日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1984 巻, 9 号
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  • 中田 淳一, 井村 健
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1347-1351
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    バクテリオクロロフィルa (以下 Bchl と略記する) の溶液中における光イオン化と, 水和物微結晶と思われる固体 Bchl の光伝導について研究した。脱酸素した溶液に可視, 近赤外光を含む白色フラッシュを照射すると三重項状態分子 (以下 3Bchl と略記する) を生じ, その減衰とともにイオン種 (以下Bchl± と略記する) による光電流が立ち上がった。Bch± の立ち上がりと 3Bchl の減衰はともに一次反応で, 前者の速度定数は後者のそれの約2倍に等しかった。イオン化は 3Bchl 間の電子移動によるもので, その速度定数は 1×108mol-1・dm3・s-1と見積られた。窒素レーザー光 (337nm) 励起で直接イオン化による立ち上がりの速い光電流が観測された。
    固体 Bchl の光伝導が観測され, キャリヤーの発生機構は一重項励起子の解離によると考えられた。
  • 久保田 昇, 佐藤 栄一
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1352-1356
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸浴からのルテニウムめっきについて, 浴成分として用いたピロリン酸二水素カリウム, ホウ酸および酢酸ナトリウムのルテニウム電析時の役割を電気化学的な方法により検討した。また, めっき皮膜面の改善の効果について, 電子顕微鏡観察により検討した。硫酸ルテニウム(IV)溶液からのルテニウム析出の電位は, 硫酸単独溶液の水素発生電位より貴で, 水素発生反応が抑制されることが認められた。また, ピロリン酸二水素カリウム, 酢酸ナトリウムの含有によって電位はさらに貴に移行した。ピロリン酸二水素カリウムは H+ 還元の限界電流密度を大きくし, 電極表面の pH の変動をおさえる緩衝作用が認められた。また, ピロリン酸二水素カリウムはルテニウムめっきの浴成分としてはクラックを生じ電着応力が大きいことが推察されるが, 平滑度の改善に顕著な効果が認められた。ホウ酸は電極面に吸着して活性面を小さくし, このため限界電流密度を低下させるが, ルテニウム電析のさいの密着性と電着応力の改善に効果があることが認められた。酢酸ナトリウムは pH 上昇に対しては緩衝作用を示さないが, 緻密なルテニウム結晶面を得る浴成分としての効果が認められた。また, 三成分を混合して用いた場合は, 電着応力の改善, 密着性および平滑化に顕著な効果を示すことがわかった。
  • 神鳥 和彦, 新井 浩, 今野 紀二郎, 北原 文雄
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1357-1362
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    鉄粉と塩酸存在下において, 水酸化鉄(III)ゾル粒子をシードとしてマグネタイト (Fe3O4) 超微粒子を調製する方法をさらに発展させる目的で, この方法を水酸化鉄(III)ゾル粒子調製とマグネタイト粒子む調製段階に分離し,Fe3O4 超微粒子 (直径100Å 以下) を得る反応条件に関し詳細な検討を行なった。第一段階として, 表面状態と分散安定性の異なる3種類の水酸化鉄(III)ゾル粒子 (Sol A, B, C) を, 0.018mol・dm-3 塩化鉄(III)水溶液を煮沸水中に添加する方法 (Sol A) または 1wt% 非イオン活性剤 (PE-68) を溶解した煮沸水中に添加する方法 (Sol C) により調製した。分散安定性のよいゾルを得る目的で, L-アラニンと塩酸により Sol A の解こう操作を行なった (Sol B)。ゾル粒子の直径は Sol A, B, C についてそれぞれ 70±20, 70±20, 40±10Å であった。第二段階として, 第一段階で調製した水酸化鉄ゾル (Sol A, B, C) 所定量を, 鉄粉と塩酸の激しい反応が終了する20分後に添加し, 所定時間還流を行なった。なお全反応溶液量は 240ml 一定で, 20g の鉄粉存在下で行なった。その結果, マグネタイト粒子の収量は水酸化鉄(III)ゾル粒子濃度にほぼ比例して増加した。また生成するマグネタイト粒子の直径は,用いる水酸化鉄(III)ゾル粒子の表面状態と分散安定性に依存した。マグネタリイトの超微粒子 (直径50±10Å)が Sol C からつぎに示す反応条件により生成することがわかった。すなわち, 反応溶液 240ml 中において, 鉄粉 20g, ゾル粒子濃度 4×10-3mol・dm-3, 反応温度 100℃ で還流時間を2分以内で行なう条件である。
  • 頓行 宏, 伊丹 正郎, 堀田 和彦, 河本 洋二
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1363-1366
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化チタン(IV)を加水分解して得たチタンのヒドロゾル溶液に, 塩化白金酸, 塩化ルテニウムならびに各種アルカリ水酸化物, MOH(M:Li, Na, K, Rb, Cs) を添加し, その混合物を減圧乾燥して得たヒドロゲルに熱処理を施して, 白金とルテニウムを含有した酸化チタン(IV)ゲルを調製した。調製されたゲルは, 500W 高圧水銀灯による光照射下で, 水-メタノール溶液から水素ガスを発生させる光触媒機能をもつことがわかった。また, 水素発生速度は, 触媒調製過程で添加されたアルカリ水酸化物の量やアルカリの種類によって変化した。粉末X線回折法によって, 調製された触媒を分析した結果, 酸化チタンゲル中に, アナタースおよびルチル型の微結晶質体が形成されており, その割合は, 添加されたアルカリ水酸化物の種類や量によって変化することがわかった。また, 調製されたゲルの光触媒能は, そのゲル中におけるアナタース型酸化チタン(IV)の存在割合が増大するにつれて増大することもわかった。
  • 長原 滋, 内本 勤, 矢野 弥, 土肥 義治
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1367-1371
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イソプレンの触媒的ヒドロアルミネーション反応における位置選択性をジクロロビス(η-シクロペンタジエニル)チタン(IV)[TiCl2(cp)2]触媒を用いて調べた。[TiCl2(cp)2] 触媒は, 高い活性で 2-メチル-1-ブテン [3] を選択的に生成するが, その選択性は, イソプレンと LiAIH4 とのモル比 ([Isoprene]/[LiAlH4]) の増大とともに 41% から 76% まで向上した。反応の経時変化から, LiAIH4に1当量のイソプレンが反応する初期過程では低い選択性を示したが, 2当量目以降の反応では [3] のみが選択的に生成した。別途合成したアルケニルおよびアルキルアルミニウム水素化物を用いてイソプレンのヒドロアルミネーション反応を行なったところ, 90% 以上の選択性で [3] を生成することを見いだした。上記の結果をもとに, 本反応の位置選択性に影響する因子について考察した。
  • 朝田 誠一
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1372-1376
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    磁気ディスクなどの磁気記録媒体に用いられる鉄磁性粉は, 酸化物系磁性粉 (γ-Fe2O3,Coエピタキシャル γ-Fe2O3, CrO2) にくらべて飽和磁化 (σs) ならびに保磁力 (Hc) が大きい。このため, トラック密度ならびに記録線密度を高くできるので高密度磁気記録蝶体用材料として注目されている。しかしながら, 鉄磁性粉には耐食性がわるいという問題点がある。この問題点を解決するために, トルエン中に鉄磁性粉を分散させ加温下で空気を吹き込み鉄磁性粉の表面を酸化する方法 (トルエン中酸化法) について検討した。その結果, 90℃ のトルエン中で鉄磁性粉を酸化することにより耐食性のよい鉄磁性粉が得られた。90℃ のトルエン中で酸化した鉄磁性粉を, 60℃, 90% R.H. の空気中で腐食試験を行なったさいの飽和磁化の減少は, 空気中で自然酸化した鉄磁性粉の約 1/4 である。トルエン中酸化で得られた酸化被膜は, nmオーダーの膜厚をもつスピネル型酸化鉄であり, 弱い磁性を示す。腐食試験によって生成する腐食生成物はα-FeOOH と Fe(OH)3との混合物である。
  • 斎藤 正明, 谷崎 良之
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1377-1382
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    濃度比マッチング法の解析に適した化学成分の組み合わせを選択した。二つの試料間の相関数は濃度比マッチング法によって得られる。この相関数を評価するための新しい判定基準を提案した。帯水層が共通している井戸試料より大きな値をとる相関数は高い相関をもつと推測される。解析に適した化学成分の組み合わせを選択するために試料水中の化学成分濃度間の対数相関係数を比較した。主要化学成分 (Na, Mg, Ca, Cl, 蒸発残留物) 間には相互に高い相関が認められた。一方, 微量化学成分 (Al ,As, Sm, Mn, W, V, Rn) 間には相互に相関は認められなかった。主要化学成分グループと微量化学成分グループをそれぞれ濃度比マッチング法で解析し, 試料間の相関数を比較した。主要化学成分グループで高相関の組の大部分は距離の近い井戸であるか, または同じ標高のストレーナーを有する井戸であった。しかし微量化学成分グループにはこのような結果は認められなかった。主要化学成分は帯水層間の関係を表現するのに適した指示元素であった。また, これらの結果は共通した帯水層における相関数が参照の相関数となりうることを支持している。
  • 合田 四郎, 山崎 秀夫, 森重 清利, 北出 文子, 西川 泰治
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1383-1392
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    6-ヒドロキシ-3H-キサンテン-3-オンの誘導体13種 (フルオレセイン, フェニルフルオロン, ピロガロールレッド, プロモピロガロールレッド, マーキュロクロム, 4,5-ビス (アセトキシメルグリオ) フルオレセインおよび各種ハロゲノフルオレセイン) の吸収, 蛍光, 低温りん光 (LTP), 常温りん光 (RTP) および熱活性化遅延蛍光 (TADF) スペクトル, 蛍光の量子収率 (φf),各ルミネセンスの寿命 (τ) を測定し, 三重項の収率を算出し, これらキサンテン色素の吸収, 発光過程を速度論的に解析した。また, 吸収スペクトル, 振動子強度および φf から蛍光性分子の化学種を同定した。臭素, ヨウ素, 水銀原子を含むキサンテン色素はその内部重原子効果のため三重項の収率が増大し, LTP, RTP および TADF 発光が優位であることを明らかにした。また, 各キサンテン色素の φf, 蛍光の感度指標 (FSI), りん光放射の速度定数 (kp), RTP および TADF の相対強度からこれらキサンテン色素のルミネセンス分析法を考察した。
  • 佐竹 弘, 池田 早苗
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1393-1397
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セレン酸および亜セレン酸-セレン酸混合物中の両成分を簡単かつ精度よく電流滴定する方法を開発した。
    回転白金電極 (+0.75V vs. SCE) を指示電極飽和カロメル電極 (SCE) を対極として, 滴定剤であるチオ硫酸イオンの酸花電流を測定する電流滴定法により, 2~47mg のセレン酸ナトリウムを 0.1% 以内の相対誤差と変動係数で定量することができた。また, 亜セレン酸に対してセレン酸が O.5 倍モルから 40 倍モル含む混合試料溶液中の両成分が 0.3% 以内の相対誤差と変動係数で精度よく示差定量できることがわかった。セレン酸を定量する場合には, 6mol・dm-3 塩酸溶液で 6~7 分間煮沸還元して定量的に亜セレン酸としたのち, 4mol・dm-3 塩酸溶液として滴定するのが適当であった。亜セレン駿とセレン酸混合物を示差定量する場合には, 4mol・dm-3 塩酸溶液を用いてセレン酸中の亜セレン酸を定量し, 別のアリコートを用いてセレン酸と同様な方法によりセレン酸と亜セレン酸の合計量を求めた。これら2回の滴定値の差からセレン酸を定量した。本法は金属イオンの影響が少なく, セレン酸を簡単に定量できるうえに, 幅広い混合比の亜セレン酸とセレン酸混合物中の両成分を示差定量できるという特徴をもっている。
  • 和佐 保, 秋元 健吾, 八尾 俊男, 村尾 澤夫
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1398-1403
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エポキシ樹脂含浸網目ガラス状炭素電極の表面アミノ基をアンカーとする橋かけ膜型ラッカーゼ電極とラッカーゼ固定ナイロンネジト電極を開発し, 基質 (ヒドロキノン, p-フェニレンジアミン, ノルエネフリン, エタムシラートなど) に対する応答特性について検討した。測定は, 電極上での酵素反応 (Benzenediol+1/2 O2→Benzoquinone+H2O) によって生成する酸化型基質を電流法 (電極電位:-O.1V vs. SCE) によって追跡した。電極応答は 10-7~10-4mol・dm-3 の基質濃度範囲で直線関係を示し, 基質の定量が可能なことが認められた。さらに電極応答は, 基質分子の酵素的-電気化学的サイクリング反応による化学増幅 (10~20倍) を含むことを明らかにした。酵素電極は優れた安定性をもち, 橋かけ膜型ラッカーゼ電極は 60 日経過後で約65%, ラッカーゼ固定ナイロンネット電極は6箇月後で約 80 %の活性を保持した。電極応答時間は5秒以内であり, きわめて速い応答特性を示した。さらに, 医薬品試料中のノルエピネフリンとエタムシラートの分析に応用し, アスコルビン酸がまったく妨害を与えないこと, および優れた感度と再現性 (2% 以内) を示すことを明らかにした。
  • 石野 二三枝, 宗森 信
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1404-1408
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸アンモニウム鉄(III)と塩化ビスマス(III)との等モル混合液に水酸化ナトリウムを加えて生成した混合水酸化物をクロム(VI)試料液中に加え pH6~8 においてクロム(VI)を吸着させた。炉過後, オルトリン酸を用いて混合水酸化物中の鉄(III)を溶解し, pH6 になるまで水酸化ナトリウムを滴下してリミン酸鉄(III)の沈殿としたのち, 炉過して回収液を得た。水溶液 2~51, 人工海水 1l の試料液中のクロム(VI)を 20ml の回収液申に濃縮回収した。ジフェニルカルバジドにより呈色定量した場合の平均回収率は水溶液の場合, 91.6% (n=10), 人工海水では 90.9% (n=5) であり誤差はともに 10% 以内であった。1mg/l のクロム(III)は混合水酸化物に 100% 吸着されたが, 脱着時には沈殿中に残存し, 回収液中には認められなかった。
  • 西田 晶子, 吉本 良夫, 福田 晴喜, 藤崎 静男, 梶返 昭二
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1409-1413
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    9-プロモ-1-メチルフルオレン[4]とジメチルスルフィドとから得られるスルポニウム塩[5]にアルカリを作用させ, S-イリドの生成と転位を経て, 1-メチル-8-(メチルチオメチル)フルオレン[7]を合成した。ついで[7]をエタノール中 Raney ニッケルで還元して 1,8-ジメチルフルオレン[8]となし, さらに酸化して 1,8-ジメチルフルオレノン[1]を得た。[1]にアリールリチウムを作用させて種々の 9-アリール-1,8-ジメチルフルオレン-9-オール誘導体を合成し, さらにこれらをヨウ化水素酸で還元して 9-アリール-1,8-ジメチルフルオレン誘導体とした。ついでこれらの C9-CAr 結合の回転障壁を DNMR 法や回転体の異性化の速度定数から求めた。すなわち, 1,8-ジメチル-9-(o-トリル)フルオレン[12]では, その回転障壁はΔGap→sp=19.7kcal/mol, ΔGsp→ap=20.0kal/mol, また ,8-ジメチル-9-(2-メチル-1-ナフチル)フルオレン[14]では, ΔGap→sp=34.1kcal/mol, ΔGsp→ap33.8kcal/mol と見積られた。また, [12]と 9-(o-トリル)フルオレン[15]や 1-メチル-9-(o-トリル)フルオレン[16]との両配座間の平衡定数や, C9-CAr 結合の回転障壁などを比較検討した。
  • 鈴木 仁美, 金崎 裕之, 佐竹 浩
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1414-1417
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一連の脂肪族および芳香族エーテル中でヨウ化メチルマグネシウムと金属ガリウムを溶媒還流下に反応させ, アルキル移動反応によるトリメチルガリウムの生成におよぼす溶媒の効果について検討した。本反応は反応温度に強く支配され, 沸点の低い (<100℃) エーテル中では反応があまり進行せず, 沸点が 140℃ 前後のエーテルを用いると反応率の顕著な向上が認められるが, さらに高沸点のエーテル中では逆に収率が減少する。今回検討した19種のエーテルの中ではジブチルエーテルを用いた場合にもっとも好結果が得られることがわかった。芳香族エーテルは二次反応をもたらすため, 溶媒として使用できない。
  • 須藤 信行, 老久保 弘美, 奥脇 昭嗣, 天野 杲, 岡部 泰二郎
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1418-1424
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Yalloun 炭の水酸化ナトリウム溶液中における酸素酸化においてシュウ酸の生成機構を解明する第一段階として, Yallourn 炭とその中間生成物 (残留炭, 水不溶酸, 水可溶芳香族酸, 酢酸) の転化率の経時変化を調べるとともに, その酸化を行ないシュウ酸の生成過程について検討した。また, 質量スペクトルから中間生成物とシュウ酸生成との関連性を考察した。Yallourn 炭にはヒドロキシル基酸素 (10.3% d.a.f.) やカルボキシル基酸素 (5.7% d.a.f) が比も較的多く, 反応性の高さが示唆された。残留物および水不溶酸転化率は反応時間とともに急激に低下した。また, 水可溶芳香族酸および酢酸は反応時間15分でそれぞれ極大転化率 28% および 23% に達した。さらに, シュウ酸および CO2 転化率は反応時間とともに増加し2時間で 42% および 44% に達した。酸化初期の反応速度は大きく, 15分における CO2 転化率は2時間における値の 1/2 であった。残留炭, 水不溶酸, 水可溶芳香族酸いずれの酸化においてもシュウ酸転化率は高く, 水不溶酸において 46% ともっとも高かった。CO2 転化率との比もいずれもほぼ1であった。また, シュウ酸は 275℃以上では酸化されるが, 水酸化ナトリウみ濃度 1mol・kg-1 においてはほとんど酸化されなかった。質量スペクトルは中間生成物とそれから生成するものとでは後者のスペクトルの方が単純になり, 酸化生成物の変化とシュウ酸生成との関連性が推察された。二, 三のモデル化合物の酸化においてもシュウ酸転化率は高く, とくに酢酸からは転化率 75% であった。本法は塩基触媒自動酸化であり, これらの結果から, Yallourn 炭の酸化におけるシュウ酸の生成過程を示す経路を提案する。
  • 白岩 正, 宮崎 英哉, 井川 明彦, 黒川 秀基
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1425-1430
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-アセチル-DL-フェニルアラニンのメチルアンモニウム(MA), エチルアンモニウム(EA)および1,1,3,3-テトラメチルブチルアンモニウム(TMB) 塩のラセミ体構造について調べ, それらの塩の優先晶出法による光学分割の可能性について検討した。これらの塩の融点の二成分系状態図はいずれもラセミ化合物のパターンを示した。しかし, EA ならびに TMB 塩の状態図において, 共融点での L-塩のモル分率は約 0.55 であるので, これらの DL-塩は安定性の乏しいラセミ化合物を形成しており, そしてこれらの塩はラセミ体構造の転移現象を示す可能性があると考えられる。283K におけるラセミ化合物の生成自由エネルギーは, DL-MA 塩では負の値を示したが, DL-EA ならびに TMB 塩では正の値を示した。したがって, DL-EA ならびに TMB 塩は室温付近ではラセミ化合物として存在しないと推定した。このことは赤外吸収スペクトルならびに溶解度の測定結果からも支持された。そこで, 優先晶出法による光学分割を 10℃, エタノール中で試みた。その結果, DL-EA ならびに TMB 塩の光学分割は可能であり, 光学純度が 90% 以上の L-塩を得ることができた。以上の結果から, DL-EA ならびに TMB 塩は融点付近ではラセミ化合物を形成しているが, 室温付近ではラセミ混合物として存在することが明らかになった。
  • 原 武生, 筒井 哲夫, 斎藤 省吾
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1431-1434
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    全芳香族ポリアミドであるポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)(PPIA) とポリ (p-フェニレンテレフタルアミド)(PPTA) の導電性をイオン伝導と電子伝導の二つの立場から検討した。導電率の温度依存性はある温度を境として低温側と高温側とでは異なり, PPIA の場合, その温度は 400Kで, 高温側, 低温側の見かけの活性化エネルギーはそれぞれ 105, 25kJ・mo1-1であった。吸湿が導電率におよぼす影響ならびに光導電性の測定をもとにそれぞれの領域の導電キャリヤーについて検討した。全芳香族ポリアミドでは脂肪族ポリアミドには見られない電子伝導性が見いだされた。一方, イオン伝導も同時に存在するが, それは高温側で優勢であり, 低温側では電子伝導が優勢であることが明らかになった。
  • 竹村 年男, 丸山 剛, 中塩 靖三
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1435-1441
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    マンガン-第一級アミン-アルコール系触媒を構成する化合物の種類とキシレノールの酸化重合反応における重合活性との関係を検討した。
    pKaが9以上の第一級アミンではいずれも重合活性があり, かさ高いアミンでは分子量の低い重合体を与え, マンガンと分子状キレートを形成するアミンでは分子量の高い重合体を与える。エチレンジアミンにかぎらず 2-アミノエタノールでも高い重合活性を示す。メタノール, エタノール, エチレングリコール, 2-メトキシエタノールなどのアルコール類は重合活性を示すが, t-ブチルアルコールなどかさ高い構造のアルコールは重合活性がない。メタノール-マンガン系が高い重合活性を有するが, メタノール可溶マンガン化合物との組み合わせが効果が高い。
  • 坂本 宗仙, 小原 奈津子, 若林 宗宏, 中山 文孝
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1442-1451
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェニル=グリシジル=エーテル(PGE) および p-トリル=グリシジル=エーテル(TGE) で処理した絹および羊毛を加水分解し N(O)-トリフルオロアセチル=ブチルエステルに誘導体化したのち, GCMS 分析を試み, アリール=グリシジル=エーテルの, チロシン, セリンへの付掬体およびリシンへの一付加体と二付加体を, またシングルイオンモニタリング法により PGE 処理羊毛中にシステイン付加体を見いだした。さらに, TGE 処理絹で Na-(p-トリルオキシヒドロキシプロピル)グリシンおよびアラニンの生成が認められ, N末端アミノ基が TGE と反応することが明らかになった。この他, アリール=ジヒドロキシプロピル=エーテル, (アリールオキシヒドロキシプロピル)アミンおよびビス(アリールオキシヒドロキシプロピル)アミンを加水分解物中に見いだし, その生成機構について考察した。
  • 金谷 冨士雄, 根来 健二, 岡田 英治
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1452-1458
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-アルコキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン=2-オキシドをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF) 中でトリメチルアミンで処理し, 長鎖アルキルホスホリルコリン [2], n-CmH2m+1OP(O)(O-)OCH2CH2・N+(CH3)3 (m=10, 12, 14, 16, 18;以下 Cm-PC と略記する) をエチレングリコールからの通算収率 37~45% で合成した。本法は反応工程が短いうえに, 安価な試薬を用いて容易に大量合成でき, 通算収率も高いなど, 他の方法よりも優れていた。化合物 [2] は一水和物として得られ, 水, エタノール, クロロホルムによく溶け, ベンゼン, ヘキサン, エーテルには不溶のわずかに吸湿性の白色結晶であった。電導度測定と滴定曲線から水溶液中, pH1.5~12.2 の範囲で両性イオン形の中性電解質として挙動することが示された。[2] は水溶液中で界面活性を示し, ミセル臨界濃度での表面張力 (γCMC) は3 9~43dyn/cm であった。C14-PC と C18-PC は Orange OT に対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム (DBS) および硫酸ドデシルナトリウム (SDS) よりも大きな可溶化力を示した。乳化力, 浸透力, 分散力についても [2] は良好な性質を示した。両性界面活性剤 [2] および (ドデシルジメチルアンモニオ)アセタート (C12-BT) は Escherichia coli (大腸菌) とStaphylococcus aureus (ぶどう状球菌) に対してほとんど抗菌性を示さなかった。しかし AsPergillus oryzae(日本コウジかび) に対して, C14-およびC16-PCがヘキサデシルトリメチルアンモニウム=プロミド (CTAB) およびペソタクロロフェノールナトリウム塩 (PCP-Na) と同程度の抗かび性を示した。
  • 近藤 昭裕, 伊藤 隆彦, 岩月 章治
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1459-1464
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    薪規に合成したp-(ペルフルオロノニル)フェニル=イソシアネート [6] によるセロハンおよびナイロンフィルムの表面処理を行なった。元素分析により決定した処理後のフィルムのフッ素含有率は最大で 0.2% と低いが, ESCA により決定したフッ素と炭素の存在比はセロハンでは 3:5, ナイロンでは 1:5 にも達した。処理後のセロハンおよびナイロンフィルムは, それぞれ109°および96°にも達する大きな水の接触角と72°および58°にも達する大きな 1-プロモナフタレンの接触角を示した。これらのことは, イソシアネート [6] によって, セロハンおよびナイロンフィルムのごく表面のみが修飾されることを示している。イソシアネート [6] により表面処理したセロハンおよびナイロンフィルムの透湿度は未処理のフィルムよりも小さかった。
  • 阿部 幸子
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1465-1470
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    集積培養法の一種である土壌環流法を応用して, 土壌による LAS 消失過程を追求することを試みた。生分解指標としてはフェロイン試薬に対する活性物質 (FRAS), および全有機炭素量 (TOC) を用いた。LAS 環流による FRAS の消失は,土壌への吸着および生分解により起こり, LASの濃度が高い場合には, 吸着後に誘導期間を経て生分解が起こる。LAS の生分解性はは, アルキル鎖の影響をうけ, C10~13LAS は C12LAS にくらべ誘導期間がやや短かかったが, 分解速度はほぼ同じであった。また生分解による TOC の消失は, FRAS の消失よりかなり遅れて起こり, 完全に消失するのには長期間を要した。
    土壌の化学的・物理的性質は, LAS の消失に影響を与え, 本報で用いた畑土壌A (植壌土), B(砂壌土)では, 吸着性・生分解性とも, A>Bであった。
  • 大石 修治, 橋本 巌, 楯 功
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1471-1472
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    For the growth of NdAl3(BO3)4 crystals, BaB4O7 was chosen as a flux on the basis of the guide proposed by the authors.
    NdAl3(BO3)4 crystals were grown by slow cooling of BaB4O7 flux in which Nd2O3, Al2O3and B2O3 were dissolved as solutes. The growth was conducted by heating mixtures at 1150°C for 10 h followed by cooling to 600°C at a rate of 5°C/h. Crystals grown in BaB4O7 flux were hexagonal rod in shape, up to 7.1×1.5×0.7 mm in size, bluish purple in color and transparent. It was shown that the flux chosen was suitable for the growth of objective crystals.
  • 八代 仁, 竹下 淳一, 奥脇 昭嗣, 岡部 泰二郎
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1473-1475
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Isocyanic acid can be fixed quantitatively with an excess methanol solution of sodium methoxide or sodium hydroxide as sodium cyanate. Solubility of sodium cyanate in methanol-diethyl ether was measured. When volume ratio of methanol to diethyl ether was below 1/3, sodium cyanate was sparingly insoluble in the mixed solvent. Thus, sodium cyanate can be precipitated sufficiently adding three times volume of diethyl ether to that of methanol. After filtration of sodium cyanate, excess sodium methoxide or sodium hydroxide is titrated with O.1 mol⋅dm-3 hydrochloric acid. The content of HNCO in the purified isocyanic acid was 99.4% or more by this method.
  • 吉村 長蔵, 長谷川 太一, 西口 年彦
    1984 年 1984 巻 9 号 p. 1476-1477
    発行日: 1984/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Conductometric titration of organic halides such as benzyl chloride, benzoyl chloride and hydrogen chloride with EDTA were investigated in N, N-dimethylformamide(DMF). The observed molar ratio between these chlorides and EDTA was 1: 1.
    But use of other solvents(DMSO, pyridine, etc.) did not give s ignificant inflection points. Less than 1 viv% of water gave no influence on this method, but the existence of chloride and metal ions gave positive error. The applicable concentration range of the method was about from 1×10-3 mol⋅dm-3 to 5×10-2 mol⋅dm-3.
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