日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1987 巻, 6 号
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  • 山本 善史, 木本 衛, 稲毛 剛, 塚口 実紀, 足立 光司
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 939-945
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルカリ電池の正極板としての銀-酸化銀電極の容量増加を目的として,電解質としての水酸化カリウム水溶液中に微量の水酸化セシウムを添加したときの銀-酸化銀電極の酸化.還元挙動におよぼす影響について検討し,つぎのような結果を得た。
    (1)充放電曲線から,水酸化セシウムの添加によって,銀-酸化銀電極の容量が顕著に増大することが認められた。(2)電流-電位曲線から,水酸化セシウムの添加によって,酸化第一.第二および還元第一.第二のすべてのピークが増大することが認められた。(3)水酸化セシウム1×10-2mol/l(4.7mol/lKOH)溶液中における電極は,もっとも良好な結果を示した。(4)水酸化セシウム添加の効果は,放電時に銀活物質にたいし大なる効果を示すことが認められた。(5)電子顕微鏡による電極表面状態の観察によると,水酸化セシウムの添加により銀活物質は,無数の微孔をもった結晶粒として,あるいは放射状の結晶生長をすることによって,充放電特性を顕著に改善したものと思われる。
  • 松下 寛, 石川 徳久
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 946-953
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一定イオン強度下での酸解離定数の電位差決定に必要な水素イオン濃度を測定するために,酸性領域における液間電位差の補正について研究した。平衡研究に通常用いられる,試料液(その支持電解質は塩橋電解質と同じ)と本質的同一イオン強度をもつ塩橋の代わりに,高濃度の塩橋液(3.3mol.dm-3KCIまたは5mol.dm-3NH4NO3)を使用した。液間電位差(Ej)は,近似的に試料液の水素イオン濃度(h)の一次関数で変化した:Ej=Ejo-j.h。ここで,Ejoはh→0における液間電位差であり,jは塩橋液および試料液中のイオン強度と電解質の種類によってきまる定数である。j値は試料液のイオン強度の増加とともに減少し,ついで最小値を経て増加する。イオン活量係数と水素イオン移動度の変化を考慮したHenderson式からこれらの結果を考察した。二つの型の液-液接続すなわちガラススリーブおよびセラミックプラグは,ほぼ同じような結果を示した。高濃度の塩橋液を用いた場合のj値は,一般に同一イオン強度において,試料液と同じイオン強度の塩橋液についての値よりもかなり小さくなり,したがって前者の塩橋液では液間電位差の補正から生ずる水素イオン濃度の誤差が小さいという利点がある。
  • 加藤 貞二, 渡辺 勉
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 954-961
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    マイクロコンピューターで制御し,半自動的にLB膜を作成する装置を試作した。この装置は高精度のπ-A等温線およびKS=A等温線測定にも用いることができる。表面圧制御の原理を説明し,四つの制御パラメーターの変化にともなう表面圧制御状態の変化を検討して最適制御の条件を求めた。この表面圧の最適制御が良質な累積膜の作成を可能にする。
    この装置をアラキン酸やジヒドロアイリスキノン(2-heptadecyl-6-methoxy-p-benzoquinone)の単分子膜に適用し,各種固体基板上に累積した。X線回折,偏光IRなどを用いてジヒドロアイリスキノン累積膜の構造を調べたところ,ベンゾキノンヘッドグループの特異な配向が推定された。この特異な配向は,LB法において基板の上下運動にともない単分子膜から累積膜へ移行するさい起こる膜物質の流れのなかで,膜物質分子間に働く流体力学的力によってもたらされるものと考えられる。
  • 岡戸 秀夫, 庄司 宏, 川村 吉成, 塩見 康, 藤沢 一喜, 萩原 弘之, 高谷 晴生
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 962-968
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    500℃ 以上の高温でのメタノール転化反応において,高い低級オレフィン選択性を示すSiO2/Al203比が200のカルシウム含有ゼオライト触媒を,仕込みCa/Si比,OH-/Si比,H2O/Si比などの合成条件を変えて合成し,その物性,反応特性と触媒寿命を検討した。その結果,合成品中のアルミニウム含有量はほぼ仕込み量に近い値が得られたが,カルシウム含有量は仕込み量とOH-/Si比によりいちじるしく変化することがわかった。つぎに,これらのゼオライト触媒について,そのメタノール転化反応活性と触媒寿命を調べた。反応は,常圧流通式固定床反応装置を用いて,LHSV=2.3h-1で行なった。合成品中のCa/Al2比に対して,600℃ での生成物組成または触媒寿命をプロットすると相関がみとめられ,どの触媒の反応結果もカルシウム含有量と関連していた。また,拡散反射型のFT-IR法による酸怪質の測定から,カルシウム含有量の増加とともに3605cm-1の強酸点のピークが減少し,反対に3660cm-1の弱酸点のピークが増大した。以上の結果から,合成条件を変えた触媒の反応特性はカルシウム含有量と関連しており,カルシウム含有量の増加とともに平均の酸強度が弱められた結果,高温で高い低級オレフィン収率が得られ,長寿命となることがわかった。
  • 青島 淳, 山口 辰男
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 969-975
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化モリブデン(VI)(MoO3)とリン酸をモル比12対1で,水媒体中で反応させても,MoO3は完全には溶解しない。31P-NMRによる解析で,PMo12のほかにPMo9,P2Mo18が副生し,リン酸が消失していることが,その原因であることを明らかにした。しかし,t-ブチルアルコールのような含酸素有機基質を添加すると,MoO3は,よりすみやかに,かつ完全に溶解し,選択的にPMo12を生成することを見いだした。この効果はPMo12陰イオンと含酸素有機基質の相互作用によって,PMo9の生成を抑することに起因している。
    ヒドラジンなどの還元剤を生成PMo12を四電子還元するに十分な量添加しても,MoO3はすみやかに,かつ完全に溶解し,PMo12のみを生成させることができた。これは生成したPMo12が還元によりβ-PMo12(IV)に変化し,これが水溶液中で安定であることに基づく効果であると考察した。
  • 青島 淳, 山松 節男, 山口 辰男
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 976-983
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高濃度ヘテロポリ酸(HPA)水溶液中のイソブテン水和(t-ブチルアルコール生成)活性は鉱酸水溶液中にくらべ約10倍高いことを見いだした。高活性な水和反応の理由の第一は,高濃度HPA水溶液のイソブテン溶解度増加効果にあるを明らかにした。HPAによる溶解度増加現象は,イソブタンのような飽和炭化水素でも観測され,Keggin型HPA陰イオンの強いカオトロピック効果に起因するものと考察した。酸度関数の測定から,高濃度HPAは同一プロトン濃度の鉱酸より強い酸として作用することを見いだし,これが高活性の第二の理由と考えた。第三に,高濃度では酸度関数の増加によって期待される以上に水和活性が増加することから,高濃度HPA水溶液中ではHPA陰イオンがイソブテンと相互作用し,反応性を高めると推定した。水和反応の見かけの活性化エネルギーからもイソブテンとHPA陰イオンの相互作用を支持する結果が得られた。この配位は0.1mol.dm-3以上の高濃度領域で顕著になり,イソブテンがプロトンと反応する経路のほかに,イソブテンがHPA陰イオンに配位する経路での反応も進行させることになり,水和活性を増大させる。とくに,0.5mol.dm-3以上では配位経路を経由する反応が優先的に起こると結論した。
  • 青島 淳, 山松 節男, 山口 辰男
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 984-989
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イソブテンと1-ブテンの競争水和反応を80℃ 以下,かつ0.1mol.dm-3から飽和溶解度までの高濃度ヘテロポリ酸(HPA)水溶液中で行なうと,イソブテンが選択的に水和され,t-ブチルアルコール(TBA)が鉱酸触媒より高活性かつ高選択的に生成することを見いだした。高濃度HPA永溶液中ではHPA陰イオンに対するイソブテンと1-ブテンの競争配位があり,イソブテンはより優先的に配位して,1-ブテンの配位を抑制する。この結果,1-ブテンの水和(s-ブチルアルコール生成)反応活性が低下し,イソブテンの選択水和性が向上するものと推定した。水分子の配位も活性および選択性に大きく影響する。飽和溶解度以上にHPAを存在させるとTBAとジイソブテン(DIB)の生成速度がともに急激に増大する。また,飽和溶解度以下でも80℃以上ではSBA,DIBが生成しやすくなる。これらはHPA陰イオンからの水和分子の脱離の結果として解釈される。高濃度HPA水溶液中で実現された高い活性および選択性は,HPA陰イオンに対する水,イソブテン,1-ブテン,三者の競争配位に起因するものと推定した。
  • 笠岡 成光, 阪田 祐作, 田中 栄治, 内藤 龍之介
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 990-1000
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェノール樹脂系繊維(カイノール)を出発原料として,N2,CO2,H2O,LPG燃焼ガスなどを用いて,おもに800~1000℃ で熱分解炭化および炭化工程を省略した直接賦活を行なって,表面積や細孔容積などの大きく異なる繊維状活性炭の製造を試みた。他方,通常の粒状活性炭についても生ヤシ殻からの比較製造実験を行ない,両者の細孔の開発挙動や生成活性炭の細孔構造特性や気相(水蒸気,ベンゼン,シクロヘキサン)と液相(ヨウ素)での吸着特性などを評価.対比した。得られたおもな結果は,つぎのとおりである。
    (1)カイノール繊維からは2000~3000m2/gの高表面積をもつ繊維状活性炭が収率10~30%で得られた。
    (2)吸着分離で重要な半径10nm以下のミクロ細孔容積については,いずれの原料からも約1.2cm3/gをもつ活性炭が得られたが,繊維状活性炭の細孔分布は半径0.8~1.Onmにのみ鋭利な中心ピークをもつ,ほぼ理想的な単峰型分布であった。
    (3)ヤシ殻活性炭では半径10nm以下の細孔領域でも単峰型分布でなく,半径10~104nmのマクロ細孔容積をも共存している点が繊維状活性炭と相違した。
    (4)原料と賦活度の異なる生成活性炭に対するベンゼンとシクロヘキサンの吸着特姓の比較から,カイノール繊維状活性炭の細孔入口形状がスリット状であることが検証された。また,ベンゼンとシクロヘキサンの分子最小径0.37とO.48nmの違いに基づく質量分離比16:1の優れた分子ふるい効果が確認され,製造条件の選定により,細孔径の制御が可能であることが確かめられた。
    (5)細孔物性や吸着特牲の比較基準として用いた,石炭原料の市販粒状活性炭は,多くの点でヤシ殻粒状活性炭と類似した特性を示した。
  • 住吉 義博, 潮 真澄, 西村 正美
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1001-1008
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Na3AlF6-NaFフラックス法にてβ-Al203の結晶育成とその育成条件を検討した。母剤にはα-Al203,またはβ-Al203を用いた。Na3AlF6フラックスを蒸発させた場合と,Na3AlF6フラックスにNaFを添加した場合の二通りの方法を行なった。前者の方法では,Na3AlF6フラックスを1050℃で30wt%以上蒸発させると,β-Al203結晶が成長した。しかし,Na3AIF6-NaFフラックスを用い,β-Al203を母剤とした場合は,NaFを20wt%添加したときにβ-Al203が成長した。一方,α-Al203を母剤とすると,NaFを30wt%以上添加しないとβ-Al2O3結晶が成長しなかった。β-Al203結晶の成長速度とNaF量との関係から,β-Al203結晶を成長させる最適条件は,Na3AlF6フラックスに20wt%NaFを添加したときである。Na3AlF6-20wtNaFフラックスを用い,1041℃ で温度差1.9℃ の条件下で成長したβ-Al203単結晶の線成長速度は,c面で約1.3×10-3,a面で約1.5×10-3mm/hであった。Na3AlF6フラックスの場合は,同温度で温魔差が0.6℃ のとき,c面とa面の線成長速度はそれぞれ約3.8×10-3と4.6×10-3mm/hであった。成長したβ-Al203単結晶はc{001}とa{100}のみで取り囲まれ,そして無色透明であった。透過Laue写真から,その結晶性は良好であった。
  • 蠣崎 悌司, 長谷部 清, 吉田 仁志
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1009-1015
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カテコールアミン(CA)類がモリブデン(VI)-臭素酸イオン系のポーラログラフ接触電流をいちじるしく増大させることに着目して,この反応をポストカラム検出に用いるCA類の高速液体クロマトグラフ(HPLC)分析怯を開発した。CAおよびモリブデン(VI)を含む1mol.dm-3アンモニア/硝酸アンモニウム緩衝溶液中(pH8.2)でのノルマルパルス(NP)ポーラログラムには,独立した2段の波が現われる。上述の系に酸化剤である臭素酸イオンを共存させるとき,第2波の立ち上がり部分に大きな接触極大波が現われた。この接触極大波のザイクリックボルタンメドリーおよび直流波高の水銀だめ高さへの依存性などから,極大波は反応電流であることがわかった。CA類のHPLC分析には,硝酸でpH3に調節したNH4NO3溶液を溶離液として用い,10mmol.dm-3Mo(VI)および0.6mol.dm-3臭素酸イオンを含む1.4mol.dm-3アンモニア/硝酸アンモニウム緩衝溶液(pH8.35)を反応試薬溶液として用いた。NP検出でのピーク高さはタスト検出にくらべて約20倍大きく,4種類のCAを分離定量することができた。ノルエピネフリン(NE),エピネフリン(E),3,4-ジヒドロキシベンジルアミン(DBA)およびドーパミン(DA)の検出限界(信号対雑音比,S/N=2)は,16.7.7,8.6pmo1および13pmolであった。
  • 松井 博, 網由 佳代子, 橋詰 源蔵, 足立 吟也, 塩川 二朗
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1016-1022
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イオンクロマトグラフィーにより硫酸カルシウム溶液中の微量のクエン酸イオンを分離定量するのに2種類の分離カラムを使って検討した。
    有機酸分析用カラムを使用するには,試料中の硫酸イオン濃度を下げなければならないが,水酸化バリウム飽科溶液の適量を試料に添加するとクエン酸イオンへの影響を少なくして硫酸イオンを除去できることがわかった。さらに,カラム内で硫酸イオンを除去するバリウム形交換カラムとUV検出器を併用すると720mg/lの硫酸イオンが共存する溶液中の約5mg/lのクエン酸イオンを分離定量できた。この場合のクエン酸イオンの検出限界は1mg/lであった。
    陰イオン分離カラムを使用するときはイオンクロマトグラフに付属しているバルブを利用する。2本の分離カラムの間にバルブを配置し,1番目のカラムで硫酸イオンとクエン酸イオンと分離する。さきに溶離した硫酸イオンはこのバルブをつかって系外に排出し,一方,クエン酸イオンは2番目のカラムで再度分離する。硫酸イオンがクエン酸イオンへ影響することもなく微量のクエン酸イオンを定量することができた。硫酸イオンが1400mg/l共存してもクエン酸イオン濃度が1から20mg/lの範囲で検量線はよい直線性を示した。この場合,クエン酸イオンの検出限界はO.1mg/lであった。
  • 尼崎 巌, 中田 昌宏, 崔 湘活, 広田 穣
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1023-1026
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    昇温ガスクロマトグラフィーによる新しい吸着熱の測定の解析を検討した。活性炭に対する,いくつかの低沸点ガスと活性アルミナに対する低級炭化水素の吸着熱を測定し,従来行なわれている恒温ガスクロマトグラフィーで得られた値と比較したところ,よい一致が見られた。本法は昇温ガスクロマトグラフィーにおける操作条件(昇温速度/流量)と試料の保持温度の関係を得るのに有効である。
  • 後藤 義隆, 山田 栄一, 中山 雅陽, 徳丸 克己, 新井 達郎
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1027-1032
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンゾフェノン骨格を有する四官能性有機過酸エステルである3,3'4,4'テトラキス(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノソと,芳香族チオピリリウム塩である4-(4-ブトキシフェニル)-2.6-ビス(4-メトキシフェニル)チオピリリウム=テトラフルオロボレートとを組み合わせて新しい混合型光重合開始剤とし,ビニルモノマーの可視光による増感光重合を行なった。
    この混合開始系は芳香族チオピリリウム塩の励起光である波長450nm以上の可視光を照射すると有機過酸エステルを分解し,これにより効率よく各種ビニルモノマーの重合を開始した。
    メタクリル酸メチルの場合,その光重合速度は有機過酸エステルの濃度の1/2乗に比例した。
    この増感光分解の機構は,最低励起エネルギーや酸化還元電位の測定,および光分解量子収率を求めた結果,単純な励起エネルギー移動や電子移動による増感ではないことがわかった。
  • 持由 勲, 大平 正人, 坂西 欣也, 藤津 博, 岡崎 博
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1033-1039
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    市販の4種の活性炭およびアルミナ担持貴金属(Pd,Rh,Pt,Ru.担持率:5wt%)触媒を用いるアクリジンの選択的部分水素化を試みた。反応温度100℃,水素反応圧70kg/cm2,反応時間15分間の条件で触媒スクリ一ニングを行なったところ,PdおよびPt触媒が9,10-ジヒドロアクリジン〔2〕を選択的に生成した(〔2〕の収率:70%似上)のに対して,RhおよびRu触媒は,低転化率で,特定の水素化体に対する選択性は低かった。Pd/Al203触媒を用いて,9,10-ジヒドロアクリジン〔2〕および1,2,3,4,4a,9,9a,10-オクタヒドロアクリジン〔5〕の選択合成の最適条件を探索したところ,ジヒドロ体については最大収率88%(100℃,水素反応圧70kg/cm2,10min),オクタヒドロ体〔5〕については最大収率62%(150℃,水素反応圧140kg/cm2,40min)を得た。〔5〕については,〔1〕→〔2〕および〔2〕→ 〔5〕や水素化を2段階で行なうことにより,〔5〕最大収率80%(Pd/Al2O3触媒,第1段:100℃,水素反応圧70kg/cm2,10min,第2段:120℃,水素反応圧70kg/cm2,60min)で調製できた。水素化生成物分布の経時変化から,アクリジンの水素化反応経路を提案した。
  • 伊藤 勝, 籏野 昌弘
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1040-1046
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エピクロロヒドリンで橋かけ化したβ-シクロデキスドリン.ポリマーの構造を13C核磁気共鳴法で解析した。β-シクロデキストリンの6-位の炭素に帰属されるシグナルは63ppmに観測される。エピクロロヒドリンの量の増加とともに,エピクロロヒドリンで橋かけ化されたβ-シクロデキストリン.ポリマーでは63PPmのシグナルの近傍に新しいシグナル(65ppm)が現われる。この65ppmのシグナル強度は橋かけ度の増加,すなわち,エピクロロヒドリンの反応量の増加とともに増大する。この63ppmのシグナルと65ppmのシグナルとの強度比から,橋かけ化した6-位のヒドロキシル基数を指定した。この推定は13C-CP/MASNMRによっても確認された。橋かけ化の度合とともにこのシグナルは幅広くなる。この推定から,6-位のヒドロキシル基が3個以上反応するとβ-シクロデキストリン.ポリマーは不溶化することが腸らかになった。橋かけ化したβ-シクロデキストリンの特長は,その不溶性により包接した化合物を分離回収できる点である。この特長を柑橘類の苦み成分,金属イオンについて確認した。低橋かけ度の水溶性のβ-シクロデキストリン橋かけ物はβ-シクロデキストリン自身よりも高い水溶性をもつ。水難溶性物質の可溶化,包接化合物の徐放性を検討した。低橋かけ度のβ-シクロデキストリンはインドメタシンについてβ-シクロデキストリン自身の約2.5倍の可溶化効果を示した。以上のように,β-シクロデキストリンの応用範囲がエピクロヒドリンで橋かけ化することによって拡大できることを示した。
  • 金子 友彦, 太田 悦郎, 金沢 眞由美, 大谷 杉郎
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1047-1053
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アントラセン,フェナントレンおよびそれらの等モル混合物の3種の縮合多環芳香族原料(Aro)を触媒であるp-トルエンスルホン酸(PTS)の存在下で,1,4-ベンゼンジメタノール(PXG)を用いて橋かけし,縮合多環芳香族炭化水素の重縮合体(COPNA)樹脂を合成した。加熱により軟化溶融し,成形可能な状態の樹脂の標準的合成条件を決め,それらの反応をIR.1H-NMRなどで分析し,さらに硬化物について熱重量分析を行なった。標準的な樹脂合成条件は以下のとおりである。アントラセン系(A系)では反応温度180℃,PTS 1.5wt%,PXG/Aroモル比1.0で予備重合を行ない,その後,PTSを原料混合物に対して3.5wt%添加し120℃ でふたたび反応させた。フェナントレン系(Ph系)およびアントラセン-フェナントレン混合系(A/Ph系)では反応温度120℃,PTS 5.0wt%,PXG/Aroモル比1.25で行なった。いずれの系も120℃ で20時間,その後200℃ で1時間の加熱処理を行ない硬化体を得た。
    IR,1H-NMRの結果から,アントラセンへの橋かけ反応はその9,10-位で選択的に起こるが,反応温度の上昇にともない選択性はやや低下することがわかった。また,フェナントレンもその9,10-位が優先的に反応することがわかった。硬化物の不活性気相中における熱重量分析の結果,Ph系の熱分解温度は505℃ 付近であったが,A系,A/Ph系は425~430℃ と低かった。この低い熱分解温度はアントラセンの9,10-位の橋かけが立体障害を受けているためと考えられる。
  • 呂 戊辰, 袁 本鎮
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1054-1058
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    18-8ステンレス鋼を大気中,400~700℃ で酸化すると,光干渉性の酸化皮膜が形成する。オージェ電子分光法とX線光電子分光法の測定結果により,この酸化皮膜の主成分はCr,Fe,Oであり,Ni含有率は少ないことがわかった。酸化温度の上昇に応じて,酸化皮膜中のFe含有率が減少し,Cr含有率が増加する傾向がある。酸化皮膜の外層はFe203あるいはFe304+Cr203,内層はFeO+Cr203からできている。高温酸化処理はステンレス鋼の耐孔食性に大きく影響を与え,400℃ で酸化した試料では通常め孔食点がでており,600℃ で酸化した試料では,表面皮膜がはく離されて,素地を侵食する二段階であるζ とがわかった。酸化濃度が高いあるいは酸化時間がながいほど,孔食電位が低くなり,耐孔食性が低下する。これは高温酸化による酸化皮膜中の欠陥およびCr欠乏層のために塩化物イオンの侵食が抑制できず,孔食が発生するためと考えられる。
  • 猪熊 精一, 早瀬 徹, 八房 科也, 芦沢 敏之, 桑村 常彦
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1059-1063
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    クラウンエーテルおよび脂肪酸をそれぞれ単独,あるいは両者の混合物をクロロホルム液膜系における担体として使用し,アルカリ金属イオンの競争的能動輸送を検討した。クラウンエーテルあるいは脂肪酸を単独で使用した場合,イオン輸送は生起しないが,それらを混合して使用すると効果的に輸送が生起することから,それらは本輸送系において協同的に作用すると考えられる。
    高級脂肪酸の存在下において以下のことが確認された。15員環クラウンエーテルはNa+を高選択的に輸送した。18員環クラウンエーテルは陽イオン三成分系(Li+,Na+,K+)の場合,K+を独占的に,陽イオン五成分系(Li+,Na+,K+,Rb+,Cs+)の場合,K+を高選択的に輸送した。21-および24員環クラウンエーテルはCs+を選択的に輸送した。そして,30員環クラウンエーテルは本輸送系におけるすべての陽イオンを非選択的に輸送した。
    輸送能は,本協同担体の一成分である脂肪酸の親油性にいちじるしく依存することが認められた。
    アシルアミノ酸およびオキシエチレンユニットをもつ脂肪もクラウンエーテルとともに使用N- した場合,効果的に働くことが明らかとなった。
  • 杉山 一男, 坂本 昭彦, 村田 敬重, 白石 浩平, 大津 隆行
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1064-1070
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    重合性官能基をもった5種の液晶,(+)-2-methylbutylp-[[[(E)-3-(alkoxycarbonyl)acryloy1]oxy]benzylideneamino]cinnamate〔2〕を合成した。ここに,アルキル基はエチル〔2a〕,プロピル〔2b〕,イソプロピル〔2c〕,ブチル〔2d〕,s-ブチル〔2e〕である。〔2〕単体および〔2〕と強誘電体液晶DOBAMBCの混合液晶について熱的,電気光学的性質を検討した。〔2〕単体では不斉炭素原子を有するが分子が剛直なために広い温度範囲でスメクチックA相(SA)のみを示した。しかし,〔2〕/DOBAMBC混合液晶ではDOBAMBC単体の場合より低温側に広い海度範囲でキラルスメクチックC相(So*)が存在した。このSo*相におけるヘリカル構造のらせんのピッチ間隔は〔2〕のアルキル基の種類や〔2〕とDOBAMBCの混合モル比で変化した。また,He-Neレーザー光の透過光強度はらせんのピッチ聞隔の温度変化と関連していることがわかった。さらに,〔2d〕/DOBAMBC混合液晶について電気光学効果を検討した結果,電界強度8kV/cmの直流電圧を印加したとき,表面ダイレクターの立ち上がり時問τsrと内部ダイレクターの立ち上がり時間τbrはそれぞれ1.5msと1.30sであった。これらの結果から〔2〕/DOBAMBC混合液晶は表示素子として利用できることが明らかになった。
  • 堀 隆博, 古崎 新太郎, 須郷 高信, 岡本 次郎
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1071-1077
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    放射線グラフト重合法により,海水ウラン吸着採取用の中空糸状アミドオキシム型キレート樹脂を合成した。アミドキシム化反応の条件を変えて樹脂の特性の変化を調べた。
    銅吸着量はアミドキシム化反応時間の増大とともに増加しているが,塩酸吸着量はピークを経て減少している。元素分析,赤外吸収スペクトル,可視紫外吸収スペクトル,さらにアルカリ処理による樹脂の着色の現象を追跡することにより,アミドキシム化反応は逐次反応で,アミドオキシム基の導入につづいて,加水分解による酸アミドやヒドロキサム酸の生成や,環化反応が起こることがわかった。また,XMAによりアミドキシム化反応が樹脂断面において均一に行なわれていることを確認した。
    海水ウラン吸着実験のくり返しを行なった結果,海水ウランのくり返し吸着に対し,安定な吸着特性を維持するのは,アミドオキシム基がもっとも多く導入され,しかも加水分解や環化反応による生成物の少ない状態,すなわち,アミドキシム化反応において塩酸吸着量がピークに達したところで反応を終えた樹脂であるということがわかった。
  • 円満字 公衛, 安藤 虎彦
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1078-1082
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩基性染料であるメチレンブルーの光退色抑制の機構を検討した。可視吸収スペクトルからメチレンブルーはカフェインやシクロデキストリンと複合体を形成することがわかった。カフェイン共存下ではメチレンブルーとカフェインが複合体を形成して退色速度が減少していると思われる。しかし,ピリミジン塩基添加のときはメチレンブルーの退色速度は増大した。赤外スペクトルによりメチレンブルーはシクロデキストリンに包接されることを確かめた。メチレンブルーの光退色速度はβ-およびγ-シクロデキストリンに包接されることにより遅くなったが,α-シクロデキストリン添加によっては変わらなかった。
  • 北嶋 英彦, 高橋 俊章, 峯田 清美, 毛海 敬
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1083-1085
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Homo-couplings of 4, 6-bis(dimethylamino)-, diphenyl- and dimethoxy-2-iodo-1, 3, 5-triazines, [1a], [1b] and [1c], with palladium were investigated.[1a] reacted in the presence of catalytic amount of palladium(II) acetate and equimolar triethylamine at 100°C to afford 4, 4', 6, 6'-tetrakis(dimethylamino)-2, 2'-bi-1, 3, 5-triazine in satisfactory yield. Homo-coupling of [1b] and [1c] in the presence of equimolar palladium black and potassium acetate in refluxing, acetonitrile gave the corresponding 2, 2'-bi-1, 3, 5-triazines in moderate yields. These procedures were superior to the Ullmann reaction described in our previ ous paper.
  • 菊池 康男
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1086-1088
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A novel chemical reaction of sodium tetraphosphate(TPP) with [2-(diethylamino)ethyl]dextran hydrochloride(EA), poly(aluminiuin chloride) (PAC), orTpoly(ironapsulfate) (PFS)and with a mixture of PAC and PFS have been studied. White materials were obtained in TPP-EA system, whereas white powdery materials were obtained in other systems consisting of inorganic and inorganic materials Macromolecular complexes(MC) prepared from inorganic and in organic materials were more insoluble than that from inorganic and organic materials. Phase diagrams in three-component system NaBr/acetone/H20 were attained for MC prepared in the TPP-EA system at pH 1.0 and 3.0, but were not attained in the other reaction systems.
  • 円満字 公衛
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1089-1091
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Poly(amic acid) latex was electro-deposited and cured on copper plate. Formation of acid anhydride in the sample was shown by its infrared spectrum but the sample had low heat stability. It was found that O.11 mol/monomer unit of Cu2+ ion were contained in the poly (amic acid) film deposited on copper plate and the Cu2+ ion was considered to act as a catal yst of the formation of acid anhydride in curing. Addition of octaethylporphyrin into t he latex reduced the quantity of Cu2+ ion in the deposited film even by acid treatment of sample and improved the heat stability of the cured film.
  • 山口 達明
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1092-1094
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Sulfonated carbons were prepared from PVC resin, lignin, active carbon and ion-exchange resin. Their catalytic activities were tested through the hydrolysis of ethyl acetate in comparison with that of sulfuric acid. Although no direct correlation, between the catalytic activity and the ion-exchange capacity was observed, the most active sulionated carbon catalyst, which was prepared from MR type ion-exchange resin, exhibited ca.45% the activity of sulfuric acid.
  • 岡田 實, 今泉 洋, 粟野 真理子
    1987 年 1987 巻 6 号 p. 1095-1096
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Fluorine in water samples of known fluorine concentration has been determined repeatedly based on the “JIS K 0102(34.1)” method and found that the fluorine recovery is reduced remarkably when a certain kind of silicon dioxide is used. In view of several experimental results by using various kinds of silicon dioxide, it has been proved that the silicon dioxide which contains higher moisture tends to hold fluorine in the water samples during steam distillation. Therefore, it is deduced that the provision “ignition loss of silicon dioxide must not be more than 6.0% (JIS K 8885)” should be changed to a lower percentage.
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