBamberger転位反応のo/p([3a]/[4a])値は硫酸量に関係なく一定(0.22)であるが,この系にPt-Cを加えると,o/p値は0.31~0.48に増大した。したがってニトロ化合物の接触還元時における転位生成物のo/p値の増大は,触媒表面上に吸着された[9a]の転位が主としてオルト位へ起こるためと解釈される。
  • 杉浦 三千夫, 渡辺 俊雌, 海老沢 誠
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 250-253
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    いままでに数多くの液晶化合物が合成されているが,フェナントレン系のものはぎわめて少ない。しかも本研究のようにフェナントレン分子の2位や7位にその置換基をもつものはまったく見あたらない。そこで著者らはその位置にしかるべき鎖をもったもの,すなわち,2,7-ジアルコキシフェナントレンを合成してその液晶性を示差熱分析計ならびに顕微鏡観察により研究した結果,アルコキシル基の炭素数が6から14付近の間で明らかに液晶性を示し,その型はすべてスメクチックであることを知った。
  • 兼広 春之, 小見山 二郎, 佐藤 満, 飯島 俊郎
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 254-262
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(L-グルタミン酸)(PLGA)のコンホメーションにおよぼすアルカリ金属塩(LiCl,NaCl,RbCl,CsCl)およびテトラアルキルアンモニム塩(TMACl,TBACl)の効果を旋光度,電位差滴定および固有粘度の測定によって調べた。PLGAのpK0を見積るために,ポリ(DL一グルタミン酸)を合成しその滴定曲線から実験的に4.28を得た。PLGAのヘリックス分率θとpHの関係から,Li,Na,Rb~Cs~TMA,TBAの順,すなわち結晶学的イオンサイズの小さいほど転移曲線が低pH側にシフトすることがわかった。θと解離度αの関係は,アルカリ金属の種類によらず1本の曲線で表わされ,これらの塩効果が単にPLGAのカルボキシル基の解離を変化させるものであることがわかった。さらにθにおよぼす効果はアルカリ金属塩とテトラアルキルアンモニウム塩では異なることを明らかにした。非荷電コイルから非荷電ヘリックスへの転移の自由エネルギーΔF°はアルカリ金属塩については一定(-245±5cal,25℃)であった。一方,TBAClおよびTMAClではそれぞれ‐270および-200calが得られ,テトラアルキルアンモニウムイオンとの非静電的相互作用の関与を裏付けた。さらに,電位差滴定および旋光度の結果から,転移の開始パラメーターσを求め,その温度依存性について議論した。
  • 安藤 靖子, 音成 由巳子, 越井 つくみ, 小見山 二郎, 飯島 俊郎
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 263-269
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    臭化ブチルまたは臭化オクチルによって四級化したポリ(2-ビニルピリジン)(C4P2VP,C8P2VP)および臭化ブチルによって四級化したポリ(4-ビニルピリジン)(C4P4VP)と4-アミノアゾベンゼン(D-I)または4-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]アゾベンゼン(D-II)との結合機構を,溶解度,可視吸収スペクトル測定および透析速度法によって調べた。C8P2VPは粘度測定からポリソープと考えられ,上記染料の可溶化効果はいちじるしく大きいのに対して,アルキル鎖長の短いC4P2VPは可溶化効果を示さなかった。C8P2VPと染料の相互作用に基づく可視吸収スペクトルは,これら染料の非極性溶媒中での吸収スペクトルに対応し,ポリマーのつくる非極性環境下に染料が局在すると推測した。透析速度法によってC8P2VPと2種の染料との結合におげる染料濃度依存性を調べ,おのおのシグモイド型結合等温線を示すことがわかった。これらの結合等温線を,McGheeとvon Hippelによる協同的結合の理論式によって解析した。C8P2VPの大きい可溶化効果は,ポリマー鎖上における染料-染料相互作用の寄与によると推論し,結合機構を考察した。
  • 今村 成一郎, 福原 雅昭, 北尾 高嶺
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 270-276
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    各種アミドの湿式酸素酸化処理を行ない,反応機構について検討し,アミドに対する本処理法の効果を評価した。反応機構に熱分解によるC-N結合の開裂と,引きつづき生成した酸あるいはアミンフラグメントの酸化分解が起こる逐次反応と,アミド自体への酸素の攻撃の二つの反応からなり立ち,アミドの熱安定性,熱分解による一次生成物の反応性,あるいはアミドの酸素に対する反応性などの要因が,両反応の寄与の程度を左右することが推定された。全般的な反応性はアミド分子中の炭素の含有率と相関関係があり,これによってアミド間の反応性の順序を推定することが可能である。染料あるいは他の化合物と比較して,アミド類の反応性は非常に低く,本処理法単独の適用は適切でないが,処理後の生物分解性が向上することから,生物処理の前処理として有効であることが見いだされた。
  • 三浦 弘, 細村 真司, 杉山 和夫, 松田 常雄
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 277-278
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Oxidative dehydrogenation of 1-butene was examined over Bi-Ti oxide catalysts (Bi/Ti=4/3) prepared with various methods (Table 1). The method of preparation affected the selectivity. to butadiene significantly. A catalyst of Bi-Ti(III), obtained from bismuth nitrate and titanium sulfate, was most effective. Noncrystalline Bi4Ti3O12 seems to be effective for this dehydrogenaton reaction. Formation of butadiene was also observed even in the absence of gaseous oxygen(Fig. 1). This formation was probably accompanied by subtraction of lattice oxygen in Bi4Ti3O12. A redox mechanism similar to the one proposed for the case of Bi-Mo oxidewas suggested for the oxidative dehydrogenation over Bi4Ti3O12 catalysts.
  • 柏木 寛, 榎本 三郎
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 279-281
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A new method was found for N-alkylation of amines and amides with alcohols in homogeneous liquid-phase. Addition of small amounts of ammonium halide to the reactants attained successfully high yields of N-alkyl or N, N-dialkyl derivatives of starting amines and amides at 280-320°C in the atmosphere of nitrogen. This N-alkylation reaction gave N, N-dialkylaniline from aniline, N-alkyl-α-pyrrolidone from α-pyrrolidone, N-alkyl-α-piperidone from α-piperidone, N, N-dialkylformamide from formamide (starting material : ammonium formate), and N, N-dialkylacetamide from acetamide (starting material : ammonium acetate).
  • 岡本 勇三, 山下 和男, 杉田 嘉一郎
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 282-284
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Bis(4-anilino-3-penten-2-onato)copper(II) [1] reacted with p-substituted benzoyl chloride (R, a : NO2, b : Cl, c : H, d : CH3, and e : OCH3) and pyridine (2.3 molar ratios to [1] in benzene at 8±2°C for an hour to give C-aroylated product, 4-anilino-3-(p-substituted, benzoyl)-3-penten-2-one [3] (41-86% yield), and 4-substituted benzanilide [4] (-10%). Bis(4-anilino-3-penten-2-onato)nickel(II) [2] was allowed to react similarly with them in the absence of pyridine to give [3] (53-85%) and [4] (-11%). The more the electron attractive substituent at benzene ring, the higher was the yield of [3] (Table 1). The stereochemical structures of all of [3] were (E)-isomers on the basis of the IR and PMR spectral data shown in Table 2 and of the comparison of spectroscopic data with the C-acetylated product, 3-acety-4-anilino-3-penten-2-one [5] (νC=O) of the free acetyl group : 1669 cm-1, νC=O of the intramolecular hydrogen-bonded acetyl group : 1592 cm-1, δNH : 1569 cm-1, and proton signal of NH group : 13.72 ppm (broad)).
  • 山口 八郎, 秋枝 茂
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 285-286
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A series of triethylaminium salt of acylated sulfuric acids [1] was synthesized in excellent yield from the triethylaminium salt of a higher fatty acid and the adduct of triethylamine-sulfur trioxide in 1, 2-dichloroethane under mild reaction conditions. R-C =O -O-SO2-O(-) HN(+)(C2H5)3 [1]
    The melting points of the salts thus obtained were as follows mp 35.5-38.2°C for lauroyl group (R=C11H23), mp 46.0-47.5°C for myristoyl group (R=C13H27), mp 57.5-60.0°C for palmitoyl group (R=-C15H31) and mp 64.0-67.0°C for stearoyl group (R=C17H35).
  • 鈴木 洸次郎, 清岡 俊一, 宮川 敏夫, 川合 明
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 287-288
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The optical activation of N-benzoylphenylglycine (RS[1]) was realized when its salt of (R)-1-phenylethylamine (R[2]) was refluxed in 100 times its weight of toluene followed by gradual concentration of the solution to a half its original volume. The product which contained 71.7% of S[1]-R[2] was obtained in a 77% yield. The degrees of asymmetric transformation from R[1]-R[2] to S[1]-R[2] were measured under various conditions. The attempt to obtain optically pure S[1] from RS[1]-R[2] was made successfully by modifing above procedure. R[1] also was obtained in the same way when RS[1]-S[2] was used instead of RS[1]-R[2].
  • 森村 正治
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 289-291
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A convenient synthetic method has been developed for the preparation of N, N′-dithiobis-(amines) from hindered amines : the reaction of 2, 2, 6, 6-tetramethyl-4-piperidinoile [1a] with S2Cl2-DMF in the presence of sodium acetate in hexane at 5-10°C gave bis(2, 2, 6, 6-tetramethyl-4-oxopiperidine-1-yl) disulfide [2a] in a good yield. Under the same reaction conditions, disulfides [2b-e] of other hindered amines were obtained.
  • 兼広 春之, 小見山 二郎, 飯島 俊郎
    1980 年 1980 巻 2 号 p. 292-294
    発行日: 1980/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Fractionation of poly(α-L-glutamic acid) (PLGA) was carried out on DEAE cellulose column by NaCl gradient in an aqueous solution. PLGA with increasing molecular weight was eluted with NaCl concentration. Mw/Mn of unfractionated PLGA was evaluated to be 1.19 from the viscosity measurements.
    The effect of molecular weight of PLGA on the helix-coil transition was examined by means of potentiometric titration and optical rotation measurements. The titration curves were independent of molecular weight in the region of degree of dissociation, α>0.35, while they were dependent on it in the region, α<0.35, where the polymer precipitated partially. The relation between helix content of the polymer, θ, and pH was represented by a single curve, regardless of molecular weight.
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