グリコールキトサン(GC)とポリ(硫酸ビニルカリウム)(PVSK)は水素イオン濃度の変化により,解離度,配座変化,ポリ塩化アルミニウム(PAC)は配位子解離これによる重合度の変化が考えられる。さらにGCを含む高分子錯体(MC)は,より耐酸,耐アルカリ性の成膜が期待される。この点に着目して,これらの3物質から種々の水素イオン濃度,GCとPACの組成比および滴下順序でMCを合成した.IR,元素分析,三成分溶媒による溶解平衡および溶解性の実験結果から,実験条件に応じて,生成MCの構造と性質が変わることがわかった。pH1.0で生成したMCはPVSK,GCとアルミニウムアクア錯体の組成であり,pH4.0でのそれらはPVSK,GCと分子量の高いアルミニウム塩基性多核錯体からなることが示唆されたが,詳細な構造については決定できなかった。また,PACを多く含むMCはより複雑な構造をとり,PACがMCの構造,性質に重要な役割をはたした。さらに耐酸,耐アルカリ性のMC膜をつくることができたので,これについて能動輸送.選択透過を検討した。これらの透過機構は,酸,アルカリ溶液に浸漬した膜表面のIR測定,Kの元素分析およびIRによる二次結合の存在から,膜の物理的要因と化学的要因により説明できることが明らかとなった。
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