日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
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1980 巻, 4 号
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  • 八尾 健, 神野 博
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 529-536
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    立方晶系,六方晶系,三方晶系,正方晶系,斜方晶系に属する結晶の粉末X線回折図形から格子定数を求め,ピークに指数を付けるとともに,結晶の属する可能性のある空間群を求めるためのコンピュータープログラムを個々の晶系ごとに作製した。
    消滅則を用いて回折の起こり得る指数を各回折群ごとに前もって求めておき,それらに回折ピークを対応させる。この方法では,必ずしもすべての指数にピークが対応する必要がないため,試料のピークを読み落したり,試料のピークではないものを誤って読んだりした場合にも,指数付けが可能である。また対応が可能な範囲内で測定値に対して誤差を許すことができる。
    京都大学大型計算機センターのFACOM M200により,結晶の粉末X線回折図形の測定値を処理した。塩化ナトリウム,α-アルミナ,ルチル,および炭酸バリウムの測定結果を,それぞれ立方晶系,六方晶系・三方晶系,正方晶系,および斜方晶系のプログラムの入力データとして用いた。またフォルステライトを試料として,晶系未知の場合を想定した指数付けを行なった。結果はいずれも満足のいくものであった。
  • 宇津木 弘, 遠藤 敦, 岡本 昭男, 大貝 正人, 深見 功
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 537-544
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    C1~C3アルコール処理シリカゲルの熱分解を四重極質量分析計によって生成物を分析することによって研究した。その結果,分解はつぎの三つの温度領域で起こるとわかった。(i)30~200℃,(ii)250~350℃および,(iii)350~550℃。メタノール処理シリカゲルの(ii)および(iii)の温度領域はこれらより高い温度領域(ii)250~650℃および(iii)600~750℃にある。おのおのの温度領域で発生する蒸気の質量スペクトルの解析からつぎのことがわかった。(1)温度領域(i)で発生する蒸気は物理吸着した水または未反応アルコールと認められる。水はほぼ800℃まで少量ではあるが発生する。これは未反応シラノールの縮合脱水によるとして説明できる。(2)温度領域(ii)で発生する蒸気は処理に用いたアルコールが主成分である。これは未反応シラノールの縮合で発生した水による付着基の加水分解に起因する。(3)温度領域(iii)での処理シリカゲルの熱分解は処理に用いられたアルコールの気相およびシリカゲル上での熱分解よりもより低温で起こる。分解生成物中の水以外の主成分はメタノール処理のものではCOこれ以外のアルコール処理のものでは処理に用いたアルコールに相当するオレフィンである。これらはアルコールの気相あるいはシリカゲル上での熱分解生成物とは異なる。したがってアルコールはシリカゲルに吸着したのではなく,基体表面ヒドロキシル基と化学反応していると考えられる。(4)シリカゲルはアルコールの気相熱分解を促進する触媒として作用し,メタノール以外ではその脱水反応を選択的に促進する。
  • 安部 郁夫, 林 勝巳, 北川 睦夫, 浦畑 俊博
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 545-550
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    CAL活性炭に対する22種の単官能脂肪族化合物の25℃における水溶液からの吸着の標準自由エネルギー変化Gは,次式で近似できることがわかった。
    G=-779N0 (1)
    Nは吸着質分子の炭素数,γ0は官能基の種類によってきまる定数。このG値をそれぞれの化合物の吸着性を表わす指標として定義し,これを用いて吸着等温線を表わすために,Freundlich式の定数kおよびnGとの関係を調べた。いま,22種の化合物の1/n値として,これらの平均値0.482を用いたとき,実際の吸着データをもっともよく近似できるようにk値を求めなおした。この値をk0とするとGとの間に次式が成立した。
    logk0*G* (2)
    β**は活性炭の吸着性能を表わす定数。以上の結果から,平衡濃度範囲を限定すれば,CAL炭に対する吸着等温線は次式の1/n0を0.482とした式によって近似的に表わせることがわかった。
    logX*G*+1/n0logC (3)
    つぎに,このような関係が吸着性能の異なる他の活性炭に対しても成立するかどうかを確かめるために,20種の活性炭に対して7種の単官能脂肪族化合物の吸着実験を行なった。その結果,20種すべての活性炭に対して(3)式が成立することがわかった。また,各活性炭の1/n0値をこれらの平均値0.47に固定した(3)式によっても吸着等温線をほぼ近似的に表わせることがわかった。
  • 柏木 寛, 榎本 三郎
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 551-556
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    担持酸化ニッケル触媒を用い,ピリジンのメタノールによる直接気相メチル化を試みた。もっとも活性の大きかった触媒はニッケル置換Y型ゼオライト(NiY)であった。この場合,触媒活性は250℃で現われ始め.350℃で最大となった。そのとき,ピリジンの転化率は78%,α-ピコリンおよび2,6-ルチジンへの選択率はそれぞれ77%および23%であった。2,6-ルチジンへの選択率は,反応温度が高く,メタノールの分圧が高く,また流量が小さいほど増加する傾向が見いだされた。
    さらに,NiY触媒を用い,α-ピコリン,β-ピコリンおよびγ-ピコリンのメタノールによるメチル化,ピリジンとピコリン類のエタノールによるエチル化, 2,4-ルチジンのメタノールによるメチル化を行ない,高い収率でα-アルキル誘導体の得られることを見いだした。
  • 荘司 菊雄, 石地 徹, 竹田 政民
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 557-567
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    まず,MBBA,EBBA,PBBAおよびBBBAの4種類のネマチック液晶を固定相として,溶質との相互作用を検討するために,ガスクロマトグラフ法の操作条件の検索を行なった。
    溶質として直鎖アルカンを用い,それらの無限希釈モル分率活量係数をカラム温度をかえて測定したところ,転移点近傍で顕著な変化が認められた。この事実から,ガスクロマトグラフ法による液晶の相転移温度の決定を試みた。
    つぎに各種溶質について,ネマチック相とアイソトロピック相における溶解エンタルピーと溶解エントロピーを求め比較したところ,MBBAとBBBAでは,ネマチック相からアイソトロピック相へ変化するさいに,溶質の溶解エントロピーは変わらず,溶解エンタルピーのみが変化することを見いだした。EBBAとPBBAでは,逆に主として溶解エントロピーのみが変化して,溶解エンタルピーは変化しないことを見いだした。
    直鎖アルカンについてガスクロマトグラフイー法から得られた値と,修正HJL理論から予言される値を比較したところ,主として溶解エントロピーのみが変化するEBBAとPBBAでは,実測値と予言値との間に相関関係が認められたが,溶解エンタルピーのみが変化するMBBAとBBBAでは相関関係が認められないことがわかった。
  • 小野 雅之, 吉田 哲郎
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 568-575
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    既報の40チタン-60バナジウム(wt%)合金に引きつづき,今回60チタン-40バナジウム,80チタン-20バナジウム(wt%)合金粉末を窒素中(1 atm)700~1390℃で窒化し,断面の組織観察,EPMA解析,ならびにX線解析により反応機構を検討した。60チタン-40バナジウム合金は1300℃で,80チタン-20バナジウム合金は1390℃の反応でそれぞれ均一複合窒化物となった。40チタン-60バナジウム合金と同様に反応初期は粒内部にチタンの多い窒化物とバナジウムの多い合金相が生成し,高温で窒化増量にともない両相が反応し均一な複合窒化物となった。このときチタン濃度の高い合金ほどチタンの多い窒化物の結晶が粗大化し均一な複合窒化物を生成しにくい。初期窒化反応領域では反応速度は放物線則にしたがう。60チタン-40バナジウム合金の速度定数は80チタン-20バナジウム合金より大であり,60チタン-40バナジウム合金で窒化速度が極大となった。
  • 尾崎 敦子, 石原 忠, 原 研治, 保田 正人
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 576-581
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    長崎県周辺の海岸すなわち橘湾,有明海および大村湾などに面した7箇所の海岸から採取したアサリの貝殻(各地ともそれぞれ15~20例)中のカルシウム,鉄,アルミニウムおよびチタンの定量を行ない,その含量および含量比が貝殻個体または採取地および肥大度の相違によりどのように変動するかを検討した。鉄17~230ppm,アルミニウム20~230ppm,チタン2.0~12ppm,カルシウムは36.5~38.3%であった。同一採取地の貝殻中の微量元素含量には,3~4倍の個体差が認められ,また採取地ごとの各元素含量の平均値には2~3倍の変動が認められた。貝殻の大小による含量の差異はほとんど認められない。大村湾産の貝は概してこれらの微量元素は少なく,有明海産の貝では比較的多量に含まれていた。各元素相互の関係では,鉄含量め増加にともなってアルミニウムやチタン含量が増加する正の相関が認められた。また,海水中の元素含量に対する貝殻中の元素含量の比を濃縮係数として求めると,銑,アルミニウムおよびチタンは,おのおの7700,8600,5900でありカルシウム(940)より6~9倍高い値であった。
  • 渡部 勝憲, 鈴木 繁喬, 荒木 峻
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 582-586
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らは,液晶を固定相とした分離管に電場を印加するガスクロマトグラフィーについて検討を行ない,直流電場の印加によって試料中の特定成分,すなわちハロゲン化芳香族炭化水素が分離管に吸着され,溶出しなくなることを見いだした。本報では,この吸着現象を起こす要因を調べる目的で,4, 4′-アゾキシジアニソール,パルミチン酸コレステリルの両固定相を用い,多種類の化合物について,電場の強さと吸着量の関係を検討した。この関係,保持時間,HETPへの電場の影響などの結果から吸着現象の要因を考察した。この吸着現象では,液晶構造がネマティック配向となっていること,試料としての化合物の比誘電率が要因となっているとの結論を得た。また比誘電率を,前述の電場の強さと吸着量との関係から求める式を誘導し,文献値と比較した。
  • 矢ヶ部 憲児, 澁谷 康彦, 南 晋一
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 587-592
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    バナジウム(IV)がシュウ酸水溶液中でオキサラトバナジウム(IV)錯陰イオンとして存在すれば,有機溶媒相中のトリオクチルアンモニウムイオンによる抽出の可能性があると考え,シュウ酸水溶液からトリオクチルアミン(TOA)のベンゼン溶液によるバナジウム(IV)錯体の液-液抽出実験を行ないバナジウム(IV)錯体の抽出挙動および抽出化学種の検討を行なった。有機溶媒相中のバナジウム(IV)化学種中のTOAとナキサラトバナジウム(IV)錯体の組成比をTOAとバナジウム(IV)の間で傾斜比法,モル比法および連続変化法により検討した結果,抽出化学種の組成比は2:1であると推定した。バナジウム(IV)の分配比のpHおよびTOA濃度依存性の検討からオキサラトバナジウム(IV)錯体に2分子のTOAが結合していると推定できた。また,バナジウム(IV)抽出に対するバナジウム(IV)濃度の影響を検討した結果から有機溶媒相中のバナジウム(IV)化学種の組成比はTOA:バナジウム(IV):シュウ酸イオン=2.0:1.0:2.0であること,およびシュウ酸イナン対バナジウム(IV)のモル比を2以上にした水溶液のスペクトルが[VO(C2O4)2]2-のスペクトルに一致したことから,有機溶媒相中のバナジウム(IV)化学種は(R3NH)2VO(C2O4)2であるが(R3NH)2C2O4およびR3NHHC2O4が同時に有機溶媒相中に生成すると結論した。
  • 御園生 堯久, 阿部 芳首, 長尾 幸徳, 谷田部 佳見
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 593-599
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    分散型アゾ染料がテリレンのような疎水性エステル繊維を染色する場合の染色機構に関する基礎的知見を得る目的で,分散型アゾ染料として14種類,疎水性エステル繊維として3種類のポリエステルモデルを選び,可視吸収スペクトル(溶媒; 四塩化炭素)により,染料・繊維間の相互作用を検討した。ポリエステルモデルの濃度変化にともなう染料スペクトルの最大吸収波長の変化に基づくエネルギーの値ΔEを,染料・繊維モデル間の相互作用の尺度とした。ΔEは,染料の極性の増大にともなって増加し,2-シアノエチル基,2-ヒドロキシエチル基をもたない染料の双極子モーメントの二乗とΔEとの間に比例関係が成立した。また,Eλmax(染料の可視吸収帯の最大吸収波長に基づく遷移エネルギー)と絶対温度の逆数との間にも比例関係が成立した。この結果から,分散型アゾ染料とポリエステルモデルの相互作用には,極性van der Waals力の寄与があり,ヒドロキシル基を有する染料にはΔEのずれと大きな温度効果を示すことから,水素結合の寄与があることが推定された。
  • 田中 竜雄, 久保田 和則, 渡辺 芳彦, 川村 敦
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 600-603
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    各種のハロゲン化アルキルを用いる4-メチル-1-フェニル-2,6-ピペラジンジオン〔1〕の四級化と,この反応で得られた3,5-ジオキソピペラジニウム塩〔3〕と塩基との反応を検討した。〔1〕をメタノール中でヨウ化メチルまたは臭化アリルと加熱,無溶媒で臭化フェナシルまたは塩化ベンジルと加熱すると,それぞれ相当する〔3〕が高収率で得られた。〔1〕をハロ酢酸エチルと加熱すると,予期しない四級塩, 1,1-ジメチル-3,5-ジオキソ-4-フェニルピペラジニウム=ハロゲニド〔3a〕と4-エトキシカルボニルメチル-1-フェニル-2,6-ピペラジンジオンが得られた。1-ベンジル-1-メチル-3,5-ジオキソ-4-フェニルピペラジニウム=クロリド〔3e〕以外の〔3〕は,水酸化銀,カリウム=t-ブトキシドおよびフェニルリチウムの作用で,イミド基の加水分解を起こしてベタイン〔4〕となった。〔3e〕はカリウム=t-ブトキシドまたはトリエチルアミンの作用で,Stevens転位を起こして3-ベンジル-4-メチル-1-フェニル-2,6-ピペラジンジオンを与えた。
  • 鈴木 吉蔵
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 604-608
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,4,6-トリフェニル-〔1〕,2,3,4,6-テトラフェニル-〔2〕およびペンタフェニルチオピリリウム=テトラフルオロボラート〔3〕と各種の求核試薬,すなわちジメチル-〔4〕,メチルフェニルスルホニウム=フェナシリド〔5〕およびアジ化ナトリウム〔6〕,ピリジニウム-N-イミド〔7〕との反応について検討した。
    〔1〕と〔2〕は〔4〕,〔5〕と反応してベンゾフェノン誘導体を与え,〔1〕,〔2〕および〔3〕は〔6〕,〔7〕との反応ではピリジン誘導体が生成した。これらの生成の反応機構についても考察した。
  • 猪川 宏美, 佐原 秀子
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 609-612
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-メチル-1-(N′-トシルヒドラジノ)エチルホスホン酸ジメチル〔1〕および1-(N′-トシルヒドラジノ)シクロヘキシルホスホン酸ジメチル〔6〕の脱トシルヒドラジノ反応を,溶媒および脱トシルヒドラジノ試薬を種々変えて研究した。アルコール中塩基接触脱トシルヒドラジノ反応では,ホスホン酸ジメチルの脱離反応が起こり,収率がいちじるしく低下することがわかった。脱トシルヒドラジノ試薬としては水素化ホウ素系還元剤がよく,溶剤としてはテトラヒドロフランがよかった。アルコール中水素化ホウ素ナトリウムでは,α,β-不飽和ホスホン酸エステルが生成することがわかった。
  • 浜田 秀昭, 松崎 武彦, 若林 勝彦
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 613-617
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェノールとアンモニアの液相反応によるアニリン合成について検討した。各種の酸またはそのアンモニウム塩のなかでは塩化アンモニウムのみが活性であった。また金属の塩化物はほとんどすべてアニリン生成活性を有していたが,とくに塩化スズ(II)の活性が大であった。塩基による被毒実験の結果から触媒は酸として働いているものと考えられる。反応の副生物としてはジフェニルアミンが検出されたが,アンモニアの量が少ないととくに多く生成した。反応系に水を添加するとアニリン生成反応が抑制されることが見いだされたが,その原因を調べたところ,主たる原因は希釈効果であるが,塩化スズ(II)の場合は水による触媒の被毒または分解の関与があることがわかった。各種反応パラメーターの変化の影響をもとにして反応の機構を検討したところ,まず律速段階としてフェノールと触媒とから活性中間体を生成し,つぎにこれがアンモニアで分解してアニリンと水が生成し触媒が再生されるという機構が示唆された。
  • 山本 統平, 山本 忠弘, 山元 俊文, 広田 正義
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 618-624
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α,α′-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)およびα,α′-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ACN)を用いてメタクリル酸メチル(MMA)の熱および光増感重合を行なった。熱重合速度(Rpth)は,1,1,1-トリクロロエタン < トルエン < ベンゼン < エチルベンゼン < 1,2-ジクロロエタン < クロロベンゼン < アニソール < ブロモベンゼン < o-ジグロロベンゼン < ベンゾニトリル < 1,2,4-トリクロロベンゼン < 1,1,2,2-テトラクロロエタン < ベンジルアルコールの溶媒の順に増大した。重合開始速度(Ri)は溶媒によりあまり変化しなかったのに対し,2kt/kp2値が大きく変化した。Rpthと光増感重合速度(Rpph)の間には比例関係があった。回転セクター法によりラジカル寿命(τ)をもとめ2kt/kp値を算出した。2kt/kp2と2kt/kpの値から2ktkpの値を算出した。kpは溶媒の種類によりわずかに変化したが,Rpの変化に比して小さいものであった。一方,2ktは重合系の粘度に反比例的に変化し,この変化によりRpの変化が生じることがわかった。
  • 鈴木 勉, 戸坂 圀夫, 林 治助
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 625-638
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    さきに行なった針葉樹エゾマツの蒸解と同じ条件で広葉樹ダケカバのSO2-MgSO4二成分法およびMgベースサルファイト法蒸解を行ない,脱リグニン,スルホン化,脱炭水化物という三つの蒸解反応を速度論的に解析して,両蒸解法の差異や蒸解反応同志の相互関係について検討した。
    各蒸解反応はすべて反応物の一次反応として解析された。二成分法における反応は,いずれも速度の点から速い反応と遅い反応とにわけられた。分離された脱リグニン両反応は,反応期間が対応するそれぞれのスルホン化とほぼ等遠度で進行するが,それぞれの脱炭水化物部分の反応とも期間だけでなく速度の点でもよく一致していた。一方,Mgベース法の脱リグニン,スルホン化では初期より後期の速度が速かった。この結果はエゾマツ蒸解におけるリグニンの反応パターンと類似しているので,全体の過程を初期と後期にわけて別々に取り扱った。後期の脱リグニンはスルホン化速産に支配されるが,初期には二成分法と同様に,脱炭水化物反応との拘わり合いは深いと考えられる。両法の脱リグニン速度を比較すると,初期には二成分法の方が速いが後期では逆にMgベース法の方が速かった。こうした速度の差異は,脱炭水化物の速度の差や脱炭水化物との拘わり合いの問題として説明される。脱炭水化物反応が脱リグニン速度を規制する役目をもつことは,この反応が木材細胞壁の細孔構造の発達を促し,それに関連してリグニンの反応性の向上にも貢献していることを暗示する。
    カバの蒸解結果とエゾマツのそれとを比較すると,いくつか興味ある差異が見られ,それについても議論した。
  • 松村 年郎, 樋口 英二, 谷村 顕雄, 山手 昇, 亀谷 勝昭
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 639-644
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らはさきにホルムアルデヒド自動計測器を開発し,これを用いて大気中のホルムアルデヒド濃度の実態を明らかにしてきた。その後,本計測器は二酸化窒素によって若干負の影響のあることが認められたので,今回,二酸化窒素の影響をできるだけ少なくするため吸収発色部の一部およびプログラマー機構を全面的に改めた計測器を製作するとともに本計測器によって得られる測定値を評価するため種々の性能試験を実施した。その結果,一酸化窒素,二酸化窒素,二酸化硫黄,オゾンおよびアルデヒド類の共存はほとんど影響は認められなかった。また,同一試料ガスによるくり返し性は変動係数で2.2%,種々の濃度のホルムアルデヒド試料ガスについて,クロモトロープ酸法と本計測器の同時測定を行なった結果,両者の測定値は一致し,本計測器はほぼ満足すぺき性能を有していることが判明した。
  • 保田 仁資
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 645-653
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    道後平野,大洲盆地および海上大気中の有機リン農薬を測定し以下の結論を得た。有機リン系の農薬は,7,8,9月に大気中の濃度が高く,大気中の残留指数はBHC類より小さく,ダイアジノン>IBP>MEPの順であった。平均存在量は使用量にほぼ比例し,IBP>MEP>ダイアジノンである。また変動係数は,IBP>MEP>ダイアジノンであり,三者ともに濃度の地域差は大きい。濃度的には,ダイアジノンとIBPにのみ相関があり,両者は同時に散布される傾向が強い。愛媛大学-松山工業高校,松山工業高校-北条市,北条市-大洲市の間の相関数が大きく,かつ,他の地点より濃度が低いことから他の地域から移動拡散してきたものと思われる。農薬の一斉散布では,IBP37.3μg/m3にも達するが約100時間で61ng/m3に濃度低下が起こった。海上大気濃度は,陸上大気濃度にくらべて低く,外洋ではおおよそ4ng/m3以下,瀬戸内海でもMEPを除いて陸上大気のバックグラウンド程度であった。
  • 杉村 徳子
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 654-656
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    In order to investigate the relationship between melting points and solubility behaviors of metal soaps, copper and zinc soaps of saturated straight-chain fatty acids containing both odd and even carbon atoms were prepared, and their melting points and critical solution temperatures in benzene were measured.
    In general, metal soaps of the saturated straight-chain fatty acids containing even carbon atoms gave higher melting points than those containing the next odd carbon atoms, similiarly to the phenomenon in fatty acids. The solubilities of copper and zinc soaps in benzene sharply increased at a certain temperature (the critical solution temperature), which was determined by the relation between log S and 1/T. The critical solution temperatures of metal soaps containing even carbon atoms were higher than those of metal soaps containing the next carbon atoms. From these results, the zigzag relationship between the melting point and the critical solution temperature was obtained. These show an upward trend for metal soaps containing even carbon atoms, and a downward trend for those containing odd carbon atoms.
  • 梅原 道子, 石井 実, 能村 光郎, 村松 一郎, 中原 勝儼
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 657-659
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Complexes of [CoX3(chta)], where X represents Cl, CH3COO, NCS and CN, and [CoCl(en)·(chta)]2+ have been prepared. The absorption spectra of the complexes in the visible, ultraviolet, and infrared regions are measured and compared with those of analogous complexes.
  • 石川 徳久, 松下 寛
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 660-662
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The potentiometric titration previously reported has been applied to the determination of weak acids with pKa 6-8. For the concentration level of 10-2 mol·dm-3, weak acids with Ka 10-6 - 5×10-9 are determined by Eq.(2), in which neither hydrogen ion concentrations nor response slope of glass electrode nor the procedure for linear plots are required for the calculation of concentration.
  • 金井 豊, 巻出 義紘, 富永 健
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 663-666
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Gas chromatographic retention behavior of bromochlorofluoromethanes (25 compounds) was measured on a Silicone DC 550 column or a Porapak Q column. The logarithm of the specific retention volume (Vg) on each column correlates linearly with the composition of halogen atoms in the molecule, whereas it does not correlate linearly with the number of hydrogen atoms. The log Vg correlates linearly with the boiling point and the molecular refraction for each series of halomethanes containing the same number of hydrogen atoms.
  • 鈴木 敏信, 三橋 啓了
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 667-669
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The coexistence of pyridine and triethylamine promotes the benzoylation of benzanilide. The effect of basicity and steric hindrance of substituted pyridines and aliphatic tertiary amines on the ease of the benzoylation has now been studied by high pressure liquid chromatography. More basic pyridine, if not sterically hindered, was found to be effective in promoting the benzoylation when the pKa of the conjugate acid of the coexistent aliphatic tertiary amine was higher than about 8.
  • 織戸 義郎, 今井 寿美, 丹羽 修一
    1980 年 1980 巻 4 号 p. 670-672
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The asymmetric hydrogenation of α-keto esters using the Pt-Al2O3 catalyst modified with cinchona alkaloid has been studied. The hydrogenation of methyl pyruvate in benzene containing a small amount of quinine with the catalyst modified by quinine gave (R)-(+)-methyl lactate in 86.8% optical yield. (R)-(-)-Ethyl mandelate was obtained in 83.9% optical yield by hydrogenation of ethyl benzoylformate with the catalyst modified by cinchonidine in benzene or diethyl ether without any additive.
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