1,4-位にヒドロキシル基,アセトキシル基,メトキシル基,およびアミノ基を有するアントラキノンの還元をスズ-塩酸(A法),塩化スズ(II)-塩酸(B法),亜鉛-塩酸(C法),LiAlH
4-THF(D法),NaBH
4-メタノール(E法)およびNa
2S
2O
4-水酸化ナトリウム(F法)の6種の還元剤を用いて行ない,還元生成物の検討を行なった。反応はこれらの試薬を用いた場合に用いられる一般的な条件下で行なった。
1,4-ジヒドロキシアントラキノン(キニザリン)においてはA,BおよびC法により9,10-ジヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドPt-1,4-アントラセンジオン(ロイコキニザリン)が,D,EおよびF法では1,4-アントラセンジオンが得られた。1,4-ジアセトキシアントラキノンではA,B,CおよびF法でロイコキニザリンが,DおよびE法では1,4-アントラセンジオンが生成した。1,4-ジメトキシアントラキノンはA,B,C法ではやはりロイコキニザリンが得られD,E,F法ではメトキシル基はそのまま残り,9,10-ジヒドロ-9,10-アントラセンジオール,アソトロンおよびアントラセンの1,4-ジメトキシ誘導体を与えた。1-アミノ-4-ヒドロキシアントラキノンではA,B法によりロイコキニザリンをC法では9,10-ジヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドP-1-アントラセノンを,またE法では1,4一アントラセンジオンを与え,DとF法では生成物が多岐にわたり単離同定は不可能であった。また1,4-ジアミノアントラキノンはA,B,C法では1-アミノ-1-ヒドロキシアントラキノンと同じ生成物を与えるがE法では1,2,3,4-テトラヒドロアントラキノンを与え,またF法ではロイコキニザリンが得られる。1,2,4-トリヒドロキシアントラキノン(プルプリン)においてはD法を除きすべての方法で一つのヒドロキシル基が脱離して還元された形のロイコキニザリンを与えるほかA,B,F法では1,3-ジヒドロキシアントロンを,CおよびE法では1,4-アントラセンジオンを与えた。1,2,4,8-テトラヒドロキシアントラキノン(キナリザリン)の1,2-位のヒドロキシル基はフeルプリンの場合と異なり反応にはまったく関与せず,5,8-位のヒドロキシル基がキニザリンと同じ働きをしキナリザリンのロイコ体と5,6-ジヒドロキシ-1,4-アントラキノンを与えた。
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