日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1987 巻, 5 号
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  • 小沢 文幸, 山本 明夫
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 773-784
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジオルガノパラジウム錯体(PdRR'L2.R,R'=アルキル基,アリール基などの有機基.L=第三級ホスフィン配位子)の還元的脱離反応は,パラジウム錯体触媒を用いる有機合成反応の重要な素反応の一つである。本研究では,トランス,および,シス構造をもつ,一連のジメチル-,ジエチル-,メチル(アリール)-,および,ジアリールパラジウム(II)錯体を,立体選択的に合成単離した。さらに,合成した錯体の還元的脱離反応,ならびに,有機ヨウ化物との反応について,系統的な機構論的研究を行ない,反応に対する,錯体の立体配置,有機基,,および,配位子の影響を明らかにした。
  • 山川 一三男, 中島 豊比古
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 785-790
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ピリジン中においてニトロフェノール類のテトラブチルアンモニウム塩の電気伝導度測定を行ない,これらの塩の解離形態とテトラブチルアンモニウムイオン(Bu4N+)の挙動を検討した。テトラブチルアンモニウム塩は,強電解質の解離に近い単純イオン対の解離挙動をとることが認められた。単純イオン対の解離としてデータを処理した結果,各種テトラブチルアンモニウム塩についてのΔ 値および熱力学的解離定数が算出された。また,Bu4N+の極限モル伝導率の値が21.87S.cm2.mol-1と決定された。
    反対電荷イオンの電気泳動効果と緩和効果とを考慮にいれて,イオンの電解伝導率を算出する新たな処理方法を考案した。この方法を伝導度データに適用したところ,Bu4N+の電解伝導率.(K+)がアニオンの種類にまったく依存することなく固有の値を有し,K+とBu4N+の濃度との新たな関係を得た。水中とピリジン中とにおけるテトラブチルアンモニウム塩の解離の程度の差異は,溶媒和イオンの大きさにはほとんど依存せず,おもにイオン対形成可能な領域の広さに起因することが推察された。
  • 岡戸 秀夫, 佐野 庸治, 松崎 健二, 川村 吉成, 橋本 和生, 渡辺 日出夫, 高谷 晴生
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 791-796
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メタノールからの低級オレフィン合成用触媒として優れた性能を示すアルカリ土類金属含有ゼオライト(AEZ-M'-X,M'=アルカリ土類金属,X=SiO2/Al2O3比)について,アルカリ土類金属の種類とSiO2/Al203,比を変えて反応特性を検討した。反応は常圧流通式反応装置を用いて,LHSV=2.3h-1の条件下400~600℃ で行なった。各反応温度で(エチレン+プロピレン)収率が最大となる各触媒の最適SiO2/Al203比はそれぞれ異なっており,反応温度の上昇とともに(エチレン+プロピレン)収率は増加した。これらAEZ-M'触媒のうち,低級オレフィン合成用触媒としてもっとも優れていたのはAEZ-Ca-100~300触媒であり,600℃ で(エチレン+プロピレン)収率は65%に達した。また,この高収率触媒ではB.T.Xとパラフィンの各収率や炭素質生成量が少なく,さらに高温での活性劣化が炭素質析出によることを明らかにした。つぎに,AEZ-M'触媒についてBET比表面積,電子顕微鏡観察によるゼオライトの結晶形態の評価を行なった。さらに,低級オレフィン収率の高かったAEZ-Ca触媒についてFT-IR法,27Al-MASNMR法により酸性質の測定を行なった。その結果,Alの近傍にCaが存在し,弱酸点を形成していることがわかった。
  • 持田 勲, 藤津 博, 白石 育夫, 井田 四郎
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 797-801
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリアクリルニトリルから製造された活性炭素繊維(PAN-ACF),活性炭およびそれらの硫酸賦活物の一酸化窒素のアンモニアによる触媒活性を反応温度150℃,固定床流通式反応装置を用いて研究した。反応ガス中のNOおよび酸素の濃度の違いによる触媒活性への影響についても調べた。これらの活性炭の活性は硫酸賦活によっていちじるしく増加した。とくにPAN-ACFはもっとも高い活性を示し,1%NOを含む反応ガスを用いたとき,W/FO.02(g.min/ml)で,約60%の転化率を20時間以上示した。しかし,一酸化窒素が低濃度(400ppm)で,酸素が存在しない反応ガスの場合,同じW/Fですべての活性炭の定常触媒活性が大きく減少した。この反応ガスに酸素(4%)を添加すると,活性は顕著に向上し,20時間以上高活性を維持した。硫酸賦活PAN-ACF-BはW/Fを0.005(g.min/ml)と小さくしても約73%と高い転化率を示した。速度論,NO-炭素反応活性およびTPDEによって,この反応の活性点は表面含酸素官能基であることが示唆される。また,この活性点は比較的高濃度(数%)で反応ガス中に存在するNOまたは酸素による酸化により,触媒反応中生成および再生される。
  • 大隈 信行, 舟山 義一, 伊藤 宏, 水谷 惟恭, 加藤 誠軌
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 802-806
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ZnO微粒子を,5,10,20℃ の各温度において,飽和水蒸気を含むCO2ガス雰囲気と反応させ,その変化を粉末法X線回折によって調べた。その結果,反応温度の違いにより,つぎの3種類の塩基性炭酸亜鉛(炭酸水酸化亜鉛)を経由して中性の炭酸亜鉛 ZnCO3 Smithsonite(JCPDS 8-449)になることが明らかとなった。
    (1)20℃(Cu,Zn)CO3(OH)2 Rosasite(JCPDS 35-502)と同じ組成およびX線回折図形をもつZnのみからなる塩基性炭酸亜鉛。
    (2)10℃Zn5(CO3)2(OH)6 Hydrozincite(JCPDS 19-1458)(3)5℃JCPDSに未掲載のX線回折図形をもちCO2とH20の組成比が1:2である塩基性炭酸亜鉛。
    この反応で得られた4種類の炭酸塩の熱分析をDTAおよびTGAによって,またCO2の昇温脱離特性の測定と定量をFIDガスクロマトグラフによって行なった。その結果,この反応は酸化亜鉛結晶表面とCO2ガス雰囲気との間に水溶液の層が介在する反応であることが明らかとなり,その反応の機構について考察を加えた。
    この反応は,反応条件の微妙な制御が可能であるだめ,ZnO微粒子表面の精密な改質あるいは新しい機能を付加する方法として有効である。
  • 今井 秀秋, 野村 順治, 石橋 譲, 小西 徳三
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 807-813
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    希土類を含む種々の含水金属酸化物のF-吸着性を調べ,含水酸化セリウムについて乾燥条件のイオン性におよぼす影響,各種陰イオン吸着性能,および吸着選択性を検討した。希土類酸化物水和物のF-吸着性は,希土類金属のイオンポテンシャルが小さく塩基性が大きいためOH-を解離する傾向が大きいので,他の含水金属酸化物よりも木きく,アルミナ系吸着剤の4~6倍の能力を有する。含水酸化セリウムの陰イオン吸着性は調製時の乾燥条件の影響を受け,低温乾燥したものほど比表面積が大きく非晶性であり,吸着性能が高い。含水酸化セリウムは,F-,HPO42-,およびAs(III)に大きな吸着性を示す。陰イオン吸着選択性は,F->HPO42->SO42->Cl-,Br-,NO3-の順であり,F-はOH-よりイオン半径が小さく容易に交換サイトのヒドロキシル基と交換することが示唆された。吸着機構は,含水酸化セリウムのヒドロキシル基と陰イオンとのイオン交換によるもので,アルカリにより再生可能であり,可逆的イオン交換反応である。As(III)は非イオン交換的な吸着をするものと考えられる。
  • 潮 真澄, 兼松 宏, 住吉 義博
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 814-822
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    炭素繊維強化アルミニウム複合材料を200kg/cm2(2.03×107Pa)の一定圧力下で,500℃(P-法)と670℃(M-法)の条件下でホットプレスして作製した。Alマトリックスとの接合をよくするために炭素繊維にNi,またはCuコーティングを施した。CF-Al,CF(Ni)AlとCF(Cu)A1の3種類の複合材料を作製した。CF(Cu)Al複合材料の最大引張り強度は(Cu)Al金属複合材料のそれの約3倍であった。P-法とM-法でホットプレスしたが,炭素繊維と金属マトリックス(コーティング剤を含む)間の接合が良好で,かつ金属の炭素繊維への溶解度が小さいために,P-法がM-法より優れていた。CF.(Cu)Al複合材料のEPMA解析から,約50~60%のA1がCuへ拡散していた。しかしCuは5%だけAlへ拡散し,またわずかに炭素繊維にも拡散していた。一方,CF(Ni)Al複合材料の場合,Niは2~10%Alへ拡散したが,Alは約30%Niへ拡散した。
    Telelmanのfracture toughness機構を利用して解析した結果から,3種類の複合材料の引張り強度は,その解析結果二とよく一致する。
  • 見田 敬介
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 823-826
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    CoII(dmgBF2)2(ビス(ジメチルグリオキシマト)コバルト(II)錯体,CoII(dmgH)2をBF2でキャプした錯体,図1)と通剰(モル比で約2~6)のP(n-C4H9)3(トリブチルホスフィン)を含む紫ッ色のメタノール溶液に,室温,アルゴン雰囲気下で,低圧水銀ランプを用いて光照射を行なった。その結果,溶液の色は青色に変化した。光照射後に得られたこの青色溶液の可視吸収スペクトルは,光照射,する前の紫色溶液を低温(-40℃ 以下)にしたときに得られる青色溶液の可視吸収スペクトルと一致しており,さらに,すでに知られているNa+[CoI(dmgH)2.P(n-C4H9)3]-の可視吸収スペクトルともほぼ一致していた。以上の結果から,光照射および冷却,いずれ場合にも,CoII(dmgBF2)2.P(n-C4H9)3CH30H(紫色)からH+[CoI(dmgBF2)2.P(n-C4H9)3]-(青色)が生.成する同じ反応が溶液中で起こっていると結論した。さらに,光照射にともなう紫色から青色への溶液の色変化は,ベンゼンあるいはジクロロメタンのような非プロトン性溶媒中では認められないことから,今回の紫色から青色へ変色する光化学反応には,メタノールが関与していることがわかった。
  • 野崎 亨, 山下 浩, 黒住 誠治
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 827-830
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    鉄(III)との錯形成によるクエン酸,マロン酸およびシュウ酸の起泡分離と分析への応用を試みた。これら有機酸と鉄(III)との(1:1)錯イオンが,pH5~6で3倍モル量の酢酸ドデシルアミニウム(DAA)で,97~99%浮選回収される。モル比法および元素分析によるスカムの組成と,これらイオン会合体の条件生成定数とから,これら有機酸はDAAとのイオン対錯体として浮選されることが判明した。また,浮選スカム中の鉄(III)をイオン交換分離後,イオンクロマトグラフィーによりミカンジュース工場廃水中のクエン酸およびシュウ酸が定量できた。
  • 御園生 尭久, 谷田部 佳見, 長尾 幸徳, 阿部 芳首
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 831-837
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    分散型アゾ染料のポリエステル繊維への染着機構を検討する目的で,分散型アゾ染料とポリ(エチレンテレフタレート)フィルム(PET)との相互作用を,アゾ染料で染色したPETの可視吸収スペクトルに変形McRaeの式を適用し,実際の染料.繊維間に働く力を定量的に評価した。
    染料とPETとの相互作用のうち双極子間力は,0.2~0.5kcal/molで全相互作用の約2~3%の寄与であった。さらに,分散力と誘起力の和は9~15kca1/molで全相互作用の約97~98%の寄与であり,そのうち分散力の寄与は75~95%であった。分散型アゾ染料とPETの分子間相互作用には,分散効果が支配的であることが明らかとなった。
  • 米沢 養躬, 尾原 巧, 辛 重基
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 838-845
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベプチド合成上アミノ基の有用な保護基である,t-ブトキシカルボニル(Boc)やベンジルオキシカルポニル(Cbz)で保護したα,β-不飽和α-アミノ酸(α-デヒドロアミノ酸,DHA)を,おもに二つの方法から合成した。後者のCbz-DHAは相当するα-オキソカルボン酸にカルバミド酸ベンジルを直接縮合して,前者のBoc-DHAはさきに得られたCbz-DHAをN-カルボキシα-デヒドロアミノ酸無水物(ΔNCA)に変換したのちBoc化し,そののち加水分解して得た。さらに,これらのDHAを通常の方法によってエステル化する場合には,ΔNCAのイミノ基をBoc化したのち,適当なアルコールで開環することによって,目的のエステル化物を収率よく合成することに成功した。また,カルボキシルの保護基として有用なt-ブチルエステル化反応についても,詳細に検討した結果,t-プチルアルコール中濃硫酸の存在下,酢酸t-ブチルとのエステル交換反応によって,Cbz-DHAのエステル化物が高収率で得られることがわかった。
  • 桑原 正樹, 福西 興至, 野村 元昭, 山中 寛城
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 846-850
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-(ポリフルオロアルキル)-4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩〔1〕の熱開環反応におよぼす温度,溶媒および対イオンの影響を検討した。対イオンが塩化物イオン〔1-II〕の場合は,対イオンがo-ニトロベンゼンスルホン酸イオン〔1-I〕の場合にくらべて開環しやすく,前者はニトロベンゼン中では110℃,20分間で開環反応を起こし1-(ポリフルオロアルキル)-4-(2-クロロエチル)ピペラジン〔2-II〕を,160℃,1時間で開環二量体である,3,12-ビス(ポリフルオロアルキル)-3,12-ジアザ-6,9-ジアゾニアジスピロ[5.2,5.2]ヘキサデカン=ジクロリド〔3-II〕をそれぞれ高収率(78~81%)で与えた。後者は110℃,20分間では安定であったが,180℃,3時間で開環二量体〔3-I〕だけを良好な収率(52~65%)で与えた。水中(100℃,20時間)では〔1-I〕も〔1-II〕も反応しなかった。
  • 山本 二郎, 田中 信導, 山本 雅彦, 中川 富夫, 会見 博範
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 851-857
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4-(フェニル-ONN-アゾキシ)安息香酸〔1α〕と4-(フェニル-NNO-アゾキシ)安息香酸〔1β〕とは,Wallach転位の条件下でα,β-相互変換が起こっていることが認められた。4-(フェニル-NNO-アゾキシ)安息香酸メチル〔2β〕も同様に濃硫酸中4-(フェニル-ONN-アゾキシ)安息香酸メチル〔2α〕に変換したが,〔2α〕から〔2β〕への変換は起こらなかった。4-(フェニル-NNO-アゾキシ)フェニルアセタート〔3α〕と4-(フェニル-ONN-アゾキシフェニル)アセタート〔3β〕どの混食物(α/β=0.63)と硫酸との反応では,4-ヒドロキシアゾベンゼン〔7〕が生成し,同時に〔3β〕から〔3a〕への変換が観察された。
  • 山本 二郎, 秋森 伸治
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 858-861
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンズヒドロール〔1〕および二,三の誘導体を塩化鉄(III)(FeCl3)とともにニトロメタン中で加熱すると,クロロジフェニルメタン〔7〕と相当する誘導体が得られたが,同時にかなりの量のベンゾフェノン類が副生した。反応系の基質に対して10分の1molのトリベンジルアミンを添加すると,ベンゾフェノン類は生成せず〔7〕とその誘導体の収率が向上した。
  • 高橋 信行, 香月 収
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 862-869
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水溶液中におけるフェノールおよびエチレングリコールのオゾンによる酸化分解を送入オゾン濃度5.3~15.6mg.dm-3,温度10~30℃,溶液濃度1.6~8.O×10-3mo1.dm-3のもとで行なった。
    フェノールではα,β-不飽和カルボニル化合物の異常オゾン分解およびそれによって生成されるギ酸の分解の両者によりTOCの減少が認められたが,エチレングリコールではTOCの減少はまったく認められなかった。見かけ上の分解反応はオゾン投与速度を考慮に入れた一次反応式で表わすことができ,エチレングリコールと比較しフェノールでは見かけの反応速度定数は約3~8倍,見かけの活性化エネルギーは約1/4であった。フェノールのTOC除去にさいして,フェノール1molあたりのオゾン投与量とTOC残留率をプロットすると2本の直線性が認められており,直線の折れ曲りは不飽和化合物からなる系から脂肪族化合物からなる系への転位に対応しているものと推定され,この位置は温度により変化した。
  • 山田 宗慶, 加茂 徹, 湯 潔, 天野 呆
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 870-876
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    チエタンの熱分解反応機構を明らかにするため,圧力10-3Pa,反応温度1100K以下でチエタンの熱分解を行なった。
    生成物はエチレンとチオホルムアルデヒドで,下記の量論関係が得られた。
    基質の減少量から転化率を求め,単分子反応速度定数kunlを算出した。この反応についてビラジカル機構を仮定し,ピラジカルの生成速度k1,閉環速度k-1,分解速度k2の大小により三つの場合に分けてkunlを解析した。各場合についてRRKM理論を用いて計算を行なった結果,下記の高圧限界の反応速度定数が得られた。
    これらの活性化エネルギーは,ピラジカルの生成エンタルピーにくらべて,1O~20kJ.mol-1ほど高く,これはビラジカルの閉環あるいは分解の活性化エネルギーに相当すると考えられる。このことから本反応が他の四員環化合物と同様,ビラジカル機構で進行しているものと推定される。
  • 蘇 舜恭, 高橋 保, 児玉 照幸, 干鯛 真信, 内田 安三
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 877-882
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Fe(CO)5をジフェニルメタン中177℃ で熱分解することにより,炭素繊維表面を均一に鉄金属でコーティングすることができた。Fe(CO)5を液相で熱分解すると無定形状態の鉄金属が析出した。Pd金属の添加はFe(CO)5の熱分解を促進し,結晶性の鉄金属の析出を可能にした。溶解度が低いFe2(CO),では炭素繊維表面への金属の析出量が少ない。
  • 野村 正人, 藤原 義入
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 883-887
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石油化学工業などで広く利用されている合成ゼオライトには,分子ふるい効果あるいは選択的吸着性などの異なる特性がある。その合成ゼオライトを触媒とし生成物の選択性を目的に,今回,モノテルペンオキシド類であるリモネン=1,2-オキシド〔1〕,2-ピネンオキシド,〔2〕および2(10)-ピネンオキシド〔3〕のギ酸による分解反応について検討した。その結果,〔1〕の場合にはいずれのゼオライトを触媒としてもギ酸との反応では,C2位側のエーテル結合の切断が優先的に起こって得られるジヒドロカルボン〔4〕が生成物中85~87%の生成割合を占めた。〔2〕の場合にはピナン骨格の開裂と同時にエーテル結合の切断が起こって得られるα-カンホレンアルデヒド〔9〕が13Xゼオライトを触媒としたときに,最高96%の生成比で得られることがわかった。つぎに,〔3〕からは用いたゼオライトの種類によりミルテノール〔11〕とペリリルアルコール〔12〕の生成割合に変化が認められ,とくに13Xゼオライトでは〔12〕を84%の生成比で得ることができこのようにギ酸と合成ゼオライトとの組み合わせを考慮することにより有用なテルペノイドが得られた。ることがわかった。
  • 山本 浩之, 西田 綾子, 早川 忠男, 西 則雄
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 888-893
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ホスホロアシド酸ジフェニル法により3種類の周期配列ポリ(X-Glu)(X:Ala,Leu,Phe)を合成した。pHを変えた円偏光二色性(CD)スペクトルの測定結果からポリ(Ala-Glu)およびポリ(Leu-Glu)はヘリックス(部分)-ランダムコイルの二次構造転移が認められ,ポリ(Phe-Glu)はβ-型の関与する構造転移を引き起こす。
    ポリ(X-Glu)と色素アクリジンオレンジ(AO)との不斉相互作用を吸収およびCDスペクトルの測定結果から検討した。可視部領域における吸収スペクトルの変化にともないポリ(X-Glu)-AO複合体はpH4.5~9.2でCDを誘起する。アミノ酸Xの側鎖の種類が誘起CDの形状と強度に影響をおよぼし,側鎖の疎水性(かさ高さ)が増すにつれ誘起楕円率は大きくなった。
  • 井本 稔, 大内 辰郎
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 894-898
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報でラジカル重合の成長反応の活性化エネルギーEp は成長鎖ラジカルのESOMOとモノマーのELUMOの差幅の大きいほど小さいとして式(1)を呈出し,そのためには中間体の一部としてラジカル側に電子が移行した電荷移動錯体〔2〕が考えられるとした。そのためにMullikenの電気陰性度XをKoopmansの定理と組み合わせた式(5)によってΔXを,ab initio RHF MO法で計算した結果から算出した。しかし一定の結果を得ず,〔2〕の生成を定性的に支持するにとどまった。そこでラジカル側とモノマー側の電気陰性度の差を示す新しい因子ΔX'を式(9)として設定した。ΔX'の計算結果はラジカル側の電気陰性度がモノマー側のそれよりも大きく,〔2〕を生成させることを支持したのみでなく,ΔX'の正値が大きいほどEp が小さくなる関係が直線的であることを証明し得た。また,そのことから前報で得た式(1)を導き出すことができた。
  • 中 昭廣, 杉山 浩, 西田 善久
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 899-904
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高濃度石炭-水スラリー(CWM)を商業規模で生産するためには製造直後に安定性を予測する必要がある。ところが既報の安定性評価方法では長期間経過しないと結果が得られず安定性の予知ができなかった。
    本報では,CWMのレオロジー特性から降伏値と安定性に定量的な相関性を見いだし,つぎの結論を得た。
    1)Saxon Vale 炭 CWMは,降伏値が高いほど安定日数が長く,両者に定量的な関係が認められる。
    2)CWMに加えたかきまぜエネルギーと降伏値には相関性が認められ,かきまぜエネルギーを高めるとCWMの降伏値が向上し安定日数が長くなる。
    3)分散剤量を多くすると降伏値は低下したのち,一定値を示す。安定化には最適添加量が存在する。
    4)石炭粒径を小さくすると降伏値は高くなる。また石炭濃度を高めることで降伏値が上昇する。
    5)石炭の[H]や[0]が大きい若い石炭ほど,降伏値は低くCWMの安定性が悪い。
  • 鹿野 満, 籏野 昌弘, 田尻 明男
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 905-910
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々のねじれた構造をもつスメクチックC(以下Sc*と略記する)液晶の円偏光二色性(以下CDと略記する)スペクトルを測定した。ねじれた構造に由来するものと考えられるCDスペクトルから,Sc*液晶のピッチ幅,ねじれの方向を考察した。ほかの光学的測定から求めたピッチ幅はCDスペクトルから求めたピッチ幅とがよく一致した。ピッチ幅,ねじれの方向に由来するものと考えられるCDスペクトルは測定温度,試料の厚みによって変化する。とくに,〔2〕p-(hexyloxy)phenyl 4'-[(S)-2-methylbutyl]biphenyl-4-carboxylateからなる液晶では,コレステリック(以下Chと略記する).Sc*,Sc*.Chの転移点で不連続で特異的なCDスペクトル変化を観測した。これはねじれ構造が転移点近傍で不連続に変化することに起因するものと考えられる。
  • 西 久夫, 平沢 裕次, 北原 清志
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 911-915
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    紫色顔料としてカルバゾールジオキサジン〔X〕が知られているが,従来,〔X〕の構造式は線形構造〔I〕で表わされてきた。しかし,多環縮合物中間体〔3〕から脱水素閉環する場合,閉環位置に二通りあり,線形構造をとる場合と非線形構造をとる場合が考えられる。
    この班究では,縮合中間体にあらかじめアルコキシル基を導入しておき,脱アルコ一ル閉環して線形化合物〔I〕を合成し,従来法で得た〔X〕と物性を比較した。その結果,〔X〕は線形構造でないことがわかった。また,中央の環に塩素を含まないカルバゾールジオキサジン類〔N〕,〔V〕を合成し,塩素原子の効果を調べた。
  • 才木 義夫, 片桐 佳典
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 916-921
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    大気環境を評価するための新しい汚染指標AQIを提案し,神奈川県地域の大気環境の評価を試みた。大気環境指標としては,すでにPindex,PSI,ORAQIが米国において提案されているが,AQIはPSIの方法を考慮して作成された,日本の大気環境に適用可能な実用的な指標である。AQIの計算においては,環境基準の定められているSO2,NO2,CO,Oxおよび粒子状物質を汚染物質とし,それぞれの(日平均濃度/環境基準)×10(Oxについてのみ日最高濃度)を計算してその最大値をその日のAQIとし,AQIに対応する汚染物質を主要汚染物質とした。また,ほかに環境基準を越えている物質(AQI 11以上)が存在する場合にはそれらを主要汚染物質に含めた。大気環境の評価を容易にするために,AQIの値を清浄,普通,汚染1,汚染2,汚染3の5段階に階級化した。AQIを神奈川県地域に適用した結果,県内の主要汚染物質とその汚染寄与が明確になり,AQIが大気環境指標として有効であることが認められた。
  • 保利 一, 田中 勇武, 秋山 高
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 922-927
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    活性炭に吸着した有機溶剤の加熱脱着曲線および脱着率を簡便に推算するため,物質収支に基づく解析モデルを作成し,トルエンおよび酢酸エチルの実験値と比較検討した。脱着カラム内の溶剤は完全混合と仮定し,吸着等温線に実測値に基づき数本の直線で近似した。加熱脱着における粒子内部からガス相への溶剤の移動速度はきわめて大きく,脱着曲線の形は主として吸着等温線に依存することが認められた。脱着率に関しては,トルエンの場合に実験値の方がやや高い傾向がみられたが,おおむね実験値と推算値はよい一致を示した。
  • 神谷 信行, 寺崎 達
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 928-930
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Effects of underpotential deposition (UPD) on the anodic oxidation of C1 fuels such as CH3OH or HCOOH were studied by using Pt electrodes of different roughness factors (R.F.). When a small amount of Pb2+ was added to the HCOOH solution, an extraordin arily large enhancement was observed on a smooth Pt electrode, while the enhancement became smaller as the R. F. increased. With an electrode of R. F. of 540, anodic currents iincreased bycabGut 20-40% on addition of Pb2+ at the constant potential electrolyses.
  • 畑田 清隆, 浅野 隆, 斎藤 功夫, 伊東 祥太, 生島 豊, 後藤 富雄
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 931-933
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The sawdust of Sugi (Cryptomeria japonica D. Don) was extracted with supercritical carbon dioxide (SC-CO2) at 27.0 MPa and 313 K to obtain the essential oil which corresponded to 19.8% of the hexane extract. GC-MS analysis of the neutral parts of both extracts revealed that SC-CO2 extract contained moderate amount of sesquiterpenes which we re f ound in the hexane extract as trace components. Furthermore it was found that SC-CO2 extract did not contain two phenanthrene derivatives which were included in the hexane extract, but contained other two phenanthrene derivatives which were not found in the hexane extract. Microscopical observation of the wood suggested that above mentioned discrepancy was due to a difference of osmotic action between SC-CO2 and hexane for the contents of the ray parenchyma or longitudinal wood parenchyma.
  • 中塩 幸泰, 山本 忠弘
    1987 年 1987 巻 5 号 p. 934-936
    発行日: 1987/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Four new peroxy esters, of which three compounds have the carboxy groups in the neighboring positions of the peroxyl group, were synthesized in good yields. t-Butyl 2(carboxy)cyclohexaneperoxycarboxylate and t-butyl cis-6-carboxy-3-cyclohexene-1-peroxycarboxylate were prepared by adding t-butyl hydroperoxide to each corresponding dicarboxylic acid without solvent, t-Butyl o-carboxyperbenzoate and t-butyl o-chloroperbenzoate were prepared by adding t-butyl hydroperoxide to phthalic anhydride and o-chlorobenzoyl chloride, respectively. The polymerimti6n of styrene was carried ogt by using three peroxy esters having the carboxyl groups as the initiators. The polymerization was initiated by the peroxy esters, but it was slow itomparedi with that, initiated by azobisisobutyronitrile under the same conditions.
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