日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1985 巻, 9 号
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  • 円満字 公衛
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1639-1643
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    銅クロロフイリン(Cu-chln)とフラビンモノヌクレオチド(FMN)との複合体の分子構造を1H-,13C-,31P-NMR法により推定した。FMNにおける内部運動の有無を推定する手段としてFMN単体の13C-緩科時間を測定した。リボース炭素のみかけの回転相関時間はイソアロキサジン環の炭素に帰着するそれよりもわずかばかり短く,リボース鎖はいくぶん内部運動している。メチル基は4×10-11sの相関時間で内部回転している。1H-縦緩和時間のデータから,Cu-chlnとFMNの複合体の回転相関時間はすべてのプロトンについて同一の値をもつので,この値を13C-NMRのデータの解析に用いた。Cu-chln-FMN複合体のFMN炭素の縦緩和時間を測定した。観測した13C-T1を仮定した構造から推定したT1と比較して複合体の構造を決定するコンピューターシミュレーションを行なった。この方法において,Cu-chlnのクロリン環とFMNのイソアロキサジン環の間の角を0°から90°まで変えたところすべての角が可能であった。しかし分光データはクロリン環がイソアロキサジン環と平行でむあることを示唆した。その結果,環一環距離は4.OÅであると推定された。1H-NMRの横緩和時間を使って電子スピンがCu-chlnのCu2+からFMNプロトンに流入していることを確認した。このことは電荷移動錯体がCu-chlnとFMNの間に形成されていることを示唆する。
  • 三浦 則雄, 八島 勇, 山添 〓
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1644-1649
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プロトン導電体のうちアンチモン酸が熱的に比較的安定で,水蒸気分圧により導電率が変化する特性を生かして,100~200℃の中温域で作動する湿度センサーを試作した。アンチモン酸だけからなる素子では応答は遅いが,ジフェニルシランジオールをバインダーとして2wt%添加し,素子を多孔質化することにより,応答速度は大幅に増加した。本素子は,通常の多孔質セラミックス型素子では困難な低湿度の検知が可能であった。また,アンチモン酸のH+の一部をNa+で交換した試料を用いることにより感湿特性を変化させうることがわかった。素子の経時安定性については,作動初期にはヒドロキシル基の生成によりドリフトを起こすが,一定時間後には安定作動した.さらに,本素子では100~150℃でインピーダンスの温度依存性が小さいため,正確な温度制御を必要としない特徴も有している。
  • 竹中 安夫, 中谷 宗嗣, 杉森 修一, 内田 広幸
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1650-1655
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    含水酸化チタン(IV)によるヒ酸イオン(AsO43-)の吸着特性を調べた。吸着はFreundlich型であった。吸着量はpHに依存し,低pH域ほど大きいが,通常の両性無機イオン交換体によるC1-あるいはNa+の吸着とは異なり,等吸着点(pH5付近)においてもいちじるしく多大であった。吸着量は合水酸化チタン(IV)の結晶形に依存し,pH7ではアナタース形が無定形よりもはるかに多大であったが,pH2では無定形がやや大きかった。Cl-の10倍量共存(Cl/As=10/1,重量比)は,pH2ではAsO43-の吸着速度を非共存の場合にくらべてわずかに低下させたが,pH7では約30倍向上させ,触媒的効果が認められた。吸着反応はそのエンタルピー変化(ΔH)が+1.62kcal・mol-1であることから吸熱反応であり,通常のイオン交換吸着(発熱反応)とは逆であった。ClO4-,SO42-,PO43-およびSiO44-の吸着量がpHに依存する関係を調べ,AsO43-の吸着とあわせて考察し,これらのオキソ酸イオンの含水酸化チタン(IV)による吸着には,イオン交換的と非イオン交換的の2種の機構が複合していると推測した。
  • 藤田 一紀, 武内 瀞士, 山下 寿生
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1656-1660
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    醸化チタン(IV)-アルミナ系複合吸着剤の280℃の高温水におけるコバルト吸着特性を調べた。吸着剤はチタン(IV)イソプロポキシドおよびアルミニウムイソプロポキシドを出発原料とし,それぞれ加水分解したのち酸化物とし,混合,混錬,押出し造粒,焼成の工程で調製した。吸着剤の比表面積は酸化チタン(IV)のモル分率が高くなるにしたがい減少したが,コバルト吸着量は増大した。酸化チタン(IV)のモル分率0.55,焼成温度500℃で得られた吸着剤の280℃における3ppmコバルト水溶液(pH4.445)での平衡吸着量は110μeq・g-1であった。カラム法によって求めた吸着措の長さは空塔速度10h-1,線速度3.4m・h-1の条件で62.5cmであった。カラム吸着実験209時間後の吸着剤のアルミナはベーマイトが生成し,アナタース型酸化チタン(IV)のみかけの結晶粒子径は初期の18.1nmから32.6hmに増大していた。
  • 阿部 幸子, 妹尾 学
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1661-1665
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    土壌中の腐植物質に対する陰イオン界面活性剤の吸着性を検討するため,腐植の構成成分であるフミン酸へのLAS,AOSおよび硫酸アルキル塩(SAS)の吸着特性について調ベた。これらの活性剤の平衡吸着量はCMCで飽和値をとるが,CMC以下では濃度に依存し,Freundlichの吸着等温式が適合した。吸着等温線の傾き(1/n)は,いずれの界面活性剤でもほぼ等しく,1/nは0.75~0.83であった。この値は,腐植質土壌の場合に得られた値とほぼ一致する。また吸着性におよぼすpHの影響はほとんど認められなかった。SASの同族体やC10~13LASへの平衡吸着実験から,アルキル鎖長が増加すると吸着量は増大し,C10~C14のSASについてはTraubeの法則が成立した。また,吸着に対する温度の効果はきわめて少なかった。
  • 林 弘, 小西 貴史, 岡崎 達也
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1666-1670
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンゾフェノンアジンの加水分解によるヒドラジンの生成について,まず均一系で有効な酸とその所要量を調べた結果,酢酸のような弱酸では溶媒的過剰量存在しないとほとんど反応しないが,有機強酸のp-トルエンスルホン酸は少量で硫酸に匹敵する活性を示すことがわかった。そこで,不溶性固体酸としてスルホン酸樹脂の応用を試み,とくに適量の水を吸蔵するMR型樹脂を高濃度のアジンが溶存するトルエン中に懸濁させると,相互不溶の水とアジンが表面酸点で効率よく接触して定量的にヒドラジンに変換できることを見いだした。親水媒体中では反応がおそく,スルホン酸基が強く溶媒和されて酸が弱められると考えられるが,疎水媒体中では90℃,わずか1時間で95%という高いアジン変化率を得る。しかし,樹脂の含水量には適値があって,粒内のマクロ孔もすべて水でみたすとまったく反応しないので,液水に浸潰演別した樹脂の乾燥特性曲線から含水状態を考察した結果,MR型樹脂を構成する親水性微小球が水を吸蔵して膨潤し,かつ微小球の間隙のマクロ孔が空孔である条件がもっとも有効であると結論した。
  • 沖本 光宏, 千葉 俊郎, 高田 善之
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1671-1675
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カルボニル化合物を展開Raneyニッケル(以下Ra/Niと略記する)とともに水-メタノール中に懸濁させ,これに硫酸水溶液を滴下することによりケトンからは相当する第二級アルコールが,アルデヒドからは第一級アルコールが高収率で得られた。そのうちとくにベンゼン環に直結したカルポニル基は,過剰のRa/Niを用いたさいメチレン基にまで還元された。同様に,炭素-炭素二重結合も容易に水素化されたが,同一分子内に炭素-炭素二重結合とカルボニル基を有する不飽和ケトンの還元ではまず炭素-炭素二重結合が,ついでカルボニル基が水素化され,したがってRa/Ni使用量を調節することによりそれぞれ選択的に相応する飽和ケトン,飽和アルコールを得ることができた。
  • 持田 勲, 溝尻 尚子, 藤津 博, 小松原 克展, 井田 四朗
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1676-1681
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリアクリルニトリルから製造した活性炭素繊維(PAN-ACF)上での一酸化窒素のアンモニアによる還元反応を速度論,吸着,表面含酸素官能基のESCA,昇温分解法を用いて研究した。窒素が多く残存しているPAN-ACF-AおよびB型は温度400℃の硫酸処理により顕著に活性が増大したのに対して,高表面積であるが,窒素残存量の少ないPAN-ACF-C型は前二者と比較して活性が低かった。不可逆吸着したアンモニアの一酸化窒素に対する反応性は対応する一酸化窒素-アンモニア反応速度にはぼ等しかった。C型のPAN-ACFを除いて,還元の反応速度は,不可逆吸着アンモニア量と一酸化窒素の炭素による還元反応速度と相関することから,アンモニア,一酸化窒素両分子の炭素表面での活性化の程度が,上記不可逆吸着アンモニア量,一酸化窒素の炭素による還元反応速度によって,ほぼ表示できる。
    ESCAおよび昇温分解法の結果を活性と比較して,活性点は,表面上の含酸素官能基が考えられ,アンモニアの酸点への吸着,一酸化窒素の酸化点への吸着,活性化によって,触媒反応が進行するのであろう。
  • 村木 秀昭, 新庄 博文, 藤谷 義保
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1682-1688
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    自動車排気浄化用Pd/α-Al2O3触媒上でのNO-CO-O2系の反応に対し,静的ならびに動的反応挙動(Periodic Operation効果)を系統的に調べた。
    静的条件下では,(i)COの自己被毒現象により反応が阻害される。(ii)CO-O2の反応選択性の方がNO-COの反応選択性よりも大きい。(iii)NOの転化率は当量点で最大となる。
    動的条件下では,(i)NO転化率は周期に対し極大値をもつ。(ii)極大値を示す周期は反応ガスの還元度合が増すほど長くなる。(iii)当量点からはずれた領域でのNO転化率は静的条件下より高くなる。(iv)周期が長くなるほどNO-COの反応選択性はCO-O2の反応選択性より向上する。
    静的条件下でのNOの転化速度と動的条件下での反応雰囲気の時間変化とを考慮し,動的条件下でのNO転化率を推算した結果,実験値とよい対応を得た。
  • 鈴木 新太郎, 作本 博則, 表 雄一, 峰岸 順二
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1689-1699
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    含水二酸化ケイ素(この論文ではSiO2と表示する)を付着させたβ-FeO(OH)は,空気中,常圧下の熱分解において,α-Fe2O3転移への中間相と考えられる非晶質的酸化鉄を生成する。その生成温度範囲は,SiO2付着量に依存し,付着量が多くなるほど,低温側および高温側ともに広がり,SiO2付着による脱水分解促進と結晶転移抑制が認められる。この中間相は,形態的にはほぼ針状性を保持し,多孔体であり,細孔容積はSiO2付着量が多くなるほど大となり,それに起因すると推定される比表面む積のかなりの増大を示す。細孔分布曲線のピークを示す細孔半径は15から20Å程度であった。250℃焼成試料については,SiO2付着量の相違による差異は少なく,焼成温度が上昇すると結晶成長が進み,かつSiO2付着量の影響が顕著となる。さらに,塩素をCl/Feで2から8%程度含有しているという特徴を有している。磁気特性として内部磁場(293K測定)が,300℃焼成処理で得られるもので,付着量1.5と6.1wt%の場合で420,404kG程度とSiO2付着量が多くなると小さくなりSiO2後者の場合でNeel温度が約473Kであった。さらに焼成温度による変化として,6.1wt%の場合で,焼成温度250と5OO℃で398,430kGとなり,温度の高い場合ほど大となった。これらの変化は,多孔体粒子内部の微細粒子の大きさが変化しているためと考えられる。
  • 松木 健三, 鎌田 仁
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1700-1703
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    マンガン-カルシウム炭酸塩固溶体を水溶液から合成し,その熱分解過程および生成したCaMnO3-xの熱的性質について,TG,DTAおよびXRDにより検討を行なった。CaMn(CO3)2を空気中で加熱すると,800℃付近でカルサイト型構造は消失し,マンガンやカルシウムの酸化物およびその複合酸化物が生成するが,加熱時間とともにペロブスカイト型構造の非常に均質なCaMnO3単一相となり,結晶が成長していくのが認められた。空気中1000℃で焼成し急冷して得たCaMnO3-xを808と1120の間で加熱,冷却をくり返したところ,加熱では酸素欠損の増加による重量減少,冷却では欠損消失による重量増加を示し,DTA曲線に880℃で発熱,890℃で吸熱ピークが見られた。これらのピークは,CaMnO3-xの酸素欠損の生成および消滅による結晶転移温度に対応しているものと考えられる。
  • 池田 早苗, 佐竹 弘, 背川 浩明
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1704-1709
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    多硫化物溶液中の硫黄化学種をノンサプレッサー型イオンクロマトグラフにより簡単に定量する方法について検討した。すなわち,多硫化物溶液中の多硫化物硫黄をシアン化物イオンにより分解(以下シアン分解という)してチオシアン酸イオンを生成させたのち,電気伝導度検出器および紫外吸収検出器(UV検出器)を用いたイオンクロマトグラフにより無機硫黄化学種を分離定量する方法である。電気伝導度検出器を使用すると多硫化物溶液中の硫化物イオン,多硫化物硫黄(チオシアン酸イオン),亜硫酸イオン,チオ硫酸イオンおよび硫酸イオンを分離定量できることがわかった。UV検出器を用いた場合には,硫化物イオン,チオシアン酸イオンおよびチオ硫酸イオンを上記より感度よく定量できた。なお,シアン分解にともなう各硫黄化学種の変動についても検討した。シアン分解は多硫化物硫黄に対して2倍当量のシアン化カリウムを添加して,90℃で10分間反応させるのが適当であった。
    本法は電位差滴定法などと比較して,操作が簡単であり,複雑な組成をもつ多硫化物溶液中の各硫黄化学種を迅速に検出定量できるという特徴がある。
  • 石野 二三枝, 宗森 信
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1710-1714
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硝酸ビスマス(III)に水酸化ナトリウムを添加したとき生成する水酸化ビスマス(III)による水銀(II)の共沈を研究した。この共沈に対するハロゲン化物イオン,アミノ酸,硫黄原子を含む有機化合物の影響を検討した結果,含硫有機化合物の存在下で水銀(II)の共沈率は広いpH範囲において高い値を示すことを見いだした。とくに,システィン,チオ尿素,チオナリドが右効であり,1×10-4mol/lの添加によって水銀(II)はpH6~10においてほぼ100%共沈した。これを水銀(II)の濃縮に応用した。5×10-9molの水銀(II)を含む試料液2~5lにチオ尿素を添加し,pH8~9で水酸化ビスマス(III)を沈殿させ,1戸別し,濃硝酸に溶かして水銀(II)を100mlの溶液中に回収した。平均回収率は21の場合96.4%(n=5),51の場合93.0%(n=5)であった。10-3mol/l以上のリン酸イオンと10-7mol/l以上のシアン化物イオンは妨害した。
  • 太田 悦郎, 磯 文夫
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1715-1720
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4-フェナントロール[1]は,そのヒドロキシル基近傍に立体的込み合いがある。そのことがフェノールとしての[1]の反応にどのように影響するかという興味を中心に,そのニトロ化と塩素化における反応性と配向性を調べた。[1]は65%硝酸により氷酢酸中で,60℃という比較的高い温度で初めてニトロ化され,1-および3-ニトロ体を生じたが,このとき,o/p 比は3.7という高い値であった。また塩化スルフリルを用いて氷酢酸中,50℃で長時間,塩素化したとき,[1]は1-および3-クロロ体を生成したが,その一部はなお未反応のまま残った。このように両反応を通じて見られた[1]の低い反応性と,ニトロ化における高いo/p比とは,ともにヒドロキシル基に関する立体効果に起因すると結論された。
  • 小郷 良明, 倉貫 健司, 橘 英二
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1721-1727
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    テトラリンおよびレメチルナフタレン溶媒中でのピベンジルの熱分解反応を,流通式反応装置を用いて400~480℃,10~80MPaの範囲で追跡した。ビベンジルの分解による主生成物はトルエンであり,分解速度は溶媒の種類および濃度に依存せずビベンジルの一次で表わされた。またビベンジルの熱分解反応は加圧によって抑制されたが,その程度はわずかであった。この反応に対する圧力効果を溶媒分子による“かご”効果の観点から検討し,ベンジルラジカル対への解離反応に対する活性化体積値は温度の低い場合と同穐度の小さな正の値を示すことを推定した。さらに同反応条件下における溶媒の挙動を迫跡し,テトラリンの1-メチルインダンへの異性化反応はラジカルの存在(ビベンジルの添加)や高圧化によつて促進され,またテトラリンからナフタレンへの転化は,ビベンジル高濃度の条件下では水素移動反応と脱水素反応のみによって進行し,そのうち水素移動反応が優勢であることを定量的に示した。また1-メチルナフタレンは脱メチル反応や多量化反応をひき起こしたが,いずれも高圧下ほど反応は促進され,ビベンジルの添加によって両反応が促進されたことから,これらの反応がラジカル連鎖機構を含んでいる可能性を示唆した。
  • 寺井 忠正
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1728-1733
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    現在ツツジ科植物から単離されたGrayanotoxin類は50余種におよぶが,G-1,G-IIIを除けばいずれも微量成分である.したがってこれらの成分の活性試験などは十分に行なわれていない。そこで今回G-1およびG-IIIからこれら微量成分への変換を検討した。酢酸メタノールによってG-IIIのC-100Hのみを脱水しG-IIに変換し,塩酸-メタノールによってiso-G-IIへ,無水硫酸銅-ジオキサンによってC-10OH,C-160Hが脱水さin,G-VII,G-VIIIへ変換できた。またG-IIIの3,6,14,16-テトラアセタートの硫酸銅による脱水は1(5),10(20)-ジエン体を生じた。一方,天然物として,3-オキソ体(G-V),3,6-ジオキソ体(G-XVII)が単離されている。G-IIIを酸化クロム(W)酸化すると3,6-ジオキソおよび3,6,14vトリオキソ体の混合物を生じるが,NBS酸化するとG-XWを生じ,炭酸カルシウムを添加しNBS酸化するとG-Vが得られた。またG-IIIを亜臭素酸ナトリウムで酸化すると3,6vジオキソ体が得られた。
  • 白岩 正, 佐渡 勇人, 阪口 佳司, 井川 明彦, 黒川 秀基
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1734-1739
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    L-フェニルアラニン(L-Phe)との付加物形成により,DL-アラニン(DL-Ala),DL-α-アミノ酪酸(DLAbu),DL-ノルバリン(DL-Nva),DL-ノルロイシン(DL-Nle)ならびにDL-メチオニン(DL-Met)の光学分割を行なった。初期溶液としてL-PheとこれらのDL-アミノ酸を含む水酸化ナトリウム溶液,または水溶液を用いて光学分割を行なった結果,晶出条件によって,それらのD-アミノ酸とL-Pheとの等モル量からなる析出物が得られた。それらの赤外吸収スペクトルにより,これらの析出物はL-PheとD-アミノ酸との単なる混合物ではなく,一種の付加物を形成していることがわかった。これらの析出物から,光学純度75~100%のD-Ala,D-Abu,D-NvaならびにD-Metが得られたが,D-Alaの収率は極端に低い値であり,またD-Nleの光学純度は約46%であった。初期溶液として水溶液を使用した場合,これらの析出物を炉取したあとの炉液から,さらに析出物を晶出させてL-アミノ酸を得ることもできたが,L-Nva,L-NleならびにL-Metの光学純度は,30%程度であった。しかし,L-Abuの光学純度は87.3%を示した。さらに,初期溶液として塩酸溶液を用い,同一条件下で上記のD-アミノ酸,D-バリン,D-ロイシンまたはD-イソロイシンと,L-Pheとの付加物を晶出させた。それらの光学分割の結果の比較から,これらの付加物の形成は,L-Pheとこれらのアミノ酸の側鎖間の疎水性相互作用に起因すると考えられた。
  • 新井 義夫, 松田 弘喜
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1740-1744
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    界面活性剤を含む水溶液中,窒素雰囲気下でいくつかの2価および3価の鉄塩ならびに鉄錯体がメタクリル酸メチル(MMA)の重合開始することを見いだした。このうちの硫酸鉄(II)アンモニウム(モール塩)によるMMAの重合反応をおもに検討した。非イオン性のTween系,Brij 35およびTriton X 405が重合反応に有効な界面活性剤であった。2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジルの添加により重合反応が禁止され,スチレンとMMAとの共重合反応の共重合組成曲線が通常のラジカル共重合反応のものと一致した。これらの結果にもとついて,MMA重合反応はラジカル機構で進むと考えられる。塩化鉄(II)と硫酸鉄(II)によるMMA重合反応も同じ機構で進行する。
  • 結城 康夫, 国貞 秀雄, 榊原 啓介, 山田 嘉憲, 筒井 富士男
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1745-1750
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-アミノ-4-アニリノ-6-イソプロペニル-1,3,5-トリアジン(AAIT)および2,4-ジアニリノ-6-イソプロペニルー1,3,5-トリアジン(DAIT)についてアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として,モノマー濃度,重合温度をかえて,ジメチルスルポキシド溶液重合を行ない,平衡モノマー濃度([M]e)を求めた。[M]eから得られた重合熱および重合のエントロピーはAAITでは-11.7kcal/mol,-31.0cal/deg・mo1であり,DAITでは-11.8kcal/mol,-30.7cal/deg・molであった。DAITについては示差走査熱量計を用いて,その熱重合を検討した。DSCからはDAITの重合熱は-11.1kcal/mol,モノマー溶融状態濃度での天井温度は168℃ の値が得られた。
  • 岡本 和吉, 隅田 卓, 安井 三雄, 山本 忠弘
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1751-1756
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    クロム革から工業用ゼラチンの製造では,排水にクロムや溶解した革くずが混入する。この汚濁排水は硫酸処理工程に大きく起因するので,この工程をはぶいた方法でゼラチン化を行ない,その収率と品質ならびに排水中のクロム含有量を検討した。
    クロム革を3日間石灰液に浸し,水洗とpH調整のあと70℃の熱水で3時間抽出すると,収率40%,粘度157mp,ゼリー強度415g,カルシウム含有率0.8~2.0%,クロム含有率30~70PPmのゼラチンが生成した。品質は現行製品よりもよかった。70℃につづいて90℃で2時間抽出すると,さらに40%収率でゼラチンが生成した。この品質は70℃抽出ゼラチンのそれとくらべて劣る。排水中のクロム(III)は0.09ppin以下,クロム(VI)は検出されず,クロム革から除去されたクロムは残留物として回収できた。本法は汚濁排水の改善に有用であることがわかった。また,収率と品質も現行製造法でのそれらとくらべて劣らない。しかし,収率の一層の向上とゼラチン中のカルシウム含有量の低減が今後の検討課題である。
    石灰浸漬すると,クロム革は変色し,熱変性温度は低下し,カルシウム含有率は増大した。このことは脱クロムが起こり,生じた遊離のカルボキシル基はカルシウム塊を形成したものと考えられる。
  • 堀場 裕子, 山中 伸一
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1757-1762
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    熱分解法は有機性廃棄物の処理および再利用法の代表的なものの一つであるが,熱分解生成物の再利用や処分にさいして,右機性廃棄物に含まれる重金属が新たな環境汚染の原因となり得る。そこで,著者らは4種類の有機性廃棄物に含まれる重金属の種類と含右量を求めるとともに,空気中で熱分解し,生成した固体残留物に含まれる重金属量から,重金属の揮散に対する分解温度(390~1000℃)の影響について実験的に検討した。その結果,廃塩化ビニル樹脂からCd,ZnおよびPb,廃ゴムからZn,PbおよびFe,潤滑抽系廃油からZn,Pb,CuおよびFe,そして廃塗料からZn,Pb,Cu,FeおよびCrを検出した。熱分解において,重金属の揮散は主成分の有機物の分解する温度より高温で起こり,揮散量は廃棄物の由来や組成に依存した。重金属別では,廃塩化ビニル樹脂中のCdがもっとも低い温度(550~750℃)で揮散した。廃塩化ビニル樹脂中のZnや水溶性の潤滑油系廃油と廃水系エマルシ9ン塗料に含まれるPb,Zn,CuおよびFeは750℃近辺で,また,カーポンプラックを含む廃合成ゴム中のZnは900℃前後で揮散した。しかし,大部分の試料に含まれるPb,Zn,Cu,FeおよびCrは熱分解後,固体残留物に濃縮された。
  • 宇佐美 四郎, 長谷川 淳, 高田 京子, 内藤 龍之介, 内田 浩史, 狐塚 寛
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1763-1769
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    無水マレイン酸イソブテン共重合体にポリエチレンイミンを反応させ,100℃ 以下で加熱処理して得られた複合樹脂は窒素とカルボキシル基との当量比(以下N/COOHと略記する)の変化によって選択的イオン吸着特性を示す。すなわち,NICOOHが1より小さい樹脂はCu2+,Pb2+のような金属陽イオンの吸着能に優れ,NICOOHが1より大きい樹脂はCl-,CrO72-,Ag(CN)2-のような陰イオン,金属錯陰イオンをよく吸着する特性を示し,またウラン水溶液よりウランに対する優れた選択吸着性をもつ。たとえばN/COOH 1.79の樹脂は75ppmに調整さたウラン溶液の場合100mgU/g-dry・R以上の吸着能を示し,一方,海水中の微量ウランをも吸着する。X線マイクロアナライザーによる分析からNICOOH 1.79樹脂が海水(pH5.3~6.0に調製)中で吸着した元素は硫黄,塩素の陰イオンとウランが主成分であり,マグネシウム,カルシウムなどの陽イオン,臭素,ヨウ素の陰イオン系の吸着は認められなかった。臭素,塩素が吸着されないのは多量に存在する塩素の競争反応によるものである。ウランの吸着機構に関してはさらに実験結果をかさね検討を行なう予定である。
  • 石井 一, 小田嶋 次勝, 会田 健
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1770-1772
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The complexation reactions of iron(II) with four water-soluble hydrazones derived from 2-(3-sulfobenzoyl)pyridine have been investigated kinetically by using a stopped-flow spectrophotometric technique. The rate of the complex formation is proportional to each of the concentrations of iron(II) and hydrazone and independent of the hydrogen ion concentration. On the basis of these results, the rate-determining step in each reaction system was found to be the 1: 1 complex formation reaction between iron(II) and undissociated hydrazone. The rate constants and activation parameters at an ionic strength of 0.2 and at 25°C were calculated. Further, it was clarified that the difference in the rate constants including that of 2-pyridyl(3-sulfophenyl)methanone 2-pyrimidinylhydrazone (PSPmH) reported previously is attributed to the difference in the structure of the complex.
  • 北島 圀夫, 鈴木 栄次, 大門 信利, 田草川 信雄
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1773-1775
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The formation of the complex between synthetic fluorine micas, Li-taeniolite [LiMg2Li (Si4O10)F2] and Na-F-hectorite [Na1/3Mg2 2/3Li1/3(Si4O10)F2], and aluminum phosph ate was studied at various reaction conditions in order to elucidate the factors affecting the reaction and mechanism of complex formation. The complexes were formed from the suspension of fluorine micas in the solution of AlCl3, Ca(OH)2 and H3PO4 in certain concentration ranges. The compositions of interlayered materials and basal spacings of the complexes varied with the concentration of solution, the reaction time, and the particle size and layer charge of starting samples. The interlayered materials can be generally expressed as n[Al(PO4)x(OH)y], where PO4/Al ratio increases with reaction time and finally tends to converge to a value in the range of 0.8∼M.9. These results suggest that the aluminum phosphate complex is formed through an intermediate, so-called Al-hydroxy complex.
  • 円満字 公衛
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1776-1778
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Chlorophyll a (chl a) could be dissolved into water in the presence of deoxyribonucleic acid (DNA). The electron specrtum of this water-soluble chl a differed from that of chl a in petroleum ether which ccntains 0.5% isopropyl alcohol (PI solution). Fluorescence quanturn yield of water-soluble chl a was O.070 times larger than that of chl a in PI solution.
    Chl a in PI solution was completely photobleached by 10 min photoillumination, but water-soluble chl a was not photobleached at all even by 30 min photoillumination.
  • 石塚 庸三, 今井 久雄
    1985 年 1985 巻 9 号 p. 1779-1781
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The Adsorption and reaction of formic acid were studied on waste mold sand for its application to the removal of injurious acid gases. The mold sand containing sodium carbonate chemisorbed completely formic acid vapor (4.4 vol% in air) at 50°C. The sm aller the particle size of sand, the higher the rate of adsorption, the particle size of 30 μm being the best choice. The catalytic decomposition of formic acid was observed at temperatures higher than 100°C.
    The sand accelerated preferentialy the dehydration reaction at temperatures lower than 275°C, but at higher temperatures both dehydration and dehydrogenation reactions were catalyzed.
    The waste mold sand can be used as a catalyst material for the removal of formic acid vapor.
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