日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1984 巻, 11 号
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
  • 北爪 智哉, 石川 延男
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1725-1730
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フッ素化合物の化学における超音波エネルギーを応用したいくつかの"Grignard型"反応について検討した。その結果,超音波照射下においてin situに生成してくる活性なマンガンおよび銀は容易にF-アルキル金属化合物を生成し,F-アルキル化剤として用いることができ,分子内の目的の位置へ選択的にF-アルキル基を導入できることがわかった。
  • 安藤 喬志, 川手 健彦, 鷲見 信二郎, 市原 潤子, 花房 昭静
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1731-1738
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    臭化ベンジルを反応基質とし,シアン化カリウム,酢酸カリウム,またはチオシアン酸カリウムを求核試薬とする置換反応は,非極性有機溶媒中の固-液不均-系においても,アルミナやシリカゲルのような適当な無機固体を共存させ,さらに超音波を照射すると,実用的な速きで進行する。トルエンを溶媒としシアン化カリウムとアルミナを用いた場合,この不均-系に璋量の水を加えると-層加速され,固-液相間移動触媒を用いる方法をしのぐほどになる。またこの場合,無水条件下でたんにふりまぜると,臭化ベンジルとトルエンの間でFriede1-Crafts型アルキル化反応が起こるのに対し,超音波を照射すると臭化ベンジルとシアン化物イオンの求核置換が起こるという音響化学的反応経路切替えが見いだされた。なお,Friedel-Crafts反応は,シアン化カリウムとアルミナをあらかじめ超音波照射するという前処理や,ニトロベンゼンのような極性化合物あるいは無機の酸素酸のアルカリ金属塩の添加によって,いちじるしく阻害された。これらの実験結果,および超音波照射した過マンガン酸カリウム結晶のX線やSEMによる研究結果から,臭化ベンジルの固-液不均-系求核置換が促進される原因を考察した。
  • 牧野 圭祐, 和田 啓男, 武内 民男, 波多野 博行
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1739-1743
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Aqueous thymine solutions were sonicated in an ultrasonic cleaning bath with argon bubbling and the final degradation products were analyzed by high performance liquid chromatography. By comparison of the obtained data with those from γ-radiolyses of aerated and deaerated thymine solutions, it was found that hydroxyl radicals were produced through the scission of water molecules and this cleavage did not involve the degradation of hydrated electrons, implying the homolytic scission. It was also found that the yield of the hydroxyl radical obtained from 30 min sonication was equivalent to that from radiolytic degradation for the total dose of 800 Gy.
  • 須賀 恭一, 渡辺 昭次, 藤田 力, 土本 勝也, 橋本 浩行
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1744-1746
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    It was found- that lithium naphthalenide can de prepared from metallic lithium and naphthalene in non-etherial solvents such as benzene-N, N, N' N'-tetramethy1-1, 2-ethane diamine (TMEDA) or benzene-N, N, N, N'-tetramethyl-1, 3-diamine (TMDAP) under ultrasound irradiation. Dimerization of isoprene [1] and synthesis of terpene alcohols by direct oxidation of isoprene dimer dianions can be achieved with lithium naphthalenide prepared in such non-etherial solvents.
  • 谷本 能文, 高島 正伸, 伊藤 道也
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1747-1752
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ミセル溶液中のキサントンの水素引き抜き反応の外部磁場効果を定常光法(≦260mT),レーザーせん光法(≦80mT)により研究した。ミセル中のキサントンは光照射により徐々に界面活性剤から水素を引き抜く。この溶液にキサンテンを加えると,キサンテンからの水素引き抜き反応が効率よく起こる。キサントンの消失の相対量子収量,9-キサンテニルラジカル反応中間体の過渡吸収,生成物の収量に顕著な外部磁場効果が観測され,このことはCIDNPのラジカル対モデルにより説明された。
  • 林 久治
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1753-1758
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    燃焼反応において,OH,Na,HPOなどの反慈中間体の発光強度が外部磁場の影響を受けていることが,最近明らかにされているbこの磁場効果の機構を検討する目的で,火炎中のOHのA2Σ+→X2H(0-0)遷移に対応する発光を回転構造まで分解して,各回転線の発光強度に対する磁場効果を測定したdその結果,2Σ状態のFスピン成分からの発光のみが,磁場により強度が増大することがわかった。1,8Tの磁場により,Q(4),QΣ(5)およびQ(6)の遷移の発光強度は,磁場がないときにくらべて,それぞれ35,23および34%増大していた。また1ぐが4より小さくなっても,6より大きくなっても,磁場変化量は減少することがわかった。一方チ,F2スピン成分からの発光強度は,1.8Tの磁場によりほとんど変化しないことがわかった。これらの測定から,OHの磁場効果は2II状態のOHの生成量や2Σ+(v=0)状態の回転温度では説明できず,F成分のK'=5付近の回転準位の生成確率が磁場により促進されるためだと考えられる。さらに,NaやHPOの磁場効果と比較して,OHの磁場効果の類似点と相違点を論じた。
  • 秦 憲典
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1759-1768
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-イソキノリンカルボニトリル[1]をエタノール中で光照射すると置換反応炉起こり,1-(1-ヒドロキシエチル)インキン[2](約62%)生成した。3-kπ,ソキノカルボ,トリル[3]を光照射し駑場合も同様な置換反応が起こり,1(1-ζドロキセエチル)-3-メチルインキノリン[4](収率:約45%)を生成したが,そのほかに脱シアン反応も起こり3-メチルインキノリン[5](収率:約12%)が得られた。
    上記光化学反応の初期過程ないしは反応機構を解明するため,これらの反応に対する外部磁場および重原子消光剤(臭化プロピル)の影響を検討した。光置換反応[1]→[2]を磁場の存在下で行なったところ,生成物[2]の収率は磁場強度の増大とともに二次関数的に増加した(49機構による磁場効果)。一方,臭化プロピルの存在下で光照射すると,生成物[2]の収率はいちじるしく減少した。これらの実験結果から,光置換反応[1]→[2]はS霊状態から一重項の水素結合ラジカル対[2a]を中間体として進行し,T状態から生成する三重項ラジカル対[2b']の成分ラジカルは溶媒かごから散逸することが結論されだ(図式2)。光置換反応[3]→[4]の場合に砥,生成物[4]の収率は40mTの磁場印加によりいちじるしく少吟(HFI機構による磁場効果)磁場強度p増木とと韓二次関数練増加した(49機構kよる効果)。しかし,照脱シアン反[3]-[5]は磁場の贍をまったく受けなかった。また,イプピノめ耗下で光囃すると,説シァレ体[5]の収率は顕著に減少したが,[4]の収率の減少はきわめてわずかであった。これらの実験結果から,,光置換反応[3]→[4]は,SおよびT状態からそれぞれラジカル対中間体[4a]および[4b']を経由して進むこと一方,光脱シアン反応[3]→[5]は,S状態からビラジカル[5a]を中間体として進むことが結論された(図式3)。
  • 淵上 寿雄, 佐藤 隆, 野中 勉, 李 正均
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1769-1773
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    陽極反応によるアミノニトレン発生の証左を得るためにN,N-ジベンジルヒドラジン[1]やNアミノイソインドリン[2]などのN,N-ジベンジル型置換ヒドラジン類の電解酸化を行なうとともに,種々の酸化剤を用いて[1]の化学酸化を行ない結果を比較検討した。[1],[2]両者ともアミノニトレン特有の異常反応が起こり炭化水素が生成したことから,従来未確認であった電解反応によるアミノニトレンの発生が確認された。これらの電解酸化では炭化水素の生成はわずかであり[1]からはベンズアルデヒド=ジベンジルヒドラゾンが,また[2]からはα,α-ビス(2-インインドリニルイミノ)-o-キシレンが主生成物として得られ,酸化剤による化学酸化とは異なる様相を呈した。アミノニトレンの反応挙動はその発生法の違いにより大きく異なることが明らかにされた。
  • 小倉 興太郎
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1774-1781
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    均一金属錯体-電極系触媒を用いて水溶液中でCOおよびNOの転換について研究し,つぎの四つの場合において活性化されることが明らかになった。(1)COおよびNOは一般に水溶液に難溶であるけれども,金属錯体に配位させることにより捕捉量は高まるる転化率は捕捉量の大きなものほど大きいとはかぎらないが,適度の捕捉力をもつ必要がある。(2)反応ガスに活性な化学種で不活性電極を化学的に修飾することにより転化率を高めることができる。NOではフタロシアニナトコバルト(II),フタロシアニン,金属イオンを注入したpVp高分子膜が,COではEveittが有効である。(3)半導体電極を用いて光照射し,電極を励起することにより転換反応を活性化することができる。n-CdSに生じた正孔はかなりの効率でNOをNO3-に酸化する。しかし,高濃度の錯体の存在においては溶液の光フィルター効果のために転化率は逆に低下する。このため,捕捉剤としてはNOを捕捉しても発色しないもの,または照射光とは異なる波長に吸収帯をもつものを選ぶ必要がある。(4)反応ガスが拡散律速で転換される場合に,三相帯(気相/液相/固相)の反応場を形成することによって全反応は活性化される。これは反応ガスが溶液中よりも固相表面を拡散する方が有利であることに基づいている。
  • 庄野 達哉, 松村 功啓, 津幡 健治, 杉原 芳博
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1782-1787
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    β-位置換アミンから得られるカルバメート[1]をメタノール中で陽極酸化するどα-位メトキシ化(aルート)またはα-位炭素-β-位炭素結合切断(bルート)の両反応が起こり,その比はβ-位置換基の種類に大きく依存することを見いだした。さらに環状β-位置換アミノ化合物の陽極酸化反応ではaルートが選択的に起こることから立体因子も反応ルートに大きな影響をおよぼすことを明らかにした。形式的には[1]の窒素原子の孤立電子対が一電子酸化されてカチオンラジカル活性種が中間に生成していると考えられた。aルート生成物はLewis酸の存在下インシアン化フェニルと反応させることによるセリン誘導体め合成きこ応用できた。また,β-ヒドロキシアミン誘導体の陽極酸化ではbルートもが優先して起こることを利用して,光学活性アミノ酸のアミノ基をある程度光学活性を維持した状態でケトンのカルボニル炭素に移動させることができた。
  • 小久見 善八, 大橋 信一, 竹原 善一郎
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1788-1793
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ナフィオン415の両面に無電解めっき法によって白金を結合させたPt-SPEを用い,フランのジメトキシル化を行なった。直接電解法でもジメトキシル化は進行するが,イオン交換膜の劣化が起こるために槽電圧が高くなり,また,電流効率も通常の電解法の場合よりも低くなった。この系に少量の臭素を添加すると,槽電圧は低くなり,電流効率はいちじるしく向上した。これは臭素の添加によって臭素の酸化還元系が形成され,これがメディエーターとして働いてジメトキシル化を円滑に進めるためである。臭素の添加量には最適値が存在し,フラン20%,メタノール80%の系では0.qlmol,dm3で最適となった。直接電解法の場合には適量の水を添加することは電流効率は変えずに槽電圧を下げるという好ましい効果を生じたが,臭素の存在する間接反応の系では水の添加は少量でも電流効率をいちじるしく下げ,一方,槽電圧はあまり変えないという望ましくない効果となる。以上の結果から,SPE法電解をフランのメトキシル化に適用でき,少量の臭素の添加によって高い効率で電解できることが明らかとなった。また,メディエーターシステムにもSPE法電解が適用できることがわかった。
  • 庄野 達哉, 津幡 健治, 中村 善貞
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1794-1800
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,3-ジエン類をメタノール中直接電極酸化すると1,4-ジメトキシ化合物を主生成物として与えることをすでに報告しているが,支持塩としてハロゲン化ナトリウムを用いることにより,位置選択的に1,2-付加した1-ハロー2-メトキシ化合物を与えることを見いだした。また,シクロペンタジエンのような環状ジエンの場合,立体選択的にトランス付加することも朗らかとなった。
    本反応生成物から脱臭化水素することにより2-メトキシ-1,3-ジエン類が得られ,これは加水分解することによりα,β-不飽和ケトンへ変換できた。そこで本反応を利用して,α,β-不飽和アルデヒドおよび飽和のアルデヒドからそれぞれ炭素鎖を炭素1原子および3原子伸長したα,β-不飽和ケトンへの変換を達成することができた。すなわち,Wittig反応によりアルデヒドから炭素鎖を伸長しつつ1,3-ジエンを合成し,これに対して電極酸化を利用したプロモメトキシル化を行ない,さらに脱臭化水素および加水分解を行なうことによりα,β-不飽和ケトンを合成できた。
  • 大貫 由紀夫, 松田 博明, 小山 昇
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1801-1809
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸性水溶液において,N-メチルアニリン,N-エチルアニリン,2,5-ジメトキシアニリンおよび2,6-ジメチルアニリンの電解酸化反応によって白金電極上に生成した電解重合膜は,支持塩のみを含む水溶液中で可逆的酸化還元応答を示し電気化学的に活性であることがわかり,これらの薄膜はIRスペクトル測定の結果から,アミノ基に対してベンゼン環の4-位にアミノ基が結合した1,4-置換型構造の高分子鎖から構成されていると推定した。これに反し,塩基性水溶液から白金電極上に生成したこれらのアニリン誘導体電解重合膜は電気化学的に不活性であり,1,3-置換型構造の高分子鎖からなっていると推定した。電気化学的に活性な電解重合膜の酸化還元応答は,ジアミンージィミン酸化還元対に対応する反応であると考えられる。また,4-置換アニリン誘導体および3,5-置換アニリン誘導体の電解重合薄膜についても電解重合条件の違いによる電気化学的挙動の変化を調べた。
  • 金子 正夫, 山田 瑛, 小山 昇
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1810-1814
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    印加電場および誘起される電子移動反応と,それにともなう活性種の生成を光電気化学的に研究した。
    グラファイト電極に被覆したナフィオン膜にトリス(2,2'-ビピリジン)ルテニウム(III)錯体Ru(bpy)32を吸着させた修飾電極を作製し,メチルビオゲン(MV2+)共存下で可視光照射すると,電極電位に依存してカンードまたはアノード光電流を生じた。カソード光電流によりビオロゲゾカチオラジカル(MV)を生成した。
  • 佐藤 武雄, 古明地 義久, 和田 敬弘
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1815-1820
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    非プロトン性溶媒中における脂肪族軒トロ化合物のアニオンラジカルの生成過程1および後続反応におよぼす置換基効果を検討するために-連のニトロステロイド化合物を合成した。α,β-不飽和ニトロ化合物のモデル化合物である6-ニトロ-5-コレステンは,掃引速度がおそい場合可逆性のよいボルタンモグラムを与え,還元電位は-1.49V(SCE)であった。ホモアリル位である3-位に種々の置換基を導入した結果,還元電位および電子移動過程は置換基の種類および立体化学に大きく依存することが明らかとなった。3-位置換基がエクァトリァル配置(β-配置)である場合は,置換基の脱離能が高いほど,非可逆性のボルタンモグラムを与えた。3-位置換基がアキシアル配置のものについては3-ハロ化合物で調べた。その結果,高速で掃引しても再酸化波の現われないエクアトリアルハロゲン化合物にくらべ,アキシアルハロゲン化合物では掃引速度によっては再酸化波が見られることがわかった。トロクロリド類はいずれも非可逆波を与えた。これらの化合物の陰極還元反応は二量体およびシクロステロイドを生成することがわかった。
  • 椚 章, 武藤 明徳, 平井 竹次
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1821-1825
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    β-ヒドロキシスルポキシド[1](Tol-SOCOC(OH)RiR2)から対慈するアルコールを得ることを目的として,3種類の基質,[1a](RH,R2=Ph),[1b](Ri=Me,R2=(CH2)2Ph),[1c](R)Me,(R2=(CH2)sMe)の無水アセトニトリル中における電解還元脱硫反応を直接および間接電解法によって検討した。これらの基質はかなり難還元物質で,ほぼ同じ電位(E/2=-2.83~-2.87Vvs.Ag/0.1mol.dm→AgNO3)で還元されるが,[1b]と[1c]の電極反応は[1a]のそれとおおいに異なった。すなわち,[1b]と[Zc]からは対応するアルコールが得られ,フェノール添加はそれらの収率を増大させるが,[1a]からのアルコール生成収率はフェノール存在下においても非常に低かった。また,フェノール存在下ではクーロメトリーから求めた反応電子数nは[1a]では4,[1b]と[1c]では3と,基質問の相違がみられた。
    ビレンをメディエーターとした間接電解では,電気化学的に活性化されたピレンアニオンラジカルによる基質の還元速度は基質の種類に依存したが,間接電解によるアルコール生成収率は直接電解の場合より高く,基質問の差は小さかった。
  • 岩崎 爲雄, 堀川 裕志, 尾崎 泰彦, 松本 和男
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1826-1831
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    異常Kolbe型陽極酸化反応を利用したアスパラギン酸誘導体からピリミジン系核酸塩基への新変換法を見いだした。
    アスパラギン酸から容易に誘導されるジヒドロオロト酸をH2O-NaOH系で陽極酸化することによりウラシルを好収率で得た.この方法を1-置換ウラシルの合成にも応用した。オロト酸誘導体の位置異性体である5-メチルー5,6-ジヒドロウラシル-5-カルボン酸を同様に酢酸中で陽極酸化することによりチミンを得た。上記電極反応を応用したピリミジン系核酸塩基の合成をより実用性の高いものにするため,アスパラギンおよびアスパラギン酸β-メチルエステルからのウラシルへの変換反応を検討した。その結果,アスパラギンおよびアスパラギン酸β-メチルエステルからそれぞれNo-エトキシカルボニルアスパラギンおよび1V-カルバモィルアスパラギン酸β-メチルエステルを経由する実質2工程でのウラシルの合成法を確立することができた。さらに,本合成法を現在制がん剤として用いられている5-フルオ戸ウラシルの合成に応用し好結果を得た。
  • 松田 好晴, 西木 富雄, 中川 勝太, 出原 正孝
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1832-1837
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硝酸イオンと酸素存在下でのo-キシレンのアノード酸化を研究した。電解セルとしては,焼結ガラス隔膜を備えた2室型セルを用い,アノードには白金板または黒鉛棒を用いた。電解質溶液はアセトニトリルにAgNO3,Cu(NO3)2,3H,O,Fe(NO3)2,gH2O,Ni(NO,)2,6H,Oその他の硝酸塩を溶解させたものであり,アノード室液にはさらにo-キシレンを溶解した。電解条件としては,アノード電位が通常は2,1または2,3V(対SCE)であり,通電量はo-キシレン1molあたり2Fとした。生成物は,脱酸素した電解液中では2-メチルベンジル=ニトラートが主生成物であり,その収率はAgNO3を用いた場合には32,0%であった。また,アノード室液に酸素を吹き込みながらアノード酸化するときには,主生成物はo-トルアルデヒドであり,その収率は,Fe(NO3)1,9H2Oを用いた場合には41.8%,AgNO3を用いた場合には40.6%であった。
  • 西口 郁三, 内匠 仁, 戸田 實, 平嶋 恒亮
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1838-1841
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究においては,安価で入手がきわめて容易なビス(4-ニトロフェニル)スルフィドの塩化水素を支持電解質に用いた酢酸水液中での電極酸化反応により,工業的に有用性の高いビス(4-ニトロフェニル)スルホンを簡便にかつ高収率で得ることのできる新規合成法を開発した。本方法では,反応後混合物を炉過す為だけで99,9%以上の高純度の生成物スルホンを簡便にかっほぼ定量的な収率で取り出すことができ,しかも炉液はふたたび反応溶媒として10回以上にわたってくり返し用しても,生成物の純度や収率にさほどの影響をおよぼさないという,工業的な見地からみて大きな利点を有している。本電極酸化反応は低電流密度の条件でも,また出発原料がほとんど溶解しない塩酸水溶液中ですら,順調に進行する。さらに興味深いことには,過塩素酸や硫酸などの鉱酸を支持電解質と用いた場合には,対応するスルホキシドだけが単離され,スルホンはほとんど得られなかった。これらの事実から,本反応では,塩化水素の電極酸化により発生する活性な塩素系酸化剤(塩素,次亜塩素酸または-酸化二塩素)による化学酸化によりおそらく進行していると思われる。
  • 西野 英雄, 志田 忠正, 高椋 節夫
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1842-1848
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ノルボルナジエンおよびクアドリシクランのエステル誘導体(それぞれNE,QEと略記する)を用い,パルスラジオリシス法および60Coγ線照射による低温マトリックス法により,NEおよびQEのラジカルアニオンの反応性について検討した。QEは溶媒和電子と1,3×10gdm3,molの速度定数で反応し,いったん生成したQEラジカルアニオンはきわめてすみやかにNEラジカルアニオンに異性化する1(109,s-1)。この異性化は77KMTHFマトリックス中でも進行する。一方,NEの電子捕捉により拡散律速速度で生成するNEラジカルアニオンはQEへは異性化せず,NEとの二分子反応によりダイマーアニオンを与える。その反応速度定数は1.2×107dm3。morl,s-と求められ,ここで生成するダイマーアニオンはC-C結合の生成をともなったσ構造をとっているものと推定された。室温における6。poγ線照射ではG(-NE)は142にも達し,ダイマーアニオンを経由して連鎖的に反応が進行し,高重合体の生成物を与えていることが明らかとなった。
  • 板谷 謹悟, 内田 勇, 外島 忍
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1849-1853
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    混合原子価錯体であるプルシアンブルー(Fe4[FeH(CN)6]3)および,その類似体である鉄ルテニウムシアノ錯体(Fe4[R(CN)6]3),鉄オスミウムシアノ錯体(Fe4O[sπ(CN)6]3)の薄膜修飾電極上での分子状酸素の還元反応を検討した。還元状態にある高スピン鉄イオンは,いずれの場合でも還元反応に対して触媒能を有し,カーボン電極衝上にくらべて0,4V以上の過電圧の減少が認められた。上記3種の類似体において,高スピン鉄イオンの酸素分子への電子授与能は,ほぼ等しい。このことは,単位格子定数および酸化,還元電位が等しいことと完全に対応している。プルシァンブルー類似体の粉末を使用してのペースト電極を検討した。粉末を用いたペースト電極の挙動は,基本的には薄膜電極と一致し,ほぼ同電位に酸化,還元波を与える。さらに,酸素還元能を検討したところ,薄膜修飾電極と同様な触媒活性を確認した。銅鉄シアノ錯体の電子移動反応も,ペースト電極の手法を用いて検討した。
  • 神谷 信行, 寺崎 達
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1854-1861
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    白金(Pt)および白金黒付白金(Pt-Pt)極を用い,ギ酸(IHCOOH),ホノレムアルデヒド(HCHO),メタノール(MeOH)のようなCl燃料のアノード酸化を行なうと反応中間体による電極の自己被毒が起こり電流値の低下が見られたが,Pb2+を添加するとPbのUnderPotentialDeposition(UPD)によって被毒作用がおさえられ,酸化電流に高揚が見られた。とくにHCOOHの場合にいちじるしい高揚が見られたが,HCHO,MeOHでもPb2÷濃度を増すと0.5~0.7VにHCOOHで見られるような酸化波があらわれ,PbによるUPD効果があることがわかった。しかしそれぞれのq化合物の酸化による反応中間体は異なると考えられ,HCOOHではCOHdが,MeOHではCOdが主として生成されると思われる。HCOOHの場合ににPbによる電極の被覆率と電流値高揚とよい相関関係が見られた。
  • 加藤 民彦, 藤嶋 昭, 前川 悦朗, 本多 健一
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1862-1866
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    光励起された多結晶Znq電極を用いホルムアルデヒドのアノード友応は電流二倍効果を示した。中性支持塩水溶液中の反応は酸素を発生せずに亜鉛イオンの光アノード溶出を起こし,二酸化炭素を生成するものであった。ZnO-H+光アノード表面で,ZOの光アノード分解をともなって生じた,OHラジカルによりホルムアルデヒドの酸化が開始され,四電子反応で二酸化炭素まで酸化は進行していた。反応軍とレて,2ZnO-H+2P++HCP→2Zn++CO2+H20+2H+2eを提案した,アルカリ性にした支持塩水溶浪中の反応はZnOの光アノード分解を起こさず,炭酸イオンを生成するものであった。ZnO-OH-光アノード表颪で,ZnOの安定化をたもって生じた,QHラジカルによりホルムアルデヒドの酸化が開始され,やはり四電子反応で二酸化炭素まで酸化は進行していた。全反応式として2ZnO-OH-+2P+HCHO+40H=→2ZnO+CO32+4H20+2e-と,3ZnO→OH+3P++HCHO+pH→3ZnO,+CO32+4H2q+6-の競争反応を提案した。
  • 新井 五郎, 秋庭 和浩, 柳沢 賢二, 安盛 岩雄
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1867-1869
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The behaviors of the electrochemical redox reaction of various substances were investigated with the quinonoid polymer modified electrode (SQE). The voltammograms of hydroquinones and quinones at SQE were similar to those at a glassy carbon electrode (GCE).
    However a few species of hydroquinones having carboxyl or sulfo groups on the ring, such as 2, 5-dihydroxybenzoic acid and hydroquinonesulfonic acids showed different shaped voltammograms at a pH range where these hydroquinones dissociate into anions. The reductions of disulfides and unsaturated acids were obviously retarded with SQE. Furthermore, the oxidation of Fe2+ ion and the reduction of Fe ion could not be achieved with SQE.
  • 北原 清志, 西 久夫
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1870-1872
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Triphenodioxazines [3] were prepared through the anodic oxidation of 2, 5-his(arylamino)- 3, 6-dichloro-1, 4-benzoquinones [2] which in turn were obtained by the reaction of anilines [1] with chloranil. The electrochemical reaction was carried out by passing 8 F/mol of electricity under a constant current in DMF-acetonitrile or DMF containing tetrabutylammonium bromide at 40-50° C.
  • 吉原 賢二, 関根 勉
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1873-1879
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    反跳インプランテーションによる化学反応は新物質の合成に応用できるが,本研究ではその機構に関するいくつかの新事実を見いだした。β-ジケトン錯体混合系をとり上げ,原子炉照射,電子直線加速器照射,サイクロトロン照射により,(n,γ),(γ,n),(d,)反応による5℃反跳原子をインプランテーションした。[Fe(acac)3HFe(dpm)3]に対する5Crのサイクロトロン反跳インプランテーションでは[5℃r(acac)(dpm)3=0~3]の化学種が得られ,反跳置換型の生成物[5℃r(acac)3]と[51Cr(dprn)3]は引き抜き型の生成物よりもずっと多く,反跳置換反応が引き抜き反応よりも重要であることを示した。これはR6sslerのレニウム化合物における結論と逆である。また[Cf(dpm)3]/[5℃(acac)3]の生成比は[Fe(dpm)3]/[Fe(acac)3]1の場合でも1よりもずっと大きく,またユネルギー依存性を示し,ビリヤード球模型では説明されない。また[Cr(acac)3][Fe(dn)3]と[Cr,(dpm)3HFe(acac)3]混合系を用い,51Crによる鉄原子の反跳置換を調べたところ,反跳置換反応にしきいエネルギーが存在することを示す結果を得た。従来この辺の知見はまったく失けており反跳インプランテーションの有用性が明らかになった。
  • 朴 鐘震, 真嶋 哲朗, 高椋 節夫, 桜井 洸
    1984 年 1984 巻 11 号 p. 1880-1886
    発行日: 1984/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化ブチル中における-ジクロブタ[1,2-α:4,3-α,]ジィンデン[1]および関連するシクロブタン化合物のγ線による環開裂反応を検討した。[1]はγ線照射によって効率よく開裂しインデンを90%以上の収率で与えた。インデン生成の限界G値は67であった。G値と[1]の濃度との関係および酸化電位の低い化合物による阻害効果などを含む速度論的研究の結果,反応活性種は安定化された塩化ブチルのカチオンラジカル,たとえば塊化物イオンとイオン対となったような状態と推定された。それが[1]に正電荷の完全な移動をすることなく,部分的正電荷を発現させることによって拡散律速限界に近い速度で[1]の環開裂を接触的に行ない,インデンの中性分子が直接的に生成する。また,ベンゼンおよびトルエンによる増感効果および他のシクロブタン化合物の放射線反応における挙動などを,レドックス光増感反応の結果と対比させ考察した。
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