日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1980 巻, 6 号
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  • 丸泉 琢也, 檜山 行雄, 仁木 栄次
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 787-791
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    実験室系NMR-NQR核二重共鳴法により,生化学的に興味のある6-アザウラシル,6-アザチミンや現在綱ガン剤として実際に投薬されているがフルオロウラシルとそのテトラヒドロフラン誘導体について14N-NQRを観測した。5-フルオロウラシルとその誘導体については14N-NQR線を分子内の各窒素位置に帰属した。また得られたNQRパラメーター(結合定数と非対称パラメーター)をTownes・Dailey理論により解析し,窒素原子のまわりの各結合電子密度の算出を行なった。また既報で述ぺたスペクトロメーターの改造についてその設計方針,製作の要点を述べた。
  • 加藤 泰良
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 792-796
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水を気相水素と表面酸素に解離させて活性化する機能を有する高活性なアルキルベンゼンの水蒸気脱アルキル反応用触媒を得ることを目的として,Rh/VO2触媒の改質を試みた。TiO2にVO2を担持したものに,ロジウム(III)アセチルアセトンを含浸させて調製したRh/TiO2-VO2,触媒(Rh:1wt%,Ti/V=95/5原子比)は,m-キシレンの水蒸気脱アルキル反応に高い活牲を示した。さらに,この触媒は,ヘプタンの低温(500℃)水蒸気改質反応にも高活性を示した。本触媒の水の活性化機構を,COあるいはCH4のパルス反応を用いて検討した結果,改質にあたって予想したとおり,水を気相水素と表面酸素に解離する型のものであった。そして,水の活性化を通じて形成された表面酸素の量は,改質前のRh1VO2にくらべ増大していた。さらに,COのパルス反応と組み合わせた起電力測定によって,前述の表面酸素の酸化能について検討し,改質後のRh/TiO2-VO2触媒では,改質前のRh/VO2触媒にくらべ,表面酸素の酸化能が噌大しているものと推定した。
  • 細坪 富守, 杉岡 正敏, 真田 雄三, 青村 和夫
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 797-802
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の金属イオンを担持したシリカ-アルミナ,シリカゲルおよびアルミナ触媒(Me-SiO2-Al2O3, Me-SiO2およびMe-Al2O3,Me=Ag+, Cu2+, Cd2+, Co2+およびNi2+)を硫化水素で前処理すると,Me-SiO2-Al2O3においてはクメンの分解反応, Me-SiO2およびMe-Al2O3においては2一プロパノールの脱水反応に対する触媒活性が増加することを見いだした。硫化水素による前処理で活性が増加した触媒はすべて硫化水素と親和性を有する金属イオンを担持したものであることから,硫化水素処理による活性促進効果においてもっとも重要な因子は硫化水素に対する金属イオンの親和力であることが明らかとなった。
    Me-SiO2-Al2O3上に吸着した硫化水素の赤外吸収スペクトルから,シリカ-アルミナ上に担持された金属イオンに弱く配位した非解離型の硫化水素吸着種が新たなBronsted酸点として作用することによって酸触媒反応に対する活性が促進されることが明らかとなった。また,Me-SiO2およびMe-Al2O3上においては,固体表面に担持された金属イオンに不可逆的に吸着した硫化水素が新たな酸点を形成し, 2-プロパノールの脱水反応に対する活性を増加させる。
  • 徳田 由雄
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 803-808
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化スズを主成分としたネサと呼ばれる薄膜はガラス,セラミック上に作成できる透明電極としてエレクトロニクスの分野で重要な素子である。この薄膜の作成可能温度範囲は大気中で400~800℃と広く薄膜作成自体は容易である。しかし,薄膜作成開始から作成完了までその薄膜作成温度を一定にたもつのはむずかしく,その温度変動によって作成された薄膜の化学的,物理的特性が異なってくる。アンチモンを微量(5%以内)含有した薄膜はアンチモンを含有しない薄膜にくらべ,電気抵抗率が減少すると同時に経年変化,温度特性にも影響を与える。
    本研究ではこの種の条件下で作成された薄膜の物性をできるかぎり一定にするプロセスの確立を目的とする。このため,自動的に薄膜作成温度を保持する定温炉と吹き付け噴霧条件を一様化したノズルを開発した。これらの装置を用いて作成したアンチモンを2%含有する薄膜についての最良の条件はつぎのようになる。吹き付け開始温度は730℃,初回エージングは300℃,3時間,ついで165℃,3時間のエージングを加える。0.2~2kΩの試料の経年変化は10年間で±5%以内にたもたれている。
  • 徳由 由雄
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 809-814
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化スズ薄膜は光透過性のよい安定な金属酸化物薄膜である。しかし,この薄膜は薄膜作成温度範囲が広く,薄膜作成温度によって薄膜の特性が異なる。電気特性の再現性のよい薄膜を得るには,十分温度調節した電気炉の中で薄膜作成温度730℃とし薄膜成分としてスズに対しアンチモンを2%含有する薄膜が適していることを見いだした。本報告ではこの酸化スズ薄膜の電気抵抗率の経年変化および温度係数の経年変化を長期間にわたって測定し薄膜成分についてさらに詳細な解析を行なった。また作成温度730℃の薄膜は,これ以下の温度で作成した薄膜にくらべて電気抵抗率,温度係数の経年変化が小さく安定である。
    薄膜の特性として面積抵抗率20Ωないし1.9kΩの範囲で抵抗値の変化率は耐湿,負荷,負荷寿命,温度サイクルなどの試験で±10%以内である。酸化スズ薄膜はその作成プロセスを適当に選べばきわめて安定性の高い透明導電性薄膜として利用することができることを見いだした。
  • 野崎 亨, 坂本 政臣, 山本 康則
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 815-820
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ランタン(III),ネオジム(III),サマリウム(III),ガドリニウム(III)およびホルミウム(III)のedta,edtaohおよびcydta錯体と鉛(II)との置換反応の初期速度式を, pH2.38~5.97,それぞれ過剰のこれら金属(III)イオンが存在するイオン強度0.1の水溶液中で求め,さらに各反応経路の活性化パラメーターを求めた。初期速度は,edtaおよびcydta系ではLa>Nd>Sm>GdvHo, edtaoh系ではLa>Nd≈Sm≈GdHoであった。配位子の影響はホルミウムではedtaoh>edta>cydta,それ以外ではedta>edtaoh>cydtaであった。これらの置換反応はすべて可逆反応で, MHX(n-4)-の生成速度定数の大きさはLa3+<Nd3+<Sm3+<Gd3+<Ho3+で, Eiger-Tamm機構による値よりずっと小さい値得られた。
  • 山崎 一雄, 室住 正世, 中村 精次, 湯浅 光秋, 渡会 素彦
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 821-827
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    中国で出土したガラス試料5種,日本で出土したガラス試紅10種,日本でつくられたと考えられるガラス玉など14種,合計29種の中に含まれている鉛の同位体比を表面電離質量分析計(日立RMU-6型)で測定した。これらガラスのうち28種は鉛を多く含む鉛ガラスであり,残り一種は微量の鉛を含むアルカリ石灰ガラスである。試料はフッ化水素酸と硝酸との混酸で分解し,鉛をジチゾン-クロロホルムを用いる溶媒抽出法により他の成分から分離した。この精製した硝酸鉛水溶液(鉛として0.5μgに相当)をレニウムシングルフィラメント上にのせてイオン源とした。同位体比207Pb/206Pb, 208Pb/206Pbの測定における変動係数は0.1~0.3%であった。
    日本出土の鉛ガラス試料で弥生時代のものの中には多量のバリウムを含み, 化学組成においても, 鉛同位体比においても中国の漢以前のガラス試料に近似するものが見いだされた。このことは漢以前の中国ガラスが日本に輸入され, 日本で溶かしなおしてガラス器物類に成形されたことを示すものと解釈される。ガラス試料の鉛同位体比を日本産17種, 中国産2種, 朝鮮産2種の方鉛鉱の値と比較したところ, 奈良時代8世紀に日本でつくられたと考えられている正倉院のガラス玉12種と, 江戸時代18~19世紀に佐賀でつくられたガラス管2種の値は日本の鉛鉱石が示す同位体比の範囲に入り, これらの鉱石を用いてつくられたと判断できる。
  • 鶴房 繁和, 大野 典子, 酒井 忠雄
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 828-832
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一塩基酸色素の2,6-ジブロモフェノールインドフェノール(DBIP)を用いて, 第四級アンモニウム塩のベンゼトニウムを他の第四級アンモニウム塩や, アミン,アルカロイド類の共存下において選択的に抽出定量する方法を検討した。抽出溶媒として1,2-ジクロロエタンを用い,pH5.6で抽出を行なうと,ベンゼトニウム以外の他の第四級アンモニウム塩やアミン類は,抽出率ぶ極端に下がった。したがって抽出pHを5.6に定めることにより,他の第四級アンモニウム塩やアミン,アルカロイド類の妨害なく,選択的にベンゼトニウムを抽出定量することができた。
    一方, 抽出溶媒にニトロベンゼンを用いると,1,2-ジクロロエタンにくらべ抽出率は高められるが,各オニウム化合物に対する至適pH領域に選択性はみられなかった。抽出して得られた有機相はDBIPの青色を示し,640nmに吸収極大を示す。この抽出種な,ベンゼトニウムとDBIPが1:1の組成比をもつイオン会合体であり,1×10-6~5×10-6 mol/l {(0.448~2.24)μg/ml}の範囲で直線関係が得られた。本法は感度もよく,呈色も安定であり,廃液中のベンゼトニウムの定量に応用したところ良好な結果が得られた。
  • 赤岩 英夫, 川本 博, 竹ノ内 敏一
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 833-836
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メチルトリオクチルアンモニウム=クロリド(R3R′NCl:商品名カプリコート)の液状陰イオン交換体としての性質を利用したモリブドケイ酸,モリブドリン酸およびモリブドヒ酸のクロロホルム抽出について検討した。抽出錯体の組成は(R3R′N)4SiMo12O40,(R3R′N)3PMo12O40および(R3R′N)3AsMo12O40であったが,後二者の場合水相の酸性度の増大によってその組成はそれぞれ(R3R′N)2HPMo12O40および(R3R′N)2HAsMo12O40へと変化することがわかった。モリブドケイ酸を生成させたのちに水相の塩酸濃度を3mol・dm-3以上とすれば,本実験条件でケイ素とリンの分離が可能であることを示すとともに,カプリコート抽出が鉄鋼申のケイ素の吸光光度定量法として応用できることを明らかにした。
  • 市村 国宏, 渡辺 庄司, 草川 公一, 越智 英夫
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 837-845
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-置換ジフェニルマレイミドの光閉環反応およびその蛍光挙動を調ぺた結果, (1)各種溶媒中でのStokesシフトが溶媒のETとよい直線にある, (2)光閉環反応速度および反応生成物は溶媒に依存する, (3)N-アルキル誘導体が強い蛍光を発するのに対し,p-電子をもつ残基がイミド窒素原子に直結した誘導体は無蛍光性である, (4)その蛍光強度は光反応性と平行関係にある, (5)強酸中ではプロトン付加に基づく蛍光消光が起こる,(6)光閉環反応速度が蛍光消光と平行して減少する,ことなどが認められた。さちに,弱酸性水溶液では光閉環反応の速度に変化はないが,光反応生成物の比率がpH依存性を示すことがわかった。これらの事実から,この種の化合物の励起一重項状態について論じ,4a,4b-ジヒドロフェナントレン誘導体を中間体とする光閉環反応の機構を提出した。
  • 市村 国宏, 渡辺 庄司, 上野 勝彦, 越智 英夫
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 846-851
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-メチル-α-フェニルマレイミドを溶液中で光照射したところ, trans-h-h, trans-h-t, cis-h-h型の三つの(2+2)二量体と唯一の(4+2)二量体であるcis, transoid, cis-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2:3,4-ビス(N-メチルカルボキシミド)がほぼ定量的に得られた。これらの生成物の比率は溶媒に依存し,とくに,(4+2)二量体は溶媒の極性とともに増加した。この化合物は, その構造から光化学的に禁止されている(4s+2s)反応によって生成する中間体を経由して得られると考えられる。実際に,熱的二量化によっても同一の(4+2)二量体が生成することがわかった。これらの結果から,その反応機構について論じた。N-(p-トリル)-α-フェニルマレイミドも同様な光二量化反応を起こすが,その反応効率はN-メチル体より低い。さらに,得られたシクロブタン誘導体の光および熱による開裂反応を検討した。
  • 石川 倶通, 渡辺 二郎
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 852-857
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    p-ビス(2-オキソオキサゾリジン-5-イルメトキシ)ベンゼン(PBOB)とジイソシアナート化合物との重付加反応によって,主鎖に2-オキサゾリジノン環を含むポリマーを合成し,フェノールおよびハロゲンとの錯体形成について検討した。PBOBはトリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌラートとヒドロキノンとを水酸化ナトリウムを触媒としてN,N-ジメチルホルムアミド中,還流下に反応して合成した。重付加反応は3種のジイソシアナート化合物を用いてトリエチレンジアミンを触媒とし,N-メチルピロリドン溶媒中48℃で行なった。ポリマーは高収率で得られ,m-クレゾールおよびN-メチルピロリドンに溶解し,ηinh=0.15~0,64(0.5g/100ml m-クレゾール,30℃)の範囲のものは膜形成能を示した。なかでも2,4-ジイソシアナトトルエンとPBOBとからはηinh=0.64のポリマーが得られた。生成ポリマーの構造は別途合成した5種の類似構造モデル化合物とのIRスペクトルの比較ならびに元素分析によって確認した。ここで得られたポリマーは2-オキサゾリジノン環をペンダント状にもつポリマーと同様フェノール,ヨウ素および臭素と錯体を形成する能力をもつことがわかった。ことにフェノールの場合には錯体中のフェノール量はポリマー分子量が高いものほど多くなった。
  • 笠岡 成光, 阪田 祐作, 山戸 秀夫, 西山 岳
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 858-864
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル(PVC)廃棄物からの活性炭の製造に対して,処理温度の低温化と収率Y(g(生成活性炭)/g(原料PVC))の向上を目的とした炭化および賦活条件の検討を表面積Sp(m2(生成活性炭)/g(原料PVC))=YSg(Sg:m2(生成活性炭)/g(生成活性炭))対Yの賦活曲線を求めて行なった。用いた試料は添加物のないPVC(粉末)と,これに主として銅や鉄成分(金属として0.1%)を添加したものならびに各種添加物を含む6種類のPVC廃棄物である。得られたおもな結果はつぎのとおりである。
    1)銅は空気雰囲気での炭化処理時にPVCの分解によって生成する塩化水素あるいはあらかじめ混入した塩化水素とのDeacon反応(4HCl+O2→2Cl2+2H2O)に対する触媒となって,オキシ塩素化・脱塩化水素反応を促進し,強固な炭素骨格の炭化物を与え,収率Yの向上に対してすぐれた効果を示す。
    2)添加物の有無によらず,スチーム賦活(H2O(10%)-N2)は低温度(700℃付近以下)・長時間よりも,800~900℃で短時間(1~2時間)処理の方が望ましい。たとえば,Sgが500~1000m2/gのものを得る収率Yの範囲は0.1%Cu添加物では15~25%,また廃棄物では10~18%である。
    3)生成活性炭のI2, UO22+およびPO43-の液相吸着量はいずれもSgに比例し,吸着能は良質の市販ヤシガラ活性炭と大同小異である。
  • 橋田 洋二, 田辺 文子, 松井 弘次
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 865-866
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The diazo-coupling reactions of benzenediazonium salt with several N, N-dialkylanilines have been investigated in nonaqueous solvents. The role of the solvent as a proton acceptor from the intermediate in the substitution reaction was demonstrated on the basis of base catalysis and hydrogen isotope effect. Neither significant base catalysis nor isotope effect was observed for the reaction in solvents of high basisity such as methanol and dimethyl sulfoxide. In a less basic solvent such as nitromethane, however, the reaction was strongly accelerated in the presence of base, i.e. pyridine, showing a considerable deuterium isotope effect. The dependence of base catalysis and isotope effect on the concentration of the substrate is also discussed.
  • 真壁 正孝, 大内 公耳
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 867-873
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    太平洋炭をエタノール処理し,生成物のピリジンおよびエタノール抽出量の増加により可溶化反応の進行を推定した。窒素圧を上げると可溶化が進み, エタノール密度が反応に影響しているものと思われる。温度を上げると420℃までは抽出量は増加し,ピリジン抽出量100%,ベンゼン抽出量約70%となるが,それ以上の温度では減少し,縮合反応によるコークス化が生ずる。400℃における反応時間の影響は,反応時間1時間でほぼ飽和に達する。生成物収量は400~420℃ぐらいでは100%以上になり,熱分解による脱水脱ガスを考慮するとエタノールが一部付加していることを示す。IR吸収は脂肪族C-H吸収が著増し,分子量は750まで下がり,軟化点も125℃ぐらいまで下がるが水素パーセントは約0.7%ぐらいしか増加せず,H/C比も0.05ぐらいしか増さない。ピリジン可溶分の構造解析をするとfa値は0.7から0.55まで下がり,σも0.4から0.7まで増加し脂肪族化が生じているが,同一分子量に対し単位構造あたりの芳香族環数は変化していない。以上の点からエーテルの分解による分子量低下と芳香環へのアルキル化により可溶化が進むものと考えられる。
  • 小野 重好, 千葉 忠俊, 真田 雄三
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 874-879
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オレフィン系炭化水素でアルキル化する石炭可溶化の新しい反応系を開発した。工業化を念頭において,この系では石油精製工場から得られる分解油を試剤に用いた。本報は炭種,温度,反応時間など種々な条件下で得られた結果について報告する。試料炭には,太平洋炭(C77.0%)と夕張新鉱炭(C86.6%)を用いた。接触分解油(bp300~441K)はオレフィン分43vol%,芳香族分13vol%のものを用いた。無触媒系においては,623K,5.1MPa,2時間で石炭の約半分がピリジン可溶となる。この場合,軽質油の臨界条件513K,3.8MPaを越えているので,オレフィンによる熱アルキル化と同時に軽質油の超臨界抽出効果により可溶化すると考えられる。可溶化反応の触媒にp-トルエンスルホン酸を用いた場合は,473K,1.9MPaといったより温和な条件で大部分の石炭が可溶化する。分解油中のオレフィンと石炭とのアルキル化反応は,この触媒によりいちじるしく促進されることが判明した。アルキル化反応が進行することは,モデル試剤としてα-オレフィンを用いた実験で確認したが,分解油を用いた場合がもっとも効果があった。V.P.Oによる平均分子量は,分解油可溶分で約400,ピリジン可溶分で約1000であった。
  • 森 憲二, 谷内 護, 川嶋 明廣, 大隈 修, 高橋 知二
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 880-884
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石炭の液化における石炭の溶解速度について考察を加えた。石炭の溶解速度は石炭の化学的構造,反応時の温度,圧力,溶媒の水素供与性,触媒などの反応条件に依存するほか,反応系が複雑であるため,他の研究者の実験結果と比較検討することが困難である場合が多い。
    本報告においては,反応の解析を容易にするため連続式完全混合型反応装置を用いて,温度393~450℃,圧力150kg/cm2Gで実験を行なった。反応速度式は一般には石炭の濃度に関する1次式として取り扱われているが,水素の効果を加えて総括溶解速度式が導かれた。総括溶解速度式は
    k =(CCoal0 - CCoal) / CCoal・(CHydrogen + A) ・θ
    のように表わされる。ここで,CCoal0およびCCoalは供給石炭濃度および反応後の石炭濃度,CHydrogenは石炭スラリーと平衡な水素濃度,Aは溶媒の水素供与性に基づく項,θは反応時間(h)を表わす。濃度はすべてmaf石炭%として表わされる。Morwell褐炭に対する溶解速度定kの温度依存性は ln k=-14.7×103(1/T) + 20.9であり,活性化エネルギーは29.3kca1/g-mo1であった。またAの値は9.90であり,CHydrogenに対してかなり大きい値を示した。
  • 長谷川 俊勝, 横山 晋, 真田 雄三
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 885-892
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石炭液化重質油の化学構造を元素分析,1H-,13C-NMRスペクトル,分子量の各分析値を用いて,電子計算機によって解析する方法を開発した。本構造解析法は芳香族環に置換する側鎖アルキル基,ナフテン環,さらに二つの芳香環を結ぶ橋かけ構造の可能性のあるあらゆる構造系をあらかじめ用意,磁気テープにファィルしておき,これから適当な側鎖,橋かけ溝造を検索して,重質油の化学構造を平均的な構造図式として解析するものである。
    重質油のモデル構造について,設定した構造式から化学構造値(C, H, HAR, HA, HB, HG, O, CAR, MW)の理論値を求め,それを入力データとして解析した結果はモデル構造とよい一致が得られた。また,石炭液化油オイル分の液体クロマトグラフィー分別のフラクション(Fr - M,D,T)について,この方法を適用した結果は,それぞれ約単環,二環,および三環芳香族化合物の構造式を得た。この構造式から求めた各構造パラメーターは既報の修正したBrown-Ladner法の結果ともよい一致を示した。
    この電算機法は,従来の解析法の結果が,構造パラメーターとして得られていたのに対して平均的化学構造式として解析できる点に特徴がある。今後,石炭液化プロセスにおける生成油のモニターに対して,化学構造のキャラクタリゼーションの方法として有効に適用できる。
  • 矢尾 正, 神谷 佳男
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 893-898
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アントラセン油,クレオソート油,および,これらの構成成分を溶媒として,各種芳香族化合物の溶解性能を比較検討するために,石炭の溶解反応を行なった。石炭の転化率は二環の芳香族化合物よりも三環の芳香族化合物を使用した方が少し大きくなること,水素供与性溶剤の存在によりいちじるしい増加を示すことが明らかにされた。テトラリンにナフトール,キノリンを共存させると,おそらく石炭構造の分解が促進されるために,石炭の溶解反応がすみやかになった。また,ジヒドロフェナントレン,オクタヒドロフェナントレンはテトラリンとくらべて水素供与性がすぐれていることが判明した。さらに,SRCの性状に対する溶媒の効果を検討したほか,アスファルテン,プレアスファルテンの性状の比較を行なった。
  • 持田 勲, 田原 勉, 岩元 研治郎, 光来 要三, 藤津 博, 竹下 健次郎
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 899-907
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    時代の急務となっている低石炭化度炭の高度有効利用を計る必要がある。このような石炭に対して効果的な液化溶剤の選択と,同炭の液化性を向上させる前処理法の探索を目的として,一連の非水素供与性溶媒を用いた同炭の抽出液化性を検討した。アッシュランド社製石油ピッチA240は,ピレンと同様に水素供与能のない溶媒であるが,高硫黄,高灰分を含有するウエスト・ケンタッキー炭の液化にさいして,ピレンよりもすぐれた溶媒であることがわかった。長期間の水浸漬や,短期間の水浴還流や希酸洗浄などの前処理を同炭に施すと,相当量の脱硫と脱灰が進行し,ギーセラプラストメーターで測定した熱流動性がいちじるしく向上した。これらの前処理により,ピレンを溶媒とする液化収率がきわめて増大し,同時に,A240を添加した共炭化性が大きく改善された。前処理前後の石炭の化学構造の変化をFT-IRスペクトルにより検討した。微溶融炭の液化および炭化機構と経済性について,適当な前処理法と添加溶媒の選定の観点から議論した。
  • 吉田 忠, 前河 涌典, 内野 洋之, 横山 晋
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 908-915
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    従来の1H-NMR法にかわって13C-NMRによる石炭液化油の構造解析法を検討する目的で,標準試薬の化学シフトデータと液化油の液体クロマトグラフィー分別物のスペクトルから各タイプの炭素の帰属を行なった。芳香族炭素は水素化芳香族炭素(Protonated),内部炭素(Bridge head),置換炭素(Substituted)の3グループに分割でき,これら炭素の化学シフト範囲はそれぞれ(115.0)~129.2ppm, 129.2~132.5ppm, 132.5~149.2ppmであった。これら炭素の面積強度比から,Brown-Ladner法の概念に基づいて各構造指数(fa, Hau/Ca, σ)の新たな算出法を導いた。この方法は仮定を必要としないので得られる各構造指数値はBrown-Ladner法よりも正確であり,さらに芳香族部分の骨格構造についてより詳しい構造的知見を与えた。またα位脂肪族炭素の帰属,定量が可能となり,その結果,液化油の芳香族部分の骨格構造のみならずアルキル側鎖やナフテン環などに関する知見も得られ,液化油分子の平均化学構造をより詳細に推察できるようになった。
  • 長谷川 義久, 前河 涌典
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 916-922
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    試料として宗谷炭(C 70.3%),住吉炭(C 75.5%),太平洋炭(C 76.7%),夕張炭(C 84.0%)を用い,反応時間を変化させて高圧水素化分解反応を行なった。反応生成物はヘキサンとベンゼンを用いて分別し,その分別成分の構造指数を1H-NMR,元素分析,分子量測定などの結果から算出し,その指数の反応の経過にともなう変化の追跡から,各試料炭の高圧水素化分解反応機構を解析し,比較検討した。
    全試料炭に共通した化学反応は構造単位問結合の開裂(解重合),脱アルキル,芳香族環の水素化分解であった。また基本構造単位の芳香族縮合環の小さな石炭,含酸素構造の多い石炭は芳香族環の水素化分解反応を受けやすく,また芳香族環の水素化分解反応は他の二つの反応よりも過酷な条件を必要とした。したがって,反応条件によってそれぞれの反応の進行状態が異なり,同一石炭からの同一溶剤分別成分であっても,反応条件が異なった場合には,異なった化学構造を有する化合物が得られた。
  • 吉川 彰一, 野村 正勝, 坂下 弘之, 西村 真琴, 三宅 幹夫
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 923-930
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    夕張炭に塩化亜鉛と他の遷移金属塩化物からなる2元系溶融塩組成塩(4:1モル比)を5wt%担持し,無溶媒で液化反応(400℃, 100kg/cm2(H2),3時間)を行なったところ,ZnCl2-CrCl3, Znc12-MoCl5の2元系溶融塩がZnCl2単独の場合よりすぐれており,既報のZnCl2-CuCl 2元系塩(4:1モル比)と比較できる結果を与えることがわかった。とくにZnCl2-MoCl5の塩はガス収率を下げると同時にヘキサン可溶分の収率を上昇させる点ですぐれていることがわかった。これらの2元系塩存在下でのフェナントレンの水素化分解も併わせて検討した。一方,ZnCl2-KCl-NaCl(3:1:1モル比)を夕張炭と等重量用いて無溶媒で水素化分解すると,等重量のZnCl2を使用した場合にくらべヘキサン可溶分の収率でやや上回る程度であるが,ガス生成やコークス生成を抑えるという点でより好ましいことがわかった。上記3元系塩は反応温度の400℃で,ZnCl2にくらべきわめて粘度が低く,また熱伝導性もよいことから,これらの諸特性が夕張炭液化にその適度な水素化分解能とともに相補的に働いたためと考えられる。太平洋炭から製造したSRCを等重量のZnCl2やZnCl2-KCl 2元系塩(3:2モル比)とともに水素化分解(400℃,100kg/cm2(H2),3時間)したところ,ZnCl2-KCl 2元系塩を使用するとガス生成とコークス生成をともに抑えヘキサン可溶分をほぼ71%の収率で与え,本反応にすぐれた効果を示すことがわかった。
  • 森田 穣, 橋本 孝雄, 佐藤 志美雄, 豊嶋 弘幸, 伊藤 敏雄
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 931-938
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究は石炭直接液化の技術の改良を試みたものである。新たに考案した能率的反応器と,これに適合した高活性ディスポーザブル触媒を開発し,従来1時間以上必要であった反応時間を短縮する可能性について検討した。1943年工業化に成功した阿吾地工場のプロセスで用いられた水酸化鉄-硫黄触媒について検討を加え,触媒量の増加が大きな影響があること,酸化鉄の活性はFe(OH)3+S → Fe2O3+S → Fe3O4+S → FeO+Sと還元がすすむにつれて,触媒活性が変化することを見いだした。その結果,反応率(Fe(OH)3+S)≧(Fe3O4+S)≧(Fe2O3+S)>(FeO+S)オイル分率(FeO+S)>(Fe3O4+S)≧(Fe2O3+S)>(Fe(OH)3+S)の順となった。
    さらに各種の鉄鉱石と硫黄,銅,亜鉛,鉛の鉱石と硫黄の組み合わせについて,ディスポーザブル触媒としての活性を比較した結果,いずれも高い活性を有することがわかった。また鉄鉱石中,赤鉄鉱であるMBRについて,触媒量の生成物におよぼす影響について反応を行なった。その結果,触媒量を増加することによって液化率を増加させることができ,反応温度450℃,反応時間10分程度で反応率は90%以上でほぼ一定となった。生成粗油はほとんど300℃以下の中軽油留分となり,短時間反応の可能性を実証した。
  • 吉川 彰一, 三宅 幹夫, 鋤柄 正幸, 野村 正勝
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 939-944
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Sternbergらによって提案された還元的アルキル化法の石炭のアニオン化反応を,テトラヒドロフラン還流下で溶融金属カリウムによる反応とすると,電荷移動剤を用いずしかも短時間で夕張炭に対し従来法に匹敵する反応が行なえることが明らかとなった。金属カリウム量を増したり反応時間を長くしたりするとアルキル化炭の導入アルキル基数や可溶化率が増加する傾向を示した。Brown-Ladner法によって算出したブチル化夕張炭の可溶部分の構造指数も本法の有効性を支持する結果を与えた。石炭のかわりにナフタレンを反応させ,その生成物をGC-MSによって分析した結果などから,アルキル化石炭がTHF分解物によって汚染されている可能性は少ないと推察された。
  • 田中 虔一, 奥原 敏夫, 宮原 孝四郎, 青村 和夫
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 945-950
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Co, Ni, Fe, Ru, Rh, Pdなどの金属を担持した炭素を水素化すると400℃付近からメタンを生成してくる。いずれの触媒についてもメタン生成速度は反応が進むにつれて急速に低下する。この活性低下の原因は生成物であるメタン(CH4)が触媒の活性点上で分解し炭素を析出するためであることがわかった。Boudouard反応(213CO→13C+13CO2)や13CH4の分解により触媒表面にあらかじめ13Cを析出させておき水素化を行ない,生成してくるメタン中の13CH4の割合を測ったところ,反応初期にはほとんど13CH4のみ生成してくることがわかった。このことは,活性点の囲りに炭素が析出さることを示している。
    実際,析出した炭素はメタンの生成速度のみならず,H2-D2平衡化反応をもいちじるしく阻害する。炭素に担持した触媒が炭素の析出によって被毒されるというおもしろい現象が起こる理由は,メタンの生成反応の律速が固体炭素から活性点への炭素の供給(拡散)であることによる。すなわち反応初期には活性点上にはほとんど炭素は蓄積していない。しかるに気相にCH4が増えてくると水素を解離できる活性点上でCH4も効果的に分解する。活性点上の炭素を除去する速さは一定であるが,析出する速さはCH4の増加にともなって大きくなるため,活性点は急速に炭素でおおわれるようになり,失活する。炭素の水素化によるメタン生成の中間体はCOのメタネーション反応の中間体と同じと考えられる。したがって,炭素の水素化で炭素数の多い炭化水素を得るには,低温で活性点に炭素が供給されることが必要といえる。
  • 玉井 康勝, 富田 彰, 宝田 恭之
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 951-958
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    新夕張炭,太平洋炭,大同炭を用いて,液体アンモニア(以下液安と記す)処理中の石炭粒子の挙動および処理前後の石炭表面の観察を行ない,また液安処理した石炭の粉砕性を検討した。
    石炭は炭種によらず液安浸潰中に亀裂を生じ,新夕張炭では石炭の一部に自然破砕が起こり,液安蒸発時には残りの部分も破砕された。太平洋炭では亀裂は生ずるものの,液安浸漬中および蒸発時にも破砕は起こらなかった。亀裂の生じかたは炭種によって異なり,太平洋炭に生じた亀裂の幅は新夕張炭に生じたものより大きいが,亀裂の生ずるヒン度はむしろ少なかった。液安処理によって生ずる亀裂の多くは,もともと石炭中に存在する微少亀裂が拡大したものであった。また亀裂はビトリニットでは層に対して垂直に,フジニットでは層と平行に生ずる場合が多く,しかも組織の内部において観察された。
    液安処理した石炭の圧縮破壊強度は,新夕張炭では未処理炭の約1/4であり,太平洋炭では約1/2であった。処理炭は未処理炭にくらべて粉砕されやすくなるが炭種によってその程度は異なり,新夕張炭では200メッシュ程度までの粉砕において顕著な差がみられ,太平洋炭では32メッシュ程度までの粉砕において差がみられた。新夕張炭において200メッシュ以下に粉砕するに必要な動力は,未処理炭では34kWh/t,処理炭では25kWh/tであった。
  • 富田 彰, 宝田 恭之, 玉井 康勝
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 959-965
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石炭の接触ガス化においては,石炭と触媒との良好な接触が望まれる。これを実現するための一手段として,石炭をニッケル塩の水溶液の存在下で0.02mm以下に粉砕し乾燥する担持方法を検討した。新夕張炭にこの方法でヘキサアンミンニッケル(II)炭酸塩を担持して乾留したところ,粘結性のいちじるしい低下が認められ,ガス化に好都合であることがわかった。ニッケルは約60Å程度の微粒子として均一に分散しており,従来の一般的な含浸法のものにくらべて分散状態ははるかに良好であった。また,水蒸気ガス化に対する反応性を急速加熱の可能な熱テンビンを用いて調べた。原炭を単に粉砕しただけのものに対して,ニッケルを0.2, 0.5, 1.7, 7.5%添加したものの750℃における反応速度定数は,それぞれ2.0, 2.9, 3.6, 5.7倍となった。原炭と,従来法で1.7%のニッケルを添加したものとの比が約1.4倍であることを考えると,この方法によって添加した触媒の効果はかなり大きいものであることがわかる。また,7.5%添加したものの反応速度は,850℃における原炭の反応速度と同じ程度であった。触媒の添加を石炭の粉砕時に行なっても,粉砕後に行なっても大きな違いはなかった。石炭の粒径は小さいほどよいが,1~2mmのものを0.1mm程度にするだけでもかなりの効果が認められた。
  • 佐々木 和夫, 九内 淳堯, 妹尾 菊雄, 河野 之伴
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 966-973
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
     溶融炭酸塩を反応媒体に用い,二酸化炭素と炭素から一酸化炭素を生成する反応を700℃付近で行なわせることを試みた。それにさき立って数種の炭酸塩と炭素との反応を試みたところ,いずれの塩でも同温度での単純な固/気反応よりはるかに速い速度で一酸化炭素発生がみられた。反応はM2CO3+C=M2O+2COと考えられるが,この反応は熱力学的には自発反応ではない。しかし.炭酸塩そのものの熱分解が既往の熱化学値以上に進行するので,熱分解で生じた二酸化炭素が一酸化炭素に転化する経路をとるものと考えられる。
     三元アルカリ金属炭酸塩の融体中に底部から二酸化炭素を供給し融体中に分散している炭素粒と反応させることにより気体二酸化炭素からの連続転化実験も行なった。容易に定常状態が得られるので,単純な速度解析が可能であり,擬一次速度定数を決めることができた。本報の結果は,実用反応としてまだ不十分であるが改善の可能性が大きい。
  • 横山 伸也, 宮原 孝四郎, 田中 虔一, 田代 襄, 高桑 功
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 974-980
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    含浸法により炭酸カリウムを担持した活性炭試料を用いて,二酸化炭素の一酸化炭素への還元反応を行ない,反応活性が反応進行中に表面に捕捉された酸素量に比例して大きくなることを見いだした。X線マイクロアナライザーによる観察から推定したカリウムの表面濃度は,水に溶出するカリウム量に比例した。他の炭酸塩について同様の解析を行なった結果,アルカリ金属による活性の差異は,表面捕捉酸素量に比例していることが明らかになった。さらに,低温域における二酸化炭素の吸着の挙動,炭素-13をトレーサーに用いた炭酸カリウムを含む炭素の昇温実験,およびXPSの測定結果などから,標記反応が(1)~(3)式で説明されることがわかった。
    M2CO3=M2O+CO2 (1)
    M2O+C=2M+CO (2)
    2M+CO2=M2O+CO (3)
    (M:アルカリ金属)
    すなわち,試料を740℃で排気する前処理にさいしての,アルカリ金属炭酸塩の分解(1)で生じたM2Oの還元(2)と酸化(3)のサイクルによってC+CO2=2COの反応が捉進される。
  • 菊川 伸行, 牧野 光男, 丸山 勝久, 古田 毅, 堀江 典郎, 木村 英雄
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 981-989
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
     熱プラズマの超高温を利用して石炭などの重質炭化水素資源からアセチレンを製造する技術の開発をめざし,とくに,従来問題であった固体試料とプラズマフレームの接触効率の向上を目的として,三つのプラズマトーチを組み合わせた新しいプラズマ反応装置を製作した。これを用いて,アルゴンまたはアルゴン-水素プラズマにより,太平洋炭および赤平炭のガス化実験を行ない, 1)アセチレンの最高収量は,赤平炭の場合,34g/kWhと前報の2倍以上の値を得ることができた。このときのアセチレンへの炭素変換率は15%,全ガス中のアセチレン濃度は5.5%であった; 2)乾燥炭による比較実験から,石炭中の水分は全体として水性ガス反応の形で反応に関与していることを明らかにした; 3)一酸化炭素への酸素変換率は炭種に依存せず,比エネルギーと直線関係にあることを見いだした。この量は石炭がプラズマから受け取ることのできたエネルギーを反映するものとして,ガス化反応の一つのめやすになると考えられる; 4)生成物収量と変換率の放電電力依存性を明らかにし,また,プラズマガスへの水素添加効果を明確に示すことができた; などの結果が得られた。
  • 宮寺 博, 小山 俊太郎, 五味 憲一, 平戸 瑞穂
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 990-998
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石炭と重質油のスラリー原料を一段の流動層で酸素,スチームにより加圧ガス化し,クリーンな燃料ガスを製造するハイブリッドガス化プロセスのガス化反応特性を内径80~120mmの外熱式高圧ガス化装置と熱テンビンによって検討した。その結果,スラリー熱分解工程では温度,圧力の上昇により熱分解反応のみならず水蒸気分解や水素化分解反応も促進されるが,チャー部分酸化工程の生成ガス組成はCOシフト反応の平衡によって支配されることが明らかになった。
    一段流動層内におけるガス化反応をスラリー熱分解とチャー部分酸化の二段に分割し,熱分解ゾーンの必要熱量を部分酸化ゾーンで発生する高温のガスとチャーの顕熱によりまかなうという単純化したモデルにより,内熱ガス化条件と生成ガス収率,熱効率などを試算した。その結果,熱分解工程の総括反応熱(吸熱)は高温になるほど大きくなるが,圧力が高くなると水素化分解の寄与により低下し,全体の熱効率(生成ガス発熱量/原料発熱量)はスラリー熱分解ゾーンの温度750~800℃で高圧にするほど高くなることが明らかになった。本検討結果の検証のため,内径300mmの流動層ガス化炉で,3kg/cm2・Gの圧力下で内熱方式のガス化実験を実施した結果,計算値と比較的よい一致を見た。
  • 鈴木 俊光, 伊藤 真樹, 渡部 良久, 光藤 武明, 武上 善信
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 999-1005
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    重質油からオレフィンまたは高カロリーガスを得ることを目的として,イラニアンヘビーおよび大慶減圧残油の熱分解を行なった。石英ガラス製の反応管に450℃前後の低温分解部と700~800℃の高温分解部を設定し,試料を白金製ボートに入れて低温分解部に挿入し,低温熱分解生成物(主として分解油)をアルゴン気流により高温分解部へ送り二次分解させる,二段階熱分解法を試みた。同一反応管を用いて試料を直接高温で分解する方法と比較し,生成した炭化水素ガスの総収量には変化が見られなかったが,エチレン収量が1.5~1.8倍になるなどオレフィンの収量が増加し,原料油に対するエチレン収率はイラニアンヘビーで15%,大慶では26%という高い値を示した。分解残留物は,低温分解部の温度を430~440℃にたもてばほとんどコーキングが起こらなかった。低温分解部の温度を500℃付近まで上げるとエチレン収率が低下するとともに,残留物が完全に炭化し,逆に430℃以下では分解速度がきわめて遅くなるため,できるだけエチレン収率が高く,残留物の炭化が少ない条件として440℃が低温分解部の最適温度であった。
  • 森田 義郎, 小山 薫, 中島 至, 菊地 英一
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 1006-1011
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニッケル-ドロマイト触媒流動層を用いた残油の部分酸化における水蒸気の添加効果について常圧下,900℃の層温度で検討した。水蒸気の添加にともないガス収率は増加し層温度900℃,水蒸気比25%,触媒量270gにおいてアラビアンライトの常圧残油をほぼ完全にガス化し平衡組成に近いガスが得られることが見いだされた。脱硫率は水蒸気添加の影響をほとんどうけなかった。水蒸気を添加した場合,初期の高ガス化活性および高脱硫能力はそれぞれカルシウム硫化度25, 55%まで低下せず,水蒸気を添加しない場合にくらべて活性,能力の維持される時間が延長されることが明らかとなった。また原料油の重質化にともない収率は減少したが,水蒸気の添加効果は一定であった。
  • 上牧 修, 藤川 昌久, 久郷 昌夫
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 1012-1019
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    間接脱硫プロセスにおけるブレンド用の低硫黄残油の製造を目的として,温和な脱水素活性を有するうえ,減圧残油中の硫黄を硫化鉄として接触剤自身に直接固定化が可能な鉄鉱石を用いて減圧残油の接触分解反応を行なった。その結果,鉄鉱石は原料油の分解で生成した水素で還元された活性状態となって残油の分解を促進するとともに,原料油中の硫黄分を硫化鉄として固定することによって,軽質,低硫黄の液状油を高収率で生成することを認めた。さらに示差熱分析装置で種々の鉄化合物の硫化,還元反応を行ない,鉄鉱石の硫化反応の促進には水素の存在が非常に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
  • 鈴鹿 輝男, 井上 幸夫, 相澤 史朗, 尾崎 博己
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 1020-1027
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    天然鉱石を主体として調製した触媒を用いて重質油分解に関する検討を行ない,ラテライト触媒がつぎのような特徴を有していることを見いだした。(i)ラテライト触媒を用いて重質油を分解すると,他の触媒に比較してコーク収率が高い。(ii)コーク付着ラテライト触媒を窒素気流中で加熱すると,一酸化炭素および二酸化炭素を含有するガスを放出し,触媒中の酸化鉄は容易に還元される。ラテライト触媒の上記特性を重質油分解プロセスに応用するため以下の検討を行なった。1.22~8.75wt%のコークを付着させた触媒を窒素気流中で加熱すると触媒中の酸化鉄はコーク付着率に応じて還元された。その還元された触媒とスチームを反応させることによりスチームアイアン反応によって水素が発生することを確認した。また,触媒上のコークを部分燃焼し,コークに対する酸素の比率を制御することによって,酸化鉄の還元と同時に重質油分解に必要な熱量を得ることが可能であることが判明した。これらの結果に基づいて,重質油を分解すると同時に水素を発生させるプロセスを提案した。
  • 辰巳 敬, 小山 茂樹, 鳥巣 毅, 冨永 博夫, 鈴木 守夫, 加藤 順
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 1028-1036
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カフジ常圧残油およびそれをNiO-MoO3-Al2O3触媒を用いて水素化精製したときの脱窒率48%の生成油を選んで,精製前後における窒素化合物のタイプ別分布の変化を調べた。生成油の主成分であるマルテンでは窒素含有量は半減した。とくに,ピリジン,キノリン類やアミド類の減少がみられるが,ピロール,インドール類はほとんど変化していない。これは窒素化合物の触媒の酸点への競争吸着が脱窒素反応速度を支配しているものとすれば考えやすい。これに対し,留出油留分では窒素含有量の大幅な増加,すなわち,ピリジン,キノリン類の顕著な増加と,ピロール,インドール類の増加がみられる。これは,脱窒素されないまま,水素化分解をうけて重質留分から留出油に移行した部分が少なからず存在することを示す。しかし,マルテンと留出油の両者を総合すれば,ピロール,インドール類はほとんど変化しないのに対し,ピリジン,キノリン類などの塩基性窒素やアミド類はかなり減少する。生成油中のアスファルテンは,その量は半減したものの,窒素および硫黄の含有量はほとんど変化がみられなかった。
  • 中村 宗和, 白戸 義美, 高橋 弘光
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 1037-1046
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    重質油の接触水素化処理によるアスファルテン分解反応の特徴について,原料油および生成油の性状,化学構造,反応速度論的見地などから検討した。重質油の代表的油種として,カフジ減圧残留物油,アサバスカ・ビチューメン,ボスカン原油の3種を選択し,その接触水素化処理前後における一般性状(アスファルテン,バナジウム,ニッケル,硫黄などの含有量,比重,粘度など)および各種機器分析(薄層クロマトグラフィー,ゲルパーミエーションクロマトグラフィー,1H-および13C-核磁気共鳴など)による化学構造およびその変化を比較検討することにより,アスファルテン分解反応の特徴を明らかにするとともに反応機構について考察した。重質分から軽質油分に転換するアスファルテン分解反応においては,アスファルテンの単位構造内の化学構造が大きく変化せず単位構造数(重合度)が減少する低分子化が進行することが示された。その低分子化は,金属を多く含有しているボスカン原油の場合,その金属原子の除去反応と関連している可能性が示された。動力学的には,アスファルテン分解反応は,二次式で整理され,またアスファルテンを含む重質油全体の軽質化は,見かけの速度式として一次式の結合形で表示され,ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いた解析法が有用であることを明らかにした。
  • 若林 孟茂, 小口 勝也, 中山 哲男, 中村 悦郎
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 1047-1053
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カナダ国アルパータ州コールドレーク産オイルサンド重質油の水素化分解反応を,水素流通式オートクレーブを用いて行なった。触媒はコバルト-モリブデン-アルミナ,反応温度は375~435℃,水素圧力は70~200kg/cm2で,反応条件の影響および速度論的検討を行なった。反応温度の上昇および触媒量の増加にともない,分解,脱硫,脱窒素,および脱金属反応は促進された。しかし水素圧力の影響は複雑であり,圧力が高くなるにつれて,常圧残留物の分解率および分子量の減少率は低下するが,アスファルテンの分解,脱硫などの反応は促進される。これらの結果は水素化分解反応の主反応を熱分解と考えることによって説明された。常圧残留物の分解,脱硫,脱金属反応について速度論的検討を行なった結果,反応次数はそれぞれの濃度に関して,擬一次,二次,擬一次,活性化エネルギーは37,26,22(バナジウム),29(ニッケル)kca1/mo1であった。
  • 西崎 寛樹, 吉田 邦夫, 遠藤 一夫
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 1054-1059
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレンを合成するさい副生するアタクチックポリプロピレン(APP)を流動層により熱分解して油を回収し,燃料油として再利用することを試みた。砂粒子を流動化した中でAPPを部分酸化し,その熱によって熱分解を進行させる。したがって供給する流動化ガス中の酸素濃度は生成する油の収率と性状に大きな影響をおよぼすので,各種の濃度ガスによる測定を行なった。入口の酸素濃度が高いとき,流動層内で消費されず残存する酸素は生成油の酸化と熱分解をフリーボード部で行ない,生成油の低分子化が促進されることが装置内の温度,濃度分布の測定によって明らかにされた。
  • 亀山 秀雄, 吉田 邦夫
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 1060-1065
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らは系統的に熱化学分解法による水素製造反応サイクルを検索するための計算機プログラムを開発し,それを用いて三つのサイグル,UT-1,2,3を提案した。
    この中のUT-3サイクルはつぎの四つの反応からなり立っている。
    CaBr2 + H2O → CaO + 2HBr (1)
    CaO + Br2 → CaBr2 + 1/2O2 (2)
    Fe3O4 + 8HBr → 3FeBr2 + 4H2O + Br2 (3)
    3FeBr2 + 4H2O → Fe3O4 + 6HBr + H2 (4)
    現在,このプロセスを工業化するのに必要な項目に関する一連の実験的検討を行なっているが,ここでは反応(3)の速度論的研究について報告する。
    固体反応物の四酸化三鉄の粉末は,シリカゾルと混合して直径10mmの球に成型され,焼成される。一方,気体反応物の臭化水素は工業的規模のプロセスが実現したときつねに水蒸気で薄められて低濃度であることが予想されるので,故意に4.8~14.3mol%の低濃度に水蒸気で希釈して用いられた。反応は界面反応であることが見いだされ,未反応物の核が反応進行とともに縮少していくことが観察されたのでコアモデルによる速度式が導出された。反応界面積をa(cm2),固体のモル密度をCFe3O4(mol/cm3),ガスモル濃度をCHBr(mol/cm3)とすると,反応速度rS(mol/s)はつぎのように表わされる。
    210~255℃で,rS=(38.5)a(CFe3O4-1.50×10-3)CHBr
    255~300℃で,rS=1.78×10-8exp(13.0/RT)a(CFe3O4-1.50×10-3)√(CHBr)
    また,反応は生成物層内拡散律速で進行することが見いだされた。
  • 川原 徹, 中嶌 賢二, 佐藤 佳子, 亀山 秀雄, 吉田 邦夫
    1980 年 1980 巻 6 号 p. 1066-1071
    発行日: 1980/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石炭の低カロリーガスを用いて複合サイクル発電を行なうとき,湿式脱硫によらず高温で硫化水素を除去することができれば,燃料ガスの顕熱を損失せず,一層発電の熱効率の上昇を期待できる。本研究では,単に高温で脱硫できるのみならず,容易に再生して循環再使用できるプロセスの開発を目指して,つぎのサイクルを提出した。
    BaCO3 + H2S → BaS + CO2 + H2O (900~1200℃)
    BaS + CO2 + H2O → BaCO3 + H2S (80℃)
    ここで,2段目の再生反応は水溶液状態での反応であり,二酸化炭素は煙道ガスなどから調達することを考えている,それぞれの反応が副反応を生ずることなく,すみやかに進行することが確認された。さらに通常用いられる酸化カルシウムによる脱硫と比較した結果,低濃度の硫化水素に対する反応性にすぐれ,またよりすみやかに再生が可能であることが見いだされた。同一試料で脱硫・再生のサイクルをくり返した結果,脱硫容量を低下させることなく,十分に循環再使用できることがわかった。
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