120℃ の溶融 KH
2F
3 浴にホルムアミド (HCONH
2) を溶解させ, 無定形炭素電極を用いて電気分解し,三フッ化窒素 (NF
3) を合成した。陰極には鋼鉄製電解槽本体を, 照合電極には白金棒を用いた。陽極生成物は, ガスクロマトグラフィーおよび赤外吸収スペクトル法で分析した。
KH
2F
3-HCONH
2 系電解浴中でのサイクリックボルタンメトリーで求めた i-E 曲線は, 電位につれて四領域に分割された。領域I (約 2V vs. Pt 以下) は電解浴中の水の電解およびホルムアミドの直接放電領域, 領域II (約2~3.5V vs. Pt) は (CxF)n[x>2] 被膜の生成およびホルムアミドの直接放電領域, 領域III (約3.5~6.5V vs. Pt) はホルムアミドの電解フッ素化反応領域および領域IV (約6.5V vs. Pt 以上) は陽極効果発生領域であった。また, 電位を 9V vs. Pt から卑方向へ走査したさいに得られる i-E 曲線において, 約6.5V vs. Pt でのピーク電流密度は溶融 KH
2F
3 のみの場合よりも大きく, しかも, それは走査回数につれて増大した。電解フッ素化反応領域で電気分解すると, 陽極生成ガスの成分は, N
2(+O
2), CF
4, NF
3, CO
2(+COF
2), N
2Oなどであった。4.0mo% HCONH
2 および電流密度 5.3mA・cm
-2 の電解条件で電気分解すると, CO
2 の生成によって電解浴中の水分が除表されるため, 陽極生成ガス中の NF
3 の割合は時間の経過とともに増大し, 最大値 50.9% にも達した。しかしながら, 5.3~11.0mA・cm
-2 の電流密度で定電流電解しても, しばしば陽極効果が発生した。そのたびに電解槽に高電圧(40V 以上) をパルス的に印加すると, 炭素電極衷面上の (CF)n 被膜を破壊するため陽極効果が解除され, しかも, NF
3 の収率も低下しなかった。また, 電解浴に 1.Owt% LiFを添加しても陽極効果発生を抑捌する効果はあったが, そのさい, NF
3の収率が低下した。
以上のことから, 炭素電極表面は, 表面上に生成した (CxF)n および (CF)n 被膜がホルムアミドにより還元されて部分的に回復し, その結果一部が裸の炭素になった電極表面上ではホルムアミドの電解フッ素化反応に加えてホルムアミドの直接放電も起こることがわかった。また, より詳細なホルムアミドの電解フッ素化反応機構も考察した。
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