日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1982 巻, 1 号
選択された号の論文の30件中1~30を表示しています
  • 小村 照寿, 高橋 光信, 今永 広人
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ガラス電極を用いた電池の起電力法によって,水一アセトン混合溶媒のプロトン解離平衡が研究された。水分子は純水よりも混合溶媒中の方がエネルギー的には安定であるがエントロピー的には逆に不安定である。このエンタルピーとエントロピー項の大きさはかなり近いので,水分子と混合溶媒の相互作用は水あプPトン解離をわずかに不利にするにすぎない。一方,H30+ とOH-を水から混合溶媒へ移すときのGibbsエネルギーはアセトソ濃度とともに単調に増加するが,エンタルピーの増加はアセトン濃度が約40%で最大になる。またエントロピー変化もアセトン濃度が20~30%で極大を示し,45%以上では負の値となる。このようなイオンと溶媒の相互作用の変化は,イオンに配向した溶媒和層と巨視的誘電率をもったパルク層からなる不連続な溶媒和モデルに基づいて考察された。アセトン濃度があまり高くない範囲では,H30+とOH-層が水から混合溶媒へ移るとき,溶媒稲層ではエンタルピーの増加が起こる。これは,水に少量のアセトンを混合することによって水素結合による分子会合が健進され・液体の構造性がより発達するためであろうと推定される。
  • 山内 洋文, 近藤 精一
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 7-9
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    浸潰熱は一般に固体表面のキャラクタリゼーションを目的として研究されている。一方それに対して,もしもよくキャラクタラィズされた表面を浸潰固体として用いれば,種々の液体の構造を研究する手がかりを与えることができると予想される。本研究では,表面状態がよく規制された,細孔径の大きい,かつ大きい表面積を有するシリカゲルを用い,ナトリウム,リチウム,マグネシウム,マンガン(II),およびバリウムの塩化物を電解質として,その水溶液への浸潰熱の測定から,この可能性を検討した。その結果,試料の単位表面積あたりの浸潰熱は,電解質濃度の増加にともなって直線的に減少する。この傾向は水和熱の大きい陽イオンの場合ほど大きい。またこの現象はシリカの等電位点の上下で水溶液のpHに関係しない。ゆえに,浸潰熱の電解質濃度の増加による変化はこれらの電解質の添加による水の構造変化を反映していると考えられる。
  • 石川 博, 石井 英一, 上原 斎, 中根 正典
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    鉄一臭素系熱化学サイクルに関する研究の一環として,FeBr2の加水分解反応とその再生反応であるFe304の臭素化反応について速度論的な検討を行なった。実験は固体反応物の粉末試料について熱テンビンを用い気一固反応で行なった。,詰反応温度500-600℃ におけるFeBr2の加水分解は反応の進行にともない化学反応律速から生成物層内拡散律速に移行することが見いだされたが,変化率0-1.0の全範囲にわたって一つの実験速度式が適用できた。FeBr2の再生反応については,前段の加水分解工程でどの程度の比表面積を有するFe304粉末が生成するかによってその反応条件が大きく変化した。比表面積が5m2/9と比較的大きなFe304粉末では反応温度200-250℃で共沸組成臭化水素酸を用いても十分その臭素化を行なうことができた。この場合,反応は内部界面での化学反応律速の速度式に適合して進行し,Fe80`変化率は約0・8に達した。一一方,比表面積が0.2m2/9のFe304粉末の臭素化には450-500℃ の反応温度と水を分離した臭化水素ガスが必要とされた。この場合,生成物層内拡散律速の速度式が適用できたが,Fe304`変化率は0.5程度であった。
  • 石井 啓司, 金井 宏椒, 赤崎 一元, 多羅間 公雄
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ハロゲン化コバルト(II)をフマノレ酸ジメチルの存在下,アセトニト屯リル中亜鉛で翫し熔灘アクリル酸メチルとメタノールを加えると,アクリル酸メチルが頭一頭結合で還元二量化されアジピン酸ジメチルを与えた。ハロゲンの収率1こおよぼす影響は1>Br>>Cの順で,活性種はコバルトーハロゲン結合をもつことが示唆された。配位子として働くフマル酸ジメチルは,コバルトに対し2倍モル量のとき最大収率を与えた。過剰の亜鉛とアルカリ金属ハロゲン化物の添加によって収率が向上し;-tttくに,NaIヘサの効果がいちじるしかった。フマル酸ジメチルは生成したハロゲン化亜鉛一亜鉛系により還元されるために,次第に触媒活性が低下した。アクリル酸メチルとメチルビニルケトン(MVK)どの共還元二量化の条件を探索したところ,アクリル酸メチルをMVKに対し大過剰に用い,その混合物を15時間にわたって滴下するとき,共還元二量体が80%の選択性で得られた。活性発現には,Co(0)錯体である[Co[trans-C2H2(COOMe)2]2(CH8CN)2]とアルカリ金属ハ冒ゲン化物,亜鉛の3成分が必要であった。
  • 森島 毅
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    PS版の耐刷性ならびにそれから複製された印励物などの諸性能を高めるためにオフセヅト印捌版のアルミニウム支持体の表面改質の研究を行なった。改質の一方法としてチタン(IV)イソプロポキシドとアセチルアセトンとの反応によって得られるチタ'ン(IV)アセチルアセトナト錯体をアルミニウム板上に設けることを提案した。本研究ではこの種の処理皮膜の表面特性を明らかにする目的で改質処理条件と諸特性との関係を調べた。処理液組成,UV照射ならびに加熱処理が皮膜の諸特性にいかに影響をおよぼすか,接触角,IRRS測定,SEMなどにより検討した。その結果,これらの諸因子はTAA皮膜の表面特牲にいちじるしい影響を与えることがわかった。
  • 若生 彦治
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化スズ(IV)の可燃性ガス検出感度と結晶配向との関連を調べる目的で金属スズをターゲヅトとするスパヅタ法により酸化スズ(IV)薄膜を作成し,薄膜のX線回折籐を分析した。薄膜のガス検出感度はSnO2(101)配向の構成率に比例して向上した。さらに,この薄膜のガス検出特性のガス濃度依存性を諏ドる目的で膜面温度を一定にしたままガスの濃度を種々変えた。ある濃度以上になると従来の比例直線が突如移動する現象が観測された。この現象などから,ガスは固体表面に単分子層で吸着し,この吸着率にガス検出特性が対応しているとの示唆を得た。
  • 杉田 蔵信, 清水 敏夫, 鈴木 秀男
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    多孔性焼結ニッケル基板にパラジウムを析出させた水素電極の分極特性と電池性能との関係を研究した。1mg.cm-2から10mg.cm-2の範囲でパラジウムを有する水素電極を,0.5-10g.l-1のPdCl2溶液中に基板を浸漬することによって調製した。水素電極のアノード分極は20%KOH溶液中で,Hg/HgO参照電極を用いる直接法およびカレントインタラプター法によって測定した。本実験で電池性能は,より容量が大きい焼結ニヅケル電極と組み合わせた水素電極で構成される電池の容量によって示される。電池の放電電流が適正である場合,水素電極の分極特性はその電池性能とよく関連しているが,電流が増加すると電池性能と関連しないようになる。この場合,放電電流密度は水素電極の見かけの交換電流密度を超えてはならないと考えられる。
  • 角谷 賢二, 渡谷 誠治, 中前 勝彦, 宮田 照久, 端山 文忠, 松本 恒隆
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    磁気記録媒体中における針状コバルト含有酸化鉄の磁場配向を磁化の変化から検討し,つぎの結果を得た。(1)良好に分散した塗料に配向磁場を印加すると,一次分散に近いと考えられる粒子は,1秒以内に回転をはじめ配向磁場によってまず粒子がFlocculation構造を形成し,つぎに次第に高配向するようになり角型比は飽和値に達した。(2)配向磁場を除去すると,塗料中で配向した粒子は,粒子間の磁気的相互作用により乱れやすかったが,塗膜中のそれは,溶剤の蒸発により乱れにくかった。(3)磁気テープ作製過程の粒子の配向処理をソレノイドコイルおよび反発対向磁石で行ない比較検討した結果,前者の方がすぐれていた。
  • 伊藤 宏, 岡安 宏, 奥脇 昭嗣, 岡部 泰二郎
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 44-48
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸ニヅケル(II)溶液中のニッケル(II)イオンを,90℃ で鉄で還元するセメソテーション法でのアルミニウムイオンの影響について調ぺた。硫酸ニッケル(II)溶液中に0.2ppmのアルミニウムィオンが存在してもニッケルのセメンテーション速度は低下し,24ppm存在するとニッケルの沈殿率は39.2%に低下した。しかしアルミニウム濃度5ppm以下では,銅(II)イオンがO.2g/l,またはコバルト(II)イオンが2g/1存在すると,ニッケルの99%以上が還元析出した。また鉄粉および深海底石灰質軟泥を用いて溶液中のアルミニウムの中和除去を行なったが,3-5ppmアルミニウム含有溶液とするには,溶液中の1-2%程度のニヅケルの共沈が避けられず,アルミニウム0.2ppm以下とするには,ニッケルの約10%が共沈した。
  • 小島 昭, 大谷 杉郎, 内藤 幸雄, 茂木 一
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    横型管状炉を用いた外熱方式で,9種類のエチレンおよびエタンの塩素化物を原料にし,500,600および700℃に加熱した炭素基材上に低温気相熱分解炭素(LTPC)を堆積させた。そのさいの基材温度と堆積速度との関係から,これらの原料塩素化物は三群に分類することができた。第1群はcis-およびtrans-1,2一ジクロPtエチレン,第2群は1,1-ジクロロエチレン,1,1,2一トリクロロエチレン,1,1,1一および1,1,2一トリクロロエタンであった。LTPCの堆積は,第1群の場合は500℃,第2群の場合は600℃ から認められ,基材温度が高くなると堆積速度は増大した。得られたLTPCの比重,X線パラメー・ターおよび化学組成はいずれの場合も同じであった。またジクロロエチレン類を原料として基材温度700。Cの場合だけ,原料導入口に近い基材上に二層構造(上層:columnar型,下層:isotr。pic型)のLTPCが堆積した。第3群は,700℃でもほとんど堆積のみられない塩化ビニル,1,1一および1,2一ジクロロエタンで,比較原料として用いたベンゼンの場合と同じ堆積挙動を示した。このように,原料の種類によってLTPCの堆積状況に差の認められるのは,各原料塩素化物の分解初期過程に副生する中間体の組成に関係するものと推測した。
  • 室住 正世, 五十嵐 龍志, 中村 精次
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    同位体希釈表面電離質量分析法は,その原理が明確なことと装置の高感度と高精度なことによって,環境中のある種の重金属分析においてすぐれた分析法との評価を受けている。しかし全濃度が101-102ppt(1012)程度で,しかも溶存形が不明確な海水分析に応用する場合には,基本条件として添加スパイクと海水成分の間に同位体平衡が成立したことを確認しなければならない。室蘭市沖2kmの太平洋表面水中のタリウム,銅,カドミウム,鉛成分を対象として,同位体平衡を成立させるための条件を検討し,海水中の全濃度と粒子中濃度とを正確に分別定量し,さらに採水時の相違による全濃度差,粒子中濃度差があることを認めた。
  • 柄山 正樹, 鈴木 繁喬
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化インジウム電極にヘミンを化学修飾する方法として,アミノ基を有するケイ素化剤[3-(2-アミノェチルアミノ)プロピル]トリメトキシシランまたは(3-アミノブロピル)トリエトキシシランを電極表面に結合させたのち,ヘミンをアミド結合させる方法と電極表面に直接エステル結合させる方法とを行ない,ESCAにより,化学修飾の確認を行なった。電極表面上に固定化されたヘミン量は,吸光光度法(ヘミンのSoret帯(418nm)での吸光度測定)およびサイクリックボルタンメトリー(ピリジン中におけるOVvs.SCE付近のヘミンの鉄(III)の酸化還元電流測定)により求めた。両測定法から求められた値はかなりよく一致した。つぎに,ヘミン修飾電極を分析化学的に利用する目的で,電流一電位曲線におけるヘミン申の鉄(III)の酸化還元ピークに対する銅(II)の影響を調べた。鉄(II)/鉄(III)の酸化還元ピーク電流は銅(II)の添加量に比例し増加した。また,このピーク電流の増加はヘム中の鉄(II)と銅(II)との化学反応を律速段階とした電気化学反応(E)-化学反応(C)のEC機構によると推測した。
  • 柄山 正樹, 鈴木 繁喬
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    グラッシーカーボン表面に3種のコンプレキソン,イミノ二酢酸,エチレンジアミン四酢酸,3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミン-N,N,N',N'-四酢酸を化学結合させることによってグラッシーカーボン表面を化学修飾することができた。得られた化学修飾電極を硝酸銀水溶液中に浸漬後,O.1mol/l硝酸カリウムを支持電解質としてサイクリヅクボルタンメトリーによって,電極上に捕集された銀(1)の検出を行なった。どの化学修飾電極も+0.3V(vs.SCE)付近に銀(O)の酸化ピークが観察された。この酸化ピークはる未修電極における前電解(-0.2V vs SGE, 10分)後の電流-電位曲線に現われる銀(O)の酸化ピーク(+0.4V 付近)との比較から電極表面の近プレキソンに銀(I)によるものと考えられた。また,この酸化ピーク面積は浸漬溶液の銀(1)濃度に1×10-6-5×10-6mol/lの範囲で比例したQさらに,o.1mol/1硝酸カリウム電解液に塩化物イオンを加えた場合,酸化ピークが鋭くなり,ピーク電流が約4倍増加する現象が見られた。この酸化ピーク電流も浸漬銀(1)溶液の濃度にL1×10"6~1.1×10墜5mo1/1の範囲で比例した。なお,この酸化ピークは電極上の銀(O)の塩化物べの酸化反応,すなわちAg+Cl-→AgCI+e-と推定された
  • 松村 竹子, 石田 忠三, 笠井 正子, 黒田 記代
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 72-80
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ルテニウム(II)およびオスミウム(II)-2,2'-ビピリジン錯体の可逆な-子電極反応の酸化還元電位に対する媒質効果について検討した,これらの媒質効果は比較的小さく,支持電解質とこれらの錯イオンとの相互作用により支配されるサイクリヅクボルタンメトリー.ピーク電位の値は,錯イオンの電子構造や配位子の性質にあまりよらず主として錯イオンの電荷数に関連している。支持電解質の過塩素酸イオンは,錯陽イオンとイオン対を生成し,電極反応のピーク電位を負側に移行させる。一方,テトラエチルアンモニウムイオンは,錯陰イオンとイオン対を生成して電極反応のピーク電位を正側に移行させる。溶媒効果は,溶媒のドナー性,アクセプター性と錯イオンとの相互作用として説明され,電極反応に関与する錯イオンの電子構造,錯イナンの電荷数,配位子のσ ドナー性および溶媒のドナー数,アクセプター数に関連している。錯陽イオンの酸化還元電位は溶媒のドナー数が増加すると負側に移行し,錯陰イオンの酸化還元電位は溶媒のアクセプター数の増加とともに正側に移行する。これらの錯イオンは軟かいイオンであるため,硬い金属イオンにくらべて溶媒効果はいちじるしく小さい。
  • 坂根 康秀, 松本 清, 大塚 隆一, 箴島 豊
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    pH2.5-10の緩衝液中で酸化型グルタチオン(GSSG)の水銀電極における電気化学的挙動をおもにサイクリックボルタンメトリー・により検討した。pH5.0の緩衝液中では濃度増大にともない,GSSGは1-3の還元ピークを与えた。3.5×10-4mol/lのGSSGはHMDEで掃引速度を3V/sとし,OVvs.SCEから掃引を行なうとピーク電位がそれぞれ-0.42Vvs.SCE(第1ピーク),-0.51Vvs.SCE(第2ピーク),-O.72Vvs.SCE(第3ピーク)の還元ピークを与えた。第1,第3ピークはそれぞれ吸着的,および拡散的に挙動したが,第2ピークは吸着的性質と拡散的性質の両方を有することから,多分子吸着層の還元によるものと推定した。pHをパラメーターとして第1ピークのピーク電流と初期保持時間との関係,および定電位電解の結果から,第1,第3ピークの反応機構を(1),(2)のように推定した。GSSGとGSHの同時定量を検討したところ,1×10-4mol/lのGSSGは5倍濃度のGSHにはほとんど影響されなかった。
  • 野村 貴美, 氏平 祐輔, 小嶋 隆司
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ホスホブィライト[Zn2Fe(PO4)2・4H2O]を窒素および空気中で加熱し,脱水や熱分解で生成した化合物の状態をMossbauerスペクトロメトリー,X線回折分析,熱重量および示差熱分析から解析した。約168℃から277℃ では亜鉛一鉄混合リン酸塩の一水和物(1.S.=1.13mm/s,Q.S.=2.04mm/s),および二水職物(1.S.=1.18mm/s,Q.S.=2.57mm/s)が窒素および空気中で存在することがわかった。277℃以上でホスホフィライトはその水分子をほとんど離脱し,窒素中では無水亜鉛一鉄混合リン酸塩のγ相に変態したが,空気中では無水リン酸亜鉛[α-Zn3(PO4)2]と無水リン酸鉄(III)[FePO4]ならびに他の常磁性鉄(III)化合物に分解した。空気中でのボスホフィライトの脱水過程でほとんど鉄(II)は鉄(III)に酸化されたが,さらに試料を850℃ 以上に加熱すると空気中でも鉄(III)が鉄(II)に還元きれて無水リン酸亜鉛に取り込まれ,亜鉛一鉄混合リン酸塩のγ相が生成することがわかった。ボスホフィライトの熱分解過程が議論され,熱分解生成物の鉄の化学状態の割合と温度との関係がダイヤグラムとして示された。
  • 山根 兵
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 93-97
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    過酸化水素によるクロモトロブ酸の酸化反応にコパルトが触媒として作用することを利用した反応速度法による極微量コパルトの定量法について研究し, 分析の迅速化, 操作の簡便化をはかるためフローインジェクション分析法システムの導入を検討した。クロモトロブ酸溶液 (2.7×10-2mol・dm-3), 過酸化水素溶液 (0.4%) および炭酸ナトリウム溶液 (0.04mol・dm-3, pH11,9)の流速をそれぞれ 0.36cm3・min-1とし, これらを混合した溶液を連続して流しておく。20μlの試料を注入して触媒反応を開始させ, 410nmにおける吸光度変化を測定記録した。記録されたピーク高さとコパルト濃度 (0~100ppb)の間にはほぼ直線関係が認められ, 2ppb(40pg)程度までのコパルトを約60試料/時間の速度で定量することができた。50ppbのコパルト溶液を分析した場合の相対標準偏差は 2.3% (n=10)で精度は良好であり, 操作は簡単である。クロム(III)は10倍量の共存でも負の誤差を与えるが, 他の多くのイオンは100~200倍量の共存ではほとんど影響しなかった。
  • 中森 建夫, 佐藤 安宏, 笠井 俊保
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 98-104
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ナフトキノンの 2, 3-位にアゾール環を縮合した化合物のうち, チアゾール環を縮合した化合物の報告は少ない。そこで 2, 3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン[1]をアミノ化して得た 2-アミノ-3-クロロ-1,4-ナフトキノン[2]に, 硫化ナトリウムついで二硫化炭素を作用させ, 2, 3-ジヒドロ-2-チオキソナフト[2,3-d]チアゾール-4,9-ジオン[3]合成した。ついで[3]とブロモアセトアルデヒド=ジエチル=アセタール, クロロアセトン, α-クロロアセトフェノン, クロロ酢酸, ヨード酢酸およびヨウ化メチルとの反応を行ない, [3]の環外硫黄で縮合した[4a]~[4e]を得た。この反応は, 塩基を大過剰に用いると目的物が加溶媒分解された化合物[10]や[11]が得られることから塩基は1,4モル比とした。さらに濃硫酸およびポリリン酸を用いて[4a]~ [4c]の閉環反応を行ない, 5,10-ジヒドロ-5, 10-ジオキソナフト[2, 3-d]チアゾロ[2, 3-b]チアゾリウムペルクロラート[5a]~ [5c]を得た。これらの反応をベンゾチアゾールやナフトキノンの 2,3-位にイミダゾール環の縮合した類似の化合物と比較し, ナフトキノンのカルボニル基の反応性におよぼす影響について考察した。
  • 中森 建夫, 佐藤 安宏, 笠井 俊保
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 105-110
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ナフトキノンの 2, 3-位にアゾール環を縮合した化合物のうち, チアゾール環を縮合した化合物は生理活性を有することが報告されている。そこで 2, 3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン[1]をアミノ化, ついでアセチル化して得た 2-アセチルアミノ-3-クロロ-1,4-ナフトキノン[3]に, チオシアン酸アンモニウムを作用させ, 2-アミノナフト[2, 3-d]チアゾール-4, 9-ジオン[4]を合成した。つぎに[4]を中間原料として種々の誘導体の合成を行なった。まず, [4]のSandmeyer反応により2-クロロ体[6]を得た。[6]は反応性に富み, ナトリウムメトキシド, メチルアミンおよびジメチルアミンとの反応では収率よく 2-置換体[7]~ [9]をあたえた。[4]とヨウ化メチルとの反応では, 環内窒素が反応した2-イミノ-3-メチル体[10]と3-メチル-2-メチルイミノ体[11]を得た。また, 四環性アゾール類を得る目的で[4]とプロモアセトアルデヒド=ジエチル=アセタール, プロモアセトンおよびα-プロモアセトフェノンとの反応を行ないイミダゾ[2, 1-ろ]ナフト[2, 3-d]チアゾール-5,10-ジオン類[12]~[14]を得た。これらの反応からナフトキノンのカルボ=ル基の反応性におよぼす影響について考察した。
  • 今井 淑夫, 奥野山 輝, 平田 勝彦, 上田 充
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 111-114
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-(フェニルスルホニル)サッカリン[1]とアミン(アニリン[2a], ベンジルアミン[2b], ブチルアミン[2c]) の反応について検討した。[1] と [2a] ~ [2c]を室温下に種々の溶媒中で反応させると, 開環付加体の o-(置換カルバモイル)-N-(フェニルスルホニル)ベンゼンスルホンアミド [3a]~[3c]が生成した。[3a]を融点付近で加熱処理すると, ベンゼンスルホン酸の脱離をともなって 3-アニリノ-1, 2-ベンゾイソチアゾール=1, 1-ジオキシド[4a]が高収率で生成した。一方, [3b]と[3c]を加熱処理すると, 低収率で 3-(置換アミノ)-1,2-ベンゾイソチアゾール=1, 1-ジオキシド ([4b]と[4c])が得られた。[3a]~[3c]を塩化チオニルと加熱反応させると, いずれからも高収率で[4a]~[4c]が生成した。これらの反応の可能な反応経路についても考察を加えた。
  • 永井 正敏, 沢開 公宣, 加部 利明
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 115-119
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    還元処理したモリブデナ-アルミナ触媒によるフェナジンの水素化脱窒素の反応機構を検討するために, フェナジン濃度 0.25wt% のトルエン溶液を用い, 高圧流通系, 反応温度 270~310℃, 全圧 100atm, 水素流量 30l/h, WHSV 10で反応を行なった。
    フェナジンは反応温度 240℃以下でも容易に 5,10-ジヒドロフェナジンからペルヒドロフェナジンまで逐次的に水素化される。反応温度270℃付近からフェナジンの部分水素化体の開環・脱窒素反応によりアニリン, ベンゼン, シクロヘキセン, シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンが生成するようになる。反応温度 310℃でフェナジンは90%脱窒素されるが, これ以上の温度では残存する窒素化合物はおもにアニリンであるので, アニリンの脱窒素反応はかなり遅いものと考えられる。フェナジンの水素化脱窒素反応は複素環とベンゼン環が完全に水素化されたペルヒドロ体の水素化脱窒素反応と並発して, ヘキサヒドロ体およびオクタヒドロ体の反応も起こる。
  • 佐藤 孝俊, 斎藤 好廣, 穴沢 一郎
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 120-124
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    非イオン界面活性剤 (PC-n) 水溶液中におけるベンズアルデヒドの自動酸化におよぼす抗酸化剤 (3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸プロピルエステル (TAPE), 2-t-ブチル-4-メトキシフェノール (TBMP),2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-6-クロマノール (TTTC)) の影響を検討した。
    非ミセル系 (CMC以下) では TAPE に, ミセル系 (CMC以上) では TBMP に強い抗酸化効果が認められた。
    その理由をベンズアルデヒドおよび抗酸化剤のミセル相とバルク相間の分配係数 (K) および静電層とコアー部間の分配比 (R) から検討した結果, 非ミセル系ではベンズアルデヒドに近似した分配係数を示す TAPE に, またミセル系では同じくベンズアルデヒドに近似した分配比を示す TBMP に, それぞれ抗酸化効果のあることが明らかとなった。
  • 田島 守隆, 柴 隆一, 八尾 亨, 滝本 道明
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 125-130
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メラミンの紫外吸収スペクトルの極大吸収波長は, ヒドロキシメチル基の導入数の増加にともない長波長側にほぼ直線的に移行することを見いだし, この現象を利用してメラミンのヒドロキシメチル化反応の追跡, およびイオン交換クロマトグラフとの組み合わせによる (ヒドロキシメチル) メラミンの分子種分布測定法の検討を試みた。
    メラミンのヒドロキシメチル化反応は可逆の二次反応として取り扱うことができ, メラミン濃度が1/30mol/l 程度の希薄溶液においては平衡定数Kは 2.7~3.5と小さく, 逆反応が相当大きい結果を得た。ヒドロキシメチル化反応の活性化エネルギーとして 24.5~25.0kcal/mol の値を算出した。また, (ヒドロキシメチル) メラミンの解離反応は不可逆の一次式で示され, 活性化エネルギーとして 25.0~25.4kcal/mol の値を得た。これらの値は鐙換したヒドロキシメチル基の数, 反応時の pH によってほとんど変化しなかった。一方, イオン交換クロマトグラフ法との組み合わせにより測定された各種 (ヒドロキシメチル) メラミンの分子種分布の値は, ペーパークロマトグラムおよび化学分析から予知される値とほぼ一致し, この分析法の適正性が立証された。
  • 坪川 紀夫, 武田 直樹, 稲田 弘, 上野 勝範
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 131-136
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カーボンブラック-アセチルアセトン系で開始されるメタクリル酸メチル (MMA) のラジカル重合を追跡し, 重合開始に粒子表面のどのような官能基が関与するかを調べた。アセチルアセトン単独では MMA の重合を開始する能力がなかったが, Neospectra II や Carbelac 1 などのチャンネルブラックとアセチルアセトンの共存する系では, MMA の重合がすみやかに開始されることがわかった。また, このような開始系には水の共存が不可欠であることや, アルコール類の添加によって重合が促進されることも明らかになった。さらに, あらかじめ表面処理を行なったカーボンブラック-アセチルアセトン系による重合開始能力を未処理の系と比較した結果などから, 重合開始に粒子表面のキノン型酸素が重要な役割を演じていることがわかった。なお, 重合速度 (Rp) は
    Rp=k[NeospectraII]0.5[Acetylacetone][MMA]
    で表わされ, 開始反応の活性化エネルギーは 23.2kcal/mol と求められた。以上の結果に基づき, 本重合系の重合開始機構について考察を加えるとともに, このような系で生成するカーボンブラックグラフトポリマーについても検討した。
  • 丹羽 修一, 今井 寿美, 織戸 義郎
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 137-138
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The hydrogenation of ethyl benzoylformate over the platinum carbon (Pt/C) catalyst modified. with cinchonidine gave (RH)-(-)-ethyl mandelate in an optical yield of 89.5%. The asymmetric hydrogenation activity of the catalyst was strongly affected by preparation of the Pt/C catalyst. The best Pt/C catalyst was obtained by the following procedures; 1) reduction of H2PtCl6⋅6H2O/ active carbon with sodium formate, 2) treatment of the resulting Pt/ C catalyst with acetic acid, and 3) preheating of the Pt/C catalyst at 300-400°C in hydrogen immediately before its modification with cinchonidine.
  • 山口 達明, 宮川 龍次, 三井田 惇郎
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 139-141
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The effect of organic bases, aniline and piperidine, on the hydrogen absorption rate of bis(dimethylglyoximato) -cobalt (II), Co (Hdmg)2, was investigated in methanol at 30°C under atmospheric pressure of hydrogen. The marked difference between the two bases was that a maximum rate was shown at the concentration of O.10 mol/l of aniline, while for _piperidine, no rate depression was shown even in a large excess of piperidine (Fig.1- (a)). The computer assisted iteration gave the stepwise stability constants of Co (Hdmg)2B and Co (Hdmg)2B2:145±15 and 2.02±0.08 l/mol for aniline and 56±6 and 0.00 l/mol for piperidine, respectively.
  • 伊藤 三郎, 原口 謙策, 山本 篤夫, 林 謙次郎
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 142-144
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Kinetics of the complexation reaction between nickel(II) ion and 2-(2-thiazolylazo)-4methylphenol(TAC) in the presence of nonionic surfactants was studied. The rate of the complexation reaction is controlled by the 1: 1 chelate formation reaction which proceeds through the two reaction path in aqueous phase:The estimated rate costants and activation parameters are listed in Table 2: they are in good agreement with those determined by the solvent extraction method. From the effect of surfactant concentrations on the reaction rate, the partition constants of TAC between the micelle of the surfactant and the aqueous phase were also determined (Table 1).
  • 角田 欣一, 野尻 知子, 野尻 幸宏, 原口 紘蒸, 不破 敬一郎
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 145-147
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Total calcium in serum was determined by inductively coupled argon plamsa (ICAP) emission spectrometry as well as flame (air-C2H2) atomic absorption and flame (N2O-C2H2) atomic emission spectrometry, and all analytical values were compared with each other. According to the results, ICAP emission spectrometry provided consistent values with those obtained by flame emission and absorption (NBS recommended method) spectrometry. In ICAP emission spectrometry, calcium in serum could be measured only by diluting the serum 50- or 500- fold with deionized water, while in flame emission or absorption spectrometry La or NaCl should
  • 甲斐 昭, 小薬 次郎, 小林 靖二
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 148-150
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Some negative staining properties of cellulose microfibrils biosynthesized by Acetobacter xylinum were investigated by electron microscopy and gravimetric analysis. When the neverairdried microfibrils after biosynthesis were stained with an aqueous solution of heavy metal salt, they were homogeneously stained and also had a tendency to deform. But, in the case of the air-dried microfibrils, their insides were scarcely stained. Weight percentage of stainingstuff adsorbed in the air-dried samples stained was from 9 to 11%. For the never-air-dried samples, it was about 10-20 times as much as that of the former. On the basis of the staining properties, it may be quite reasonable to consider that the bacterial cellulose microfibril after biosynthesis is in amorphous state.
  • 新井 房夫, 氏家 淳雄, 飯塚 俊彦, 斎藤 武夫
    1982 年 1982 巻 1 号 p. 151-152
    発行日: 1982/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The purpose of this investigation is to find the total mercury concentration in the weathered volcanic ash bed (so-called Kanto loam) in a non-polluted area and to compare the values with those of aqueous sediments and surface black soils which are more or less polluted. The 26 samples were collected systematically according to the columnar section of Kanto loam at Minasawa, on the southern foot of Akagi volcano. These samples were powdered, dried at room temperature and analyzed by an atomic absorption spectrometry with a reduction-vapor phase technique. Data show a considerable range from 0.077 ppm to 0.005 ppm. The average of the primary mercury concentration in northern Kanto loam is estimated to be of 0.033ppm.
feedback
Top