燃焼排煙ガスのダスト中にアルカリ金属塩類が含まれているような場合,これらがNH
3による脱硝で触媒(V
2O
5/TiO
2)に付着して劣化をもたらす。そこで,この劣化原因の解明と劣化した触媒の再生賦活法の開発を目的として基礎研究を行なった。実験は, SOx 非共存系と SOx 共存系での入ロガス組成500ppm NO-(SO
2)-500 ppm NH
3(一部,667 ppm NH
3)-5%O
2-10%H
2O-N
2,SV=6×10
4h
-1(1.0mm 径の触媒 1ml充填,全ガス流量 1000 Ncm
3/min),反応温度はおもに350℃ で行ない,つぎのような結果・知見を得た。
1)アルカリ金属塩が触媒に付着するときの温度が高いほど脱硝活性の劣化度が大きい。またアルカリ金属塩の種類によって触媒の劣化度は異なり, SOx 非共存下の脱硝では,劣化度の見かけの序列はつぎのようになる。
KCl≧;K
2CO
3>NaCl>Na
2CO
3≧KNO
3≧K
2SO
4>NaNO
3>Na
2SO
4なお,SOx共存下の脱確では,劣化度はSOx非共存系の場合とくらべてかなり小さくなる。これはSOx が硫酸塩以外の塩類を硫酸塩化し,終局的には同類の塩に変質し,アルカリ金属塩種間の差異を小さくするためである。
2)劣化の原因は,アルカリ金属塩の付着によって活性点が被覆されたり,細孔内拡散が抑剃されるといった物理的因子よりも,アルカリ金属塩とV
2O
5 の反応による複合酸化物生成などの固相化学反応による活性点の変質劣化といった化学的因子による影響が大きい。
3) SOx 共存系の実際に近い系では,劣化した触媒はアルカリ金属塩種にあまり関係なく水による溶解抽出操作(30℃)でほぼ再生され,実用の可能性が高い。SOx 非共存系では,K
2SO
4,Na
2SO
4,NaNO
3の付着により劣化した触媒は,上記,水による処理で再生されるが,他のアルカリ塩では水処理による再生はむずかしい。しかし, SOx 系による処理後,水処理を行なえば再生は可能になる。
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