長鎖1,2-エポキシアルカンとエチレンジアミンから1-(2-アミノエチルアミノ)-2-アルカノールを合成した。この(2-アミノエチルアミノ)アルコーノレをキシレン中でRaneyニッヶルW-4の存在下に加熱すると容易に脱水閉環が起こり,2-アルキルピペラジンが生成した。さらにこれをメタノール中で1,3-プロパンスルトンと反応させ,3-(3-アルキル-1-ピペラジニル)-1-プロパンスルホン酸とそのナトリウム塩〔1〕(アルキル基R=n-C
mH
2m+1,m=8,10,12,14,16)を合成した。比較のためさらに,N-テトラデシルピペラジンと1,3-プロパンスルトンから3-(4-テトラデシルー1-ピペラジニル)-1-プロパンスルホン酸とそのナトリウム塩〔2〕,2-テトラデシルピペラジンと2-プロモエタソスルホン酸ナトリウムから2-(3-テトラデシルー1-ピペラジニル)エタンスルホン酸とそのナトリウム塩〔3〕をそれぞれ合成した。
化合物〔1〕~ 〔3〕は水溶液中でミセルを形成し,CMCにおける表面張力は36~47dyn/cmであった。〔1〕(R=n-C
14H
29,n-C
16H
33)と〔3〕はOrange OTに対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)よりもはるかに大きな可溶化力を示した。さらに起泡力と泡安定性および水への流動パラフィンの乳化においてDBSと同等あるいはそれ以上の性能を示した。
分子内塩〔1〕(R=n-C
8H
17)は弱酸性(pK
a′=9.10)の両性電解質でpH8.5~10.1においてpH緩衝作用を示し,その緩衝能力は生化学領域でもっとも広く使用されているpH緩衝剤2-(4-ヒドロキシエチルー1-ピペラジニル)エタンスルホン酸(HEPES)よりやや劣った。化合物〔1〕はグラム陰性菌Escherichia coliに対してほとんど抗菌活性を示さず,ドデシル体とテトラデシル体のみがグラム陽性菌StaPhylocuccus aureus に対して弱い抗菌作用を示した。他方,カビに対しては高い活性を示し,とりわけテトラデシル体がAsPergillus oryzaeに対してヘキサデシルトリメチルアンモニウム=プロミド(CTAB)およびペンタクロロフェノールナトリウム塩(PCPNa)と同程度の強い防カビカを示した。
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