日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1983 巻, 8 号
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  • 大沢 茂樹, 武田 誠
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1111-1117
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Meisenheimer型錯体を安定に捉える方法として溶媒の選択があり,ニトロ基の数によって,アルコール類,ベンゼン,ジクロロメタンのように異なる溶媒が選ばれる。この溶媒の選択性を利用してo-ニトロアニリンおよびp-ニトロアニリンにKOCH3を加えて錯体(I)および(II)をつくり,これにKOCH3を過剃に加えて錯体(III)および(IV)を生成した。この錯体の構造をUV,VIS,IR,1H-,13C-NMRスペクトルで検討した結果錯体(I)~(V)の構造が明らかとなった。
    これらの反応は溶媒を変えることにより,IRスペクトルから錯体(I)のνc-o-c-Nが(III)に変化したνc-o-c-H吸収帯が得られ,1H-NMRスペクトルから(III)および(IV)の特徴を示す〓結合のHとOCH3プロトンが確認され,13C-NMRスペクトルからも〓結合の炭素が98.38および98.19ppmに共鳴することが確認された。構造に関与する反応機構は溶媒効果を微視的に表現するうえでもっとも必要となるため,溶媒と反応試薬との相互作用および遷移状態の溶媒和を考慮した結果,つぎの反応を明らかにすることができた。またジクロロメタンとKOCH3メタノール溶液との混合溶媒中の(I)%″の浅色効果および深色効果から溶媒効果を確かめた。
  • 堀越 徹, 吉村 俊一, 久保田 昇, 佐藤 栄一
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1118-1123
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    0.20mol・dm-3硫酸溶液中における金の腐食挙動を,塩化物イオン濃度とpHを要因として検討した。金の溶解に要する電子数は,通過電気量と溶解量の測定から,+1.10V(SCE)より卑な電位では1(Au+ として溶解),それより貴な電位では3(Au3+として溶解)であった。金の活性溶解は+0.80Vから+1.05V(SCE)の電位域でみられたが,電位走査法によるアノード分極測定より,活性電位域よりも卑な電位で二つのアノード溶解ピーク(+0.10V,+0.30V)が観察された。塩化物イオンおよびpHのピーク電流におよぼす影響について測定したところ,+0.10Vのピーク電流は塩化物イオン濃度が低いときは塩化物イオン濃度に比例し,pHが高くなると減少する傾向にあった。+0.30Vのピーク電流は壇化物イオン濃度とともに増加するが,pHによる影響はなかった。また,+0.30Vのピーク電流は,かきまぜにより減少した。さらに,活性電位域ではTafelの傾きは0.056V・decade-1,塩化物イオンの反応次数1.90が得られ,pHには依存しなかった。これらの結果は,つぎの反応機構を推定させる。全反応はつぎのようになり,
    Au + 2 Cl- → AuCl2- + e(1)
    各素反応に分解すると,Au + Clsoln- ⇔ AuClads- (2)
    AuClads- ⇔ AuClads + e (3)
    AuClads + Clsoln- ⇔ AuCl2soln- (4)
    のようになる。+0.10Vの溶解ピークは(3)式により,+0.30Vのピークは(4)式により制御される。また,活性溶解反応は(4)式が律速反応と考えられる。
  • 竹本 彰広, 水谷 保男
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1124-1130
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化剤として酸化クロム(VI)を添加した硫酸水溶液中で生成する硫酸黒鉛層間化合物について,硫酸濃度を調節することにより第1ステージから第4ステージまでの各ステージを単独に作成した。このさい70℃での30分程度の加熱処理はステージの秩序性の向上に有効であった。ついで,第1ステージから第4ステージの-190~30℃ におけるc軸長の温度依存性をX線回折により調べた。その結果,転移に基づくと考えられる異常膨張を観察した。異常膨張はすべてのステージに存在しその温度域は-100~-60℃ であり,異常膨張幅は第1ステージではO.097Åであったが,その他のステージでは半減していた。膨張係数は-190~-100℃ ではαc(1st)=48.1(±1.1)×10-6/K,αc(2nd)=37.8(±0.2)×10-6/K,αc(3rd)=30.7(±0.8)×10-6/K,αc(4th)=27.6(±1.4)×10-6/Kとなり,そして-50~30℃ではαc(1st)=64.7(±2.1)×10-6/K,αc(2nd)=72.3(±2.3)×10-6/K,αc(3rd)=55.3(±O.8)×10-6/K,αc(4th)=47.7(±1.4)×10-6/Kであった。
  • 奥脇 昭嗣, 桜井 文隆, 岡部 泰二郎
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1131-1136
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    湿式調製した硫化ニッケル(Nis)と混合硫化物(Ni3S2-NiS-Cu2S)から塩化ニッケル(II)溶液と元素硫黄を得るための基礎研究として亜硫酸-塩酸および塩化鉄(III)-塩酸浸出を検討した。
    硫化ニッケルは90℃ の硫酸ナトリウム-硫酸ニッケル混合溶液に硫化水素を通じ,また混合硫化物は沈殿銅の存在下でそれぞれ調製した。亜硫酸浸出は,亜硫酸初濃度1.2mol・dm-3,塩酸初濃度[HCl]4または6mol・dm-3,[HCl]/2[Ni]モル比1~10の条件下で,また塩化鉄(III)浸出は,[HCl]0.4,2[FeCl3]/[Ni]または2[Fe・Cl3]/([Ni]+[Cu])モル比1~10,90~130℃ の条件下でそれぞれ2時間行なった。硫化ニッケルの亜硫酸浸出ではニッケル浸出率は最高26%であり,種々の界面活性剤の効果はなかった。このとき亜硫酸の不均化のため硫酸イオンの生成率が高かった。塩化鉄(III)浸出ではニッケル浸出率は最高60%に達したが,界面活性剤や摩砕用ガラス球を添加しても変化しなかった。混合硫化物の亜硫酸浸出では,塩酸濃度の増加によりニッケル浸出のみが進み,浸出率は90%以上に達した。これは混合硫化物の塩酸分解のためである。この場合も硫酸イオンの生成率は大きかった。塩化鉄(III)浸出はすみやかに進行し,ニッケル,銅はそれぞれ90および98%浸出された。2[FeCl3]/([Ni]+[Cu])モル比が1より小さいと,ニッケルが選択的に浸出された。硫酸イオンの生成率は低く3%以下であったことから,温和な条件下でこのものから元素硫黄を得ることが可能であることがわかった。
  • 長谷 部清, 蠣碕 悌司, 田中 俊逸, 吉田 仁志
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1137-1142
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    微分パルスポーラログラフ法において,アンチモン(III)は,0.01mol・dm-3シュウ酸溶液中で,アンチモン(0)への還元による極大波を現わす。この極大波を利用して微量のアンチモンを定量するための基礎的諸条件を検討した。1μmol・dm-3アンチモン(III)のピーク電位は-0.23Vvs.SCEにあり,ピーク半値幅はパルス電圧が100mVのとき56mVであった。ピーク波高はpHに依存し,pH2.0~2.5の範囲において一定かつ最大であった。極大波は界面活性剤の共存によりいちじるしく減少し,アンチモン(III)の濃度が0。1μmol・dm-3から1μmol・dm-3の範囲において原点を通る良好な直線関係が得られた。日間のくり返し相対標準偏差は,2.52%(n=25)であり,検出限界は0.01μmol・dm-3(k=2,信頼水準97.2%)であった。確立した諸条件のもとに,市販試薬の硝酸カドミウム四水和物中の微量アンチモンを定量した。
  • 平山 忠一, 松本 和秋, 本里 義明
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1143-1147
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Hydrophilic gel beads were prepared by suspension copolymerization of polyethylene glycol methacrylate with polyethylene glycol dimethacrylate in an aqueous solution containing sodium sulfate and carboxymethylcellulose using isobutyl alcohol as a diluent. Through a column packed with the gels, the exclusion limits were determined by eluting water soluble materials such as polyethylene glycol and the degree of hydrophobic interaction between gel matrix and sample was measured by eluting methanol and 1-butanol. Excluded critical molecular weight increased with increasing the amount of diluent, but the degree of hydrophobic interaction decreased. The degree of hydrophobic interaction and the shrinkage of gel bed in an aqueous solution of sodium sulfate and in buffered solutions with various pHs decreased with increasing pendant poly(oxyethylene) chain length in gel matrix.
  • 西田 晶子, 渡辺 茂樹, 藤崎 静男, 原 宏, 梶返 昭二
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1148-1153
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の9-置換9-(o-トリル)フルオレン誘導体(置換基として9-プロモ〔2〕,9-メトキシ〔3a〕,9-エトキシ〔3b〕,9-メチル〔6a〕,9-エチル〔6b〕,9-ベンジル〔6c〕,9-(o-トリルメチル)〔6d〕9-アセチル〔7a〕,9-ベンゾイル〔7b〕,9-カルボキシ〔8〕,9-メトキシカルボニル〔9〕,9-ヒドロキシメチル〔10〕および9-(o-トリル)〔13〕を導入した)を合成し,これらの化合物の配座平衡について検討した。〔2〕,〔3〕,〔6〕,〔7〕,〔8〕,〔9〕および〔10〕においてsp体,ap体両配座の平衡(sp⇔ap)には,9-位に直接結合した原子または原子団とo-トリル基のメチル基との相互作用が寄与していることが推察された。とくに〔7a〕,〔7b〕および〔9〕では,それらのDNMRスペクトルの線形解析によりC(9)-(o-トリル)単結合のまわりの回転の活性化自由エネルギーはΔGsp→ap12.4~12.7kcal/mo1,ΔGap→sp11.7~12.4kcal/molと求められた。また〔13〕では-ap,+sp(or+ap,-sp)⇔+ap,+ap(or-ap,-ap)の配座平衡が推定され,両配座間の活性化自由エネルギーはそれぞれΔG-ap,+sp(or+ap,-sp)→+ap,+ap(or-ap,-ap)12.3kcal/mol,ΔG+ap,+ap(or-ap,-ap)→-ap,+sp(or+ap,-sp)12.6kcal/molと計算された。
  • 武石 誠, 藤井 庄三, 羽山 茂
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1154-1158
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3-ブテン酸2,4-ジニトロフェニルエステルの加水分解において銀イオンが顕著な反応促進効果を示した。飽和カルボン酸エステルでは銀イオンの効果が認められず,一方,アクリル酸エステルや4-ペンテン酸エステルのときは銀イオンの効果は非常に小さかった。得られた結果から,3-ブテン酸エステルが炭素-炭素二重結合で銀イオンと錯体を形成するさいにエステルカルボニルが活性化されるものと推定した。この系にアリルアルコールを加えると銀イオンの反応促進効果は減少した。これはアリルアルコールが銀イオンと錯体を形成するためで,加水分解速度の変化からその錯形成定数を計算することができた。
  • 高橋 一公, 塩谷 寛, 粟原 光雄, 飯田 弘忠
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1159-1164
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一酸化窒素を用いて芳香族第一級アミンをジァゾ化できることはすでに知られているが,詳細は明らかにされていない。そこで本研究では,使用した一酸化窒素と生成したジアゾニヴム塩間の量的関係を明らかにするのが目的で,種々の条件下でこの反応を行ない,つぎのような知見を得た。(1)第一級アミンとしては5-アミノ-2-ナフタレンスルホン酸〔1〕を用いるのがもっとも好都合であった。〔1〕のエタノール水溶液に空気希釈の一酸化窒素を接触させると〔1〕はジァゾ化されてそのジアゾニウム塩〔2〕になり,これが未反応の〔1〕とアゾカップリングして,5-アミノ-8-(6-スルホ-1-ナフチルアゾ)-2-ナフタレンスルホン酸のニナトリウム塩〔3〕を生じるので,〔3〕を分光学的に定量することにより〔2〕を間接的に定量することができた。(2)一酸化窒素単独では〔1〕をジアゾ化できないが,空気が共存するとジアゾ化反応が進行した。(3)このジアゾ化反応は,反応液に臭化カリウムまたはオルトバナジン酸ナトリウムを添加することにより促進された。(4)反応条件を選べば,一酸化窒素1molあたり1molのアゾ色素〔3〕を生じることが明らかになった。したがって,この反応が一酸化窒素の化学的定量方法として適当であることがわかった。
  • 持田 勲, 大石 泰司, 光来 要三, 藤津 博
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1165-1171
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    溶融炭と石油アスファルトを混合熱処理して安価に製造できるソルボリシス石炭液化油(SCL)から高付加値のニードルコークスを誘導することを目的として,A240,HA240との共炭化,およびリチウムエチレンジアミン系による水素化,あるいはCo-Mo/天然鉱物触媒を用いた接触水素化処理改質を試みた。単独で炭化すれば不均一な光学組織を示すSCLを上述添加剤と共炭化すれば,生成炭化物は均一な光学的異方性組織を示すものの,ニードルコークスに特有の流れ組織は展開しなかった。リチウム-エチレンジアミン系による水素化後炭化しても,異方性組織単位の拡大は認められるが,良好なニードルコークスにいたらなかった。これに対して, Co-Mo 触媒を用いた接触水素化処理を行なうと,炭化物収率は原料油にくらべて急激に減少するものの,良好な流れ組織をもつ炭化物が得られた。さらに溶剤分別を組み合わせることにより,炭化収率の向上も可能であることがわかった。水素化処理油中,炭化物を主として与えると考えられる重質成分の平均構造を解析し,原料SCLのそれと比較することにより,流れ組織展開に要求される構造特徴を明らかにし,構造特徴が流れ組織展開に対して果たす役割を議論した。
  • 多賀谷 英幸, 千葉 耕司, 佐藤 志美雄, 伊藤 和男, 桜井 雅幸
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1172-1180
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石炭液化における反応機構を明らかにするため,溶剤としてテトラリンを用いた太平洋炭の抽出液化反応を行なった。 温度の影響はかなりあったが,THF可溶分であるSRC-TC収率以外にはH2圧,N2圧の差はほとんどなかった。水素移動量に対する転化率BCのプロットは,H2圧,N2圧で同一線上にのるということからもH2分子の化学的な関与はほとんどないと思われる。転化率 BC に対する加圧の負の効果は,圧力が小さいときの軽質化やガス化の増大に関係していると考えられる。ベンゼン可溶分であるSRC-BCの fa は,転化率BCと同じような傾向を示し転化率 BC の増大とともに fa は大きくなった。このことから二つの反応機構が考えられる。一つは,反応温度が高いときには,当初の液化物がさらに反応して fa が高くなるという機構であり,もう一つは,転化率とともに fa の大きな液化物ができてきて,全体として fa が大きくなるという機構である。
  • 多賀谷 英幸, 千葉 耕司, 佐藤 志美雄, 宮下 和也, 佐川 正人
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1181-1188
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    灰分含有量の多い三池炭-1および少ない三池炭-2の抽出液化反応をテトラリンを溶剤として用いて行ない,太平洋炭の結果との比較検討を行なった。なおそのさい,反応条件の効果をより明確にするため重回帰分析法を用いた。
    太平洋炭では,ベンゼン不溶分から算出した転化率BCに対する加圧の効果は,重回帰分析では-1.60P+0.0626P2 で表わされ,5.1MPa以内では負の効果が観測された。しかし,三池炭-1においては水素庄系で1.46Pと加庄の正の効果があり,三池炭-2では水素圧系で-5.22P+1.19P2と加圧の効果は小さかった。この差異は,石炭の構造の違いとともに,含有鉱物質による触媒効果の違いと考えられる。生成ナフタレン量から算出した水素移動量は,同転化率では水素圧系の場合の方が窒素圧系の場合より少なく,液化後の最終圧は水素圧系では圧力の低下が認められ,水素分子が反応に関与していることがわかった。
    得られた溶剤精製炭の構造パラメーターは,三池炭-1,2ともに太平洋炭とはかなり異なった。三池炭-1では,反応温度が高くなって転化率が大きくなっても,溶剤精製炭のσ,n,faの変化はほとんどなかったが,三池炭-2では転化率とともにσ が微増,n が減少し,faの変化はなかった。このことから,三池炭-1では転化率が増しても同じような構造の液化物が生成しているか,あるいは液化物の変化と同時に新しく抽出される液化物の構造が変化しているという機構が考えられ,三池炭-2では,反応温度が高くなって転化率が上昇するとともにσ が大きく,n が小さいものが液化されてくる機構が考えられた。
  • 白岩 正, 谷口 省三, 井川 明彦, 岩藤 賢司, 黒川 秀基
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1189-1195
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-アセチルフェニルアラニソ(AcPhe)と種々のアミンとの塩の中で,ラセミ体の融点が光学活性体のそれよりも低く,光学活性体の溶解度がラセミ体のそれよりも小さいプロピルアミン(PA),イソプロピルアミン(IPA),ブチルアミン(BA),イソブチルアミン(IBA),ジイソプロピルアミン(DIP)およびジシクロヘキシルアミン(DCH)との塩について,それらの塩のラセミ体構造と優先晶出法による光学分割の可能性を検討した。まず,ラセミ体と光学活性体の赤外吸収スペクトルと融解エンタルピー(ΔHf)を比較した。その結果,DIPならびにDCH塩のラセミ体と光学活性体の赤外吸収スペクトルは異なり,ラセミ体のΔHfが光学活性体のそれよりも大きい値を示したことから,これらのラセミ体はラセミ化合物を形成していることがわかった。一方,PA,IPA,BAおよびIBA塩のラセミ体と光学活性体の赤外吸収スペクトルは一致した。また,PAならびにIBA塩のラセミ体と光学活性体のΔHfはほぼ等しい値を示したことから,これらのラセミ体はラセミ固溶体であり,IPAならびにBA塩のラセミ体のΔHfはそれぞれの光学活性体のそれよりも小さくなったことから,これらのラセミ体はラセミ混合物であると推定された。さらに,これらのアミン塩の融点の二成分系状態図を作成して以上の結果を確認した。そこで,IPAならびにBA塩の優先晶出法による光学分割をエタノール中,10℃で行なった。その結果,IPAならびにBA塩ともに高い光学純度のL-AcPheのアミン塩を分割することができた。
  • 亀田 徳幸, 石井 恵美子
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1196-1199
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジヒドリド(1,3-ジフェニルトリアゼニド)ビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)(ジヒドリドロジウム錯体)-四塩化炭素系によるメタクリル酸メチル(MMA)の重合を行なった。いくつかの溶媒を用いて重合を行なった結果,重合活性はつぎの順に減少していくことがわかった。
    ジメチルスルホキシド(DMSO) N,N-ジメチルホルムアミド,ベンゼン
    DMSOを溶媒として用いた場合の見かけの活性化エネルギーは5.4kcal/molであった。得られたポリマーの分子量は重合収率とともに直線的に増加し,その分子量分布も重合収率が増加すると高分子量側に移行した。
  • 辰已 正和, 山本 清香
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1200-1206
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジビニルベンゼンおよびエチレン=ジメタクリラートの橋かけモノマー存在下で,メタクリル酸ブチルが自然重合するとき,ポプコンポリマー(PCP)を生成する。得られたPCPをシード(seed)とするビニルモノマーのポプコン重合を検討した。その結果,PCPのシード活性はPCP調製時の橋かけモノマー濃度に依存した。また,そのシード活性の最大値は,橋かけモノマー低濃度側より,メタクリル酸メチル,メタクリル酸ブチル,アクリロニトリル,スチレン,および酢酸ビニルの順序であった。また,四塩化炭素の存在はポプコン重合を抑制した。これらの結果,およびPCPをシードとするメタクリル酸メチルとスチレンとの共重合の結果から,シードを用いたポプコン重合は,シード内部で起こるリビングラジカル的なグラフト重合と考えることで説明することができた。
  • 坂本 宗仙, 小原 奈津子, 若林 宗宏, 中山 文孝
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1207-1214
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プロピレンオキシドおよび1,2-ブチレンオキシドで処理した絹および羊毛繊維の加水分解物をN(0)-トリフルオロアセチル=ブチルエステル誘導体にしたのち,GC-MS分析にかけ,アルキレンオキシドで化学修飾されたアミノ酸の分析を試みた。その結果,従来の分析法で生成が推定されていた0-(ヒドロキシアルキル)チロシンのほかに,0-(ヒドロキシアルキル)セリン,Nε-(ヒドロキシアルキル)リシンおよびNε,Nε-ビス(ヒドロキシアルキル)リシンを検出した。Nε,Nε-ビス(ヒドロキシアルキル)リシンの場合のみ,その質量スペクトルからアルキル鎖のヒドロキシル基の位置を決定することができた。すなわち,これらはNε,Nε-ビス(2-ヒドロキシアルル)リシンであると結論した。このほか,試料の加水分解時に,相当する0-(ヒドロキシアルキル)チロシンから生成したと考えられる0-クロロアルキルチロシンを見いだした。また,シングルイオンモニタリング法により,羊毛試料中に微量のS-(ヒドロキシアルキル)システインを検出した。
  • 野中 敬正, 児玉 義紀, 庄 寛, 江川 博明
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1215-1220
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カチオン性高分子による染色排水の処理に関する基礎的データを得るために,カチオン性高分子によるメチルオレンジの吸着量を平衡透析法により測定し,吸着性におよぼす高分子の構造,重合度および吸着条件などの影響を検討した。カチオン性高分子としては,ポリ(3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル=メタクリラート)とトリエチルアミンまたはトリエチレンテトラミンとの反応により合成したもの(PC-TEAおよびPC-TTA)およびクロロメチル化ポリスチレンとトリエチルアミンとの反応により合成したもの(PS-TEA)を用いた。PC-TEAのメチルオレンジ吸着では,カチオン性基を40~60mol%含むPC-TEAが最大の吸着能を示した。PC-TEAのメチルオレンジ吸着能は,高分子中のカチオン性基のみならず疎水性基によっても影響を受けることがわかった。PS-TEAはPC-TEAの約30倍の高い吸着能を示した。PC-TEAの吸着能は溶液のpHによってほとんど変化せず,PC-TTAの吸着能はpH7で最大になることが認められた。PS-TEAの吸着能は20℃ で最大であった。PS-TEAは溶解しているメチルオレンジを1:1モル添加量で効率よく捕集できることがわかった。
  • 原 宏, 本多 浩一, 長良 健次, 後藤 敦子
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1221-1225
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    大気エーロゾル中のCl-とNO3-,さらにSO42-,NH4+成分の粒度分布を1979年6月から4年にわたり東京の都市部で観測した。Cl-の粒度分布は夏期に粗大粒子が,冬期に微小粒子がそれぞれ卓越するという季節変動が見いだされ,NO3-でも同様の季節変動が確認された。SO42-とNH4+はほとんど微小粒子のみからなる粒度分布をとり,季節変動は認められなかった。粒度分布の形を定量化するため微小粒子分率,fine fraction(FF)=(微小粒子濃度)/{(粗大粒子濃度)+(微小粒子濃度)},と気温の関係をみたところ,FFは気温に強く依存し10℃ 以下ではCl-,NO3-とも0.7以上の値を,20℃以上では同じく0.3以下の値をそれぞれとることがわかった。さらに気温と微小および粗大粒子のそれぞれの濃度との関係をみると微小粒子濃度は気温に依存することが認められFFの変動と同一の傾向を示した。一方,粗大粒子濃度はこれらにくらべると変動幅も小さく,微小粒子ほど明確な季節による変化は確認されなかった。Cl-とNO3-の粒度分布の季節変動はそれぞれの微小粒子濃度の季節変動によるものであり,またそれらがNH4+ 塩であると仮定するとそれらの物質の蒸気圧の変化により気温依存性が説明できた。
  • 山本 憲子, 中塚 えりか, 白井 恒雄
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1226-1230
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    大気中のアンモニア定量法として,インドフェノール吸光光度法をとりあげ,分析感度および再現性の向上を目的として,最適諸条件を決めた。とくに,発色液の最適pHについて検討を行ない,リン酸緩衝液を用いてpH10.5~11.7に調節することにより,感度および精度ともすぐれたものとなり,大気中アンモニアの測定に適用が可能となった。また,発色温度を通常の室温から40~50℃に上げることにより,発色時間は90分間から30分間となり,分析操作も迅速化された。大気捕集法としてインピンジャー法について検討を加え,大気中濃度レベル(1.0~15.0ppb)においても,インピンジャー2本を用いれば再現性のよい90%以上の捕集効率が得られることが確認された。本法により,横浜市において20箇月間測定をつづけた。アンモニア濃度は夏期には10ppb以上となり,一方,冬期には1~2ppbとほぼ一定した低い値を示した。すなわち,季節によるアンモニア濃度の変動は気温の変化とほぼ同様の動きを示し,このことからもアンモニアはおもに土壌から発生していると思われる。
  • 円満字 公衛, 江藤 昌平
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1231-1235
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The polymerization of methyl methacrylate (MMA) initiated by the system of ribonucleic acid (RNA), copper chlorophyllin (Cu-chln), and water was studied. It was shown that the conversion of the polymerization with RNA, Cu-chln, and water was more than 3 times compared with that of the system using copper al chloride in place of Cu-chin. The mechanism of this polymerization was assumed as follows: first, the Cu-chin forms the complex with RNA in water to build up the hydrophobic region, and a water molecule coordinates to the central copper(II) ion of Cu-chin. Second, a MMA molecule enters into the hydrophobic region. Under these conditions, the proton of the water is transferred to MMA to generate a radical, which starts the polymerization of MMA. The dependences of the pH of the water phase, the amount of RNA and Cu-chin on the conversion were also discussed.
  • 辰已 正和, 山本 清香
    1983 年 1983 巻 8 号 p. 1236-1238
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Studies on the popcorn polymerization of various vinyl monomers were cairied out by using vinyl acetate popcorn polymer (PCP) as a seed material. It was found that the seed activity depends only on the concentration of crosslinking monomer in PCP. The maximum seed activity was observed at different crosslinking levels for each vinyl monomer. As the crosslink density of PCP increased, the popcorn polymers for various vinyl monomers were formed in the following order: methyl methacrylate<acrylonitrile<styrene<vinyl acetate. ESR spectra of the polymers were observed during the popcorn polymerization and the results obtained were briefly discussed.
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