日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1987 巻, 9 号
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  • 古澤 邦夫, 渡辺 勉, 松村 英夫
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1627-1631
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    金属多価イオンと脂溶性陰イオンを含む系で観察される両イオンのリン脂質(PE)膜への相乗的吸着現象がTh4+とTPB-を含む系で詳細に検討された。実験的検討はTh4+ とTPB-をいろいろな割合で含む溶液からPEベシクルの両イオンの吸着量の測定と気-水界面に展開されたPE単分子膜の表面電位の測定により行なわれ,つぎのような結果が得られた。両イオンの相乗吸着現象は段階的に進行し,低イオン濃度では負に帯電したPEベシクルへのTh4+ の吸着量によって現象は支配される。イオン濃度の増加とともに,次第にTPB-の吸着量が増大し,やがて電気的中性の条件から期待されるTPB-/Th4+=4/1のモル比に到達する。このような溶液中のイオン濃度により吸着されるイオン組成が変化する現象は単分子膜による表面電位測定にも現われ,高イオン濃度領域では大きな負の表面電位を示すことがわかった。この相乗的吸着現象には,TPB-とPE分子の疎水部との作用や配向したPE分子の極性基中にある電気双極子の正の電位も関係していると思われる。
  • 山口 道広, 野田 章
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1632-1638
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ガチオン界面活性剤であるオクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド(OTAC)水溶液に,1-ヘキサデカノール(C16OH)を配合すると,C16OHとOTACのモル比や,試料調製温度の違いによって,系の粘度や電気伝導度,融点などの物性値がいちじるしく変化した。これは,C16OH/OTAC/水の三者による会合体の形成の有無によるものであった。粘度や電気伝導度,融点は,いずれもC16OH/OTACのモル比1.5を境にしていちじるしく変化するが,これは,このモル比を境にして,形成される会合体が異なるためと予想された。
    また,興味深いことに,モル比1.5上の系では,試料調製温度の違いによって,系の粘度にいちじるしい差が見いだされ,会合体の融点より低い55℃で試料を調製すると粘度の高い系が,融点より高い75℃で調製すると粘度の低い流動性のある系が得られた。本報は,C16OH/OTAC/水の三者による会合体の形成によってもたらされる粘度や電気伝導度,会合体の融点などの変化についての知見を報告する。
  • 菖蒲 明己, 阿部 将起, 松下 義信, 手島 昭
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1639-1645
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    973K以上での高温焼成シリカゲル表面の特性を赤外分光法,滴定法,プロピレンオキシド異性化反応および光電子分光法によって検討した。大気中1173K,2時間の焼成体上の吸着ピリジンは1446,1598cm-1に赤外吸収ピークを与え,これは673K排気後も消失しなかった。同試料はH0≦+3.3の酸量0.041mmol.g-1を有するが,H_≧+7.2の塩基量は皆無で,化学吸着二酸化炭素の赤外吸収ピークも得られなかった。プロピレンオキシド異性化反応ではプロピオンアルデヒド,アセトン,アリルアルコール,アクリルアルデヒド,1-および2-プロパノールが生成し,前二者以外の生成物は反応機構上塩基点の存在も必要とする。これらの結果は高温焼成シリカゲル表面上にLewis酸点と塩基点が存在することを示している。
    773K焼成体の光電子分光分析はAlとNaの存在を示した。Alの表面原子数は1.0×1013atom.cm-2と見積られ,H0≦+3.3の酸点密度9.4×1012site.cm-2と一致した。強いLewis酸点の発現はAlの共存によると結論された。同様に,Naの存在はシリカ表面に塩基性を付与していると推定された。プロピレンオキシド異性化反応と酸量,酸強度との関係にも考察を加えた。
  • 日高 節夫, 飯野 明, 三谷 剛, 仁田 健次, 山添 〓
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1646-1653
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の方法で調製した金属担持Y型ゼオライトの固体酸性質を調ぺるため,クメン分解反応およびトルエン不均化反応を行なった。常圧下でのパルス反応ではCu,NiおよびCo を担持したゼオライトではイオン交換法,真空含浸法のいずれの担持法でも,硫化水素気流中および水素気流巾で処理することにより活性が増大し,とくに硫化水素によりいちじるしく活性が増大した。これに対し,Fe担持ゼオライトでは硫化水素処理によりトルエン不均化活性は増大したが,クメン分解活性はさほど増大せず,水素処理によっては両反応とも変化を示さなかった。高圧固定床流通反応にてトルエン不均化活性を調べたところ,硫化水素/水素混合ガス気流中では部分的に脱アルミニウムの起こる条件でFeを担持した触媒(FeHY-1)がもっとも高い活性を示し,かつ炭素質の析出が少なく経時的にきわめて安定であった。FeHY-1のトルエン不均化活性に対する硫化水素の顕著な促進効果は,反応雰囲気申に硫化水素が存在するときに発現し,定常活性は硫化水棄濃度に依存することがわかった。
  • 岡戸 秀夫, 庄司 宏, 佐野 庸治, 鈴木 邦夫, 清住 嘉道, 萩原 弘之, 高谷 晴生
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1654-1658
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    低級オレフィン合成用触媒として優れた性能を有するCa含有ゼオライト触媒の酸性点のメタノール転化反応中の安定性について検討した,600℃ でメタノール転化反応を行なうと,反応中に活性が高くなることがみとめられた儀この理由を調べるため,反応前後の触媒についてヒドロキシル基の赤外吸収きスペクトルを調べ,ついでKイオン交換可能量とXPS法による外表面Ca濃度の測定を行なった。その結果,反応後においてBrφnsted強酸点が増加し,Ca修飾により形成された弱酸点が減少し,また外表面Ca濃度が増加していることがわかった。これから,弱酸点を形成していたCaの一部が酸点から離脱して外表面へ移動することにより,強酸点を生成することが示唆された。つぎに,高活性化に対する反応温度,反応時間および水蒸気の影響を調べた。酸点からのCaの離脱は550℃以上の温度で捉進された。また,600℃で反応させると反応時問とともに高活性となり,約7時間で一定値を示した。さらに,このようなCaの離脱は熱処理のみでは進行せず,水蒸気の存在で進行することがわかった。
  • 日高 節夫, 飯野 明, 実渕 武治, 仁田 健次, 前田 米蔵, 山添 昇
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1659-1664
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    市販のアンモニウムY型ゼオライト(NH4Y)を硝酸鉄(III)水溶液にて処理し調製した鉄担持Y型ゼオライトの電子顕微鏡観察およびMossbauerスペクトル測定を行ない,担持された鉄化学種の状態について検討した。電子顕微鏡観察により,担持された鉄化学種の粒子径は10A以下であること,室温もでのMossbauerスペクトル測定から鉄化学種は六配位の三緬の鉄であることがわかった。また,4.2KのMossbauerスペクトル測定では,幅広な磁気分裂(内部磁場の大きさ:46.0T)を示す鉄化学種と,比較的強い吸収をもち四極子分裂(同位体シフト:0.49mm.s-1,四極子分裂値=1.10mm.s-1)を示す鉄化学種の2種類が存在した。上に述べた磁気分裂はゼオライトのケージ内に担持された超微粒状酸化鉄により,また四極子分裂はゼオライト骨格と結合した鉄化学種によるものと推定した。
  • 広井 善二, 中山 則昭, 坂東 尚周
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1665-1671
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    結晶構造の異なる二つの物質,セレン化鉛とセレン化スズ(II)からなる新しいタイプの人工超格子を合成し,その構造をX線回折法,および,透過型電子顕微鏡を用いた膜断面の観察により検討した。その結果,試料はほぼ意図したとおりの人工的長周期をもち,その組成変調は,階段関数を用いたステップモデルで表されるような理想的なものであることを確認した。また,NaCl構造で禁制である(001)ブラッグ反射のプロファイル,および,各層の面間隔の変化の観測から,試料が各層の厚さによって,4種の異なる構造をとることを見いだした。とくにセレン化鉛が6原子層以下,または,セレン化スズが4原子層以下のときに,膜全体に同一の結晶構造をもつ単結晶人工超格子が得られることがわかった。
  • 清浦 忠光, 吉田 研治, 四海 潔, 三谷 雄行, 戸塚 安昭
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1672-1677
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    有機化合物の塩素化,あるいはホスゲン化などの行程で副生する塩化水素を分子状酸素を用い,350~400℃ の温度で酸化して塩素を回収する反応に使用するクロミアーシリカ触媒を開発した。この触媒は,塩化水素の酸化に対しもっとも高い活性をもつとされている銅系の触媒よりも大幅に高い活性を示した。この触媒は,工場から発生する副生鹿化水素を用いた連続運転にも耐久性を発揮した。
    クロミア触媒上での塩化水素の酸化反応は,触媒の酸化還元機構により進行し,塩化クロムと酸化クロム間の反応サイクルにより進行するものではないと推定される。化学量論量より多い酸素の存在下で反応速度はr=kpPHOI8PO20.5で表わされ,反応の活性化エネルギーは45kcal/molであった。クロミアの触媒作用は,反応条件下で,触媒上に過剰酸素を保持する能力により発現し,その過剰酸素量は,6~7×10-4g.原子/g.触媒と見積もられた。クロミア上の過剰酸素と塩化水素との反応が,反応の律速過程と推定される。
  • 鈴木 章悟, 平井 昭司
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1678-1684
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    機器中性子放射化分析法(INAA)により多摩州水系に溶存している微量元素の分析を行なった。採水は3年間にわたり,多摩州の上流から下流までの15地点について行なった。採水は各地点とも6回程度行なった。
    採水した試料は溶液のまま原子炉で直接照射する方法と凍結乾燥して照射する方法で行なった。照射は武蔵工大炉の照射溝,気送管および中央実験管で行なった。照射後,適当な冷却時間を置いて,Ge(Li)検出器とコンピューター付マルチチャネル波高分析器(GAMAシステム)によりγ線スペクトルの測定を3回行なった。
    分析を行なった結果,25元素が定量できた。結果はどの元素も季節,天候状態および前処理方法の違いに関係なくほぼ一定の濃度を示していた。大部分の元素が上流域から中流域にしたがって濃度が上昇していく傾向があった。さらに羽村堰から下流では一段と高い濃度になった。
    微量元素のなかでもとくに臭素については下流域で急激な増加を示していた。塩素と臭素の濃度比は羽村から上流域では240~900となり塩素濃度が高いが,羽村から下流域では濃度比は50~160と低下し,臭素濃度が相対的に高くなった。このことは人間生活による影響と考えられる。
  • 代島 茂樹, 飯田 芳男, 浜田 繁範
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1685-1690
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Townsend放電(TD)を用いる化学イオン化(CI)質量分析法における試薬ガスについて酸素および通常のCIで汎用されるメタン,イソブタン,アンモニアを用いて基礎的検討を行なった。酸素はきわめて安定した放電を示し,酸化物イオンO+,O-および超酸化物イオンO2+,O2-を効率的に生成した。メタンでは安定放電領域はイオン化室圧力と放電電圧に依存し二つの部分に分かれたが,反応イオンの組成はTDモードでC4H1+やC4H9+ がわずかに生じるなどフィラメントモードとの違いもあったが,全体的に両者は類似していた。イソブタンの安定放電領域は非常に狭かったが反応イオンの組成はフィラメントモードのそれとほとんど同じであった。アンモニアでは安定放電領域はメタンと同じく二つに分かれたが,生成した反応イオンの相対強度比はフィラメントモニドのそれとは異なりクラスターイオンの割合が少なかった。またメタンを試薬ガスに用いた場合,CIスペクトルの再現性および定量のさいの精度の目安となる検量線の直線性は良好で,TDモードとフィラメントモードではほとんど同じレベルであることがわかった。
  • 渋谷 勲
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1691-1694
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セレノアミド類のジクロロメタン溶液とヨウ素のジクロロメタン溶液を混合するとただちに付加体,R-CSeNH2.nI2〔1b~e〕を生じた。p-CH3OC6H4CSeNH2およびp-(CH3)2NC6H4CSeNH2から得られた〔1b~c〕をそれぞれの融点で加熱処理すると,1,2,4-ジセレナゾリウム化合物〔2b,c〕が得られた。一方,セレノベンズアミドおよびヨウ素のジクロロメタン溶液を混合すると直接にジセレナゾリウム化合物〔2a〕を生成した。1-ピロジジンカルボセレノアミドからの〔1e〕は同様な加熱処理にもかかわらずジセレナゾリウム塩を与えなかった。〔2c〕を精製して得られる3,5-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-ジセレナゾリウム=三ヨウ化物のアンモニア,ヒドラジンの反応について検討したところ,対応するジチアゾリウム塩と同じような挙動をすることがわかった。
  • 影山 俊文, 吉田 幸夫, 杉崎 俊夫
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1695-1698
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    亜臭素酸ナトリウム(NaBrO2)が安定に存在するアルカリ水溶液中で第一級アルコールの酸化を調べた。
    NaBrO2の水溶液に微量の銅粉あるいは金属イオン(Cu(II),Ru(III))などを添加することにより,NaBrO2がα,ω-ジオールに対して室温,約3時間でほぼ化学量論的な酸化反応を示すことが明らかとなり,α,ω-ジオールから定量的にラクトンが得られた。
    添加された銅イオンはNaBrO2と反応して活性な亜臭素酸銅を生成し,これがα,ω-ジオールと反応するものと考え,その反応式を以下のように推定した。
  • 吉井 善弘, 伊東 昭芳, 平嶋 恒亮, 真鍋 修
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1699-1704
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Friedel-Crafts反応による置換ベンゼンのフェニルスルホニル化を速度論的に研究し,スルホン生成速度定数におよぼす置換基の効果ならびに生成するスルホン異性体の生成割合に対する温度効果を調べた。その結果,スルホン生成速度定数に対してBrown-岡本式が良好な直線関係を与えた。logf=ρ.σ,ここで,反応定数ρは-5.3で電子供与性の置換基ほど反応が速いことがわかった。異性体の生成割合はクロロ-およびプロモベンゼンのフェニルスルホニル化ではp-異性体のみが生成した。一方,トルエンではo-,m-,p- 三異性体,アニソールではo-,p- 二異性体が生成し,反応温度によりその罰合は変化した。トルエンとアニソールの反応温度の逆数と異性体生成割合の対数の直線関係から求めたトルエンo-p,m-pおよびアニソールのo-p位の活性化エネルギー差およびエントロピー差はそれぞれ -0.27kcal/mol, 0.71e.u./mol. 0.92, 1.4, 0.58, 0.33であった。
  • 宮田 定次郎, 作本 彰久
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1705-1711
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-ドデカンスルホン酸ナトリウム,ドデシル硫酸ナトリウム,ヘキサデシルトリメチルアンモニウムプロミドおよびヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリドを用いて,2-プロパノール(25vol%)水溶液中での四塩化炭素のラジカル連鎖機構による脱塩素反応におよぼす界面活性剤の影響について検討した。脱塩素反応は3~56mmol.dm-3の界面活性剤によって速度が26~50%減少した。反応の速度論的検討から,界面活性剤の反応抑制効果は,界面活性剤が形成するミセル(M)に連鎖担体ラジカルが取り込まれる(.CCl3+MF〓MCCl3)ことで連鎖生長反応が阻害されるとともに,新たな連鎖停止反応(.CCl3+MCCl3-→MC2Cl6)が誘起されるだめであることが判明した。
  • 田原 董, 藤野 淳二, 瀬戸 浩二
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1712-1718
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    クロロトリフェニルスタンナン(またはイソチオシアナトトリフェニルスタンナン)-ラクタム錯体の溶液状態における姓質をIRスペクトル,および119Sn-,1H-NMRスペクトルを用いて検討した。これらの錯体の固体状態(KBr disk)でのIRスペクトルにおけるカルボニル伸縮振動υc=o がもとのラクタムのυc=oにくらべて30~44cm-1低波数側にシフトしていたのに対し,溶液状態(ベンゼン,四塩化炭素,およびクロロホルム溶液)トでは,もとのラクタムのυc=oと錯体のυc=oの2本の吸収帯が現れた。
    また,これらの錯体の119Sn-NMRスペクトルのシグナルは,四配位スズ化合物と五配位スズ化合物の中間に位置し,ラクタムを添加してゆくとシグナルは五配位側にシフトした。溶液内でのこれらの錯体のズズ原子に結合しているフェニル基のオルト位 1H-NMRスペクトルの化学シフトの変化を追跡して,これらの錯体の四塩化炭素溶液中での平衡定数を求めた。
  • 川辺 健, 飯田 武揚, 野口 文雄, 三田村 孝, 勝部 昭明, 冨田 耕右
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1719-1724
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    好熱菌由来の耐熱性酵素グルコキナーゼとイオン感応性電界効果トランジスター(lon Sensitive Field Effect Transistor:ISFET)とを組み合わせたグルコースセンサーを試作した。本センサーにおいて,グルコースに対する応答を測定した結果,グルコース濃度5~50mg/dlの範囲でグルコースの定量が可能であることがわかった。応答時間は,このとき4~9分であった。また,各種の糖に対する応答を調べた結果,グルコースのみに応答が得られた。グルコキナーゼはヘキソキナーゼの中でもグルコースへの特異性が高い酵素であるため,グルコキナーゼを用いることにより,グルコースに対して高い選択性をもつセンサーを構築することができた。本センサーの同時再現性においては,変動係数6.5%で再現性が得られた。保存安定性では15日までは安定した応答が得られたが,20日目から初期出力の約50%に低下することがわかった。また,グルコキナーゼはグルコースとATPを基質としているため,グルコースのみならずATPの検出定量が可能となる。そこで,ATPに対する応答においても測定した結果,ATP濃度50~500mg/dlの範囲でATPの定量が可能であることが明らかになり,ATPセンサーとしても応用することができることがわかった。
  • 佐藤 謙二, 小中原 猛雄, 吉井 敏男
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1725-1733
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メラミンのホルムアルデヒドによるヒドロキシメチル化反応について,N-メチルモルホリン(pH7.79~8.72),N,N'-ジメチルピペラジン(pH8.59~9.71),4-ヒドロキシ-N-メチルピペリジン(pH9.60~10.41),N-メチルピペリジン(pH10.29~11.70)の第三級アミン緩衝液を用いた塩基性領域において,反店温度40℃ で速度論的検討を加えた。この結果,二次速度定数kは次式で与えられた。ここでk'は非緩衝液中の速度定数であり,HB+,Bはそれぞれ緩衝剤の酸,塩基成分である。さらに一般塩基触媒反応(上式右辺第3項のkB-反応)の機構について,Brφnstedプロットの勾配から考察を加えた。
  • 菊池 康男
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1734-1740
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    グリコールキトサン(GC)とポリ(硫酸ビニルカリウム)(PVSK)は水素イオン濃度の変化により,解離度,配座変化,ポリ塩化アルミニウム(PAC)は配位子解離これによる重合度の変化が考えられる。さらにGCを含む高分子錯体(MC)は,より耐酸,耐アルカリ性の成膜が期待される。この点に着目して,これらの3物質から種々の水素イオン濃度,GCとPACの組成比および滴下順序でMCを合成した.IR,元素分析,三成分溶媒による溶解平衡および溶解性の実験結果から,実験条件に応じて,生成MCの構造と性質が変わることがわかった。pH1.0で生成したMCはPVSK,GCとアルミニウムアクア錯体の組成であり,pH4.0でのそれらはPVSK,GCと分子量の高いアルミニウム塩基性多核錯体からなることが示唆されたが,詳細な構造については決定できなかった。また,PACを多く含むMCはより複雑な構造をとり,PACがMCの構造,性質に重要な役割をはたした。さらに耐酸,耐アルカリ性のMC膜をつくることができたので,これについて能動輸送.選択透過を検討した。これらの透過機構は,酸,アルカリ溶液に浸漬した膜表面のIR測定,Kの元素分析およびIRによる二次結合の存在から,膜の物理的要因と化学的要因により説明できることが明らかとなった。
  • 佐藤 登, 南 達郎
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1741-1745
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リン酸塩皮膜結晶,とりわけ亜鉛系めっき鋼板上に形成されるHopeite結晶,Zn3(PO4)2.4H2Oが浴組成におおじてマンガンやニッケル成分を含有する。しかしながら,これらの成分が結晶中でどのような状態をとるものかについてはいまだ解明されていなかった。本研究では,このような成分が不対電子をもっていることに着目し,電子スピン共鳴法による解析を見いだすものである。ここでは結晶中のニッケル成分に対しd電子状態の解析を試みた。その結果,Hopeite結晶中に含有された1.7wt%のニッケル成分は電子スピン共鳴に対し,3本の吸収スペクトルを与えながら応答した。これはニッケル成分が結晶中においてNio+,すなわち金属状態ではなく結晶の一部に配位した遷移金属イオンとして存在することを示唆するものである。そしてこのニッケルの状態については,Hopeite結晶中の亜鉛の一部を置換したZn3-xNix(PO4)2.4H20なる改質結晶と推定された。
  • 川本 克也, 浦野 紘平
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1746-1752
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    大気中にガス状で微量に存在する低沸点有機ハロゲン化合物を多数の地点で長期間にわたってモニタリングするために,これらを粒状活性炭に長期間連続的に捕集し,定量する方法を考案,検討した。
    通気には,小型真空ポンプに毛細管を付けて吸引する方法を用いれば,長期間運転しても50~100ml/minの低流量が安定して得られた。活性炭としては,石炭を原料とする米国産粒状活性炭をO.25~O.42mmにふるい別したものが吸着性能,脱離性能とも優れていた。この活性炭を約5g充填したカラムを用いれば,上記流量で1~2週間,すなわち約2000lまでの大気申の有機ハロゲン化合物をほぼ完全に吸着できたが,これを2本直列に接続し,それぞれの吸着率を確認する方法が適当と考えられた。
    カラムに吸着した有機ハロゲン化合物は,残留農薬試験用ヘキサンを30~50ml/hで50ml通液すれば,ほぼ完全に脱離できた。この脱離液をECD-GCで分析すれば,十分な感度で定量することができ,多数の地点で長期間にわたる汚染状況の把握が容易にできることが確認できた。
  • 小泊 満生, 高橋 伸, 渡辺 尚俊, 吉冨 末彦
    1987 年 1987 巻 9 号 p. 1753-1755
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Alumina-supported copper (II) chloride was found to be very effective for the regioselective chlorination of phenol and alkylphenols. The chlorination of phenol with CuCl2/Al2O3 at 50°C for 1 h in acetonitrile gave a 75% yield of a mixture of p- and o-chlorophenol with parafortho ratio of 22. Alkylphenols were also selectively chlorinated under similar co nditions to give the corresponding chloroalkylphenols in high yield. As the size of alkyl group becomes larger, the rate and the selectivity decrease.
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