日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1987 巻, 4 号
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  • 岩村 秀, 泉岡 明
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 595-609
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    有機分子にとって例外的存在である高スピン分子(S>3/2)を系統的に構築する分子設計を進め,遷移金属イオンや分子よりも大きな磁気モーメントをもつ炭化水素をつくることに成功した。これら高スピン有機分子間でスピンを整列させる分子設計から,二次元.三次元にわたって強磁性的相互作用をもつ分子集合を得る指導原理が得られた。これらを発展させ有機磁性材料を開発する観点から興味がもたれる高スピン有機ポリマーについても考察する。
  • 竹山 尚賢, 中島 紀美枝
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 610-616
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    64種のイオンの標準水和エンタルピーΔH°hとエントロピーΔS°hとの間に四つの線形関係式が存在することを見いだし,イオンをI,I',II,III群に分類した。I'群を除き,I,II,III群の線形関係式についてΔH°hのΔS°hこ対する係数の比は,各群の主要なイオンの電荷数の絶対値zの比1:2:3にほぼ等しい。著者らによって導入された有効イオン半径re(A)を用いて,各線形関係式をつぎのように表わした。
    ここにΔH°h,oは各群で異なる定数であり,fはzの補正係数である。式(a)はfにより全イオンに対して一般化された。既報のΔS°h=-26.1r2e(J.mol-1.K-1)と式(a)とにより標準水科Gibbsエネルギ-をつぎのように表式した。
    この右辺第2項がイオン水和の補償効果を表わす。また,式(a)の右辺第2項にイオン-水永久双極子相互作用を用いて,単原子イオンのreと結晶イオン半径(Pauling)r1との関係式re=2.74/(A+Br1)を得た。ただし,A,Bはzにより異なる定数である。
  • 三浦 則雄, 堀内 甫, 清水 陽一, 山添 昇
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 617-622
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    5種の遷移金属窒化物を調製し,NaOH水溶液中での酸素の電気化学的還元反応に対する触媒作用を回転リング.ディスク電極法を用いて調べた。その結果,いずれの窒化物も酸素の四電子還元(02+2H20+4e→40H-)に対する活盤をもち,とくにMn4Nの活性が高いことがわかった。一方,Co3Nを除くすべての窒化物はHO2-分解活性がほとんどなかった。これらの窒化物のうちMn4Nを電極触媒として用いて,テフロン結着型のガス拡散型炭素電極を作製し,酸素還元特性を調べたところ,添加量が20および60wt%のときに性能に極大が現われた。とくにMn4Nを60wt%使用した電極の性能は非常に高く,-125mV(vs.Hg/HgO)では2400A/cm2もの高電流密度が得られた。これは炭素単独の場合の約24倍であった。m電極の短期連緯試験の結果,300mA/cm2の電流密度においてMn4Nを添加した電極では初期25時間まで若干の性能低下が見られたが,その後は50時間ほぼ安定に作動することがわかった。ただし,試験前後の電極のX線回折分析の結果からMn4Nの構造変化はほとんど認められなかったが,その表面にはごく薄い酸化物層が形成されていることがXPS測定からわかった。
  • 清水 康博, 成清 友希, 荒井 弘通
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 623-629
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    欠陥ペロブスカイト型酸化物SrZr1-xAIxO3-α の粒子および粒界における酸化物イオン伝導およびホール伝導におよぼすAI添加効果を明らかにするために,種々の温度,酸素分圧下で複素インピーダンズプロットを測定した。混合導電体の等価回路は,粒子での酸化物イオン伝導に基づく抵抗成分,容量成分およびホール伝導に基づく抵抗成分の並列回路と,粒界での酸化物イオン伝導に基づく抵抗成分,容量成分およびホール伝導に基づく抵抗成分の並列回路が直列に接続した回路で表わされることがわかった。酸化物イオン伝導に基づく粒子および粒界の抵抗成分と容量成分は,酸素分圧によらず一定値を示した。一方,ホール伝導に基づく粒子および粒界の抵抗成分は酸素分圧に依存し,粒子および粒界のホール導電率は酸素分圧の1/4乗に比例した。複素インピーダンスプロットと本研究で提案した等価回路により,混合導電体についても粒子および粒界における酸化物イオン伝導性およびホール伝導性が詳細に検討できることがわかった。SrZr1-xAlxO3-α 系酸化物の格子定数の変化,複素インピーダンスプロットの解析により得られた粒子および粒界における酸化物イオン伝導の活性化エネルギー,バルクおよび粒界における酸化物イオン輸率の結果から,Alの限界置換固溶量は約2mol%と考えられる。またSrZr1-xAlxO3-α 系酸化物のバルクとしての酸化物イオン導電率および酸化物イオン輸率は,粒界における酸化物イオンの挙動に強く支配されていることがわかった。
  • 西野 敦, 木村 邦夫, 小野 之良
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 630-637
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らはアルミン酸カルシウムで結合された金属酸化物触媒を研究開発した。この触媒は,電解二酸化マンガン(EMD)-アルミン酸力ルシウム(AC)-SiO2からなり,無焼結で,高比表面積を有し,すでに,家電住設機器用触媒として実用化されている
    。この触媒の製法は,粉末状の触媒組成に成形に足る水を添加して,よくかきまぜ,ペースト状にし,つぎに造粒状または,ハニカム状に成形したのちに,温水中で熟成し,乾燥し,成形触媒とする。本研究では,まず,2種類の電解二酸化マンガン(EMD,FEMD)を用い,これらEMDのおよびAC-ENDからなる成形体を調製した。つぎに,これら触媒のCO浄化特性,灯油排ガス中のSO2の影響,MnOxの比表面積と価数への影響などを検討したものである。得られた結果を要約するとつぎのとおりである。
    1.EMD(FEMD)の-5~+10メッシュの破砕粒は200~400℃,SV1~20000h-1で優れたCO浄化能を示す。しかし,灯油燃焼排ガス中のSO2の影響を大きく受ける。
    2.EMD-AC-SiO2組成の成形体は,250~500℃ で優れたCO浄化特性を示し,しかも,SO2の影響をそれほど受けない。
    3.EMD,FEMDの破砕粒は300℃ 以上で焼結を開始し,比表面積は減少するがMnOxの価数は変わらない。しかし,SO2が共存すると,比表面積,MnOxの価数ともにいちじるしく減少する。
    4.EMD-ACからなる成形体は300℃ 以上の温度で比表面積は増加し,MnOxの価数は変化しない。しかし,SO2が共存すると比表面積はほぼ一定で,MnOxの価数はわずか減少する。
  • 西野 敦, 竹内 康弘, 曾根 高和則
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 638-644
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らはアルミン酸カルシウムで結合された金属酸化物触媒を研究開発した。この触媒は,電解二酸化マンガン(EMD)-アルミン酸カルシウム(AC)-SiO2-助触媒からなり,無焼結で,高比表面積を有し,すでに,家電住設機器用触媒として実用化している。この触媒の製法は,粉末状の触媒組成に成形に足る水を十分添加して,よくかきまぜ,ペースト状にし,ついで,造粒状または,ハニカム状に成形し,つぎに,温水中で熟成し,250~500℃ で熱処理を行撫目的駐触媒としてEMDを用し渤触媒とし懸の銅働鉄化晶を凧,これらの金属酸化物-AC-SiO2からなる成形体のCO浄化特性,最適添加量,最適熱処理温度などの関係を検討した。この結果はつぎのとおり:1.EMD-AC,EMD-AC-SiO2からなる成形体は,優れたCO浄化特性を示す。2.助触媒として,銅化合物(Cu(NO3)2),CuCO3.Cu(OH)2.H20,Cu(OH)2,CuCL2)を検討し,CuCO3.Cu(OH)2.H20,Cu(NO3)2とが優れていたが,総合的に判断して,CuCO3.Cu(OH)2.H20を選択した。3.助触媒として,鉄化合物(FeO(OH),Fe(COOH)2,Fe(OH)3,Fe203,Fe304)を検討し,FeO(OH)が効果的であった。4.アルミン酸カルシウム-金属酸化物からなる触媒の最適処方は,EMD:60,AC:25,SiO2:5,CuCO3.Cu(OH)2.H20:5,FeO(OH):5であった。
  • 西野 敦, 小野 之良, 沼本 浩直, 竹内 康弘
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 645-653
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らはアルミナセメントを結合剤とする成形触媒を研究開発した。この触媒は,Al203.CaO-溶融SiO2-TiO2の組成からなる担体に微量のPt/Pdを担持している。この触媒はウォッシュコートを必要とせず,高比表面積を有し,生活関連触媒として世界的に実用化されている。
    この触媒の製法は,粉末状の担体組成に成形に足る水を十分に添加して,ペースト状とし,ついで,ハニカム状に成形する。つぎに,温水中で養生後,乾燥し,貴金属触媒を担持したのちに約550℃ でか焼し,本触媒を得る。
    本研究では,アルミナセメントの種類,担体中のTiO2添加量,Pt/Pdの組み合わせと最適担持量,最適熱分解温度などをCO浄化能との関係で検討し,さらに,石油ストーブでの触媒効果を調べた。これらの結果を要約すると.1)アルミナセメントは1号がCO浄化能,機械的強度ともに優れている。2)担体中の最適TiO2添加量は20~50wt%で,700℃ 以下で効果的である。3)Pt/Pdの組み合わせはPt/Pd=2/1が好ましい。4)石油ストーブの実用テストでは触媒の効果は顕著で,実用寿命も十分確認できた。
  • 谷原 紘一
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 654-659
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸グアニジニウム,(NH4)2SO4,NH(SO3NH4)2およびNH4SO3NH2からなる混合物について,NH(SO3NH4)2とNH4SO3NH2の加水分解を100℃ 以上のグアニジニウムィオンの分解が起こらない反応温度(160℃ 以下)で検討した。
    水溶液中では,NH2SO3-の加水分解はNH(SO3-)2にくらべて反応が非常に遅く,NH(SO3-)2の加水分解で生じるH3O+との反応によって進むことが確かめられた。
    それに対して,少量の水存在下でのNH2SO3-の加水分解は反応温度120℃以上ではNH(SO3NH4)2存在下で顕著に催促され,NH(SO2-)2の加水分解に先行して進むことがわかった。また,この場合の反応経路はつぎのように推定された。
    上記の結果に基づいて,少量の水存在下で加水分解処理を行なうことにより,グアニジン合成反応によって得た実際の混合物(グアニジニウムイオン:14.4,NH4+:14.5,SO42-:30.6,NH(SO3-)2:23.5,NH2SO3-:13.9%)を硫酸グアニジニウム,(NH4)2SO4および硫酸からなる混合物に容易に転換できることを確認した。
  • 中井戸 靖明, 大谷 陽, 小堺 範行, 榎 貴志
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 660-666
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本報告中で用いたメチルクロロシラン類を原粒としたポリシラザンの合成は文献にあげたように多くの研究者によって行なわれている。しかし,種々の形状の成形体にするための最適条件を検索した例はないようにみられる。本報告ではそのような在来の原料とその組み合わせではあるがメチルクロロシランのアンモノリシスにより得られたシリルアミン類のとくに脱アンモニアによる縮重合を時間ごとに細かく追跡し,その重合過程を分子量増加と硬化時間とで規定し,成形可能な最適条件を見いだした。とくに2種のクロロシランの混合系における共アンモノリシス生成物は混合モル比の変化により熱重量減少量を最少にするとともに種々の形状の成形体を容易につくることが可能であり,熟重量減少量の少ないことからセラミックス前駆体とし適切な原料であることを示した。
  • 今井 弘, 大野 秀樹, 田村 裕
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 667-671
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酢酸銅(II)とイミダゾール(HIm)からビス(アセタト)ビス(イミダゾール)銅(II)[(Cu(CH3COO)2.(HIm)2,〔1〕),ビス(アセタト)テトラキス(イミダゾール)銅(II)([Cu(CH3COO)2(HIm)4],〔2〕),ポリ[ビス(イミダゾラト)銅(II)]([Cu(Im)2]n,〔3〕~〔6〕)を合成し,これらの錯体の熱的性質や立体配置を熱分析や磁気モーメント,電子スペクトルの測定から検討した。水,メタノール,エタノールによく溶ける〔1〕,〔2〕の磁気モーメントは1.83~1.88BMであった。通常の溶媒に難溶である〔3〕~〔6〕は1.47~1.65BMの異常磁気モーメントをもち,磁気的相互作用がCu(II)-Cu(II)間に存在することを示した。固体状態における〔1〕,〔2〕はそれぞれ平面正方型ならびに八面体型であり,青色の〔3〕=〔4〕は平面正方型の多核錯体,緑色の〔6〕は八面体型の多核錯体であることが推察された。紫色の多核錯体〔5〕は立体配置を推定することがでぎなかった。これらの錯体のなかで〔6〕は高い熱安定性を示した。
  • 田村 裕, 亀岡 昭彦, 今井 弘
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 672-677
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-(2-ヒドロキシベンジリデン)-2-ヒドロキシ-5-置換アニリン類〔1〕(CH3〔1a〕,H〔1b〕),SO3H〔1c〕,Cl〔1d〕,NO2〔1e〕の紫外吸収スペクトルをメタノール,メチルセロソルブおよびN,N-ジメチルホルムアミドの単一および含水溶媒中で測定し,吸収帯の帰属を行なった。その結果,〔1〕は単一溶媒中で分子内水素結合した分子種Iとして存在し,その吸収帯はベンジリデン側(以下Aと略記する)のベンゼン環の第一吸収帯(260~290nm,A-1)と第二吸収帯(327~369nm,A-2)およびアニリン側(以下Bと略記する)のベンゼン環の第一吸収帯(230~264nm,B-1)と第二吸収帯(281~325nm,B-2)に帰属された。一方,含水率が20%以上になると分子内水素結合が切断されて分子種H2Lが生成することに対応してA-1およびA-2が短波長側へ移動する。また,pH8.1~13.0の条件下において〔1〕のヒドロキシル基は解離し,そのとき観測された吸収帯のうち258~269nm(A-1)および378~381nmはI-HL-(〔1a〕~ 〔1d〕)あるいはII-HL-〔1e〕に,294~442nm(B-2)はL2-に帰属された。この帰属をもとに,25±0.1℃,含水溶媒(7/3v/v)中で酸解離定数を求めたところ,〔1a〕~〔1d〕のpKa1(9.1~10.1)およびpKa2(10.1~12.9)はそれぞれA側およびB側の,〔1e〕のpKa1,(8.0~8.6)およびpKa2(8.4~9.2)はそれぞれB側およびA側のヒドロキシル基の解離によるものであることがわかった。B側のヒドロキシル基のpKa値は置換基の誘起効果のために,一方,A側のそれはfield効果のために〔1a〕>〔1b〕>〔1c〕>〔1d〕>〔1e〕の順に減少することがわかった。
  • 芳竹 良彰, 垣内 喜久子, 合田 四郎, 山崎 秀夫, 重松 恒信, 西川 泰治
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 678-683
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    クロロフィルは生物活性の失活にともない,フェオフィチンを始めとする多種多様な分解物へと変化する。しかし,それらの構造はクロリン環を母核とする非常に類似したものであり,いまだその地球化学的.生物化学的挙動は明らかにされていない。本研究では,クロロフィルおよびその分解物の, 蛍光検知逆相高速液体クロマトグラフィーにおける挙動を検討し,それらの分離.同定.定量法を確立した。さらに本法を,堆積物中のクロロフィル類の分析に適用し,クロロフィル,フェオフィチン,フェオホルビド,メチルフェオホルビド,ピロフェオホルビドおよびピロフェオフィチンの存在を明らかにするとともに,堆積物中におけるクロロフィル続成分解過程の解明を試みた。
  • 玉野 美智子, 永井 行雄, 纐纈 銃吾
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 684-687
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化チタン(IV)の存在下,アントラキノン,アントロンと第一級アミン,ベンゼンチオール,アルカンチオールとの反応を検討した。アントラキノンと第一級アミンとの反応では,N,N'-ジアルキルアントラキノンジイミンを与える。さらにエタンチオール,ベンゼンチオールとの反応では9,10-ビス(エチルチオ)-または9,10-ビス(フェニルチオ)アントテセンを与える。一方,アントロンの場合は第一級アミンやチオールと反応して,9-位のカルボニル基の位置にそれぞれ置換アミノ基,置換メルカプト基の置換したアントラセンを与える。これらの生成物は,反応の中間体である9-ヒドロキ-9-置換アントロンの脱水反応により生成するものと考えられる。
  • 加茂 徹, 湯 潔, 山田 宗慶, 天野 杲
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 688-695
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-位,2-位および4-位を重水素で標識した1-ブタンチオール(1,1-d2-,2,2-d2,4,4,4-d3-1-ブタンチオール)と水素原子あるいは重水素原子との反応を室温,圧力530,2660Paで行なった。ブタンおよび1-ブテンがおもに生成した。各生成物の重水素分布から,ブタンはブチル遊離基と(重)原子との再結合から,1-ブテンは1-ブタンチオールの2-位の水素とメルカプト基が協奏的に水脱素離して生成されたものと考えられる。以上の結果から,下記の反応機構が考えられる。
  • 市川 宏, 寺西 春夫, 石川 敏功
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 696-704
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリカルボシラン(PCS)はSi-C結合を骨格とする有機重合体であり,これを紡糸,不融化,焼成することにより炭化ケイ素繊維が得られる。PCSの不融化は空気中での酸化処珪が一般的な方法であるが,この処理条件が炭化ケイ素繊維の特性に大きな影響を与える。しかし,PCSの不融化および酸化反応の機構については不明な点が多い。これらを解明するため,PCS粉末を空気中で酸化処理したのち,重量変化,酸素量,融点,GPC赤外吸収スペクトルなどを測定し,その変化を調べた。その結果,つぎのことが明らかになった。PCSは酸化により導入される酸素量7wt%以上で不融化する。これはPCSのSiH結合同士が縮合し,Si-O-Si結合を形成するためである。この反応では同時に,SiH結合とH20との反応およびSiCH3結合の酸化によりSiOH結合が多量に生成する。しかし,これを窒素気流中,20℃.h-1の昇温速度で熱処理した結果,SiOH結合は脱水縮合してSi-0-Si結合を生成し,酸素量3~6wt%でも不融化することがわかった。これはPCSの不融化が従来よりも少ない酸素量でも可能なことを示している。
  • 横山 晋, 内野 洋之, 佐藤 正昭, 真田 雄三
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 705-713
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    赤平炭水添液化油の蒸留留分(9フラクション)をHPLCによって化合物クラスに分別し,このうち芳香環クラス(Fr-M,D1,D2,T)について1H-NMRスペクトルによる構造解析を検討した。液化油各芳香環クラスの1H-NMRスペクトルは,芳香環数および環形をそろえたフラクションであるので,各クラス系列ごとに特徴のある類似のパターンを示した。このスペクトルの帰属には,相当する芳香環クラス化合物の標準スペクトルを整理し,これとの比較によって各種結合形態水素の化学シフト領域を決定した。これら各結合形態水素のシグナル強度から,Hawらの方法によって分子あたりの各種結合形態炭素の個数を解析するHPLC-1HNMRによる構造解析法を検討した。この解析結果から,各芳香環クラス(M,D1)について蒸留温度に対する各種結合形態炭素の分布を明らかにした。この相関性は低分子舞準物質における同じ相関関係の延長上にほぼある。また,各芳香環クラスについて平均分子量(Mwx)と沸点の相関性は,別法のHPLC-MS法から求めた結果ともよい一致を示した。
  • 田中 基雄, 関口 辰夫, 川端 康治郎, 中村 貴義, 萬田 栄一郎
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 714-718
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-オクタデシルスクアリリウム色素〔3〕または〔4〕を合成するプロセスについで中間物〔1〕または〔2〕およびスクアリン酸をA)1-ペンタノール-クロロベンゼン中で還流する混合溶媒法,B)Nafion-H触媒の存在下に加熱する触媒法の二つの処理法で反応させ,その結果を比較検討した。反応は一般にA法よりもB法において順調に進行し色素の収率も向上した。
    合成の結果を見ると,〔3〕の場合には〔1〕における環内ヘテロ原子ならびにベンゼン環部の置換基が,また〔4〕の場合には〔2〕における置換基がそれぞれ色素の収率に影響を与えており,いずれの中間物の場合もスクアリン酸が作用する位置の電子密度を高めるような効果をもたらすものほど合成反応がよく進む結果が得られ,本合成が求電子反応である可能性を示唆した。また得られた色素の構造はIR-ならびにNMR-スペクトルの測定結果により色素の構造式中央に位置する四員環部において左右対称の1,3-型結合の形をとるものと推定された。
  • 菅原 享, 飯田 武揚, 河野 淳夫, 宮下 晃, 三田村 孝
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 719-724
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    cis-ジクロロジアンミン白金(II)錯体(以下cis-DDPと略記する)には制がん作用があり,現在臨床治療に広く使用されている.このcis-DDPは生体内において特異的にがん細胞のDNAと結合し,そのDNAの複製を阻害することが知られている。このようなことから,白金錯体の配位子を種々変えた新規の白金錯体の研究が数多くなされているが,担体配位子に硫黄含有配位子を用いた白金錯体についての研究は,ほとんど報告されていない。そこで担体配位子に硫黄含有配位子を用いた白金錯体であるジクロロ(2-アミノエチルスルホニル)白金(II)錯体を薪規に合成し,IRおよび13C-NMRスペクトル,元素分析,原子吸光分析などでその構造を解析し,この白金錯体とDNA構成ヌクレオシドとの相互作用をUV差スペクドルおよび解離塩化物イオン濃度を測定して研究した。その結果,ジクロロ(2-アミノエチルスルホニル)白金(II)錯体とDNA構成ヌクレオシドのUV差スペクトルには等吸収点が観測され,この系でのUV差スペクトルに関与する化学種が二成分存在し,それらが平衡をなしていることが示唆された。また,DNA構成ヌクレオシド存在下で,この白金錯体から解離する解離塩化物イオン濃度を測定したところ,白金錯体1molに対して塩化物イオンが2mol相当解離していることが明らかになり,この白金錯体は塩化物イオンを解離し,DNA構成ヌクレオシドと錯形成を行なっていることがわかった。さらに合成した白金錯体はアドリアマイシン耐性白血病細胞に対して特異的ながん細胞増殖抑制・障害性を示すことがわかった。
  • 森 邦夫, 斉藤 実, 中村 儀郎
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 725-733
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    6-置換1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールーナトリウム塩(RTDN)水溶液に金属板を浸漬すると表面に有機薄膜が生成することが見いだされた。薄膜の生成速度は浸漬温度,時間,RTDN濃度などの浸漬条件,RTDNの種類,および金属の種類の影響を受けた。被膜生成に臨界温度が存在し,一般にこれ以上で多分子膜が生成した。被膜の生成速度は一般に,10-5~10-4mol.dm-3濃度で急激に増加し,10-3mol.dm-3濃度で極大値となり,その後減少する傾向にあった。RTDNの6-位の置換基のアルキル鎖の炭素数が被膜生成の速度式に影響し,10以下のとき放物線則で,また,10以上のとき直線則で示され,RTDNの種類によりまったく異なる生成機溝で金属表面上に造膜反応の起こることが予想された。また置換基の構造を変化させることにより種々の機能を金属表面に賦与することが可能であることが示唆された。被膜の生成は銅,ニッケル,亜鉛,鉛,黄銅,キュプロニッケル,ステンレススチールなど多くの金属表面で起こった。被膜の表面構造はFT-IRおよびESCAスペクトルおよび表面張力から検討した結果,アルキル鎖の炭素数が10以下のRTDNでは6-置換1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールのCu(I)塩を,また10以上のRTDNでは6-置換1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールをおもな成分とすることがわかった。
  • 山崎 務, 野崎 志真子, 鈴木 健之
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 734-738
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    非晶質酸化バナジウム(V)(V2O5)の熱安定性,結晶化に対する温度および時間の影響について検討した。この非晶質薄膜は,単ロール融体超急冷法で作製した。おのおのの温度で熱処理を行ない,結晶化が開始する時間,および,結晶化終了までに要した時間は下記のとおりであることを明らかにした。
    非晶質体の熱処理においてわずかな重量増卿が観察された。これは,原料粉末を溶融したさいに生じた酸素欠陥が,熱処理中に酸素を吸収したことによると考えられる。また,結晶化の初晶として,斜方晶とは別の相が析出した。この相は,結晶化の初期段階にのみ存在し,その後は斜方晶V2O5の結晶成長であった。結晶化膜は(001)面への配向を示し,配向性は70%に達した。
  • 鈴木 憲司, 川瀬 薫, 坂見 宏, 飯田 昌造
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 739-742
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    未焼成および種々の温度で焼成したナトリウム-モンモリロナイト(Na-Mt)について含水量の異なる試料を-73℃ で凍結させて,X線小角散乱法により底面間隔(d(001))を測定した。焼成温度が600℃ 以下ではNa-Mtは水により膨潤するが,700℃ 以上の温度で焼成するともはや膨潤し得なかった。これらの試料について示差走査熱量計(DSC)により融解熱を測定したところ,膨潤可能なNa-Mt中には0.459-Water/g-Clayの未凍結水が認められた。膨潤能を失なったNa-Mt中にはこのような未凍結水は存在しないので,未凍結水はNa-Mt粒子群が構成する粒子間隙に存在するのではなく,層内空間に存在することが結論された。未凍結水量と層内空間容積から凍結モンモリロナイト中の未凍結水の密度(2.0g/cm3)が推算された。
  • 高橋 信行, 香月 収
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 743-751
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オゾン酸化法と電解法の併用(オゾン-電解法)に関する基礎的知見を得るために,エチレングリコルを試料物質として,オゾン-電解法による分解を行なった。
    分解反応はエチレングリコールに関して0.8次式で表わされ,反応速度定数はオゾン送入濃度が高くなるにつれて増加した。分解生成物としては4種の物質が検出された。オゾン酸化法および電解法では不可能であった全有機炭素(TOC)の減少も同時に認められ,これは反応過程中で生成される活性ラジカル種によって引き起こされるものと推定された。また,エチレングリコールの分解経路および脱二酸化炭素の過程を推察し,シュウ酸を経て脱二酸化炭素を起こす経路とともにギ酸を経由する経路が重要であり,この経路は主として活性ラジカル種によって引き起こされたものと推定された。さらに,TOCの減少から見た反応条件についても検討を行なった。
  • 安田 誠二, 山内 博利
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 752-756
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    天然ガス付随水中のホウ素をホウ素資源として回収することを目的として,N-メチル-(ポリヒドロキシヘキシル)アミノ基を有する市販のキレート樹脂によるホウ素の吸着特性をパッチ法およびカラム法により検討した。使用した樹脂は,アンバーライトIRA-743,ダイヤイオンCRB O2,デュオライトES371およびユニセレックUR-3500の4種類である。ホウ素の吸着量や吸着速度は樹脂によって多少の差が認められたが,いずれの樹脂もpH8~10の範囲で最大のホウ素吸着量が得られた。これらの樹脂10cm3を充填したカラムに天然ガス付随水の模擬試料(ホウ素100mg/dm3)を空間速度15h-1で通液したところ,いずれの樹脂も良好な吸着特性を示し,ES 371で樹脂体積の約35倍,そのほかの樹脂で約20~30倍の通液量を超えるとホウ素の漏出が認められた。吸着されたホウ素は,樹脂体積と同量の1mol/dm3硫酸および5倍量の水で溶離できた。いずれの樹脂も1mol/dm3水酸化ナトリウム溶液で再生してくり返し使用することができ,天然ガス付随水中のホウ素の回収に利用できることがわかった。
  • 太田 悦郎, 下沢 隆
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 757-761
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-Phenanthrol (0.1 mol) was added to a slurry of dichlorotriphenylphosphorane in CCl4obtained from O.11 mol of triphenylphosphine and 0.11 mol of chlorine. After the mixture was stirred for 30 min at 70 °C, the solvent was removed, and the residue was further heated at 320-340°C until evolution of hydrogen chloride ceased. Extraction of the mass by hexane gave crude 2-chlorophenanthrene in a yield of 59%, mp 85-85.5 °C after recrystallization from ethanol. Bromination was carried out similarly. All five isomeric phenanthrols and some monochloro- and monobromophenanthrols were converted to the corresponding halophenanthrenes and the dipole moments of the latter were measured. The results are given in Table 1.1-Chloro- and 1, 3(?)-dichloro-2-phenanthrols also were newly prepared by chlorination of 2-phenanthrol as shown in Scheme (2).
  • 太田 悦郎, 新谷 啓之
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 762-764
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    9-Phenanthrol had been known to give the 10-substituted compounds on the electro-philic substitutions. In this paper the second site of bromination of[1]was established as follows. Dibromo-9-phenanthrol, obtained by bromination of[1]in CS2, was converted to bromo-9-phenanthrol[4]by reduction with Zn/AcOH.[4]was converted to dibromophenanthrene[6]by Bucherer's reaction followed by a modified Sandmeyer's reaction as shown in Scheme (1). Compound[6]was identified as 3, .6-dibromophenanthrene by comparison with an authentic specimen obtained from 9-bromo-3-phenanthrol. Accor-dingly, the second bromination of[1]is revealed to occur at the 3-position.
  • 南部 秀三郎, 石原 由美子, 本間 秀樹, 武末 知行, 池村 糺
    1987 年 1987 巻 4 号 p. 765-770
    発行日: 1987/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Branched polymers were synthesized through the process of molecular-weight-decrease reaction in the presence of silica-alumina catalyst. Gaseous products, liquid products, branched oligomers (Mw=400) and branched polymers (Mη=1.1x104-2.8x104) were obtained by the reaction. The straight-c1iain branches (C1-05, C6 and/or higher) and branched branches (2-ethylhexyl, 2-ethylpemtyl and 2-ethylbutyl) were found in the branched polymer by means of 13C-NMR measurements. The highest concentration of total branches in the polymer was 71 branches/1000 CH2 and the yield of the polymer was 20 wt%. This concentration is much higher than that in commercial polyethylenes containing 10-20branches/1000 CH2. Similar branches were, also found in the branched oligomer.
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