ハμアセチル-
DL-ノルロイシンのアンモニウム塩(
DL-AM塩), メチルアンモニウム塩(
DL-MA塩); エチルアンモニウム塩(
DL-EA塩), プロピルアンモニウム塩(
DL-PA塩), イソプロピルアンモニウム塩(
DL-IPA塩),
t-ブチルアンモニウム塩(
DL-TBA塩)ならびに1, 1, 3, 3-テトラメチルブチルアンモニウム塩(
DL-TMB塩)の優先晶出法による光学分割の可能性について検討した。融点でのラセミ体の生成自由エネルギーおよび融点の二成分系状態図から, これらの
DL-塩のラセミ体構造を調べた結果,
DL-TBA塩のみが融点付近でラセミ固溶体であり, そのほかの
DL-塩はいずれもラセミ化合物を形成していることがわかった。しかし,
DL-AM塩と
D-AM塩との赤外吸収スペクトル, 溶解度の比較, そして溶解度の三成分系状態図から,
DL-AM塩が室温付近ではラセミ混合物として存在することが示唆された。そこで,
DL-AM塩の優先晶出法による光学分割を, メタノール, エタノール, 1-プロパノールならびに2-プロパノール中, 10または25℃で試みると, メタノール中では良好な結果を得られなかったが, いずれのアルコ一ル中においても光学分割は可能であった。さらに, エタノール中, 10℃と, 1-プロパノール中, 25℃とで
DL-AM塩の交互分割を行ない, いずれの場合においても, 光学純度が90%以上の
D-および
L-AM塩を得ることができた。また, 光学分割におよぼす溶媒の影響を調べるために,
DL-および
D-AM塩のこれらのアルコール性飽和溶液の熱力学的性質について調べた結果, エタノール, 1-プロパノールならびに2-プロパノール溶液を正則溶液とみなすことができるが, メタノール溶液中では, メタノール分子とAM塩との聞にきわめて強い求引相互作用が存在することが示唆され, このような相互作用の存在は
DL-AM塩の光学分割に対して好ましい影響を与えないと考えられた。
抄録全体を表示