日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1982 巻, 3 号
選択された号の論文の36件中1~36を表示しています
  • 高橋 光信, 小村 照寿, 今永 広人
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 329-334
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    25℃ における水-アセトン系中のHCIの活量係数と会合定数および水からその混合系へのHC1の溶媒間移行の熱力学的諸量を,水素イオン用ガラス電極を用いた電池の起電力法によって求めた。これらの熱力学的諸量は,溶媒分子がイオンに配向していると考えられる溶媒和層の寄与と巨視的な誘電率をもつバルク層の寄与に分割され,後者の寄与は溶媒和イオンの半径を0.41nmと仮定した静電的なモデルから見積もられた。HC1が水から混合溶媒へ移るときに,溶媒和層ではエンタルピーおよびエントロピーの減少が起こるが,エントロピーの寄与の方が大きいので,溶媒和層における自由エネルギー変化はプセトン濃度の増加とともに大きくなることがわかった。これらの熱力学関数の変化は,混合溶媒の液体構造の変化と関連づけて考察された。
  • 北原 文雄, 松村 茂, 佐藤 俊一, 川崎 茂雄, 神鳥 和彦, 今野 紀二郎
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 335-340
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸ドデシルとメタクリル酸グリシジルの共重合体(PDMA-GMA)を分散剤とし,シクロヘキサン中で分敬重合法により,ポリ(メタクリル酸メチル)のミク導スフェア(MS)分散系を調製した。その結果,球状,単分散性で,分散安定性のよい分散系が得られた。分散剤はGMA部でMSに化学結合し,DMA部が吸着層を構成している。分散安定性におよぼす吸着層効果を評価するため,式(5),(6)からポテンシャルエネルギーを計箕し,Vmax=10kTを得た。この結果は分散安定性の観察結果と矛盾しない。
    この高分子MS分散系に対する分散染料Disperse Yellow7,水溶性染料Acid Blue 138,Basic Violet 3の吸着を研究した。分散染料の吸着を可逆吸着と不可逆吸着とに分離した。水溶性染料は水可溶化Aerosol OTシクロヘキサン溶液に可溶化させたうえ,MS分散系に添加し吸着させた。吸着等温線はLangmuir型を示した。また,吸着量はAerosolOT溶液への可溶化水の量を増すにつれて急激に低下した。
  • 木村 優, 池田 たか子, 原 伸子
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 341-346
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水-エタノール混合溶媒の酸姓溶液中でトリス(オキサラ)コバルト(III)酸錯イオン[Co(C2O4)3]3-の分解反応およびそれにともなって生成するラジカル(C2O4-またはCO2-)によるテトラニトロメタンC(NO2)4のトリニトロメタニドイオンC(NO2)ゴへの還元反応の速度論的研究を行なった。その結果,分解反応速度およびテトラニトロメタンの還元反応速度は,いずれも反応基質濃度の一次反応速度式にしたがい,また,両反応速度は混合溶媒中の水素イオン濃度およびエタノール濃度の増大にともなって増大することがわかった。実験は種々の水素イオン濃度およびエタノール濃度において行なった。得られた結果に基づいて反応機構を考察した。テトラニトロメタンの溶液中からの揮散を妨ぐため反応はすべて密栓した反応容器内で行なった。
  • 串 憲治, 松村 安行, 金井 宏俶, 多羅間 公雄, 吉田 郷弘
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 347-351
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Pt(O2)(PPh3)2をベンゼン中65℃ で水素と反応させると,オレフィンの水素化活性をもつ黒褐色無定形物質が得られた。元素分析,分子量測定,IR,MS,ESCA分析より,この錯体をPtO(PPh3)と同定した。スチレンの水素化は,スチレンに0次,H2圧に1次,Pt錯体に1次を示し,活性化エネルギーは53.5kJ・mol-1であった。1-ペンテンの反応では,水素化と異性化が競合する。1-ペンテンの水素化速度におよぼす溶媒効果は,THF>MeOH>MEK>トルエン>CH3CNであった。異性化した2-ペンテンのシス/トランス比は,CH3CN中でもっとも高く,他の溶媒中では差はわずかであった。PPh3添加は,水素化速度を減少させるが,水素化選択率を増加させた。共役オレフィン,三重結合化合物の水素化ではパラフィンも生成し,選択的水素化触媒の特徴を示さなかった。
  • 堀田 和彦, 渡辺 昭二, 久保松 照夫
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 352-355
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    モノテルペン系不飽和アルデヒドであるジトラール((E)-および(Z)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエナール混合物)およびシトロネラール,3,7-ジメチル-6オクテナールの水素化反応を塩化バエルナールトで修飾したRaneyコバルト触媒により,種々の溶媒中,30~65℃,常圧下で行なった。反応の主生成物は,シトラールでは,(E)-および(Z)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジェシン-1-オールであり,0.2~olの水素を吸収したときにおけるこれらアルコールの収率は,0.92以上であり,1-プロ0パ.3ノm ール中でもっとも高かった。シトロネラールは相当する不飽和アルコールである3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オールに選択的に水素化された。これら不飽和アルデヒドの水素化反応速度はヘプタン中にくらべて,アルコール中で顕著に増加し,その順序はつぎのようであった。メタノール>エタノール>1-プロパノール
  • 早川 延清, 奥原 敏夫, 御園生 誠, 米田 幸夫
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 356-363
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    中心(ヘテロ),ポリ原子の異なる種々のヘテロポリ酸およびそれらの塩を用いて2-プロパノールの脱水反応を検討した。酸型の触媒活性序列は,H3PW12O40>H4SiW12O40>H3PMo12O40=H5PW10V2O40=H5PMo10=V2O40(SiO2・Al2O3)>H4SiMO12O40であった。塩の場合,ナトリウム,セシウムなどのアルカリ金属塩はニッケル,銅塩よりも高活性を示した。
    モリブデン,バナジウムを含むヘテロポリ酸では反応中に活性の低下がみられたが,高い活性を示すH3PW12O40やH4SiMO12O40ではそのような活性低下はみられない。活性低下したH3PW12O40を酸素処理すると初期活性は回復し,触媒が酸化状態にもどることから,H3PW12O40の活性低下は触媒の還元に関与していると考えられる。
    H3PW12O40のH+をNa+で置換すると酸量ばかりではなく,酸強度も低下した。2-プロパノールの脱水活性はNaxH3-xPW12O40のナトリウム量を増加させるにつれ,単調に減少するが,ブテンの異性化活性は複雑な変化を示した。このようなブテン異性化反応と2-プロパノール脱水反応の挙動の相違は前者の反応が表面で起こるのに対して,後者ではヘテロポリ酸の表面近傍のバルク層でおもに進行しているためと考えられる。
  • 村田 哲雄, 松田 好晴
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 364-375
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ζ電位は固体粒子が溶液中へ分散するとき,粒子/溶液間に発生する界面動電位である。ζ-電位はコロイド分散系と密接な関係にあるが,その成因機構は現在,なお不明な点が多い。本研究はζ-電位の成因を解明するため,粉体としてカーボンブラック粒子を用い,種々の分散媒中でζ-電位(電気泳動法)を測定した。分散媒は酸,アルカリ,アルカリ金属塩化物,ハロゲン化ナトリウム,界面活性剤およびアルキルアミンなどの水溶液を用いた。測定結果から,ζ-電位の成因は粒子Stern層の表面電荷密度の大きさと,電気泳動時のすべり面の位置とが同時に関係することが推定できた。表面電荷は粒子ヘイオンの吸着や粒子上に存在する表面官能基の反応などで生ずる。すべり面は分散媒中のイオンの結晶半径や水和自由エネルギーが直接影響し,その位置はStern層表面から離れた拡散二重層内に存在する場合が多い。
  • 島崎 長一郎, 大野 義尚, 高井 大, 庄司 政之, 吉澤 実
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 376-381
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アミドリン酸水素アンモニウム,カリウムおよびナトリウム塩の熱分解反応を検討した。これら3種の塩はいずれも熱的挙動に差異はなく,アンモニアを離脱しながら分解する過程を通る。この中間段階の分解反応が熱分解を制御する決定的な因子であることがわかった。また,熱分解機構を赤外吸収スペクトル,X線回折および化学分析の結果ふら確認し,熱分解で生じるエンタルピー変化はアンモニウム塩では443~458K,カリウム塩では427~461Kおよびナトリウム塩では483~517Kのそれぞれめ温度範囲内で温度上昇とともに直線的に増加することがわかった。これら化合物の熱分解過程の反応熱および反応次数をDSC曲線から算出した結果,3種の塩とも,熱分解反応は見かけ上一次であることがわかった。上述の温度範囲での熱分解反応の各塩の活性化エネルギーはアンモニウム塩では208.6kJ/mol,カリウム塩では157.0kJ/molおよびナトリウム塩では149.8kJ/molである。
  • 奥脇 昭嗣, 伊藤 宏, 岡部 泰二郎
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 382-390
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    中温硫酸塩溶液中のNiE2+を常圧の硫化水素により回収するためNi2+の沈殿率および沈殿物の形態におよぼす共存硫酸塩の種類と濃度,沈殿を促進する添加物の影響について研究し,さらに平衡沈殿率を計算して実験値と比較した。
    硫酸ニッケル(II)単独溶液(4.0gNi2+/dm3)では,Ni2+の沈殿率は86.4%であったが,硫酸ナトリウム(0.28mol/dm3)または硫酸マグネシウム(0.25mol/dm3)共存すると沈殿率はそれぞれ99.1および98.1%に上昇した。硫酸アルミニウム共存(SO42-として0.24mol/dm3)の場合,沈澱率は86.3%であり,約45分の誘導期間が生じた。これらはそれぞれ,アルミニウムイオンの硫酸イオンとの錯体生成およびアルミニウムイオンの加水分解による初期pH低下のためである。硫酸銅(II)の共存はNi2+の沈殿を促進し,沈殿率も上昇した。鉄と銅粉の添加は沈殿を促進し,誘導期間は消滅した。沈殿物は鉄の添加の場合,Ni3S2とNi,銅の添加の場合,α-NiS,Ni3S2およびα-Cu2であった。β-NiSと活性炭添加あ揚合,誘導期間は7~8分残存し,沈殿物はいずれもβ-NiSであった。硫酸ニッケル(II)-硫酸ナトリウム-硫酸マグネシウム-硫酸アルミニウム混合溶液におけるNi2+の沈殿率について,硫酸イオンのpH緩衝作用と錯体生成を考慮してNi2+の沈殿率を計算した結果,実験値と一致した。
  • 秋山 尭, 松村 和子, 谷口 雅男
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 391-395
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リン酸水素ニアンモニウムの加熱変化を熱重量分析,示差熱分析,示差走査熱量分析および高温X線回折によって調ぺた結果,159℃ 付近で3.21kJ/molの吸熱をともなって高温相に転移することが見いだされた。この高温相は,X線回折データがCoatesらの報告しているα-(NH4)2HPO4とはやや異なるのでα'-(NH4)2HPO4と称することとした。α'相は,X線回折データが既報のものと一致し,室温に冷却してもそのままではβ相にもどらなかった。水分が存在すると転移点が降下し,転移点はそれぞれ水分1%で143℃,水分3%で136℃ になった。水分3%を含む場合は136℃ から90℃付近に冷却するとα'相からもとのβ相にもどった。
  • 小島 昭, 大谷 杉郎, 新藤 一浩, 井上 高志
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 396-400
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    分解炭素(LTPC)と黒鉛基材との引っ張り接着強度について研究した。基材黒鉛の熱膨張係数が,2~4×10-6/℃ の範囲内にある3種の基材に対してはよい接着性を示したが,9×10-6/℃ の基材の場合は容易に界面聞で剥離した。接着性のよい基材を用いた場合には,基材とLTPC間の剥離は認められず,LTPC層内での層間剥離が生じた。その平均強度は80kg/cm2で,最大値は180kg/cm2であった。この結果は,LTPCと黒鉛基材との接着強度が上記の最大値よりも高いことを示している。また,これらの接着力は基材表面の粗さ,およびLTPC層の厚さによっては影響されなかった。LTPCでコーティングしたのち冷却し,ふたたび温度を上げて堆積をっづけた場合には,LTPC層に中断の影響はみられなかった。これに対して,踏却後一晩空気と接触させた状態で放置したのち,再度LTPCを堆積させた場合には,新しい堆積層は剥離した。黒鉛とLTPC間の接着強度の大きさや,空気にさらさせたLTPC層の特異な挙動は,黒鉛とLTPC問の接着が基材と熱膨張係数のマッチング以外の因子も存在する可能性を示すものと考えた。
  • 斎藤 肇, 林 卓, 三浦 一則
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 401-407
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1350℃ と1400℃ におけるSiO2-C-フッ化物系のN2による窒化反応において,Si3N4ウィスカーの気相成長におよぼすフッ化物の効果について研究した。フッ化物としてNaF,CaF2,NH4FおよびNa3AlF6を用いた。その結果,フルオロケイ酸塩融体を形成するNaF,CaF2,Na3AlF6の添加は,Si3N4ウイスカーの成長に対し効果的であるが,融体を形成しないAlF3では添加効果はほとんどみられなかった。グラファイト試料容器の内側に生成するα-Si3N4ウィスカーの生成量は,フッ化物の添加とともに減少する傾向にあったが,一方,容器外に生成するβ-Si3N4ウィスカーは増加する傾向にあった。Si3N4ウィスカーの成長に対するフッ化物の効果として,1)融剤として働き,SiO2とCとの反応を促進する,2)フルオロケイ酸塩融体からSiF4が発生し,SiOガスの発生を促進する,3)AI成分を含むフッ化物は,α 型よりもβ型またはβ'-Sialonの生成を優先的に促進する。などが考えられた。またSi3N4ウィスカーの成長は,SiO,COおよびN2が気相反応し,直接固相として析出するか,またはSiO,COおよびN2が融体に溶け込み,過飽和となって析出するかのいずれか,または両者によって進行しているものと推定された。
  • 今井 弘, 白岩 正, 田井 孝典
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 408-413
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-(p-置換フェニル)-1,3-ブタンジオン類(HL,L=p-XC6H4COCHCOCH3 ,X=NO2[1],COOH[2],COOCH3[3],Br[4],C1[5],H[6],NHCOCH3[7],C2H5[8],CH3[9],OCH8[10],OH[11])のコバルト(III)錯体(CoL3)を合成し,アルミナによるカラムクロマトグラフィーによってfacとmer異性体に分離した。CH3とCHの1H-NMRスペクトルはfac異性体に対して1本,mer異性体に対して3本のピークを示した。クロロホルム-dとベンゼン-d6中で測定したCH3とCHプロトンの化学シフトはそれぞれ1.9~2.4ppmと5.9~6.3ppmに現われ,置換基効果と溶媒効果によって変化した。四つの配位子場吸収帯のうちで,吸収極大を示したv1(3T1g1A1g)とv3(1T1g1A11g)は置換基が電子求引駐から供与性になるほど,直線的に高波数側へ移動した。これらの吸収帯から計算した結晶場分裂エネルギー10Dqによって,これらの錯体の安定度は[1]<[2]<[3]<[4]<[5]<[6]=[7]<[8]<[9]<[10]<[11]の順に増加することがわかった。
  • 鈴木 輝一, 中里 賢一
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 414-418
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アクリルアミドとN,N'-メチレンジアクリルアミドとスチレンをジオキサン中で重合してマクロボア構造をもつ水性ゲルを得た。得られたゲルを充填したカラムでアセトソ,エチレングリコールの低重合物,ブルーデキストランの水溶液を溶離して補正曲線が得られた。橋かけ荊とスチレンの増加は排除分子量の増大をもたらしたが,とくに橋かけ翔の効果が有効であった。スチレンのアクリルアミドに対するモル比を0.14とし,橋かけ剤を10.91mol%としたときは排除分子量が1260万,膨潤度(wet-)が3.38,高かさ(dry-ml/dry-g)が1.63,含水量(g/dry-g)が2.22のゲルが得られた。その補正曲線は緩やかであらた。しかしジオキサンーエタノール中で重合したゲルはもろく,良好な機械的な安定性と分離能が得られなかった。
  • 小田嶋 次勝, 石井 一
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 419-424
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    5-クロロ-2-チオフェンカルバルデヒド=2-ベンゾチアゾリルヒドラゾン(CTBH)のペソゼン溶液を用いるコバルトの溶媒抽出機構を平衡論および速度論の両面から検討した。コバルトの分配比とCTBH濃度の関係から,ベンゼンに抽出された錯体は1:3[コバルト(III):CTBH]の結合比をもつ反磁性のCoR3であると推定した。この錯体を単離し,二相間分配定数(K'DC)を求めたところ,logK'DC=が得られた。抽出速度は,ふりまぜ速度290strokes/min以上で化学反応律速とな2.2り3 ,反応次数はコバルト(II)濃度およびCTBH濃度に関して+1.0,水素イオン濃度に関して-1.0次であった。律速反応は水相中でコバルト(II)とCTBHの1:1錯体が生成する段階であり,錯形成反応はEigen機構で進行していると推定した。この錯体生成反応の速度定数は2.9×106mol-1・dm3・s-1(25℃)であった。速度定数の温度依存性から熱力学的パラメータを計算したところ,Es=9.7kcal/mol,ΔH=9.1kca1/mol,ΔG=8.6kcal/molおよびΔS=1.6e.u.が得られた。また,抽出された錯体は反磁性の低スピン型六配位八面体構造であると推定した。
  • 小田嶋 次勝, 石井 一
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 425-430
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-チオフェンカルバルデヒド=2-ベンゾチアゾリルヒドラゾン(TBH)のベンゼン溶液を用いる銅の溶媒抽出機構を平衡論および速度論の両面から検討した。銅はTBHと1:2錯体を形成し,ペンゼンに抽出される。抽出された錯体中の銅の酸化状態はESRスペクトルの解析から2価であることがわかった。錯体の抽出平衡定数(Kex),分配定数(KDC)および生成定数(β1およびβ2)は,それぞれlogKex=1.25,logKDC=2.45,logβ1=13.40およびlogβ1=26.76であった。抽出速度は,ふりまぜ速度280strokes/min以上で化学反応律速となり,反応次数は銅(II)濃度およびTBH濃度に関して+1.0次,水素イオン濃度に関して0次と-1.0次であった。したがって,律速段階は銅(II)とTBHの1:1錯体生成反応であり,その反応経路は銅(II)が非解離および解離したTBHと反応する二つの競合反応によって進行していると推定した。この二つの錯形成反応速度定数kHRおよびkR-は,それぞれ1.2×104mol・dm3・s-1および2.7×1010mol-1・cm3+・s-1(25℃)であった。速度定数の温度依存性から熱力学的パラメーターを計算した。また,抽出された錯体は常磁性の四配位平面型構造であると推定される。
  • 横井 勝美, 松原 義治
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 431-435
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α-ロンギピネン〔1〕の四酢酸鉛酸化を60℃ で行ない,加水分解生成物について検討し,構造不明の第三級セスキテルペンアルコール〔2〕のほか,ロンギ-cis-ベルペノール〔3〕,ロンギ-trans-ペルベノール〔4〕,ロンギ-cis-クリサンテノール〔5〕,ロンギベルベノン〔6〕,ロンギ-trans-β-クリサンテノール〔7〕,2β,3β-ジヒドロキシロンギピナン〔8〕,4α,8-ジヒドロキシ-α-ロンギピネソ〔9〕および4β,8-ジヒドロキシ-α-ロンギピネン〔10〕など8種の酸化生成物を得た。これらの反応生成物の構造をMS,IR,NMRスペクトルの測定結果および既知化合物への誘導により明確にした。また〔4〕,〔5〕,〔7〕,〔8〕,〔9〕,〔10〕は文献未載の新規セスキテルペノイドである。
  • 岩室 一, 川原崎 忠昭, 松原 義治
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 436-439
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    β-およびγ-エレメン(〔1〕および〔2〕)のトリクロロ酢酸による水和反応ならびに無水酢酸存在下氷酢酸中四酸化三鉛による酸化を行ない,得られた酸化生成物の構造について検討した。その結果,三塩素化酢酸による水和反応では光学活性のエレモール〔3〕が収率よく生成することが判明した。そのさい副生成物として新規化合物c-3-インプロペニル-1-インプロピル-4-メチル-t-4-ビニル-r-1-シクロヘキサノール〔4〕が得られた。〔4〕のヒドロキシル基の立体配置はEu(dpm)s共存下による1HNMRのコンタクトシフトの測定結果からβ-配置と決定した。無水酢酸存在下氷酢酸中四酸化三鉛二よる酸化では2種の新規化合物1-メチル-1-ビニル-2-イソプロペニル-4-(1-メチル-2-ヒドロキシエチリデン)シクロヘキサン〔5a〕および1-メチル-1-ビニル-2-イソプロペニル-4-(1-メチル-1,2-ジヒドロキシエチル)シクロヘキサン〔6a〕の生成を確認した。酸化生成物〔4〕,〔5a〕および〔6a〕はいずれも木質ようの芳香を有し香料基材として有用で,また天然精油中の少量ないし微量成分として存在すると予測されるセスキテルペンアルコールあるいはオキソ体の検索に有用な各種スペクトルデータを提供し得たと考える。
  • 時田 澄男, 宮崎 振一郎, 岩本 一星, 西 久夫
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 440-444
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3種のアントラキノンオリゴマー(5,5'-ジクロロ-1,1'-ビアントラキノン〔1b〕,5,5''-ジクロロ-1':5',1''テルアントラキノン〔4〕ならびに5,''-ジクロ-1,1':5',1'':5'',1''-クアテルアントラキノン〔9〕)の閉環反応について検討した。これらのうち,〔1b〕にいままでの報告と類似した反応性を示し,二段階に閉環して,ジクロロ-7,16-ジヒドロジベンゾ〔a,o〕ペリレン-7,16-ジオン〔2b〕ならびに1,6-ジクロロ-7,14-ジヒドロフェナントロ[1,10,9,8-opqra]ペリレン-7,14-ジオン〔3b〕を生成した。一方,〔4〕ならびに〔9〕の場合も同様に二段階あ閉環反応が観察されたが,最初の段階が可逆反応であり,二段階目め閉環も光だけでなく熱的にも反応が進行する点で〔1b〕とは異なっていた。これらの異常反塔は,それぞれ中間段階で生成する4,15-ジクロロ-5,16-ジヒドロジベンゾ[fg,qr]ジナフト[1,2,3-jk,1',2',3'-uv]ペンタセン-5,16-ジオン〔6〕または15,15'-ジクロロ-7,7',16,16'-テトラヒドロ-8,8,-ビ(ジベンゾ[a,o]ペリレン)-7,7',16,16'-テトラオン〔11〕の不安定性に起因するものと推定した。これらの反麻により,新しい炭化水素であるテルアンセン〔18〕またはクァテルアンセン〔19〕の前駆体として重要な3,12-ジクロロ-4,13-ジヒドロジァントラ[1,9,8-abcd,1',9',8'-]コロネン-4,13-ジオン〔8〕ならびに6,6',-ジクロロ-7,7',14,14'-テトjラklヒm ドロ-1,1'-ビ(ブェナントロ[1,10,9,8-opqra]ペリレン)-7,7',14,14'-テトラオン〔13〕が,いずれも定量的に得られた。
  • 鈴木 仁美, 阿部 久子, 大政 信子, 大須賀 篤弘
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 445-449
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    加熱したヘキサメチルリン酸トリテミドにヨウ化銅(I)を溶かすと,黒色の溶液が得られる。この溶液中では,活性化されていない芳香族ヨウ素化合物も容易にベンゼンチオラートやベンゼンセレノラートィオンの求核攻撃をうけて,対応する非対称ジアリールスルフィドやジアリールセレニドをかなり好収率で与える。ヨウ化銅(I)が共存しないと置換反応は起こらない。同様な条件下で,ペンゼンテルロラートイオンも適度に活牲化された芳香族ヨウ素化合物と反応し,対応するジアリールテルリドを与える。この反応は,常法による合成が面倒な非対称の多置換ジアリールスルフィド,セレニドおよびテルリドの簡単な合成法として有用である。
  • 中森 建夫, 大崎 一郎, 笠井 俊保
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 450-455
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ナフトキノンの2,3-位にイミダゾール環の縮合した化合物のうち2-位に置換基を有する化合物の合成を行なった。まず2,3-ジアミノ-1,4-ナフトキノン〔2〕とキサントゲン酸カリウムとの反応により2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-1H-ナフト[2,3-d]イミダゾール-4,9-ジオン〔3〕を合成した。〔3〕とα-ハロカルボニル化合物との反応を行ない2-(2-オキソアルキルチオ)-1H-ナフト[2,3-4]イミダゾール-4,9-ジオン類〔4a~k〕を合成した。これらのうち〔4a~9〕は水溶媒中で,〔4h~k〕は塩基を用い1てエタノールおよび水溶媒中で合成した。また,〔3〕とブロモアセトアルデヒド=ジエチル=アセタールとの反応ではスルフィド体〔10〕を得たが,〔10〕はコン跡量の塩酸が存在すると容易に閉環した〔11〕になることがわかった。〔3〕と1,2-ジクロロエタンとの反応では〔12〕と〔13〕が得られた。これらの合成のさ恥の反応盤や得られた化合物のスペクトルなどから,ナフトキノンのカルボニル基の影響について検討した。
  • 中森 建夫, 小暮 幸治, 笠井 俊保
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 456-461
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ナフトキノンの2,3-位にイミダゾール環が縮合し,さらにこのものにチアゾール環が縮合した四環性アゾール化合物の合成を行なった。すなわち2-(2-オキソアルキルチオ)-1H-ナフト[2,3-d]イミダゾール-4,9-ジオン類〔4a~k〕の脱水環化反応を行ないナフト[2',3,:4,5]イミダゾ[2,1b]チアゾール-5,10-ジオン類〔5a~k〕および〔13〕~ 〔15〕を合成した。これらのうち〔5a~9〕はポリリソ酸を,〔5h~k〕およぴ〔13〕~〔15〕は無水酢酸を用いる脱水環化反応から合成した。無水酢酸を用いる反応において,ピリジン中では〔4b〕および〔4h~i〕はまずアセチル化をうけ,ついで閉環した〔5g〕および〔5i〕が得られた。また,〔4j~k〕はピリジンを用いない反応では目的とする3-オキソ体〔5j~k〕が得られるが,ピリジン中の反応では2-アセチル-3-オキソ体〔14b〕およびエノールアセタート体〔15〕が得られた。これらの反応や得られた化合物の性質からナフトキノンのカルボニル基の影響を検討した。
  • 工藤 清, 杉田 信之
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 462-471
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    コパルトを含む種々の遷移金属混合触媒を用いメタノールのホモロゲーションをヨウ化メチルの存在系で検討した。その結果,コバルト(Co2(CO)8)-ルテニウム(RuCl3・nH2O)混合触媒系は非常に高い活性を示した。このコバルトールテニウム混合触媒でメタノールの転化率とエタノールの選択性におよぼすルテニウム添加比Ru/Co,圧九温度,ヨウ化物および溶媒などの影響について調べた。エタノールの生成はとくにRu/Co比および水素分圧に大きく依存し,はじめはルテニウムの添加量ととも・Nにエタノール収率が増すカ1極大値をもちそれ以降減少した。この最適添加比Ru/Coは温度およびガス組成比(H2lCO)によってRu/Co÷0.2から0.4の範囲で変化した。ルテニウム添加比Ru/Co÷0.21,ガス組成比H2/CO=3/1,初期充填全圧480kg/cm2,180℃,4時間の反応の結果,メタノール転化率84%でエタノツレ収率51%と高しこ俸を示し,液状隼威勿中の約80%がエタノールで南った。反応の時間的追跡の結果,反応初期にアセトアルデヒドおよびジメチルアセタールがかなりの量生成した。これらの量は反応時間およびルテニウムの添加量の増加とともに減少し,これにともなってエタノールが逐次的に生成してきた。このことからおもなエタノール生成経路はアセトアルデヒド類を経由していると推察される。なお,このホモロゲーションに対する溶媒の検討を行なった結果,エーテル化合物類がエタノール選択率の向上に効果的で,とくに,1,4-ジオキサン中では酢酸類およびアセトアルデヒド類の副生が強く抑制され有効な溶媒効果を示した。
  • 中山 哲男, 中村 悦郎, 小口 勝也
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 472-478
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    コバルト(II)および臭化物イオン系触媒存在下において無水酢酸中でのo-トルイル酸の酸化反応性鹸討し醸物場合と比較した。
    無水酢酸中では液相蝦酸化反応撫水フタノレ酸を得ることができたが,同時に多量の3-アセトキシフタリドを副生した。また,酸化の進行とともに無水酢酸は酢酸へ加水分解され,その量的関係から,無水酢酸中におけるo-トルィル酸の総括酸化反応は(1),(2)式で示されるものと考えられる。一方,酢酸中では主生成物はフタル酸であったが,中間体としてフタリドについで無水フタル酸が検出された。無水酢酸申では,反応開始とともに触媒として添加した酢酸コバルト(II)の大部分が反応系内に析出し,また,臭化物イオンはプロモ酢酸へ変換するのが観察された。これに対して,酢酸中では酢酸コバルト(II)は析出せず,また,臭化物イオンも有機臭素化せずに酸化反応は進行した。しかし,酢酸中でキシレンを酸化した場合,反応開始とともに臭化物イオンはいったん有機臭素化し,o-トルイル酸oの-生成とともに再度イオン化する現象が認められた。
  • 猪熊 精一, 根岸 利治, 亀山 栄一, 桑村 常彦
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 479-484
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    大環状ポリエーテルを含む(2-ヒドロキシアルキル)ジメチルアンモニウム-N-アシルイミン(アミンイミドクラウンエーテル,CnAIC@(m),n:12と18,m:5と6)を,Slagelの方法によって,30~40%の収率で合成した。
    Cn-AIC(m)の界面化学的諸性質,還元反応およびハロゲン交換反応(Finkelstein反応)における相間移動触媒作用について各種基準物質との比較検討を行なった。合成したCn-AIC(m)は,すべて水に可溶であった。これらの臨界ミセル濃度(CMC)は相当するアミンイミドにくらべかなり低い,しかし,これらの曇り点(Cp)およびCMCは同じアルキル鎖をもつ他のクラウンエーテル(〔3〕,〔8〕および〔9〕)のそれより高かった。Cn-AIC(m)のCMCは界面活性なアミンイミドと同様にnの増大にともない顕著に低下した,しかし,CnAIC(m)のCpに対するnおよびmの依存性は低かった。
    触媒作用に関しては,CnAIC(m)はその各機能部に相当する〔2〕および〔4〕より高い効果を示した。他のクラウンエーテルとの比較では,還元反応の場合はもっとも効果的(〔7〕と同等)であるが,ハロゲン交換反応の場合は中程度(〔9〕に近い)の効果であった。これら二つの反応において,Cn-AIC(m)の効果はnの増大とともに増加した。以上の結果を,アミンイミド基とポリエーテル環の協同的錯形成および触媒の親水牲-疎水性バランスの観点から考察した。
  • 瀬尾 利弘, 法元 琢也, 加倉井 敏夫
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 485-496
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンズイミドイルグアニジンおよびベンズイミドイルベンズアミジンと不飽和カルボン酸クロリドの反応により,各種2-アミノ-4-(p-置換フェニル)-および2,4-ジフェニル-6-(ビニルまたはイソプロペニル)-1,3,5-トリアジンを容易にかつ高収率で合成し,その単独重合およびメタクリル酸メチルとの共重合を検討した。
    その結果,Q値は共鳴系拡大のた0大きな値となり,e値はフェニル基の負の電子誘起効果のため負の値を与え,p-置換基が電子供与性になるにしたがい負に増大した。一方,側鎖への2-アミノ-4-フェニルーおよび2,4-ジフェニルトリアジン環の導入は高分子鎖の可とう性を減じ軟化点を大幅に上昇させた。また,トリアジン環組成によらず極性の低い有機溶媒に対する溶解牲がよかった。このことから,グアナミン構造(2,4一ジアミノトリアジン環)をもつポリマーにくらべ,これらポリマーでは,アミノトリアジン環による分子間相互作用の影響が緩和され,トリアジン環に直結した芳香環の剛直性,疎水性の効果が大きく諸性質に反映することがわかった。
  • 佐藤 良和, 武者 義彦, 武末 知行, 池村 糺, 片山 将道
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 497-499
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二酸化硫黄と電子求引型モノマーのアクリル酸無水物とのラジカル共重合を数種の溶媒を用いて行ない,対数粘度0.18~0.32を与える有機溶媒可溶性ポリスルホンを得た。ポリマー主鎖に取り込まれたアクリル酸無水物は,主として分子内分子間反応であり,閉環構造を形成する。しかし,一部未環化の構造(CH2=CH-)としても存在していることが赤外吸収スペクトルから推定された。コポリマーは,N,N-ジメチルホルムアミド,ジメチルスルポキシド,N-メチルピロリドンに可溶性であるが,水に対しては加水分解反応をともなう可溶化が認められた。コポリマー組成は,仕込みモノマーモル比によってm=3.7~2.1に変化した。コポリマーの熱分解挙動を熱テンピソと差動熱量計により検討した結果,融点は観測されなかったが,分解点が認められ,コポリマー中の二酸化硫黄の組成が多くなるにつれて170~200℃ の範囲で低下した。
  • 増田 精造
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 500-504
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化亜鉛存在下で,アリルベンゼン(AB)とアクリル酸メチル(MA),メタクリロニトリル(MAN)アクリロニトリル(AN),メタクリル酸メチル(MMA)およびフマロニトリル(FN)とのラジカル共重合を行なった。AB-MA,AB-MANおよびAB-AN系では,塩化亜鉛の存在の有卿こかかわらず共重合が起こるが,AB-MMAおよびAB--FN系では,塩化亜鉛が存在しなければ共重合は起こらない。AB-FN系では,仕込み比に関係なく交互共重合体が得られる。
    AB-ANおよびAB-MMA系では,塩化亜塩の添加量が増加するにつれて,見かけのモノマー反広も性比は減少する。このことは,塩化亜鉛が生長反応に関与していることを示唆している。そこで,これらの系をAN(またはMMA)の遊離モノマー(M,),AN(またはMMA)の錯体モノマー(M2)・およびAB(Ms)のランダム三元共重合体であるとして,共重合組成式を導き,得られる値から個々のモノマー反応性比を求めた。AB-AN系では,k11/k12=0.13,k11/k18=5.1,k22/k21=1.05およびk22k/k23=0.85であった。また,AB-MMA系にについては,k11/k12=0.024,k22/k21=0.91およびk22/k23=8.57が得られた。モノマー反癒性比におよぼす陽イオンおよび陰イオンの効果についても検討した。
  • 井本 稔, 有田 奈穂子, 大内 辰郎
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 505-508
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸(MAA)とニメタクリル酸メチレン(EGDM)とがデンプン水溶液で共重合することが発見された。用いたデンプンのほとんど全部が共重合物でグフト化される。生成した共重合物のナトリウム塩はその重さの620倍の水を吸収することができた。ゆえにMAAとEGDMとでグラフト化されたデンプンは超吸水あことができる
  • 近藤 昭裕, 小林 一弘, 岩月 章治
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 509-513
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    スチレン-ブタジェンポップコーン(SBP)を機能性三次元樹脂として有効利用することを目的として,SBPの酸接触橋かけ反応およびSBP中のフェニル基の反応を検討した。橋かけ反応は硫酸を使したとき容易に起こったが,三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル錯体および無水塩化スズ(IV)では用あまり起こらなかった。フェニル基のスルホン化,ニトロ化およびクロロメチル化は容易に進行した。フニル基に滋入したニトロ基の還元,クロロメチル基のシアン化物イオンによる置換反応はかなりの高ェ収率で進行した。スルホン化SBP,アミノ基を導入したSBPはイオン交換樹脂として利用できた。
  • 田村 光久
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 514-519
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    炭化水素一酸素原子系の化学発光法を応用した炭化水素の全光化学活牲量分析法を開発した。本法によれば,アルカンからアルケンまでの広範囲の炭化水素に対して,その光化学活性に応じた化学発光出力が得られる。化学発光は,炭化水素と酸素原子との反応過程で生ずるOH(A2Σ+)からの波長30890Å.(波長範囲±10Å)を測定して求めた。炭化水素の光化学活性は,炭化水素と酸素原子との反応で代表できることを提案した。メタン,エタン,プロパン,ブタン,ベンゼン,トルエン,アセチレン,エチレン,プロピレン,cis-2-ブテンについて,速度定数(Kox)と化学発光量との関係を検討した結果,酸素原子濃度[O]と反応ガスの受光面通過時間,Δtとの積が[O]Δt<0.7×10-12mol・cm-3・sの場合に,Kox=1×1013cm3・mol・cm-3・s-1以下の上記炭化水素に対して,その光化学活性に応じた発光出力が得られた。
  • 鍵谷 勤, 荻田 尭, 八田 博司
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 520-527
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    窒素中および窒素一酸素混合物中のアンモニア0酸化窒素系混合気体にスペクトルシル製低圧水銀灯を照射し,NH2およびNOの挙動を調べた。NH3-N2系におけるNH3はH2NNH2を経てN2とH2に分解した。この系にNOを添加すると,NH3の分解速度はいちじるしく増大し,NH3およびNOの減少量とH2の生成量の関係から,塁論式2NH3+2NO=2N2+H2+2H2Oが求められた。また,微量のN2O(NO減少量の4%)が副生した。NH3-O2-N2系においては,N2中の場合にくらべてNH3の減少速度はいちじるしく大きく,多量のN2,N2O,NH4NO3および微量のNH4NO2が生成した。この系にNOを添加してもNH3の減少速度はあまり増大しなかったが,N2生成量が増大し,N2O生成量が減少し,NH4NO2の生成量が増大した。また,NH3-NO-O2-N2系においては,O2濃度の増大とともにNH3およびNOxの減少速度が増大したが,[O2]o=20%におけるNH3の減少初速度はN2中の2.7倍も大きく,NOの減少初速度は1.6倍にすぎないため,NH3減少量はNOx減少量の1.6倍となる。
  • 三島 彰司, 中島 剛, 久保 右喜夫
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 528-529
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    An experimental investigation was made to examine the possibility of shortening the time required for the determination of solid acidity (several days) by the Benesi method by particle size control. The time needed for obtaining constant acidity values for silica-alumina and alumina is extremely reduced to below one day when the sample particle is made smaller (less than 325 mesh), and the acidity obtained after stabilization is not affected by the particle size. The particle size must be as small as possible to shorten the time required for the titration. This effect is attributable to the slow desorption of amine molecules once adsorbed on the outer surface sites followed by migration to the inner sites of particle.
  • 成田 栄一, Kook-Nam HAN, Frank LAWSON
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 530-533
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The indigo carmine method employed for the determination of dissolved oxygen has been improved. An NH4Cl-NH3 buffer was used as a diluent for the sample solution so that a wide range of the dissolved oxygen concentrations could be determined. The reduced indigo carmine was prepared in a graduated syringe and the diluent and a pre-determined quantity of the electrolyte solution containing the dissolved oxygen was subsequently introduced into the syringe. The final pH of the solution thus obtained lay between 8 and 9. The oxidation of the indigo carmine with the dissolved oxygen occurred almost instantaneously and re-reduction of the indigo carmine color so produced by any excess n-glucose present in the solution did not occur for about 30 min at an 'initial glucose/indigo carmine weight ratio of 0.5. The concentration of the re-oxidized indigo carmine was estimated by measuring absorption at 620nm. This improved technique shows excellent reproducibility and accuracy in the determination of the dissolved oxygen over a wide range of electrolyte C oncentrationsi n spite of the diluent being used. The technique has been applicable not only to aqueous solution but also to organic solvent.
  • 吉田 弘, 尾形 強
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 534-535
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Diphenyl- and methylphenylcyclopropenones reacted easily with alkane- or arenethiol in the presence of potassium hydroxide in ethanol at room temperature to give ring opened 1: 1addition products, 2-propenethioate derivatives in 31∼82% yields. The reaction in the presence of excess amount of thiol yielded 1: 2 addition product via Michael addition.
  • 甲斐 昭, 小薬 次郎, 小林 靖二
    1982 年 1982 巻 3 号 p. 536-537
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The change in the fine structure of the cellulose gel biosynthesized by Acetobacter zylinum with time was studied by means of electron microscopy. It was found that in the process of time, the inhomogeneous distribution cellulose chain arised in the vertical direction against the long axis of the amorphous fibril initially and finally many microscopic fibrils with the width of about 40∼50 Å appeared simultaneously in the amorphous fibril. This microscopic fibril corresponds to the elementary fibril reported in the previous paper. It was also found that the bacterial cellulose microfibril is composed of the microscopic fibril.
feedback
Top