皮膚疾患のPUVA光化学療法に使用される代表的な感光性物質の一つである8一メトキシプソラレン(8-MOP)の光化学反応における雰囲気の効果,酸素,核酸塩基,芳香族アミノ酸などの消光剤の効果などを検討し,以下のように考察した。
1)8-MOPのPUVA光化学療法の作用スペクトルは,8-MOPの非極性溶液およびDMPC(ジミリストィルレシチン)リボソーム分散系の最長波長の吸収帯にほぼ一致する。
2)8-MOPの蛍光量子収率と発光極大波長は溶媒の極性に大きく依存する。すなわち,極性の低下とともに量子収率は大きく減少し,発光極大はブルーシフトする。この蛍光発光の溶媒依存性はS1(π,π*)に接近して存在するT(n,π*)を仮定することによって説明された。また,8-MOPの蛍光は酸素によって湘光されるが,,生体構成物質の核酸塩基や芳香族アミノ酸などによって消光されず,これらの三重項消光剤は8-MOP一重項と相互作用しないことがわかった。
3)8-MOPのリン光は核酸塩基,芳香族アミノ酸,酸素によって消光され,8-MOPの励起三重項状態がこれらとの光化学反応過程で相互作用することが示唆された。これら消光剤の凍結状態でのリン光消光において,大きな消光効率を示す一方で,リン光寿命はわずかな減少しか示さなかった。この結果は,8-MOPの励起三重項状態とこれらの消光剤との反応が非常に速く起こるとして矛看なく説明された。また消光剤の消光効率囑k
q1を比較し,生体系では三重項励起状態とデオキシリボ核酸(DNA)との皮応が非常に速いという可能性を示唆した。
4)18-MOPの麟流硫酸ドデシルナトリウムミセル水溶液の光化反応検討し,4′,5′-位光二量体の生成が示唆された。なお,8-MOPと核酸塩基ぼ,水溶液のような極性雰囲気では, 錯体を形成することはなく,光付加反応も起こさないと判明した。
5)以上の結果から,8-MOPの光化学療法における反応に関与する励起状態は,一重項励起状態でなく,T(n,π*)状態の関与する三重項励起状態であると推定した。また勿痂oにおける8-MOPの存在雰囲気は水より極性の低い雰囲気である可能性が示唆された。
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