日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
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1984 巻, 8 号
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  • 今井 弘, 堀川 治, 田村 裕
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1215-1220
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-(2-ヒドロキシベンジリデン)-2-ヒドロキシ-4-または-5-置換アニリン類〔1〕(5位:CHs〔a〕,H〔b〕, Cl〔c〕, NO2〔d〕, SO3H〔e〕, 4位:NO2〔f〕)を合成し・両ベンゼン環の2位のヒドnキシル基の挙動を調べた。その結果,ベンジリデン2位のヒドロキシル基はアゾメチン窒素原子と分子内水素結合を形成し,そしてこの結合は〔1a〕>〔1b〕>〔1c〕>〔1d〕>〔1f〕>〔1e〕の順に弱くなることがIRや1H-NMRスペクトルの灘定から明らかになった。数種の溶媒中で観測された〔1〕の吸収はそれぞれのベンゼン環の第1パンド(36~44×103cm-1)と第2バンド(25~34×103cm-1)に帰属される。これらのパンドの吸収位置は置換基の種類に関係なく移動したので,両ペソゼン環はあまり共役していないことを示した。25±O.2℃,75%ジオキサソ水溶液中で電位差滴定法によって測定した〔1a〕~〔1c〕,〔1e〕,〔1f〕のpK1 は9.3~10.0, pK2は9.8~12.7であった。前者はベンジリデン2位のヒドロキシル基,後者はアニリン2位のヒドnキシル基の解離によるものである。8.37と8.71を示した〔1d〕のpK1とpK2はそれぞれ両ベンゼン環の2位のヒドロキシル基の解離によるものであって,これは上述と逆の結果になった。
  • 片桐 晃, 前田 正宏, 山口 孝裕, 小久見 善八, 竹原 善一郎, 吉沢 四郎
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1221-1226
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸水溶液における白金上での一酸化窒素,亜硝酸,および硝酸の電気化学的挙動を,静止電極,回転円板電極,および回転リングディスク電極を用いて研究した。4~5mol・dm-3硫酸での亜硝酸の還元の電流電位曲線には,3段の還元波が見られた。一酸化窒素の還元の場合には亜硝酸の第二および第三還元段階に相当する2段の還元波が見られた。回転リングディスク電極を使った実験より亜硝酸の第一,第二,および第三還元段階で,それぞれ,一酸化窒素,亜酸化窒素,およびヒドロキシルアミンがおもに生成することが,確かめられた。亜硝酸共存下での硝酸の自触媒的カソード還元反応の機構として,途中に一酸化窒素の生成反応を含む機構(Schmidの機構)が,回転リングディスク電極を用いた実験より支持された。
  • 堀佃 紀好, 清水 高志
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1227-1231
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルカリ溶液中におけるフッ化グラファイト極の電気化学的挙動および放電生成物の物性を調ぺた結果,フッ化グラファイトは55℃ の濃アルカリで処理されることにより,炭素- フッ素結合が弱められ,電気化学的に活性な表面となり,電池活物質として有効であること,フッ化グラファイト極の開回路および閉回路電位の平坦性は良好で,放電により導電性の炭素質を生成し,放電量に見合うフッ化物イオンが電解液中へ溶出することなどが判明した。また,分極電位の回復が拡散則にしたがうことなどから,電極反応の律速過程は,フッ化物イオンが反応生成物相を拡散して電解液中へ溶出する過程と推定された。
  • 桑田 茂樹, 三浦 則雄, 山添 昇, 清山 哲郎
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1232-1236
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    F-イオン導電性を有するフッ化物を固体電解質として用いた電池を構成し,低温における電位検出型酸素センサーとしての作動特性について検討した。本センサーは基本的にはつぎのような電池で構成される。
    M,MF(参照極)/M′F(固体電解質)/M″,02(検知極)
    150℃における酸素分圧変化にともなう両極間の電位差(起電力)の90%応答時間は, 圧力の増加方向で約2分,逆方向で約5分であった。ただし,50℃ では応答は遅くなりいずれも数十分を要した。また,起電力と酸素分圧の対数とは直線関係を示し Nernstの式にしたがうことがわかった。この直線の傾きから検知極における電極反応は酸素に対して二電子反応であると考えられる。また,検知極における電池としてのつながりは,電解質中の可動イオンであるF-イオンと酸素ガスとを含むつぎの電極反応によって説明することができる。
    02 + 2F〓 + 2e =20〓 + 2F-
    ここで,F〓 およびO〓 はそれぞれ固体電解質中の格子サイトに存在するF-イオンおよびO-イオンである。
  • 鈴木 新太郎, 作本 博則, 表 雄一, 峰岸 順二
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1237-1248
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    針状粒子であるγ-Fe2O3,Fe304,,Co被着γ-Fe2O3およびCo固溶γ-Fe2O3などの試料を摩砕してメカノケミカル反応を行ない,磁気特性(保磁力,磁束密度,角形比),形態(長軸長,針状比),結晶構造,比表面積,相転移,耐熱性および開空孔径の変化などを測定することにより,それぞれ比較検討した。また,反応におよぼす摩砕環境(温度,湿度,酸素の有無)の影響を調べた。形態的変化が針状粒子のせん断で始まり,ほぼ一一定の針状比になる点は全試料に共通している。γ-Fe2O3とFe304の保磁力と角形比は摩砕初期にいったん低下し,その後上昇する。磁束密度はα-Fe2O3の生成とともに減少する。さらに,α-Fe2O3への相転移はγ-FeOOHの加熱脱水で得たγ-Fe2O3ず がもっとも起こりやすく,ついで還乖・酸化を経たγ-Fe2O3,Fe3O4,Co 固溶γ-Fe2O3の順であり,Co被着γ-Fe2O3はほとんど転移しない。これは,Coの被着層が強固にメカノケミカル変化を防いでいるためである。摩砕環境のうち,空気中の水分は相転移を抑制し,空気中の酸素は相転移を促進し,温度は影響しなかった。一般に比表面積が大きいほど摩砕効果が大きくあらわれ,かつCo被覆の効果,摩砕雰囲気の効果などから,試料表面の状態がメカノケミカル反応の重要な要嗣であること,および,表面からメカノケミカル相転移が起こることを明らかにした。
  • 青柳 寿夫, 吉田 善行, 安達 武雄, 木原 荘林
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1249-1256
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硝酸系溶液および塩酸系溶液中のプルトニウム(III),(IV),(VI)の加水分解挙動をアルカリ滴定によって調べた。また,生成したプルトニウム(III),(VI)水酸化物沈殿を各種孔径の炉過器を用いてと過し,沈殿生成率およびその粒径とpHの関係を明らかにした。さらに,プルトニウム(III),(IV),(VI)の加水分解定数,錯形成定数および酸化還元電位の文献値を参照して上記実験結果を考察し,水酸化物沈殿の化学種を推定した。1.29×10-4mol・dm-3以上のプルトニウム(III)を含む除酸素した硝酸系溶液および塩酸系溶液からはpH6~7で粒径10~40μmの[Pu(OH)2]+ の重合体沈殿が生成する. より低濃度のプルトニウム(III)はpH領域で,微量溶存酸素によって容易にプルトニウム(IV)に酸化される。1.29×10-6mol・dm-3以上のプルトニウム(IV)を含む硝酸系および塩酸系溶液からは,pH約2以上で粒径5~40μmの [Pu(OH)2]2+ の重合体が沈殿するが,粒径はプルトニウム(IV)濃度に依存する。塩酸系溶液からの[Pu(OH)2]2+ の重合体沈殿にはpH4~6でさらに水酸化物イオンが付加し,[Pu(OH)3]+に変化する。129×10-9mol・dm-3プルトニウム(VI)硝酸系溶液からは,pH約5以上で粒径3μm 以下の[Pu(OH)3]+ の重合体が生ずる。プルトニウム(VI)はその濃度が6×10-3mol・dm-3であっても水酸化物重合体として沈殿することはないが,pH5付近でPuO2(OH)2となる。PuO2(OH)2はプルトニウム(IV)水酸化物沈殿と共沈する。
  • 中島 隼人, 清水 三郎, 小貫 薫, 池添 康正, 佐藤 章一
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1257-1261
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニッケル,ヨウ素,硫黄系熱化学水素製造プロセスに含まれる反応であるNiI2,の熱分解反応について,熱てんびんを用い速度論的な検討を行なった。反応温度775~869K,ヨウ素分圧0~960PaにおけるNiI2ペレットの熱分解反応は表面から起こり,反応初期から中期にかけて界面反応過程が律速であると考えられる。見かけの分解反応速度は,一定反応温度で一定値である正反応の速度と,ヨウ素分圧に比例する逆反応の速度の和で表わされる。この正反応の速度は,ヨウ素分圧0のときの分解反応速度であり,その温度でのヨウ化ニヅケルの平衡解離圧に比例する。見かけの分解反応の活性化エネルギーは147kJ・mol-1と求められ,平衡圧から算出した反応熱にごく近い。
  • 朝田 誠一, 雨宮 政博
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1262-1267
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    CrO2粉は磁気記録媒体用の磁性材料であり,高保磁力のCrO2粉を使用することにより磁気記録媒体の記録線密度が高くなる。CrO2粉は,γ-Fe2O3粉などと同様に針状の微粒子とすることによって保磁力が高くなる。針状のCrO2粉は原料のクロム酸化物を高圧酸素雰囲気下で水熱分解することによって得られるが,クロム酸化物だけでは粒子径が大きく保磁力が低い。通常,粒子径を小さくするためにSb,Teなどの第3元素を添加する。Sb,Teと同様な効果をもつ添加剤としてSi,Zr,A1,タングステンなどについて検討した結果,タングステンが有効な添加剤であることが明らかになった。無添加のCrO2粉の保磁力は4~7kA/mであったが,1.5~2.Owt%のタングステンを添加して得たCrO2粉の保磁力は約40kA/mに増大した。このCrO2粉の短軸長は約30nm,長軸長と短軸長との比は約8であった。高保磁力のCrO2粉が得られたときの原料であるCr2Oxのクロムの平均原子価格(x)は約4.9であった。タングステンを添加することにより針状のCrO2微粒子が得られたのは,CrO2成長の結晶核の作用をするルチル型の微粒子が晶出したためと考えられる。
  • 樋口 精一郎, 藤本 智, 田中 誠之, 鄭 澤根
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1268-1272
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    数種のオルト位アルキル置換ニトロベンゼンおよびパラ置換ニトロベンゼンの1600cm-1付近のバンドとパラ置換体に特徴的な1120,860cm-1のバンドのラマン散乱強度を検討した。1600cm-1のバンド強度の検討から,置換基効果による強度の挙動が局所的な電子密度の変化によるのではなく,分子内電荷移動に関係する電子雲の空間的広がりによることが示唆された。このことは,あつかったバンドに共鳴ラマン効果がかかわっていることを示唆する。そこで,パラ置換ニトロベンゼンの3本のバンドの強度について励起波長依存性を検討した。励起光が短波長になるにしたがい強度はほとんどの場合に増大するが,1600,1120cm-1のバンドの強度増大はそれほど大きくないのに対して,860cm-1の方は,置換基の電子供与性が強くなり分子内電荷移動型のUV吸収が長波長側ヘシフトするといちじるしく大きくなることが明らかにされた. このように強度を置換基および励起波長という2点から見ることにより,置換基による1120および860cm-1バンドの相対強度の逆転というスペクトルパターンの変化,強度のいちじるしい大きさなどの問題を解釈し得ることが示された。
  • 林 滋彦, 青山 絹代, 吉村 和子, 塩田 俊幸, 出口 耕一, 小辻 奎也
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1273-1278
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カルボキシメチルセファデックスとヒドラジン水和物とから得たヒドラジノカルボニルメチルセファデックスに室温の水酸化ナトリウム溶液中で二硫化炭素を作用させてN′-(ジチオカルボキシ)ヒドラジノカルボニルメチルセファデックス(以下DH-Sephadexと略記する)を得た,1×10-5mol・l-1の金属塩溶液50mlを0.1g のDH-Sephadexと30分間かきまぜるとき,各金属の捕集がほ塚完全なpH域は水銀(II)(1.0~10.3),銅(II)(3.5~8.4),鉛(II)(4.6~5.0),カドミウム(II)(4.7~8.2),亜鉛(II)(5.0~6.7),ニッケル(II)(5.1~8.6),コバルト(II)(5.2~8.3),マンガン(II)(5.6~9.6)である。DH-Sephadexは室温で酸に不溶であるが,熱ずると溶解するゐで,金属を捕集したDH-Sephadexの酸溶解により溶離困難な金属を回収できる特徴をもっている。鉛,亜鉛またはマン渉ンのいずれかと水銀をともに捕集し,EDTA溶液で前者を溶離して3種の金属と水銀とを分離でき,また,PH(0.5~1.1)で水銀のみを捕集して鉛など6種の金属と水銀とを分離できる。
  • 白石 振作, 高山 俊雄
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1279-1286
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンゼン中で,1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(ABCO)は P-トルエンスルホン酸クロリド〔1a〕と容易に反応して1-(P-トリルスルホニル)-4-(2-クロロエチル)ピペリジン〔2a〕と塩様生成物を与えた。塩様生成物をP-トルエンスルホン酸水溶液で処理すると,水に難溶な1-[2[1-(p-トリルスルホニル)-4-ピペリジニル]エチル]キヌクリジニウム=P-トルエソスルホナート〔5〕を得た. この反応におけるスルホンアミド〔2a〕の収率におよぼす反応条件の影響を検討した結果,ベソゼソ,トルエン,四塩化炭素,THFなどの非極性または極性の低い溶媒中ではよい収率で〔2a〕を与えたが,DMF,DMAc,ニトロメタンなどの非プロトン性極性溶媒中ではきわめて低収率であった。しかしながら,アセトニトリル中では非極性溶媒中と同程度のよい収率で〔2a〕を与えた。また反応温度が高いほど高収率であった。スルホン酸クロリドの芳香環上のρ-位置換基については,OCH3>CH3>H>Cl>NO2の順に高収率でスルホンアミド〔2a-e〕を与えた。ベンゼン中での〔1a〕と種々の第三級アミンの反応を検討した結果,1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)や1-メチルピロリジンは高収率で開環型スルホンアミド〔6a〕,〔7〕を与えたが,トリエチルアミソ,1-メチルおよび 1-エチルピペリジン,4-メチルモルホリンはほとんどスルホンアミドを与えなかった。
  • 中野 多一, 香山三 樹生, 長谷川 玲子, 永井洋 一郎
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1287-1292
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α-クロロ-γ-ブチロラクトンおよびα,α-ジクロロ-γ-ブチロラクトンのピリジンによる脱塩化水素を検討した。α-クロロ-γ-ブチロラクトンは相当する2-ブテン-4-オリドを58~85%の単離収率で与えた。α,α-ジクロロ-γ-ブチロラクトンのうち,γ-アルキル体は4-アルキリデン-2-プテン-4-牙リドを40~70%の単離収率で与えた。一方,γ,γ-二置換体は2-クロロ-2-ブテン-4-オリドを60~80%の単離収率で与えた。
  • 在間 忠孝, 松野千 加士, 松永 良治, 三橋 啓了
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1293-1298
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    交差共役ジエナミンの一種である,1,1′-ビス(メトキシカルボニル)ジビニルアミン〔1〕と種々の置換基をもつ炭素-炭素多重結合化合物との光付加環化反応を検討した。その結果,アセチレン類との反応では,ジシアノアセチレン〔8e〕のような,三重結合の両炭素に電子求引効果の比較的大きい置換基が存在する試薬のみ付加環化反応が進行し,新規7-アザノルボルネン〔9〕を与えることがわかった。また,置換エチレン類との反応においては,一および四置換体,立体障害の大きい cis-1,2-二置換体と三置換体,二重結合上のπ電子密度が極端に低下するような置換基をもつ三置換体などとは,付加環化反応を起こさず,立体障害が小さく,電子求引効果の比較的大きい置i換基をもつcis-およびtrans-1,2置換体,三置換体との反応で,新規7一アザノルボルナン〔11h~1〕,〔11o~q〕,〔11u~v〕を与えることが明らかになった。なお,生成物〔11〕のiH-NMRスペクトルの解析結果から,置換エチレン類との付加環化反応は,試薬の立体配置を保持したまま進行していることがわかった。
  • 垣内 弘, 飯島 雄, 取溜 博之, 湯佐 正己
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1299-1305
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プロピレンオキシド(PO)とジクロロ酢酸(DCA)の開環反応における溶媒効果を速度論的に研究した。用いた溶媒は,アセトニトリル,ニトロメタン,ジオキサン,テトラヒドロフラン,四塩化炭素,1,2-ジクロロエタンである。アセトニトリル,ニトロメタン,ジオキサン溶媒中の反応は,PO初濃度について一次,DCA初濃度について二次の三次速度式にしたがい,溶媒の極性による反応次数は変化はなかった。ここで求めた速度定数はPOのプロトン付加の予備平衡を含んでおり,この平衡定数の推定値からプロトン化POの環開裂の素反応速度定数を算出した。求めた素反応速度定数は,溶媒の極性因子に依存し,双極子-双極子型S.2反応に類似した反応挙動を示した。これは,POとDCAとの反応におけるプロトン化オキシラン環が原系においてあまり電荷分離していないことを示唆している。テトラヒドロフラン(THF)中の反応においては,遷移状態においてTHFが求核試剤として作用するために速度論的検討は困難であった。四塩化炭素および1,2-ジクロロエタン中の反応においては,おそらくDCA分子が会合するために,反応速度の測定はできなかった。
  • 橋本 穂, 平井 幹, 松山 義和, 永井 充, 浅川 潔, 永田 彰
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1306-1309
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Poly(oxy-1,4-pheny1eneiminoterephthaloylimino-1,4-phenylene)皮膜の機械的性質を向上させるため,延伸ならびに熱処理を行ない検討した。
    ポリマーはビス(4-アミノフェニル)エーテルとテレフタル酸クロリドをN,N-ジメチルアセトアミドを溶媒として低温溶液重縮合法により合成した。
    キャスティング法により得られた皮膜は冷延伸できないので,10%水一N,N-ジメチルホルムアミド液中で延伸した。この延伸物の複屈折は161×10-3であり,Young率,破断強度は未延伸物にくらべて11倍,4倍値が増加した。さらにこの延伸物を窒素中張力下熱処理(〔10〕)することにより,複屈折,Young率,破断強度の値は301×10-3, 8.6×1010dyn/cm2, 75.8kg/mm2となり,Young率,破断強度は未延伸未処理物にくらべておのおの21倍,11倍値が向上した。
  • 赤羽 政亮, 新井 孝昭, 金田 弘之, 藤本 さつき
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1310-1316
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    強塩基性陰イオン交換樹脂Amberlite IRA-900,および400をOH型,塩型で用いて,水溶液からのフェノール吸着につき実験した。
    吸着平衡は,塩型ではFreundlich型の等温線が成り立った。OH型では,樹脂のイオン交換容量を越えた吸着量について同様の関係が成り立った。また,フェノールを吸着させた樹脂から水,メタノール水溶液を用いた脱離実験においては,塩型樹脂ではほとんどすべてのフェノールが,OH型樹脂では上述の交換容量を越えた分のみが容易に脱離された。
    つぎに,かきまぜ槽を用いて吸着速度を求めると,フェノール濃度が小さい(約10mmol/l以下),ときは境膜拡散律速となり,内部構造の異なる両樹脂でも吸着速度は変わらない。濃度が約20m=mol/lを越すと粒内拡散律速に変わり,粒内拡散係数はIRA-900の方が400より明らかに大きい値をとった。フェノールの解離は常温の水溶液中ではきわめて小さく,溶液中から塩型樹脂には物理的に吸着されることによって除去された。OH型樹脂では,樹脂内の高いpHによってフェノールの解離が進みイオン交換に移行するが,交換容量を越えた分は物理的に吸着されていた。
  • 竹内 寛, 高橋 勝六, 水谷 真, 日比 誠司
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1317-1323
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イオン浮選と溶媒抽出を組み合わせた溶媒浮選法による希薄重金属イオンの分離を連続操作で行ない,イオンの除去率におよぼす装置・操作因子の影響を検討した。実験はイオン溶液(Cu2+・UO22+・Cr2O72-の1~5ppm)から捕集剤(ドデシルベンゼンスルホン酸および第四級アンモニウム塩)と抽出試薬(LIX64N,リン酸エステル,第三級アミン)を用いて,各イオンを分離した。
    操作的に安定な油水界面と高い分離効率が得られる塔型式の装置としては,浮選部でのガスと液の向流接触,逆コーン型の抽出部構造が適しており,また多段操作も容易である。
    イオンの分離効率はその浮選性に左右され,銅(II)の除去率は低いが, オキソイオンでは捕集剤の添加なくしても比較的高い効率が得られた。これはイオンの溶媒和と気泡界面の電位による寄与から説明でき,希薄溶液ではpHが高いときは陽イオン,低いときには陰イオンの浮選率が増大する。したがって,符号を異にするイオン性界面活性剤の捕集効果は後者の場合ほど顕著になる。なお,本実験で得られた一段操作による溶媒浮選効率の最大値は銅(II)38%,ウラン(W)92%,クロム(W)63%であった。
  • 山崎 裕康, 桑田 一弘, 久下 芳生
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1324-1329
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ガスクロマトグラフ法により,17種類の多環芳香族炭化水素(PAH)の25℃における蒸気圧{(P1)25}および蒸発熱{(ΔH1)25}を求めた。充填剤にAporane C87を用い,110~270℃の間で,10℃ごとにノナデカン(C19)の蒸気圧の対数に対して,C19の保持時間に対するPAHの保持時間の比の対数をプロットし,傾き{(1-ΔH1/ΔH2)}および切片(-C)を求めた。ついで,(1-ΔH1/ΔH2),-Cおよび25℃におけるC19の蒸気圧,蒸発熱(ΔH1)を用いて,各PAHの(P1)25および(ΔH1)25を求めたc(P1)25および(ΔH1)25は,PAHの固体の蒸気圧および蒸発熱から理論的に推定した25℃における過冷却状態の液体の蒸気圧{(P11q25)25}および蒸発熱(ΔH11q)とよく一致した。大気中におけるPAH蒸気の粉じんへの吸着熱および気相中に存在するPAHと粉じん中に含まれているPAHの割合は,(P1)25および(ΔH1)25を用いてうまく説明することができた。
  • 白樫 高史, 鶴田 加一, 柿井 一男, 栗山 光央
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1330-1334
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石炭系粒状活性炭3種を用い,Cu2+-SCN-系の吸着平衡溶液中に残存する全銅濃度およびCu2+濃度を定量した。さらに,活性炭共存下において生成するCu+をネオクプロインを用いてインペンチルアルコールに抽出定量することにより,Cu2+が活性炭によってCu+に還元されるかいなかを検討した。吸着平溶液中に残存する全銅濃度はSCN-濃度が10-2~10-1mol/;付近で最少となり,より低濃度およびより高濃度になるにしたがって全銅の残存量は増大した。このさい,SCN-の低濃度領域で残存する銅はCu2+であり,高濃度領域では活性炭を添加しない場合にもCu+が生成した。また,ネオクプロインを用いるCu+ の抽出の結果から,SCN-の低濃度領域(5×10-3mol/l以下)では活性炭によってCu2+がCu+に還元されることが明らかとなった。以上の結果から,SCN`一濃度が10mimol/l以下では,Cu2+は活性炭によってCu+に還元され,生成したCu+のほとんどすべてがCu(SCN)として吸着あるいは沈殿するものと結論した。SCN端濃度が1mol/l以上の領域においては活性炭の有無にかかわらず[Cu(SCN)2]-が生成し,SCN柵濃度の増加につれてCu(SCN)あるいは[Cu(SCN)2]-の吸着率が低下するものと考えられる。
  • 八尾 俊男, 藤尾 佳史, 和佐 保
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1335-1337
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The potentiometric bienzyme electrodes for glucose and choline were developed. The enzyme electrodes were constructed by cross-linking glucose oxidase or choline oxidase and peroxidase with bovine serum albiimin using glutaraldehyde on a platinum plate electrode silanized with (γ-aminopropyl) tri-ethoxysilane. It was found that the electrodes were sensitive to redox potential which depended on the change in the concentration ratio of hexacyanoferrate(III) to hexacyanoferrate(II) in the enzyme layer -caused by the enzyme reactions. A plot of the potential vs. log[substrate] gave a straight line for 0.02-0.6mmoldm-3 glucose and 0.007-0.18 mmol·dm-3 choline, respectively. The response time was only 10 s and electrodes could be used repeatedly at room temperature for at least two months.
  • 矢沢 哲夫, 田中 博史, 江口 清久
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1338-1340
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    We determined the number of silanol groups of four porous glasses with different pore structures by means of the Grignard method. They were prepared from borosilicate glasses by acid-leaching. The number of silanol groups was 1.945 mmol/g for the glasses with the pore radius of about 100 A and the pore volume of 0.938 ml/g, but was 0.681 mmol/g for those with the pore radius of about 20 Å and the pore volume of O.263 mug. The latter was about one-third as small as the former. On the other hand, the TGA measurements for both glasses gave almost the same weight loss due to the condensation of silanol groups. It is considered that the glasses with smaller pores give numbers of silanol groups lower than those expected from the surface area of micropores because the diffusion of Grignard reagent molecules into micropores may be inhibited.
  • 工藤 節子, 岩瀬 秋雄
    1984 年 1984 巻 8 号 p. 1341-1344
    発行日: 1984/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The chemical equilibria of bis(trifluoroacetylacetonato)nickel(II) in dimethyl sulfoxide were studied on the basis of the concentration dependence of UV spectrum, the molar conductivity curve, and the d. c. polarographic behavior. The chemical equilibria considered were
    [Ni(bi-tfac)2]⇔ [Ni(bi-tfac)(uni-tfac)] ⇔Ni(tfac)++tfac-,
    where bidentate and unidentate are abbreviated as bi- and uni-, respectively. The chemical equilibria shifted upon the addition of supporting electrolyte, O.05 mol·dm-3 TBAP.
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