日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1983 巻, 6 号
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  • 三十尾 久仁夫, 田坂 茂, 宮田 清蔵, 雀部 博之
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 763-768
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(p-フェニレンスルフィド)(PPS)蒸着薄膜を用いて作製したMIM(金属-絶縁体-金属)素子に関して電気伝導機構および光起電力効果を測定した。
    PPSは350℃以上に加熱すると蒸着可能となる。蒸着時間と蒸着源温度を制御して膜厚500~1500Åの薄膜を得た。このようにして構成したアルミニウム(Al)-PPS-銅(Cu)素子は暗状態で整流特性,300nmの光照射下では開放端電圧o.5V短絡電流1.8×10-9A/cm2,変換効率0.21%の光起電力効果が観察された。これらの挙動は仕事関数の小さなアルミニウムとPPSの界面でSchottky障壁が形成されていることによると考えられる。この障壁の状態を明らかにするために,電流電圧特性およゆび電気容量の電圧特性を調べた。電極とPPSとの界面における空乏層の厚みは80Å,Schottky障壁の高さは1.05eVであった。
  • 鈴木 和富, 中谷 健司, 矢野 満明, 岡庭 宏
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 769-775
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シランガスのグロー放電分解反応により形成したアモルファスシリコン上に,透明電極としてITO(indiumtinoxide)膜を積層したヘテPtフェイス型ナモルファスシリコン太陽電池(Ag/ITO/nip/基板)において,ITO膜の特性と電池特性との関連について検討した。その結果,n層にマイクロクリスタル化相を適用した場合,ITO膜を反応性スパッター法で成膜することによって,反応性蒸着法の場合にくらべ,光電変換効率が10%前後改善されることがわかった。一方,n層がアモルファス相のみの場合には,ITOの形成法によらず,ほぼ同じ電池性能を示す。
    反応性スパッター法と反応性蒸着法で得られるITO膜の表面電気抵抗および可視光の吸収係数は,ほぼ同じである。しかし両者の構造を電顕やX線回折で検討したところ,前者でぼ比較的緻密な膜になっているのに対し,後者では結晶サイズが大きく,粒状柱状構造になっていることがわかった。とのような違いが,単にITO膜のバルクの性質のみでなく,ITO/si界面および収集電極であるAg/ITO界面に影響を与えていると思われる。事実,Ag/ITO界面について接触抵抗を測定したところ,後者では前者より大きくなっているという知見が得られた。
  • 北畠 真, 三露 常男, 広地 久美子, 和佐 清孝
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 776-783
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    RF-プレナーマグネトロンスパッター装置を用いて,基板を冷却しつつスパッター蒸着することにより,PbTiO3,およびLiNbO3のアモルファススパッター膜を得た。PbTiO3のas-sputter膜は表面が~10(ω・cm)-1程度の高い導電率を示し,これは膜中の鉛のcrystallites間での電子のhoppingによって説明される。この高導電率は220℃ 以上でannealすることにより消失し,同時に誘電率や膜の色も大きく変化する。このanneal膜は,融液急冷法で得られるアモルファスPbTiO3と類似している。LiNbO3については,as-sputter膜が融液急冷法で得られるアモルファスLiNbO3ど類似しており,同様の誘電特性を示す。アモルファスLiNbO3は,高温低周波側でε*>103の高誘電率を示し, この高誘電率は,膜を構成している酸素八面体の隙間でのリチウム原子の動きに起因していると考えられる。
  • 高橋 勝緒, 岡部 芳雄, 岩木 正哉
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 784-790
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イオン注入法を用いて,金属表層の電気化学的性質を変化させる試みについて,これまでの研究の概要を述べた。理研200kVイオン注入機を用い,鉄を母材として,Ar+,O2+,N2+,Zn+,Cu+,Ni+,Cr+,Ti+ およびSi+の注入を行なった。イオン注入した鉄試料について,二次イオン質量分析溝を用いて,鉄表層中の注入元素の濃度-深さ分布を測定した。イオン注入した鉄を作用電極として,サイクリックボルタンモグラムを測定し,電気化学的性質におよぼすイオン注入の効果を検討した。Cr+,Si+およびTi+注入が,鉄電極のアノード溶解をいちじるしく抑剃することが見いだされた。サイクリックボルタンモグラム測定前後の電極表面の形状を電子顕微鏡観察により比較し,また注入元素の分布の変化を調べることにより,ボルタンメトリーにともなう試料電極表層のアノード溶解挙動が検討された。また,Cr+-O2+などの二重イオン注入が試みられ,O2+ 注入による注入層中のクロムの酸化が,アノード溶解の抑制に寄与することが見いだされた。
  • 逢坂 哲彌, 小岩 一郎, 後藤 文男, 菅沼 葉二
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 791-797
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    無電解めっき法を利用した垂直磁気記録媒体の研究開発を行なった。まず第一に,アンモニア・アルカリ性マロン酸・リンゴ酸浴からなる基本浴Aをこの目的のために開発したが,その条件などは,浴中の主因子であるMnSO4濃度,浴pHおよびNiSO4濃度の効果から決定した。さらに,高密度化を可能とする狭ギャップヘッドを利用できるように垂直成分方向の保磁力Hc(⊥)を低くしてかつ磁気特性を損なわない膜が得られる改良浴Bを開発した。改良浴BはA浴で扱った以外の因子を変数として決定した(すなわちCoSO4濃度,次亜リン酸濃度および浴温)。基本浴Aおよび改良浴Bから得たコバルト合金磁性膜は直径0.05μmの柱状構造をもち,基板面に垂直なc軸分散度は非常に均一であることが確認された。これらの浴から作製した,8インチディスクの記録再生試験の結果,低記録密度で垂直記録を示唆するダイパルス波形が観測され,かつリングヘッドとの組み合わせによりD50=18500FRPIまた改良型狭ギャップヘッドとの組み合わせによりD50=25000FRPIの記録密度が得られた。
  • 小関 健一, 山岡 亜夫, 角田 隆弘, 清水 茂樹, 高橋 徳明
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 798-806
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    紫外線に対して高い感光性を示すとともに,すぐれた感光材料としての物性を有するかフェ帯レンジアクリラート系不飽和ポリエステル樹脂を合成し,このフォトポリマーの分光増感を行ない,可視アルゴンイオンレーザー光に対する感光特性について検討を行なった。レーザー記録特性は,直径1.25mmのビームを直接材料に照射する静的条件下,およびビームを光学系により25μmに絞り高速度で走査露光する動的条件下において測定した。その結果,4-(4-ブトキシフェニル)-2,6-ジフェニルチオピリリウム過塩素酸塩を分光増感剤として用いた系では,488nmのレーザー光に対して静的条件下で14mJ/cm2という高い感光性を示すことがわかった。しかし走査露光下では,10-6秒程度の短時間露光領域で相反則にしたがわなくなり感度の低下が生じてきた。増感によらず直接感光基を励起したジアゾ系フォトポリマー系においては,相反則不軌を示さなかったこと,および電子スペクトル,リン光発光スペクトルの測定から,分光増感したフ,オトポリマー系で見られた高照度短時間露光領域での相反則不軌挙動の原因は,三重項を経由するエネルギー移動機構にあることが明らかとなった。
  • 新堀 卓史, 村松 延弘, 近藤 保
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 807-811
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の酵素を高分子超薄膜からできたマイクロカプセルの表面に固定化し,また内部に封入することにより動植物細胞類似の機能をもつ人工細胞を構築する試みの一環として,界面重縮合法により調製したポリアミドマイクロカプセル表面にトリプシンを化学結合により固定し,その酵素活性を測定し溶液中の遊離トリプシンに対する値と比較した。
    スペーサーなしでマイクロカプセルに固定化したトリプシン(MC-T)およびスペーサーを介して固定化したトリプシン(MC-S-T)の酵素活性の,遊離トリプシンのそれに対する相対値は低分子基質の場合にはいずれも130%程度となり,高分子基質の場合にはおそらく立体障害のためそれぞれ約30%および60%となった。遊離トリプシソの酵素活性至適pHは8.5付近にあるが,MC-TおよびMC-S-Tの至適pHは若干アルカリ側に移動した。低分子基質を用いたときの,MC-TおよびMCS-TのMichaelis定数Kmはともに遊離トリプシンに対する値の約2分の1となり,最大反応速度Vmaxは75%程度となった。酵素の熱安定性は固定化によりいちじるしく増大した。
  • 長田 義仁, 竹内 洋介, 小池 正義
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 812-818
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    橋かけポリ(メタクリル酸)(PMAA)膜と各種の水溶性高分子との間で会合を起こしてメカノケミカル伸縮を実現させ,この伸縮がPMAA膜の透水性におよぼす効果を明らかにした。ポリエチレングリコール(PEG)は,PMAA膜の透水性を増大させることができるのに反し,ポリ(N-ビニルピロリドン)(PVP)やポリ(メチルビニルエーテル)(PMVE)は透永性をいちじるしく減少させた。Hagen-Poiseulle式を用いて,PEGによってPMAA膜の孔半径が2.6nmから最大38nmにも拡大されることが示された。
    PMAA膜の収縮挙動やPEGの誘導体を用いた透水性実験から,メカノケミカル収縮によってPMAA膜の透水性を増大させるには,これらの水溶性高分子がPMAA膜内部へ浸透することが重要な役割を果たしており,このためには単に「コンプレックス生成能」だけでなく膜孔との間になんらかの「構造適合性」をもつことが必要であることが明らかになった。また,これらの膜孔径が変化するメカノケミカル伸縮膜を利用すると,インベルターゼによるショ糖の加水分解速度を制御できること,橋かけゲル中に包括されたラフィノースの徐放速度を制御できることが明らかになった。
  • 相澤 益男, 碇山 義人, 豊島 武博
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 819-822
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    StaPhylococcusaureusカミ産生する菌体膜タンパク質プロテインAがヒトなどの免疫グロブリンG(lgG)と特異的にきわめて安定な複合体を形成することに着目し,IgG認識膜の設計およびその応用を行なった。プロテインAは菌体膜内に安定に存在するので,St.aecreus菌体そのものを高分子膜表面に結合してIgG認識膜を調製した。St.aureus菌体結合膜の特性を検討した結果,この菌体結合膜はプロティンAのIgG認識機能を保持していることが明らかにされた。
    ついでSt.aecreus菌体結合膜,酵i素標識IgGおよびClark式酸素電極を用いてIgGの微量測定を行なえることを明らかにした。標識酵素としてはカタラーゼを用いた。一定量の酵素標識IgG共存下で,IgGをSt.autreus菌体結合膜表面のプロテインAに競合反応させ,結合するカタラーゼ標識IgGの量をカタラーゼのH,02分解による02生成速度から検出する方法によって行なった。その結果,st.aecreus菌体結合膜を用いて1×10-7~1×10-5g/mlの濃度範囲でIgGを測定することが可能であると示された。
  • 宮原 裕二, 森泉 豊栄, 塩川 祥子, 松岡 英明, 軽部 征夫, 鈴木 周一
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 823-830
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ISFET(lonSensitiveFieldEffectTransistor)のゲート絶縁膜表面にセルロース=トリアセタート,グルタルアルデヒド,4-アミノメチル-1,8-オクタンジアミンからなる膜を形成し,その膜表面にウレアーゼを固定化した小型尿素センサーを製作し,溶液中の尿素の定量を試みた。ウレアーゼは尿素を分解する酵素であり,その反応にともなって溶液のpHが変化する。この尿素センサーは尿素濃度に依存したpH変化をISFETで検出するという原理である。測定はウレアーゼを固定化したFET(尿素FET)と固定化していないFET(Ref.FET)との差動出力を測定した。本センサーで得られた検量線から,5×10-5g/mlから1×10-2g/mlの濃度範囲の尿素の定量が可能であることが朗らかになった。応答時間は1分であり尿素一ウレアーゼの反応速度と,それにより生成された水酸化物イオンが有機膜中を拡散する速度で律速されていることが推察された。また本センサーを用いて1日1回1×10-3g/mlの尿素に対する応答を調べた結果,26日経過時点で±3mVの範囲内の再現性で応答が得られた。本センサーの応答速度,寿命はすでに報告された尿素センサーと同程度あるいはそれ以上であり,濃度測定範囲は同程度であった。
  • 長田 義仁, 入山 裕, 太田 克
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 831-835
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プラズマ開始重合法を利用することによってポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ(エチレンテレフタラート)の各疎水性フィルム表面に,アクリル酸,2-ヒドロキシエチル=メタクリラート,アクリルアミドの親水性モノマーが効率的にグラフトされることを見いだした。グラフト率は,プラズマ照射条件,後重合条件を変えることにより乾燥フィルム重量に対して0.5~670%まで自由に調節することができた。2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸(AMPS)や2-ジメチルァミノェチル=メタクリラートは単独ではグラフト重合しなかったが,アクリル酸やアクリルアミドとの共重合によってグラフトされることがわかった。グラフトフィルム表面は水に対する接触角が低下し,ぬれ性が向上した。アクリル酸およびアクリル酸-AMPSをグラフト重合したポリエチレンフィルムはCu2+,Co2+,Cr3+の金属イオンを吸着する能力をもつことを見いだし,フィルム19あたりの各金属イオン吸着量を算出した。また,金属を吸着したフィルムは酸と接触させることによって容易に脱着し,くり返し使用できることが明らかになった。
  • 鷲巣 信太郎, 梶山 千里, 高柳 素夫
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 838-846
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高分子(ポリカーボネート,PC)に液晶(N-(4-エトキシベンジリデン)-4-ブチルアニリン,EBBA)をブレンドした高分子/液晶複合膜を調製し,膜構造と気体透過性との関係を検討した。DSC,X線回折,走査型電子顕微鏡観察の結果は,膜中のEBBA分子が30wt%まではほぼ分子状に分散し,それ以上の分率ではPCからなる三次元網目構造内にEBBAが連続相ドメインとして相互にからみ合った凝集組織を形成することを示唆した。等温収着,吸着一脱着実験から,EBBAを60wt%含む複合膜は気体透過性を評価するさいに,液晶転移温度TKNより高温域では均質膜とみなすことができる。60wt%EBBA複合膜の各種炭化水素ガス透過性はTKNに対応する狭い温度域で数百倍増加するとともに,その気体透過機構がTKNを境として拡散律速から溶解律速へと変化する様相を示す。これはPC薄膜を複合膜にラミネートした膜の気体透過挙動から確認された。PCIEBBA複合膜で得られた知見は一般の高分子/液晶複合膜に適用できる。酸素との親和性が良好な液晶,ブチル=4-(4-エトキシフェノキシカルボニル)フェニル=ルポナート(BEPcPC)を60wt%ブレンドしたPCIBEPCPC複合膜が,液晶転移直後の333Kにおいてすぐれた酸素透過性能(PO2=2.25×10-9cm3(STP)・cm-1・s-1・cmHg-1)と選択分離性能(Po2/PN2=2.81)とを併せもつことが明らかとなった。
  • 州上 満泰, 岩永 秀明, 山下 幸則, 山崎 道晴, 岩本 正和, 鹿川 修一
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 847-853
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリエチレングリコール(PEG)の金属イオン捕捉作用に着目し,その固定化液膜の気体(N2,O2,CO2)透過准に対する金属塩の添加効果について検討した。N2とO2に対する透過性は塩の添加によって減少したが,CO2についてはほとんど変わらないかむしろ若干増大し,結果的にCO2の選択透過性が増大した。このCO2選択透過性の増大はおもにCO2の溶解度の増大に基づくことがわかった。CO2の収着平衡はHenry型とLangmuir型の寄与を含む二重収着型を呈し,Langmuir型収着のパラメーターは対陰イオンの共役酸のPKaとよい相関を示すことを見いだした。これからLangmuir型の収着はPEGの陰イオン活性化作用により活性化された対陰イオンとCO2分子との酸-塩基相互作用に基づくと結論した。アルカリ金属壇とアルカリ土類金属塩とを比較すると後者の方がCO2選択透過性の増大がいちじるしいが, これは陰イオンの活性化の程度の違いによって説明できた。またこのような塩の添加効果は金属陽イオンの大きさにも依存し,PEG-300ではイオン半径が約0.1nmのNa+とCa+ においてもっともいちじるしいことを見いだした。
  • 杉浦 正昭, 山口 智彦
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 854-859
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    多孔質膜中に形成された液体膜において,ヘキサフルオ営リン酸イオンあるいは過塩素酸イオンの流れを駆動力として,アミノ酸の透過速度を測定した。多孔質膜はポリプロピレン製のものを用いた。液体膜の成分は,p-ニトロフェニル=ヘプチル=エーテル,o-ニトロフェニル=フェニル=エーテルなどの水に不溶の有機液体どリン酸トリアルキルエステルの混合液である。リン酸トリアルキルエステルは,アミノ酸の担体として加えたが,その数種類のうち,リン酸トリブチルおよびリン酸トリペンチルのみが,脂溶性の高いアミノ酸,すなわち,フェニルアラニン,ロイシン,イソロイシン,フェニルグリシン,パリンおよびメチオニソの担体として作用した。本研究に用いた膜系では,アルカリ金属イオンや水素イオンが,アミノ酸やヘキサフルオロリン酸イオンあるいは過塩素酸イオンとともに同じ方向に透過した, 膜を透過した陽イオンと陰イオンのモル数は等しい。リン酸トリペンチルを含む液体膜では,膜を横切るロイシンの流束は0.6~2.5mol・dm-3の担体濃度の範囲で,その濃度とともに直線的に増加した。O.3mol・dm-3以下の担体濃度では,ロイシンめ透過はほとんど認められなかった。膜の安定性が上昇すると,ロイシンの流束は減少した。
  • 仲川 勤, 冨士原 行彦
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 860-867
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    L-ロイシン(LL)とL-グルタミン酸γ-ベンジル(BLG)のモル比2:1の共重合体から,α-ヘリックスをおもな構造とする均質膜を製膜した。この共重合体膜は気体透過性の大きいポリ(L-ロイシン)の含有量が多いから,ポリ(L-グルミン酸γ-ベンジル)より高い気体透過性を示したが,水共存下での酸素透過牲は乾燥状態のそれとほとんど同じであり,また角膜と比較して小さかった。膜を3-アミノ-1-プロパノールまたはアルカリ性メタノールに浸漬することで,それぞれBLG残基を3-ヒドロキシプロピルグルタミン(HPG)残基やγ-グルミン酸(GA)残基に改質することができた。得られたcopoly(LL-HPG)騰copoly(LL-GA)膜は高度に親水性であり,含水率はそれぞれ, 230, 690%であった。親水性化されたこれらの膜の酸素透過性は角膜の値に近かった。また,塩化ナトリウム,尿素,塩化カリウム,クレアチニン,尿酸の透過性を液液透析で調べた。これらの溶質の,膜中の拡散係数はバルクな水の中の拡散係数と比較して妥当な値であり,尿酸を除いて水和度に依存することを示した。copoly(LL-HPG)膜中の尿酸の透過係数は他の溶質と比較して小さく,これは膜中の拡散係数が小さいことによるものである。
  • 木下 隆利, 滝沢 章, 辻田 義治
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 868-874
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(グルタミン酸)のヘリックス-ランダムコイル転移やポリシステインの酸化・還元反応が,これらの膜透過性にどの程度影響し得るかについて検討した。ポリ(グルタミン酸)橋かけ膜の炉過係数Lp,ショ糖の透過係数ω,およびKClの透過係数ω正の外部溶液pHに対する依存性は,IR測定などにより明らかにされた膜のヘリックス-コィル転移現象と非常によく対応し,おのおのの値はpHとともに5~10倍の変動を示した。またLpやω1の値を用いて摩擦係数fWM(水-膜),f2m(副イオン-膜)およびf2W(副イオン-水)を求めることによリポリ(グルタミン酸)膜構造の転移にともなう膜相内での水-イオン-膜成分間の相互作用の変化が定量的に示され,膜構造変化と低分子拡散性との関連がさらに明白となった。一方,ポリ(L-システィン)インタポリマー膜を用いた膜を介するKCI水溶液の当量伝導度AKCiは,溶液中の酸化剤濃度の増加とともに減少することが示された。このAKClの減少は,酸化反応にともなう側鎖メルカプト基間橋かけ効果によるものと思われる。
  • 今城 靖雄, 横井 英人, 吉川 正和, 讃井 浩平, 緒方 直哉
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 875-879
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アニオン吸着性を有するピリジン環を含む共重合体として,ビニルピリジンの置換基の位置確よるアニオン選択濃縮性についてCl-Br-二成分系で検討した結果,それぞれ適当な条件下で,ボリ(4-ビニルピリジン)-スチレン膜ではBr-のみが選択的に輸送され,Cl-の輸送は観察されなかった。一方,ポリ(2-ビニルピリジン)-スチレン膜ではCrが選択的に輸送されたが,Br--は輪送されなかった。ポリ(3-ビニルピリジン)-スチレンならびにポリ(2-メチル-5-ビニルピリジン)-スチレン膜ではCl-,B-はともに膜を介して輸送濃縮され距が,アニオンによるいちじるしい選択性は認められなかった。輸送の選択性を発現させる機構として一般につぎの三つが考えられる。(1)膜へのイオンの取り込み,(2)膜中におけるキャリヤー,キャリヤー間のイオンの拡散,(3)膜内から膜外へのイオンの放出。本系では,(1)に示した膜へのイオンの取り込みが主としてその選択性を支配していると考えられる。その観点に立ち,近似式から求めた計算値と実験値とが比較的よく一致した。このことから,ポリ(4-ビニルピリジン)-スチレン,ポリ(2-ビニルピリジン)-スチレン膜におけるCl-とBr-の高い選択性は,膜中へのイオンの取り,込み機構が主として,選択性の発現に関与していると結論した。
  • 福田 和吉, 鈴江 茂, 垣内 弘
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 880-887
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(無水マレイン酸-alt-2-メチル-2-プロペン-1-オール)とポリ(アクリロニトリル)(重量比3:7)のブレンド膜を調製した。この膜を介し,pH差を駆動力として,アルカリ金属イオン(K+-Na+系およびNa+-Li+系)の能動輸送を行なった。輸送挙動への膜厚依存性(20~60μm)および膜を隔てた酸とアルリの初濃度依存性(O.08~0.8mol・dm-3)を検討した。最大輸送率は初濃度が低いほど大きく,K+で88%に達した。輸送速度は初濃度に比例し,膜厚に反比例する傾向を示した。Na+の輸送速度が同条件におけるK+-Na+系とNa+-Li+系で変わることを認めた。輸送選択率は,膜厚および初濃度依存性とも小さく,平均してK+/Na+が1.8,Na+/Li+が1.9であった。走査型電子顕微鏡写真による膜のモルホロジー観察の結果,使用前は非対称な三層構造であり,使用後はアルカリ側が膨潤し,初濃度の高いほどいちじるしいことを認めた。能動輸送機構について考察し,輸送が固定キャリヤー間のH+-金属イオン交換を通して進行すること,開環したラクトン環がイオンの選択的取り込みに関与することを示唆した。
  • 山内 昭, 伊藤 誠人, 甲斐原 梢, 君塚 英夫
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 888-892
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一般に化学反応のない,物理化学的な膜-電解質水溶液系におけるイオン流束は,膜の両側におけるイオンの電気化学ポテンシャル差に比例することが知られている。本研究ではイオン輸送に化学反応が関与するときの濃度勾配に逆らう輸送,"逆輸送"が起こる系に従来と同じ取り扱いができるかどうかを検討した。
    膜は10-2mol・dm-3のオクタデシルアミン塩酸塩の1-オクタノール溶液をミリポア膜に保持したもまのを用いた。この膜はNaCl,NaOH,HClのそれぞれの濃淡系で陰イオンに対して理想的に応答すえる膜電位を与える液膜であることが確かめられた。
    この膜を介してその両側にHCl(相I)およびNaOH(10-1mol・dm-3,一定)+NaCi(相II)電解質水溶液をおいた系を逆輸送系として用いた。OH-,Cl-の経時的濃度変化からイオン流束Ja(α=Cl-,OH)を求め,同時に膜電位の測定を行なった。以上の結果について,定常状態ではJCl+JOH=0の条件が成立しているとし,中和反応はI相側の膜表面で起こり,その反応は非常に速く,したがってその反応は平衡状態になっていると仮定し,以前提出した膜の理論式で実験結果の説明を試みた。その結果,このように化学反応が関与する逆輸送系でも,得られた膜電位,イオン流束に関する挙動を従来の理論式で完全に記述することができた。そしてこの逆輸送系においては,化学反応エネルギーがイオンの電気化学ポテンシャルにすみやかに変換され,その電気化学ポテンシャルの勾配にしたがってイオンの逆輸送が起こっているものとされた。
  • 国武 豊喜, 下村 政嗣, 飯田 和利, 岡畑 恵雄, 加納 航治, 小川 禎一郎
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 893-900
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリエーテルおよびポリアミン配位子をもつ合成二分子膜とイオンの相互作用を検討した。ゲル炉過実験の結果,ポリエーテル配位子をもつ二分子膜は,種々の芳香族スルホン酸ナト'リウムをほぼ100%保持した。蛍光スペクトル測定からポリエーテル鎖とナトリウムイオンの相互作用によると推定した。アゾベンゼン発色団とポリアミン配位子をもつ二分子膜は,長鎖ジアルキルジメチルアンモニウム塩二分子膜と混合することによって吸収極大波長が320nmから355nmに移動する。混合速度は,10-3mol/lの塩酸を添加すると約30倍加速された。10-2mol/lのKClの添加も加速することは,イオン強度も混合に影響をおよぼすことを示す。一方,KCl存在下で銅イオンを加えると4分の1の減速効果がみられた。膜とイオンの相互作用により膜混合の制御が可能となった。ビフェニル構造を含むボリアミン配位子型二分子膜の蛍光強度は,塩酸添加により増大し,銅イオンにより消光した。長鎖ジアルキルジメチルアンモニウム塩との混合二分子膜中での蛍光強度は硫酸ナトリウム添加によりいちじるしく変化した。蛍光強度の変化は,イオンとの相互作用による発色団間相互作用の変化や相分離の誘起によるものと推測された。以上の結果は,合成二分子膜とイオンの相耳作用により,膜混合や相変化の制御が可能であることを示す。
  • 松本 陽子, 上岡 龍一
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 901-909
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二本鎖および一本鎖ヒドロキサム酸触媒による脂肪酸P-ニトロフェニルエステル(Sn;π=2,10,16)の加水分解反応をジドデシルジメチルアンモニウム=プロミド(2C12N2C1)およびヘキサデシルトリメチルアンモニウム=プロミド(CTAB)存在下,pH7.6,25℃で行なった。とくに,2-ヘキシルデカンヒドロキサム酸(HDHA)の2C12N2C1との混お合ベシクル系で,P-ニトロフエニル=デカノアート,(S10)基質において顕著に大きな反応加速(全反応過程での二次速度定数Ka,obadで評価)がみられた。この反応系では二段階反応機構(複合体を形成する結合過程とその後の生成物を与える過程)において,とくに結合定数(Kb)がきわめて大きく,界面活性剤(2C12N2C1)と触媒(HDHA)との=二本鱗間の疎水性相互作用および混合ベシクル(2C12N2C1+HDHA)によるS10基質取り込み効果が大であることを実証した。
    さらに,N-パルミトイル-L-ヒスチジン(PalHis)によるN-アシル-D(L)-フェニルアラニン=P-ニトロフェニルエステル(D-,およびL-Sn=2,10,16)の加水分解反応をジアルキルジメチルアンモニウム=プロミド(2CmN2Ci1=12,14,18)存在下,同一の温和な条件下(pH7.6,25℃)で行なった。液晶状二分子膜系(PalHis+2CmN2C1(m=12,14))では,結晶状二分子膜系(PalHis+2C18N2C1)にくらべ大きな触媒活性およびL-体基質優先の立体選択性(Ka,obadL/Ka,obadD)が得られた。また,結合特異性に関しては二分子膜系(PalHis+2CmN2C1(m=12,18))の場合,L-体基質の方がD-体基質よりすぐれており,ミセル系での結合特異性とは逆であるという興味ある知見が得られた。
  • 大川 久和子, 森田 太, 神田 精一
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 910-916
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N,N′-二置換ジチオオキサミドを純水表面または硫酸銅水溶液表面に単分子膜として展開し,両者の水面での単分子膜としての流動性の差,累積過程の型や安定性の差を,Riesの回転円筒法で検討した。すなわち,単分子膜の表面に少量の石松子粉末を線状に撒布し,円筒の一定回転角ごとに線の動きを容器の底部に設けた座標とともに,写真撮影した。その結果純水面上では,二次元的巨視的な「辷り」の存在を推論させる流紋(ffowpattern)を観察することができた。これは配位子が擬結晶状態にあり,分子間の力はそれほど強くはないが遠距離秩序があるためと考える。硫酸銅水溶液面上では,石松子線はあたかも伸縮性のある1枚の膜の一部分が引っ張られて変型して行くのに随伴しておるかのような様相を呈する。すなわち配位子を配位結合による銅イオンとの結合を介し隣りの配位子と強く結合し,近距離秩序が膜の流動性にとって支配的である。これはバルク相における配位高分子の生成とも符合する。この回転円筒・石松子・写真法は水面における膜の順調な補給(流動)や膜自体の塑性,粘弾性を視認できるので,機能性薄膜の累積技術として一般的方法であると認められる。
  • 新保 外志夫, 杉浦 正昭, 加茂 直樹, 小畠 陽之助
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 917-923
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リボソーム系における光酸化還元反応によって発生する膜電位について検討した。内部に[Fe(CN)6]3-,外部にアスコルビン酸あるいはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むリボソーム系では,フェノサフラニンの存在下で膜を横切る光酸化還元反応が進行するが,反応速度はシアン化カルボニル=m-クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)の添加によって増大した。バリノマィシンもリポソーム内外のK+濃度が等しい条件下では反応を加速させたが,リボソーム外部にK+を含まないときには逆に抑制した。また,脂溶性陽イオンであるテトラフェニルホスホニウムィオン(PPh4+)は光照射にともなってリポソーム内部へとり込まれ,光照射の中止あるいはCCCPの添加によって放出された。これらの結果から,光酸化還元反応にともなって膜電位が発生していることが示唆された。種々の条件下でのPPh4+のとり込みを測定し,とり込み量から求めた膜電位について考察した。
  • 大野 弘幸, 沖 直人, 細田 直祐, 土田 英俊
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 924-928
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化還元基を親水部にもつエチルヘキサデシルビオロゲンをグラファイト表面に配向固定し,被覆電極の電気化学的特性を検討した。電気化学的に不活性なオレイン酸被覆電極では,固液界面の電子移動が抑制される。このため溶存基質の酸化還元には不利で,溶存酸素の還元の半波電位は-450mV(vs.SCE)から負側に180mV移動する。しかしエチルヘキサデシルビオロゲン被覆電極では,正側に90mV移動し,還元触媒作用が明らかにされた。
  • 梅澤 喜夫, 山村 剛士
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 929-932
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    金属錯体薄膜電極の可視光電荷分離過程におよぼす加電圧の効果を調ぺた。それぞれ1×1015個の金属ポルフィリンおよびトリス(2,2′-ビピリジン)ルテニウム(III)金属錯体を白金電極上(表面積O.5cm2)に固定化し,それらの薄膜電極を作製した。試料溶液は電解質のみの水溶液でそれ以外のレドックス系は加えなかった。加電圧Eと光電流ろとの関係Ip=f(E)は指数関数,直線およびその他に分類された。それらの結果はポテンシオスタットにより補償されない大きな薄膜抵抗(~106Ω)とそれの光照射による減少という観点から説朗された。
    また三極式ポテンシオスタティック方式(vs.SCE)と二極式負荷なしでSCEとの短絡方式とで他の実験条件がまったく同じにもかかわらず,光電流の大きさが大きく異なることを見いだした。同じく光電流スペクトルの形から,両者で異なる励起状態を経ることが示唆される現象を見いだした。結果をポテンシオスタットの機能にもどって議論を試みた。
  • 水谷 文雄, 飯島 誠一郎, 佐々木 寛治, 田中 芳雄
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 933-939
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    疎水性基としてオクタデシル基を側鎖にもつジヒドロベンゾチアゾールもしくはジヒドロベンゾセレナゾール環と,ロダニン環とからなる種々のメロシアニン色素の薄膜の可視吸収スペクトル挙動および薄膜被覆電極の光電気化学的挙動を調べ,とくに長波長吸収ピークを呈する色素会合体の形成と光電流量子効率との関係に着目して検討した。
    会合体ピークの出現は,ロダニン環側鎖にカルボキシメチル基を有する色素の蒸着薄膜を中性溶液中に浸漬した場合に認められ,酸解離によるアニオン生成を経て,600および630nm付近に吸収ピークを示すアニオンの四量体および六量体の形成が起こることがわかった。ただし,この会合体の形成Q程度は,色素の化学構造,中性溶液のイオン強度に依存するほか,色素の熱異性化により形成が抑制されるなど,種々の要因により変化した。薄膜被覆電極は光カソードとして作用したが,光電流量子効率は四量体ピークおよび六量体ピークのいずれについても,ピーク強度の増加とともにいち遵るしく増加し,これらの会合体形成が光電変換にあたって有用な因子となることがわかった。
  • 小山 昇, 太田 直樹, 大貫 由紀夫, 佐藤 馨一, 松田 博明
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 940-948
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(キシリルビオロゲン)のイオシ会合体被覆電極は,酸素およびエチレンジアミンテトラアセタト鉄(III)錯体の還元反応に対し電極触媒作用を示した。酸素は被覆膜を容易に透過できろことから, 膜中の触媒活性点すべてが酸素の還元反応に関午した。一方, 鉄錯体の還元触媒反応は被覆膜の溶液界面近傍で起こった。溶存基質と触媒活性点との間の電子移動反応速度定数は,高分子被覆回転電極を使用して得られる電流-電位麟線の詳細な解析から求められた。プロトン付加したボリ(4-ビニルピリジン)被覆膜中に[W(CN)8]-4糧錯体などを静電結合法により固定した電極を作製し,溶存化学種であるFe2+/3+イオンのレドックス反応に対する触媒能をも評価検討した。
  • 小山 昇, 大貫 由紀夫, 大坂 武男, 松田 博明
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 949-954
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    被覆膜電極における電極触媒反応について回転円板電極を使用して得られる電流-電位曲線の一般的な解析式を提出した。電流-電位曲線の関係式は,基質の膜表面への物理的拡散過程,基質の膜中での物理的拡散過程,基質と触媒化学種との間の電子交換反応過程および膜中に固定された触媒化学種間の自己電子交換反応による電子の見かけの拡散過程の四つの過程を考慮して解かれた。ただし,電極/膜界面での電子移動反応(電極反応)ほ可逆的に進行すると仮定されている。この解析式を前報で記述したいくつかの実際の電極触媒反応系に適用するため,触媒反応の律速過程の相違に基づいて膜中での基質と触媒化学種との濃度分布によって類別し,それぞれの反応機構に対する簡略化された解析式を得た。
  • 吉野 隆子, 馬場 宣良
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 955-957
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Electrochromic oxalatotungstate(V) complexes have been chemically deposited onto micro pores of anodic oxide films on aluminum formed in a phosphoric acid solution. The complexes were first adsorbed on the surface of the micropores and then converted into WO3 by following heat-treatment at 300°C. Even after this treatment, some of the complexes may still remain on the oxide. Reversible coloration and bleaching were observed by cathodic and anodic polarization in a sulfuric acid solution.
  • 清水 剛夫, 吉川 正和
    1983 年 1983 巻 6 号 p. 958-960
    発行日: 1983/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    It was made clear that a blended membrane made of poly(3-vinyl-1, 4-butyrolactone-coacrylonitrile)and poly[3-(4-vinylphenoxy)phthalide-co-acrylonitrile] widely covered the selectivities in the K+-Na+-Li+ ternary system by changing both its composition and the fraction of opened lactone. Besides, the selectivities in the K+-Li+ binary system through various membranes were investigated. The selectivities observed by the piezodialysis method were good relative to the Dimroth's solvent polarity value, ET(25°C), obtained by incorporating 1-octadecyl-3, 3-dimethyl-6'-nitrospiro[indoline-2, 2'-[2H] [1]-benzopyran] as an indicator. The tendency of the selectivity observed by piezodialysis method was opposite to that obseved by the active transport system or the electrodialysis method. It was suggested that the ET value is useful for the exploration of a novel membrane material.
  • 1983 年 1983 巻 6 号 p. 961a
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1983 年 1983 巻 6 号 p. 961b
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
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