日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1988 巻, 2 号
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  • 成木 紳也, 伊藤 滋, 米田 登
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    K+-β″-フェライト粉体(K2O・5Fe2O3)を硝酸塩融液(200~450℃)あるいは,濃硫酸(90℃)中に浸潰することによって,K+イオンとM+イオン(Na+,Rb+,Cs+,Ag+,Tl+,NH4+およびH3O+イオン)とをイオン交換させ,各種のM+-β″-フェライトを合成した。M+-β″-フェライトの格子定数c0の大きさは,M+イオンが大きくなるほど増大した。さらに,K+-β″-フェライトを,Ba(NO3)2融液(650℃)中に浸潰することにより,Ba2+-β″-フェライトが生成した。しかし,他の二価陽イオン(Mg2+,Co2+,Ca2+,Zn2+,Cd2+,Pb2+およびSr2+イオン)を含む溶融塩中で処理した場合には,β"構造は崩れ,スピネルフェライト,α -Fe2O3,γ -Fe2O3あるいはSrFe2O4が生成した。得られたRb+,Cs+-β″-フェライトは,約800℃で,一部がα-Fe2O3となったのち,1150,1050℃以上で,それぞれβ″相へ転移した。Ag+-,Tl+-β″-フェライトは,600℃ 以上で,急激にα-Fe2O3に分解した。NH4+-,H3O+-β″-フェライトは,300℃以上でγ-Fe203の中間相が生成したのち,α-Fe2O3に転移した。この中間相の生成は,β″相とγ-Fe2O3の構造類似性が原因であると考えられた。
  • 潮 真澄, 住吉 義博
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 139-142
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ピストン-シリンダー型高圧装置を用い,高温高圧下で黒リンの安定領域および黒リン単結晶の合成について検討した。出発原糀して市販試薬赤リンを用い,黒鉛管(直径6.2mm,長さ20mm)に充填した。
    赤リンは6kbar下では約700℃ 以下,10kbar(1.01GPa)では約550℃ 以下,4kbar下では約700℃ 以下で安定であった。粉末状黒リン(小結晶,長さ約5μm)は6kbar下では700~900℃,10kbar下では600~1000℃ の条件下で生成した。液相の温度領域は6kbar下で約1000~1400℃,10kbar下では1050~1680℃ であった。大型黒リン単結晶はこの液相から固化することによってつねに生成した。黒リンは相合溶融するようである。一方,気相領域は6kbar下で1500℃ 以上,10kbar下では800℃以上,そして3kbar下では700℃ 以上で見いだされた。
    板状の大型黒リン単結晶の最大は4.5×0.25mm2であり,面がよく発達しており,特徴ある金属光沢を有していた。
  • 渋谷 康彦, 新良 宏一郎
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    [Co(Hbhpn)B2]X2錯体(H2bhpnは,N,N′-ビス(2-ヒドロキシイミノ-1-メチルブロピリデン)-1,3-プロパンジアミンを示す)の固体熱反応において,軸配位子であるアニリン誘導体(B)の2分子が二つの外圏陰イオン(X)によって見かけ上一段階的に置換され,吸熱をともなって反応生成物として[CoX2(Hbhpn)]錆体が形成される。この場合の熱反応についてCoats-Redfemの方法にしたがい速度論的な解析を実施した。まず,錯体の熱重量曲線に基づいて,反応の活性化エネルギーr頻度因子の値を求め,ついで速度定数,活性化自由エネルギーの値を算出した。
    これらの結果から,[Co(Hbhpn)B2]X2錯体の場合にみられるアニリン誘導体と外圏陰イオンとの置換反応が,SN1機構(解離的入れ換わり)で進行すると推察した。さらに,錯体の熱安定性を活性化自由エネルギー変化の値に基づいて評価し,主としてアニリン誘導体の塩基牲に比例して錯体の熱安定性が増大することを認めた。
    また,この場合の置換反応でみられる吸熱量は,175~206kJ・mo1-1であり,類似する組成の[Co・(Hdmg)2B2]X錯体(H2dmgはジメチルグリオキシムを示す)の場合の吸熱量にくらべて約2倍に相当することを認めた。
  • 森 邦夫, 岡井 禎浩, 渡辺 明, 中村 儀郎
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    銅粉表面の酸化皮膜量を測定する簡便で精度の高い方法について検討した結果,酸溶解法が目的に合うことが明らかとなった。酸溶解法の要点は測定装置内から酸素を除き,銅粉の再酸化をどうして防ぐかにある。これらの目的を,窒素気流下,インヒビターの共存,および水-メタノール混合溶媒の使用などによって達成した。銅粉の酸化皮膜の測定は,0.1mol・dm-3HClの水-メタノール混合溶媒200mlに銅粉0.1~0.5gを加えて20℃ で5分間かきまぜた後溶解した銅イオンを原子吸光分析で定量して行なった。測定可能な銅粉の粒度は平均で2.5μm以上であった。本報をほかの測定法と比較検討した結果,十分満足のいく銅粉の酸化度の分析法であることがわかった。
  • 藤野 治, 松井 正和, 永広 徹, 中口 譲, 平木 敬三
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 153-156
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ハマグリ貝殻中のマンガンの定量方法と分布について,グラファイト炉-原子吸光分析法(AAS法)および放射化分析法により詳細な検討を行なった。その結果,酸分解したハマグリ貝殻試料溶液をそのままグラファイト炉アトマイザーに直接挿入するAAS法(直接法)と溶媒抽出法を前処理に用いたAAS法および放射化分析法によって得られた各値はよく一致した。とくに直接法は共存塩類からの干渉もないため,迅速に,精度よく,感度よく定量できることが明らかとなった。得られたハマグリ貝殻中のマンガン含量は0.61~7.30μg/gであり,その分布は殻頂から腹縁にかけて大きく減少する傾向にあることが認められた。
  • 武隈 真一, 松原 義治, 山本 啓司, 野副 鉄男
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 157-161
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アズレン〔1A〕を非プロトソ姓極性溶媒(HMPAあるいはDMF)中110℃ で微泡化した酸素を16時間通じ酸化を行なったところ,アズレン核外に余分の炭素原子をもった一分子,二分子および三分子間生成物(〔1F〕,〔1G1〕,〔1C〕,〔1G2〕,〔1D1〕),ナフタレン系転位体(〔1E4〕,〔1H1〕,〔1H2〕),ベンゼン系転位体(〔1E2〕,〔1I1〕,〔1E3〕,〔1I2〕),ビアズレン〔1B〕,転位をともなう二分子間生成物(〔1E1〕,〔1D2〕)および溶媒の分解物が置換した化合物〔1H3〕などの多種多様の生成物が得られた。なお,これらの生成物のうち〔1D1〕,〔1E1〕および〔1G2〕は文献未載の新規化合物である。
    各種生成物は電子スペクトル,質量,IRおよびNMRスペクトルを測定し,それらの解析結果から構造を決定した。
  • 岡田 豊, 林 隆俊
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 162-165
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    (ο-置換フェニル)フェロセン類の13C-NMRを測定し,シクロペンタジエニル基のシグナルの帰属を行なった。その結果,α-炭素は,おもにフェニル基のο-位置換基による立体圧縮効果の,β-炭素は,誘導効果の影響を受けていると推定された。一方,ipso炭素は,立体圧縮効果と誘導効果の両方の影響を受けていた。また,(ο-ニトロおよびο-メトキシカルボニルフェニル)フェロセンのα-炭素さらに(ο-ヒドロキシフェニル)フェロセンのα-,β-および1′-炭素の化学シフトは,ほかの誘導体のそれにくらべて,特異的であった。これらの特異牲は,(ο-置換フェニル)フェロセン類の独特の立体配座と相補的な関係をもつことが明らかにされた。
  • 杉本 義一, 三木 康朗, 丹羽 吉夫, 大場 昌明, 山田谷 正子
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 166-173
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高温高圧下において7種類の石炭の水素化分解を行ない,得られた留出油中の極性成分の組成について,ガスクロマトグラフィー(GC)およびFI質量分析法(FI-MS)により検討した。
    反応はt内容積300mlの回転かきまぜ式オートクレーブに石炭25g,テトラリン30ml,α-Fe2O3(硫化)0.5gを充愼し,反応温度450℃,反応時間1時間,水素初圧100kg/cm2で行なった。蒸留により得た留出油(150~430℃)から,アルカリ抽出,酸抽出および活性アルミナカラムにより,それぞれ酸姓成分,塩基性成分,中性極性成分を分離した。各極性成分の収率は酸性成分4.1~6.3%,塩墓性成分0.3~1.4%,中性極牲成分3.5~5.6%(maf基準)の範囲であった
    。酸性成分の収率は原炭中の酸素含量ととくに関係はなく,炭種により異なった。酸性成分のGC分析により,その組成は炭種によらずほぼ一定であり,また,リグニンの水素化分解により得られた酸性成分の組成ともよく似ていることが示された。
    塩基性成分および中性極性成分の組成分析は,FI-MSにより行なった。塩基性成分には単環から四環までの塩基性窒素化合物が含まれており,中性極性成分にはヒドロキシル基を1個もつフェノール性化合物とインドール,カルパゾール類などの非塩基性窒素化合物が多く含まれていた。
    留出油中の極性成分の組成は炭種により大きな相違はなかったが,石炭化度の高い歴青炭ほど多環の化合物が多くなる傾向がみられた。
    石炭液化油のような複雑な混合物の組成分析法として,FI-MSによる分子イオンスペクトル法およびシリル化法がきわめて有用であることが示された。
  • 進藤 隆世志, 大嶋 洋三, 大沼 浩, 山田 宗慶, 天野 杲
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 174-180
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石炭の流体化の化学的基礎を得るために,構造既知で熱分解挙動が知られている4種類の合成高分子化合物,すなわちPolystyrene(PST),Poly(methylmetacrylate)(PMMA),Poly[oxy(2,6-dimethyl-1,4-phenylene)](PPO)およびPoly(thio-1,4-phenylene)(PPS)を選び,これらと水素原子との反応を放電流通式反応装置により圧力133Pa,室温から300℃ の温度範囲で行なった。
    いずれの合成高分子化合物でも転化率は熱分解より水素原子との反応において大きく,高温ほど顕著であった。熱分解による生成物が単量体から三量体程度のオリゴマーであったのに対し,水素原子との反応による生成物はこれらに加えて単量体の水素化物,水素化分解物からなっていた。低温では水素化物が,高温では水素化分解物が主要な成分であった。さらに合成高分子のくり返し構造は水素原子を照射しても変化しなかった。これらのことから水素原子は高分子鎖中の水素をランダムに引き抜いたり,あるいは硫黄などのヘテロ原子へ選択的に付加しラジカルを生成することによって,高分子のラジカル解重合やランダム分解を促進していると推定される。
  • 杉本 義一, 山田谷 正子, 小山 実, 金澤 健治, 丹羽 吉夫, 石川 啓一郎, 三木 康朗, 大場 昌明
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 181-188
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    溶融シリカキャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィー(GC),ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC/MS)およびFI質量分析法(FI-MS)を用い,チオリグニンの水素化分解生成物中の留出成分の組成について検討した。
    テトラリン溶媒中,450℃でチオリグニンの水素化分解を行ない,得られた軽質留分(~280℃)および中質留分(280~400℃)を,アルカリ抽出および活性アルミナカラムにより,それぞれ酸性成分,中性極性成分および無極性成分に分離した
    。軽質留分中の酸性成分については,溶融シリカキャピラリーカラムを備えたGC,GC/MSにより詳細な分析が可能であること,その結果,単環フェノール類(約85%)が大部分であるが,ほかにインダノ一ル/テトラリノール類,ナフトール類などの二環の化合物(約9%)も含まれていることを示した。
    中質留分の各成分については,FI-MSを用いた分子イオンスペクトル法により組成分析を行なった。酸性成分中にはヒドロキシル基を2個もつ化合物が多く含まれており,これらは単環フェノール類の二量体および単環フェノール類とインダノール/テトラリノール類がつながったものと推察された。各成分の骨格構造としてビフェニルタイプと縮合環タイプが考えられるが,無極性成分の脱水素化物のGC/質量分析によりフェナントレン,アントラセン,ピレンなどの縮合多環芳香族化合物が多く検出されており,酸性成分や中性極性成分中にも二および三環の縮合環構造が存在するものと推察された。
  • 山本 由紀子, 西垣 功一, 森田 数博, 杉本 宣敬
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 189-193
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ヌクレオチドオクタマーの合成を考えるとき,二つのタイプのテトラマー(X型,Y型)をそれぞれ256種ずつ用意すればそれらの組み合わせ合成によって任意の配列のものを一段の合成でつくりうる。本研究ではこの原理を実現させるために,まず2型のテトラマーを実際に合成し,それを用いたオクタマーの簡便合成の検討を行なった。X型に,DMTrN1*pN2*pN3*pN4*Po-またY型に,HON1*pN2*pN3*PN4*bzを採用した。(ここで,DMTr,bz,*はそれぞれ保護基を示す)。テトラマー0.4μmoleのスケールで簡便合成を行なった結果,検討の範囲で収率は3~90%で,酵素的DNA合成法のプライマーとしては十分な収量と純度であることが示された。合成されたオクタマーのプライマー機能は,実際に酵素的DNA合成に用い,DNA中の特定の部位からの鎖伸長が行なわれることで確認された。本方法で合成されたDNAフラグメントは,プライマーリレー法のようなDNA塩基配列決定,DNAの識別や探索,遺伝子の発現調節などで広く有用である。そのさい,準備すべきテトラマーは512種の一部のみで間に合い,一般にテトラマーは効率的DNA合成の基本ブロックとしての最適サイズであることなどが考察されている。
  • 本田 智香子, 神戸 雄子
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 194-200
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ウシ血清アルブミン(BSA)を液体クロマトグラフ法により分別分取し,光散乱測定により分子量を求め,BSA単量体および二量体であることを確認した。BSA単量体を用いて2-メルカプトエタノールを加え,ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)との複合体を調製した。BSA単量体,SDSミセルおよびBSA-SDS複合体について20mmol・dm-3,100mmol・dm-3リン酸緩衝液中で動的光散乱法により拡散係数(D)を測定した。Dの濃度依存性はBSA,SDSおよび複合体のいずれの場合もD=D0(1+kDc)で表わすことができた。BSA単量体およびSDSミセルのD0はリン酸塩濃度の増加により小さくなった。一方,複合体のD0はリソ酸塩濃度の増加によりわずがに大きな値を示した。BSA単量体,SDSミセルおよび複合体のいずれもkDはリン酸塩濃度の増加により小さくなった。20mmol・dm-3リン酸緩衝液中における複合体のkDはBSA単量体やSDSミセルのkDよりもいちじるしく大きい値が得られた。これはBSAの扁長回転楕円体からランダムコイルへの立体配座変化による流体力学的効果と,複合体形成によってSDSミセルが局所的に集合したために生じた電荷密度の変化による熱力学的効果によると考える。
  • 松下 洋一, 長谷川 悦雄, 江島 清, 大野 弘幸, 土田 英俊
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 201-208
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    分子内に3個の重合性基をもつトリアシル型リン脂質:ο-[2,2,2-トリス(2',4'-アルカジエノイルオキシメチル)エチル]ホスホコリンを合成し,これが形成する二分子膜小胞体(ベシクル)を紫獲光照射により高分子化した。アシル基部分の炭素鎖長12以上のものはベシクルを形成するが,14以上では超音波法でLUVを生成する。高分子化ベシクルは溶媒不溶で,かつ凍結解凍操作や界面活性剤およびリン脂質酵素ホスホリパーゼDの添加に対しいちじるしく安定度が高い。
  • 横井 弘, 門脇 昭秀
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 209-211
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Cu2+-PVA系め水溶液において,pH〓13にすると,PVAのヒドロキシル基が脱プロトンしてCu2+夜直接配位する錯体種が隼成することを,ESR研究で明らムにした。このさい,アルカリ添加量を上げると,上に述べだ錯体種が多量に生成し,ガム状の析出物となった。また,Cu(OH)2-PVAの包接錯体の溶液にアルカリを添加していくと,[Cu(OH)4]2-が生ずるが,この反応性はPVA無添加系での沈殿性Cu(OH)2,の場合と同程度であり,このようにし七生じた[Cu(OH)4]2-がPVAと反応して上に述べた錯体種が生成すると考えられる。なお,これらはすべて平衡反応系である。
  • 山岸 秀之, 斎藤 恭一, 古崎 新太郎, 須郷 高信, 岡本 次郎
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 212-216
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高密度ポリエチレン製中空糸状マイクロ炉過膜を基材として,放射線グラフト気相および液相重合法が透水性能におよぼす効果について検討した。アクリロニトリル,酢酸ビニル,スチレン,アクリル酸を重合した膜を用いて,グラフト重合段階の透過流束を測定した。その結果,気相重合法でモノマーをグラフト重合した膜の方が液椙重合法でモノマーをグラフト重合した膜の透過流束より大きかった。これらの膜について細孔容積,寸法変化を調べたところ気相重合法で合成した膜の方が液相重合法で合成した膜より膨張していることがわかった。さらにグラフト重合した膜中のシアノ基およびアセトキシル基をそれぞれアミドオキシム基,アルコール性ヒドロキシル基に変換して,官能基変換反応後の透過流束を測定した結果,気相重合法で合成した膜の方が液相重合法で合成した膜よりも透過流束が大きかった。
  • 山口 達明
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 217-220
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リグニン製品を水酸化ナトリウムとともに加熱乾留することによって,炭化・賦活を一段で行なうことができ,従来の製造法にくらべてはるかに低温で好収率に粉末活性炭が得られることを見いだした。炭化・賦活の条件が,得られる活性炭の収率Y(g-活姓炭/g-原料)および性能にどのように影響するかを検討し最適条件を求めた。とくに性能は,表面積YSg(m2-活性炭/g-原料,Sg:比表面積)対Yの賦活曲線によって評価を加えた。
    その結果,約36%の多糖類を含むリグニン製品を原料とした場合,至適条件は賦活温度450℃,水酸化ナトリウ対原料比1で,YO.2,Sg790m2/gの活惟炭が得られることがわかった。水酸化ナトリウム比2で400℃ 以上に加熱するとSg1000m2/g以上の活性炭を得ることができるが,その場合のYは0.1にとどまった。また,炭酸ナトリウムはほとんど賦活効果を示さなかった。
    さらに,純粋なリグニン製品を原料とすれば,同様の製造条件下,Y0.3でSg2000m2/g前後の活性炭が,また,リグニン廃液であるKP黒液からもY0.1でSg700m2/g程度の活性炭がそれぞれ得られることが明らかとなった。
  • 村上 慎一, 筒井 哲夫, 斎藤 省吾, 大和 武彦, 田代 昌士
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 221-229
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,7-位にt-ブチル基をもつ10b,10c-ジヒドロピレンにさまざまな置換基を導入し,紫外可視吸収スペクトル,熱着色反応速度定数,光消色反応量子収率,および劣化反応について評緬を行なった。この置換基効果を,ジヒドロピレンの分子内部の10b,10c-位の効果・共役環の部分の4,5,9,10-位の効果,および2,7-位のt-ブチル基の効果という三つに分けて検討した。その結果,(1)10b,10c-位に大きな置換基を導入すると,熱着色反応速度が増大し光消色反応量子収率が減少する,(2)4-位にニトロ基やアセチル基のような電子求引基を導入すると,熱着色反応速度はほとんど変化せず光消色反応量子収率が増大する,(3)2,7-位のt-ブチル基は光消色反応量子収率を大きく減少させ,しかも酸素による劣化も引き起こす,ということを明らかにした。
  • 西村 淳, 町野 賢, 三宅 義和, 岡田 厚実, 寺本 正明, 奥 彬
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 230-235
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    重金属イオンの重量分析試薬としてその有用性が知られていたアントラニル酸に長鎖アルキル基を導入することによって水への溶解度を減少させた重金属イオン抽出剤を開発した。6-アルキル-2-アミノ安息香酸は,まったく重金属抽出能をもたなかったが,5-アルキル-2-アミノ安息香酸は目的に合致する化合物であった。すなわちアルキル基をオクチル基とすることによってこのキレート試薬の水中濃度を十分低下させることができた。また多くの重金属イオンとキレートをつくることがわかった。金属イオンの種類とそのキレート形成能との順序は,Irving-Williamsの順序に一致し,一般的なキレート試薬の性質が確認された。Cu2+イオンの抽出について経時変化を調べたところ,約2時間でほぼ100%Cu2+イオンが水層から抽出されること,またpH2付近でもよい抽出能をもつことがわかった。
    12%硝酸を用いた逆抽出操作によってCu2+イオンはほぼ定量的に酸牲水申に放出され,またキレート試薬は回収され再利用可能であった。
    2-アミノ-5-オクチル安息香酸を大過剰用いHg2+イオンの抽出を検討したところ,22時間ふりまぜることによって97%Hg2+イオンは抽出され,有機層と水層の界面にその錯体が浮遊した。pH>3であるかぎり,この錯体から水中へのHg2+イオンの放出は僅少であることがわかった。
  • 卯西 昭信, 高橋 裕宣, 下村 与治
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 236-238
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-Chloro-4-(2-chloroethyl amino)-6-alkoxy-1, 3, 5-triazine reacted with p-toluidine at 120-130°C to give 4-(p-toluidino)-2, 6, 7, 8-tetrahydroimidazo[1, 2-a][1, 3, 5]triazin-2-one [5] in a good yield. But when the reaction was carried out at 80°C, the product was 2-(p-toluidino)4-(2-chloroethyl amino)-6-alkoxy-1, 3, 5-triazine [4]. Reaction of [4] with p-toluidine at 120-130°C did not give [5].
  • 北嶋 英彦, 高橋 俊章, 堂下 豊史, 毛海 敬
    1988 年 1988 巻 2 号 p. 239-242
    発行日: 1988/02/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The palladium-catalyzed alkynylation of 4, 6-disubstituted 2-iodo-1, 3, 5-triazines [1] (substituent a, NMe2; b, Ph; c, OMe) with monosubstituted acetylenes [2] (substituent a, Ph; b, COOMe; c, CMe2OH) afforded the corresponding cross-coupling products [3] in moderate yields except for the case of [2 c]. The cross-product [3 ac] reacted with [1 a] to give bis [4, 6-bis(dimethylamino)-1, 3, 5-triazin-2-yl]acetylene.
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