日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1981 巻, 3 号
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  • 遠藤 邦彦, 岡松 浩, 天田 英輔, 嘉村 祐一
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 317-320
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    亜硝酸t-ブチルとその同位体種のマイクロ液スペクトルを8.5から32GHzの領域で帰属し,つぎの回転定数を得た。

    得られた回転定数に対して最小二乗法を適用し,分子の構造パラメーターとしてつぎの値を得た。

    そのさい,C-H=1.097Å,C-C=1.528Å,∠HCC=109.5°,および∠CCO=107.O°を仮定した。ここに帰属された回転異性体の構造は末端のN=O結合とC-O結合がたがいにトランス位にあるものである。この構造をマイクロ波分光法によって決定された他のX-ONO分子と比較すると,結合角∠XONは下記に示す順に増加しておりONO基の末端窒素原子と結合基Xの問の立体効果の影響がかなり大きいことが示された。

    HONO<CH3ONO<CH3CH2ONO<(CH3)3CONO
  • 荻野 圭三, 塚本 宏之, 山辺 潔, 高橋 浩
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 321-325
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    活性炭を硝酸,塩酸-フッ化水素酸,空気,酸素,オゾンおよび水素でそれぞれ処理し,フェノールについて平衡吸着実験を行なった。さらに活性炭の表面化合物の中の酸性表面酸化物を定量して,活性炭の表面化学構造とフェノールの吸着特性との関係について検討した。
    フェノールの吸着量は,
    H2-HCI,HF>H2-未改質>HCl-HF>O3>O2>未改質>1NHNO3>4N HNO3>Air>13.2N HNO3の順に減少し,必ずしも表面積や細孔容量などの物理的性質とは関連していなかった。活性炭の酸性表面酸化物は,硝酸,空気,酸素,オゾンで処理すると増加し,逆に水素処理すると減少する傾向にあった。さらに,フェノールの吸着量と活性炭の酸性表面酸化物との関係を見ると,硝酸や空気で処理した活性炭は,他の活性炭にくらべ活性炭表面に酸性表面酸化物が多く導入され,活性炭の表面の親水性が増したためフェノールの吸近着量が減少した。一方,水素処理活性炭の場合は,酸性表面酸化物が還元,除去され,活性炭表面の疎水性が増したためにフェノールの吸着量は増加した。
  • 高宮 信夫, 高野 道雄, 宮田 信郎, 庄司 宏
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 326-329
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    従来から近液相酸化触媒として知られている各種のポリ(金属フタロシアニン)を用いて,2-ブタノールの脱水素反応を行ない,これらの触媒活性について検討した。活性は,金属種によって異なり活性の大きなものから,ポリ(白金フタロシアニン),ポリ(亜鉛フタロシアニン),ポリ(コバルトフタロシアニン),ポリ(鉄フタロシアニン) ,ポリ(銅フタロシアニン),ポリ(ニッケルフタロシアニン)の順となった。また単一型ポリ(金属フタロシアニン)中で,ポリ(白金フタロシアニン)以外で最高活性を示した亜鉛にニッケル,鉄,コバルト,銅を混合した混合型ポリ(金属フタロシアニン)では,すべての混合型ポリ(金属フタロシアニン)は,ポリ(亜鉛フタロシアニン)より高活性を示し,2種の金属による混合効果が認められた。さらにポリ(白金フタロシアニン)と自金(シリ力ゲル担持)との活性比較では,エチルメチルケトン収率,見かけの活性化エネルギーともポリ(白金フクロシアニン)の方が優り,白金(シリ力ゲル担持)よりも有効な触媒であることが認められた。
  • 須崎 慎三, 岡崎 進
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 330-335
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    TiO2およびTiO2-SiO2の表面を種々の濃度のフッ化水素酸水溶液で処理し,処理前後の試料の酸量,酸性質,触媒活性の変化を検討した。各試料とも1.0wt%のフッ化水素酸水溶港で処理した場合,クメン分解およびトルエン不均化反応に対する活性が最高であった。つぎにピリジン吸着のIRスペクトルを測定したところ,TiO2,TiO2-SiO2はLewis酸のみをもつごとが確認され,適度な表面フッ素化によりBr6nsted酸点が発現した。触媒のフッ素含有量に対する酸量,活性は両方ともに最大値が存在した。反応後の触媒のフッ素含有量の減少率はTiO2-SiO2の場合よりもTiO2の場合が高く,活性低下の顕著な試料ほど高い減少率を示した。処理されたTiO2-SiO2の酸強度分布は,弱酸点が減少するのに対し,強酸点が増加する傾向が見られた。
  • 江口 浩一, 山添 昇, 清山 哲郎
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 336-342
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    各種12モ玖ブドリン酸塩の加熱脱水挙動と熱安定性をDTA,TG,およびX線回折により検討した。各塩は加熱により300℃以下で脱水を完了する。脱水にともなう構造変化を追求した結果,各塩の構造としては既知の3種の構造,すなわち,高含水量型(I),中含水量型(II),低含水量型(III)の瞭かに,新たな低含水量型構造(X)および無定型相(A)が存在することを見いだした。これらの構造的知見ヒ華づけば脱水挙動は三つのグループに分類される。すなわち,グループ1(K+,Rb+,Cs+,T1+,NH4+の塩) .IIIの構造のものとして得られ,加熱によりフッ石型脱水を起こしてつねに単一の構造を維持する;グループ2(Li+,Na+,Ag+の塩)Iとして調製され,2段の脱水によりI→II→IIIと変化する;グループ3(酸,アル力リ土類金属塩,多価遷移金属塩)Iとして調製され,2段の脱水によりI→II→X→Aと変化する。より高温においての熱安定性も各塩で異なることがわかった。すなわち,多価金属塩や酸,NH4塩は400~450℃で不可逆的に分解するのに対し,アル力リ金属塩,Tl塩Ag塩は500~700℃で融解し,融点と力ウンターイオン半径の間の相関が確認された。比表面積も上記の熱的構造変化に対応して各塩で異なった温度依存性を示すことがわかった。
  • 清水 紀弘, 野崎 文男
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 343-348
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Fe2O3-K2O-Al2O3触媒とFe2O3-Al2O3触媒の活性を比較した。その結果,K2Oを3wt%程度含浸させたFe2O3-K2O-Al2O3はFe2O3-Al2O3よりも活性が高く,しかも400℃以上の温度域において副生してくるNH3量がわずかであるという特徴があることがわかった。そして触媒へのNO吸着量の比較およびIR吸収スペクトルによるNO吸着種の検討などから,NO-H2反応に対するFe2O3-Al2O3触媒へのK20添加効果は電子供与性のあるK20の添加により触媒表面上のNO-吸着種の増加に基づくものであろうことを推論した。
  • 前田 康久, 藤嶋 昭, 本多 健一
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 349-352
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    半導体光電極反応の量子効率を,(1)温度測定による方法および(2)化学光量計による方法で求め,得られた値を比較すると,硫化カドミウムでは両者はほぼ一致したが,二硫化モリブデンでは後者の値が前者にくらべてかなり小さくなった。これは温度測定による量子効率(ηtと略す)が吸収した光子数に対する流れた電子数の比として表わされているのに対し,化学光量計による量子効率(ηaと略す)では電極表面で反射,散乱された光も吸収されたものとして数えられる点に起因すると考えられる。そこで用いた電極の反射率を反射光量と入射光量の比として求めてみたところ,ηtとηaの差の大きい電極ほど大きな反射率をもつことが確かめられた。さらに入射光子数および反射率から電種に吸収された光子数を算出し反射光を補正した量子効率ηa'を求めると,ηa'はηaにくらべてηtにかなり近い値を示した。以上のことから,化学光量計による方法では,ηaが入射した光子数に対する流れた電子数の比率であるた晦,反射率の大きな電極の真の量子効率を得るには反射光を補正する必要があるのに対し,温度測定法は.ηtが真の量子効率を表わしている点で,量子効率決定における有用な方法であることが判明した。
  • 坂根 康秀, 松本 清, 大塚 隆一, 筬島 豊
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 353-358
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    pH2.5~10の緩衝液中で還元型グルタチオン(GSH)の水銀電極における電気化学的挙動を検討した。HMDEで初期加電圧がOVvs.SCEの場合,pH7.0より低いpHではGSHのサイクリックボルタモグラムに2対のピークが認められた。より陰電位側の波(Ep=-0.4Vvs.SCE,pH5.0)は吸近着的挙動を示し,より陽電位側の波(Ep=-0.3Vvs.SCE,pH5.0)は拡散的挙動を示した。これらの波はpH依存性などから,ともにSH基に由来する波と推定した。また-0.05Vでの定電位電解後の溶液にはHg2+が存在し,その濃度は(GS)2Hgが生成されるとしたときの値に一致した。したがってpH5.0での反応機構を(1),(2)のように推定した。またpH5.0の酢酸緩衝液中でダブルポテンシャルステヅプクロノクーロメトリーによりGSHの電解生成吸着種の最大表面過剃量を求め,2.0×10-10mol/cm2の値を得た。
    一方,pHの増大にともない水銀の溶出電位よりわずかに陰電位側にさらに一対のピークが現われた。この波は定電位電解の結果などから作用電極の水銀が溶出する波と推定した。
  • 大谷 杉郎, 小島 昭
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 359-366
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    炭素繊維フェルト上にcis-1,2-ジクロロエチレンを原料とし低温気相熱分解炭素(LTPC)の堆積を行なった。フェルトへの堆積状況を,黒鉛ブロック基材の場合と比較すると,前者では堆積速度,炭素取率,炭素利用率が高く,副生成物量がいちじるしく少なくなった。予備的な実験によれば充てん密度の高い炭素繊維/LTPC複合材を製造するには,温度勾配法が等温法よりすぐれていた。標準堆積条件は基材最高温度950℃,温度勾配150℃/mm,原料濃度13vol%,ガス流量460ml/minである。基材温度を高くするか,原料供給速度を増すと,堆積速度は増加する。しかし,同一原料供給速度でもヴス流量と原料濃度の組み合わせ方が違うと充てん率の分布や炭素収率,分解率などに差がみられた。これらの結果から,フェルト内へのLTPCめ充てん速度を高くするためには原料濃度を高くすることが,また炭素収率を大きくするにはガス流量を小さくすることが効果的であった。フェルト層を基材としたときのこれらの特徴的な挙動は,フェルト層が広い堆積表面積をもつこと,フェルト層内が外部より小さな原料濃度になるであろうこと,フェルト外部の熱分解を起こす空間容積が条件によって変わることなどに基づいているものと推論した。
  • 岡田 實
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 367-371
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    放射性核種の9割はX線強度が測定されていない。その空白を減らして放射化分析に役立てるため「文献中のγ線スペクトル図に含まれているX線スペクトル」のうち解析されずに放置されているものを解析することによって多数の核種のX線強度を入手したいと考え,解析に必要な相対効率曲線を手に入れようと意図した。相対効率曲線を求めるにあたり実際に利用できる因子の少ないことが大きな制約であり,しかも,求めた曲線は広く適用できるものであることが望ましい。この厳しい状況のもとでつぎのように可能性を探った。(1)効率曲線を集め検出器寸法別に分類し,それぞれに対応する相対効率曲線を求めた。(2)強度の知られているX線と強度の知られているγ線をともに含むようなスペクトルを文献から集め,それを使って試行錯誤法により上記の相対効率曲線を最適化させた。そのさい曲線各部の不確かさも最適化させた。最適化された曲線を使って文献中の未解析のX線ピーク(上記の下線で示す2因子の記載があるもののみ)を解析して得られるX線強度の不確かさは既知のX線強度値の誤差よりも小さい場合がある。したがって,この曲線はX線強度を手に入れる補助手段として有用である。
  • 山口 整毅, 塚本 務人, 千田 貢
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 372-378
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    pH2から12の溶液中でジチオトレイトール(DTT)の環状酸化体(trans-1,2-ジチアン-4,5-ジオール,OX-DTT)は水銀電極上で2段の還元波を示した。第1波(E1/2=-0.430Vvs.SCE,pH45)は反応律速波の性質を示し,第2波(E1/2=-0.91Vvs.SCE,pH4.5)は拡散律速波の性質を示した。交流ポーラログラフィーでは直流第1波に対応した電位に非可逆な波(〓=-0.460V,pH4,5)が認められた。直流第2波に対応した交流波は認められなかった。その挙動の解析からつぎのように結論された。すなわち直流第1波の波高を規制しているのはOX-DTTの水銀電極への吸着反応と考えられ,したがって第1波の反応はこの吸着反応につづく吸着したOX-DTTの非可逆なDTTへの還元と思われる。直流第2波は溶液中のOX-DTTが水銀電極上で非可逆に還元される反応と解釈された。HMDEを用いるOX-DTTのサイクリックボルタモグラムの挙動は上記の反応機構で解釈された。また電位掃引の速度が遅い(10mV/s以下)ときに現われた不規則な電流の振動の現象はOX-DTT,DTTおよびDTTの水銀塩の吸着の関与した複雑な酸化一還元反応によるものと思われる。
  • 吉田 烈, 木稲 隆文, 下西 裕治, 森瀬 斉, 上野 景平
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 379-384
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    鉄(III)およびジルコニウム(IV)イオンを担持した10種の陽イオン交換樹脂を吸着体とする水中のヒ素(III)イオンの吸着挙動をバッチおよび力ラム法で検討した。0.1mol/1の水酸化アンモニウム-硝酸アンモニウムでpHを8.5に調節した緩衝溶液中のヒ素(III)イオンに対する吸着等温線を作成した。ヒ素(III)イオンの吸着容量Qと水相濃度CをFreundlichの吸着式,Q=KC1/nに近似して得られる二つの定数1/nとKを検討することにより各吸着体のヒ素(III)イオンに対する吸着性能を比較した。その結果,陽イオン交換樹脂としてはキレート樹脂よりも弱酸性陽イオン交換樹脂の方が,また金属イオンは鉄(III)よりもジルコニウム(IV)イオンの方がよりすぐれた吸着性を与えることがわかった。また,よりすぐれた吸着体は金属イオン含量が相対的に大きく,逆に金属イオン含量が大きくても担持樹脂の種類によっては必ずしもすぐれた吸着体ではないこともわかった。つぎに,5mlの吸着体をつめた力ラムに地熱発電所排水にヒ素(III)イオンを添加してヒ素濃度を12.1ppmとした流入液を8V刃2h-1の流速で通液しヒ素(III)イオンの漏出曲線を作成した。その結果,力ラム法による吸着性がすぐれた吸着体は1/nが小さいものであるが,しかしながら,1/nが小さいものでも吸着体の種類によっては必ずしも力ラム吸着性はすぐれていないことがわかった。最後に2mol/l水酸化ナトウムによる吸着ヒ素イオンの回収,O,1mol/l塩酸による吸着体の再生を行なった。その結果,ジルコニウム(IV)担持型吸着体は再生後も吸着力が低下せず,くり返し使用が可能であることがわかった。
  • 室住 正世, 中村 精次, 菅 和哉
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 385-391
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    レニウムシングルフィラメントをイオン源とする表面電離質量分析法によって,市販銀や環境標準試料中の銀の同位体存在比と濃度を測定した。安定剤として,シリカゲルとリン酸とを用いると,0.01μgの銀から10-13A以上のAg+イオン電流を発生させることができた。市販銀の同位体存在比測定の質量分析精度は変動係数として0.1~0.2%で,感度は10-14gであった。同位体希釈法には107Agをスバイクとして用いた。スバイクを添加した1~0.19(銀量として5~25ng)の岩石・植物試料を硝酸とフッ化水素酸の混酸によって,テフロンボンベ中で加圧下120℃で分解したのち,銀をジチゾン-クロロホルム中に溶媒抽出して,他成分から分離した。109Ag/107Agを測定して濃度を求めたが,そのくり返し分析精度は,たとえば花コウ岩標準試料の場合に,25.4±0.4ppbであった。
  • 鈴木 仁美, 佐藤 尚文
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 392-394
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ピリジンやトリエチルアミンなどの第三級アミンの共存下に四塩化炭素中で,四ヨウ化二リン(P2I4)Lと一連の力ルボン酸アミドとの反応を検討した。脂肪族および芳香族カルボン酸アミドは,いずれもP2I4により穏やかに脱水されて,対応するニトリルをかなりの好収率で与える。反応系はきれいで,樹脂状物の生成はみられない。第三級アミンが共存しないと収率は低い。しかし,ベンゼン,アセトニトリル,エーテルなどを溶媒に用いた場合には,第三級アミンを共存させてもニトリルの収率は低いことがわかった。
  • 石倉 慎一, 高橋 淳, 水口 隆三
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 395-398
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エポキシドと二酸化硫黄と第三級アミとをそれぞれ等モル用いる3成分反応により,カチオンとして第四級アシモニウム基をもち,アニオンとして亜硫酸モノアルキルユステルアニオン基をもつ新規な双性イオン化合物(ZC)を合成した。さらに,この反応において五員環亜硫酸エステル(SU)が競合的に生成することを見いだした。第三級アミンとしてトリメチルアミン(TMA)を用いるとZCだけが生成するが,TMA以外のアミンを用いるとZCとともにSU生成した。生成物中でSUが占める割合いは第三級アミンのpKaやエポキシドの構造とは相関がなく,アミンの置換基の立体障害が大きくなるにつれて増加した。
  • 上島 亮
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 399-404
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アミン,ホスフィン,スルフィドなどのLewis塩基を触媒とする安息香酸とフェニル=グリシジル=エーテルの反応について研究した。これらLewis塩基の塩基度と触媒作用との間に一致はみられず,塩基度の大きいトリエチルアミンは予想に反して反応促進作用は小さく,塩基度ではトリエチルアミンより小さいトリフェニルボスフィンがこめ反応に対していちじるしい触媒作用を示した。
    Lewis塩基存在下の安息香酸とフェニル=グリシジル=エーテルの反応においては,まずLewis塩基がフェニルプリシジル=エーテルま反応してオニウム堆を形成し,これが真の触媒種となって反応を促進する。上記反応系においてオニタム塩の生成にはLewis塩基の塩基性と求核性が関係し,塩基性が小さく,大きい求核性をもっているトリフェニルホスフィンが大きな触媒作用を示す。触媒作用には,このほか生成したオニウム塩の安定性も関係する。
  • 松田 五男, 秋山 啓一, 小林 俊郎, 堅田 友則, 水田 政輝
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 405-411
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    既報でベンゼンスルフィン酸のN-置換フェニルマレイミドへの付加反応を速度論的に検討し,N-ブェニルマレイミドのべンゼン核上の置換基に関しU字型のHammettプロットが得られたが反応機構は明確に推定されなかった。
    本報では炭素-炭素二重結合と置換基との間に介在する構造がN-置換フェニルマレイミドより簡単なα,β-不飽和カルボニル化合物であるアクリル酸=置換フェニルエステルを使用して,既報で得られたU字型のHammettプロットの再検討をしたが,同様のHammettプロットが得られ,電子求引基が反応を大きく促進するが電子供与基も若干の加速性を示した。また,置換基効果が直接反応点に波及する置換ベンゼンスルフィン酸を使用して本反応の速度に対する置換基効果から反応機構を明らかにした。置換ベンゼンスルフィン酸の置換基に関してはHammett則が成立し,また,活性化エントロピーが負値に大きいことから22闘スルフィン酸のアクリル酸エステルへの付加反応はイオン的に進行して律速段階はスルフィン酸の硫黄原子によるアクリル酸エステルのビニル結合のβ炭素への求核的攻撃と推定された。付加生成物はβ-付加体のスルホンであることが確認された。
  • 中西 房枝, 田中 俊光, 角田 文子, 中西 八郎
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 412-415
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    非対称ジオレフィン,4-(2-カルボキシビニル)-α-シアノケイ皮酸ジメチルエステルの結晶の光反応を検討した。この化合物はp-ホルミルケィ皮酸メチルとシアノ酢酸メチルの縮合により収率よく合成され,結晶は光照射により容易に環化付加反応を起こし,頭-頭型シクロブタン環をもつ非晶性オリゴマーを生成することがわかった。この光挙動,結晶構造はさきに研究されたm-フェニレンジアクリル酸ジメチルと共通であり,両者は同じ型の光反応性結晶に属することが明らかになった。また,この結晶増感剤1.2-ベンゾアントラキノンおよびポリ(メタクリル酸メチル)から形成された薄膜は430nm以上の光照射により鮮明な画像を形成し感光材料として有用であることが示された。
  • 笠井 俊保, 中森 建夫, 沢山 明夫
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 416-423
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンゼン環に1~3個のクロロ置換基をもつ2,3-ジクロロ-1 ,4-ナフトキノン類[1]~[5]を合成し,これらとアニリンを縮合させ,生成が予想される2種の異性体を分離し,これらの構造を合成的に決定した。つぎにその異性体の生成割合の比較により,ベンゼン環にあるクロロ置換基の2,3-位の反応性におよぼす影響を検討した。さらにベンゼン環にクロロ置換基とアミノ基が共存する場合の両者の2,3-位の反応性におよぼす影響の相関関係についても検討した。
  • 大嶋 洋三, 大沼 浩
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 424-427
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    側鎖メチル基の置換位置の異なるメチルヘプタデカン6種およびメチルノナデカン5種の尿素付加物の0,1O,20℃における分解の平衡定数をトルエンを溶剤とする非水溶液法で測定した。
    得られた平衡定数値はメチルヘプタデカンについて3×10-4~8×10-2の範爵に,またメタルノナデカンについては1×10-4~2×10-2の範囲にあり,いずれも安定な付加物を形庫することがわかった。しかし,主鎖長の等しい直鎖アルカンの尿素付加物分解と比較すれば,平衡定数値は10~1000倍で安定性がいちじるしく低いことが明らかにされた。またメチルアルカンの中でほ2-メチルアルカンがもっとも安定な付加物を形成し,側鎖メチル基の置換位が主鎖の中央に移るにしたがって付加物の安定性は低下した。これらの事実に基づきメチルアルカンの尿素付加物形成に関する新しいモデルを提案した。
  • 岸本 諭, 北原 新哉, 真鍋 修, 檜山 八郎
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 428-431
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-ジアゾニオ-2-ナフトール-4-スルポナートと1-ナフトールとのいろいろなpHでのカップリング反応(イオン強度:0.50,反応温度:25℃)の速度を測定し,反応機構を考察した。
    カップリングは1-ナフトールの2-位(2-アゾ色素生成)へ優先的に起こり,見かけの二次速度定数(ジアゾニウム塩とナフトールの全濃度についての二次速度定数)の対数値とpHとの関係はpH=10.1に折点をもつ二直線となり,pH<10.1の直線の勾配は+0.50で,pH>10.1のそれは-0.50となり,二直線の勾配差はちょうど1.0となった。1-ナフトールの真の反応種は1-ナフトラートイオン[Nap-]で,一方,ジアゾニウム塩のそれは1-ジアゾニオ-4-スルホナート-2-ナフトラートイオン[DSN-]であることが示された。また,反応にはBrcinsted酸である遊離ナフトールの酸触媒効果が認められた。以上のことから,反応速度νは次式で表わされる。式中のkNaPHとKoは,それぞれNapHの触媒定数および溶媒定数を示す。
  • 安藤 靖子, 小見山 二郎, 飯島 俊郎
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 432-437
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(N-ブチル-4-ビニルピリジニウム=プロミド)(C4P4VP)とメチル,エチルおよびブチルオレンジ(MO,EOおよびBO)止の結合機構を透析速度法と可視吸収スペクトル灘定によって調べた。透析速度法から得たそれぞれの結合等温線は高い親和性を表わし,ポリマー残基に染料分子が1:1で結合する。Bradleyらにってsequence,generating functian(SGF)の取り扱いから導かれた式を使って,可視吸収スペクトル変化から,ポリマー座席上での染料-染料間相互作用を表わすstacking coefHcient, qを算出した。求めたq はMO<EO<BO.の順に増大した。
  • 結城 仲治, 北川 浩
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 438-442
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    サラン廃棄物を原料とする分子ふるい炭素の製造について検討した。サラン廃棄物を温度800℃で脱塩酸炭化したのち,これにコールタールレピッチを4.4~26.1wt%,亜硫酸パルプ廃液を13.0wt%加えて,ディスク型のペレタイザーを用いて平均径0.7mmの球形ペレットを製造した。得られた球形ペレットを窒素雰囲気中で温度800℃に1.5時間熱処理した。熱処理炭について,二酸化炭素,ブタン,イソブタン,ネオペンタシの25℃における吸着等温線を測定した。そめ結果,サラン廃棄物の炭化物にコールタールピッチを加えて熱処理することによって分子ふるい炭素を製造できることがわかった。サラン廃棄物からの分子ふるい炭素は分子径6.2Aのネオペンタンを吸着しなかった。コールタールピッチの添加量が12.6.14.4,17.0wt%の分子ふるい炭素はゼオライト5Aに類似した細孔径を有し,分子径4.3Åのブタンと分子律5.0Åのイソブタンに対してすぐれた分子ふるい作用を示すことがわかった。
  • 橋田 勲, 小出 清, 井出 敏彦, 西村 正人
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 443-449
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ビニルベンジルクロリドースチレン共重合体をN,N,N',N'-テトラメチル-α,ω-アルカンジアミンでアミノ化させて得られる第四級アンモニウム壇基と橋かけ構造をもった力チオン性逆浸透膜の製造について検討した。多孔性のポリプロピレン膜表面に高分子の薄膜をキャスト法によって形成させて複合膜を得た。第三級ジアミンとしてN,N,N',N',-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミンを用いるとすぐれた性能をもった膜が得られ,クロロメチルフェニル基に対してジアミンを3~4当量作用させた場合にもっともすぐれた膜性能を発揮して,塩排除率99.0~99.3%透過流束101/m2・hの値を示した。膜性能は共重合体組成によっても変化し,共重合体中のスチレン含有量が増すと透過流束は減少する傾向がみられ,ビニルベンジルクロリドースチレン1/1モル比の共重合体が最適であった。得られた荷電膜は耐酸,耐アルカリ性にすぐれ,NaOHに対する排除率は大きくNaClと同程度の値を示した。また,この膜は乾燥状態で保存しても膜性能がまったく変化しない。
  • 笠岡 成光, 笹岡 英司, 船原 満, 小野 泰貴
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 450-455
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水蒸気共存下のNH3吸着剤としての銅(II)イオン交換Y型ゼオライト(Cu(II)-NaY)の低濃度NH3に対する吸着能と,さらにH2Sが共存する場合の影響,ならびに一部再生法についても検討を行なった。すなわち,実験は主として常圧流通式充てん層装置を用い,入口ガス0~240ppm,0.1,1,%NH3-0~300ppmH2S-3.9~11.6%H2O-N2.試料(0.4~1.0mm)1.0,1.85mlに対し,入口ガス流速500,1000Nm3/min,温度50~200℃における破過曲線を測定した。なお,これらの操作のあと,試料をN2流中で500℃まで定速昇温(2.5℃/min)し,昇温脱離曲線を求め,また赤外吸収スペクトル測定と併わせてNH3の吸着点などを検討した。
    その結果,つぎのような結果,知見を得た。1)Cu(II)-NaYは,水蒸気共存下でも20ppm以下の低濃度NH3に対してもすぐれた吸着能を示し,この場合の吸着点としてイオン交換時に生成したCuOH+およびH+の固体酸点が大きく寄与する。2)H2Sが共存すると,イオン交換時に生成した固体酸点(CuOH+)は,H2Sとの反応によって変質するが,新たに生成したCuSH+あるいはH+といった酸点がNH3の吸着点として有効に作用する。3)NH3-H2O-N2系の吸着操作後,N2流中で0の昇温脱離によって再生,くり返し使用の可能性が得られたが,H2S共存の場合には,乾式加熱再生は不適で,今後の検討の余地が大きい。
  • 保田 仁資
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 456-461
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)は,pH1以下の酸性溶液において酢酸エチルに抽出されることを見いだしたので,この性質を利用し,河川水および海水中のDBSの溶媒抽出法を検討した。試料100mlを分液漏斗にとり,硫酸を加えてpHを1以下に調製し,酢酸エチルそれぞれ20mlおよび10mlを用いて2回ふりまぜて抽出し,有機層を合わせて水浴上で蒸発させ,緩衝液20mlを加えてpHを4~5にたもち,クロロホルム1Omlを加えてふりまぜて洗浄したのち,クロロホルム層を分離し,これにふたたび緩衝液1Oml加えて10分間ふりまぜてクロロホルム中に一部抽出されたDBSを逆抽出する。水層を合わせてメチレンブルー法で測定した。
    クロロホルムによる洗浄効果は大きく,直接メチレンブルー法にくらべ約1/10~8/10の値となり,無機イオンは妨害しない。本法を河川水,海水に適用したところ,平均回収率95~101%となり,2.6ppb程度の薄い溶液でも88%の回収率となった。
  • 山岡 到保
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 462-465
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    底質中のテルペン類の分離分析法についてシリカゲルカラムクロマトグラフィーとGC-MSを併用して検討した。前処理には,凍結乾燥が有用で,抽出時間は,Soxhlet抽出器で6時間で高収率で抽出される。テルペン類(ロンギホレン,カラメネン,デヒドロアビェチン,デヒドロアビェタン,1,2,3,4-テトラヒドロレテン,レテン)は,シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離できるが,マスフラグメントグラフィーを使用すると簡易に分離分析できることが判明した。広湾底質分析に応用し分布を明らかにした。
  • 武田 徳司, 安原 諭, 渡辺 昭二
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 466-468
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1, 3-Dioxolane derivatives were prepared by simple reaction of epoxides with carbonyl compounds using AlCl3 catalyst. Carbonyl compounds included cyclohexanone, benzaldehyde, isobutyl methyl ketone, 2-octanone and acetophenone. Two kinds of epoxides, e., chloromethyland ethyloxiranes, were used in the synthesis. The reaction was carried out without solvent or in carbon tetrachloride at 40∼80°C for 5 h. Yields of 1, 3-dioxolanes ranged from 36 to 88% depending on competitive polymerization. Products from the reaction of unsymmetrical carbonyl compounds and epoxides were the mixture of stereoisomers.
  • 上森 まり子, 梅田 衛, 桜木 宏親, 徳丸 克己, 吉田 政幸
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 469-471
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Hyperfine coupling constants (aN) of aryl benzhydryl nitroxides increase with electronegative substituents on the N-phenyl ring. The Hammett plot of aN against σ gave p= 1.0 (γ=0.97). However aβ-H values of the nitroxides are independentof the substituents. Benzhyd ryl phenyl nitroxide was found to adsorb oxygen reversiblely depending on oxygen pressure.
  • 鈴木 仁美, 三好 敬子, 大須賀 篤弘
    1981 年 1981 巻 3 号 p. 472-474
    発行日: 1981/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Based on the Cava's procedure, a series of the title compounds has been prepared and their properties recorded. All the compounds obtained are photo- and thermolabile crystalli ne solids, which readily decompose on storage. Electron-releasing groups on the arom atic ring tend to enhance the relative stability of benzyl tellurocyanates and lower that of dibenz yl ditellurides, whereas the reverse trends hold with electron-withdrawing groups.
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