日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1983 巻, 12 号
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  • 宮嶋 孝一郎, 澤田 雅裕, 中垣 正幸
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1691-1697
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水構造に対して異なる影響を与える2種の物質の水溶液中における相互作用を調べる目的で,D-グルコースと塩化カルシウムおよびグアニジニウム盤プロミドの混合水溶液における活量係数を等圧比較法を用いて25℃ で測定し,混合による過剰自由エネルギー変化(ΔGmex)を求めた。その結果,D-グルコース-塩化カルシウム-水系のΔGmexは正となり混合により系は不安定化すること,濃度が低い場合には両溶質の活量係数は増大し相互塩析するが,濃度が高くなるとCaCl2の活量係数は減少することが明らかとなった。この結果から,D-グルコースとCaCl2の水和構造が異なるために水和殻どうしに反発力が働くこと,濃度が高くなるとCaCl2とD-グルコースのヒドロキシル基との間にイオンー双極子相互作用が働くことがわかった。一方,D-グルコース-グアニジニウム=プロミド-水系のmは負となり,両溶質の活量係数は減少して相互塩溶することが明らかとなった。この結果はグアニジニウムィオンの水構造破壊能に起因するものと結論した。
  • 篠田 清徳, 安田 賢生
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1698-1702
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    活性アルミナ上で1-プロモ-3-クロロプロパン(BCP)とメタノールとを反応温度200℃付近で反応させると脱ハロゲン化水素反応はまったく起こらず,かなり多量の1-プロモ-3-メトキシプロパン,1-クロロ-3-メトキシプロパンおよび1,3-ジメトキシプロパンを生成する。メタノールの存在で,BCPから脱離したハロゲンがハロゲン化メチルとして固定されるため,BCPのカルボニウムイオンとハロゲン化物イオンの解離にはじまる1,3-ジブロモプロパン(DBP)および1,3-ジクロロプロパン(DCP)への不均化反応の平衡関係は大きくくずれて,メトキシル化反応は円滑に進行した。メトキシル化反応率はメタノールの濃度(モル比)が増加するとほぼ一定の値を示し,反応温度や時間因子(VVIF)の増加で増大した。BCPのほか,DBPやDCPについてもメトキシル化反応を試み,メタノール過剃の反応条件では反応速度は基質濃度の一次に比例するとして動力学的解析を行なった。その結果,臭素原子が塩素原子より容易に置換反応を受け,DBP>BCP>>DCPの順に反応性は低下することを見いだした。反応は活性アルミナの塩基点上でメタノール分子が解離して生成したメトキシドイオソが1,3-ジハロプロパンの電子密度の小さい末端炭素を求核的に攻撃するSN反応によって進むものと考えた。
  • 小関 健一, 鈴木 信明, 山岡 亜夫, 角田 隆弘
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1703-1707
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高感度レーザー記録用ホトポリマーの開発にあたり,本研究ではポリ(p-アジド安息香酸ビニル)に分光増感剤として4-(4-ブトキシフェニル)-2,6-ジフェニルチオ・ピリリウム塩を添加した感光系について,可視アルゴンイオンレーザー光(488nm)の走査露光下における感光特性について調べた。その結果,感光性は照射光強度の増加につれて低下するという高照度相反則不軌挙動が観察された。レーザー光強度が104J/cm2・s以上,一画素あたりの露光時間が10-6秒以下になると相反則からのずれが大きくなる。この相反則からのずれは,SchwarzschildのP値を用いて定量化し,露光条件の補正が可能であることを示した。したがってレーザー出力および露光条件をある範囲内において設定すれば,この感光系はすぐれた感光材料として使用することができる。光照射時の電子スペクトル変化およびポリマーのモデル化合物を使用したリン光測定のStern-Volmerプロットなどから,この光反応系は,三重項-三重項エネルギー移動を利用した分光増感系であることが明らかとなり,高照度短時間領域における相反則不軌挙動の原因が,おもに露光中において基底状態に存在する増感剤分子数の低下にあることが推察された。
  • 小関 健一, 山岡 亜夫
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1708-1714
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    感光性樹脂の機能として光発色性をもたせることを目的とし,芳香族アジド化合物の光分解で生じたニトレンと反応しそ発色性化合物を形成しうるカプラー構造を側鎖に有する希アルカリ水溶液に可溶な高分子としてポリ(o-ヒドロキシスチレン)系ポリマーをラジカル重合により合成した。このポリマー中に芳香族アジド化合物を入れた系は,光照射により非常に強い発色をするとともに希アルカリ水溶液に不溶性となった。この光発色および不溶化の機構を明らかにするためポリマーのモデル化合物としてo-クレゾールを用いた系について,反応生成物に注目して比較検討した。
    その結果,光発色は光分解で生じたニトレンによるヒドロキシル基からの水素引き抜き反応を介して形成されたキノンイミン型構造によることが明らかとなった。光不溶化は,短時間露光域においてはポリマーの分子間橋かけ反応ではなく,キノンィミン構造が形成されたために極性基であるヒドロキシル基が減少し,ポリマーの溶解度パラメーターが変化したために生じたものであることがわかった。
  • 鎌田 喜一郎, 松本 茂樹, 大津 賀望
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1715-1719
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Zn(acac)2-H,O-O2系の気相反癒により,100~800℃ の反応温度で平均粒子径21~36nmの非常に細かい酸化亜鉛微粉体が生成し,粒径は200℃ 以上で温度とともに増大した。とくに100。Cという低温でも,酸化亜鉛微粉体の生成が赤外吸収スペクトルおよび粉末X線回折により確認されたo 反応ガス中に水蒸気を含まない場合,錯体は低温で反応せず,400℃ 以下では酸化亜鉛粉体は生成しなかった。反応温度800℃ において錯体蒸発速度を増した場合,粒径は徐々に増加し,反応管内のガス流速を上げた場合粒径は徐々に減少した。
  • 徳永 幸男, 西 晴久, 平田 好洋, 加藤 昭夫
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1720-1726
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    噴霧熱分解法によって得られた組成O.87Na2O・O,6MgO・5Al2O3のβ,β″-アルミナ粉体からの焼結体製造について,成形法および焼成条件が焼結体の微細構造-粒子成長と粒子配向および電導の異方性におよぼす効果を調べ,つぎの結果を得た。
    (1)成形体の密度は加圧成形法によって,一軸加圧(A)<一軸加圧+粉砕+-軸加圧(B)<一軸加圧+粉砕+等方加圧(C)の順に増加したが,1560~1620℃,5~90分の焼成では,成形体の密度が小さいほど異常粒成長が起こり,焼結体はDuplex構造となりやすい。また,成形法(B)では成形体においてもβ,β″-アルミナ粒子が配向(c面が加圧方向に垂直)しており,その配向度は焼成によって,いちじるしく増加するが,成形法(C)では成形体および焼結体での配向度は小さく,成形体のち密化が粒子配向の抑制に重要である。
    (2)焼結体にはβ およびβ″の両相が存在するが,構成粒子が大きいほどβ″"相の割合が増す。(3)焼結体の比抵抗は,一般に加圧方向の方がそれに垂直な方向より大きい。そして比抵抗は粒子の配向度の増加によって,前者の方向ではいちじるしく増加するが,後者の方向では変化が小さい。この両方向における比抵抗の粒子配向度依存性は簡単なモデルによって説明できる
  • 田中 順三, 長田 英次, 坂内 英典, 堤 正幸, 月岡 正至, 野村 昭一郎
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1728-1732
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イルメナイト型誘電体MgTiO3にペロブスカイト型誘電体CaTiO3を少量添加するとマイクロ波帯域の共振周波数の温度係数が改善されるが,そのときのCaTio3の添加の効果.分布のようすを,0.96MgTiO3.004CaTiO3の組成をもつ焼結体.単結晶について粉末X線回折.SEM.EPMAを使って調べた。分析の結果から,CaTiO3はMgTiO3に0。2wt%,MgTiO3はCaTiO3に1.4wt%固溶するが,これらの固溶領域は非常に狭く両化合物は事実上相互に独立した相として存在していることを示した。この組成分布と誘電率のカルシウム濃度依存性から,MgTiO3-CaTiO3系の電気応答に対するもっとも妥当な等価回路を提案して,組成の分布が誘電特性に与える効果を明らかにした。
  • 山田 重雄, 梅原 道子, 石井 実, 中原 勝儼
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1733-1738
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    六員環キレートを生成する三座配位子ビス(3-アミノプロピル)アミン(通称ジプロピレソトリアミン)の,これまでにつくられていなかったビス型コバルト(III)錯体を合成した。この錯体には三つの幾何異性体の存在が考えられるが,ここに得られたものはmer異性体であって,この合成法では他のsym-facおよびunsym-fac異性体は生成しないものと考えられる。mer異性体には,トランス位にある二つの第二級アミンのN-Hの方向によって生ずる光学異性体の存在が考えられるが,これらをイオン交換樹脂法によって分割した。
  • 岡田 實
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1739-1742
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    以前,種々の大きさのGe(Li)検出器に対してそれぞれの相対効率曲線を発表したが,その曲線群を今回改訂し,それを使って放射性核種のγ線スペクトル図の未解析X線ピークを解析し,下記のX線強度値を得た。これらは放射化分析に有用と考えられる。
  • 白岩 正, 森田 昌之, 岩藤 賢司, 黒川 秀基
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1743-1746
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    (±)-リンゴ酸((±)-(1))と(±)-α-メチルベンジルアミン((±)-〔2〕)との塩((±)-1・(±)-2)の優先晶出法による光学分割を試みた。(±)-〔1〕と(±)-〔2〕との塩形成において,壇の組み合わせは(-)-1・(-)-2,(+)-1・(+)-2,(-)-1・(+)-2および(+)-1・(-)-2の4種類が可能である。そこで,これらの塩を調製してそれらの赤外吸収スペクトル,融点および溶解度と(±)-1・(±)-2のそれらを比較し,さらに融点の二成分系状態図を作成した。その結果,(±)-1・(±)-2は(-)-1・(+)-2と(+)-1・(-)-2とからなり,そのラセミ体構造はラセミ混合物であることがわかった。そこで,(±)-1・(±)-2をメタノール中で優先晶出法による光学分割を試みた。
  • 川名 修, 中村 好男, 吉弘 芳郎
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1747-1752
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,5-二置換フラン化合物として,5-ヒドロキシメチルフルブラール〔1a〕およびその誘導体を選び,これらをメタノール溶媒中で定電流電解法により酸化開裂反応を行なった。5-アセトキシメチルフルフラール〔1b〕,5-アセトキシメチルフルフリルアルコール〔2〕および2-(1-アセトキシアルキル)-5-(エトキシメチル)フラン〔4〕から,アセトキシル基を有する側鎖官能基を残した環開裂物である。(Z)-5-アセトキシ-4,4-ジメトキシ-2-ペンテン酸メチル〔5a〕および(Z)-5-アセトキシ-5アルキル-4,4-ジメトキシ-2-ペンテン酸メチル〔5b~f〕が選択的に生成することを見いだした。一方,5-ヒドロキシメチルフルフラール〔1ta〕および2-(1-ヒドロキシエチル)-5-(エトキシメチル)フラン〔3a〕を基質にした場合では,両方の側鎖官能基が脱離したマレイン酸ジメチル〔8〕およびコハク酸ジメチル〔9〕まで反応が進行した。
  • 高野 信弘, 竹野 昇, 森田 睦夫
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1753-1760
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N,N-ジメチルホルムアミド中における2,3-ジフェニル-1-インデノン(DPI)の電気化学的挙動を直流ポーラログラフィー,サイクリックボルタンメトリー,定電位電解および紫外・可視分光光度法によって検討した。DPIは典型的な各1電子2段階波を与えた。第1段階においては比較的安定なアニオンラジカルを生成する可逆過程であり,求電子試薬が存在するときECE機溝にしたがって電解生成物を与えた。第2段階では2電子授受によって生成されたジアニオンが後続化学反応をともない,非可逆的挙動を示した。とくに,Li+が存在するとき,ジアニオンと基質による不均化平衡において,アニオンラジカルの生成が紫外・可視吸収スペクトルから確認された。無水酢酸の存在下における電解および分子軌道法計算などの検討によってアニオンラジカルの中間体構造が示唆された。電解条件は生成物の立体選択性に影響を与え,cis-,trans-立体異性体の生成分布を変化させた。
  • 島崎 長一郎, 内田 敦, 大西 八郎, 岩井 芳浩, 若林 真理子
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1761-1769
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-イミダゾリジノン〔1a〕,2-イミダゾリジンチオン〔1b〕のヒドロキシメチル化の合成反慈について検討した。これら反応生成物では,ビス(ヒドロキシメチル)化物が安定で容易に単離できた。〔1a〕,〔1b〕,1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-2-イミダゾリジノン〔2a〕と1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-2-イミダゾリジンチオン〔2b〕の熱分解過程を熱分析により,熱電子衝撃による開裂機構を質量スペクトルにより研究した。ビス(ヒドロキシメチル)化物の熱分解反応は両者とも融解後,縮重合反応の段階を経由して熱分解すること,およびこの段階は固態での通常の熱重合で特徴づけられる一次反応にしたがうことなどを明らかにした。また,縮重合反応の動力学的データも,等温DSC曲線を解析することにより算出した。また〔1a〕のDTA,DSC両曲線とも,融点よりも低い温度で結晶多形に起因する転移のピークを示した。
    熱電子衝撃による開裂は,〔2a〕,〔2b〕とも側鎖が開裂したのち,〔1a〕,〔lb〕に相応する分子イオンピークの五員環の開裂が生じることがわかり,〔1a〕,〔1b〕に対する主要開裂機構は3種の様式からなることがわかった。〔1a〕の重水素化ラベル法で主要イオン(m/e30)の開裂機構の確認を行なうことができた。また,高分解能質量スペクトルの測定により,低分解能スペクトルの各ピークの組成の決定ができ,開裂機構の確認を行なうことができた。
  • 中野 多一, 大川 和宏, 池守 滋, 長谷川 玲子, 迫 良輔, 松本 英之, 永井 洋一郎
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1770-1777
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジクロロトリス(トリフェニルボスフィン)ルテニウム(II)を触媒とするオレフィンとα-ポリクロロカルボン酸との反応を検討した。モノアルキルエチレンのトリクロロ酢酸,ジクロロ酢酸および2,2-ジクロロプロピオン酸との反応は,α-クロロ-γ-アルキル-γ-ブチロラクトン類を50~84%の単離収率で与えた。シクロペンテン,シクロヘキセンおよびシクロヘプテンのトリクロロ酢酸との反応は,cis-縮合環α-クロロ-γ-ブチロラクトンを,それぞれ35,22および32%の単離収率で与えた。1,1-ジアルキルエチレンからは予想したα-クロロ-γ-ブチロラクトンとその構造異性体の混合物が42~67%の単離収率で得られた。そのほか,5-ヘキセン-2-オンおよび3-ブテン酸のトリクロロ酢酸との反応から,相当するα-クロロ-γ-ブチロラクトンが24%程度の単離収率で得られた。スチレンおよびイソプレンなどの重合性オレフィンのα-ポリクロロカルボン酸との反応では,オレフィンのカチオン重合が優先し,期待したγ一ブチロラクトンは得られなかった。
  • 中野 多一, 大州 和宏, 池守 滋, 松本 英之, 永井 洋一郎
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1778-1782
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジクロロトリス(トリフェニルポスフィン)ルテニウム(II)を触媒とする種々のオレフィンとトリクロロ酢酸ジクロロ酢酸および2,2-ジクロロプロピオン酸などのトリメチルシリルエステルとの反応を検討した。シクロペンテン,シクロヘキセンおよびシクロヘプテンとトリクロロ酢酸トリメチルシリルとの反応ではcis-縮合環γ-ブチロラクトンがそれぞれ52(GLC),61および57%の収率で得られた。スチレンやイソプレンなどの重合性オレフィンとα-ポリクロロカルボン酸トリメチルシリルとの反応からは,25~87%の単離収率で目的とするα-クロロ-γ-ブチロラクトンが得られた。
  • 金谷 冨士雄, 根来 健二, 中野 真司, 李 榮枝
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1783-1791
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    長鎖1,2-エポキシアルカンとエチレンジアミンから1-(2-アミノエチルアミノ)-2-アルカノールを合成した。この(2-アミノエチルアミノ)アルコーノレをキシレン中でRaneyニッヶルW-4の存在下に加熱すると容易に脱水閉環が起こり,2-アルキルピペラジンが生成した。さらにこれをメタノール中で1,3-プロパンスルトンと反応させ,3-(3-アルキル-1-ピペラジニル)-1-プロパンスルホン酸とそのナトリウム塩〔1〕(アルキル基R=n-CmH2m+1,m=8,10,12,14,16)を合成した。比較のためさらに,N-テトラデシルピペラジンと1,3-プロパンスルトンから3-(4-テトラデシルー1-ピペラジニル)-1-プロパンスルホン酸とそのナトリウム塩〔2〕,2-テトラデシルピペラジンと2-プロモエタソスルホン酸ナトリウムから2-(3-テトラデシルー1-ピペラジニル)エタンスルホン酸とそのナトリウム塩〔3〕をそれぞれ合成した。
    化合物〔1〕~ 〔3〕は水溶液中でミセルを形成し,CMCにおける表面張力は36~47dyn/cmであった。〔1〕(R=n-C14H29,n-C16H33)と〔3〕はOrange OTに対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)よりもはるかに大きな可溶化力を示した。さらに起泡力と泡安定性および水への流動パラフィンの乳化においてDBSと同等あるいはそれ以上の性能を示した。
    分子内塩〔1〕(R=n-C8H17)は弱酸性(pKa′=9.10)の両性電解質でpH8.5~10.1においてpH緩衝作用を示し,その緩衝能力は生化学領域でもっとも広く使用されているpH緩衝剤2-(4-ヒドロキシエチルー1-ピペラジニル)エタンスルホン酸(HEPES)よりやや劣った。化合物〔1〕はグラム陰性菌Escherichia coliに対してほとんど抗菌活性を示さず,ドデシル体とテトラデシル体のみがグラム陽性菌StaPhylocuccus aureus に対して弱い抗菌作用を示した。他方,カビに対しては高い活性を示し,とりわけテトラデシル体がAsPergillus oryzaeに対してヘキサデシルトリメチルアンモニウム=プロミド(CTAB)およびペンタクロロフェノールナトリウム塩(PCPNa)と同程度の強い防カビカを示した。
  • 南後 守, 前翔 昌子, 片山 明, 黒木 宣彦
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1792-1796
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高分子電解質はその分子サイズの大きさのためにバルク相にのみ存在すると考えて新たに定義した無機電解質一染料比(p)と直接性比(q)を用いると,高分子電解質共存下においても,Standingらのpq方程式ならびに無塩条件下でのVickerstaff, Petersらの直接性の関係式が成立することが認められた。その結=果,高分子電解質がバルク溶液相に存在することにより,染料イオンをDonnan膜現象によりセルロース内部溶液相へ濃縮して染料の吸着を促進すると,さきに著者らが提案した膜現象モデルの再現性が認められた。
  • 船田 正, 平野 二郎, 森岡 憲祐, 村上 幸子, 石田 祀朗
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1797-1805
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リパーゼによるエステル合成および交換反応を行なった。リパーゼとして反応性の大きいクロモバクテリウム属起源のリパーゼを用い,グリセリンとオレイン酸,オレイン酸メチル,オレイン酸エチル,オレイン酸ブチルとのエステル合成およびエステル交換反応に対する水分含量の影響について検討した。
    その結果,エステル合成およびエステル交換反応ともに水分含量の影響をうけ,水分は両反応に対し,まったく逆の作用を示していることが判明した。すなわちエステル合成に対して水は,初期反応速度を増大させるが最終反応率を低下きせる。一方,エステル交換反応では,水の存在により反応率,反応速度ともに上昇することが明らかとなった。
  • 結城 康夫, 国貞 秀雄, 朝倉 陸美
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1806-1813
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-アニリノ-4-ジメチルアミノ-〔2〕,ジエチルアミノ-〔2〕,(1-ピロリジニル)-〔3〕声よびピペリジノ-〔4〕6-イソプロペニル-1,3,5-トリアジンを合成した。アゾビスィソブチロニトリルを開始剤,ジメチルスルポキシドを溶媒として〔1〕~〔4〕の単独重合およびスチレン,メタクリル酸メチル(M1)をコモノマーとする共重合を行ない,共重合パラメーター(r1,r2,Q2,e2)を決定した。またこれらのモノマーは融解後,熱重合による発熱がみられたので,示差走査熱量計(DSC)を用い〔1〕~〔4〕の昇温法による重合の熱力学を調ぺ,重合熱,天井温度を決定した,つぎに等温法により,平衡モノマー濃度を決定し,それより重合熱,天井温度を求めた。これらの値は昇温法により求めた値とよく一致した。
  • 河島 達郎
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1814-1817
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The flowers of Liliiflorae plants (Lycoris radiata Herb., Lilium longiflorum Thunb. and Crinuin asiaticum L.) were divided into leaf, peduncle, bract, perianth, filament, anther, ovary, style, stigma etc. and the distribution of elements in each part was determined. The analytical results revealed that (1) almost all elements were distributed with different concentration according to a part of the flowers, (2) abnormal distribution of cobalt and nickel to genital organ was noticed in Lilium longiflorum Thunb., and (3) high content of cadmium to genital organ and low content of calcium in each part were observed on Crinum asiaticum L.
  • 野村 正人, 藤原 義人
    1983 年 1983 巻 12 号 p. 1818-1822
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The hydration of 1-p-menthene [1], 3-p-menthene [2], 1, 8-p-menthadiene [3], isoprene [4] mycrene [5], dihydromycrene [6], longifolene C7J and p-caryophyllene C8D with mono-, di- and trichloroacetic acids in the presence of synthetic zeolites (A-3, A-4, A-5, F-9 and TSZ-301) was investigated. The hydration of[1], [2] and [3]gave cis-1-p-menthanol [1 0 ], trans-4-p-menthanol [13] and a-terpineol [ 14 ], respectively as a main product with high conversion (89-400%, at best) and high selectivity. Hydration of C 4 J gave geraniol [15] as a major product. Linalool C. /8 J and myrcenol [19] were obtained as major two products from C 5 J. Under particular conditions, the [18]/[19] ratio was 57: 28 or 46: 42. Dihydromyrcenol [20]was obtained from [6] as a main product, amounting to 80% of the hydration products under the best conditions. Longicamphene hydrate [21]was obtained in high selectivity (86% and 92%) from [7]. β-Caryophyllene alcohol [24] was obtained from [8] as a main product, amounting to 84% of the hydration products under the best conditions.
  • 1983 年 1983 巻 12 号 p. 1823a
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1983 年 1983 巻 12 号 p. 1823b
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/05/30
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