日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1981 巻, 8 号
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  • 大坪 泰文, 梅屋 薫
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1201-1204
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ケイ酸ナトリウム濃厚水溶液のレオロジー的性質について,同心二重円筒型回転粘度計を用いて調べた。定常せん断実験から,粘度ηはせん断速度γ によらず一定であり,ニュートン流動を示すことがわかった。動的実験から,貯蔵弾性率G'は角周波数ωの2乗に,損失弾性率G''はωの1乗に比例することから,サイ酸ナトリウム水溶液のレオロジー挙動は〓で定義されるゼロ周波数動粘度ηoとlimG'/ω2で定義される弾性定数AGで特徴づけられることがわかった。
    〓で定義されるせ布断流動の緩和時間τはあるSiO2濃度以上で濃度とともに急激に増大するが,τ が増大し始める点におけるSiO2濃度は,Na2Oに対するSiO2のモル比が大きいほど小さい。ケイ酸ナトリウム濃厚水溶液は弾性効果を示す。これはケイ酸ナトリウムの高分子としての力学的応答に起因するものであると推察される。
  • 小村 照寿, 清水 弘, 高橋 光信, 今永 広人
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1205-1211
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化水素を水から水-1-プロパノール混合系へ移転ずるときの標準モルGibbsエネルギー変化が,ガラス電極を用いた電池の起電力法によって測定された。またGibbsエネルギーの温度変化から,相当したエンタルピーとエントロピー変化の値が求められた。これらの熱力学諸量の変化は,イオンに配向した溶媒分子層と巨視的誘電率をもったバルク層の二つからなる不連続な溶媒和モデルによって,イオンとその周囲の媒質との相互作用を取り扱うことによって考察された。その結果,1-プロパノールの濃度が0~30%の範囲では,H3O+とCl-の移転における溶媒和層のエンタルピーおよびエントロピー変化はいずれも正であるが,1-プロパノール濃度がこれよりも大きくなると,それらの値はしだいに負になっていくことがわかった。これらの量は溶媒分子がイオンへ配向するときの熱力学関数の変化を表わすものであり,混合溶媒の講造的性質の変化と関連つげられる。すなわち水に少量の1-プロパノルを混合したときに起こる液体の構造性の増大が,溶媒和層における分子の再配列にともなう熱力学関数の変化と溶媒組織との間に極大を生ずるものと解釈される。
  • 杉村 徳子, 北原 文雄
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1212-1216
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    奇数および偶数個の炭素原子を含む直鎖脂肪酸ナトリウムと2価の金属塩化物から金属セッケンを合成した。これを有機媒質中に分散させ110~180℃ で種々の媒質中で数十時間加熱すると,金属に特異な色を呈するオルガノゾルが生成した。加熱により媒質の酸価の値が急激に増加し始める付近の温度からオルガノゾルが生成することがわかった。赤外吸収スペクトルにおいて加熱前に存在した金属セッケン特有のCOO-の吸収が加熱後には消滅しC=Oの吸収が現われること,またオルガノゾルの希釈,遠心分離から酸化物微粒子が遊離することから,加熱により金属セッケンが分解して酸化物が生成し,生成した酸化物の微粉末が媒質により安定化されていると推定した。
  • 河合 和三郎, 山村 総一郎
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1217-1222
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トリス(2,2'-ビピリジン)ルテニウム(II)錯体の固定化高分子膜の合成と蓄の膜の光照射にともなう消光,メイルビオロゲンのような電子受容体への光電子移動反応についてはすでに報告したが,本報ではこれらの知見に基づいて,n型透明半導体電極をこのルテニウム(II)錯体固定化高分子膜で修飾し,白金電極,電子供与体(ETA)水溶液共存下に光電池を構成した結果,半導体電極へ電子注入反応が起こって光電流が発生し,しがもその光電流は光照射下でかなり長時間安定に持続することがわかった。また,光電流のピークは用いたルテニウム錯体の吸収スペクトル,励起スペクトルのピーク領域に認められた。
  • 加藤 明彦, 鈴木 博, 大角 泰章, 中根 正典
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1223-1226
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    チタン-ランタン-コバルト系合金の本素吸蔵,放出特性について検討した。Ti1-xLaxCo(x=0.05~)-H系の高圧示差熱分析の結果,水素吸蔵,放出にともなう発熱,吸熱ピ0.ー5 クが認められ,いずれの合金も水素吸蔵,放出能を有している。これらの合金は活性化が容易で,80~200℃において水素を加圧し,室温まで放冷すると水素を吸蔵し,Ti0.930.05CoH1.4, Ti0.9La0.1CoH1.3,Ti0.75CoH0.8およびTi0.5La0.5CoH0.4で示される水素化物を生成した。これらの水素化物の解離圧チタンと置換するランタン量xによって決まり,解離圧の値はランタン量の増加とともに高くなる傾向を示した。200℃ における水素化物の水素放出率はほぼ100%であった。解離等温線から求めたTi0.9La0.1CoH1.3(水素含有量1.lwt%)の標準エンタルピー変化は-14.3kcal/molH2であり,1atmの水素解離圧を示す温度は115℃ であった。TiTi0.9La0.1Coの水素吸蔵,放出による性能劣化は30回まで認められなかった。
  • 六川 暢了
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1227-1230
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    含モリブデン(VI)水溶液からのモリブデンの分離にキレート樹脂が適用できるかどうかの知見を得るのを目的として,モリブデン(VI)のキレート樹脂への吸着性について検討した。キレート樹脂はイミノニ酢酸構造をもっDowexA-1を用いて,Na型で使用した。吸着試験はモリブデン濃度,pH,流速の影響などについてカラム法により行ない,流出液のpH,樹脂の体積変化および溶離についても検討した。モリブデン(VI)のキレート樹脂への吸着は溶液中のモリブデン濃度,pHなどにより異なり,pHO.85,2.1,5.5付近でのモリブデン吸着量はモリブデン濃度に影響されず,それぞれほぼ一定値となった。またpH2.1以上ではモリブデン濃度が高いほど吸着量は大きく,pH0.9から2.1の範囲ではモリブデン濃度が高いほど吸着量は小さくなり,pH8以上ではモリブデンはまったく吸着されなかった。キレート樹脂にモリブデン(VI)を吸着させるには,吸着量が最大となるpH0.5から0.9の範囲で効果的である。またキレート樹脂に吸着したモリブデンを溶離するための溶離液は,NaOH溶液がHCl溶液にくらべて低濃度溶液で溶離できt樹脂の再生も同時にできるので有効であった。
  • 中島 忠夫, 黒木 裕一
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1231-1238
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シラスをおもな原料にして調製されたNa2O-B2O3-SiO2-Al2O3-CaO系ガラスの分相におよぼすAl2O3またはCaO添加の効果と熱処理条件の影響を検討した。実験はまず目的にかなった種々の組成の基礎ガラスをつくり,これをいろいろな条件で熱処理したのち,酸処理した。得られた多孔質ガラスに化学分析や水銀圧入式ポロシメーターを用いた細孔分布の測定,走査電子顕微鏡による細孔の形態観察およびBET表面積の測定を行ないつぎの結果が得られた。
    1)Al2O3が増加すると分相が起こり難くなり,液滴型の分相構造を形成する傾向がみられた。CaOを増加すると逆に分相が容易に起こりからみ合い型の分相構造を形成した。またAl2O3が15%以上含まれる高アルミナガラスにおいてもCaOの添加量を増加することにより分相が顕著に発生した。
    2)基本組成のガラスを700℃ で熱処理すると,からみ合い分相を生じ熱処理時間の経過とともに微相間の界面エネルギーが駆動力となって分相が次第に大きくなった。分相の大きさを示す多孔質ガラスの平均細孔半径r(Å)は熱処理時間t(h)の1/2乗に比例して増加した。
    3)また同じガラスについて熱処理時間を24時間一定にして650℃ から730℃ に熱処理温度を上昇させると,多孔質ガラスの細孔径はいちじるしく増大し,平均細孔半径rと熱処理温度T(K)の関係から求められた分相の構造再編にともなう拡散の活性化エネルギーは143.2kcal/molであった。
  • 伊藤 宏, 山崎 利夫, 工藤 勝, 奥脇 昭嗣, 岡部 泰二郎
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1239-1244
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    マンガンノジュールの硫酸浸出液から,ニッケルとコバルトを回収する方法として,セメンテーション法について研究した。
    ニッケルとコパルトをそれぞれ2g/l含む混合溶液に所定量のフェロマンガン粉,鉄粉を添加し,ニッケルとコバルトの同時セメンテーションを行なった。実験は窒素雰囲気でpHを一定にたもつため所定濃度の硫酸を加えて行ない,反応におよぼすpH,温度,鉄粉添加量および共存する銅(III)およびアルミニウムイオンの影響について調べた。
    ニッケルとコバルトの同時セメンテーションは,フェロマンガン粉,鉄粉により可能であり,ニッケルとコパルトをほぼ定量的に回収できた。還元鉄粉を用いてセメンテーションを行なう場合,液温80℃以上で反応中溶液のpHは4前後にたもち,添加鉄粉量は理論量の1.5~2倍程度で十分であった。銅(II)イオンはセメンテーション反応を促進したが,微量のアルミニウムイオン(0.005g/l)は反応を妨害した。
  • 山国 弘明, 白石 勝造, 渡辺 信淳
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1245-1249
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フッ素ガスおよびフッ化水素溶液中で陽分極によりフッ素化した銅板表面のフッ化物被膜を,ESCA,X線回折および走査型電子顕微鏡で研究した。ESCA測定条件下で,酸化銅(II)はX線照射により光還元をうけるが,フッ化銅(II)は還元その他の変化をうけない。しかしAr+イオン照射によりすべての銅2価化合物は還元をうける。フッ化銅被膜は酸素や水分の影響を容易にうけ,CuF2・2H2Oの生成が起こり,透明な被膜は黒みを帯びる。ESCA測定によれば,表面のF/O原子数比は最高0.8程度で空気暴露によりO/Cu比の増加と,F/O比の減少の進行が認められる。また被膜中のフッ素成分は,水,酸,アルカリ水溶液中への浸漬によりF-イオンとして液中に溶出する。
  • 三浦 恭之, 石山 洋, 康 智三
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1250-1254
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    銅(II)はムーアスコルビン酸と反応して銅(I)にまで還元される。この銅(I)にチオシアン酸イオンを加えるとチオシアン酸銅(I)が沈殿する。本報は銅(II)をL-アスコルビン酸で還元したのち一定過剰量のチオシアン酸イオンを加えて反応させ,チオシアン酸イオンの消費量から銅(II)を定量する方法である。銅(II)を銅(I)にまで還元するときの最適pH範囲は2.6~4.6であった。生成したチオシアン酸銅(I)の微細な沈殿物は凝集剤を添加して凝結させ,つぎに遠心分離の操作を行なって除去した。本定量操作で得られた銅(II)の検量線は5×10-4mol/l(31.8ppm)までの濃度範囲内で良好な直線関係を示した。2.5×10-4mnol/lの銅(II)標準液5ml(79.4μg)を用て11回くり返し実験を行なった結果,平均吸光度は0.538で,標準偏差と相対標準偏差は吸光度単位で0.002と0.3%で良好な再現性を示した。5mgまでのコパルト(II)とニッケル(II),2.5mgまでの水銀(II),0.5mgまでのビスマス(III)と銀(I)の共存は妨害しなかった。本法を銀ろう,黄銅および砲金中の銅の定量に適用したところ,これら合金中の銅を正確に定量できることがわかった。
  • 藤永 太一郎, 岡崎 敏, 坂本 一光, 寺田 誠, 増田 薫, 文 寿賛
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1255-1259
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N,N-ジメチルホルムアミド申において,エチレンジアミン四酢酸イオン(edta4-)とリチウム(I),ナトリウム(I),カリウム(I),ルビジウム(I),セシウム(I),マグネシウム(II),亜鉛(II) .および鉛(II)イオンとの反応を,主として直流ポーラログラフィーを用いて検討した。これらの金属(M)イオンの溶液にedta4-イオンを添加すると,モル比edta-4/M+=1/4およびedta4-/M2+=1/2になるまで金属イオンの限界電流値が減少し,同時に沈殿の生成が見られた。さらにedta4-イオンの添加量を増大すると沈殿は溶解し,いずれの金属イオンもモル比edta4-/M+(またはM2+)=1/1の可溶性化合物を形成した。またジedta4-イオンと金属イオンとの1対1化合物に基づく還元波は,ルビジウム(I),セシウム(I)および鉛(II)イオンについてのみ観測された。
  • 佐竹 弘, 池田 早苗, 田中 雅美
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1260-1264
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    過ヨウ素酸塩中のヨウ素酸塩を迅速i簡単かつ精度よく微量分析できる電流滴定法を開発し,微量のヒドロキシルアミンの定量に応用した。回転白金電極(+0.65Vvs.SCE)を指示電極,SCEを対極とする電流滴定法を用いると,1000倍モルの過ヨウ素酸と共存する微量(約40μg)のヨウ素酸カリウムを0.4%以内の相対誤差と0.2%以内の変動係数で定量できることが明らかになった。また,ヒドロキシルアミンに大過剰の過ヨウ素酸を反応させ,生じたヨウ素酸を同様に電流滴定することによって,微量(3~66μg)のヒドロキシルアミン塩酸塩を0.2%以内の相対誤差と変動係数で定量することも可能であった。過ヨウ素酸塩中のヨウ素酸塩を定量する場合には過ヨウ素酸に紺対して2倍モルになるようモリブデン酸アンモニウムを添加し,t3×10-1mol/lになるよう塩酸を加えてマスクしたのち,約10℃ で滴定するのが適当であった。ヒドキシルアミンを定量する場合には,試料溶液のpHを5~6とし,過ヨウ素酸をその約500倍モルロ添加しておだやかに約3分間煮灘して反応させ,過剰の過ヨウ素酸を同様にマスクしたのち,生成したヨウ素酸を滴定することにより定量した。
    本法は過ヨウ素酸塩と共存する微量ヨウ素酸塩の感度の高い簡易な定量法として利用価値が高く,多くの還元性物質の微量分析た応用できるものと考えられる。
  • 松尾 勉, 増田 嘉孝, 関戸 榮一
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1265-1270
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カドミウム(II)とN,N'-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジァミン-N,N'-二酔酸EDDA(OH)2を2:1,1:1,1:5の各混合比として,pHが3.12~8.77の範囲で,直流およびオシロポーラログラフによりポーラログラムを得た。直流のポーラログラムは配位子過剰の場合は一段波を,金属過剰の場合は二段波を与える。第1波(-0.596Vvs.SCE,pH=4.05)はlogプロットの勾配が30.3mVの可逆波であり,限界電流嫉水銀柱の高さおよび温度の影響の検討から拡散支配であると推定される。第2波(-0.958V)はlogプロットの勾配(55.9mV)から非可逆波で,その限界電流は拡散支配であると推定される。電流滴定の結果からカドミウム(II)とEDDA(OH)2の1:1錯体の生成が確認された。第2波の半波電位のpH依存度の検討から,pHが4.4近傍で反応イオン種がCdHL+からCdLへ変化することが判明した。第2波の電極反応機構はつぎのように推定される。
    pH<;4.4, CdHL++H++2e+Hg→kj1Cd(Hg)+H2L (I)
    pH>4.4, CdL+2e+Hg→kj2Cd(Hg)+L2-(II)また,Vlcekの拡張理論式により,非可逆的錯体還元の半波電位のpH依存度を知り,プロトン付加錯体の安定度定数,KcdHLを計算し,105.6を得た。機構(I),(II)の電極反応速度定数として,それぞれkj1=6.9x10-6cm/s,kj2=1.2x10-6cm/sを得た。
  • 山口 整毅, 小西 津多子, 塚本 務人, 千田 貢
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1271-1278
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジチオトレイトール(DTT)の環状酸化体(trans-1,2-ジチアン-4,5-ジオール,OX-DTT)はOVOから負電位方向に電位掃引したパルスポーラログラフィー(cspp)により直流波に対応して二段波(E1/2=0.413,-1.05Vvs.SCE,10-4mol/dm3 ,pH4.5)を示した。-1.5Vから正方向に電位掃引したとき(aspp),OX-DTTは直流第2波に相当する還元波(E1/2=-1.05V)とDTTの酸化第1波に相当する酸化波(E1/2=-0.44V)を示した。DTTのasppにおいても同じ電位に一段の酸化波が認められた。DTTのcsppは10-4mol/dm3以下の濃度で-0.475Vに頂点をもつ山形の波(DTTの水銀塩(単分子層)の還元に対応)を示し,さらに,高濃度ではより正電位側に二つの史形の波(-0.35,0.43V)が現われた。この山形の波形はパルス波印加後の電流の減衰速度がパルス電圧が負になるにしたがい急激に大きくなる結果現われたものと理解される。DTTの検出限界はDMEをT用いるcsppで3×10-7mol/dm3.5分間.0Vの前処理でDTTを表面に濃縮したHMDEを用いる通常の陰極溶出法で10-11mol/dm3であった。システイシおよびジスチンのcspp,aspp波の挙動はそれぞれDTTおよびOX-DTTのcspp,aspp波のそれに基本的に一致した。
  • 盛 秀彦, 藤村 義和, 武上 善信
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1279-1282
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ホスホン酸ジフェニルーホルマリン樹脂(DPP樹脂)を基体とし,アミノ基を交換基とする陰イオン交換樹脂を合成し,その性質および陰イオン選択性を調べた。
    本交換樹脂はDPP樹脂をクロロメチル化し,つづいてアミノ化することで容易に得られた。弱塩基型の樹脂でpH2~6の領域でイオン交換が可能である。アミノ化条件で変動するが,その交換容量は0.50~1.35meq/g-R(乾燥樹脂)であった。交換速度は速く,約15分で交換平衡に達し,通液性も良好であった。
    本交換樹脂はCrO42-,MoO42-およびWO42-イオンを選択的に吸着し,SO42-,Br-イオンなどは吸着しない。Cr(VI),Mo(VI)およびW(VI)の除去あるいは濃縮回収に効果的で,10-3ppmを含むCr(VI)の希薄溶液からのCx(VI)の回収率は約96wt%であった。また,Cr(VI)とMo(VI)の分離が0.3wt%H2O2-1.5mol/lH2SO4溶液および0.5mol/l水酸化ナトリウム溶液を用いて可能であった。
  • 酒井 睦司, 高橋 己之一, 榊原 保正, 内野 規人
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1283-1286
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ロジウム錯体によるメチレンコハク酸ジメチル〔1〕,シトラコン酸ジメチル〔2〕,メサコン酸ジメチル〔3〕,エチリデンコハク酸ジメチル〔4〕,イソプロピリデンコハク酸ジメチル〔5〕の異性化反癒が研究された。トリス(トリフェニルボスフィン)ロジウム(I)塩化物と塩化スズ(II)二水和物とからなる複合錯体が異性化反応に対して触媒活性をもつことがわかった。本触媒の存在下,100℃ で〔1〕は〔3〕に異性化したが,塩基触媒による場合よりも高い反癒温度を必要とした。このロジウム-スズ複合錯体を用いて〔1〕の異性化における速度論の研究から,反応速度はエステルとロジウムの膿度にそれぞれ一次であり,内部オレフィンである〔2〕や〔3〕から〔1〕への異性化はきわめて遅いことがわかった。100℃ における〔1〕の異性化生成物は〔1〕29%,〔2〕3%,〔3〕68%の擬平衡組成に達した。塩基触媒による異性化と比較しながらこれらの実験結果に考察を加えた。
  • 中森 建夫, 岡野 隆, 笠井 俊保
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1287-1294
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,3-ジシアノ-1,4-ナフトキノン〔3〕は強い電子受容体としての性質が期待される興味ある化合物である。そこで〔3〕を収率よく合成し,〔3〕と種々の求核試薬との反応を行なった。求核試薬としては脂肪族アミン,アミド類,ピリジン類およびアニリン類を用い,〔3〕のシアノ基1個が置換した〔4〕~ 〔25〕を得た。アニリン類のうち,アニリン,o-置換アニリン,p-置換アニリンでほアミノ基で置換した化合物(N-置換体)〔11〕~ 〔17〕が得られ,2,6-二置換アニリンではN-置換体〔24〕とアミノ基のパラ位で置換した化合物(C-置換体)〔25〕とが得られた。また,N置換アニリンではC-置換体〔18〕~ 〔21〕や〔22〕が得られた。そこでN-置換ア二リンのうちN,N'-ジメチルアニリンとの反応を詳細に検討したところ,エタノール中では〔19〕が収率よく得られるが,アセトニトリル中では〔19〕のほかにCrystalViolet〔31a〕カミ生成することがわかった。また,ジフェニルアミンとの反応でにσ 錯体と思われる〔23a〕が単離でき,これを熱夢解するとC-置換体〔23〕が得られた。2,6-キシリジンとの反応では,HF中ではN-置換体〔24〕が,メタノール中ではC-置換体〔25〕が得られ,溶媒による選択性がみられた。これら得られた化合物の可視吸収スペクトルはC-置換体がN-置換体にくらべ深色効果が大きかった。
  • 小林 幸夫, 李 民雄, 白井 孝三
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1295-1298
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    脂肪族ヒドラジン誘導体のアミノグアニジン,チオセミカルバジドおよびセミカルバジドを水溶液中,遊離塩基の状態で二硫化炭素と反応させると,いずれの反応でも2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(DMTD)を生成することがわかった。従来DMTDは遊離ヒドラジンと2倍モル以上の二硫化炭素との反応で生成することが知られているが,上記ビドラジソ誘導体から得られた例はない。この反応の機作は,アミノグアニジンと二硫化炭素との反応では,まずヒドラジノ基が二硫化炭素に付加し,本実験条件下ではさらにもう1分子の二硫化炭素が反応してDMTDを生成し,同時にシアナミドが脱離し,これが副生したH2Sと反応してチオ尿素を生成することが明らかとなった。
    つぎにセミカルパジドをピリジン中で二硫化炭素と反応させると中間体のセミカルバジド-1-カルボジチオ酸ピリジン塩(PSDTC)を経て1,5-ジカルパモィルチオカルボヒドラジド(DCTH)を好収率で与えることがわかった。
  • 御園 生尭久, 阿部 芳首, 長尾 幸徳, 大和田 豊一
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1299-1305
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    テトラクロロエチレンを媒体としたときの,ポリ(テレフタル酸エチレン)繊維に対する分散型アゾ染料の染色結果と熱力学的関数から染料・繊維間の相互作用を検討した。
    精製した15種類の染料の90~110℃ における等温吸着曲線,および30~60℃ における溶解度を求めた。等温吸着曲線は染料の種類や温度には関係なく,測定範囲内で分配則が成立しているので,得られた直線の傾きから各温度における分配係数を求めた。さらに,これらのデータから熱力学的関数値を求め,これと染料の置換基の違いに基づき染着機構を考察した。その結果,染着熱(-ΔHodyeing)と溶解熱(ΔHosoln)との間に直線関係が得られた。また見かけの親和力(-Δ oμapp)と溶解のさいの自由エネルギー変化(ΔFosoln)との間に,カップリング成分の置換基の違いにより異なった直線関係が成立していることなどから,置換基によって染着機構が異なっていることがわかった。そして,カップリング成分にジェチルアミノ基を有する染料の双極子モーメントの二乗と染着熱との間に直線関係が得られたことから,これらの染料に極性vander Waals力の寄与していることがわかった。
  • 越智 光一, 新保 正樹
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1306-1312
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ビスフェノール型エポキシ樹脂を脂肪族α,ω-ジカルボン酸で硬化するさいに,促進剤として第三級アミンを添加する,あるいは添加しないことによりエステル結合のみで形成された硬化系あるいはテステルーエーテル結合の混合する硬化系が得られ,一方,第三級アミンを硬化触媒とすることによりエーテル結合のみで形成された硬化系が得られた。これら三者の硬化系の力学的緩和挙動を調べ,セグメント構造との関連からその緩和機構を明らかにしようとした。
    その結果,エステル型およびエステルーエーテル混合型硬化系ではヒドロキシエーテル部分が可動的aもとなるのに対して,エーテル型硬化系はこれを含まないことが示された。このうちヒドロキシエーテル部のような可動構造を含む璽化系のβ緩和はこれを含まない硬化系のβ緩和にこの可動構造部分の運動が加わった複合緩和挙動と考えるべきことが明らかにされた。またγ緩和は少なくとも4個以上のメチレン連鎖の運動に基づくことが示された。
  • 幸田 清一郎, 土屋 荘次
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1313-1318
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N2-NO-NH3-O2混合気体をモデル排ガスとして用い,ここへ高速電子線照射したときにみられるNO減少,N20生成エーロゾル生成を実時間追跡した。N2-NO-NH3-O2系においては,NO減少の程度はNH3の添加にともない,G値にして2程度増加し,またN20生成もG値にして0.8程度増加する。このNO減少の加速とN2O生成の増大は相互に関連しており,放射線初期過程で生成したイオン種に起因するNH2ラジヵル,H原子が主要な役割を有していると推定した。N,-NO-NH3系にさらにO2が共存する場合,NH4NO3エーロゾルの生成も認められる。近似的な濁度の解析から,エーロゾル生成のNO減少に占める比率は,比較的小さいと考えられる。
  • 小林 悦郎, 植松 喜稔, 須貝 稔, 樋口 美起雄
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1319-1325
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化チタン(IV)-水和物(メタチタン酸)と活性炭から複合体を調製し,このもののリン酸イオン,メチレンブルー,ヨウ素,有機物質などの吸着特性を研究した。メタチタン酸の原料には酸化チタン(N)製造における中間体としてのTiOSO4の硫酸溶液(TiO2250g,H2SO41044g/l)を用いた。吸着剤としての複合体はつぎのようにして調製した。適量のTiOSO4の硫酸溶液と粒状活性炭とをまぜあわせ,混合物を180℃ に加熱して過剰の硫酸を除き,活性炭に添着した酸化硫酸チタン(IV)を水洗してメタチタン酸に加水分解したのち,生成物を乾燥した。適当な調製条件(5mlTiOSO,溶液/10g活性炭)で得た複合体は市販メタチタン酸と同程度のリン酸イオンを吸着(Freundlich式;q=kc1/nのk値は17~19mg-PO43-/g-吸着剤)し,複合体中に含まれたメタチタン酸の質量あたりに換算したリン酸イオンの吸着量は市販メタチタン酸のそれの約10倍の値を示した。複合体はまた縮合リン酸イオンを吸着した。吸着等温線の傾きFreundlich式の1/nは,オルトリン酸イオンではO.116,三リン酸イオンでは0.261であった。複合体は担体としての活性炭の特性を活かし,メチレンブルー,ヨウ素,有機物質(フェノール)などを吸着した。それらのものに対する吸着能は複合体の調製条件におけるTiOSO,溶液(ml)と活性炭(g)との比の増大によって減少した。カラム試験では複合体中に吸着されたリン酸イオンは,2N水酸化ナトリウム溶液と水で溶離され,のち吸着剤は酸で再生した。
  • 志摩 健介, 細山 修, 田辺 公子
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1326-1328
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The photoreaction of pyruvamide with 2, 3-dimethylo-2-butene in ethanol gave products [1], [2], [3], and [4] in a fairly high conversion. The products [1], [2], and [3], are 1: 1adducts of pyruvamide and 2, 3-dimethy1-2-butene, and [4], is a pinacol. In low conversion experiments in methanol, [2], J was exclusively produced. The ultimate quantum yield for the formation of [2], was 0.036. Stern-Volmer slope of 103.6 l mo-1 was obtained by naphthalene quenching experiment. From this experiment, it was confirmed that [2] was formed via the triplet state of pyruvamide. From the dependence of quantum yield on alkene concentration and quenching experiment, the ratio of the rate constants of elementary processes was calculated.
  • 岡本 勇三, 杉田 嘉一郎
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1329-1332
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Halogenation of enamino ketone-copper (II) chelates 1 with solid anhydrous copper (II)halides in benzene under nitrogen has been investigated. Three moles of copper ( II ) chloride were required for chlorination of his (4-anilino-3-penten-2-onato) copper (II) [1a]. The copper (II) chloride was almost quantitatively converted into copper( I ) chloride (No.5 in Table 1)and hydrogen halides were scarcely evolved. In the presence of a radical scavenger, [1a] gave 4-anilino-3-chloro-3-penten-2-one [2 a] in a lower yield obviously (No.2∼4). Copper (II)bromide gave a-bromo enamino ketones [3] in higher yields than copper(II) chloride under similar conditions (No.7 and 9, 11 and 13). On the basis of these results the reaction is postulated to proceed by ligand transfer from copper (II) halide to [1 ].
  • 山下 正和, 池側 省吾, 末光 力作
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1333-1334
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    An alternative method for carboxylation of the Grignard reagents was developed. Both aromatic and aliphatic Grignard reagents gave the corresponding carboxylic acids in moderate yields by the reaction with pentacarbonyliron followed by treatment with iodine-water. The secondary alkyl Grignard reagents gave the acids rather in low yields.
  • 村田 和久, 松田 昭男
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1335-1336
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Some Co2(CO)8-diphosphine catalysts were found to be effective for the hydroformylation of aClHlyPl Phacetate and allyl formate; the activity decreased in the order: diphos>cis -Ph2PCH=CHPPh2>Ph2PC=CPPh2> none >Ph2PCH2PPh2 > PPh3. Under the conditions employed, 4-acetoxybutanal was 80% or above of three isomeric aldehydes produced.
  • 萬田 栄一郎, 志村 武彦
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1337-1338
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N, N-Dimethyl-p-phenylenediamine was prepared in about 80% yield through the electroreduction of N, N-dimethyl-p-nitrosoaniline by 4.0 Fimol of electricity under a constant current density of 0.005 A/cm2 in 10% H2SO4 aq. or 10% H2SO4 aq. -MeOH medium by using a stainless steel, carbon or platinum plate as a cathode electrode.
  • 岸本 諭, 北原 新哉, 真鍋 修, 檜山 八郎
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1339-1341
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Soft Brönsted acids such as phenols, naphthols or hydroxypyridines were found to catalyze the coupling reaction of 1-naphthol with 1-diazonio-2-naphthol-4-sulfonate. In contr ast, a hard acid such as acetic acid was not effective for the reaction. The kinetic data well agreed with the Brönsted equation k=1.3×1021 Ka0.83. Mechanism of the reaction is discussed.
  • 卯西 紹信
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1342-1344
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The solubility parameter of solvent can be indicated a point in a three dimentional solubility parameter (δdph) space. Regions of solubility are found for polymers when solubility data are plotted. These regions are not globular, but look like a crushed ball. When polymers were dissolved in many solvents, solubility region ' for polymers occupied a wide space in the three dimensional solubility parameter space. The volume of the region was called solubility index. The solubility for polymers were evaluated by the solubility index.
  • 成智 聖司, 丸尾 時彦, 田中 誠次, 金清 隆純, 山田 和俊
    1981 年 1981 巻 8 号 p. 1345-1347
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Mixtures of barium acrylate-methacrylate were prepared by crystallization from an aqueous solution of acrylic and methacrylic acids in molar ratios ranging from 1/9 to 4/6. Thermal reaction of the above mixed salts in the solid state under reduced pressure gave four different dimers, dimethyl 2-methylene-4-methylglutarate [1], dimethyl 2-methylene-4, 4-dimethylglutarate [2], dimethyl 2-methyleneadipate [3] and dimethyl 2-methylene-5-methyladipate [4]. On the other hand, the mixed salts of magnesium, calcium and strontium gave dimers[3] and [4]. Dimers[1]and [3] were obtained in the yield of 12.8% and 3.9%, respectively, when the mixture with the molar ratio of 2/8 was heated for 3 h at 210°C. In the case of the strontium salt, [3] was obtained in 7% yield heating the equimolar mixture for 2 h at 220°C. The change of the crystal lattice measured by X-ray analysis showed that the lattice structure of the barium salt was not destroyed as a whole but that of the strontium salt was disordered by heating.
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