触媒量のNi(acac)
2-Et
3Al
2Cl
3-リン配位子(Ni: Al
2=1: 10 mol比)の存在下における1, 5-シクロオクタジエン(1, 5-COD)の異性化について研究した。添加PPh
3/Ni=O~3の場合には, トルエン中, 10~60℃ において1, 5-CODはすみやかに異性化し, ピシクロ[3. 3. 0]オクト-2-エン(BCO, 渡環生成物)が高選択率(90%~)で得られ, ごく少量の1, 4-および1, 3-COD(二重結合異性化物)が副生した。PPh
3/Ni=6~10では, 反応はおそいが, 二重結合異性化物がかなり高選択率で得られた。17種のリン配位子の比較から, 配位子の電子的影響が認められた。配位子の電子供与性の減少につれて, 異性化速度および二重結合異性化物が増大し, ある種の亜リン酸エステル配位子では, 1, 4-CODが主生成物(選択率70%~)となった。一方, 配位子の立体的影響は認められなかった。
速度論的には, BCO生成の総括速度式として, R=k[Ni]
0[1, 5-COD]/(K+[1, 5-COD]), k=10
13.6exp(-16300/RT)min
-1, K=O.252mol・l
-1(10℃), が得られた。活性化パラメーターはΔH
≠=15.7kcal・mol
-1, ΔS
≠ -6.6cal・deg
-1・mol
-1である。これらの結果および参考知見に基づいて, ヒドリドニッケル錯体を活性種とする反応機構を提案し, 実験結果について考察を行なった。
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