日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1988 巻, 5 号
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  • 松坂 裕之, 福岡 淳, 小安 幸夫, 宇恵 誠, 織作 正美, 干鯛 真信
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 705-713
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    従来の錯体触媒反応が1種類の金属錯体を用いた反応であるのに対し, 近年, 異種金属錯体の混合物や (混合) 金属クラスターを用いた合成反応が注目を集めている。本研究では, コバルトとルテニウムという組み合わせに注目し, これら2種の金属錯体の混合物がメタノールのホモロゲーション, オレフィンのヒドロホルミル化やヒドロエステル化などのカルボニル化反応に対して, それぞれの金属錯体を単独で用いた場合の単なる和以上の高い活姓を示すことを見いだした。また, これらの混合金属錯体触縣を検討していく過程で一連の混合金属クラスター M[RuCO3(CO)12](M=Na, Et4N, Ph4P, (Ph3P)2N, H) を収率よく合成し, [(Ph3P)2N][RuCo3(CO)12] についてはX線構造解析により四面体骨格構造を有することを明らかにした。さらに HRuCo3(CO)12 のアミンおよびホスフィンによる配位子置換反応が, アミンではルテニウム上で, ホスフィンではコパルト上で, それぞれ金属選択的に進行するという混合金属クラスターの反応としてはきわめて珍しい反応を見いだした。
  • 計良 善也, 中岸 徹行, 宮川 裕之
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 714-718
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Pd(II) および Ni(Il) イオンは活性炭素繊維不織布 (KF-felt) に Freundlich 式にしたがって吸着した。Pd および Ni 金属担持 KF-felt を空気極にセットし, 亜鉛を参照極としてその放電特性を調べた。この亜鉛-空気電池の V-i 曲線に基づき求めた電力-電流曲線の最大値 (Pmax) は Ni では担持量とともに 50mg/g-felt 担持まで直線的に増加した. Pd の場合, Pmax は 18mg/g-felt ですでにち最高値に達し, 112mg/g-felt 担持まで一定であった。0.75V 一定電圧下で電流密度の温度および酸素分圧 (Po2)依存性を測定し, 酸素極での酸素分子活性化過程の速度論的検討を行なった:電流密度は温度に対し Arrhenius 式にしたがって, また, 酸素分圧に対して Langmuir 式にしたがって変化した。これらの関係から, Pd (18mg) および Ni (50mg)/KF-felt に対する見かけ活性化熱 (Ea) は 27 と 24kJ/mol, 酸素分子吸着平衡定数に関する量 (b) は 3.3 と3.1atm-1, また, 見かけ反応速度定数と単分子層吸着量の積 (k0・a) に関する値は 83 と 26(mA/cm2) のように求められた。pt(163mg)/KF-felt については, Ea=20kJ/mol, b=O.34atm-1, k0a=167mA/cm2 が求まっている。Pt では Ni および Pd にくらべ活性化熱は低く, 速度定数に関する量は大きくなっているが,O2 吸着平衡量が非常に小さいことがわかる。以上のことから, Pd は Pt にくらべても少星担持 (2.4mg/cm2) で優れた触媒作用を示すことが明らかとなった。
  • 清水 英美子, 神戸 雄子
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 719-723
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    クロルプロマジン塩酸塩 (CP) を 0.07, 0.139, 0.154 および O.3M(M=1mol・dm-3)の4種の NaCl 濃度の溶液に溶かし, それぞれのミセル溶液について静的および動的光散乱の測定を行なった。静的光散乱法から cmc, ミセルの見かけの分子量 (MM) および第二ビリアル係数 (A2M) を求め, MM から会合数 (n) を算出した。また, 動的光散乱法により拡散係数 (D) を測定し Dcmc から Einstein-Stokes の式を用いて流体力学的半径 (RH) を算出した。
    0.07, 0.139 および O.154MNaC1溶液中では D と CP 濃度との間に直線関係が成立したが, 0.3M NaCl 溶液中では D は濃度とともに曲線を描いて減少し RH が増大している。静的光散乱の結果も同様に O.3M NaCl 溶液中では曲線が得られ MM がミセル濃度の増加とともに大きくなった。これは, 0.3M NaCl 溶液中では cmc を越えても濃度の増加にともなってミセルが成長していると考えた。直線関係が得られた低濃度 NaCl 溶液中では直線の勾配はミセル間相互作用を表わしている。
  • 篠田 清徳, 安田 賢生, 宮谷 大作
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 724-729
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メタノールの存在下, 一酸化炭素を用いる固定床流通系気相カルボニル化反応によるクロロ酢酸メチル (MCA) からのマロン酸ジメチル (DMM) 生成の収率向上を目的として, 触媒の探索実験を行なった。塩化ロジウム (III) を担持する担体として活性炭が優れており, 表面積の大きいヤシ殻炭が DMM への高い転化率を示した。カルボニル化合物を生成し得るいろいろな金属塩化物を活性炭に担持し, 反応を行なった結果, カルボニル化反応活性を示した化合物は塩化コバルト(II), 塩化ロジウム(III), 塩化パラジウム(II), 塩化イリジウムおよび塩化白金(IV) で, とくに塩化ロジウム(III) が卓効を示した。また, 各種のロジウム形態の中でほ電気陰性度の高い原子や原子団がロジウム金属と結合している化合物が大きな触媒能を示した。
    反応温度が高くなったり, 活性炭に担持する金属塩化物の種類によって酢酸メチルの副生がいちじるしく増大した。その生成機構として, MCA とメタノールとの直接反応が想定された。塩化ロジウム(III) の助触媒として金属ヨウ化物を用いると MCA の DMM への転化率に飛躍的に増大した。また, 塩化ロジウム(III) とヨウ化ロジウム(III) を活性炭に担持した触媒は安定した好結果を与えた。これらの結果から, MCA の気相カルボニル化反癒による DMM の合成にもっとも適した活性炭の担持化合物め形態は RhCl2I またはRhClI2 であると考えている。
  • 中川 良三
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 730-734
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    千葉市において, 1985年3月から1987年4月まで, 粒子状水銀の大気濃度および粒度分布の季簾変動を調べた。
    粒子状水銀の大気濃度の季節変動は夏季に低く, 冬季に高くなる傾向があり, 大気中の総水銀濃度と逆の関係にあった。大気中水銀濃度のこの季節変動は季節的温度差に起因する。
    粒子状水銀の粒度分布は季節に関係なく2μmを境にして, 粗大粒子側の4μm付近および微小粒. 子側の0.8μm付近にピークのある二山型分布を示した。分布曲線はつねに微小粒子側が粗大粒子側より卓越したモードであった。粗大粒子側の粒度分布の季節変動は秋~冬季にわずか増加する程度であったが, 粒子側の水銀濃度は秋~冬季にピークが極端に大きくなる顕著な傾向を示した。たが, 大気中の粒子状水銀の生成は, 気温低下による水銀蒸気圧の減少にともなってガス状水銀がエーロゾル化するため, および秋~冬季に微小粒子側に増大する粒子状物質, 塩化物, 硝酸塩などにガス状水銀がアマルガム化あるいは吸着・付着などの作用をするためと推測された。
  • 中村 精次, 茶木 一寿, 室住 正世
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 735-742
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水や液体試薬などを, 沸騰点以下の温度で加温して蒸気を発生させ, 冷却捕集することによって不純物の少い精製物が得られることを既報で報告した。しかし微量ではあるが重金属が認められたので, その除去を目的として石英素材を用いてサブボイリング装置を製作した。その設評にあたってはなるべく蒸発面積を広くすることと, 構造を単純なものとすることを基本条件とした。重金属の定量は同位体希釈表面電離質量分析法によって行ない, 原料と精製物の銀, カドミウム,銅, ニッケル, 鉛, タリウム, 亜鉛を定量して精製効果を検討した。この方法の検出賑界は 10-11g・kg-1である。銀, カドミウム, 銅, 鉛, タリウムは検出限界以下の純度にすることができたが, ニッケルと亜鉛はクリーン実験室の建材に用いた不銹鋼からと考えられる汚染が認められた。サブボイリング蒸留法によってロ過法そのほかの各種精製法に比較して, 重金属濃度のもっとも低い超純水を得ることができたと考えられるが, 欠点は精製速度が低いことで今後その改良が必要である。超純水や超高純度試薬の需要に対応するためには, サブボイリング装置の設計や材輩の改善・蒸留環境ならびに精製物貯蔵の検討が重要である。
  • 石川 精一, 日下 浩隆, 高木 誠, 上野 景平
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 743-751
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石炭の利用増大にともない, 環境中への漏出が予想される有機化合物を同定し, その生物や生態系への影響を評価する目的で, 比較的単純な構造のフェノール類〔1a〕~〔1u〕を出発原料として, 標品となる種々の縮合フランの合成を行なった。
    アルカリ性下でヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムを用いてフェノール類〔1c〕,〔1d〕,〔lf〕,〔11〕,〔1m〕,〔lt〕を酸化カップリングし, 得られた2,2'-ジヒドロキシビアリール〔2d〕,〔2d,m〕,〔2d,t〕〔2m,t〕,〔2t〕に, リン酸や2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン (以下 DDQ と略記する), あるいは臭素を作用させて脱水閉環を行ない, 4.2~57%の収率でジベンゾフラン型縮合フラン〔4'd〕,〔4d,m〕,〔4'd,t〕,〔4m,t〕,〔4t〕,〔4't〕を得た。
    またフェノール類〔1a〕,〔1b〕,〔le〕~ 〔1u〕と2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン (以下 DCNQ と略記する)をピリジン中で加熱縮合し, 18~98%の収率でナフトキノン構造を有する縮合フラン〔51〕,〔5m〕,〔5q〕~〔5t〕を得た。
  • 石川 精一, 高木 誠
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 752-762
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェノール類〔1a〕~〔1j〕とクロラニルをピリジン中で加熱縮合し, 2.6~26%の収率でベンゾキノン購造を有する縮合フラン〔3d'〕,〔3e'〕,〔3h'〕,〔3i'〕,〔3j'〕を得た。ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムを用いて1,3-ジカルボニル化合物(β-ヒドロキシ-α,β-不飽和カルボニル化合物)〔1h〕,〔lk〕,〔Z1〕, と二価のフェノール類〔1c〕,〔1f〕の酸化カップリングを行ない, 得られた8,9-dihydroxy-6H-benzofuro[3,2-c][1]benzopyran-6-one〔2c,h〕およびナフトキノン型四環性縮合フラン〔2c,k〕と 2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン (DCNQ) を縮合させ, それぞれ 17,25% の収率でクマリン, ナフトキノンおよび 1,4-ジオキシン環をもつ七環性縮合フラン〔3c,h〕および2個のナフトキノンおよび 1,4-ジオキシン環をもつ七環性縮合フラン〔3c,k〕を得た。(1-ホルミル-2-ナフチルオキシ)酢酸〔2'm〕および(2-ベンゾイルフェノキシ)酢酸〔2'n〕の Rossing 反応でナフト [2,1-b] フラン〔3m〕,3-フェニルベンゾフラン〔3n〕をそれぞれ 14,30% の収率で得た。また合成した縮合フラン〔3e,j〕~〔3n〕のニトロ化を行ない, 1~4個ニトロ基が導入された化合物〔4e,j〕~ 〔4n〕を得た。
  • 高橋 信行, 辰己 憲司
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 763-770
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    紫外線照射下でのオゾンによるエチレングリコールの分解を, エチレングリコール濃度 1.6~8.0×10-3mol・dm-3, オゾン送入濃度5.3~15.6mg・dm-3, 紫外線照射強度 13.3~18.6mW・cm-2 のもとで行なった。
    見かけの分解反応速度式はエチングリコール濃度に関して0.7次, オゾン送入濃度に関して0,5次, 紫外線照射強度に関して 2.6次で表わされた。反搭生成物としては6種の物質が検出されるとともに, 全有機炭素 (TOC) の減少も同時に認められた。エチレングリコールの分解および反応生成物の変化から分解経路を推定した。TOC の減少過程においてはシュウ酸およびギ酸を経る経路の2通りが考えられるが, 前者の占める割合の方が高いことが推定された。また, TOC の減少はオゾン送入濃度, 紫外線照射強度のほかにエチレングリコール濃度によっても影響を受けることがわかった。
  • 作道 栄一, 吉村 敏章, 本山 厚司, 北田 智子
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 771-776
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルキルフェニルスルホニウム=ビス(メトキシカルボニル)メチリド(スルホニウムイリド)の熱分解の反応性を, スルホニウムイリド中のS-アルキル基がエチル〔1〕, プロピル〔2〕, ブチル〔3〕および2-フェニルエチル〔4〕の4種類について検討した。反応速度はすべて良好な一次依存性を示した(r=O.999)。
    〔1〕の速度定数は4.26×1O-4s-1(150℃), 活性化パラメーターは Ea=134kJ・mol-1 (r=O.999), -2.4JK-1・mol-1 であった。またβ-位水素の同位体効果 (kH/kD)=は 3.3であった。S-フェニル基上の置換基効果は良好な Hammett 関係が認められ, ρ=O.4(r=O.997)であった。〔1〕,〔2〕および〔3〕の速度比は反応に関与するβ-水素の数で補正すると, 〔1〕:〔2〕:〔3〕=1: 1.3: 1.6 となった。一方,〔4〕の反応速度は大きく〔1〕の 5.4 倍であった。また, 類縁のエチルフェニルスルホキシド〔5〕および S-エチル-S-フェニル-N-トシルスルフィミド〔6〕と反応性を比較すると〔1〕: 〔5〕=〔6〕=1: 0.7: 42.1であった。したがって, スルホニウムイリドの反応性はスルホキシドとほぼ似ており, スルフィミドよりかなり小さい結果を示した。
  • 岡 宏, 船木 稔
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 777-782
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二酸化窒素を酸化剤とする乾式酸化法により, 泥炭からフミン酸の製造を行なった。
    天然フミン酸を 38.5% 含む泥炭を, 1% (容量) 二酸化窒素を用いて, 室温で空間速度 1000h-1 で6時間反応した結果, 収率 107% でフミン酸含有量 76~80% の酸化泥炭が得られ, それ以上はフミン酸は増加しなかった。
    フミン酸生成の反応速度式は, Jander 式によく一致し, 酸化剤ガスの固体内内部拡散律速の反応であることがわかった。
    34% 二酸化窒素を用いた場合, 反応時間は 1/6 に短縮され, 上記同様のフミン酸含有酸化泥炭が得られた。本酸化法は, 従来の泥炭についての硝酸酸化法や空気酸化法に比較して, 高収率であり, フミン酸含有量も高く, 副生するシュウ酸などの水湾堆有機物が少なく, さらに廃液処理の問題もなく優れたフミン酸製造法であることがわかった。酸化剤の回収率および酸化泥炭の性状についても検討した。
  • 増田 秀樹, 松本 治, 小谷 明, 山内 脩
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 783-788
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    芳香族アミノ酸と芳香族アミンを含む三元系金属錯体は分子内で芳香族同士の非共有結合性相互作用を示すことがすでに明らかにされている。その相互作用の様式をより詳細に知るために 1,10-フェナントロリン(phen)と L-トリプトファン(trp) を有する銅(II)錯体 [Cu(phen)(trp)]ClO4 の結晶構造をX線回折法により解析した。結晶データは斜方晶系, 空間群 P212121, a=28.316(28), b=11.063(5), c=8.139(12)Å, U=2554(4)Å3, Z=4 である。錯体の構造は Cu(II) に対して phen の二つの窒素原子と trp の酸素および窒素原子が平面方向から, 軸方向から隣接する錯体の trp のカルボキシル基が配位した五配位西角錐構造をとっており, そして反対側の軸方向からは trp のインドール環が phen と 3.51Å の間隔で分子内スタッキングをしている。そのスタッキング相互作用の結合様式の理解のために, [H+(phen)(trp)] の CNDO/2 MO 計算を行なった。求めた電荷密度の値は, この錯体が上下の芳香環の間で正と負の電荷をもった原子がたがいに重なり合った静電的相互作用が支配的であることを示唆した。
  • 猪熊 精一, 野田 玲子, 早瀬 徹, 桑村 常彦
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 789-792
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の親油性アミン単独あるいはアミンとクラウンエーテル併用によるアミノ酸誘導体の受動輸送を, N-ベンゾイルアミノ酸のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩 (供給相,相I) とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン (受相,相II)を含む液膜系において, 表1および2の条件下で行なった。
    新しい本輸送系で検討したすべてのアミンは, 4種類のN-ベンゾイルアミノ酸 (BZGly, BzSar, BzAla および BzPhe) を既知の系におけるクラウン化合物より効率よく輸送することが明らかとなった (表1,2および3)。
    同数の炭素原子を有するアミン担体間の輸送効率の比較では,第一級<<第二級<第三級の順であった。BzAla の輸送において, 第一級アミンではアルキル鎖長の増加にともなって輸送効率が増大したが, 第三級アミンの場合, 最適鎖長が確認された。協同作用に基づく輸送効率の明確な増大が, 第一級アミンとクラウンエーテルの組合せを担体とした場合にのみ認められた (表1と2)。基質の輸送速度序列は, 担体の種類によらず, BzGly<BzSar<BzAla<<BzPhe であったが, 第一級アミンは最高の基質選択性を示した (表2)。以上の結果を主に, 担体と基質の親抽性により説明した。
  • 糸山 國義
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 793-801
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4',4(4,4'-biphenylylenedioxy)diphthalonitrile (BPPN) または BPPN とテトラシアノベンゼン (TCB) の混合物をアミン共反応体の存在下で熱重合して, 網目状ビス(フタロニトリル)ポリマーを調製した。窒素雰囲気中で 50℃ の間隔でステップ昇温しながら熱処理してポリマーの熱分解を行なった。熱分解は約 450℃ から開始して, 温度の上昇とともに加速した。600~650℃ 間での熱分解では, 比抵抗の急減と同時に, 密度および弾性率のいちじるしい増加が起きた。X線回折, ラマン, FT-IR および 3CCP-MASNMR の測定から, 500~700℃ での熱分解物では, 窒素元素をかなり含む二次元の部分的に炭化した構造が存在することがわかった。
    800~900℃ の温度で熱分解すると, 炭化は一層進行し, 600~650℃ で生成した平面状の環化構造体は非晶質炭素からなる三次元網目体に部分的に変化した。成形したシートの熱分解物では, 密度1.65g/cm3, 弾牲率 27GPa, 比抵抗 0.02Ω・cmのものが得られた。
  • 藤本 明男, 遠藤 友美雄, 竹林 義之
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 802-806
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ナイロンペレットの水分率が繊維製造のプロセス性と得られた繊維の物性におよぼす影響について研究した。
    乾燥時間を変えて調製した水分率の異なるナイロン6ペレットを押出機で溶融し, 通常の方法でタイヤヤーンおよび衣料用ヤーンを紡糸・延伸し, 延伸時の糸切れ頻度, 延伸巻取りボビンで糸切れのまったくないフルボビン率・得られた延伸糸の引張強度および紡糸ノズルから押出された未延伸糸のポリマー相対粘度を測定した。実験の結果, 延伸時の糸切れ頻度を最小にし, 製品糸の引張強度を最大にするようなペレットの最適水分率が存在し, それは押出機と紡糸ヘッドの再溶融温度における溶融ポリマーに対する水溶解度より少なく, 再溶融によってポリマー相対粘度が変化しないか, あるいはわずか増大するような水分率であることを見いだした。再溶融による相対粘度変化のないペレット水分率はポリマー重合度の大きいほど, また再溶融温度の高いほど低い。
    再溶融時の溶融ポリマーへの水の溶解度および溶融ポリマーの重縮合平衡移動について議論し, ペレット水分率の低い場合は溶融ポリマーの重合度分布が高重合度側に広がり, 部分的な高重合度ポリマーの混在が紡糸・延伸時の円滑なポリマーフローを妨げ, また水分率の高い場合は逆の重合度分布の広がりによる円滑なポリマーフローの妨げのほかに, 過剰水分の蒸発にともなう弱点の発生があり, 延伸時の糸切れが増大し,糸の強度も低下すると推論した。
  • 堂野 礼三, 橋本 彰, 白子 忠男
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 807-813
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カルボン酸ナトリウム (ギ酸, 酢酸安息香酸, サリチル酸, p-ヒドロキシ安息香酸ナトリウム) と NaCl との混合溶液の電気透析および各塩の単独溶液について, Donnan 吸着量, 含水率, 比電気伝導度, 水分解による pH 変化, 電流-電圧曲線を測定し, 陰イオン交換膜に対するカルボン酸イオンの膜透過挙動ならびに膜汚染について検討した。
    サリチル酸イオン以外のカルボン酸イオンは Cl- よりもかなり透過性が小さく, 混合溶液における濃縮電流効率も良好 (83%<) であった。しかし, サリチル酸イオンの透過性は Cl- と差がなく, また芳香族カルボン酸塩と NaCl との混合系においては濃縮電流効率が異常に低いことを認めた。一方,芳香族カルボン酸塩はギ酸塩や酢酸塩にくらぺてDonna吸着量が非常に大きいにもかかわらず含水率, 比電気伝導度, が小さくさらに, これらのカルボン酸塩では高電流密度においても水分解を起こさないことが明らかとなった。このような結果は芳香族カルボン酸イオンが膜中の固定電荷と強いイオン対を形成して移動度が極度に抑劇され, 陰イオン交換膜が見かけ上非荷電膜として機能していることを示唆している。
  • 時田 澄男, 新井 剛, 戸谷 倫彦, 西 久夫
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 814-818
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェノールの3種類のメチル誘導体と 1,5-ジクロロアントラキノンを原料として, 2段階の反応によりベンゾ[1,2,3-kl:4,5,6-k'l']ジキサンテン〔3a〕のメチル誘導体〔3b〕~〔3d〕を合成した。〔3b〕~〔3d〕は赤色であり, 可視光により酸素を付加して無色のエンドペルオキシド〔4b〕~〔4d〕に変化した。〔4b〕~〔4d〕は常温暗所では安定であったが, 紫外光または熱により酸素を脱離してふたたび〔3b〕~〔3d〕を与えたe〔3a〕~〔3d〕のうち, 立体障害の増大している〔3d〕の光酸化の速度は〔3a〕~〔3c〕の約1.5倍であった。また相当するエンドペルオキシド〔4d〕の熱安定性は〔4a〕~〔4c〕よりもすぐれていた。
  • 滝村 修, 山岡 到保
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 819-822
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    緑藻類 Decnaliella sp. による溶液中からのヒ素の回収を目的として, その増殖期にヒ酸塩を添加してヒ素蓄積量とその化学種について調べた。Dunaliella sp. の生育阻害がヒ素添加後 2~3 日間認められるが, ふたたび細飽増殖が認められた。Dacnagiella sp. のヒ素蓄積量はヒ素添加後 6~20 時間に最大を示し, 対数増殖期の細胞がもっとも高かった。その後, 細胞中ヒ素含有量は減少した。ヒ素蓄積量はヒ素濃度 1.0~100mg・l-1範囲内で濃度の増加にともない増加した。細胞中に蓄積されたヒ素は, 大部分無機態ヒ素 (五価) の形で, 一部, 無機態ヒ素 (三価) および有機態ヒ素の形で存在した。
  • 西本 清一, 八田 博司, 西田 慎, 傳 宏達, 米井 脩治, 鍵谷 勤
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 823-827
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    0~1wt% の NaCl を含む大腸菌懸濁水の定電流電解を行ない, 大腸菌生存率の経時変化を調べた。NaCl が共存しない場合, あるいは通電しない場合には, 大腸菌生存率はほとんど変化せず, NaCl 共存系に通電することにより急速に減少した。大腸菌生存率を初期値の 1/100 に減少させるためのエネルギーは電流密度に無関係に一定であり, NaCl 濃度の逆数に比例して増大することがわかった。NaCl 濃度が同じ場合のγ線照射系と比較すると, 大腸菌の 99% 殺菌所要エネルギーは約 1/100 であることがわかった。また, N2 系にくらべ, 空気系や O2 系など, 溶存酸素が共存すると大腸菌死滅効果が増大した。1mA, 4分間の予通電した NaCl 溶液に大腸菌懸濁液を添加して経時変化を調べたが, 生存率はほとんど減少しなかった。
  • 飯島 孝雄, 岡島 業明, 垣内 弘
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 828-830
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The reaction of propylene oxide (PO) with dichloroacetic acid (DCA) in the presence of lithium dichloroacetate was studied kinetically in ethereal solvents, dioxane and diglyme. The ring-opening of PO obeyecl the following kinetics,
    ν=k3(a-x)2(b-x)+k2(a-x)(b-x)
    k2=k′3C0
    where a-x, b-x, and C0 are the concentration of DCA, PO, and lithium dichloroacetate, respectively. The reaction was accelerated to a considerable extent by the addition of lithium dichloroacetate. The linear relationship between k2 and C0 was not observed, and the higher the common salt concentration, the less the extent of acceleration of the reaction, which is presumably due to the association of the lithium salt. Then the rate constant k′3 was estimated from the slope of the above curve at C0=0. The acceleration of the reaction could be accounted for by the activation entropy rather than the activation enthalpy.
  • 櫻井 忠光, 足立 信広, 井上 廣保
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 831-834
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    On irradiation, the title compound (HPT) in various organic solvents saturated with N2 yielded the dimerized products, 2, 2′-dithiobis[pyridine] and 2, 2′-dithiobis[pyridine] 1, 1′dioxide. The results of triplet-quenching experiments suggest that the reaction proceeds preferentially through the excited singlet state. The mechanism of this dimerization reaction was discussed based on the results of the solvent-viscosity and HPT-concentration effects on the quantum yields for the disappearance of HPT.
  • 寺井 忠正
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 835-837
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Treatment of grayanotoxin (G)III With oxalic acid in methanol gave G-II iso-G-==II and 1, 5-seco derivative. The structure of 1, 5-seco derivative was identified by comparison of its IR and NMR spectra with those of 3, 6, 14, 16-tetrahydroxy-5, 10-seco-ent-kaurl (10)-en-5-one. It was clarified that the 1, 5-seco compound was an intermediate in the transformation of G-III to G-II and iso-G-II.
  • 菊池 康男
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 838-840
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A macromolecular complex (MC) consisting of [2-(diethylamino)ethyl]dextran, (carboxymethyl)dextran, and poly(vinyl sulfate)was prepared in a solution of 1.10 mol⋅dm-3 and was cast into the membrane from the casting solution. The transport behavioF of Na+ through the MC membrane was investigated in the systems of [PVSNa+PVSH (aq.)/NaOH (aq.)] and [NaCl+HCl (aq.)/NaOH (MeOH)]. In the former case the transport ratio was much higher than that in the [NaCl+HCl (aq.)/NaOH (aq.)] system, because the membrane potential difference i. e., the driving force of the transport, was large and maintained for a long time. In the latter case, the transport ratio was also higher, since Na+ was transported by the potential energy.
  • 菊池 康男
    1988 年 1988 巻 5 号 p. 841-843
    発行日: 1988/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The iron(III) hydroxide sulfate solution of pH 1.5 is considered to be consisted of various complex cations on the basis of experimental results obtained by numerous investigators. The scanning electron micrographes revealed that the macromolecular complexes consists of iron(III) hydroxide sulfate and sodium metaphosphate or poly(potassium vinyl sulfate)comprised of two different phases or one phase.
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