日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1984 巻, 2 号
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  • 原園 としえ, 小島 隆, 福富 博
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 213-218
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水溶液申におけるウラニルィオンと有機化合物との光化学反応はこれまそ数多く研究されており,ウラニルイオンの反応生成物は中間体であるウラン(V)の不均化反応によって生ずるぴ+であることが知られている。これに対して,酸の存在しない有機溶媒中では,ウラン(V)が安定に存在することがいくつか報告されている。本研究では,[UO2(dma)5](ClO4)2(dma=N,N′-ジメチルアセトアミド)を例にとり,DMAとアセトン中で光化学反応の研究を行なった。その結果,DMA中でウラン(V)が安定に存在することが見いだされた。ウラン(V)は760nmに吸収極大を有し,モル吸光係数は,酸による不均化反応を利用して45.4±0.8mol-1dm3・cm-1と決定された。さらに,アセトン中でDMAの濃度を変えてもウラン(V)生成の量子収率が一定であること,また,アセトン-d6中の[UO2(dma)5]2+に-170℃で光照射すると,CH3CON(CH3)CH2・が生成することから,ウラン(V)は分子内反応(K1)でのみ生成することが明らかになった。また,リン光寿命の測定から鳥の下限値が5×106s-1であること,およびウラン(V)生成の量子収率の波長依存性から,光化学反応は,励起ウラニルイオンの三重項状態から起こることが明らかになった。
  • 村山 英樹, 大勝 靖一, 井上 祥平
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 219-226
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エチル(N-メチルテトラフェニルポルフィナト)亜鉛およびエチル(テトラフェニルポルフィナト)アルミニウムを合成し,これらの光化学挙動を検討した。その結果,アルキル基を軸配位子としてσ結合で中心金属上にもったこれらのポルフィリン錯体は,可視光によってポルフィリン環が励起されることにより,直接光励起されない金属一炭素結合が活性化されることが明らかになった。たとえばエチル(N-メチルテトラフェニルポルフィナト)亜鉛はジクロロメタン中で可視光照射によって亜鉛-エチル結合がホモリティヅクに開裂し,生成したエチルラジカル,錯体ラジカルは溶媒から水素原子,塩素原子を引き抜きそれぞれエタン,クロロ(N-メチルテトラフェニルポルフィナト)亜鉛がおもに生成する。ベンゼンを溶媒にすると,ホモリシスは起こりにくくなるが,このときフェノール類などの活性水素化合物が共存すると求核的な軸配位子の交換が起こる。2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシフェノールなど立体障害の大きいフェノール類との軸配位子交換反応は,暗所ではほとんど進行しないが,可視光照射によりいちじるしく促進されて対応するフェノキシル基を中心金属上にもつポルフィリン錯体が生成した。ユチル(テトラフェニルポルフィナト)アルミニウムと2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールとの反応のさいにとくに顕著な光加速効果が観測された。
  • 入江 正浩, 氈受 彰, 林 晃一郎
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 227-232
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    スピロベンゾピランを側鎖に含むポリ(メタクリル酸)は,水溶液中において可視光照射に応答して,高分子鎖の分子形態を可逆的に変化させる。この光応答性高分子を用いて高分子膜を作製し,膜電位の光応答挙動を検討した。可視光を照射すると,塩濃度が低い場合(C<5×10-2mol・dm-3)において膜電位はもとの値よりも減少し,それよりも高い場合には増加することが認められた。光誘起膜電位変化量は,光強度,スピロベソゾピラン含量,水溶液のpH,および膜厚に依存し変化した。これらの実験結果から,低塩濃度側における光照射による膜電位の減少は,スピロベンゾピランの光異性化にともなう負の膜荷電の増加がその原因であり,一方,高塩濃度側における膜電位の増加は,スピロベンゾピランの光異性化にともなう高分子鎖の分子形態変化による輸率の変化がその原因であることが示唆された。
  • 加藤 民彦, 前州 悦朗, 藤嶋 昭, 本多 健一
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 233-238
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫化カドミウム単結晶電極を光アノードとするとき,ギ酸イオン添加によって光電流が2倍にまで増加する電流2倍効果が観瀾された。光電極反応生成物の詳しい分析を行ない,電流2倍効果が起こっているときにはCdSの光溶解が完全におさえられていることがわかった。CO2とH+の生成の電流効率は100%であったことから,
    HCOO-+P+→H+ +CO2+e+
    なる反応が進行しているものと考えられた。ギ酸添加によって光電流の立ち上がり電位もカソード側にシフトした。CdSが安定化されたこと,光電流が2倍にまで増加したこと,光電流がカソード側から流れ始めたことという特長をCdS/HCOOCO-光アノードがもっていることが判明した。白金対極とともに用いて光電池を組み,その特性を調べた。中性の一電解液系のとき,光起電力は約0.8V,短絡光電流は光強度に比例して得られ,対極から水素が発生した。光電池特性を向上させるため,アノード室とカソード室をカチオン交換膜で分離し,アノード室はHCOO-を含む中性とし,白金カソード室は硫酸を添加して酸性にした。光電池特性は向上し,光起電力の値も増加した。この光電池を連続的に運転するときのシステム図を提案した。
  • 森川 陽, 中島 達哉, 西山 伊佐, 大塚 潔
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 239-245
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    多孔質バイコールガラスに担持した酸化ニオブは光照射下でプロピレンのメタセシスに有効な触媒であった。この触媒はエチレンの二量化反応にも有効であり,きわめてよい1-ブテン選択性を与えた。触媒はエチレンの存在下で光照射すると活性化されるが,触媒のみに光照射しても活性化は起こらなかった。水素ガス存在下に光照射するか,高温での水素還元によって触媒は活性化された。いずれの反応についても反応ガスに少量の酸素ガスを混入すると反応は起こらなかった。また,触媒活性化に有効な光の波長域は酸化ニオブ(V)の示す紫外吸収帯に見合っていた。
    以上から,メタセシスは酸化モリブデンによる光メタセシスと同様の機構で起こり,二量化反応はエチレンによる光還元によって生成した4価のニオブが触媒活性点となっていると推論した。エチレンの二量化反応と同時に低重合反応も起こっていることがわかった。この触媒は1-ブテンの異性化反応にも有効であった。
  • 西本 清一, 大谷 文章, 坂本 章, 鍵谷 勤
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 246-252
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸チタン(IV)を加水分解して得た水酸化チタン(IV)スラリーを170℃から1000℃までの各温度で焼成して酸化チタン(W)(TiO2)を得た。これらのTiO2について,アナタースおよびルチル結晶の含有率,結晶子の大きさ,表面積,残存硫酸イオン量,表面ヒドロキシル基量などの特性値を求めた。TiO2に白金黒(Pt)を擦りまぜることにより担持させ,2-プロパノール(i-PrOH)水溶液の光脱水素反応に対する触媒活性を検討した。Ptを担持させないTiO2はほとんど触媒活性を示さないが,Ptを5wt%担持させた場合には,アセトンと等モルのH2が効率よく生成する。蒸留水および6mol・dm-3NaOH中におけるTiO2-Ptの活性は焼成温度とともに増大し,770~800℃ のときに最大となり,この温度以上では急減した。TiO2の光触媒活性はその結晶構造によっていちじるしく影響され,ルチル結晶は活性がきわめて小さいが,アナタースは結晶の成長度とともに大きな活性を示すことが明らかとなった。銀塩を含むかPrOH水溶液申の光触媒反応では,ルチル型TiO2を用いた場合でも,アナタースTiO2と同程度のアセトソ生成と銀の析出が起こった。
  • 米山 宏, 松本 信之, 古沢 俊哉, 田村 英雄
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 253-257
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化チタン(IV)粉末光触媒上でのギ酸の脱炭酸とニクロム酸の光還元測芯について,反応速度の温度依存性を調べた。前者の反応では,室温から約60℃までは反応速度は絶対温度の逆数と直線関係を示したが,それ以上温度を増した場合には,反応速度は飽和傾向を示した。同じような温度依存性が単結晶を光触媒に用いたさいにも認められた。一方,後者の反応では,測定温度範囲内で反応速度は温度によらず一定であった。このような温度依存性の現われる理由を,酸化チタン(IV)単結晶電極上でのそれぞれの光触媒反応を構成している電気化学過程の温度依存性を調べることによって検討した。その結果,ギ酸の脱炭酸反応では,カソード過程とアノード過程ともに約50℃までは温度が増すと反応速度が増すが,60℃以上になると光アノード過程が抑制されることが見いだされ,このような電気化学過程の温度依存性が光触媒反応でも反映されていると考えられた。ニクロム酸の光還元では,アノード過程が温度にほとんど影響を受けず,これが律速となつている可能性の大きいことが明らかになった。
  • 山口 経一, 佐藤 真理
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 258-263
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    10wt%のNaOHで被覆したPt/TiO2粉末触媒による水蒸気の光分解において,触媒の調製法などを改良することにより量子収率をどれほど向上させ得るかを検討した。Pt(1wt%)の担持法として光電着法,NaBH4還元法,HCO2Na還元法,含浸-水素還元法を比較したが, 活性に大きな差はみられなかった。いずれの方法による触媒も湿った状態と乾いた状態での反応をくり返すことによって活性が向上した。触媒活性はもっとも活性化されたときの値で比較した。アナタースはルチルより活性が高く,同じ結晶形でも製造元の違いによっていちじるしく活性が異なった。アナタースの活性を支配する要因は複雑であり,不純物,結最成長度,粒径が関係していると考えられる。一方,ルチルの活性には粒径の影響が大きいと考えられる。最高の量子収率はMCBのアオタースを用いたときに得られ,17%に達した。白金上で起こる逆反応について調べ,その速度が水素圧に比例することを見いだした。逆反応分がないときの真の水分解速度は水素圧が16Torrまで上昇してもほとんど変わらないことがわかった。
  • 高林 直樹, 山瀬 利博
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 264-270
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イソポリタングステン酸イオンを含む強酸性水溶液(pH1~3)にアルコールを加え,イソポリタングステン酸イオンの吸収光である近紫外(365nm)を照射した場合,アルコールはアルデヒドに酸化されWVIはWVに還元された。このとき,光還元されたイソポリタングステン酸イオンの一部は水を還元し水素を発生した。この光酸化還元反応に関与するイソポリタングステン酸イオンとして,溶液の吸収スペクトルの特性吸収(λmax=320nm)からW10O324-であると結論された。水素発生の量子収率(φH2)として常温下で1×10-4が得られた。白金コロイド触媒を加え70℃で光反応を行なうとφH2は0.03に増加することからW10O324-はアルコール→ 水素+アルデヒドの反応に対して有効な光触媒であることが朔らかとなった(ターンオーバー数は100以上)。光反応はアルコール濃度に依存し,反応量子収率はアルコール濃度に最適値があることを示した。たとえばメタノールの場合MeOH/H2O(pH2.5)=1/4(vlv)に量子収率の最大値が得られた。セン光光分解によって得られた結果と合わせても光反応機構が考察された。すなわち,アルコールとW10O324-との光酸化還元反応によって生成される還元種として,一電子還元種W10O324-max=780nm)および二電子還元種H2W10O324-max=630nm)が確認され,後者はHW10O324-(pK2=1.2)の不均化反応によって生成するものと結論された。
  • 李 筏致, 入江 亮太郎, 篠田 純雄, 斉藤 泰和
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 271-276
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    可視光照射下で,シクロヘキサノールからシクロヘキサノンと水素を高選択的に生成するクロロ(テトラフェニルポルフィナト)ロジウム(III)錯体は,均一系光錯体触媒としては熱的安定性が高く,161.1℃ の還流条件下で530時間以上反応を持続させることができた。この光触媒反応は生成ケトンにより速度論的に阻害されるが,そのほかポルフィリン環の水素化という,錯体そのものの化学変化も徐々に進行していることがわかった。
  • 川合 知二, 坂田 忠良, 橋本 和仁, 川合 真紀
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 277-282
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    半導体微粒子光触媒の反応性を決めている要因を明らかにし,可視光で効率よく働く光触媒を設計する目的で,種々の半導体粉末の電子構造と,水と有機物からの水素発生反応活性との関連を調べた。その結果,第一近似として,微粒子の価電子帯,伝導帯と反応分子のレドックスレベルとの相対位置で活性が支配される事が示された。また,光電析法で調製した白金担持TiO2微粒子光触媒の表面構造,電ゆ子構造を電子顕微鏡XPSを用いて調べ,白金が豹の斑点のように100Å程度の大きさでTiO2上に数多く分散していることがわかった。この構造の特徴が酢酸の分解反応でのレドックス機構を促進していること,また,不可逆的に分解する有機物と水からの水素発生に有効であることを示した。さらに,微粒子光触媒の特徴を半導体光電極と比較して議論し,その類似点と相違点を明らかにした。
  • 寺谷 敞介, 高木 弦, 高橋 素子, 野田 久尚, 生尾 光, 田中 一範
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 283-291
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アナタース型酸化チタン(W)TiO2(a)を光触媒として,ベンゼンの酸素酸化によるフェノール合成が試みられているが,その収率はまだきわめて低い。触媒TiO2(a)の改質(遷移金属とその酸化物の担持)と反応液アセトニトリルー水混合溶媒(pH5)への添加物導入(無機酸,金属硫酸塩など)により,収率の向上を計った。収率の比較は反応温度30℃,酸素1atm,500Wのキセノンランプ照射下で行なった。未改質触媒と無添加反応液を用いたときのフェノール生成の初期速度を基準(1)にとると,反応液を硫酸酸性(pH1.5)にし,触媒にパラジウムやルテニウムの酸化物を担持することにより,相対活性は4程度まで増大した。これにさらに4-メチル-2-ペンタノンを加えると,相対活性はさらに増して約5となり,フェノールへの選択率は約40%に達した。副生した有機物はヒドロキノンとビフェニルで,通常は両者を合わせてもフェノールの十数パーセント以下であった。しかし,硫酸酸性下で銅を含む反応系では,ヒドロキノンがフェノールの数パーセントにおよんだ。このような銅の系では,酸化状態を異にする銅の間で,ある種の酸化還元サイクルが成立し,それを通してもフェノール生成が促進される。
  • 會川 義寛, 高橋 章, 鋤柄 光則
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 292-298
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    液体中に分散した酸化チタン(IV)(TiO2)粒子(粒径1μm)の電荷が,光を照射することにより変化することを易動度の測定により確認し,その光触媒反応への効果を検討した。還元処理してn型としたTiO2粒子はベンゼンおよびトルエン中でそれぞれ240e,390e(eは素電荷)の電荷をもっているが,これに光を照射すると粒子の電荷はそれぞれ-450e,-380eへと変化した。白金を担持したn型酸化チタン(Pt/TiO2)粒子は暗状態ではTiO2粒子と同様な電荷をもつが,光照射による電荷の符号の逆転はなからた。これに対しオレイルアルコール処理したTiO2粒子はベンゼンーオリブ油混合液中でよい分散性を示すが,光照射下でも分散液とは反応せず電極とのみ電荷の交換を行なった。液体中に分散した粒子の電位は浮遊しているので,このような光による粒子電荷の負への変化は,粒子の電位の負への変化すなわち粒子上の電子のエネルギーの増加に相当し,光触媒反応に大きな影響を与える。この効果を検討し,かつそのさいの粒子の大きさの効果も述べた。
  • 羽田 宏, 種村 初実, 米沢 義朗
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 299-305
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    キサンテン系色素(ウラニン,ローダミンB)による銀イオンの増感光還元反応の量子収率は,.本溶液中に酸化亜鉛粉末を懸濁させると大きく増加する。この反応において,酸化亜鉛は,励起色素分子から吸着銀イオンへ効率よく電子移動が生じるための媒体となっていると考えられ,この現象は固体表面光化学効果の典型例として興味深い。ウラニンはローダミンBにくらべて増感能力が大きかった。酸化亜鉛電極のフラヅトバン,ド電位は,電解液中にウラニンを添加すると負方向にシフトするが,ロ一ダミンBの添加によっては影響されなかった。アニオン性色素であるウラニンはローダミンBと異なって,酸化亜鉛表面に特異吸着することが可能であり,色素の増感能力の差は,色素のこのような物理化学的性質の違いを反映していると思われる。
  • 西久保 忠臣, 高橋 栄治, 飯沢 孝司, 長谷川 正木
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 306-315
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(クロロメチルスチレン)とp-ニトロフェノキシ酢酸カリウム,4-(p-ニトロフェノキシ)酪酸カリウムなどの増感剤化合物との反応により側鎖に増感剤とクロロメチル基を有する種々の高分子増感剤類を合成した。つぎに,合成した高分子増感剤類とケイ皮酸カリウムとの反応などにより側鎖に増感剤としてp-ニトロフェノキシル(NP)基または4-ニトロ-1-ナフチルオキシル(NN)基と感光性基としてシンナモイルオキシル(CIN)基を有ずる種々の自己増感型感光性樹脂を合成し,各ポリマーのTg,光反応性,相対感度を測定した。
    この結果,ポリスチレン骨格と増感剤または感光性基との間にブチリル基のようなフレキシブルなスペーサーを導入した場合には顕著なTgの低下が認められた。側鎖に増感剤と感光性基を有する自己増感型感光性樹脂は,いずれも対応する側鎖に感光性基のみを有するポリマーと低分子増感剤からなる感光性樹脂と比較して,側鎖の増感剤の分子運動が制限されているために,見かけの光反応性は低下した。また,増感剤として側鎖にNP基を有するポリマーでは,増感剤含有率30mol%付近でもっとも高い光反応性を示し,NN基を有するポリマーでは,15mol%付近でもっとも高い光反応性を示した。側鎖に増感剤を有するポリマーは低分子増感剤を有するポリマーと比較して見かけの光反応性は低かったが,分子間での光二量化反応が優先的に起こるために,対応する感光性基のみを有するポリマーと低分子増感剤からなる系と比較すると,一一般的に高い感度を示すことが明らかになった。
  • 谷 忠昭
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 316-320
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    分光増感の相対量子収率(φr)は,銀塩の分光増感の機構を理解する上でもっとも重要な性質の一つである。本報では電子エネルギー準位が異なる一連の分光増感色素を用いて,臭化銀乳剤におけるφrの温度依存性を調べた。その結果,高い効率の色素は小さい温度係数を示し,大きい温度係数の色素は低い効率を示すことがわかった。高い効率と低い温度係数の分光増感は,最低空準位が高い色素を用いるか強色増感剤を用いて達成された。この結果から,色素会合体中における分子励起子の解離を促進することにより,高い効率と低い温度係数の分光増感が達成されることが示唆された。
  • 中村 洋一, 山本 兆, 小峰 孝, 浅海 慎五, 横田 晃, 中根 久
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 321-328
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    半導体プロセスではデバイスの超高密度化にともなって超微細加工が要求され,解像度の点からポジ型ホトレジストが主流として使用されている。プロセスの自動化と加工精度の向上の目的からドライプロセスへの移行が進み,その場合,ポジ型ホトレジストの軟化点の低いという欠点の改善が要求されている◎ポジ型ホトレジストにDeep UV光,すなわち短波長紫外線露光用のビスアジドを添加すると,UV光の露光では低露光域でポジ型特性を示し,高露光域でネガ型の感光特性を示した。Deep UV光の単独露光ではこのレジストは現像されないが,UV光の全面照射を併用するとネガ型の感光特性を示す。アジドの添加によってUV感度は5/8に低下するが,このレジストをUV露光後現像して得られたパターンにDeepUV光を照射すると,耐熱性は200℃以上まで向上した。添加したビスアジド類の中ではビス(4-アジドフェニル)スルフィドが一番コントラストがよく,これを添加したレジストはポジ・ネガ型特性をはっきり示していた。
  • 小関 健一, 川畑 政巳, 新井 真入, 山岡 亜夫
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 329-337
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    側鎖にカチオン重合可能な感応基を有するポリマーとしてポリ(2,3-エポキシプロピル=メタクリラート)およびポリ(2,3-エピチオプロピル=メタクリラート)を合成した。これに光によりLewis酸を発生する開始剤としてジアゾニウム塩を,またプロトン酸を発生する開始剤として多ハロゲン化合物とアミノ化合物とを組み合わせた系を添加した高分子記録材料につき感光諸特性を調べた。
    分光感度は4-(4-メトキシアニリノ)ベンゼンジアゾニウム=ヘキサフルオロリン酸塩を用いた場合550nmまで感光し,紫外光に対して1mJ/cm2の感度を,アルゴンイオンレーザーの488nm光に対して10mJ/c2の感度を示した。さらにこの材料は相反則にしたがった感光挙動をした。ヨードホルムとMichler'sチオケトンとの混合開始系の場合620nmにまで感光し12mJ/cm2のレーザー感度を示した。これらの系はカチオン重合系であるため酸素による影響を受けず,さらに露光後加熱処理を行なうことにより感度の熱増幅が可能であった。ジアゾニウム塩を開始鶏として2種類のポリマーに対するゲル化の橋かけ効率を求めた結果,エピチオ環の方がエポキシ環に比較して約6倍以上高い反応性を有することが判明した。
  • 安斉 順一, 佐々木 洋, 下川 清美, 上野 昭彦, 長 哲郎
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 338-344
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アゾ基で橋かけされたビス(クラウンエーテル)を包括した可塑化ポリ(塩化ビニル)(PVC)膜のアルカリ金属イオン透過性に対する紫外光および可視光照射の影響について検討した。ビス(クラウンエーテル)のアゾ基は,PVC膜中でも溶液中と同様に可逆的にトランス⇔シス光異性化することがわかった。トランス体を包括した膜は,アルカリ金属イオンに対してK+>Rb+>Na+>Cs+の透過選択性を示した。また,紫外光照射によってK+ の透過速度がいちじるしく加速されたが,他のイオンの透過速度はあまり加速されなかった。この結果は,紫外光照射によリシス体に異性化したビス(クラウンエーテル)が,K+をサンドイッチ形に効果的に捕捉するため,K÷ の膜内濃度が増大することに基づくと考えられる。液-液抽出法により紫外光照射前後のイオン捕捉能力を評価した結果も,このことを支持した。
  • 小松 裕明, 戸川 圭子, 渡辺 清之, 勝 孝, 藤田 勇三郎
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 345-353
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    側鎖長の異なるメソポルフィリン誘導体meso-IX-Cn.およびZn-meso-K-Cnを合成し,それらをDPPCリボソーム膜に埋め込み,内液EDTA(電子供与体)から外液MV2+(電子受容体)への光電子移動効率におよぼす影響を,吸収,蛍光スペクトル,蛍光偏光解消,および温度変化などの測定により調つた。ポルフィリン色素の膜中における存在状態には,モノマー,オリゴマー凝集体,および固体状凝集体の3種の存在が示唆され,モノマーのみが効率よく光電子移動反応に寄与し,色素/脂質濃度比は1/100ぐらいが最適であることがわかった。ポルフィリン色素の可溶化により膜の流動性が変化し,流動性の増加により効率は増加し,C8が最適であった。ポルフィリン色素の膜中での存在位置も大きな影響を与え,親水領域に存在するものほど効率が大であった。バリノマィシンVal添加による膜電位効果は期待するほど現われなかったが,それはmeso-IX=Cn%がプロトン担体となっているためであることがわかった。膜内電子移動機構として,内側励起ポルフィリンからMV2+への酸化的消光によって生成した寿命の長いポルフィリンカチオンへの直接の電子移動(二光子励起型電子交換)を考えると,実験結果がもっともよく説明される。
  • 佐々木 政子, 坂田 俊文, 鋤柄 光則
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 354-360
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    皮膚疾患のPUVA光化学療法に使用される代表的な感光性物質の一つである8一メトキシプソラレン(8-MOP)の光化学反応における雰囲気の効果,酸素,核酸塩基,芳香族アミノ酸などの消光剤の効果などを検討し,以下のように考察した。
    1)8-MOPのPUVA光化学療法の作用スペクトルは,8-MOPの非極性溶液およびDMPC(ジミリストィルレシチン)リボソーム分散系の最長波長の吸収帯にほぼ一致する。
    2)8-MOPの蛍光量子収率と発光極大波長は溶媒の極性に大きく依存する。すなわち,極性の低下とともに量子収率は大きく減少し,発光極大はブルーシフトする。この蛍光発光の溶媒依存性はS1(π,π*)に接近して存在するT(n,π*)を仮定することによって説明された。また,8-MOPの蛍光は酸素によって湘光されるが,,生体構成物質の核酸塩基や芳香族アミノ酸などによって消光されず,これらの三重項消光剤は8-MOP一重項と相互作用しないことがわかった。
    3)8-MOPのリン光は核酸塩基,芳香族アミノ酸,酸素によって消光され,8-MOPの励起三重項状態がこれらとの光化学反応過程で相互作用することが示唆された。これら消光剤の凍結状態でのリン光消光において,大きな消光効率を示す一方で,リン光寿命はわずかな減少しか示さなかった。この結果は,8-MOPの励起三重項状態とこれらの消光剤との反応が非常に速く起こるとして矛看なく説明された。また消光剤の消光効率囑kq1を比較し,生体系では三重項励起状態とデオキシリボ核酸(DNA)との皮応が非常に速いという可能性を示唆した。
    4)18-MOPの麟流硫酸ドデシルナトリウムミセル水溶液の光化反応検討し,4′,5′-位光二量体の生成が示唆された。なお,8-MOPと核酸塩基ぼ,水溶液のような極性雰囲気では, 錯体を形成することはなく,光付加反応も起こさないと判明した。
    5)以上の結果から,8-MOPの光化学療法における反応に関与する励起状態は,一重項励起状態でなく,T(n,π*)状態の関与する三重項励起状態であると推定した。また勿痂oにおける8-MOPの存在雰囲気は水より極性の低い雰囲気である可能性が示唆された。
  • 米沢 義朗, 河合 清, 羽田 宏
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 361-364
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Under UV excitation, a aqueous ZnO suspension showed in the visible region the same green luminescence band as the ZnO single crystals. The luminescence intensity showed the Stern-Volmer like dependence on the AgNO3 concentration in the suspension. The green luminescence practically disappeared at the AgNO3 concentrations higher than 5 ×10-5 mol·dm-3. The mean quantum yield of the photoreduction of Ag+ which proceeded concurrently at the ZnO surface was about 0.1. A simple reaction scheme is proposed to explain the observed variation of the luminescence intensity with the incident light intensity.
  • 入山 啓治, 吉浦 昌彦
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 365-367
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A simple method for the preparation of a pheophytin monolayer-coated optically transparent SnO2 electrode has been developed. The electrode functions as a photocathode (see Fig.1) and the photocurrent spectrum at the electrode is in fair agreement with the visible absorption spectrum of a pheophytin monolayer (see Fig.2).
  • 戸嶋 直樹, 山田 裕, 石山 順也, 平井 英史
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 368-371
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Resin-immobilized colloidal platinum catalysts were prepared by refluxing the anion-exchange resin [2 ]- and chelate resin [3]-hexa chloroplatinate(IV) complexes in ethanol-water. The catalysts were active for visible light-induced hydrogen evolution in an EDTA/[Ru(bpy)3]2+/MV2+ aqueous solution as shown in Table 1. Ternary photocatalyst was prepared by further immobilization of [Ru(bpy)3]2+ and MV2+ on the chelate resin-immobilized platium catalyst with the electrostatic force. Irradiation of the ternary photocatalyst in simple aqueous solution of disodium salt of EDTA resulted in the hydrogen evolution as shown in Table 3. The hydrogen evolution rate depended on the pH of the solution as shown in Fig.2.
  • 羽田 宏, 川崎 三津夫
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 372-374
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The lifetime of the photolytic silver atom in photographic emulsions was measured by the multiflash exposure method which is a kind of intermittent exposure method. The lifetime at 20°C and the apparent activation energy were 2±0.2 s and 0.82±0.05 eV, respectively in a room air environment. In dry air and vacuum environment, however, the lifetime increased to 11±1 sec and 320±30s while the apparent activation energy decreased to 0.47±0.04eV and 0.44±0.04eV, respectively. These results show that the lifetime of the photolytic silver atom is determined by complicated chemical processes rather than a simple primary process such as the thermal ionization of the silver atom.
  • 市村 国宏, 上野 勝彦
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 375-377
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A simple procedure to immobilize chloroplast using water-soluble poly(vinyl alchol) substituted with 1 mol% of 4-styrylpyridinium residue is described. An air-dried film of the photosensitive poly(vinyl alchol) containing chloroplast was reinforced by a polyester gauze and exposed to uv light for a few minutes. The chloroplast entrapped in the insolubilized film showed remarkable stability on storage in the dark. Co-immobilization. of glucose oxidase and catalase was performed to decrease the rate of the inactivation of the chloroplast on illumination.
  • 上野 勝彦, 市村 国宏, 白木 勝, 津田 圭四郎
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 378-380
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The hydrogenase extracted from sulfate-reducing bacteria (Desulfovibrio vulgaris) was immobilized in a photosensitive poly(vinyl alcohol) with 7-styrylpyridinium residue by exposing to UV light for a few minutes. The immobilized hydrogenase was 92%. The efficiency of hydrogen evolution of immobilized hydrogenase, methylviologen and sodium dithionite was observed. The resistivities of the immobilized film against the inactivation of air and the thermal treatment were 35 times stronger and 20°C higher than those before immobilization.
  • 井上 晴夫, 池田 賢治, 飛田 満彦
    1984 年 1984 巻 2 号 p. 381-383
    発行日: 1984/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Photodechlorination of polychlorinated anthraquinones such as 1, 2, 3, 4-tetrachloro-(Cl4AQ), 1, 2, 3-trichloro-(Cl3AQ), 1, 2-dichloro-(1, 2-O2AQ), 2, 3-dichloro-(2, 3-Cl2AQ), 1-chloro-(1-ClAQ), and 2-chloroanthraquinone (2-ClAQ) were investigated. All the a-substituted chlorine atoms in Cl4AQ, Cl3AQ, 1, 2-Cl2AQ, and 1-ClAQ were dechlorinated on irradiation with the light of A =365 nm in ethanol, while 2, 3-Cl2AQ and 2-CAQ having only β-substituted chlorine atoms did not suffer any photodechlorination even on prolonged irradiation of light.
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