日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1988 巻, 11 号
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  • 藤田 英夫, 松本 澄, 大矢 博昭
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1777-1781
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジベンゾ縮合テトラアザペンタレンとして,化合物 [1] および [2] について, 酸化還元を試みた。還元反応では, 両者とも窒素分子を脱離させて, フェナジンアニオンラジカル [4-.]を生成することが ESR で確認できた。
    一方,酸化によって生じた [1], [2] のカチオンラジカルの ESR による超微細結合定数 (hfsc) は, 分子軌道法の計算結果ともよく一致している。indeno[2, 1-a]indene のカチオンラジカル [3+.] の不対電子スピン密度分布とくらべると, 窒素4個の配列の仕方が大きく寄与して, 最低空軌道 (LUMO), 最高被占軌道 (HOMO) ともに不対電子密度が窒素上により局在化していることがわかった。
  • 上野 康定, 河合 英正, 杉浦 隆, 箕浦 秀樹
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1782-1788
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    太陽エネルギーを有効に利用できる光電極材料として広く知られている CuinSe2 の電析について研究し, ゼラチンを添加剤として含む硫酸塩浴から, 定電位電解により緻密で密着性のよい被膜が Ti 基板上に得られることを認めた. Cu, In および Se の同時電析は, Se および Cu でおおわれた基板上への underpotential deposition に基づいて起こると推定される。熱処理後の電析膜は, 化学量論比に近い組成のカルコパイライト構造を示したやこれを光電極に用いて測定した電流-電位特性は, 通常, P 型の光応答を示したが, まれに n 型の光応答も現われた。その直接遷移による禁制帯幅は, 0.98eV であった。
  • 岡崎 進, 菊池 孝浩
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1789-1793
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リン酸二水素ナトリウム水溶液中のリン酸イオンに対する金属酸化物の吸着活性はその表面塩基性度に対応し,塩基性最強の酸化マグネシウムが最高の吸着活性を示した (表1)。
    酸化マグネシウムの吸着活性は1原子%程度の少量のチタンの酸化物を加えるとさらに高められた (表2)。種々の Ti/Mg 原子比の酸化チタン (IV)-酸化マグネシウム複合酸化物について調べた結果, リン酸イオンの吸着量はこの複合酸化物の表面ヒドロキシル基量にほぼ対応した (図3)。また, この吸着には Langmuir 式が適用された (図4)。共存する陽イオンが変ってもリン酸イオンの吸着量はほとんど変らず, また塩化ナトリウム, 塩化カリウム, 塩化カルシウムなどを含有するリンゲル液中におけるリン酸イオンの吸着量もリン酸土水素ナトリウムのみを含む溶液中の吸着量と変らなかった (表4)。
  • 佐藤 正徳, 中谷 仁郎, 小沢 泉太郎, 荻野 義定
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1794-1799
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルミナ触媒によるα-D-グルコースのβ-D-グルコースへの異性化反応速度におよぼす圧力の影響を解明するために, つぎの条件で実験を行ない, その結果を解析した。温度 40±0.1℃, 圧力 0.1~90MPa, α-D-グルコース初濃度 2.8~12×10-2mol/dm3
    実験の結果, 高圧下においては, 反応速度は常圧下におけるそれよりも遅くなることがわかった。しかし, 反応速度は常圧下の場合と同様, 表面反応を律速段階として導いた速度式でよく表現でき, 諸動力学定数とその圧力依存性を評緬できた。
    α-D-グルコース吸着平衡定数 Ka およびβ-D-グルコース吸着平衡定数 Kp は, 圧力によりあまり大きな影響を受けなかった。これは, グルコースの吸着にあたり, 活性点に束縛されている溶媒分子の離脱が生じ, 吸着にともなう体積減少を補うためと考えた。
    また, 表面正反応の活性化体積としてΔV1=22±4cm3/mol, 逆反応の活姓化体積として, ΔV2=20±3cm3/mol を得た。この正の活性化体積を説明するため, 律速段階におけるグルコース分子の変化過程を考察し, 遷移状態はアルデヒド基の回転が可能な程度に脱溶媒和した状態であろうと推論した。
  • 黒崎 章人, 岡崎 進
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1800-1804
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ヘキサフルオロアセトン (HFA) は, 低圧においてヘキサフルオロプロペン (HFP) と酸素との混合物を活性炭挺持貴金属触媒上で循環接触させることによって生成された。反応には誘導期が存在し, この間, HFA 生成に対して活性な蝕媒蓑面の形成が行なわれるものと推定された。反応後の気相中からは, CO2 が唯一の副塗成物として検出された。反応後の触媒表面では多量の含フッ素化合物の存在が認められ, これが触媒表面を被覆するために失活するものと考えられた。HFAは HFP の酸化によって一段で合成されていることが明らかとなった。
    XPS による検討から, 活性炭担体上の微粒子状 Pd 金属の表面が HFA 生成に対する活性点として作用しているものと考えられた。
  • 小島 勇夫, 倉橋 正保, 清住 嘉道, 新 重光
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1805-1809
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化ジルコニウムイオンをモンモリロナイトの層間の陽イオンと置換して合成した Zr-層間化合物の局所構造を EXAFS により調べた。シンクロトロン放射光を励起源として Zr の K 吸収端近傍におけるX線吸収スペクトルを調製条件の異なる2種の層間化合物, ZrOCl2 水溶液および ZrO2 について測定した。層間化合物の EXAFS スペクトルを Fourier 変換した動径分布には約 2.1Åと 3.5Åにそれぞれ Zr-0 および Zr-Zr 結合による2本のピークがみられ, 層間においても多核の錯イオンが形成されていることが明らかとなった。Zr 原子の四核からなるイオンを形成する水溶液中の動径分布と比較するとモンモリロナイトの層間中では十分にイオン交換した試料では四核, 交換量の少ない試料では二核の化合物が存在すると考えられた。最大エントロピー法を利用したところ, Zr-0 結合のピークに Zr-OH および Zr-OH2 による微細構造が見いだされた。この試料を 500℃ に加熱すると, 長距離側のピークが消失して層間に酸化物の微小粒子を生成することが示された。
  • 津波古 充朝, 堀井 洋子, 川本 嘉代, 川高 菜緒, 成相 裕之, 本岡 達
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1810-1815
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水酸化チタン (IV) Tio2・nH20 または酸化チタン (IV) Tio2 (ルチルおよびアナタース型) とリン酸とのオートクレープ中での反応により, 結晶性ビス (リン酸-水素) チタン (IV) 二水和物 Ti(HPO4)2・2H2O(γ-Tip) の製法を確立した。
    水酸化チタン (IV) および酸化チタン (IV) 系のいずれの系においても, γ-Tip の生成には混合罰合 (P205/Tio2), 加熱温度, 加熱時間および水蒸気圧が大きく影響した。γ-TiPの合成最適条件としては, 水酸化チタン (IV) 系においては, P205/TiO2=1.2~1.5, 加熱温度 225~250℃, 加熱時間3時間以上, 水蒸気圧 15atm 以上, また酸化チタン (IV) 系においては, P205/TiO2=1.2~1.5, 加熱温度 200~210℃, 加熱時間3時間以上, 水蒸気圧 8atm 以上がもっとも有効であった。
    本方法で合成した γ-TiP は水溶液中のアンモニアおよびアンモニアガスを効果的に吸着した。
  • 渋谷 康彦, 立川 宏, 新良 宏一郎
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1816-1821
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    [Ni(acac)2B2]錯体 (Hacacはアセチルアセトンを示す) の熱分析ならびに熱分解反応の速度論的解析を行なった。この錯体では, 配位子として塩基Bのアニリン誘導体が吸熱をともなって1分子ずつ二段階的に解離し, Ni(acac)2 が生成する。この場合にみられるアニリン誘導体の熱解離反応を Coats-Redfern の方法にしたがって速度論的に解析し, 活性化自由エネルギー (ΔG) を求めた。ついで, ΔG=αpKa+βdH(aub)(式中のα,β は,反応系によって決まる定数) を仮定し, 塩基Bの塩基性 (pKa) ならび健熱酌性質 (ΔH(sub):融解熱と蒸発熱の和) を用いて, アニリン誘導体の種類による錯体の熱安定性の相違を考察した。その結果, 各錯体の熱安定牲は, 仮定のように主として塩基性および熱的性質によって影響されることを認めた。さらに, pKa, ΔH(sub) の値がアニリン誘導体と大きく異なる [Ni(acac)2(NH3)2] 錯体の場合にも, さきに仮定した式に適用できることを認めた。
  • 熊倉 稔, 嘉悦 勲
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1822-1829
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    木粉およびモミガラの電子加速器による放射線前処理において照射線量および電子電流によって照射効果が促進され, また照射後の 100~140℃ での試料加熱によって照射効果が促進された。カセイソーダ水溶液の添加下での照射によっていちじるしく照射効果が促進されることがわかった。放射線重合を利用して得られた繊維質多孔性担体を使用してセルラーゼ産生菌体であ るTrichoderma reesei を固定化した。その固定化菌体の源紙セロビオースおよび CMCの分解活性は遊離の菌体よりも高くなった。固定化菌体の活性は疎水性の表面をもつ担体の方が親水性の担体よりも高くなることがわかった。固定化菌体はくり返し培養が可能であり, 固定化菌体からの酵素水溶液は放射線前処理した木粉の糖化に応用された。
  • 喜田 益夫, 吉川 武志, 専田 崇雄, 吉弘 芳郎
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1830-1835
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フルクトオリゴ糖は,フルクトース転移活性の強い β-フルクトフラノシダーゼを, スクロ一スに作用させることにより製造されている。この場合, その反応後期には, 転移活性が抑糊され, 加水分解活が増大してくるので, より効率的にフルクトオリゴ糖を得るには, この加水分解活性の増大を抑制性する操作が必要となる。
    本研究では, これを目的とし, Aspergillus oryzae の生産する β-フルクトフラノシダーゼを, DEAE-セルロースに固定化し, これを, 至適転移活性条件下 (40℃, pH7.8) で, 高濃度スクロ一ス溶液に作用させ, フルクトオリゴ糖の生成条件を検討した結果, 生成物であるグルコースは転移活性を抑制し, 逆にフルクトースは促進することが認められた。これは, フルクトースが, フルクトシル基の受容糖として作用し, 還元性フルクトオリゴ糖の生成量を増加させることに起因していると考えられる。
    そこで, 加水分解活性が促進される直前の生成物中のグルコースをグルコースイソメラーゼによってフルクトースに異性化し, 異性化を行なわない場合の反応系との酵素活性の相違について比較したところ, 前者では加水分解活性が抑制され,基質を有効に利用できることが明らかとなった。
  • 江島 清, 長谷川 悦雄, 松下 洋一, 西出 宏之, 土田 英俊
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1836-1845
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3種類の 2-位置側鎖にイミダゾリル置換基をもつ 5, 10, 15, 20-tetrakis(α, α, α, α-o-pivalamidophenyl)porphyrinatoiron(II) 誘導体 [12], [14] および [15] を合成した。
    5, 10, 15, 20-tetrakis(α, α, α, α-o-pivalamidophenyl)porphyrin[1] の銅(II) 錯体 [2] は, Vilsmeier 試薬と反応して 2-ホルミルポルフィリナト銅(II) 誘導体 [3] を与えた。[3] を濃硫酸で処理して銅が脱離した [4] を得た。これは, Knoevenagel 反応で 2-(trans-カルボキシエテニル)ポルフィリン誘導体 [7] を, 水素化ホウ素ナトリウム還元で 2-(ヒドロキシメチル)ポルフィリン誘導体 [5] を与えた。[5] にホスゲン, 1-(3-アミノブロピル)イミダゾール, および臭化鉄(II) を順次反応させて [12] を得た。[7] の鉄(III) 錯体 [13] に2種のイミダゾール誘導体をアミド縮合させて, [14] および [15] を得た。[5] と比較して [14] と [15] は, 鉄(II) フリーの状態で不安定であり, 置換基の種類によってイミダゾリル基をもつ 5, 10, 15, 20-terakis(α, α, α, α-o-pivalamidophenyl)porphyrin の安定性に差が見られた。
  • 江島 清, 湯浅 真, 西出 宏之, 土田 英俊
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1846-1851
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-[trans-2-[[L-[2-hexadecylcarbamqy1-1-[[3-(2-methyl-1-imidazoly1)propy1]carbamoyl]]ethyl]carbamoyl]ethenyl]-5,10,15,20-tetrakis(α,α,α,α-o-pivalamidophenyl)porphyrinatoiron(II)[1]は界面活性剤であるポリ(オキシエチレン)誘導体やリン脂質との相溶性がよく, 高い効率でミセルやリポソームに包埋され, 水溶液に可溶化した。ミセルまたはリポソームに包埋した [1] の水溶液中での酸素および一酸化炭素の結合親和性はそれぞれ 30~40mmHg, O.02mmHg で, 赤血球のそれらに類似した値であった。酸素および一酸化炭素の結合・解離速度定数も赤血球の値に近かった。
  • 佐藤 謙二, 小中原 猛雄, 吉井 敏男, 本田 俊和
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1852-1862
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メラミンのホルムアルデヒドによるヒドロキシメチル化反応について酢酸塩緩衝液 ([CH3COOH]/[CH3COO-]=1.0) を用いてArrheniusプロットを行ない活性化パラメーターを算出し, さらに, メラミンの H+ による共役酸生成反応, 無触媒下のメラミンのホルムアルデヒドによるヒドロキシメチル化によるモノ (ヒドロキシメチル) メラミン生成反応, モノ (ヒドロキシメチル) メラミンの H+ による共役酸生成反応, および酢酸の酸解離反慈について平衡定数およびエンタルピー変化を算出した。そして, これらの熱力学的パラメーターおよびホルムアルデヒドの H+ によるヒドロキシメチルカチオン生成反応の平衡定数およびエンタルピー変化の文献値の使用により, 従来報告されている酸触媒反応機構およびもっともらしい機構について, 各素反応の正反応を律速段階と考えた場合の正および逆反応の頻度因子を算出した。この熱力学的検討の結果, メラミンのヒドロキシメチル化反応における酸触媒反応機構は, 既報の Brφnsted プロットの勾配に基づく機構を支持することがわかった。
  • 中塩 幸泰, 長谷川 勝, 原田 修, 山本 忠弘
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1863-1867
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    0-,p-メトキシ-, o-,m-,ρ-クロロ-,o-, p-ニトロ-および o-カルボキシ過安息香酸 t-ブチルを合成した。このうち5種のo-,m-置換体はまだ報告されていない。一次分解速度定数 (kd) をクロロベンゼン中 120℃ で求め, 分解速度におよぼす置換基効果を文献中の置換体も含めて検討した。
    Hammett 式はこれらの m-,p-置換基と p-メチル基に対しては成立したが, p-メチルチオ基に対しては成立しなかった。これらすべての置換基は, 共鳴効果を考慮した修正 Hammett 式 (log(kd/kd0)=ρσ+γER) でより密接に関係づけられ, ρ=-0.7, γ=0.3 をえた。これら置換体の分解速度は置換基の極性と共鳴の両効果に支配される。
    4種の o-置換体 (I) の kd は未置換のそれとくらべて, メトキシとクロロ基で増大しカルポキシルとニトロ基で減少した。kd と o-置換基定数 σ* とは相関性がある。しかし, (I) の kd は文献の o-フェニルチオあるいは o-メチルチオ置換体 (II) のそれよりもはるかに小さい。Martin らは (II) の置換基効果を隣接基関与によって評価したが, (I) のそれはベンゼン環を通した p-置換基と似た寄与で説明できた。
  • 国貞 秀雄, 結城 康夫, 田中 利尚
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1868-1873
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4種の 2-(アミノまたはアニリノ)-4-(p-エチルあるいはブチルアニリノ)-6-イソプロペニル-1,3,5-トリアジン [1]~[4] を合成した。アゾビスイソブチロニトリルを開始剤, ジメチルスルホキシドを溶媒に用いて [1]~[4] の単独重合およびスチレン, メタクリル酸メチル, アクリル酸メチルとの共重合を行ない共重合パラメーターを決定した。ホモポリマー, コポリマーのガラス転移温度を測定し, コポリマー中の組成との関係を求めた。また, [1]~[4] は融解後, 熱重合するので, 示差走査熱量計 (DSC) を用い, 天井温度 (Tc), 重合熱 (ΔHp) を決定した。Tc, ΔHpの値は, 置換基がエチル基からブチル基へ変わることにより低下した。
  • 加藤 仁一郎, 山崎 悟, 徳重 健作, 中村 克之
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1874-1879
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    構造の秩序性に優れ, かつ橋かけ密度の高い網目状高分子が形成されれぽ, 高度の力学物性を有する新素材になり得ることが期待できる。このような高分子材料を得るために, 高反応性のジアセチレン構造と炭素-炭素二重結合を組み合せて橋ゆけ密度を高めた 1,6-ビス(アクリロィルアミノ)-2,4-ヘキサジインを合成し, その熱反応性および静水圧を用いた粉体成形を検討した。
    このジアセチレン化合物は, 反応温度を制御することにより, まずジアセチレン部分が, ついでより高い温度で二重結合が固相反応し, 網目状高分子を与えることが示唆された。そこで, この熱反応性を利用して, 高圧下で粉体成形を行なったところ, 超音波伝播速度から求めた成形体の弾性率は, 1000MPa, 200℃, 1時間の成形条件で最高1 8GPa に達した。また, 熱伝導率では, 汎用樹脂の 2~3 倍, Vickers 硬度では, 最高 255 という鉄 (138), 銅 (80) をもしのぐ物性が得られた。
  • 酒井 保藏, 鈴木 秀一, 若林 章一, 高橋 不二雄
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1880-1884
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究はリボ核酸 (RNA) から5'-イノシン酸 (IMP) を連続生産するのに水酸化ジルコニウムダイナミック膜を被覆したセラミック膜 (Zr-CM膜) を分離膜として応用することを目的としている。2種の酵素 (5'-ホスポジエステラーゼと AMP(5'-アデノシンーリン酸, 以下 AMP と略す) -デアミナーゼ) を用いて RNA からモノヌクレオチドへの反応と, 生成したモノヌクレオチドの一種 AMP から IMPへの反応を行なった。同時に Zr-CM膜を用いて酵素や未反応 RNA を反応器内に保持しつつ低分子成分である IMP などのモノヌクレオチドを分離した。このメソプランリアクターの操作では沸過された IMP などのモノヌクレオチドに見合う分の RNA を逐次添加している。ここで反応系を定常状態にして RNA から IMP への連続生産を期待した。本研究はその基礎的条件として, 高分子排除率, 透過流束, 酵素活性の時間変化, RNA から IMP への変換率, 炉液中の IMP 濃度などを検討した。その結果, 酵素活性が一定になるように反応途中で失活分に相当する量の両酵素を逐次添加していれぽ高分子排除率, 透過流束, および炉液中の IMP 濃度は一定となり, RNA から IMP の連続生産が可能になること明らかにした。
  • 横山 敏郎, 木村 哲雄, 鈴木 敏重
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1885-1890
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニトリロ三酢酸類似の多座配位子を末端に有する,L-リシン-Nα,Nα,Nε-三酢酸を, 橋かけポリスチレンに導入したキレート樹脂の合成を試みた。水溶液中でジメチルスルポニオ化したポリスチレン樹脂ビーズと, ビス(L-リシン)銅(II)錯体 ([Cu(L-Lys)2]・2HCl) とを反応させた後, 銅(II)イオンを除去し, L-リシンをε-位のアミノ基で位置選択的に導入した樹脂を得た。さらに樹脂に固定されたリシンのアミノ基部をカルボキシメチル化することにより, 目的のキレート樹脂を得た。この樹脂の金属イオン吸着特性を検討したところ, 種々の金属イオンに対する最大吸着量は 1.2~1.5mmol/g-樹脂であり,樹脂の配位子含有量 1.54mmol/g-樹脂に近い値を示した。また各金属イオンに対する選択性は, Ga(III)>ln(III)>Cu(II)>Al(III)>Ni(II)>Zn(II)>Co(II)>Fe(II) の順であった。本樹脂の三価金属イオンに対する吸着力は, イミノニ酢酸を含むキレート樹脂とくらべてより大きいことが認められた。本樹脂がガリウム(III), インジウム(III)に対し, 高い吸着力を示すことに着目し, カラム法により大量のアルミニウム(III) や亜鉛(II) を含む金属イオン混合液から, これら金属イオンの選択的分離回収を試み, 満足すべき結果を得た。
  • 佐藤 登, 南 達郎
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1891-1896
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    合金化溶融亜鉛めっき鋼板上に形成される Hopeite 皮膜と, 冷延鋼板上に形成される Phosphophyl-Iite 皮膜について,皮膜構成金属の成分組成を変化させたときのレーザーラマン分光スペクトルにおよぼす影響に関し考察した。
    いずれの皮膜においても, 800~1300cm-1 の範囲にて4本のピークをもつラマンスペクトルを確認したが, このスペクトルは皮膜構成体であるリン酸イオンPO43- の振動スペクトルを意味するものである。Phosphophyllite皮膜のラマンバンドは, Hopeite 皮膜のそれより低波数側に位置するものであるが, Hopeite 皮膜中のニッケルやマンガン成分を増加させるにしたがい, Hopeite 皮膜のラマンバンドは Phosphophyllite 皮膜のそれに近づく傾向を示した。これは亜鉛以外の金属成分であるニッケルやマンガンが, Hopeite 皮膜の亜鉛を一部置換配位し, Zn3-xMex(PO4)2・4H20(Me:Ni or Mn) の構造をとり, Phosphophyllite に類似した構造に改質されるためと考えられた。4本のラマンピークは四面体構造のν1 とν3 に相当するものであるが, 結晶中ではPO43- の対称性がくずれることにより三重に縮重したν3 が解け, 3本に分裂してν1 とあわせて4本のピークを形成したものと考えられた。
  • 高橋 一暢
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1897-1902
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    原子吸光分析法 (以下, AASと略記する) により京都府舞鶴湾海域における底質土中の微量金属元素 (スズ, 銅, 亜鉛, 鉛およびマンガンなど) の含有量とその分布特性とを明らかにし, 他の港湾海域 (長崎県瀬戸港) と比較しながら港湾海域における底質土中の微量金属元素の化学的挙動について検討した。
    底質土を王水で湿式分解したのち, スズ, 銅, 鉛を標準添加法により, 亜鉛, マンガンを検量線法により AAS で定量した。その結果, 京都府舞鶴湾 (京都府舞鶴市) における底質土中の微量金属元素は, 長崎県瀬戸港 (長綺県西彼杵郡大瀬戸町) とくらべて高い含有量を示した。また, それぞれの港湾における底質土中の微量金属元素の分布特性についてみると, 銅, 亜鉛, 鉛などは港湾の内部に入るにしたがって増加する傾向があったが, マンガンは銅, 亜鉛, 鉛などとは異なる分布特性を示した。このことから,マンガンは港湾海域の底質土中において銅, 亜鉛, 鉛などと異なる挙動をとることが考えられた。一方, スズは港湾全体に比較的均一に分布し, 他の微量金属元素 (銅,亜鉛, 鉛およびマンガンなど) とはきわめて異なる分布特性を示した。
  • 上田 寿, 貝瀬 正紘
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1903-1905
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The line width of each hfs line in ESR spectrum of a cation of N, N, N′, N′-Tetramethylpphenylenediamine (TMPD.+) formed in a mixture with butyl titanate polymer varies with the nuclear spin quantum number. Simulation of the ESR spectrum of TMPD.+ has been made using the line width which varies with nuclear spin quantum number. The contribution of τc(A-B) m1/h2 term to the line width was investigated to see which of the mIvalues, mI of benzene ring protons, mI, of methyl protons, or m, of nitrogen nuclei, is contributing most.
    The result indicates that the line width originating from the protons of the benzene ring is nearly 10 times as large as those coming from the protons of the methyl groups and the nitrogen nuclei. Therefore TMPID.+ in the butyl titanate polymer is considered to be fixed at the phenyl ring.
  • 林 拓道, 岩崎 孝志, 小野寺 嘉郎
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1906-1908
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Several λ-MnO2 specimens were prepared by HCl-treatment of LiMn204 synthesized by heating the mixtures of Li2CO3 and MnCO3 (Li/Mn molar ratio 0.05-0.5) at 600-1000°C for 8 h.
    The effect of synthetic conditions of LiMn204 on the lithium adsorbability has been studied. The λ-MnO2 specimen which shows high Li adsorbability could be formed from products with Li/Mn =0.1-0.25 at 800-1000°C (Fig.1).
    The λ-Mn02 under the above synthet ic conditions collected lithium selectively from geothermal brines at 100°C (Table 1).
  • 山崎 仲道, 細井 和幸, 柳沢 和道
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1909-1911
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Effects of the conditions of hydrofnermal decomposition (temperature, time, alkaline concentration, degree of filling and addition of Na2Si03) on the formation of carbon from chlorinated organic materials were studied by using a microautoclave.
    The carbon formed by dechlorinating decomposi tions of 1, 1, 1 -trichloroethane had spherical particles with uniform diameters (3-5 νm). Silicate ion had a large effect on carbonation of 1, 1, 1-trichloroethane under the alkaline hydrothermal conditions of 300°C, 300 kg/cm2, 24reaction time. It was easy to form graphite structures. However, polychlorinated adamantanes did not transform to graphite tructure but only to the amorphous one with addition of Na2SiO3.
    It was suggested that the silicate acts as a catalyzer of graphitization from organic materials and the graphite among silicate rocks may be formed at relatively mild conditions around the critical point.
  • 安田 伍朗, 堀 卓也
    1988 年 1988 巻 11 号 p. 1912-1914
    発行日: 1988/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-Alkylation of phenanthro [9, 10-d] triazole [1a] gave the mixture of 1- and 2-alkyl derivatives, the latter being predominant. The ratio of these isomers was in contrast to the N-methylation of benzotriazole [3a]. N-Phenylation of [1a] gave the 2-phenyl derivativ e [2f] exclusively. The 2-position of [1a] was alkylated in preference to the 1-position, contrary to the previous paper.
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