日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1984 巻, 3 号
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  • 柴田 瑩, 山下 伸典, 山下 卓哉
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 385-390
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    気/水界面におけるポリ(L-グルタミン酸γ-ドデシル)(PDOLG)と脂質との相互作用を調べた。固体状態でα-ヘリックス構造をとるPDOLGの単分子膜は,凝縮膜型で,側鎖のドデシル基間の疎水性相互作用によって安定化されている。PDOLG単分子膜の表面圧一面積(π-A)曲線には,約16mN/mと約20mN/mの二度にわたって相転移が認められた。この転移圧の温度係数はともに小さく,そして負の値である。このことは,転移の初めと終りの状態の間でのエントロピー増加は少なく,したがって膜の規則性がある程度たもたれていることを示唆している。PDOLGとステアリン酸あるいはコレステロールとの混合膜では,両成分は混合しない。これは,界面においてPDOLG分子は水平に配向し,ステアリン酸,コレステロールは,垂直に配向して,両成分の幾何学的な配向がまったく異なることによるものと推測される。一方,PDOLGとミリスチン酸の混合膜では,両成分は混合可能であった。気/水界面で膨張膜をつくるミリスチン酸は,そのアルキル鎖部分の屈曲性が大きく,したがって両成分の疎水基間の相互作用を容易にするものと思われる。界面でのPDOLGと脂質との混合性は,凝縮膜型の脂質よりも膨張膜型の脂質によって顕著になる。
  • 斉藤 吉則, 新山 浩雄, 越後谷 悦郎
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 391-396
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ヘテロポリ酸触媒上におけるアルコール類からのエーテル生成反応について検討した。流通系反応,昇温脱離実験などの結果から,エーテルの生成は化学吸収され,活性化されたアルコールに第二の触媒バルク内に弱く物理吸収されたアルコールが反応するという,Rideal-Eley類似型の反応により進行することを推定した。また異種アルコールからのエーテル生成の例として,メタノールと2-メチル-2-プロバノール(TBA)からのメチル=tブチル=エーテル(MTBE)の生成について検討した。ヘテロポリ酸系触媒は本反応に高活性を示す。MTBEの空時収量はメタノール分圧に対し特異な型あ依存性を示し,これは触媒中へのメタノール吸収量の分圧依存性によく対応する。以上のことから,MTBE生成は化学吸収され,活性化されたTBAと物理吸収されたメタノールとの反応によるものと結論した。
  • 小早川 紘一, 山辺 武郎, 藤嶋 昭
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 397-401
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    支持電解質溶液(0.1mol/dm3硫酸)に,ニトロベンゼンを加えると,P型ヒ化ガリウム電極の光電流が2倍に増大した。反応生成物は四電子還元体であるフェニルヒドロキシルアミンであった。反応中間体と考えられるニトロソベンゼンを加えたときにも光電流が2倍に増大した。これらの結果から,p型ヒ化ガリウム光電極上で,ニトロベンゼンはまず電流二倍効果によってニトロソベンゼンに還元され,さらに電流二倍効果によってフェニルヒドロキシルアミンに還元されている,と推定した。p-ニトロフェノールと p-ニトロソフェノールの場合にも同じ結果が得られた。
  • 内藤 博之, 新庄 博文, 熨斗 洋文, 成田 栄一
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 402-408
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    回転ミル中に金属鉛の小粒,水および酸素ガスをそれぞれ適当量充填し,これを回転することによって酸化鉛(II)スラリ-を得る反応において,含水型酸化鉛(II)の選択的生成におよぼす各種陰イオンの添加の効果を調べた。またその基礎研究として,水中に静置した金属鉛板の酸素酸化による酸化鉛(II)皮膜の生成挙動も観察した。陰イオン無添加の場合,比較的低温の条件では黄色斜方晶系のマシコット型PbOが,高温の条件ではマシコット型PbOと赤色正方晶系のリサージ型PbOの混合物が生成するが,クエン酸やEDTAイオンのような鉛(II)イオンに対する錯体形成能の大ぎい陰イオンを添加(1×10-4-2.4×10-2mol・dm-3)するこどによリ,低温,高温のいずれの条件においても準安定相である白色正方晶系の含水型酸化鉛(II)(3PbO・H2O)が選択的生成することがわかった。中程度の錯体形成能を有する酢酸イオン添加の場合には,マシコットPbOと一緒に3PbO・H2Oが一部生成したが,塩酸や硝酸イオンのような錯体形成能のより小さい陰イオンを添加した場合には,3PbO・H2Oの生成は認められず,無添加と同様の結果が得られた。
  • 奥脇 昭嗣, 八代 仁, 岡部 泰二郎
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 409-415
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    希薄なニッケルの硫酸塩水溶液から,ニッケルをNi3S2を含む硫化物として濃縮回収することができる。これを塩酸中で酸素加圧浸出し,適切な浸出条件を検討した。363Kの硫酸ニッケル(II)水溶液に,銅粉の存在下,硫化水素を通じ,わずかのNiSを含むNi3S2とCu2Sの混合硫化物を得た。 この硫化物7.38-36.88gを,1mol・dm-3の塩酸500cm3中に加えて酸素加圧浸出し,かきまぜ速度,酸素分圧,温度,塩酸対(ニッケル+銅)モル比の影響を調べた。かきまぜ速度が十分であれば(本実験で1000rpm),つぎの最適条件―343K,Po2,=1.00MPa,[HCl]/2[Ni+Cu]=1.377,浸出時間2時間で,ニヅケル,銅の95%以上が浸出された。かきまぜ速度,酸素分圧が小さいと銅の浸出に誘導期が存在した。これらが十分のとき,ニッケルの浸出速度についてNi3S2の消失後,一次速度式プロットが得られ,これからNi3S2とNiSの浸出に寄与レた割合が計算された。また銅の浸出は二次速度式で表わされた。一方,硫化物中の硫黄分は,元素硫黄と5-30%の硫酸イオンに酸化された。硫酸イオンの割合は酸素分圧が大きいほど,また温度が低いほど増加した。鉄(II)イオンが存在すると,硫酸イオンの副生が抑制された。また,ニッケルと銅に対し塩酸が当量以下しか存在しない場合は,ニッケルが優先的に浸出され,銅は塩基性塩化物として沈殿した。
  • 岡田 繁, 阿刀田 徹三
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 416-421
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    元素状バナジウムとホウ素との反応を溶融アルミニウム融剤中,アルゴンガス雰囲気で行ない,VB,V3B4およびVB2の単結晶を単一相として得るための最適条件を検討した。得られた結晶について組成分析,格子定数および密度の測定を行なった。その結果はつぎのように要約できる。VB単結晶はB/V=0.7,Al/V=28.3-37.7,1500℃,10時間の条件で棒状結晶として得られた。V3B4単結晶はB/V=1.2,A1/V=47.2,1500℃,10時間の条件で薄い板状,厚い台形状,または柱状結晶として得られた。VB2単結晶はB/V=2.2,Al/V=28.3-47.2,1500℃,50時間の条件で六方多面体状結晶として得られた。
  • 渋谷 康彦, 松本 忠也, 新良 宏一郎
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 422-427
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    チオセミカルバジド(Htsc)および4-置換チオセミカルバジド(4-メチル-(Hmtsc),4-エチル-(Hetsc),4-アリル-(Hatsc),および4-フェニル-(Hptsc))とクロム(III)との荷電型錯体[Cr(HL)3]Cl3を単離した。これら錯体のうちで,配位子(HL)がHtscまたはHptscの錯体からのみ,無電荷型錯体[Cr・(L)3]が得られた。得られた錯体の電子スペクトルは,各錯体ともほぼ同じスペクトルを示し,配位子の置換基が異なっても配位子場へめ大きな影響は認められない。ついで,荷電型ならびに無電荷錯体について熱分析を実施した。その結果,荷電型錯体は示差熱曲線に吸熱ピークを示し,配位子が金属から脱離するが,無電荷型錯体の場合には,配位子が金属から脱離することなく分解するため発熱ピークのみを示すものと考えられた。このように,両型錯体の構造に対応して明らかな相違が認められた。
  • 小田 嶋次勝, 坂本 彰宏, 石井 一
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 428-433
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    パラジウム(II)と5-メチルフルフラール=2-ベンゾチアゾリルヒドラゾン(MFBHまたはHR)の錯形成反応を吸光光度法によって調べ,微量パラジウムの抽出吸光光度定量法を確立し,さらにその抽出機構を速度論的に検討した。パラジウム(II)はMFBHと反応して1:2錯体(パラジウム:MFBH)を形成し,ベンゼンに抽出される。錯体は,水相の硫酸濃度0.05-0.4mol・dm-3で定量的に抽出され,425nmに吸収極大を示した。見かけのモル吸光係数は2.9×104dm3・mol-1・cm-1であった。パラジウム濃度4-35μg/10cm3の範囲でBeerの法則が成立し,吸光指数0.001に対する感度は0.0037μg・cm-2であった。定量条件下でのパラジウム(II)錯体は,ふりまぜ速度290strokes/min以上で化学反応律速となり,反応次数はパラジウム(II)濃度およびMFBH濃度に関してそれぞれ+1次,水素イオン濃度に関して0次と-1次であることがわかった。律速段階は水相中でのパラジウム(II)とMFBHの1:1錯体の生成反応であり,その反応経路は三つの競合反応で進行していると推定した。強酸性溶液中での生成反応の速度定数を求めたところ,5.7×102dm3・mol-1・s-・(20℃)カミ得られた。速度定数の温度依存性から活性化パラメーターも計算した。本法を歯科用合金中のパラジウムの定量に応用し,好結果を得た。
  • 金沢 良昭, 中野 貴彦, 田中 英樹
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 434-438
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ビオチンを9-アントリルジアゾメタン(ADAM)と反応させ,それを蛍光検出器を備えた高速液体クロマトグラフで分離定量する方法を検討した。ビオチン-ADAM誘導体の分離条件としては,カラムにODS(4.6mmφ ×250mm)を,溶離液にアセトニトリル+水(65:35)を使用し,その流量を1.1ml/=minに調節した。誘導体の検出には,蛍光検出器の励起波長を254nm,蛍光波長を412nmに設定した。これらの条件により分析されたビオチンは400-3ngの範囲で,ピーク高さとの問に良好な直線関係を示し,定量下限3nmにおける分析変動率は11.4%であった。本法は,河川および海域水中に存在ずる微量のビオチンの分析を可能とするとともに,従来の微生物測定法にくらべて,精度よい分析方法であると考えられる。
  • 林 滋彦, 青山 絹代, 前野 和子, 小辻 奎也
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 439-444
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ゲル と過用ビニルポリマー(トヨパール HW-40)に水酸化ナトリウみ溶液中で二硫化炭素を作用させてキサントゲン酸基をもつ誘導体(X-TYP)を作製した。1×10-5mol・l-1金属塩溶液50mlを0.1gのX-TYPと30分間かきまぜるとき,各金属イオンの捕集がほぼ完全になるpH域は水銀(II)および銅(II)(0.1-10.0),,鉛(II)(3.5-5.7),カドミウム(II)(4.4-5.4),ニッケル(II)(4.4-7.4),亜鉛(II)(5.4-8.5)である。1mol・l-1硝酸ナトリウム溶液での各金属の捕集および1mol・l-1塩化ナトリウム溶液での亜鉛を除いた5金属の捕集はともにほぼ完全である。1×10-1mol・l-1クェン酸ナトリウム溶液では水銀のみほぼ完全に捕集され,EDTAは1×10-5mol・l-1においても6金属の捕集を妨げる。銅とニッケル,亜鉛,カドミウム,鉛の個々とをともに捕集し,2mol・l-1硝酸で4金属,つづいて濃硝酸で銅を溶離して銅と4金属とを分離した。また,同じようにしてpH3の硝酸でニッケル,つづいて濃硝酸で鉛を溶離して2金属を分離した。水銀を除いた5金属の試料溶液5lから5金属を捕集し,濃硝酸で溶離して回収した。
  • 吉村 晴夫, 田中 正一, 藤山 美道, 杉山 豊樹, 永井 敏雄
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 445-451
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    異種イオン性界面活性剤混合物中のアニオン活性剤あるいはカチオン活性剤の定量のため,高速液体クロマトグラフィーによる分析法を検討した。イオン交換体を固定相に用い,移動相に過塩素酸ナトりウムを含むメタノール溶液を用いるイオン交換クロマトグラフィーにより,イオン性界面活性剤といわれる一群の有機イオン性物質の溶出挙動を調べた。その結果,固定相にはマクロポーラス型イオソ交換樹脂であるTSKゲルIEX210SC,220SAもしくは多孔性めシリカゲル粒子の表面にイオシ性官能基をつけたイオン交換体であるNucleosil5SA・5SBを用いることにより,イオン性界面活性剤混合物の分析に適した方法を開発できた。
    本方法によれば,固定相に用いるイオン交換体の種類たより;保持されるイオン種が限定できるので,従来分相滴定法では定量が困難であったアニォン・カチオン両界面活性剤の共存系でも,これらイオン性界面活性剤を迅速に定量することが可能となった。
  • 御園生 堯久, 谷田部 佳見, 長尾 幸徳, 阿部 芳首
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 452-457
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    分散型アゾ染料のポリエステル繊維への染着機構を検討する目的で,染料とポリエステルモデルとの双極子間相互作用をより定量的に考察した。分散型アゾ染料として11種類の4-アミノアゾベンゼンとポリニステルモデルとして安息香酸メチルを選び,アゾ染料の可視吸収スペクトルの測定結果などに変形McRaeの式を適用することにより染料・繊維間の相互作用を検討した。まず,各種溶媒中および安息香酸メチル溶液中でのアゾ染料の吸収極大波数の実験値と計算値との一致から,この系に変形McRaeの式が適用できることを確認した。つぎにこの式に基づき,分散型アゾ染料と安息香酸メチルとの相互作用を評価した結果,これらの双極子間力は,染料のスペクトルの吸収極大波数の‐400~ -1000cm-1の長波長シフトすなわち約1-3kcallmolに相当し,全相互作用の12-19%を占めることが明らかとなった。
  • 宮腰 哲雄, 斎藤鐘 次郎
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 458-462
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    亜硝酸ナトリウムと酢酸を用いる3-ブテン-2-オン〔1a〕の反応で4-ニトロ-2-ブタノン〔2a〕が得られることを見いだした。たとえばテトラヒドロフラン溶媒中,18時間反応させるとβ-ニトロケトン類[2a]が収率82%で得られた。一方,この反応をジメチルスルホキシド,N,N-ジメチルホルムアミドおよびエタノールなどの溶媒中で行なうとβ-ニトロケトン類[2a]のほかに3-ブテン-2-オン[1a]の二量化した trans-3-オクテン-2,7-ジオソ〔3〕が得られた。さらにテトラヒドロフラン溶媒中,亜硝酸ナトリウムと酢酸を用いてオレフィン部に置換基のない各種α,β-不飽和ケトン類[1]との反応からβ-ニトロケトン類[2]が収率よく得られた。このβ-ニトロケトン類[2]を合成する反応条件ならびに反応機構ついて研究を行なった。
  • 田中 光秋, 宇野 泰三
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 463-466
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イオン性アミノ化合物として5種のグリシン誘導体を用い,それらの水溶液およびジメチルスルホキシド溶液で化学構造と導電性との関係について調べた。導電率(σ)はイオンの移動度の大きなものが,また,導電の活性化エネルギー(E)の小さなものほど高かった。Eとlogσ とは化合物の種類,構造には無関係に同一直線上にプロットされ,導電率を支配する共通の因子としてイオンの移動度を挙げることができる。
  • 白石 誠, 堀尾 俊一郎, 豊島 賢太郎
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 467-472
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酢酸ビニル(VAc)の重合条件や方法によって,ポリ(ビニルアルコール)(PVA)の物性が変化するが,その間の関係についてはこれまで詳しく研究され,末端基,異種結合および立体構造など分子構造が影響していることが明らかにされている。しかし著者らはVAcの溶液重合で重合槽内の混合の強弱によって,PVAの物性が変化するという事実を見いだした。これまで重合時の混合によって,分子量分布や重合度が影響をうけるということは知られているが,物性とくに結晶性が変化するということは,PVAをつくる立場からも大変重要な知見と思われる。そこで結晶性と関係のあると考えられている諸物性をできるだけ多く測定し,重合槽の混合との関係を調べたところ,PVAの結晶性に関してはパッチ重合>連続重合(混合小)>連続重合(混合大)の順序であった。この場合混合による分子量分布,重合度の変化は少なかった。またポリ(酢酸ビニル)のアルカリケン化で,重合度の低下を示す値はポリマーの分岐の目やすとされているが,これも混合の強弱によって変化し上記の順序とまったく逆に多くなった。したがって溶液重合の混合にまるPVAの結晶性の変化は,混合によって分岐が増加することが原因の一つであると考えられる。
  • 新井 義夫, 松田 弘喜
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 473-478
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々のCN/Co比のシアノコバルト(II)錯体が界面活性剤を含む水溶液中,水素または窒素の雰囲気下でメタクリル酸メチル(MMA)の重合開始作用をもつことはすでに知られている。しかしながら界面活性剤の濃度が大きいときは,CN/Co比が2の錯体による重合速度が他のいずれのCN/Co比の錯体によるよりも速いことを見いだした。2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジルの添加により重合が阻止されるので,MMA重合はラジカル機構で進み,CN/Co比が2の錯体からの電子供与によって重合が開始すると推定した。界面活性剤は非イオン性ではTween系(Tween85は除く),Bril系,TritonX405,アニオシ性では硫酸ドデシルナトリウム,ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが重合に有効であった。
  • 平田 光男, 藤井 利枝
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 479-485
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    界面重縮合法で合成したナイロン66繊維にメタクリル酸(MAA),メタクリル酸メチル(MMA)および2-(ジメチルアミノ)エチル=メタクリラート(DMA)をグラフト共重合させ,各単量体による表面改質効果を酸性染料オレンジII との結合過程から検討した。グラフト繊維の等電点は,グラフト率の増加とともに未処理の場合よりもMAAでは低くなり,DMAでは高くなったが,MMAではわずかに減少した。また,グラフト共重合による比表面積の増加は,DMA->MMA->MAA-グラフト繊維(>未処理繊維)となる傾向を示した。オレンジIIによる各繊維の吸着実験では,吸着量はDMA->(未処理繊維)>MMA->MAA-グラフト繊維の順であった。吸着等温線はLangmuir型であり,これをKlotzプロットして求まる標準自由エネルギー変化(ΔF0)と平衡吸着量(n)のグラフト率および温度依存性を,それらの等電点と比表面積の変化から考察した。また,DMA-とMAA-グラフト繊維では, nと-ΔF0値が50℃近辺で最大値をとるものがあり,これには疎水的相互作用が関与してることが推測された。
  • 笠岡 成光, 笹岡 英司, 難波 寛行
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 486-494
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/11/21
    ジャーナル フリー
    燃焼排煙ガスのダスト中にアルカリ金属塩類が含まれているような場合,これらがNH3による脱硝で触媒(V2O5/TiO2)に付着して劣化をもたらす。そこで,この劣化原因の解明と劣化した触媒の再生賦活法の開発を目的として基礎研究を行なった。実験は, SOx 非共存系と SOx 共存系での入ロガス組成500ppm NO-(SO2)-500 ppm NH3(一部,667 ppm NH3)-5%O2-10%H2O-N2,SV=6×104h-1(1.0mm 径の触媒 1ml充填,全ガス流量 1000 Ncm3/min),反応温度はおもに350℃ で行ない,つぎのような結果・知見を得た。
    1)アルカリ金属塩が触媒に付着するときの温度が高いほど脱硝活性の劣化度が大きい。またアルカリ金属塩の種類によって触媒の劣化度は異なり, SOx 非共存下の脱硝では,劣化度の見かけの序列はつぎのようになる。
    KCl≧;K2CO3>NaCl>Na2CO3≧KNO3≧K2SO4>NaNO3>Na2SO4
    なお,SOx共存下の脱確では,劣化度はSOx非共存系の場合とくらべてかなり小さくなる。これはSOx が硫酸塩以外の塩類を硫酸塩化し,終局的には同類の塩に変質し,アルカリ金属塩種間の差異を小さくするためである。
    2)劣化の原因は,アルカリ金属塩の付着によって活性点が被覆されたり,細孔内拡散が抑剃されるといった物理的因子よりも,アルカリ金属塩とV2O5 の反応による複合酸化物生成などの固相化学反応による活性点の変質劣化といった化学的因子による影響が大きい。
    3) SOx 共存系の実際に近い系では,劣化した触媒はアルカリ金属塩種にあまり関係なく水による溶解抽出操作(30℃)でほぼ再生され,実用の可能性が高い。SOx 非共存系では,K2SO4,Na2SO4,NaNO3の付着により劣化した触媒は,上記,水による処理で再生されるが,他のアルカリ塩では水処理による再生はむずかしい。しかし, SOx 系による処理後,水処理を行なえば再生は可能になる。
  • 栗山 光央, 鶴田 加一, 上田 平純, 柿井 一男, 白樫 高史
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 495-500
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硝酸水銀(II)および硝酸水銀(I)を用いて活性炭への水銀イオンの吸着におよぼすpHの影響を検討し,同時に吸着平衡後の溶液中に存在する水銀イオンの酸化状態を調べた。この結果,pH5以下では吸着量に対し1価および2緬水銀による差はみられず,2価水銀を用いた場合でも,平衡溶液中には還元された水銀が1価水銀を用いた場合と同程度残存していた。さらに,水銀(II)イオンを含む溶液に活性炭を添加し,通気することによって気化する水銀量を測定した結果,気化反応は幅広いpH領域(0.1mol/lHClO4-pH10)で起こり,もっとも吸着量の大きいpH6付近で最大の気化量を示した。これらのことから,本実験で用いた活性炭は2価の水銀を還元しうることが明らかになった。また,酸性領域における吸着量の変化は1価水銀イオンの不均化反応に対する安定性に対応しているところから,活性炭へのおもな吸着種は金属水銀であり,pH3以下では水銀(I)イオンとして溶液内に残存し,pH6以上では活性炭による水銀(II)イオンの還元能力が低下するため吸着量も減少すると推定した。
  • 青木 豊明, 豊田 善弘, 宗森 信
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 501-504
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    密閉系において,pH8以上で水中の溶存酸素(DO)は鉄(II)によって約2分間で化学量論的に還元され,大気中での流れ系においても,消費されたDOと添加した鉄(II)濃度との問に,鉄(II)5-80ppmの範囲で定量的関係が認められた。この関係を利用し,DO計を検出端として鉄(II)の注入を自動制御ずることにより,流入濃度の変動するクロム(VI),マンガン(VII)などの有害金属を含む廃水を連続処理し,良好な結果が得られた。
  • 山下 宏一, 大久保 捷敏
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 505-507
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The effect of cationic and nonionic surfactants on the rate of the [Co(CN)5]3--catalyzed hydrogenation of styrene was investigated in the micellar and phase transfer reaction systems. Poly(oxyethylene)(23) dodecyl ether (Brij 35) was found to be useful for the promotion of the hydrogenation in the micellar reaction system. However the use of dociecyldimethyl(α-methylbenzyl)ammonium bromide (SUR 12) as a phase transfer agent resulted in more efficient acceleration of the reaction rate in comparison with the case of Brij 35. The effect of reaction conditions, such as molar ratio of [SUR 12]/[Co2+], on the hydrogenation rate was also discussed for the phase transfer reaction systems.
  • 中村 勇兒, 中井 泉, 長島 弘三
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 508-510
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Ti2XS3 (X=Si, Ge) were prepared from the stoichiometric mixture of TiS, X and S by reacting at 700-800°C for several hours and subsequent annealing at 430-460°C for several days in the evacuated silica tube. They are isomorphous, and belong to the triclinic system with space group of PI. The lattice parameters of the new compound, Ti2iS3, determined from X-ray powder data are a=6.691(2) Å, b=6.711(2) Å, c=8.367(2) Å α=90.69(2)°, β=111.62(2)°, γ=112.42(2)°, and Z=2. The X-ray powder diffraction data of Ti2SiS3are listed together with data of the synthetic Tl2GeS3. Assignment of infrared absorption bands was made for Ti2SiS3 and Ti2GeS3. Photoacoustic spectra of the two compounds are also reported.
  • 山崎 仲道, 叶原 悟司, 柳沢 和道, 松岡 清
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 511-515
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The effects of Ca2+ ion on decomposition and alteration of Lepidolite under alkaline hydrothermal conditions were investigated. The Ca2+ ion in NaOH-Ca(OH)2 solution reacted with silicate ion to form almost insoluble calcium silicate hydrate residue. The extraction ratio of silicate ion could be reduced below 3%, while retaining that of Li+ ion more than 90% when the molar fraction of Ca(OH)2 was adjusted at 0.2 in the Na0H-Ca(OH)2 solution. Tobermorite was formed at 150-300°C and above O.4 molar fraction of Ca(OH)2, and cancrinite and natrodavyne low temperature form at 200-350°C and below 0.4 molar fraction of Ca(OH)2. Calcium content in the resulted calcium silicate hydrate residue increased with increasing of Ca(OH)2 in the solution.
  • 小田嶋 次勝, 茂木 久雄, 石井 一
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 516-518
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The kinetics of the complexation reaction of quadrivalent metals [Th(IV), U(IV) and Zr(IV)]with Arsenazo III have been studied in strongly acidic media by using a stopped-flow specrophotometric method. In the complexation with thorium(IV), the rate-determining step is the following reaction; In the complexation with uranium(IV), it was assumed that the reaction proceeds through the following four competitive reactions: The complexation reaction path of zirconium(IV) with Arsenazo III could not be clarified due to the complication of the reaction mechanism.
  • 高野 二郎, 北原 滝男, 白井 孝三
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 519-521
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    When a mixture of acridine and pyrrole in the molar ratio of 1: 2 was heated at 160°C, 9-(2-pyrrolyl)acridine [1a] and 2, 5-di(9-acridinyl)pyrrole [1b] were obtained in 33.0% and 30.0% yields, respectively. Other aromatic amines such as 2, 5-dimethylpyrrole, indole, imidazole, 2-methylimidazole and 3-methyl-1-phenyl-5-pyrazolone were also found to react with acridine to give [2], [3], [4], [5] and [6], respectively (Scheme 2). The reaction is considered to be a nucleophilic reaction of the anion of the aromatic amines to acridine (Scheme 1).
  • 西 久夫, 古川 忠宏, 北原 清志
    1984 年 1984 巻 3 号 p. 522-524
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A new class of 17H-bis[1, 4]benzothiazino[2, 3-a: 3, 2-c]phenothiazine [5] has been prepared by a novel synthetic procedure and their several properties were determined. The preparative method consisted of two steps. (a) The condensation of chloranil [2] with a zinc salt of 2-aminobenzenethiol [1] D in a molar ratio of 2: 1 in ethanol gave 1, 2, 4-trichloro-3Hphenothiazin3-one [3]J in a high yield. (b) The reaction of [3] with [1] in DMF at 150°C for 8 h afforded five derivatives of [5] in 25-68% yields. Compound [5a] was also obtained by the reaction of 6, 13-dichlorotriphenodithiazine [4a] with [1a] under conditions similar to (b). The structures of [5] were established on the basis of the elemental analyses, infrared spectra, and mass spectral data. The streak colors of the five compounds ranged from violet to green and their melting points were in the range 222-380°C (by DTA). Compounds [5] were found to have good light fastness as an organic pigment.
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