日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1988 巻, 6 号
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  • 土田 英俊
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 845-852
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高分子に結合したポルフィリン錯体は, 広い条件範囲で酸素を可逆的に配位する。固相高分子中に分散して密度高く固定されたコバルトポルフリィリンでは, 濃度勾配にしたがって酸素が配位結合をくり返し移行する結果, いわゆる促進輸送の現象が観測される。鉄ポルフィリンは水相系において直ちに不可逆酸化を受けるが, 高分子に結合し特定環境に取り込ませた状態では安定で, 容易に可逆的な酸素錯体を形成する。リン脂質と構造を類似させたポルフィリンの新しい誘導体 (略称:リピドヘム) は, リン脂質と相溶牲の高い分子集合体を形成,生理条件下 (生理塩水溶液, pH7.4, 温度37~40℃, 大気下) で酸素運搬体として機能する。ポルフィリン錯体への酸素配位の観測は, 高分子が形成する錯体部周辺の分子環境解明の手がかりにもなる。
  • 今泉 洋, 内田 和仁, 岡田 實
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 853-857
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    70℃ での水紫同位体交換反応における芳香族ベンズアルデヒド, ニトロベンゼンおよびベンゼンの三者の反応性を実験により調べた。その結果, 交換可能なH原子はホルミル基だけに存在することがわかった。そこで, 50~90℃ の範囲でベンズアルデヒドおよび一置換ベンズアルデヒドを使い CHO 基の水素同位体交換反応を観測し, 数種の温度での反応の速度定数を得た。得られた速度定数を用いて種々の解析を行ないつぎのことがわかった。(1) CHO 基のH原子は, アルキル基のH原子と違い同位体交換にあずかる。(2) o-,m-, および p-トルアルデヒドとベンズアルデヒドとの4物質の反応性は, (ベンズアルデヒド)≒(o-)>(m-)>(p-) の順になる。(3) 一置換ベンズアルデヒドの反応性は Hammet 則にしたがう可能性が大きい。(4) o-,m-, および p-トルアルデヒドとベンズアルデヒドとの Arrhenius プロットから得られた活性化エネルギーは, それぞれ 43, 48, 56, 45kJ・mol-1 である。
  • 遠藤 榮治, 音馬 敝, 森本 剛, 小田 吉男
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 858-863
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Raney ニッケル合金粉末を鉄基板上に分散めっきして作成した Raney ニッケル分散めっき電極の構造と特性を, 走査型電子顕微鏡, 窒素吸着法による比表面積の測定, 光電子分光法, 交流インピーダンス法および直流分極法により検討した。
    走査型電子顕微鏡による表面観察により, Raney ニッケル粒子は微視的にはデンドライト状になって電極表面に共析していることがわかった。電極の比表面積の測定から, 電極のラフネスファクターは約 8000 という値になることがわかった。光電子分光法による表面組成分析の結果, 電極表面はほとんど Nio でおおわれていることが判明し, この Nio は電極が空気に露出されたさいに生成したものと推定された。交流インピーダンス法により電極インピーダンスの周波数応答を調べた結果, 電気二重層のインピーダンスの位相角は約 45°の値を示したことから, 電極は交流に対して“porouselectrode”として挙動することがわかった。本電極は Raney ニッケルと分散めっきのマトリックスとしてのニッケルから構成されており, それらは水素発生に対して異なった反応機構を示す。そこで直流分極法により 90℃ 35wt% NaOH 溶液中で水素電極反応の分極曲線を調べた結果, 高電流密度の Tafel 線の勾配は約 45mV (2nF/3RT) という値を示したことから, 水素発生反応はほとんど Raney ニッケル上で起こるものと推定された。
  • 近藤 科吉, 熊谷 俊弥, 水田 進
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 864-867
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    電力貯蔵の観点から,次式に示す鉄イオンの酸化還元反応を電気化学的に研究した。
    イオン交換膜および黒鉛織布のガス拡散電極を有するセルを用いた実験に基づいて, 液組成 (FeCl2/FeCl3/HCl=0.6/0.6/5mol/kgH2O) および (1.2/1.2/2.5) の場合について電力貯蔵効率を推算したところ, 電流密度 25~100mA/cm2 においてそれぞれ 93~68% および 90~57% という値を得た。廃熱を利用して溶液を濃縮し, 高濃度下で充電し, 低濃度下で放電すればさらに高効率 (100%以上) の電力貯蔵が可能でありこれを実験的に確認した。
  • 水田 進, 熊谷 俊弥, 近藤 和吉
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 868-872
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化鉄(III)(FeCl3) 水溶液と水素の電気化学的反応による発電工程と塩化鉄(II)(FeCl2) 水溶液の酸素による酸化反応を用いた塩化鉄(III) の再生工程からなるハイブリッド型燃料電池システムを研究した。
    イオン交換膜および黒鉛織布のガス拡散電極を有するセルを構成し, 電池の出力 (電圧-電流密度特性) を調べた結果, アノード極の白金触媒量 2mgPt/cm2 のとき, 70℃ において 0.6V, 100mA/cm2 の出力を得た。
    再生反応の転化率は, 反応温度 90℃, 気泡径 0.3mm, 酸素圧 1,8atm, 液組成 1.5molFeCl2/kgH2O, 3.5molHCl/kgH2Oにおいて 90% に達した。
    以上の実験結果に基づき, 本ハイブリッド型燃料電池の特徴をリン酸型燃料電池と比較しつつ議論した。
  • 田坂 明政, 阪口 博昭, 伊藤 英明, 法旨 巨仁
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 873-880
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    120℃ の溶融 KH2F3 浴にホルムアミド (HCONH2) を溶解させ, 無定形炭素電極を用いて電気分解し,三フッ化窒素 (NF3) を合成した。陰極には鋼鉄製電解槽本体を, 照合電極には白金棒を用いた。陽極生成物は, ガスクロマトグラフィーおよび赤外吸収スペクトル法で分析した。
    KH2F3-HCONH2 系電解浴中でのサイクリックボルタンメトリーで求めた i-E 曲線は, 電位につれて四領域に分割された。領域I (約 2V vs. Pt 以下) は電解浴中の水の電解およびホルムアミドの直接放電領域, 領域II (約2~3.5V vs. Pt) は (CxF)n[x>2] 被膜の生成およびホルムアミドの直接放電領域, 領域III (約3.5~6.5V vs. Pt) はホルムアミドの電解フッ素化反応領域および領域IV (約6.5V vs. Pt 以上) は陽極効果発生領域であった。また, 電位を 9V vs. Pt から卑方向へ走査したさいに得られる i-E 曲線において, 約6.5V vs. Pt でのピーク電流密度は溶融 KH2F3 のみの場合よりも大きく, しかも, それは走査回数につれて増大した。電解フッ素化反応領域で電気分解すると, 陽極生成ガスの成分は, N2(+O2), CF4, NF3, CO2(+COF2), N2Oなどであった。4.0mo% HCONH2 および電流密度 5.3mA・cm-2 の電解条件で電気分解すると, CO2 の生成によって電解浴中の水分が除表されるため, 陽極生成ガス中の NF3 の割合は時間の経過とともに増大し, 最大値 50.9% にも達した。しかしながら, 5.3~11.0mA・cm-2 の電流密度で定電流電解しても, しばしば陽極効果が発生した。そのたびに電解槽に高電圧(40V 以上) をパルス的に印加すると, 炭素電極衷面上の (CF)n 被膜を破壊するため陽極効果が解除され, しかも, NF3 の収率も低下しなかった。また, 電解浴に 1.Owt% LiFを添加しても陽極効果発生を抑捌する効果はあったが, そのさい, NF3の収率が低下した。
    以上のことから, 炭素電極表面は, 表面上に生成した (CxF)n および (CF)n 被膜がホルムアミドにより還元されて部分的に回復し, その結果一部が裸の炭素になった電極表面上ではホルムアミドの電解フッ素化反応に加えてホルムアミドの直接放電も起こることがわかった。また, より詳細なホルムアミドの電解フッ素化反応機構も考察した。
  • 清水 正隆, 鹿島 啓二, 千葉 芳久, 武岡 壮
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 881-885
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Ni-Cu-Al 合金から調製したメタノール分解反応用 Raney ニッケル合金触媒の活性と選択性に対する K2CO3, CaCO3 および BaCO3 の添加効果について検討した。いずれの塩の添加によってもジメチルエーテルの生成が抑制され, メタノール分解反応に対する選択性の向上がみられた。メタノール分解活性は上記の炭酸塩の添加量の増加にしたがって増大し, 極大値を経て低下した。CaCO3 および BaCO3 の添加による分解活性の向上は主として Ni-Cu 合金の微細化による活性点の増大に起因すると考察された。これに対して, K2CO3 の添加による活性点の増大は認められなかった。
    K2CO3 添加による分解活性の増大はカリウムによる分解活性点の修飾によると推定された。反応後の触媒の炭素含有量は, CaCO3 および BaCO3 の添加量の低い場合を除いて, 炭酸塩の添加量とともに増大した。触媒の活性劣化は炭素析出量が多い触媒においてみられた。
  • 曽我 直弘, 佐川 泰裕, 吉本 護, 平尾 一之
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 886-891
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルカリ土類メタリン酸塩ガラスの弾牲率, Vickers 硬度, 破壊靱性値, クラック発生率などの機械的性質を系統的に組成の関数として調べた。MgO・P2O5ガラスは, それ以外のアルカリ土類メタリン酸塩 RO・P2O5 (R=Ca, Sr, Ba) ガラスと比較した場合, Mg2+ のイオン半径が小さいにもかかわらずヤング率および Vickers 硬度が小さく, 破壊靱性値が大きく, またクラックが発生しにくい, という異常性を示した。この異常性は, Ca2+, Sr2+, Ba2+ の酸素配位数が6であるのに対し Mg2+ の酸素配位数が4であるガラス構造を考えることで説明できた。また, このガラス構造の妥当性を 3-バンド理論から求めた原子間結合の変化から明らかにした。ヤング率および Vickers 硬度へのアルカリ土類イオンの混合効果は, Mg2+ 以外のアルカリ土類イオンを2種類混合した場合にはわずかしか現われなかったが, Mg2+ とそれ以外のアルカリ土類イオンを混合した場合には, ヤング率および Vickers 硬度がどもに大きく増加し組成に対して極大をもつ, 上に凸の曲線となった。この曲線の変化も Mg2+ の酸素配位数の変化から説明することができた。
  • 松井 博, 橋詰 源蔵, 足立 吟也, 塩川 二朗
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 892-898
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    亜硫酸カルシウム半水和物を 125℃ で空気により酸化するときにクエン酸ナトリウムあるいは硫酸ニッケルを添加し, 亜硫酸カルシウム半水和物の酸化過程と, 生成する柱状α型半水セッコウの形状および結晶成長過程について検討した。
    亜硫酸カルシウム半水和物に硫酸溶液を加えて懸濁液の pH を3にすると, 球状亜硫酸カルシウム半水科物結晶表面と表面以外に板状二水セッコウが多く生成した。常温から 125℃ までは球状の亜硫酸カルシウム半水和物結晶と板状二水セッコウが混在したままであった。125℃ で空気により酸化を始めても板状二水セッコウはすぐには消失せずに, α型半水セッコウも生成しない誘導期間が存在した。その期間を過ぎると, 急速に柱状α型半水セッコウが生成した。クエン酸ナトリウムの添加はα型半水セッコウの生成速度を抑制するものの, 生成物の形状を柱状にする効果をもつ。一方, 硫酸ニッケルの添加はα型半水セッコウの生成速度を促進させ, α型半水セッコウ結晶の形状を針状にする効果をもつことがわかった。
  • 荻野 健, 綱島 範子, 鈴木 俊碓, 坂口 雅一, 澤田 清
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 899-905
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高過飽和水溶液からの炭酸カルシウムの生成は無定形炭酸カルシウム (ACC) 生成, 準安定多形への変換を経て, 最終的には安定なカルサイトへ 100% 変換する。結晶成長または生成のそれぞれに対する結晶生成阻害剤の影響は, これまで調べられているが, 上述の過程に対す影響はまだ調べられていない。本報告では, この全過程に対する, 代表的な結晶生成阻害剤であるポリアミン-N-ポリホスホン酸, エチレンジアミン-N,N,N',N'-テトラキス(メチルホスホン酸)(EDTMP) の影響を調べた。
    CaCO3 の生成に対し, EDTMP 濃度が10-5.0mol・dm-3 までは, ACC および結晶性 CaCO3 の生成機構には, ほとんど影響を与えないが, 多形変換を強力に阻害し, 10-5.0mol・dm-3 では, 変換は完全に停止する。これより高い EDTMP 濃度では, ACC からの結晶性 CaCO3 の生成速度を低下させ, 10-4.0=mol・dm-3 ではその生成を止める。EDTMP 濃度10-5.0mol・dm-3までは, 濃度増加にともない, ACC から生成するカルサイトの比率は増加する。10-4.7~10-4.5mol・dm-3では, その比率は大幅に減少し, 変換反応に特異的現象が見られた。高温では準安定定多形がバテライトからアラゴナイトに変化するが, 25.0℃ と同様の阻害機構を示す。これらの阻害は EDTMP の, 生成する多形表面への吸着によって説明できる。
  • 土井 章, 藤原 峰一, 福原 実
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 906-910
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    備前焼の代表的な模様である火だすき (火襷) の表面には石英と発色に関係する酸化鉄以外にコランダムの形成が認められた。コランダムは備前焼粘土とわら灰中のおもなアルカリ成分であるカリウムが焼成中に反応して形成すると考えられた。したがって本研究では備前焼粘土とカジウムの反応性とコランダムの形成条件について検討した。備前焼粘土と塩化カリウムを種々の割合で混合した試料を作成し, 1300℃ の一定温度で焼成を行ない, この焼成物についてX線回折により考察した。3時間焼成を行なった場合, カリウムの含有量卒の増加とともに焼成物中のムライトの形成量が急速に減少し, 塩化カリウムの含有量が 8% になると消失した。一方コランダムの形成量は含有量が 8~10% のとき最大となり, 火だすきの表面の量と同程度になった。さらにカリウムの含有量が増加するとコランダムとカリウムおよび石英が反応してリュウサイトが生成した。焼成時間を長くするとコランダムが石英と反応してムライトが生成するため, コランダムが形成する範囲と形成量は減少した。
  • 前小屋 千秋, 岡島 義昭
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 911-915
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    連続流れ方式を用いた液相酸化法による高純度水中の低濃度有機炭素の定量法について検討した。この方法は, 試料水にペルオキソ二硫酸カリウムを添加し, ヘリウムを通気して溶存炭酸を除去し, この脱気水を 200℃, 30kgf/cm2 にたもたれているステンレス鋼管の中を通して有機物を二酸化炭素に変換したのち, 高温のままでヘリウムと接触させて生成した二酸化炭素を抽出してガスクロマトグラフィー (光イオン化検出器) で定量するものである。この方法によ滋ば, 1ppb の有機炭素を変動係数 20%, 分析時間約 20分/件で定量できることを明らかにした。
  • 岡本 篤彦, 藤田 憲次, 川村 益彦
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 916-922
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    省燃費用エンジン油には, 摩擦係数を低減するために Mo 系の化合物 (Mo-DTP) が添加されている。しかし, Mo 系化合物を含む市販エンジン油の摩擦低減効果は車両走行によって消失する。そこで, この Mo 化合物およびその分解生成物中における Mo のまわりの局所構造を, Mo-K 吸収スペクトル法によって解析した。吸収スペクトルの測定は実験室規模の EXAFS 測定装置を用いて実施した。
    EXAFS 領域の解析結果から, 新油中の Mo は Mo-DTP 添加剤中の Mo とほぼ同じ局所構造を有するが, 車両走行後の Mo は O を六配位した Mo 酸化物に変化していることが明らかになった。一方, XANES スペクトルから, Mo 酸化物中の Mo と O との間の局所立体構造は, MoO2よりも MoO3 に類似していることがわかった。これらの結果は, 車両走行にともなうエンジン油の摩擦低減効果の消失が, 油中の Mo 化合物の構造変化と密接に関連することを示唆している。
  • 武隈 真一, 松原 義治, 松井 秋一, 山本 啓司, 野副 鉄男
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 923-932
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,5-ジイソプロピルアズレン〔1A1〕を非プロトン性極性溶媒 (HMPAあるいはDMF) 中 115℃ で微泡化した酸素を8時間通じ酸化したところ, 余分の炭素をもった1分予および2分子間生成物 (〔1G〕,〔1N〕,〔1A2〕,〔1D5〕,〔1D2〕), ナフタレン系およびインデノン系転位生成物 (〔1D1〕,〔1D4〕,〔1H〕), アズレニルベンゾフルベン系生成物 (〔1B1.2〕,〔1C〕,〔1D3〕,〔1F〕,〔1L〕,〔1M〕,〔1O〕,〔1R1.2〕) およびジアズレニルベンゾフルベン系生成物 (〔1E〕,〔1I〕,〔1P〕,〔1S〕) などの多種多様の生成物が得られた。
    また,〔1A1〕の自動酸化で主要生成物として得られた 1,1'-メチレンビス(3,7-ジイソプロピルアズレン)〔1A2〕を〔1A1〕と同様の反応条件下で酸化したところ,〔1A1〕の自動酸化で得られた余分の炭素をもった1分子および2分子間生成物4種, アズレニルベンゾフルベン系生成物10種が得られることを見いだした。各種生成物は電子スペクトル, 質量スペクトル, IR および NMR スペクトルを測定し, それらの解析結果から構造を決定した。また, これらの生成物の生成機構の考察についても詳述する。
  • 宮本 裕貴夫, 小郷 良明
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 933-939
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Illinois No.6 炭のテトラリンを用いる無触媒溶剤水添液化反応を温度 400℃, 圧力 20~60MPa, 反応時聞 4~20 分で流通法によって行ない, 既報の Wandoan 炭および Morwell 炭の場合と比較した。すなわち液状生成物を通常の溶媒分別法によって未反応炭, プレアスファルテン, アスファルテンおよびオイルの各成分に分別定量し, それぞれの反応条件下における各成分の経時変化を求めた。これらの結果に従来と同じ速度解析法を適用して液化各素過程の速度定数を計算した。その結果 Illinois No.6 炭では石炭から直接アスファルテンを生成する過程への寄与がかなり大きいことを特徴とし, また可溶化の初期過程に対する圧力効果がこれまで中最大であることがわかった。またトルエン-テトラリン混合溶剤 (トルエン 90%) を用いてまったく同じ条件で抽出液化の実験も行なった。この場合も各ま素過程の速度定数はいずれも圧力によって増加したが, その絶対値は小さくなることわかった。しかし石炭から直接アスファルテンを生成する過程に対する影響はほかとくらべて小さかった。これらの結果から考えると, Illinois No.6 炭はもともとその骨格構造中にゆるく結合した形でアスファルテンの分子量に相当する化合物を含んでおり, これらが容易に抽出液化されるために石炭から直接アスファルテンを生成する過程の寄与が大きく, またその過程を庄力が促進するすなわち高圧抽出に適した石炭と考えられた。一方, 温度 450℃ でテトラリンによる溶剤水添液化の実験も行なったが, この条件では溶剤の水素供与能の喪失につながる異性化が特異的に進行し, 450℃ での Illinois No.6 炭の溶剤水添液化はこの点からは不適当と判断された。
  • 佐藤 謙二, 小中原 猛雄, 吉井 敏男, 丸山 一裕
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 940-945
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メラミン (MH) およびアセトグアナミン (AGH) のホルムアルデヒド (F) によるヒドロキシメチル化反応について, MH のさいにクロロ酢酸, 3-クロロブロピオン酸, 酢酸-共役塩基緩衝液を用い, 一方, AGH のさいは上記緩衝液のほかに, ギ酸, およびプロピオン酸-共役塩基緩衝液を用い, 40℃ の水溶液中で検討し, この結果初速度 R0=k[MHf]0[F]0 または R0=k[AGHf]0[F]0で示される二次速度定数kは, 近似的に k-k'=kHA[HA] で与えられた。ここで, MHf,AGHf はそれぞれ遊離のMH,AGHであり, k'は非緩衝液中の速度定数,HA は緩衝剤の酸成分である。ついで, 得られた kHA についてBrφnsted プロットを行なったところ, MH, AGH の場合ともに勾配 0.35 の直線が得られた。この結果から一般酸触媒反応機構について考察を加えた。
  • 白石 浩平, 坂本 昭彦, 杉山 一男
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 946-951
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    重合性官能基をもった15種の液晶 N-[P-[[(E)-3-(alkoxycarbonyl)acryloyl]oxy]benzylidene]-alkoxyaniline(R-F-OR') を合成した。ここに, アルキル基 (R) はエチル, プロピル, イソプロピル, ブチル, s-ブチルであり, アルコキシル基 (OR') はメトキシからヘキシルオキシまでの6種である。5種の R-F-OMe はすべてネマチック液晶であったが, Et-F-OR' では相転移温度に奇偶性がみられ, またアルコキシル基の炭素灘が3以上ではネマチック相以外にスメクチック相参存在した。これら液晶のネマチック相の電界応答速度を He-Ne レーザーの透過光強度の変化から測定したところ, Rが直鎖型の誘導体では立ち上がり時間 (τr) は 0.68~2.20ms であったが枝分かれ型では τr は 40ms 以上であった。また, 強誘電液晶 DOBAMBC と i-Pr-F-OC6H13 の混合系の電気光学効果も検討した。
  • 長谷川 雅典, 加来 尚, 北野 博巳
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 952-958
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    スチレン-ジビニルベンゼン共重合体の多孔性樹脂中に, 3-クロロプロピオニルクロリドとチオシアン酸カリウムを用いてイソチオシアナト基を簡単に導入する手法を開発した。得られたイソチオシアナト基を有する樹脂を用いて, ウシ血清アルブミンやウシ血清γ-グロブリン水溶液からのこれらタンパク質の結合除去性能を検討したと pH や温度を変えて結合挙動を調査したところ, タンパク質の結合には疎水牲相互作用と共有結合が関与していることが明らかになった。固定化酵素を用いた血清中グルコースの連続分析装置に, この樹脂を充填したカラムを除タンパク前処理用カラムとして組み込んだところ良好な性能を示した。また, アルカリホスファターゼや β-D-ガラクトシターゼをイソチオシアナト基含有樹脂に結合した場合その操作安定性は良好で, ここで得られた樹脂は固定化酵素用担体としても有用であることが判明した。
  • 松井 博, 橋詰 源蔵, 足立 吟也, 塩川 二朗
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 959-963
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    CaS:Ce 蛍光体に水蒸気を作用させたときの CaS:Ce の加水分解過程を調べた。CaS:Ce を 25℃, 40% RH の雰囲気中に置くと, CaS 結晶の表面は初期の段階ですでに SO4と SO3 が生成している。そこへ, まず水蒸気が CaS の構造中に OH の形で取り込まれ, つぎに分子状の水として入ってゆく。さらに CaS と水蒸気と接触しつづけると, あらたに Ca(OH)2 が生成し, これが空気中の二酸化炭素と反応して CaCO3 が生成する。加水分解の初期から CaS:Ce の表面にはすでに CaSO4, CaSO3 の存在が認められ, また試料に水が吸着しやすく その結果 Ca(OH)2 が生成した。生成した Ca(OH)2 は炭酸化が徐々に進行し CaCO3 も一部生成した。さらに, 25℃ の飽和水蒸気雰囲気にしたデシケーター中に放置すると, 一部, II・CaSO4 が生成するものの最終的には CaSO3・1/2H2O に変化した。これは試料を飽和水蒸気雰囲気にデシケーター中に放置した結果, 酸素が不足したため II・CaSO4 が生成しにくくなったものと思われる。
  • 松井 博, 岡本 裕信, 橋詰 源蔵, 足立 吟也, 塩川 二朗
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 964-969
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    β-CaSO4・1/2H2O を水和させるときに Ce2(SO4)3 を添加し, CaSO4:Ce・2H2O を合成した。これを水溶液中, 125℃ でα転移させる段階でコハク酸二ナトリウムを加え, 針状あるいは柱状α-CaSO4:Ce・1/2H2O を作製した。これを出発物質として, 水素気流中あるいは硫黄を添加した本素気流中, 800, 900 および 1000℃ で還元し, CaS:Ce 蛍光体を作製した。還元条件が CaS:Ce の結晶形状と CaS:Ce の発光強度への影響について検討した。針状α-CaSO4:Ce・1/2H2O を水素気流中, 800, 900℃ で還元すると釘状の形状を残した CaS:Ce が得られた。1000℃ で還元すると約1μmの球状の集合体になった。柱状α-CaSO4:Ce・1/2H2O からは温度に関係なく約5μmの粒状結晶であった。硫黄を添加した水索気流中で還元すると, 結晶形状については水素気流中で還元した場合と大きな差は見られなかったにもかかわらず, 発光強度は増した。還元雰囲気に硫黄を添加することは CaS:Ce の発光強度を増加させる効果をもつことがわかった。
  • 西 久夫, 北原 清志, 黒沢 豊, 池田 征朗
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 970-974
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    長鎖アルキル基 (C6H18~C18H37) をもつカルバゾールジオキサジン類〔Xb~f〕を合成し, その構造や長鎖アルキル基の効果, 色材としての性質について調べた。また, 別途に長鎖アルキル基 (C8H17~C12H25) をもつ線形, 非線形構造のカルバゾールジオキサジン類〔6c~e〕,〔13c~e〕を合成し, 過去の文献に記載されたカルパゾレルジオキサジン〔Xc~e〕との物性を比較した結果, 長鎖アルキル基がある場合でも従来法で得られた〔X〕は線形構造でないことがわかった。長鎖アルキル基の効果は融点あるいは分解点を低下させ, 可視スペクトルの吸収は少し長波長シフトし, とくに〔6c~e〕は有機溶媒への溶解性が増し, 再結晶による精製が可能どなった。色材としてに分散性の向上が認められた。
  • 太田 道也, 大谷 杉郎, 飯塚 晋司, 沢田 剛, 小島 昭
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 975-980
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    さきに報告した, ピレン, フェチントレン混合物を原料とし, ベンゼンジメタノールのジメチル置換体 (DM) を橋かけ剤とする COPNA 樹脂を用いて, 最高 2500℃ まで加熱し, 炭素化処理した。そのさいの樹脂の構造変化を調べ, DM 系樹脂の炭素化機構を PXG 系の場合と比較検討した。合成した DM 系樹脂は 120℃ で20時間硬化したのち, 200℃ で1時間後硬化し, これを炭素化の出発原料とした。加熱処理は, 窒素気流中で 1400℃ までは 5℃/minの昇温速度で, 1400 から 2500℃ までは 20℃/min で行なった。
    DM 系は PXG 系と異なり, 450℃ で完全に液化した。そして, この液相状態がみられる温度域では, 樹脂中に光学的に異方性を示す液晶部分, いわゆるメソフェーズが観察された。2500℃ までの各温度で加熱処理した樹脂炭の文線回折測定の結果, DM 系は典型的な易黒鉛化性挙動 (2500℃ 処理において, d(002)=0.336nm, Lc=33nm) を示すことがわかった。
  • 鈴木 憲司, 増田 浩之, 今井 寿穂, 森 聰明
    1988 年 1988 巻 6 号 p. 981-982
    発行日: 1988/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The interlayer spacing of aluminum-montmorillonite swollen with water (1.13 g-Water/g-Clay) was measured by small angle X-ray scattering. The interlayer spacing of aluminummontmorillonite paste was 19.2Å, and that in the frozen state was 17.3Å. The heat of fusion obtained by differential scanning calorimetry (DSC) was by 72 J/g-Clay smaller than that calculated by assuming that water in the paste was totally frozen. These rcstilts suggested that the amount of unfrozen water at 200 K in aluminum-montmorillonite was 0.22 g-Water/g-Clay.
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