日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1983 巻, 11 号
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  • 今原 和光, 中村 邦男, 小松 剛, 中川 鶴太郎
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1551-1555
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    超高分子量ポリスチレン(IK-1500,BK-2500)による乱流抑制(DR)現象を,落球法を用いて調べた。濃度範囲10から160ppmのベンゼン溶液において,乱流領域における球の場合の抵抗係数CDのReynolds数Re依存性はIK-1500系についてはRe=890,BK-2500系についてはRe=1250まで溶媒のそれと一致する。換言すれば,それらの高分子溶液は乱流におけるニュートン流体と同じ挙動を示す。しかしながらそれぞれの臨界Reを越えると,高分子添加によるCDの低下が観測された。濃度による臨界Reの変化は,大きくないことがわかった。100[CD(溶媒)-CD(溶液)]/CD(溶媒)で定義された%DRを一定高分子濃度で比較すると,Reの増大とともに大きくなる。一定Reynoldsi数Re=6400での%DRの濃度依存性は,IK-1500系では40PPmまで急激に増大するが,その後はほぼ一定値をとる。BK-2500系についても同様の挙動がみられるが,%DRがおおよそ一定になる濃度が80ppmに移行する。両系とも最大%DRは約30%であった。これらの結果を溶液中の高分子鎖の粘弾性による乱れの抑制が生じるものとして解釈した。
  • 田中 浩雄
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1556-1561
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    顕微鏡電気泳動法による沈降性粒子(クレイ)のゼータ電位測定法に関し, つぎの結論を得た。泳動セルを水平(horizontal)に配置すると,時々刻々起こる粒子の沈積によりセル下面の電気的性質が次第に変化するので粒子泳動速度分布はセル中心面に対し対称にならず,ゼータ電位の正確な測定は期し難い。セル壁と粒子との電気的性質の差が大きいほど誤差も大きい。測定装置の都合上やむを得ず水平配置をとる場合には粒子濃度を可及的に低くする必要があるが,水で希釈するとゼータ電位が変化するので,炉過や遠心沈殿などの方策を講じるのが好ましい。泳動セルを横向き(lateral)に配置すると粒子濃度にかかわらずゼータ電位を再現性よく測定できる。ただし顕微鏡の照明を常法により行なうと対流の影響が大きく泳動速度の測定がいちじるしく困難である。そのさい,照明部を水槽などの熱吸収体で適度におおうと,粒子の沈降と対流による上昇が均衡し粒子を静止させることができる。測定はセル深さ方向に5レベル以上で行ない,最小二乗法により決定した二次曲線を基にゼータ電位を求めるのが最良であるが,いわゆる駒形の上下静止帯の平均値からも信頼性の高い結果が得られる。
  • 神鳥 和彦, 風間 晃夫, 今野 紀二郎, 北原 文雄
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1562-1565
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The dispersibility of hydrophobic carbon black particles in polar organic media and the effect of surfactants on the dispersibility were studied. The dispersibility was investigated for two kinds of carbon black particles (SR, SB-4) possessing different surface polarity in the absence or the presence of an anionic surfactant (AOT) and nonionic surfactant (NP-10) in 2-butanone. The dispersibility was quite different for the two different carbon black particles in the absence of the surfactants Good dispersibility for the system of SB-4 with a strong surface polarity and bad for SR with a weak surface polarity. This behavior is considered to be due to the difference in the nature of the solvation layer on the particle surface which is caused by the difference in surface polarity. The dispersibility of carbon black was quite different under the existence of the two kinds of surfactants. Although the C-potential decreased slightly by the addition of NP-10, it was not adsorbed on carbon black particles and no change in dispersibility was observed. On the other hand, the flocculation of carbon black was accelelated by addition of a small amount of AOT for both kinds of the particles, and even more so for SB-4 which showed a good dispersibility in the absence of AOT. This characteristic flocculation of carbon black in polar organic media in the presence of AOT was considered to be due to the following reasons. The desolvation proceeds on the particle surface due to the adsorption of a part of counter ions (Na+) formed by dissociation of AOT in the bulk solution, and which, in turn, causes a sudden decrease in c-potential.
  • 三島 彰司, 中島 剛
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1566-1570
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Benesi法を用いて5種類のアルミナ参照触媒(JRC-ALO-1-5)の酸強度分布を測定し,同一触媒についてアンモニアの吸着熱測定法,ブチルアミンの昇温脱離(TPD)法および吸着ピリジンの赤外吸収(IR-ピリジン)法などを用いて得られている酸性質の文献値と比較することにより,Benesl法で得られる酸強度分布の特徴を明らかにすることを試みた。Benesi法で得たアルミナの酸量は,アンモニアの吸着熱測定法およびTPD法における脱離総量から見積った値と比較してかなり小さいが,定性的には相関関係がみられた。TPD法における脱離物のうち,ブテン,プロピレンおよびエチレンとしての脱離量から見積った酸量はBenesi法で得た値と近くなる。Benesi法で得た酸強度分布は現在もっとも信頼性が高いと考えられるIR-ピリジン法で得られている酸強度分布と誤差内で一致し,シリカーアルミナ上で指摘されている酸量の過大評価がアルミナ上では生じないことが判明した。Benesi法は,滴定塩基や指示薬の吸着が可逆的である場合には有用な測定法である。各測定法で得られる酸性質の統一的理解には吸着塩基の分子サイズ,物理吸着および塩基強度の影響を考慮する必要がある。
  • 坂口 雅一, 長谷川 隆代
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1571-1575
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    各種アルカリ金属硫酸塩結晶(各種単独硫酸塩試料および化合物,固溶体,混合物試料)の表面電導度(σ)を直流電場内において,各種雰囲気中(真空,O2,NH3)260℃ で調査し,そのさい発生する分極現象について追究した。その結果,各試料のσ は,2種類の分極現象による影響を受げることが認められた。初期の分極現象は,電圧印加と同時に起こり,σ の小さい試料ほど顕著に現われた。つぎに印加時間の経過とともに,徐々に現われる分極現象は,σ の大きい試料ほど顕著であった。これらの分極現象は,真空中でもっとも明白であった。O2中では,Na2SO4単独試料の場合,相転移反応(III→I型)にともなうHedvall効果により,気相のO2が結晶内部に拡散し,それがキャリヤーとして作用することからσ は印加後一時的に上昇した。また,NH3中では,各単独硫酸塩試料のうち,陽性元素の電気陰性度の小さいものほど,アンモニア錯体の形成が容易になるため,σは増大した(Li2SO4<K2SO4<Cs2SO4)。ただし,このうちNa2SO4単独試料については,相転移反応時のHedvall効果による寄与が大きく,例外的な存在となった。
  • 柄谷 肇, 水口 博義, 岡 正太郎
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1577-1581
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    金属アルコキシドの一種であるテトラエトキシシランを加水分解して得られるゲル状化合物は通常のシリカゲルよりシラノール基の密度が大きく,酵素の固定化用担体として好適な特徴を有することを見いだした。とくにこの化合物のシラノール基を部分的にフッ素で置換したものはシラノール基の反応性,比表面積などの点で未置換のものより勝っており,酵素の固定化用担体としてすぐれた性能を有することがわかった。ESCAによる組成分析から,得られた化合物は含フッ素化合物であること,また,SEMによる表面観察では多孔性であることが確かめられた。この含フッ素化合物(120-200メッシュ)を担体とし,共有結合法でグルコースオキシダーゼを固定化した。固定化酵素の活性は,フッ素未置換のものを担体としたときにくらべて約8倍であり,市販アミノシラン化ガラスに同手法で固定化したものとくらべても2倍以上の活性を示した。この固定化酵素は,0.1mol・dm-3,pH7リン酸緩衝液中4℃の保存条件下で,5箇月以上経過後も初期の活性を維持した。
  • 熊谷 俊弥, 岡本 千絵, 水田 進
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1583-1588
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    マグネシウム-硫黄-ヨウ素系熱化学法水素製造サイクルの要素反応として,H2SO4-HI混合水溶液によるMgOの溶解反応の研究を行なった。溶解速度を正確に測定するためにMgOの単結晶を用い,回転速度,温度,H2SO4,/HI比,H+濃度,反応の進行度を変えて実験を行ない,単結晶の重量減少からMgOの溶解速度を求めた。溶解速度が回転速度の影響をほとんど受けず,反応のΔEが大きい(64.9kJ・mol-1)ことから表面溶解反応が律速過程であることが明らかとなった。また,(i)H2SO4/HI比を変えたとき,この比が0.125より大きくなると溶解速度は一定となり,純H2SO4(aq)に対する値と等しくなること,(ii)溶解速度はH+濃度に対し,低濃度領域を除いて一次関数的依存性を示すこと,(iii)反応の進行にともなって溶解速度は共存物質の阻害効果を受けること,などの結果が得られたが,これらはいずれもH2SO4およびHIのMgO表面への吸着を考慮した反応機構によってよく説明された。ついで粒径の異なるMgO粉末について試験管中で混酸をかきまぜながら反応を行なわせ,その溶解に要する時間を求めたところ,粉末の代表径,形状因子を考慮することによって単結晶に関する実験の結果により矛盾なく説明された。
  • 松田 恵三
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1589-1592
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    尿素の加水分解を利用したマグネタイトの合成法において,β-FeOOHと硫酸鉄(II)溶液とを98℃で反応させたときのマグネタイトの生成過程を検討した。この合成過程で沈殿物をX線回折および電子顕微鏡で観察した。反応初期は黄褐色のβ-FeOOHの懸濁液であったが,溶液のpHが5.0付近に達すると黒色を帯び始め,β -FeOOHは減少し,代りにα-FeOOHおよびFe3O4の生成が認められた。さらに加熱をつづけるとβ-FeOOHは消失し,またα-FeOOHも減少し始め最終生成物はFegO4のみになった。これらのことから,β -FeOOHはFe2+イオンの存在下で容易に溶解し,Fe8+イオンを生じるが,ただちに一部はFe2+イオンと反応してFe3O4になり,他の一部はα-FeOOHになって,さらにα-FeOOHもFe2+ イオンの存在下でFe3O4になったと思われる。Fe2+イオンとして塩化鉄(皿)を用いるとα-FeOOHはほとんど生成されないが,硫酸鉄(II)を用いるとα-FeOOHが多量に生成することから,すべてをFe30`にするのにかなりの時間を必要とすることが明らかになった。なおα一FeOOHの生成は溶液中のSO42-イオンの影響によるものと思われる。
  • 松久 喜一, 大関 邦夫
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1593-1596
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    亜硝酸イオンを常法により,スルファニルアミドとN-(1-ナフチル)エチレンジアミンを用いて赤色化合物にかえ,微細な陰および陽イオン交換樹脂からなる凝集体薄層(直径17mm,厚さ約0.3mm)に濃縮し,吸光光度法で定量した。検量線はわずかに湾曲(上に凸)するが,亜硝酸イオン1および10μ9・dm-3のくり返し分析精度は,相対標準偏差(n=6)で,それぞれ2.5および1.8%であった。本法の感度は,1cmセルを用いる通常の吸光光度法の約100倍であった。雨,雪,および河川水中の亜硝酸イオンを定量した。
  • 三浦 恭之, 康 智三
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1597-1601
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
     テトラチオン酸イオンをアルカリ分解したとき,1molのテトラチオン酸イオソから1.3molのチオ硫酸イオンが生成される条件を検討した。本研究では,この反応を完結させたのち,ここで生成される硫化物イオンと亜硫酸イオンを除去してから一定過剰のヨウ素を加え,ヨウ素の消費量からテトラチオン酸イオンを定量することを目的とした。硫化物イオンは炭酸水酸化亜鉛と反応さぜ硫化亜鉛の沈殿として除去し,また亜硫酸イオンはホルムアルデヒドでマスキングすることにした。テトラチオン酸イオンの検量線は6×10-6mol/lから3.7×10-4mol/lまでの濃度範囲内で良好な負の直線性を示した。2.00μmolテトラチオン酸イオンを含む試料溶液10mlずつを用いて11回くり返し実験を行なったところ,平均値は2.00μmol,標準偏差と相対標準偏差はそれぞれ0.012と0.59%であった。
  • 長谷部 清, Janet G. OSTERYOUNG
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1602-1605
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    発がん性ニトロソアミンの1種4-(N-ニトロソブチルアミノ)-1-ブタノール(NBBN)のパルスポーラログラフ的挙動を研究した。温度,水銀だめの高さ,パルス振幅やpHの影響など測定のための諸因子を決定した。還元過程は吸着や化学反応の影響で複雑であり,pHに依存する。サイクリックボルタンモグラムから,酸性溶液中では還元ピークおよび酸化ピークを観察できるが,アルカリ性溶液中では還元ピークのみが観察され,可逆度は低い。還元ピークの波高は母液濃度に比例し,10mV・s-1から500mV・s-1の掃引速度の範囲において速度の1/2乗に比例する。最適条件下で検量線は2.5×10-7mol・dm-3から2.75×10-6mol・dm-3の範囲で良好な直線関係を示す。ヒト尿にNBBNを添加した合成試料を,直接分析しようとする試みは,共存する尿タンパク,細菌や亜硝酸塩などの妨害を受けるために難しく,凍結乾燥法やカラムクロマトグラフ法による前処理をほどこす必要がある。なお,NBBNの拡散係数はO.1mol・dm-3塩酸中において1.78×10-6cm2・s-1であった。
  • 鉄見 雅弘, 松本 忠也
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1606-1611
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジアルキルジチオカルバマト金属(II)錯体[M(drdtc)2]およびチウラムスルフィド類のガスクロマトグラフィーにおいて,カラムの充填剤(シリコーンOV-101)の前に亜鉛,ニヅケル,銅などの金属粉をおき試料を注入したとき,金属粉の種類によって,その溶出ピークがどのように変化するかを観察した。金属粉の充填量を検討した結果,ニッケル粉は亜鉛粉のそれにくらべて約半量ぐらいまで減じないと溶出ピークが得られず,銅粉にいたっては1/50ぐらいに減じても基準物質オクタコサン以外の溶出ピークが得られなかった。亜鉛粉の場合,チウラムスルフィド類ではそれ以外に一部で錯体の形成が認められ,[Cu(drdtc)2]では[Zn(drdtc)2]への交換反応が起こるが,[Ni(drdtc)2]ではこの交換反応は認められない。ニッケル粉の場合,チウラムスルフィド類はいずれの場合も[Ni(drdtc)2]を形成し,[M(drdtc)2];M=Cu,Znの場合は[Ni(drdtc)2]への交換反応を起こす。銅粉の場合,いずれの場合も溶出ピークが見あたらず鋼粉の吸着物を有機溶媒で抽出し,その可視吸収スペクトルを求めると[Cu(drdtc)2]の形成が認められた。以上のことから,金属粉Mによりチウラムスルフィド類は高温で分解し,[M(drdtc)2]を形成し,[M(drdtc)2]はM,と交換反応をするものと考えられるeこのさい,金属粉M′の種類によって,錯形成あるいは交換反応に相違が認められた。
  • 平山 忠一, 広野 康孝, 松本 和秋, 本里 義明
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1612-1616
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(酢酸ビニル)球状粒子を球形をたもったままケン化し,つづいてヘキサメチレン;ジイソシアナート,トリレソ=ジイソシアナート,エピクロロヒドリンおよびγ線照射で橋かけし4種のポ以(ビニノレアルコール)球状ゲルを調製した。さらにポリ(トリフルオロ酢酸ビニル)をケン化し,その水溶液をエピクロロヒドリンで橋かけしてポリ(ビニルアルコール)ゲルを調製した。ポリ(ビニルアルコール)へのアミノ酸の吸着・排斥現象およびアルコールのゲルとの間の疎水性相互作用を調べた。ゲル中に含まれる酸性基はγ線照射,ジイソシアナートで橋かけされたゲルで41-46μeq/g,エピクロロヒドリンの場合で18μeq/g以下で,これらΟ荷電のため酸性アミノ酸は排斥,塩基性アミノ酸は吸着された。しかしポリ(トリフルオロ酢酸ビニル)から得られたゲルではアミノ酸の分配係数,重合時の重合率と極限粘度の関係から酸性基はほとんど含まれないことが示唆される。エピクロロヒドリンまたはγ線照射で橋かけされたPVAゲルのアルコールとの間の疎水性相互作用は他のゲルのそれより小さい。
  • 白岩 正, 谷口 省三, 井川 明彦, 樫間 裕司, 黒川 秀基
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1617-1622
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    (±)-α-メチルベンジルアミンの有機酸塩のラセミ体構造を調べ,優先晶出法による光学分割の可能性について検討した。塩形成に用いた有機酸は,ベンゼンスルホン酸(BS),p-メチルベソゼンスルホン酸(MBS),p-エチルベンゼンスルホン酸(EBS),スルファニル酸(SU),p-t-ブチル安息香酸(TBB),フェノキシ酢酸(PA),イソ吉草酸(IVA),ビバル酸(PI),メタクリル酸(MC)および2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(HMP)である。これらの有機酸塩のラセミ体と光学活性体の融点,溶解度および赤外吸収スペクトルの比較によってラセミ体構造を調べた。しかし,これらの方法では(±)-TBB塩のみがラセミ混合物であることが推定できただけで,その他の塩のラセミ体構造を推定することは困難であった。そこで,ラセミ体と光学活性体の融解エンタルピー(ΔHf)を比較し,さらにラセミ化合物の生成自由エネルギー(ΔGφ)を求めた。BS,MBS,EBS,SU,PA,MCおよびHMP塩においてはΔHf(±)>ΔHf(-)になったが,IVAならびにPI塩ではΔHf(±)<ΔHf(-)になった。しかし,これらの塩のΔGφ はすべて負の値を示したことから,その(±)-塩はいずれもラセミ化合物を形成していることがわかった。とくに,PI塩のΔGφ の絶対値はその他の塩のそれらにくらべてきわめて小さいので,(±)-PI塩は安定性の乏しいラセミ化合物であると推定されるTBB塩ではΔHf(±)<ΔHf(-)になり,ΔGφ の値も正の値を示したので,そのラセミ体はラセミ混合物であることが確認された。なお,以上の(±)一塩のラセミ体構造は,融点の二成分系状態図からも確認した。以上の結果から,(±)-TBB塩がラセミ混合物であることがわかったので,テトラヒドロフラン中,20℃で優先晶出法によって光学分割した。その結果,90%以上の光学純度の(-)-TBB塩を分割することができた。
  • 宮腰 哲雄, 斎藤 鐘次郎
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1623-1628
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    第三級ホスフィンを触媒に用いるアルキルビニルケトン〔1〕とアルデヒド類〔2〕の反応について研究した。トリフェニルポスフィン触媒を用いた1-ペンテン-3-オン〔1a〕とイソブチルアルデヒド〔2d〕の反応ではアルドール型付加反応生成物として 5-ヒドロキシ-4-メチレン-6-メチル-3-ヘプタノン〔3d〕が得られた。さらに種々のアルデヒド類〔2a〕-〔2g〕を用いた場合は 5-アルキル-5-ヒドロキシ-4-メチレン-3-ペンタノン〔3a〕- 〔3g〕が収率55-80%で得られた。また,種々のアルキルビニルケトン〔lb〕-〔1f〕を用いた場合にはアルドール型付加反応生成物〔3h〕- 〔3l〕が収率よく得られた。一方,トリブチルポスフィンを触媒として用いるアルキルビニルケトン〔1〕とα,α -ジアルキルアセトアルデヒド〔2〕の反応ではMichael型付加反応生成物〔5a〕-〔5e〕が得られた。これらの反応は第三級ホスフィンとアルキルビニルケトンからベタイン中間体が生成し,これにアルデヒド類がアルドール型あるいはMichael型に付加をして進行すると推定した。また,これら触媒の反応性の相違についても考察した。
  • 山本 二郎, 猪原 忠教, 田村 俊輔, 道川 美富, 梅津 雅裕
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1629-1633
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アゾキシベンゼン〔1〕と塩化鉄(III)(FeCl3)との反応において,反応系にFeCl3の添加量を増すと2-ヒドロキシァゾベンゼン〔2〕と4-クロロァゾベンゼン〔3〕の収率が高くなった。アゾキシ化合物と過剰のFeCl3との反応では,いずれの場合もアゾ化合物が多く生成した。FeCl3存在下で4-メチル-ONN-アゾベンゼン〔5α〕と4-メチル-NNO-アゾキシベンゼン〔5β〕とは相互に変換を行なった。
  • 永井 正敏, 加部 利明
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1634-1637
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The mechanism of hydrodenitrogenation of aniline on a reduced molybdena-alumina catalyst has been studied. The reaction was carried out in a high pressure flow microreactor at 260340°C, under the total pressure of 50-440 atm, with the weight hourly space velocity of 10h-1and with the hydrogen flow rate of 30 l/h. The main product was cyclohexane with small amounts of cyclohexene, benzene and methylcyclopentane. The percentage of denitrogenation was 31% and 77% at 300°Cand 340°C, respectively. The addition of benzene did not increase the yields of cyclohexene. When cyclohexene was added, 92% of cyclohexene was converted to cyclohexane. Cyclohexylamine was easily denitrogenated to yield cyclohexane under the reaction conditions. Hydrodenitrogenation of aniline can proceed in two parallel pathways: (1) a preferential hydrogenation of aniline followed by denitrogenation to yield cyclohexene and cyclohexane, and (2) a direct denitrogenation of aniline to give benzene. The present hydrodenitrogenation occurred mainly via the former pathway.
  • 小郷 良明, 木下 茂樹
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1638-1643
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石炭液化プロセスの,主として圧力効果に関する基礎研究を行なうために試作した最高使用圧力80MPaの高圧マイクロフローリアクターの構造と,それを用いて行なった石炭の構造モデルとしての2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DPPH)およびSRCとテトラリンとの反応の実験結果について報告する。本マイクロフローリアクターは類似仕様のステンレス鋼製スパィラルチューブをそれぞれ予熱系,反応系および冷却系とし,2台の液相クロマトグラフ用マイクロポンプを使用して高圧下で流通系での反応を行なわせるものであり,操作圧力は市販のスプリング式安全弁のしめつけ圧によって調節する方式である。このリアクターに常温でテトラリン,400℃で4%のSRCのテトラリン溶液を連続的に圧入して,この反応系が長時間定常的に操作できることを確かめたのち,テトラリンからDPPH・への水素移動反応をSO・C,最高80MPa,SRCとテトラリンとの反応を400℃,最高60MPaでそれぞれ行ない,石炭液化プロセスは水素移動という観点からは加圧下に行なった方が有利であることを明らかにした。
  • 金谷 冨士雄, 根来 健二, 高石 日出男
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1644-1649
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-アルキルエチレンジアミンとクロロ酢酸ナトリウムを水-メタノール混合溶媒中で反応させ,N-[2-(アルキルアミノ)エチル]グリシンニ塩酸塩〔3〕(R=n-C8H17,n-C10H21,n-C12H25,n-C14H29)を合成した。化合物〔3〕は非吸湿性の無色の結晶で,水とメタノールおよびエタノールに溶け,アセトン,酢酸エチル,クロロホルムなど極性の小さい溶媒には不溶であった。〔3〕は水溶液中で三塩基酸として働き,30℃におけるオクチル体の見かけのpKaは2.03(COOH),8.74(α 一NH2+),10.36(ω-NH2+)であった。また,水溶液中でミセルを形成し,CMCの対数とアルキル鎖長との聞に直線関係が成立した。テトラデシル体は流動パラフィンの乳化と起泡力においてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムよりもすぐれていた。化合物〔3〕,とくにテトラデシル体はStaphylococcus aureus とEscherichia coliに対してかなり強い発育阻止作用を示したが,Asper gillus oryzae に対しては効力はいちじるしく劣った。
  • 名川 吉信, 植松 喜稔, 西 末雄
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1650-1656
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩素および二酸化塩素とアルデヒド,ケトソ,カルボン酸,アルコール,エステル,エーテル,フェノール,アミンなどの数十種類の有機化合物の反応を水溶液中で行ない,種々の条件下における有機塩素化合物の生成について検討した。燃焼-電量滴定法による全有機塩素(TOC1)量および揮発性有機塩素(POCI)量とガスクロマトグラフ法によるクロロホルム生成量を有機塩素化合物の指標として用いた。二酸化塩素と有機化合物の反応では,POClおよびクロロホルムの生成が一部の有機化合物との反応でわずかに見られただけであり,塩素との反応の場合に比較してTOClの生成も非常に少なくなった。水素イオン濃度は反応に大きな影響をおよぼし,その影響は有機化合物の種類によって特徴的であった。塩素濃度を増加させて反応を行なうと,TOCIおよびクロロホルムの生成量は大きくなったが・二酸化塩素濃度を増加させて反応を行なうと,TOCIおよびクロロホルムの生成量に極大値を生ずることが認められた。
  • 井出 昇明, 南部 秀三郎, 黒木 健, 池村 糺
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1657-1663
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリスチレンの機能化を目的として,シリカーアルミナ触媒存在下でその接触反応を実施し,主鎖からの脱フェニル反応について調べた。比較的低温域(190-230℃)において急激な分子量低下とベンゼンの生成が認められた。とくにベンゼンの収率は反応初期に高かった。NMRによる接触劣化ポリスチレンの分析から,主鎖中のフェニル基の濃度が反応初期に急激に低下した。その結果,脱フェニル反応は初期に主体的に生起し,後期は主鎖切断反応が進行した。脱離したフェニル基の量は,各反応温度において10量体あたりおよそ2~3mo1であった。また,脱フェニル反応の結果主鎖中にはエチレンユニットが形成され,その濃度はほぼ脱離したフェニル基の割合に一致した。したがって,ポリスチレンの主鎖は接触反応によってランダムにエチレンユニットを含むポリマー主鎖に変成された。
  • 荻田 堯, 八田 博司, 鍵谷 勤
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1664-1669
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    各種トリハロメタン水溶液に室温で低圧水銀灯の紫外線を照射すると,トリハロメタンの濃度はしだいに減少し,CO, CO2, HCl, HBrなどが生成した。クロロホルム水溶液の場合にはO2が存在する必要があり,バイコールフィルターを用いると反慈は起こらない。また,本反応の物質収支から,クロロホルムの分解はつぎの反応式で表わされる酸化反応であることがわかった。他方,CHBrCl2, CHBr2Cl, CHBr3などのブロモ置換メタン類の場合にはO2が共存する必要はなぐ,反応速度はバィコールフィルターの有無によらない。また,プロモ置換体の分解速度はクロロホルムよりも非常に大きく,HCl, HBrおよびCOが生成した。これらの場合の物質収支から,プロモ置換体の反応はつぎの反応式で表わされる加水分解反応であることがわかった。
  • 大塚 和正
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1670-1672
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The main reaction scheme of the H2O2 oxidations of dihydroxo(dioxalato)chromate(III)and dihydroxo(dimalonato)chromate(III) in basic media is presumed as follows. Like the oxidations of [Cr(edta)(OH)]2- and [Cr(hedta)(OH)]-, the primary reaction forms hydrogenperoxochromium(III), which is oxidized immediately by the coordinated O2H- to a Crv intermediate. The formation of the Crv intermediate is confirmed by ESR and visible spectroscopy. It is likely that the Crv intermediate is further oxidized to CrO42- by H2O2.
  • 武田 新一, 田海 俊弥, 竹野 昇
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1673-1677
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Basicities of methyl-substituted coumarins ([1]-[29]) have been determined by the spectrophotometric method. It was found that the introduction of methyl group at the C-4position increased the basicity, whereas the methyl substitution at the C-3 position gave no effect. Introduction of two methyl groups at both C-3 and C-4 positiions greatly enhanced the basicity. The Hammett relationship between the basicity and ∑σ of methyl substituents in the ben. zene ring was found to hold for 3-methyl, 4-methyl, 3, 4-dimethyl and unsubstituted coumarins. The Huckel MO calculations have been also carried out for these coumarines. The ΔEπ values for the acid-base equilibria and the π-electron densities on the carbonyl oxygen showed fairly well linear correlations with the observed pKa values.
  • 高橋 清文, 梶 英輔, 膳 昭之助
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1678-1680
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4-Substituted 3, 5-bis(methoxycarbony1)-2-isoxazoline 2-oxides, cyclic nitronic esters of type [I], have been readily synthesized in reasonable yields by an one-pot reaction of aldehydes with two molar amount of methyl nitroacetate in the presence of diethylamine in a polar aprotic solvent such as N, N-dimethylacetamide (DMA).4-Substituent of [I] comprises o-, m, or p-functionalized phenyl, fused aryl, or heteroaromatic group. Yields and physical properties of newly prepared 2-isoxazoline 2-o, xides, are, summarized in Table 1, while their spectroscopic data are given in Table 2 (IR, UV, MS, and 1H-NMR)as well as Table 3(13C-NMR). This method is found to be widely applicable to the synthesis of such 2-isoxazoline 2-oxides as type [I], which may serve as an useful intermediate for the synthesis of new type of heterocycles through the ring transformation as reported previously by the authors.
  • 小木 知子, 中山 哲男, 上野 勝彦, 中村 悦郎
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1681-1683
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The oxidation of 1, 2, 3, 4-tetrahydronaphthalene(tetralin) by Co (II)-Ce(III)-NE4, Br in the presence of acetic anhydride resulted in the formation of 1: 1 mixture of cis- and trans-1, 4diacetoxytetralin(A, B). Their structures were discussed on the basis of 1H- and 13C-NMR spectral data, and finally the structure of B was determined by single crystal X-ray method (Fig.2). This was the first report of structure determination of both of cis- and trans-1, 4diacetoxytetralin.
  • 北原 清志, 西 久夫
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1684-1686
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    5, 15-Dialkyl-8, 18-dichloro-5, 15-dihydrodiindlo [3, 2-b: 3', 2'-m] triphenodioxazines [4 a-d], trivially named as Carbazole Dioxazine, were prepared by following two steps ofelectrochemical reactions. (a) The cathodic reduction of 9-alkyl-3-nitrocarbazoles [1] in 4.4% H2SO4aq. -acetonitrile at a graphite cathode under nitrogen gave the corresponding amines [2] in 71-91% yields. (b) The anodic oxidation of 2, 5-dichloro-3, 6-bis(9-alkyl-3-carbazolylamino)-1, 4-benzoquinones [3], which were obtained by the reaction of chloranil with ( 2 ), in DMF at 80°C using a graphite anode at constant current afforded preferentially pure [4]in the yields of 71-81%
  • 白岩 正, 梅垣 憲司, 黒川 秀基
    1983 年 1983 巻 11 号 p. 1687-1688
    発行日: 1983/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The optical resolution of N-acetyl-DL-a-phenylglycine (Ac-DL-Phg) has been achieved with (-)-α-methylbenzylamine in ethanol. The optical purities of both Ac-D- and -L-Phg obtained from the diastereomeric salts were over 90%.
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