日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1987 巻, 7 号
選択された号の論文の70件中1~50を表示しています
  • 向山 光昭, 岩澤 伸治
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1099-1107
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二価スズのトリフラートに塩基の存在下,種々のカルポニル化合物を作用させるとすみやかに対応する二価スズのエノラートが生成する。これにアルデヒドを作用させることにより収率よく,また,高立体選択的にsyn-形のアルドール付加体が得られる。この反応は種々のβ-ヒドロキシカルボン酸誘導体,α,β-エポキシカルボニル化合物,カルバペネム系β-ラクタムなどの立体選択的合成に適用できる。また,二価スズのエノラートに光学活性ジアミンを配位子として作用させるだけで,高能率的不斉アルドール反応が進行し,80%ee以上の高い不斉収率でアルドール体を得ることができる。また,触媒量の二緬スズ化合物を用いるアルドール反応もニ価スズと硫黄との親卸力を利用することにより実現できる。さらに二価スズのエノラートを用いるMichael付加反応,キノンとの付加一還元反応など,従来の金属エノラートでは困難とされていた種々の有用な合成反応を開発することができた。
  • 稲本 直樹
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1108-1117
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,4,6-トリ-t-ブチルフェニル基(以下Arと略記する)のような非常にかさ高い基を置換させて反応中心を立体的に保護することにより,不安定リン化学種である対称および非対称ジボスフェン(Ar-P=P-Ar'),ホスブナエチレン(ArP=CRR'),ジチオキソホスホラン(ArPS2),イミノメチレンホスフィン(ArP=C=NPh),1-ホスファレン(ArP=C=Ph2)1,3-ジホスファアレン(Ar-P=C=PAr)を安定に単離した。ジホスフェンについては,ハロゲンとの反応,酸化,硫化,セレン化,還元,求核付加,錯体生成について,ボスファエチレンでは異性化,硫化,還元,錯体生成反応について,1-ホスファー,1,3-ジホスフアアレンでは硫化,遼元,錯体生成反応などについて研究した。
  • 古川 尚道
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1118-1129
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,5-ジチアシクロオクタン1-オキシドを濃硫酸に溶解し,活性な1,5-ジチオジカチオン(1)およびカチオンラジカルを発生させた。(1)はD2SO4中で1H-,13C-NMRで存在を確認,単離した。(1)はモCF3SO3-塩として安定な結晶となつた。同様に1,n-ジチア環状,非環状モノスルポキシドの濃硫酸溶液中でも,1,n-位の硫黄-硫黄の渡環相互作用による,ジカチオンの生成が見られた。とれらのスルポキシドとAc2Oを用いたPginmerer友応でも,1,n-位の硫黄-硫黄相互作用に基づく活性なジチオジカチオンが生成するかめ原応が加速され,転位がスルフィニル基のα-位のみならずω-位にも起こった。芳香環をもつ鎖状,環状のジチア,トリチア体からも硫黄一硫黄相互作用による安定なジチオジヵチオンが生成し,NMRで確認した。また,これらの活性ジカチオンの反応を行なった。
  • 秋葉 欣哉
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1130-1141
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Hypervalentスルフランに関する3種の典型的な反応と性質に関して著者らの研究を中心にまとめている。
    第一に,イミノチアゾリン類は遮蔽された(masked)1,3-双極子として活性アセチレンおよびイミド酸エステル類,ニトリル類と反応し,チアチオフテン型スルフラン(10-S-3)を中間体としてそれぞれ付加一脱離あるいは付加一環変換反応を行なう。
    第二に,中間体のスルフラン(10-S-3)が対称形になるような系を設計すると5-(2-アミノビニル)イソチアゾール系では中性鮒下で,5-(アミンメチレンアミノ)-1,2,4-チアジナゾール系で酸性条件下で可逆的環変換(結合交換)を行なうことを見いだした。それらの速度論的研究の例は以下のとおりである;前者([28d]では:〓=6.21×10-6s-1,ΔH=12.2kcal/mol,ΔS=-41e.u.;後者(〔26-H+〕)では:〓=-104.5-10+.4s-1
    第三に,ジベンゾチラゾシニウム系においては,家ルポニオ基とアミノ基め1,5-渡環相互作用により新規スルフラン(10-S-4)が生成することを学結晶のX線回折により証明した。スルフラン上の置換基の電子求引性が増大するにっれて,N-S結合距離は減少し,硫黄原子の立体配置はよりよくTBP配置に近づくと同時に,その電子的効果が結合を介してアミノ基上に伝達されることが1H-NMRの化学シフトにより明らかにされた。
  • 岡崎 廉治
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1142-1151
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    窒素-硫黄,硫黄-硫黄,炭素-硫黄,炭素-セレン二重結合をもついくつかの新しい型の化合物の合成とそれらの構造,反応性について検討した。窒素一硫黄,硫黄硫黄二重結合をあわせもつ化合物として,N-チオスルフィニルアニリンを立総保護効果によゆ安定に単離し,その光反応について研究した。その過程でN-チオスルブイニルアニリンがそZ-E異性化すること,また,中間にジチオニドロ体あるいはジチアジリブン・ヂオニトロソ体を経て反応すると考えられることを見いだしたので,HNS2格種異性体についてab intio法で相対エネルギー,横造についての知見を得た。炭素-硫黄二重結合をもつ化合物にっいては,従来安定には存在しえないと考えられていた芳香族チオアルデヒド(2,4,6-トリ-t-ブチルフェニルチオベンズアルデヒド)および脂肪族チオアルデヒド(トリス(トリメチルシリル)-t-エタンチアール)を合成し,老り各種性質について検討した。炭素-セレン二重結合をもつ化合物として,安定な化合物の単離例のないセレノアルデヒドを2,4,6-トリ-t-ブチルフェニル基の立体保護効果を利用して合成を試みたが,目的のセレノアルデヒドが中間体として存在する証拠は得たものの,対応するチオアルデヒドにくらべきわめて反応性が高く安定には単離されないことが明らかとなった。
  • 神戸 宣明, 稲垣 亨, 三好 徳享, 小川 昭弥, 園田 昇
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1152-1162
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    テルル化アルジミニウム(Al2Te3)と水との反応により,簡便に発生させ得るテルル化水素(H2Te)と種々の有機化合物との反応を検討した結果,テルル化水素は含窒素および含酸素官能基に対し,温和なも条件下高い還元能を示すことが明らかとなった。たとえば,アゾおよびアゾキシ基はいずれもヒドラゾ基に高収率で還元され,またニトロ基およびヒドロキシアミノ基は対応するアミノ基に選元される。またニトロソベンゼンは主生成物としてヒドラゾペンゼンを与える。カルボニル化合物は対応するアルコールに還元されるが,アルデヒドにくらベケドンの還元は遅嘱また反応温度を低くするととビより,α,β-不飽和カルボニル化命物の燦素-炭素二軍結合のみを選択的に還元すろことも可能である。イミンおよびエナミン竜高収奉で還元さ属対応ナるラミンボ得られる。黍反応あ応用として,塩基性条件下第一級または第二級アミンとカルボニル化合物を共存させることにより,アミンの還元的アルキル化が進行することが明らかとなった。また酸性条件下,脂肪族アルデヒドとテルル化水素との反応では,対するジアルキルジテルリドが主生成勃として得られる。テルル化水素による本還元反応は水の応水素が形式上ヒドリドとして有機化合物に導入されるという特徴を有しており,水のかわりに重水を用いることにより,簡便な重水素化還元法となることが明らかにされた。
  • 田中 克己, 下田 昌克, 友田 修司, 竹内 敬人
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1163-1167
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    有機ゲルマニウム化合物とその質量スペクトルに関する研究報告は少ない。本報で著者らは1,1-ジメチルゲルマシクロヘキサンとそのメチル誘導体を合成し,電子衝撃法によりイオン化しその質量スペクトルを測定し,これらの化合物の開裂過程を検討した。開裂過程上で生成した推定イオンの構造の確認には重水素標識誘導体およびメチル誘導体の同位体効果と置換基効果を利用したシフト法により,対応するイオン間の相対強度を比較しっつ検討した。その結果,図3から6に示した開裂過程で各イオンが生成することが確認された。さらにベースピークイオンにいたる開裂過程も確認した。実験に用いた化合物のベースピークイオンはすべてm/z89(H体),92(D体)を示した。生成した安定イオンはすべてGe原子を含むイオン構造であり,m/zが低質量部になるにしたがい相対強度が大きくなる事実を確認した。ある種のフラグメントイオンの生成には複数の開裂過程が関与し,検出されたイオンは複数の過程を経由して生成したイオンの重複したものであった。
  • 持田 邦夫, 田代 久美子
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1168-1170
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    熱的に蒸発させたゲルマニウム原子とポリハロアルカン類との交互凝縮反応を研究した。ゲルマニウム原子は,ポリハロアルカン類の炭素-塩素,炭素-臭素結合に挿入するのに対し,炭素-水素・炭素-フッ素,炭素-炭素結合には挿入しない。ゲルマニウム原子と炭素原子の反応性の相違を,反応生成物から議論する。
  • 持田 邦夫, 若狭 雅信, 坂口 喜生, 林 久治
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1171-1176
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4B族元素-炭素結合を有する化合物(R4E,E=Ge,Sn,R=アルキル,アリール,およびベンジル)の光反応初期過程をナノ秒レーザーせん光法によって研究した。化合物R4Eのレーザーせん光分解により,対応する4B族元素中心ラジカル(R3E・)の生成を直接観測した。また,フェニル置換ゲルマニウム化合物のレーザーせん光分解では三重項状態からの対応するゲルミルラジカルの生成が示唆された。
  • 山本 嘉則, 山田 順一, 西井 真二
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1177-1182
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ステロイドアルデヒド〔3〕と(2R,4R)-(-)-2,4-ペンタンジオールから合成したキラルなステロイドアセタール〔8〕,S-R,R体,とアリルシラン〔12a〕,9-アゾル-9-BBN〔12b〕,またはアリルトリブチルスタンナン〔12c〕との塩化チタン(N)存在下での反応を行ない,つづいて常法にしたがって処理すると,ホモアリルアルコール〔14〕,S,S体,がきわめて優先的に生成する。ある場合には,S,S体が圧倒的(>99%)に生成する。〔3〕と(2S,4S)-(+)-2,4-ペンタンジオールから合成したアセタール〔9〕,S-S,S体,と〔12a〕または〔12b〕とを同様に反応させると,やはり〔14〕が優先的に生成した。これは,従来のアセタールテンプレートを用いる不斉誘導り結果からは理解しがたしこ現象である。一方,〔9〕と〔12c〕との反応では〔16〕,S,R体,のアルコールが得られた。また同様に,スタンニルアセチレン,〔11a〕,と〔11b〕と,〔8〕との反応ではS,S体〔13〕が得られ,〔9〕との反応ではS,R体〔15〕が得られた。一方〔9〕とシリルアセチレン〔1Zc〕とからはS,S体〔13〕,が得られた。これらの結果は,不斉誘導率のみならず不斉誘起の方向さえも有機金属化合物の求核性に大いに支配されることを示している。合成的にはC-22位の立体制御をスズ化合物を用磁れば可能であることを示している。機構的には,アセタールテンプレートによって高い不斉誘起を達成するためには,アセタールの結合開裂と結合生成とのタイミングが同一でなければならないことが明らかとしなった。
  • 水野 一彦, 戸田 進, 大辻 吉男
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1183-1188
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,1-ジシアノ-2-(2-フリル)エテン[1a]および1,1-ジシアノ-2-(2-チエニル)エテン[2a]とアリルトリブチルスタンナン[3a]とを含む含水アセトニトリル溶液に,フェナントレンを加えて光照射するとアリル基がシアノ基iに対してβ-位に,水素がα-位に付加した5,5-ジシアノ-4-(2-フリル)-1-ペンテン[4a]および5,5-ジシアノ-4-(2-チエニル)-1-ペンテン[5a]がそれぞれ位置選択的に生成する。他のジシアノエテン類と置換アリルスズまたはベンジルスズ化合物との光反応では,相当するアリル化またはベンジル化生成物が好収率で得られる。この反応は無極性溶媒中では進行しない。また,アリルスズ化合物のかわりにアリルケイ素化合物を用いると反応しないか,反応しても効率が悪い。この反応は光励起されたフェナントレンから1,1-ジシアノエテンへの-電子移動によって生成する1,1-ジシアノエテンのラジカルアニオンと,アリルスズ化合物のラジカルカチオンから生じたアゾルラジカルとの反応を経由して准行する。
  • 馬場 章夫, 野崎 貴司, 松田 治和
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1189-1193
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    土酸化炭素とオキシランとからの環状炭酸エステル合成反応に対する各種ハロゲン化有機スズ錯体の触媒活牲に関して検討した。それぞれ単独では活性を示さないヨードトリブチルスタンナン,ジヨードジブチルスタンナンをホスフィン,ボスフィンオキシド,あるいは第四級ホスホニウム=ハライドと錯体化させることにより非常に有効な触媒となることが判明した。炭酸エステルの収率が配位子とスズ化合物との組み合わせに大きく影響されることから,触媒活性は錯体の安定性,構造,スズの配位数などによって決定されるものと推定した。
    検討した錯体のなかで,ヨードトリブチルスタンナンとテトラプチルポスホニウム=ヨージドとの錯体が高い錯体化効果を示した。さらに単独でも効果的な触媒であるテトラフェニルスチボニウム=ヨージドもヨードトリブチルスタンナンと組み合わせて使用すると一層活性が向上した。この2種類の錯体はLewis酸性の低い高活性触媒であることがわかり,これらによって不安定なあるいは反応性の低いオキシランも二酸化炭素と容易に反応して対応する環状炭酸エステルを温和な条件下,高収率で得ることができた。
  • 鹿島 長次, 原田 和雄, 加藤 明良, 清水 政男, 表 美守
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1194-1198
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オルトおよびパラ位にヒドロキシ勉基,メトキシル基,メチル基を有するN-フェニルピリミジン-2(1H)-チオン類の金属水素錯化合物(水素化アルミニウムリチウム,水素化ホウ素リチウム,水素化ホウ素ナトリウム)による還元について検討した。2種のジヒドロピリミジンおよびテトラヒドロピリミジンの生成比が大きく置換基と金属水素錯化合物に依存することがわかった。とくにオルト置換基がヒドロキシル基とメトキシル基の場合,水素化アルミニウムリチウムおよび水素化ホウ素リチウムを用いたところ,3,6-ジヒドロ体が位置選択的に得られた。この高い3,6-ジヒドロ体への選択性は,まず,オルト置換基が金属ヒドリドと反応してフェノキシドあるいは配位結合を生成したのちに,ピリミジンチオンの6-位に分子内からヒドリドが優先して攻撃しているためだと思われる。
  • 小泉 徹, 田中 信行, 岩田 正徳, 竹内 義雄
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1199-1206
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らの開発したL-プロリンエチルエステルを不斉源とする光学活性リン化合物の合成法を,重要な合成中間体であるフェニルチオメチルポスホン酸エステルに適用し,各種の光学活性ホスホン酸誘導体を効率よく合成することを試みた。初めに鍵中間体である光学活姓ホスホンアミド酸エステル[1a],[1b]の合成とジアステレオマー分離を行なった。[1a],[1b]のリン原子の絶対配置はメチルホスホン酸エチルメチルエステル[3]に導いて決定した。絶対構造の決定された[la],[1b]およびフェニルチオメチルポスホン酸エチルメチルエステル[4]をアルキル化後脱硫またはアルキル化後酸化的に既スルフェン酸して対応するアルキルポスホン酸エステルおよびアルケニルポスホン酸エステル誘導体へと導いた。いずれの化合物も高い光学純度を有していた。
  • 山下 光司, 山田 学, 杉浦 基之, 野本 浩通, 押川 達夫
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1207-1213
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニトロオレフィン類にH-P結合をもつリン化合物を反応させると,新たにC-P結合を形成し,β-位にニトロ基をもつリン化合物が生成した。也のニトロ基の変換は,従来のNef反応などを用いた反応では進行しなかったが,塩基存在下でのオゾンや一重項酸素との反応では進行し,アルデヒド誘導体へと高収率で変換できた。アルデヒド誘導体は還元剤によりアルコール誘導体へと変換でき,この方法により,リン糖の骨格の一部分を合成する方法が開発された。これら一連の反応を利用して若干のリン糖合成に成功した。
  • 井上 英夫, 井村 明弘, 大塚 栄子
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1214-1220
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    糖部を保護した5-ヨード-2'-デオキシシチジン[3]とトリメチルシリルアセチレンとの縮合をPd触媒存在下行なうと,5-(トリメチルシリル)エチニル体[4a]が好収率で得られた。[4a]のN4-アセチル体[5a]は,CuI存在下DMF中加熱すると収率よく閉環体[6a]を与え,[6a]は脱保護により3-(β-D-2-デオキシリボフラノシル)ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2(3H)-オン[7a,dF*]を与えた。同様にして1-ヘキシンを用いることによりdF*の6-位ブチル置換体[7b]も合成することができた。dF*を含む部分的に自己相補的なオリゴデオキシリボヌクレオチドdGGGAAF*NTTCCC(N=T,C,AまたはG)は固相リン酸トリエステル法により合成した。4種のドデカマーの熱的安定性(Tm値)の測定結果から,このピロロピリミジン塩基(F*)はグアニン塩基と塩基対を形成することがわかり,F*・G対を含む二本鎖ドデカマーは比較としたC・G対を含む二本鎖ドデカマーと同様な熱的安定性を有することが明らかとなった。dF*の発蛍光性についても述べる。
  • 木島 一郎, 分島 郁子, 長田 隆博, 平出 完之
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1221-1226
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の添加剤の存在下での三塩化リン(PCl3)とシアン酸ナトリウム(NaOCN)との反応によるトリス(イソシアン酸)リン(P(NCO)3)の合成およびP(NCO)3のアルコール類に対する反応性について検討した。
    P(NCO)3の合成ではアセトニトリルや炭素数が3~6のジニトリル,およびNaOCNを滴媒に溶解させうるような添加剤(ニトロメタン,18-クラウン-6,およびトリチルアミン塩酸塩)にはその効果が認められた。
    P(NCO)3と第一級アルコール類(メチルアルコール,エチルアルコール,およびブチルアルコール)との反応では,置換反応と付加反応とが競争的に起こり,リン酸エステル類やイソシアナト基,カルバミド酸エステルあるいはアロファン酸エステルが末端N原子で結合し海基などをもつリン化合物類,また副生したシアン酸と未反応イソシアン酸塩との共付加反応により形成されるトリアジン環をもつリン,化合物類などが生成した。アルコールの反応量が増加すると置換反応が優先し,アルキル基の炭素数が:増すと付加反応が優先する傾向が認めちれた。第二級アルコール,(s-ブチルアルコール)との反応では第一級アルコールとくらべて置換反応よりも付加反応が優先的に起こり,第三級アルコール(t-ブチルアルコール)との反応では置換反応ははとんと起こらず付加反応のみで,1-ブテンやP=O基およびP-H基をもつリン化合物類などの副生成をともなって,未反応イソシアン酸塩の三量化たより形成されるトリアジン環を杢つリン化合物類が主として生成した。
  • 山本 巌, 田中 距聰, 藤本 哲也, 太田 和親, 松崎 啓
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1227-1230
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,1-ジフェニルポスホリナニウムプロミド[1]を出発物質として,二硫化ジメチルによるα-位へのメチルチオ基の導入,それにつづくデカナールとのWittig反応を行ない,対応するビニルスルフィド[4]を収率56%で得た。つぎに[4]を,ヘキサナールとWittig-Horner反応すると,アルコール[5]が収率67%で得られた。ついで,[5]を水素化ナトリウムで処理すると,Douglas Fir Tussock Moth(Orgyiapseecdotsugata)の性フェロモン前駆体であるジエン[6]が収率31%で得られた。さらに,[6]を塩酸水溶液で加水分解し,目的の性フェロモンて[7]を収率82%で得た。
  • 川島 隆幸, 島村 道夫, 稲本 直樹
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1231-1236
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    trans-,および,cis-1,2,3,6-テトラヒドロ-1,2-ジフェニル-1,2-ジホスホリン=1,2-ジスルフィド[8b]を2,3-ジフェニル-1,3-ブタジエン[7a]存在下,熱分解すると,トランス-1,2,3,6-テトラヒドロ-1,2,4,5:テトラフェニル-1,2-ジホスホリン=1,2-ジスルフィド[8a],3,6-ジヒドロ-2,4,5-トリフェニルー2H-1,2-チアホスホリン=2-スルフィド[9a],および,1,3,4-トリフェニル-1-ホスホレン=1-スルフィド[10a]がそれぞれ,0~12,8~26,および,0~7%の収率で得られた。シス-[8b]の反応では,トランス-[8b] .への異性化も認められた。可能な機構としては,[8b]が逆Diels-Alder反応し,1,2-ジフェニル-1,2-ジホスフェン=1,2-ジスルフィド[4a]を与え,それが直接[7a]により捕捉されて[8a]を与えるか,フェニルポスフィノチオイリデン[6a]に解離iしたのち,[7a]により捕捉されて[9a]ないしは[10a]を与えるものを考えている。
  • 小林 知重, 飯野 幸生, 新田 信
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1237-1243
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-(1-フェニルビニル)イミノホスホラシ [1]は,α,β-不飽和ケトン[2]との反応で,ピリジンきホのでき誘導体[3][4],1,6-ジケトン[5],1,3-ジフェニル-1-プロパン[6],アセトフェノン[7],およびホスフィンオキシド[8]を与えた,[1]は[2]に対しエナミン形のMichae1付加を行ない,さらにaza-Wittg反応により[3]を,また加水分徽始的を与えたと推定された。[4]は,[l]が[2]のカルボニル炭素を攻撃した後の縮環により,[6]は[2]の還元により,[8]は未反応の[1]加水分解により生成したと推定された。一方,[1]とα-プロモケトン[14]との反応では,2-フェニルピロール誘導体[15],2-フエニルフラン誘導体[16],γ-ケトエステル[17],および[7],[8]を与えた。[1]は[14]に対しエナミン型求核置換反応を行ない,さらにaza-Wit・tig反応により[15]を,また加水分解により[17]を与えたと推定ざれ,さらに[16]は反応中間体からのプロトン引き抜きの副反応から生成したと推定された。以上のように[1]はエナミン型求核反応とaza-Wittig反応により縮環反応を行なうことが明らかになり,含窒素複素環形成反応として有効であることが示された。
  • 岡田 芳治, 南 享, 八尋 重徳, 加来 秀樹, 石山 宗孝
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1244-1249
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-シクロブテニルボスホニウム塩から,(2-オキソシクロブチル)ジフェニルホスフィンオギシド[4]を良好な収率で合成した.シクロブタノン[4]とSchiff塩基やジナゾメタンとの反応から,環拡大き反応生成物が得られた。また,シクロブタノン[4]は,塩基存在下,ホスホロクロリド酸ジフェニル,や塩化ベンゾイルと反応させることにより,容易にエノーニルニステルへ誘導できた。エノールリン酸エステルは,銅試薬と反応させることにより,(2-アルキル置換シクロブテニル)ホスフィンオキシドを与えた。このホスフィンオキシドは,加熱により,2-(ジフェニルホスラィニル)-3-アルキル-1,3-ブタジェン前駆体としてDiels-Alder反応生成物合成に利用できた。シクロブタノン[4]とベンズアルデヒドの反応では,Wittig-Horner反応生成物は得られず,4-ペンテン酸誘導体を与えた。
  • 江口 昇次, 竹内 久人, 江崎 俊之
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1250-1254
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ω-アジドカルボニル化合物[2],[4],およびω-クロロ酸アジド化合物[6]の分子内aza-Wittig型閉環反応性について検討した。出発原料であるアジド化合物は,対応するクロロ化合物の相間移動触媒存在下,NaN3の求核産換反応により,または,HN3のα,β-不飽和ケトンへのMichael付加反応により合成した。
    一般に,分子内aza-Wittig型反応による五員環への閉環反応は容易に進行したが,四員環への閉環反応は進行しなかった。しかし,2-フエニル-1-アギチン[18]のβ-アジドプロピオフェノン[2a]の分子内aza-Wittig反応による生成は,1-フエニルシクロピロピルアジド[23]の熱分解による別途合成,および,[18]のLiAlH4還元体[19]の生成により確認できた。
  • 岡本 能樹, 岩本 成正, 志方 紀樹, 高椋 節夫
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1255-1261
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    数種の置換ベンジルポスホン酸を合成して,その光化学反応の挙動について検討した。ニトロ-,ベンゾイル-およびフェニルスルポニルベンジルポスホン酸はアル力リ水性溶液として,パイレックスガラス容器で,高圧水銀灯を用いて光照射すると容易にC-P結合は切れ,対応する置換トルエン誘導体とオルトリン酸を効率よく生じる。この反応は光による分子内電子移動で始まりラジカルアニオンを経て置換ベンジルアニオンとメタリン酸モノマー陰イオンを生じるものと考えられる。ここで発生するメタリン酸モノマー陰イオンを利用してリン酸エステルの合成を行なった。すなわちp-(ベンゾイルベンジル)ホスホン酸を用い,無水アルコール中,1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エンを塩基として用い,光照射することによって高収率でリン酸エステルを得ることができた。
  • 大内 昭
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1262-1266
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    表題化合物について単結最を用いるX線回折法によって,その結晶および分子構造を決定した。結晶は単斜晶系,空間群P21/nで,a=15.531(10),b=10.798(5),c=11.893(5)Å,β=91.27(4)°,Z=4 ,得られた最終の信頼度因子Rは0.048であった。各分子間の橋かけは存在しない。各分子は中心のアンチモン(V)原子に,1,1-ジオラト配位子の2個の酸素,および3個のフェニル炭素原子が結合し,その形は強いていえばゆがんだ五配位四角錐形である。(頂点は炭素原子が占める)アンチモン原子と1,1-ジオラトのα-炭素および2個の酸素原子は四員環を形成するが,環の平面性はよい。Sb-OとC-Oの結合距離は平均2.037および1.383Åで,ともに四面体共有結合半径の和に近く,α-炭素周囲の結合角も正四面体角に近い。この化合物は安定であり,オルガノアンチモン(V)の配位化合物とするより,SbO2C四員複素環化合物と考えられる。
  • 大方 勝男, 大成 英之, 秋葉 欣哉
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1267-1273
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トリフェニルアンチモンジブロミド[2a]によりα-ケトアルコール類を酸化した。こめ酸化反応は,まず最初塩基によりアピカル位の配位子(臭素)がアルコキシル基に交換しhypervalentアンチモン化合物[D]またはスチボニウム塩[E]が生じ,つぎにα-カルビニル水素が引き抜かれてトリフェニルスチビンが生じるとともにα-ジゲトンが生成する経路(1)と五員環中間体[F]を経由して酸化する経路(2)が考えられる。一方,アピカル位の基を2-ピリジニルオキシ基で置換した五価アンチモン化合物[2d]を合成した。この化合物を用いると塩基を加えることなしに非常にすみやかにかつ収率よくα-ケトアルコールをα-ジケトンに酸化できた。トリフェニルスチビン[1a]の脱臭素反応と[2a]の酸化能を組み合わせることにより,触媒量のアンチモン化合物[1a]または[2a]でα-ケトアルコールをα-ジケトンに酸化できることを見いだした。
  • 藤田 英夫, 松本 澄
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1274-1276
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Reduction of the ylides [1], [2] has been investigated by means of ESR and UV spectroscopies. Afterdis appearance of their short-lived anion radicals, trianion radicals ([4], [6]; Fig. 2c) produced by the reduction with alkali metal in THF were ob served. ESR data (g=2.0030) have shown and that the para position of the pyridine ring was reduced complet ely (see, Fig.1).
  • 平尾 俊一, 升永 俊雄, 林 憲一郎, 大城 芳樹
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1277-1279
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Reduction of 7, 7-dibromobicyclo[4.1.0]heptane was examined in the presence of amine (triethylamine, tributylamine, N, N-diethylaniline etc. ) to evaluate dialkyl phosphonate (R=Me, Et, or i-Pr) as a reducing reagent. A combination of diethyl phosphonate and triethylamine was found to work efficiently for the selective reduction to 7-bromobicyclo[4.1.0]heptane as compared with other known debromination agents. Similarly gem-dibromocyclopropanes bearing the trimethylsilyl group were reduced to the corresponding monobromocyclopropanes under the present conditions.
  • 江口 昇次, 竹内 久人, 渡辺 徳雄
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1280-1283
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The reactions of 1-adamantyl azide [1 a], 2-adamantyl azide [1 b], , 2-methyl-2-adamantyl azide [1 c], , 3-homoadamantyl azide [1 d], , and bicyclo[3.3.1]non-1-y1 azide [1 e], with P(C6H5)3 [2 a], , P(n-Bu)3 [2 b], 1 and P(OEt)3 [2 c], were examined in order to prep are the corresponding iminophosphoranes. The relative reactivity of [1 a], in the reactions of [2a]-[2c], under reflux in benzene for 1 h was shown to be 1.0 0: 16.5: 8.50 based on the IR spectra. The relative reactivity of [2 a], in the reactions of [1 a]∼[1 e], under the same conditions as above was shown also as 1.00: 10.2: 0.58: 1.76. The corresponding iminophosphoranes [5 a], , [5 b], , and [5 c], from [1 a], with [2 b], and [2 c], , and from [1 b], with [2 a]respectively were obtained in high yields. Some examples of their applications on synthesis of adamantyl isocyanate, isothiocyanate, and carbodiimide, and/or their derivatives were also reported.
  • 和田 正徳, 坪井 亜紀, 西村 久美子, 撰 達夫
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1284-1285
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A highly nucleophilic triarylphosphine, [2, 4, 6-(CH3O)3C6H2]3P, was found to work as a convenient and excellent catalyst for the Michael addition reactions of CH2=CHCN, CH2=CHCOOCH2CH3, and CH2=CHC(O)CH3 with some nitroalkanes.
  • 山本 陽介, 沖中 隆明, 中谷 雅行, 秋葉 欣哉
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1286-1287
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    In the presence of catalytic amount of palladium (Pd(PPh3)4, PhCH2PdCl(PPh3)2), coupling reaction of dipropynyltrimethylantimony(V)[1] with acid chlorides took place to give only propynyl ketones [4] without concomitant formation of methyl ketones. An initial step of the coupling reaction may be the oxidative addition of [1] to Pd(O) at the propynyl-antimony bond.
  • 大坪 徹夫, 塩見 豊, 安蘇 芳雄, 小倉 文夫, 田仲 二朗
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1288-1292
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    クラウン型テトラチアフルバレン(TTF)[6]および等電子構造の2-(4H-チオピラン-4-イリデン)-1,3-ジチオール[7]は機能性をもつ電子供与体として興味がもたれる。これらのクラウン化合物は以前に合成したクラウン型TTF[3]や[4]と異なり,7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)と1:1の結晶性分子錯体をつくった。[6]のTCNQ錯体は電子供与体と受容体が2分子ずつ卒互に重なった型の珍しい構造を屯つことをX線結晶構造解析により明らかにした。さらに,化合物[6]および[7]は強い電子受容体(TCNQF4,DDQ,HCBD)や重金属塩(AgNO3, CuCl2,PdCl2)と錯体をつくることがわかった。これらの錯体は半導体から絶縁体の範囲の電気伝導度を示した。
  • 安藤 亘, 降旗 利弥
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1293-1298
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トリメチレンメタン硫黄類似体であるチオキシアリル体について,MCSCF法による理論計算を行なうと,1B1 stateが1A1 stateより安定であるという結果が得られた。テトラメチルアレンエピスルフィド[5],テトラメチル-1-ピラゾリン-4-チオン[6]の気相および溶液中熱反応により,2,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン-3-チオール[7]が得られた。これから,1B1stateに相当するチオキシアリル体[8]が反応中に生成すること,また,各state間の安定性がMCSCF法の結果と一致することが示された。
    速度論的考察から,[5]から[8]の生成は,一次の単分子的C-S結合開裂で進む。[5]および[6]とカルボニル化合物の熱反応の結果は,チオキシアリル体[8]がビラジカル体であることを示している。シクロプロペンチオン[15]とイソベンゾフランの反応は,ベンゾチオフェン誘導体[19]を生成する。この反応は,シクロプロパンチオン[16]の生成とその分解によるビラジカルとしてのチオキシアリル体[18]の生成を経ていると考えられる。
  • 高田 十志和, 遠藤 剛
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1299-1303
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オルトカルポナート,スピロオルトカルボナートおよびそれらの硫黄類似体,11種について質量スペクトルを測定した結果,スピロ体では分子イオンピークがいずれも観測さ熟るのに対し,非スピロ体ではほとんど検出できなかった。とくに,硫黄体では大きな相対強度をもつ分子イオンピークが現われる一方,芳香族スピロ体では酸素,硫黄体を間わずいずれも分子イオンピークが基準ピークとして観測された。また,スピロ体の開裂様式は,酸素,硫黄体いずれにおいても主として二つの経路があり,それらが競争的に進行するものと考えられた。さらに,スペクトルにおける酸素体と硫黄体との差,スピロ体の環員数の影響についても検討した。
  • 松原 凱男, 伴 崇, 中村 年之, 吉原 正邦, 前嶋 俊壽
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1304-1307
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    (フェニルヒドラゾノメチルチオ)アルカン類(Ph-N-N=C-S-R)[2]を合成し,比較化合物として(フェニルイミノメチルチオ)アルカン類(Ph-N=C-S-R)[1]を用いてそれらの構造と反応性について検討を行なった。(フェニルヒドラゾノメチルチオ)アルカン類は(フェニルヒドラゾノ)メタンチオールとアルキルハライドとの反応で,一方,(フェニルイミノメチルチオ)アルカン類は(フェニルイミノ)メタンチオールとアルキルハライドとの反応でそれぞれを得た。それらの構造は1HNMR・13C-NMR・IR・およびUVスペクトルから検討を行なった。さらに.[2]および[1]と求電子剤,求核葡および酸化剤との反応を行ない,それら反応性の違いと構造との関係を拡張Huckel法を用いた分子軌道計算を行ないそれらの結果とあわせて総合的に考察した。
  • 松原 凱男, 伴 崇, 吉原 正邦, 前嶋 俊壽
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1308-1311
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    (メチルフェニルヒドラゾノメチルレチオ)エタン[1]をジクロロメタン中m-クロロ過安息香酸と反応させると容易に硫黄原子が酸化され,それぞれ対応するスルポキシド体(メチルフェニルヒドラゾノメチルスルフィニル)エタン[2]およびスルホン体(メチルフェニルヒドラゾノメチルスルポニル)エタン[3],が得られた。それらの構造はIR,1H-NMRおよび13C-NMRスペクトルから検討を行なったところ通常のスルポキシドおよびスルホン化合物とは異なった挙動を示した。そこで[1],[2]および[3]と濃硫酸との反応を行なつたところ[1]および[3]は反応性を示さなかったが,[2]との反応は512.5nm(εmax9800)に最大吸収を示す赤紫色の溶液を与えた。このものをESRスペクトルで測定した結果,そのg値2.0083を得た。このg値はジアリールスルポキシドから得られる硫黄中心カチオンラジカルのg値とはぼ同様な値を示すことからこの系においても硫黄中心カチオンラジカルが生成しているものと思われる。70%硫酸中で生成した呈色溶液でも電子スペクトルによりシグナルが観測され,さらにそれは10日間以上も安定であった。これらの結果を拡張法Httckelを用いた分子執道計算を用いて共鳴安定性の取り方とカチオンラジカルの安定性について考察した。その結果,[2]および[3]の異常なスペクトル結果はそれらのπ-電子および硫黄原子上のp-電子が窒素原子側へ偏ることにより生じるブタジエン型の3pπ-2pπ-2pπ-2pπ 系共鳴構造の取り方の違いが重要な因子であると思われる。また,比較的安定なカチオンラジカルの生成は,おそらくS-O間の開裂によりブタジエン型の共鳴構造上硫黄中心カチオンラジカルが生じたものと思われる。
  • 松原 凱男, 山田 茂治, 吉原 正邦, 前嶋 俊壽
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1312-1316
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4-phenylr4H-1,3,4-thiadiazin-5(6H)-one[1]および5,6-dihydro-4-pheny1-4H-1,3,4-thiadiazin-5-o1[2]の1H-NMR,13C-NMR,IRおよびUVスペクトルの結果,ならびに拡張.Huckelも分子軌道計算を行ない,結合次数,電荷分布およびHOMO結合軌道の様子を求めた結果かちそれぞれの共鳴安定構造について検討した。[1]の構造は,硫黄原子から3-位窒素原子へ,また4-位窒素からカルポニル酸素へそれぞれ電荷が偏りその結果,3pπ-2pπ-2pπ 系と2pπ-2pπ-2Pπ 系と2種類の連続し喪共鳴安定構造の存在が示きれた。一方,[2]の構造は,硫黄原子から4-位窒素原子へ電荷が偏りその結果,ブタジエン型3pπ-2pπ-2pπ-2pπ 系の大きな共鳴安定構造の存在が示された。そこでこの共鳴構造の異なりが反応性にどのように影響を与えるかについて検討した。[1]は通常り求核剤,求電子剤およびラジカル試荊とはまったく反応性を示さなかった。しかし[2]は弱酸およびヨウ化メチルなどの求電子剤と容易に反応を起こし,分離困難な多くの生成物を与えた。また[2]はアルコール,アミンおよびチオールなどの求核剤とは触媒なしで容易に反応を起こし,それぞれ対応する置換化合物を与えた。このオキソおよびヒドロキシル置換基の違いだけで反応性がまったく異なった結果は共鳴講造の寄与の違いで説明され,また,[2]と求核剤との反応は,ヒドロキシル酸素と5-位炭素間の切断で生じる5,6-ジヒドロニ4H-1,3,4-チアジアジニウムカ与オン中間体を経由する機構を強く支持した。
  • 石田 勝, 三村 忠司, 加藤 晋二
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1317-1322
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    (トリフェニルポスホニオ)メチル=ジチオカルパメート臭化物の代表例として,N,N-テトラメチレン誘導体[7]を選び,その含成および反応について検討した。
    [7]は(ブロモメチル)トリフェニルボスホニヴム臭化物と,1-ピロリジンカルボジチオ酸ピロリジニウムから容易に合成できた(収率85%)。[7]をカリウムt-ブトキシドで処理したところ,イリド[8]を発生した。[8]は0℃ でも十分安定で,アルデヒドおよびビアタチルなどの活性なケトンと反応し,対応するジチオカルバミド酸ビニル誘導体[9]を高収率で与えることを見いだした。
    [9]はブチルリチウムにより容易に脱チオカルバモイル化し,対応するアルケンチオレート[3]を経由して,ビニルスルフィド誘導体[4]へと変換できる。
  • 堀 幹夫, 興津 光人, 片岡 貞, 清水 洋
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1323-1327
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,3-Diphetiyl-2H-dibenzo[b,f]cycldpenta[d]thiepin-2-one(チアアズレノシクロン)[5]を還元して得られる2H-dibenzo[b,f]cyclopenta[d]thiepin[6]のヨウ化アルキル-過塩素酸銀によるアルキル化は容易に進行し,スルホニウム塩[7]を与えた。S-メチルスルポニウム塩[7a]を水素化ナトリウムで処理すると,イリドカルボアニオンがシクロペンタジエニドアニオンとして安定化を受けた新しい環状硫黄イリド,8-methyl-1,3-diphenyldibenzo[b,f]cyclopenta[d]thiepinio-2-ide[8a]が橙色結晶として単離できた。他のS-アルキル誘導体については,insituでイリドを発生させ,そのまま熱反応に用いた。[8a]の熱転位では,3a-Cへ1,4-転位した生成物[11a]が得られるが,S-エチル[8b]やS-プロピル誘導体[8c]からは,1,4-転位体[11b],[11c]のほかに7a-Cへ1,2-転位した生成物[2b],[12c]も得られた。転位生成物の構造は,1,3-diphenyldibenzo[b,f]cyclopenta[d]thiepinideアニオン[10]のメチガ化によって得られた2-メチル化体[13],3a-メチル化体[11a],2,3a-ジメチル化体[14]のスペクトルデータと転位生成物のスペクトルデータの比較により決定した。
  • 米田 茂夫, 坪内 彰, 尾崎 研治
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1328-1331
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Hypervalentな硫黄原子を含むチエノ[3,4-c]チオフェンは理論上不安定と見なされているが,ビス(アルキルチオ)シクロプロペンチオンの二量化反応によって得たテトラキス(アルキルチオ)チエノ[3,4-c]チオフェンは,熱力学的に安定であるとともに空気中の酸素に対しても予期以上の安定性を示した。これらの酸化還元電位を測定したところTTFと同等あるいはそれ以上の電子供与性がみとめられたので,種々の電子受容体との錯体調製を試み生成した電荷移動錯体の物性をしらべた。
  • 宮田 敏行, 神戸 宣明, 村井 真二, 園田 昇, 西口 郁三, 平嶋 恒亮
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1332-1337
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩基の存在下で硫黄,一酸化炭素および水が反応して以下に示す平衡反応により硫化カルボニルおよび硫化水素を生成する。

    このことを利用して,この系に2-ニトロアニリン類2-ニトロフェノール類およびビス(2-ニトロフェニル)ジスルフィドを共存させたところ,それぞれ高収率でベンゾイミダゾロン類,ベンゾオキサゾロン類およびベンゾチアゾロンが得られることを見いだした。
    本反応は比較的温和な条件下,一段でニトロ基のアミノ基への還元,カルボニル化および環化反応が起こり,また,反応操作および後処理も容易であることがわかった。
  • 小野 昇, 上村 明男, 川合 修次, 加治 有恒
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1338-1345
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    β-ニトロスルフィドを硫化ナトリウムあるいはトリブチルスタンナンで還元すると,ニトロ基とアリールチオ基が脱離してオレフィンが生成する。β-ニトロスルフィドは,ニトロオレフィンへのチオールの付加により合成でき,ニトロオレフィンは,ニトロ化合物とアルデヒドとの縮合によって合成できるため,本反応はオレフィンの有用な合成塗を提供する。たとえば,α-ニトロスチルベンは,チオフェノール存在下硫化ナトリウムで処理するとスチルベγ に変換できる。また,ニトロオレフィンは塩基存在下チオフェノール,アルデヒドとの反応によりγ-フェニルチオ-β-ニトロアルコールに変換でき,この化合物はトリブチルスタンナンとの反応によりアリルアルコールへ変換できる。
  • 田中 和彦, 依田 秀実, 加治 有恒
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1346-1352
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    各種のヘテロ元素を含む2-メチルプロペンアミドのジアニオンが,-78℃で安定に発生できることがわかった。これらのジアニオンのうちで,N-フェニル-2-[(フェニルスルポニル)メチル]プロペンアミドのジアニオンは,求電子剤との反応でもっとも高いα-位置選択性を示した。ハロゲン化アルキルとのα-付加体を水素化ホウ素ナトリウムと反応させると,立体選択的に,(E)-2-メチル-2-アルケンアミドが生成した。アルデヒドとのα-付加体からは,(E)-4-ヒドロキシ-2-メチル-2-アルケンアミドが得られ,さらに,エポキシドとのα-付加体からは,(E)-5-ヒドロキシ-2-メチル-2-アルケンアミドがそれぞれ,立体選択的に得られることがわかった。エポキシドとのα-付加体にカリウムt-ブトキシドを反応させると,閉環脱フェニルスルホニル化により,5,6-ジヒドロ-2H-ピラン誘導体が得られた。
    N-フェニル-2-[(フェニルスルポニル)メチル]プロペンアミドのジアニオンは,メタクリル酸のβ-アニオン等価体として機能することが明らかになった。
  • 古川 尚道, 岡野 一哉, 藤原 尚
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1353-1358
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本論文はスルポニウム塩の相間移動触媒能について研究した結果について述べてある。硫化ジエチル,臭化べンジル,およびベンズアルデヒトを塩基として水酸化カリウムを用いてアセトニトリル中で反応を行なったところ,好収率でオキシランが得られ,スルフィドから生成するスルホニウム塩が相間移動触媒として作用することを見いだした。また,硫化ジエチルのかわりに,環状ジチオエーテルである1,5-ジチアシクロオクタンを用いた場合,固-液二相系においてオキシラン合成のよいメディエーターになることがわかった。
  • 大橋 力, 徳野 健次, 乙田 ゆかり
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1359-1364
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    スルポニウム塩の一種,1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-オキソチアニウム=テトラフルオロポレートとハロゲン化アルカリの固相における反応を水溶液中での反応と対比して検討した。室温において固相でKClを作用さぜた場合,イオン交換を経てβ-脱離反応が進行し,β-脱離体を与え,そのほかにホロン(2,6-ジメチル-2,5-ヘプタジエン-4-オン)のHCl付加体が特徴的に生成した。加熱条件下では,ハロゲン化物イオンの違いによって異なる結果を得た。塩化物イオンは,おもにβ-脱離体およびホロンのHCl付加体を与えた。臭化物イオンは,β-脱離体,脱メチル体およびホロンを与えた。ヨウ化物イオンは,S-メチル基を攻撃して脱メチル体のみを与えた。また,本反応を水溶液中で行なった結果,いずれのハロゲン化アルカリを使用した場合もβ-税離体のみが得られた。このことは,固相における反応が溶媒中での反応と比較して特異的であることを示している。以上,固相における反応は水溶液中での反応と異なり,塩化物イオンは硬い塩基,臭化物イオンは中程度の塩基,ヨウ化物イオンは軟かい塩基として作用したものと考えられる。さらに前報と対比することにより,スルポニウム塩の化学構造に関して,オキソチアニウム環の2-位および6-位のメチル基とフェニル基のα,β-不飽和ケトン部との共役効果あるいは誘起効果による硫黄原子の塩基性の違いによって反応性が異なることが明らかとなった。
  • 大橋 力, 三由 文久, 沢田 幸江
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1365-1369
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    数種のスルポニウム=トリブロミドとtrans-スチルベンの結晶を乳鉢中で数分間混合磨砕し,30~40℃の恒温槽に放置すると,8時間から4日間でmeso-1,2-ジブロモ-1,2-ジフェニルエタン(meso-スチルベン=ジブロミド)がほぼ定量的に得られた。この反応過程を赤外線吸収スペクトルおよび粉末X線回折により追跡したところ,trans-スチルベン結晶からmeso-スチルベン=ジブロミド結晶を,またスルポニウム=トリブロミド結晶からスルポニウム=プロミド結晶を生成する反応の起こっていることが明らかとなった。この事実は有機固相反応という新しい分野で,初めてめ付加反応である。本固相反応は穏やかな条件下定量的に進行し,芳香核に対する臭素置換もなく立体選択的にトランス付加体生成した。また,スルポニウム=トリブロミドはスルポニウム=モノブロミドとして定量的に回収され,臭素の担体としてくり返し使用することができる。
  • 尾形 強, 川田 恵嗣, 押川 達夫, 吉田 弘, 猪川 三郎
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1370-1376
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫黄原子を含んだひずみの小さい環状ケトンであるテトラヒドロ-4H-チオピラン-4-オン[1],ジヒドロ-2H-チオピラン-3(4H)-オン[3]のトシルヒドラゾン[2],[4]の熱および光によるBamford-Stevens反応を行なった。熱分解反応の場合,環状オレフィンが主生成物であったが,塩基としてナトリウムメトキシドを用いてエチレングリコール中で行なったとき[2]からはアジンが主生成物として得られた。光分解反応の場合,環状オレフィンが主成物として得られたもしかし,塩基として水素化ナトリウムを用いてジグリム中で行なったとき[2]からはアジンが主生成物として得られた。非対称な[4]では2種のオレフィンが生成したが,その比率は熱分解反応と光分解反応では逆の結果が得られた。これらの実験結果について考察した。
  • 山田 宗慶, 加茂 徹, 湯 潔, 天野 杲
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1377-1384
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    低圧熱分解法を用いてチイラン,チオランの熱分解機構を検討した。
    チイランの反応では選択的なキチレンの生成が認められた。実測された単分子反応速度定数た瞬を解析したところ,高圧極限での速度式が次式のように得られた。
    k=1013.2exp(-171(kJ・-1)/RT)s-1
    この活性化エネルギーはチイランからビラジカルを生成するために必要なエンタルピー216kJ・mol-1(1050K)と比較するといちじるしく低い値である。
    チオランの反応ではプロピレンがエチレンのほぼ2倍墨生成し,このほかチオホルムアルデヒド,チオアセトアルデヒドの生成が認められた。実測のkunlを解析したところ下記の高圧極限での速度式が得られた。k=1015.6exp(-301(kJ・mol-1)/RT)s-1
    生成物分布およびビラジカルと原系のエンタルピー差295kJ・mol-1(1050K)から,チオランの分解はビラジカル機構で進行していることが示唆される。
    チイラン特有の低い活性化エネルギーを説明するため三重項チイランを中間体とする反応機構が推定された。
  • 斎藤 隆夫, 菊地 康久, 住沢 則夫, 元木 信一
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1385-1392
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二つの芳香環を共役系にもつアリール(o-フェニルをアリール)チオンS-イミドとその類縁体であるS-オキシド(スルリフィン)にっいて研究を行った。チオケトンとクロラミシ塩との反応で生成するチオンS-イミドは,メシチル基のような立体的にかさ張った置換基を有する場合には安定に単離できて,立体選択的にE-体を与えた。かさ高くないアリール基をもつチオンS-イミドでは,C=S部分と共役した二つの芳香環を巻き込んだ環状電子反応を行ない,さらに生じた環状硫黄イリドがStevens型の転位反応を行なった。スルフィンについては,無水塩化アルミニウム触媒によりE-体だけが立体特異的に環状軍子反応を行ない,生じたスルホキシドがいわゆるPummerer型の転位を起こした。
  • 伊東 忍, 小松 満男, 大城 芳樹
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1393-1396
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,3-ジフモニルチイレン=1-オキシド[1]の反応性を明らかにするため,二,三の求核試薬,ならびに1,3-双極子との反応について検討した。求核試薬としてα-リチオイソブチロニトリルを反応させた場合,まず,チイレンモノオキシド[1]の二重結合にカルボアニオンが攻撃し三員環が開環したのち,さらに閉環反応が進行して,5-イミノ-4,4-ジメチル-2,3-ジフェニル-2-チオレン=1-オキシドが90%の収率で得られた。一方,α-位に水素を有するα-ソジオベンジルシアニドの場合には,付加開環後,転位反応が優先して起こり,2,3,4-トリフェニル-2-ブテンニトリルが生成した。N-(2-メチル-1,3-ペンタジエニル)ピペリジンとの求電子的シクロ付加反応では,二重結合へのシクロ付加ののち,SOが脱離して3,5-ジメチル-1,2-ジフェニル-6-ピペリジノ-1,3-シクロヘキサジエンおよび,これが芳香族化した3,5-ジメチル-1,2-ジフェニルベンゼンが,それぞれ12および5%の収率で得られた。また,C,N-ジフェニルニトリルイミンやベンゾニトリリウム=p-ニトロベンジリドなどの1,3-双極子との反応でも,シクロ付加ののち,SOが脱離してそれぞれ1,3,4,5-テトラフェニルピラゾールおよび5-(p-ニトロフェニル)-2,3,4-トリフェニルピロールが,それぞれ49および57%の収率で生成した,チイレンジオキシド体の場合と比較すると,反応の様式は非常によく似ていたが,その反応性はいずれの場合も低かった。
  • 小沼 健治, 長谷川 博俊, 板橋 国夫
    1987 年 1987 巻 7 号 p. 1397-1402
    発行日: 1987/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アミノベンゼンチオール(ABT),メトキシベンゼンチオール(MBT),トルエンチオール(TT)の各位置異憐体やベンゼンチオール(BT)を硫化モリブデン(VI)触媒上,160~240℃で加圧水素化し,メルカプト基の水素化脱硫反応に対する電子供与性置換基の効果にっいて比較検討した。
    ABTの160℃,MBTの200℃,およびTTの240℃における水素化脱硫反応の起こりやすさは,いずれの場合もほぼパラ体>オルト体>メタ体の順になることがわかった。また,各パラ体におけ,る水素化脱硫反癒の起こりやすさは,反応温度160℃ではABT≫MBT>TT=BTの順に,また240ではTT≫BTの順になり,アミノ基やメトキシル基のように電子供与性の度合の大きい置℃換基は水素化脱硫反応をいちじるしく促進することがわかった。
    水素化脱硫反応に対するこれら置換基の促進効果は,硫黄原子が酸素原子とは異なり電子受容性を有するため,パラ位やオルト位の置換基の電子供与性とあいまってその電子密度が増大し,触媒表面の陰イオン欠陥部に吸着されやすくなることに起因するものと推察した。
feedback
Top