スピネル構造をもっLiCoVO
4を500から1000℃ までの範囲で焼成し,X線回折で格子定数を測ゆ定した。500℃ で焼成したものは8.291±0.001Å であったが,1000℃ で焼成した場合は8297±ゆO.OOIÅ であり,焼成温度が高くなるにつれてその値は大きくなった。この差異は,陽イオン分布が(CO
x V
1-x)
IV(LiCo
1-xV
x)
VIO
4,であるランダムスピネルで,高温ではxの値が大きくなる不規恥構造の変化によるものと考えられる。また,焼成温度の上昇にともなう格子定数の増大の割合がLiCoVO
4はLiNiVO
4より大きくなった。これは,四配位への位置選択エネルギーがCo
2+イオンはNi
2+イオンより小さいことによるものと推察される。1000℃ で100時間焼成したLiCoVO
4とLiNiVO
4の電気債導度を,450から1000℃ までの範囲で直流四端子法により空気中で灘定した。その値は温度の上昇にしたがって増大して半導体的挙動を示し,1000℃において両化合物ともlog(σ/S・m
-1)≒2であった。電気伝導度のArrheniusプロットは,約800℃の上下でそれぞれ2本の直線で表わされ,高温域ではほとんど一致した直線となり,その傾きから活性化エネルギーは約2.7×10
5J・mol
-1であった。また低温域においては,LiCoVO,では約4.1×10
4J・mol
-1であり,LiNiVO
4では約9.6×10
4J・mol
-1であった。LiCoVO
4とLiNiVO
4の低酸素分圧下での安定性を,950℃ において熱重量測定で検討した。Li・CoVO
4は酸素分圧がlog(Po
2/atm)≒-13.2まで,またLiNiVO
4は酸素分圧がlog(Po
2/atm)≒Co-14 ・2まで,それぞれ安定であった。それ以下の酸素分圧で,LiCoVO
4では3段階で,LiNiVO,では1段階で,それぞれ酸素1molに相当する重量減少を示した。これは両化合物ともV
5+からV
3+までの還元が行なわれるとともに,CoおよびNiが金属として分離するものと考えられる。
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