日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
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1984 巻, 7 号
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  • 熊谷 昭文
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1079-1082
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    液体ハロゲソ化炭化水素のP-V-T関係に対する高精度の推算のために,van der Waals型状態式を用いてTait式,
    V=V0[1-Cln{(B+P)/(B+P0)}]
    の二つのパラメータ,BとCを導きだした。ここで,V(cm3・mol-1).は圧力P(Pa)での液体の比容,V0(cm2・mol-1)は各温度における飽和蒸気圧P0(Pa)での液体め比容であるTaitパラメーターは
    C=7.52×1054μ2/TV22+0.0922
    B=9.86×108ΔEbVVb5(V0-6-Vc-6)-Pc
    で与えられる。ここでμ(C・m)は双極子モーメント,Pe(Pa)は臨界圧力,Tc(K)は臨界温度,ΔEbV(kcal・mol-1)は沸点での蒸発エネルギー,Vb(cm3・mol-1)は液体の沸点分子容,Vc(cm3・mol-1)は臨界体積である。
    これらの関係を用いて7種のハロゲン化炭化水素に対して高圧下の液比容を計算した結果,251点のデータで平均偏差は0.12%,e最大偏差は-0.50%である。
  • 高島 正之, 加納 源太郎, 福井 武久, 小倉 毅勇
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1083-1089
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イットリウムとネオジムの酸化物とフッ化物との固相反応によって新規化合物としてネオジムイットリウムフッ化酸化物が合成された。Y2O3とNdF3の反応は反応温度によって段階的であり,200~600℃ ではY2O3とNdF3の間でO2-とF-の交換反応が進行しYFOとNdFOを生成する。900℃を越えるとNdFOがYFOに置換型に固溶化し始め,1200℃以上でネオジムイットリウムフヅッ化酸化物が生成した。NdF3の混合割合が48~52mol%で斜方面体晶の,58~78mol%で正方晶の単一相生成物が得られた。前者ではY,NdF3O3が,後者ではY,Nd2F,O3が量論的化合物として合成された。Y2NdF3O,は530℃ 付近で斜方面体晶から立方晶への可逆的な相転移があるが,Y2Nd2F6O3は1400℃ 以下では空気中で安定で相転移もなかった。酸化物イオン導電性の立場から電気伝導性を調べた結果,Y2Nd2F,O3が650℃ で電導度が1.2×10-2S/cmで,酸化物イオン輸率が0.85以上の高い酸化物イオン導電性を示した。
  • 一色 正順, 田中 教子, 宇津 雄平
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1090-1096
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニトロキシドラジカルすなわち,ジ-t-ブチルニトロキシドをスピンプローブとして,各種の界面活性剤水溶液へ可溶化させて,ESR測定からミセルの安定性とラジカル分子の可溶化過程の関連について研究した。(1)臨界ミセル濃度以上でも,ラジカルの回転相関時間は比較的,小さいことから,ラジカルはミセル表面上に固く吸着するのではなく,むしろミセル内部での易動性をもつ動的過程である。(2)超微細結合定数から,ラジカルの存在する平均的な位置は,ミセル表面の近くの極性の大きな環境である。(3)これらの値はAOT,SDS,STS,CTABの順に対応し,ラジカル分子とミセルの相互作用の強さが界面活性剤のアルキル鎖長によることを示唆する。とくに,鎖長が大きく,ミセルが稠密なパッキングをすると考えられるCTABやOTABにおいては,高磁場側の吸収線が,明瞭に二つに分裂した。これはバルク水相とミセル相内に分配したラジカル分子によると考えられる。さらに,両相へのラジカル分子の分配比とミセル1個あたりの平均ラジカル数を求めるため,分裂したスペクトルのシミュレーションを試みた。
  • 荒木 義, 多加谷 潔, 日野 正利, 野口 達彦
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1097-1106
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    原料の種類,炭酸マンガンの熱分解履歴などの異なるマンガン酸化物を用いて,150℃ 以下の低温におけるクリーンガス中のNOのNH3による還元反応について,マンガン酸化物触媒の活性と調製条件の関係を,熱分析,X線回折,電子顕微鏡観察,水銀圧入法による細孔分布測定,および脱硝率測定などにより検討した。
    触媒活性の大きさの順序はつぎのとおりであった。すなわち,
    工業用高純度炭酸マンガン造粒焼成物>工業用炭酸マンガン造粒焼成物>菱マンガン鉱造粒焼成物>工業用高純度炭酸マンガン焼成後造粒・乾燥物>電解酸化マンガン(N)造粒・乾燥物
    活性の高いものは細孔半径100A以下の細孔容積が01~0.2ml/gで比較的大きく,比表面積も150~190m2/gと大きく,化学的にはMnOxのxが1.7~1.8であった。
  • 安江 任, 間宮 晶, 高橋 裕八, 築坂 亮吾, 荒井 康夫
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1107-1113
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    CaO-H2O-CO2-CH3OH系反応によってゲル状の炭酸カルシウムが析出するが,これを乾燥することによって非晶質炭酸カルシウムを合成することができる。本硯究はゲル状物の生成領域,これを結晶化させることなく非晶質相を得る条件,および得られた非晶質相の性質をX線回折,熱分析(TGDTA),電子顕微鏡観察,化学分析,比表面積と溶解度の測定などによって検討したものである。'メタノール100cm3に紺してCaOを10g以下,あるいはCa(OH)2を59以下添加して懸濁させ,これにCO2ガスを流速50cm3/=min以上で吹き込むと,ゲル状物が急速に生成する。これをすみやかに源過,減圧下40℃で乾燥すると,非晶質相が得られる。なお,CO2の流速の増大と3cm3以下の水の存在はゲル化を促進させる。この非晶質相(230℃ 加熱物)はCaCO3の化学量論的組成よりCO2分がかなり多く,CaCO3微結晶核に少量のCH3O-やHCO3-を吸着したものであると推察された。約250℃ 以上で加熱するとすみやかに非晶質相は結晶化し,カルサイトに変化する。しかし,室温減圧下では長期間安定である。この非晶質炭酸カルシウムは従来の超微細炭酸カルシウムとくらべると,多孔性の超微粒子(約100Å以下)からなり,きわめて活性にとみ,水中ではすみやかに加水分解し,一部のCO2ガスを放散しながら,カルサイト化する特異な性質を有する。
  • 須藤 信行, 奥脇 昭嗣, 岡部 泰二郎
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1114-1121
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シュウ酸ナトリウム-炭酸水素アンモニウム-水系平衡状態図を作成し,つぎの複分解反応について検討した。また,生成するシュウ酸アンモニウム一水和物の結晶成長に影響をおよぼす諸因子について調べた。
    シュウ酸ナトリウム-炭酸水素アンモニウム-水系は二酸化炭素の吹き込みにより炭酸化係数Z(=OH-/(OH-+HCO3-))がほぼ一定になり,系の自由度F=1とみなすことができ,この条件における30℃での状態図が得られた。系は4種類ずつの二成分系および三成分系と2種類の四成分系からなり,四成分系は一方が液相成分と固相成分の一致する調和溶液,他方が,異なる非調和溶液であった。状態図からシュウ酸利用率UC2O4は調和溶液組成,30℃ において最高となり,計算値72.4%,実験値70.3%であった。さらに,UC2O4を100%にするため炭酸水素ナトリウムの生成する条件において,シュウ酸アンモニウム-水和物の結晶成長を検討した。液組成は非調和溶液組成付近が,かきまぜ速度ははやい方が有効であった。シュウ酸ナトリウムと炭酸水素アンモニウムの投入速度が小さいと大きいシュウ酸アンモニウム-水和物結晶が得られた。生成したシュウ酸アンモニウム-水和物に含まれる炭酸水素ナトリウムは有機溶媒を用いて分離すると,炭酸水素ナトリウムを約10%含むシュウ酸アンモニウム-水和物が72%の収率で得られた。
  • 須藤 信行, 山川 和, 奥脇 昭嗣, 岡部 泰二郎
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1122-1127
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シュウ酸アンモニウム-水和物の加熱脱水によるオキサミドの生成について研究した。オキサミド収率におよぼすリン酸およびリン酸塩や炭酸水素ナトリウムの存在量,雰囲気,および粒径の影響を調べた。
    オキサミド収率はリン酸およびリン酸塩の存在により30~35%から68~78%に増大し,その種類による収率の差は比較的小さかった。アンモニア分圧が高いとシュウ酸アンモニウムの分解は抑制されると考えられ,アンモニア気流中での熱分解によるオキサミド収率は最高値86.4%に達した。粒径は32~48メッシュが最適で収率は83.5%であった。より大きい粒径では,リン酸との接触が不十分で収率は低下した。炭酸水素ナトリウムは,オキサミドの生成を妨害した。しかし,シュウ酸アンモニウムー水和物に対し15wt%以下では,リン酸を添加することによりオキサミド収率は200。C,2時間で78%に達した。硫酸塩(オキサミド収率52~90%),ヘテロポリ酸(72~78%)および金属酸化物(42~89%)などが触媒効果を示したことから,リン(V)オキソ酸はオキサミド生成において酸触媒として作用すると考えられる。熱分析では,加熱脱水と分解反応の温度の差は小さいが,触媒存在下では加熱脱水反応の方がより低温で進むことが確認された。また,シュウ酸アンモニウムー水和物の熱分解はオキサミドを生成する加熱脱水反応と,シュウ酸とアンモニアに分解する反応が逐次併発的に進むと考えられる。
  • 阿部 芳首, 長尾 幸徳, 御園生 尭久
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1128-1131
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,2′-ジヒドロキシアゾベンゼン誘導体をキレート配位子とするケイ素のキレート錯体を合成するために,これら配位子とテトラエトキシシランとの反応を検討した。その結果,ダイグライムを溶媒とし,金属ナトリウムやナトリウムエトキシドの存在下での反応により,好収率でキレート錯体が得られた。
  • 吉村 長蔵, 藤野 隆由
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1132-1137
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    グラファイトチューブを用いたフレームレス原子吸光定量法による耐火性金属酸化物粉末(酸化アルミニウム,酸化ベリリウムおよび二酸化ケイ素など)の直接原子化におけるカーボンブラック添加による共存元素の干渉抑制について検討した。その結果,酸化ベリリウム粉末を蒸留水に超音波分散させカーボンブラックを添加し,原子化した場合は,その吸光感度は,ベリリウム標準液にくらべ,約4倍に増大した。さらに,酸化アルミニウムや二酸化ケイ素粉末の分散液についても,その溶液化した試料液にくらべ,前者は約3倍,後者は約3.5倍もの感度の向上を得た。この吸光感度の増大は,カーボンブラックの添加により灰化段階でベリリウム塩としての揮散抑制および基底状態原子の生成を促進するためと考えられる。また,実際分析として,緑柱石(3BeO・Al2O3・6SiO2)中のベリリウムの定量をカーボンブラックを添加して行ない,満足すべき結果が得られた。
    本法におけるベリリウムの定量下限は0.52PPb(5.2×10-12g/1%吸収),5PPbの試料について変動係数は2.9%であった。
  • 武田 邦彦, 川上 文明, 佐々木 光永
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1138-1145
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Fe3+およびUO22+イオンを中心金属イオンとし,Cl-を配位子とした錯イオンの陰イオン交換体に対するイオン交換平衡を検討し,錯イオンの交換平衡を調べる方法として,イオン交換の選択係数Kおよび平均価数レとの関係を表わす曲線を数点の測定から描き,種々の条件下における曲線の交点からそれらの値を決定する方法を提案し,とくに,配位子濃度の高い領域では妥当な結果を与えることを確認した。
    Cl-濃度3~8mol・dm-3の範囲で,Cl-濃度の増大とともに,イオン交換体内のFe3+およびUO22+のクロロ錯体は平均価数が増大し,配位子濃度の増加にともなう溶液内の平均配位数の増加より大きいことを明らかにし,イオン交換体内の錯体状況が外部溶液組成により変化することを示した。
  • 代島 茂樹, 飯田 芳男, 梶木 俊夫
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1146-1150
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    負イオン化学イオン化(NCI)法を用いたガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)法により飲料水申の低沸点ハロゲン化炭化水素類,すなわち4種のトリハロメタン,四塩化炭素,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレンを高感度で選択的に定量する方法を検討した。本法ではヘッドスペース法と組み合せることにより迅速,簡易な測定が,またNCIにおいてハロゲン化炭化水素から生じるCl-およびBr-の各質量数に対応するm/z35と79に対し選択イオン検出法を用いることによりpptレベルのきわめて高感度の検出が可能となった。定量下限は1~100ppt,反復再現性は相対標準偏差で2~10%,またくり返し再現性も良好であった。
  • 佐藤 宗衛, 樋口 精一郎, 田中 誠之
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1151-1157
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    "ホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリウム"の固体および水溶液における化学構造に関する知見を得るために,この化合物ならびに類似構造を有するアルカンスルホン酸ナトリウム(C1~C3),.ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウム,アミノメタンスルホン酸ナトゴウム,エタンスルフィン酸ナトリウムおよび1-プロパンスルフィン酸ナトリウムの固体および水溶液における赤外吸収およびラマンスペクトルを測定した。"ホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリヴム"ならびにこれら類似構造を有する化合物の両スペク,トルの解析から,"ホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリウム"は固体および水溶液において,いずれもC-S結合を有するヒドロ・キシメタンスルフィン酸ナトリウムとして存在することが示唆された。
  • 玉野 美智子, 池田 俊之, 纐纈 銃吾
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1158-1163
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アントロン(9(10H)-アントラセノン)と三価のリン化合物としてトリス(ジアルキルアミノ)ホスフィン,トリアルコキシボスフィン,およびトリス(アルキルチオ)ホスフィンの反応を検討した。トリス(ジアルキルアミノ)ホスフィンとのアントロンの反応においてはビス(9-アントリルオキシ)(ジアルキルアミノ)ホスフィンを,また1-ヒドロキシアントロソとの反応では環状アミド亜リン酸エステルを与えた。他方,トリアルコキシホスフィンにおいては9-(アルコキシ)アントラセンとホスホン酸ジアルキルを与え,トリス(アルキルチオ)ボスフィンの反癒では9-(アルキルチオ)アントラセンとアントラセンが単離された。
  • 玉野 美智子, 倉橋 孝彰, 纐纈 銃吾
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1164-1169
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,4-位にヒドロキシル基,アセトキシル基,メトキシル基,およびアミノ基を有するアントラキノンの還元をスズ-塩酸(A法),塩化スズ(II)-塩酸(B法),亜鉛-塩酸(C法),LiAlH4-THF(D法),NaBH4-メタノール(E法)およびNa2S2O4-水酸化ナトリウム(F法)の6種の還元剤を用いて行ない,還元生成物の検討を行なった。反応はこれらの試薬を用いた場合に用いられる一般的な条件下で行なった。
    1,4-ジヒドロキシアントラキノン(キニザリン)においてはA,BおよびC法により9,10-ジヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドPt-1,4-アントラセンジオン(ロイコキニザリン)が,D,EおよびF法では1,4-アントラセンジオンが得られた。1,4-ジアセトキシアントラキノンではA,B,CおよびF法でロイコキニザリンが,DおよびE法では1,4-アントラセンジオンが生成した。1,4-ジメトキシアントラキノンはA,B,C法ではやはりロイコキニザリンが得られD,E,F法ではメトキシル基はそのまま残り,9,10-ジヒドロ-9,10-アントラセンジオール,アソトロンおよびアントラセンの1,4-ジメトキシ誘導体を与えた。1-アミノ-4-ヒドロキシアントラキノンではA,B法によりロイコキニザリンをC法では9,10-ジヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドP-1-アントラセノンを,またE法では1,4一アントラセンジオンを与え,DとF法では生成物が多岐にわたり単離同定は不可能であった。また1,4-ジアミノアントラキノンはA,B,C法では1-アミノ-1-ヒドロキシアントラキノンと同じ生成物を与えるがE法では1,2,3,4-テトラヒドロアントラキノンを与え,またF法ではロイコキニザリンが得られる。1,2,4-トリヒドロキシアントラキノン(プルプリン)においてはD法を除きすべての方法で一つのヒドロキシル基が脱離して還元された形のロイコキニザリンを与えるほかA,B,F法では1,3-ジヒドロキシアントロンを,CおよびE法では1,4-アントラセンジオンを与えた。1,2,4,8-テトラヒドロキシアントラキノン(キナリザリン)の1,2-位のヒドロキシル基はフeルプリンの場合と異なり反応にはまったく関与せず,5,8-位のヒドロキシル基がキニザリンと同じ働きをしキナリザリンのロイコ体と5,6-ジヒドロキシ-1,4-アントラキノンを与えた。
  • 石田 配朗, 村上 幸子, 平野 二郎, 森岡 憲祐, 船田 正
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1170-1176
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リパーゼによる漉脂の固相静置加水分解反応において,リパーゼの脂肪酸特異性と基質の固体脂指数(SFI)との関係について検討した。その結果,特異性はリパーゼの種類によりかなり差異が認められ,SFIの高い方がより明確に発現した。しかも,この特異性の発現は,油脂の加水分解率10~50%の範囲内では大きく変化しなかった。
    用いたすべてのリパーゼは,オレイン酸のエステル結合よりリノール酸のそれに対する加水分解作用が小さいため,原料油脂中の組成よりオレイン酸に薄するリノール酸含量比率の小さい脂肪酸混合物を得ることができると判明した。
  • 高橋 秀幸, 池田 博昭, 増田 勇三
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1177-1181
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリスチレン-シクロヘキサン溶液の超音波音速度の濃度および温度依存性について検討した。測定周波数は1~4MHz,測定温度は34.6(θ)~57.5℃ であった。すでに確立されているθ点近傍における静的な相図に基づいて濃度変化を行ない,音速度が静的測定と同様な濃度(相転移点)で濃度依存性を異にするということが明らかになった。これは高分子鎖がからみ合いを生ずると,音速度が直線性からはずれるという現象としてあらわれた。この結果は低周波数の縦波に薄して高分子鎖のからみ合い点の数が濃度に直接に比例して,弾性率が濃度に対してE~C2.25となるとしたde Gennesの予想とは異なっていた。すなわち,高周波数では高分子溶液はセグメントー溶媒のエネルギー弾性体混合系と見なせるので,高分子鎖のセグメント密度効果が弾性率に影響をおよぼし,準濃厚領域ではE~C1.054となる結果を得た。
  • 原 浩
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1182-1189
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    現像銀の形態に影響する因子として,ハロゲン化銀乳剤の膜厚,粒子密度および現像液の活性度の影響を電子顕微鏡観察と電子線回折によって調べた。とくにゼラチンを除去したハロゲン化銀粒子の焼きだし現嫁の状態を連続観察し,化学現像の場合と比較した。特定の実験条件のもとで現像銀のハーローの発生,銀-ゼラチン包皮から現像銀の噴出,包皮の膨張および割れなどの現像が観察されることを見いだし,それらの成因について考察した。
    銀-ゼラチン包皮(半透膜的性質を有し,ハロゲン化銀粒子をおおう銀とゼラチンの結合体)とハロゲン化物イオン拡散圧(現像速度とハロゲン化物イオン拡散速度の差によって包皮内に発生する圧力)の影響によって,現像の還元過程で生成した非晶質現像銀は包皮の内部を動きまわりあるいは包皮外へしみでる。包皮内およびゼラチン層内で静止した非晶質霧状現像銀は周囲の環境および結晶条件によってさまざまな結晶状態と形態を示す。
  • 安岡 高志, 城所 忠彦, 高野 二郎, 光沢 舜明, Patrick R. ZIMMERMAN
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1190-1195
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルカリ土類金属の過酸化物による空気中のオゾンの分解除去に関する研究を行ない,分解条件を明らかにするとともに分解除去反応機構について考察した。アルカリ土類金属の過酸化物(MgO2・nH2O,n≒0.5,CaO2,SrO2,SrO2・8H2O,BaO2)によるオゾンの分解除去において,いずれの除去剤を用いた場合でも相対湿度が高い場合には除去率がよく,無水物を用いた場合には相対湿度が低下するにしたがって除去率の低下が見られた。一方,結晶水を有する過酸化物においては相対湿度の影響をうけず低湿度においても高い除去率を示した。
    分解除去機構は過酸化物と水分が反応して生ずる原子状酸素や過酸化水素とオゾンが反応して酸素となる機構であることが推定された。無水物において試料ガス中の相対湿度が高くなるにつれて分解除去率が高くなる原因は相対湿度が高いほどオゾンを分解する原子状酸素や過酸化水素の発生が多くなるためであることが推定された。一方,結晶水を含んでいる過酸化物においては相対湿度が低い場合にも高い除去率を示す原因は原子状酸素を発生させるために必要な水分を除去剤自身が含んでいるためであると推察された。
  • 藤郷 森, 五十畑 達夫
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1196-1201
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報では,大谷石粉末がメチレンブルー水溶液に対してかなり良好な吸着能を有することを明らかにした。また,吸着能は粉末の処理温度の上昇にともなって,急激に減少する。このような事実から,大谷石に含まれる粘土鉱物類がこの吸着に選択的に関与しているものと推論した。
    今回は,粉砕,分級した大谷石粉末を用いて,メチレンブルー,アンモニア性窒素の水溶液に対する吸着能を検討した。前者はスメクタイト族粘土鉱物類に,後者は主としてゼオライト族鉱物に吸着除去されることから,粉砕した試料の鉱物組成も同時に明らかにできるものと考え実施した。とくに注目した粘土鉱物はX線的に解析困難であるが,これらの吸着質を用いれば,鉱物組成に関する情報が得られる。また,各試料に含まれる鉄分とメチレソブルーの吸着量とめ間に直線関係が存在し,メチレンブルー分子は粘土鉱物に吸着され除去されることが明らかとなった。
  • 菅沼 恭子, 小尾 達郎
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1202-1204
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Chloride ion contained in α-Fe2O3 powders has been effectively removed by heating in humid air without any changes in the surface areas of the powders. The Cl- content in α-Fe2O3 decreased to O.10-0.045 wt% by heating at 300-560°C for 1.0 h in the air containing 28 wt% H2O. The treated α-Fe2O3 revealed only a slight change in the specific surface area from 5.2 m2ig to 4.9 m2/g. The electron microscopic observation showed that no considerable sintering between the particles occurred in the calcination process.
  • 菅原 晃, 山下 寿生, 松田 臣平
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1205-1207
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A water-repellent catalyst has been used for the reaction between liquid and gas. In the present paper, the observation was carried out on platinum particles supported on waterrepellent carriers such as poly(tetrafluoroethylene) (PTFE) using an electron microscope. It was impossible to observe the platinum particles smaller than -50Å by an scanning electron microscope(SEM). The platinum particles could be observed by transmission electron microscopic (TEM)examination with a thin film prepared by the ultrathin sectioning meth od. The size of the platinum particles prepared by the colloidal method was smaller than th at prepared by th e hydrogen reduction method.
  • 古川 功, 周 斌, 橋本 静信
    1984 年 1984 巻 7 号 p. 1208-1212
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The reactions of fifteen alcohols with triphenylphosphine diiodide [1] have been investigated. The substitution of the hydroxyl group of primary saturated alcohols took place to give the corresponding iodides [3], in 64-99% yields, while the reduction of the hydroxyl group occurred in the reaction of a primary unsaturated alcohol, 3-phenyl-2-propen-1-ol, with [1] The reactions of secondary and tertiary saturated alcohols having an active hydrogen on the 8-position with [1] provided the elimination products, alkenes [5], in 61-82% yields. The secondary and tertiary alcohols having no 8-hydrogen gave the corresponding iodides C 3 as intermediates, which were reduced with hydrogen iodide produced, giving alkanes [4] as the final products, in 26-83% yields. The mixtures of [3], [4]and[5], and [4] and [5] were obtained from the reactions of 1-phenylethanol and 1-phenyl-1-propanol, respectively. In the reaction of 1-phenylethanol with [1], the yield of [4] increased at a higher temperature, since conversion from [3] to [4]was accelerated with the rising temperature. The addition of pyridine in the reaction of 1-phenylethanol with [1] decreased the yield of [4], whereas the yield of [5] was increased.
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