日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1988 巻, 8 号
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  • 坪村 宏, 中戸 義禮
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1125-1133
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    この15年来, 著者らは半導体電極を用いる光電気化学セル (湿式太陽電池) による太陽エネルギー変換の実用化をめざして研究を進めてきた。まず太陽光を効率よく捕捉できるようなバンドギャップの小さな半導体を水の中で安定化する方策として金属の超薄膜で被覆する手法がきわめて有効であることを見いだし, p-n 接合結晶シリコンに白金などの均一な薄膜を施した電極により, ヨウ化水素の光分解などにおいて 5000 時聞以上の耐久性を実証し, 10% を越える太陽光-化学変換効率を得た。これと平行して著者らは半導体電極に対する不連続な金属被膜の効果について研究を進めてきたが, 金属膜が 10nm 以下の大きさのアイランド状に疎らについているとき, 半導体-溶液間の電位障壁は裸の半導体のそれに近いものになることを見いだし, 理論的解明を行なった。さらに n-および p-シリコンに対しこのようなアイランド状に白金膜を施すことを試み, 理論と合致する挙動を確認した。またこの種の電極を用いる光電池において 0.64V 以上のきわめて大きい光起電力と 14% に達する太陽エネルギー変換効率を得ている
    以上の結果は湿式光電池の新しい展開を意味するものであり, その光電変換素子としての機能は効率・経済性において固体太陽電池をしのぐ可能性を示したものと考えられる。
  • 小倉 興太郎
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1134-1140
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    化学的に不活性な CO2 と CH4 を電気および光エネルギーを用いて付加価値の高い物質への転化を試みた。CO2 は均一系触媒と電極メディエーターによってメタノールに転化することができた。触媒活性なメディエーターは Everit塩, ポルフィリン金属錯体, キノン系化合物であった。この還元は均一系触媒によって CO2 を捕捉して電気的活性種に転換し電極メディエーターから電子を受け取るプロセスによって進行する。CH4 は水蒸気の存在における光酸化反応によってホルムアルデヒド, メタノール, ギ酸, 酢酸 (過酢酸を含む) に転化することができた。CH4 の転化反応は水の光分解によって生成したヒドロキシルラジカルや水素原子との反応によって活性された。この転化反応速度は CH4 と水のモル比, 空気の供給速度, 反応ガスの循環速度などに依存した。
  • 池田 章一郎, 吉田 睦, 野田 英智, 伊藤 要
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1141-1145
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    鉛, 亜鉛, 金などの金属薄膜を被覆した p型 GaP 電極の, 第四級アルキルアンモニウム塩水溶液中での, 二酸化炭素 (CO2) の光電気化学的還元に対する金属被覆の効果と, 電気化学挙動を研究した。ゴタノ金属被覆は, 電極の分光光電流の減少をもたらしたが, 鉛被覆の場合 CO2 の還元途中に被膜が金属光沢を示すようになり, その後, CO2 の還元効率は上昇した。このことは, 水素過電圧の高い金属状の鉛が競争反応の水素生成を抑制し, CO2の還元に対する触媒活性が大きいことを示唆している。金の被覆は, p型 GaP 電極の劣化を防止し, 還元光電流の安定化に役立った。第四級アルキルアンモニウム塩水溶液中において, 支持電解質の陽イオンの大きさは, ギ酸の生成効率にはあまり影響しないが, 一酸化炭素生成にはより大きな陽イオンが望ましいことがわかった。
  • 上松 強志, 斎藤 忠, 木田 康博, 穀内 滋, 松熊 邦浩
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1146-1151
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    結晶 Si 太陽電池の高効率化をはかるため, 表面無反射化, 背面電界効果および表面パッシベーションなどの太陽電池要素プロセス技術について研究した。表面無反射化のため, V溝表面構造の最適化と二層反射防止膜の被着により表面光反射率を 2% 以下に低減した。背面電界効果に関し, 印刷法で形成した Al 層のランプアニールの最適条件を実験的に検討し開放電圧を約 7% 向上させる条件を見いだした。表面パッシベーションについては, 表面酸化と n+ 層キャリヤー濃度分布の関係などについて検討し開放電圧への影響について調べた。以上の開発した要素プロセス技術を基に, 太陽電池の試作を行ない, 変換効率 20.5% (セル面積4cm2) の値を達成することができた。また得られた実験データとコンピューターシミュレーションの結果と比較して結晶内部の少数キャリヤー寿命と結晶表面の表面再結合速度について推測した。
  • 八重 真治, 中戸 義禮, 松村 道雄, 坂井 裕一, 坪村 宏
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1152-1156
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    溝電性の金属ないしは金属酸化物板上に, n型暦, i型雇の順にアモルファスシリコン (a-Si) を堆したものを電極に用いた湿式光電池の研究を行なった。結晶 Si 電極に用いた白金を極く微小なアイランド状につける方法をこの電極の i型 a-Si層表面に試みた結果, 電極が安定化され, かつ, 開回路光電圧 (VOC) が連続な白金薄膜で被覆したもの (0.4V) にくらべ大きくなった。白金を蒸着したのちアルカリエッチングする方法によって VOC 0.76V がえられ p-i-n 接合 a-Si 固体太陽電池のものに近い値となった。これらの結果は, 著者らがこれまでに結晶 n-Si 慨極に用いてきた極く微小な金属アイランドで半導体電極を被覆する方法が a-Si 半導体電極にも適用できることを示しており, 安定で変換効率の高い薪しい型の a-Si 湿式太陽電池の開発の可能性を示している。
  • 冨士川 計吉, 武田 義幸, 魚崎 浩平, 喜多 英明
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1157-1162
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    湿式太陽電池用アノード材料として理想的なエネルギーギャップをもちながらこれまで詳細な検討が行なわれていない n-InSe 単結晶について, 溶液との接触界面における静的および動的挙動を調ぺた。レドックス対を含む溶液と n-InSe の接触において -0.35V vs.SCE in 1mol・dm-3 NaOH より正の酸化還元電位をもつレドックス対の場合, 光起電力がレドックス対の酸化還元電位の正移動にともなって増大し, その増加分は酸化還元電位の正方向への移動分に等しかった。一方, -0.35V より負の平衡電位をもつレドックス対溶液中では光起電力はほとんどが 0であった。これは, 半導体のフラットバンド電位がこれらの溶液中で約 -0.35V に固定されていることを意味している。これらの結果とは対照的に S2- を含む溶液中ではフラットバンドの負方向移動が観測された (-0.95V vs.SCE in 1mol・dm-3 NaOH)。AESによる表面観察の結果Sの特異吸着が認められた。
    また, 光アノード溶解過程を AES による電極表面観察, insitu モニター電極による電極からの溶解化学種の検出, および溶液の紫外線吸光分析の結果に基づいて検討し, S2- を含む溶液で溶解が抑制されることを確認した。
  • 撰 達夫, 掬藤 康明, 山下 芳温, 松本 浩治, 西村(平田) 久美子, 和田 正徳
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1163-1168
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    光合成細菌 Rhodospirillum rubram から調製したクロマトホアを用いて, 酸化スズ電極上での光電気化学的挙動を調べた。その結果, クロマトホア懸濁液に 1-methoxy-5-methylphenazinium methylsulfate (m-PMS) と L-アスコルビン酸を添加したとき, この系は光アノードとして機能することがわかった。このときに流れる光アノード電流の発生機構について, 光電流作用スペクトルの測定, 光電流の電極電位依存性, 固定化クロマトホアを使用する光電流測定などの諸実験に基づき考察を加え, 光アノード電流はクロマトホア中で光励起したバクテリオクロロフィルからの電子が酸化スズ電極に移行することにより生じると予想した。
  • 永田 員也, 清水 雅裕, 出来 成人, 金治 幸雄
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1169-1174
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    パラタングステン酸アンモニウムの熱分解により得られた多結晶WO3n-型半導体電極は, 酸性溶液中 (0.5mol/dm3 硫酸水溶液) で, 金属タングステンの直接酸化, CVD などにより調製された WO3 薄膜電極と同様の良好な光応答性を示した。さらに熱分解で得られた WO3に, MoO3 およびタングステン金属粉末を添加した電極について光電気化学特性および積分球を用いた光吸収スペクトルを測定することにより, 不純物添加効果を検討した。
    その結果MoO3 ならびにタングステン金属粉末の添加濃度がWO3 に対するモル比で 5×103 付近で光電流は, WO3 単一組成電極の約 1.5 倍に増大した。これらの挙動は不純物によるドナー濃度の変化によるものと推定された。これら電極の光電流は, 光励起により生成したホールが関与した酸素発生反臨であった。また光吸収スペクトル測定により得られたみかけの光吸収係数とフォトンエネルギーの依存性より光学的バンドギャップを決定した。その結果バンドギャップエネルギーに対する不純物添加の顕著な影響は認められず,得られたバンドギャップ値 2.6eV は, バンド-バンド間接遷移によるバンドギャップに対応していた。
  • 小早川 紘一, 勝俣 龍起, 長島 広和, 佐藤 祐一, 中村 茂夫, 藤嶋 昭
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1175-1181
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    十数種類の市販の酸化チタン(IV)(TiO2) 粉末について, 6種類の光触媒反応に対する反応速度 (=光触媒活性) を測定し, TiO2 の光触媒活性に反遮を問わない普遍性があるかないかということと, 光触媒活性と TiO2粉末の属性との関係を調べた。TiO2の光触媒活性には, ある程度の普遍性があることがわかった。アナタース型, ルチル型を問わず, 塩素法でつくられた TiO2は硫酸法でつくられた粉末よりも高い光触媒活性を示した。この結果は, TiO2を分散した KOH 溶液の硝酸による滴定曲線から判断すると, 前者の粉末の表面ヒドロキシル基の量が後者のそれよりも少ないためと考えられる。塩素法によるルチルとアナタースは光触媒反応の種類によって活性が違うことを示唆する結果が得られた。
  • 佐藤 真理
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1182-1187
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Pt および NiO2 担持 TiO2 粉末を上部照射型の平底反応器に入れ水の光分解を行なった。NaOH 水溶液の場合, Pt 担持では溶液量を約 0.3ml 以下 (溶液の厚さ 0.2mm 以下) に減らしたとき, 化学量論的な水の光分解が観測され, 溶液量が約 O.12mlで収率は最大になった。NiOx 担持では収率はも下がったが同様の溶液量依存がみられ, 溶液量が多い場合にも化学量論比で水素と酸素が生成した。溶液量が多いときに収率が低いのは, 触媒上に生じた水素と酸素の気泡が成長過程で合体し, Pt あるいは NiOx の触媒作用で再結合するためであると考えられ, 活性の低いNiox を担持する方が Pt を担持するより見かけの収率が高くなる。触媒土の溶液が十分薄い場合には生成物は溶液中を拡散によって気相に出ることができる。Pt 担持触媒を硫酸水溶液中で光照射すると, 初めは量論的な水の米分解がみられたが急速に遅くなり停止した。微粒子の TiO2 (P-25) に Pt を担持した触媒では水の光分解が起こらなかったが, NiOx を担持したときおよび Pt 担持触媒を 450℃ で酸化したときには起こった。これは前者では Pt 表面に生成した吸着水素が TiO2 上に移行 (スピルオーバー) して逆反応が起こるのにたいし, 後者ではスピルオーバーが抑制されるためと考えられる。
  • 大沢 吉直, 高橋 隆治, 米村 道子, 関根 忠雄
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1188-1193
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    三元系ニナブ酸塩の光触媒的性質をつぎの方法で測定した:1)電子供与体 (HCOOH, CH3OH) 存在下における光触媒的水素発生速度の測定;2)電子受容体 (KBrO3) 存在下における光触媒的酸素発生速度の測定;3)紫外-可視拡散反射スペクトルを用いたパンドギャップエネルギー(Eg)の測定。フラットバンドポテンシャル (Vfb) と価電子帯の頂上のポテンシャル (Vtop of VB) を三元系ニオブ酸塩の Mulliken の電気陰性度と Eg から推箕した。三元系チタン酸塩系と同様 Eg が大きくなるにつれ Vfb はより負に Vtop of VB はより正にシフトし, Vfb が負になるほど水素発生活性は大きくなった。
  • 上田 寿
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1194-1200
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    光による水やアルコール/水系の分解触媒としては酸化チタン系の物質が多く研究されている。最近 Ti, Zr, Nb, Ta を含有するアルコキシドの重合物が可視光領域で光触媒作用を有することが見いだされた。そこでこれまで試されたことのない, Cu, Ga, Y, La, Ge, Sn, V, Mn を含有するアルコキシドについてそれぞれの重合体を形成させて, 可視光により ESR 吸収強度が変化するか, メタノールなどの吸着時の挙動はどうか, を主として測定した。さらにメタノール雰囲気申で可視光照射して生ずる ESR 吸収強度の変化によってこれら重合体の感光度を定義しかつ測定した。メタノール/水系からの水素生成速度と比較してみたところ, Ti, Zr の場合を除外すれば, 両者の間に比例関係に近い根関関係があることを見いだすことができた。
  • 野坂 芳雄, 石川 彰, 高津 雅子, 藤芽 信行, 三山 創
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1201-1207
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    白金担持酸化チタン (IV) 粉末半導体光触媒を用いたアンモニアとエタノールからのアミン生成について, その反応機構の詳細を調べ反応の高効率化を目指した。その結果, 反応はエタノールの酸化によって生じるアセトアルデヒドと白金吸着水素によるアンモニア分子への逐次アルキル化反応で進行することが示された。このことは今まで予想されてきた機構と矛盾しない。単色光により測定した量子奴率は 6% であった。また, 光照射途中での反応中間体の NMR での分析を試みた。
  • 中村 朝夫, 西村 亮治, 米山 和祐, 梅田 智重, 戸田 不二緒
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1208-1214
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水溶性の色素であるアクリジンオレンジ (AOH+) を増感剤とし, 脂質ベシクル内水相のアスコルビン酸イオン (Asc-) を電子供与体とするバルク水相のメチルビオロゲン (MV2+) の光還元の反応機構を解析し, エネルギー的に上り坂の光電子輸送反応において脂質二分子膜が果たす役割を検討した。この反応系では, 光照射をつづけるとメチルビオロゲンの還元体 (MV+.)の濃度が定常になる。この定常状態は, AOH+ が励起三重項状態で MV2+. 電子を渡したときに生成する AOH+ の酸化体 (AOH2.+) の Asc- による還元・再生の速度と, MV+. の酸化の速度とが釣り合うことによって出現する。ベシクルの膜は AOH2.+ を吸着することによって, この正孔キャリヤーを MV+. との再結合から守る働きをする。また, Asc- の一電子酸化体 (sAsc-.) と MV+. の間で起こる逆反応を防ぐ障壁としての役割も果たす。sAsc-. はその寿命が長くなると, 不均一化反応によって Asc- の二電子酸化体であるデヒドロアスコルビン酸に変化し, MV+. のような一電子還元剤では容易には還元できなくなる。したがって, ベシクル内水相のAsc-によるバルク水栢の MV2+ の還元は, 実質的には不可逆であるといえる。
  • 長谷川 英悦, 向井 利夫, 戸田 敬
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1215-1221
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    太陽光の有効利用のために, より長波長部に吸収を有するカルコン発色団を有する-アロイル-3-アリールノルボルナジエン誘導体 [1] を合成し, それらの光異性化反応を検討した。[1] は導入した置換基の種類によっては可視部におよぶ吸収帯をもつ。光異性化反応の量子収率は置換基によって異なるが, O.06~O.60 の値で進行し, クアドリシクラン誘導体 [2] を生成した。[2] は加熱により容易に [1] にもどるが, 過塩素酸銀, トリフルオロ酢酸またはシリカゲルとの処理によっても収率よくに異牲化する。また [2] はエタノール中室温で放置すると,高収率でエタノールを付加したトリシクラン誘導体 [7] を与えた。[1] の光異性化反応の溶媒効果や波長効果についても述べる。
  • 嵐 治夫, 二唐 裕, 石亀 希男
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1222-1228
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    太陽エネルギーの変換貯蔵を目的として, 光作用の立場から太陽光励起レーザーの開発, また, 熱作用の立場からの高温水蒸気電気分解に関する基礎的実験研究を行ない, これらの方法が太陽エネルギーの貯蔵に有効であることを明らかにした。光作用の立場からは, 口径 10m, 焦点距離 3.2m の大型太陽集光器を用いて, Nd:YAG 結晶により太陽光を波長 1.06μm のレーザー光に変換すること成功し, レーザー光出力として 40W を得た。熱作用の立場からは, ZrO2+8mol% Y2O3を固体電解質として用い, 太陽加熱を模擬する電気炉で 1070~1670K の温度範囲における高温水蒸気電気分解の実験を行ない, 効率 92% で水素が得られることを確認した。
  • 原田 久志, 太田 誠, 林 泰宏
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1229-1231
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A methanol fuel cell combined with a photocatalytic reaction apparatus is proposed. This new type cell works as a methanol fuel cell in the dark and as a hydrogen-oxygen fuel cell under illumination. Methanol is reformed into hydrogen by the photocatalytic reaction using Pt/TiO2, and evolved hydrogen is provided for the anode of the fuel cell. The performa nce of this cell under illumination is better than that of the methanol fuel cell.
  • 永島 稔久, 平野 克比古, 浅見 雄作, 高木 亮一郎
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1232-1234
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Photocatalytic decomposition of acetic acid in TiO2 suspensions is accelerated by addition of reducible species such as Cu2+, Fe3+, CuO and MnO2. This process is proposed to involve the capture of the electron photogenerated in the TiO2 by these species, which suppresses the undesirable electron-hole recombination. The decomposition is retarded when less reducible species such as Ti4+ and Sn4+ are added instead. Significant enhancement of the decompositi on is observed when copper powder is added to the suspension. This process is also considered to stem from the trapping of photogeneratedelectron in the TiO2 by copper particles.
  • 今村 速夫, 三浦 比呂志, 蓬原 正伸, 土屋 晉
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1235-1237
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The photoassisted hydrogen storage in rare earth intermetallic compounds (R2Co7 and RCo3)has been investigated using methanol or 2-propanol as a hydrogen carrier. Though the hydriding kinetics was negligibly small at room temperature, the irradiation by a highpressure mercury vapor lamp accelerated the reaction much rapidly. When the powders of rare earth intermetallic compounds were dispersed in a solution of alcohol with CCl4 and irradiated at room temperature, the alloy was transfer-hydrogenated to form metal hydrides by the photodehydrogenation of alcohol. Irradiation of Sm2Co7 (ca. O.3 g) for 3 h in a solution of 2-propanol (220 cm3) with CCl4 (0.05 cm3) resulted in the formation of α+β hydrides. It is concluded that upon irradiation of alloys in alcohol-CCl4, the photodehydro genation of alcohol occurred to produce dehydrogenated products and hydrogen in the form of hydride.
  • 小嶋 邦晴, 塚本 健人, 瀬能 靖弘, 森川 正之, 中平 隆幸
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1238-1240
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Amphiphilic surfactants containing porphyrin with one or four poly(oxyethylene) chains were prepared by an immortal_polymerization. The photosensitizing effect of these polymers on the oxidation-reduction of L-ascorbic acid and Fast Red A(FRA) was examined in acetate buffer solution. The polymer having four poly(oxethylene) chains photosensitized the reduction better than the polymer with one poly(oxyethylene) chain which formed association. The effects of pH and of surfactant concentration on the photosensitized reaction were examined.
  • 水田 進, 熊谷 俊弥
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1241-1252
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸およびヨウ化水素酸混合溶液の分離に対する金属イオンの添加効果を広く検討した結果, (i) MgO 存在下での I2 と SO2 の酸化還元水溶液反応, (ii) MgI2 含水塩の加水分解, (iii) MgSO4の熱分解, (iv) HI の熱解離からなる水分解の熱化学サイクルを提案し, サイクルの各要素反応がいずれも十分な転化率と反応速度を示すことを確認した。つぎに, 固体反応物定置型バッチ方式の装置を組み立て 0.3idm3O2/h および 0.15dm3O2/h の発生速度で 38 回にわたるサイクル操作をくり返し, 本サイクルが実行可能であることを実証した。さらに, 固体反応物移動型連続流通方式の装置を組み立て0.5dm3H2/h および0.25dm3H2/h の発生速度で 33 時間にわたり運転を行なった。固体反応物を含む全反応物質が円滑に循環するため, 熱伝導の問題や反応装置の昇降温の問題が解決され, 本サイクルを大型化し実際の化学装置により実現できることを示した。熱効率は, 総合熱回収率 65~85% に対し, 17~39% と計算された。
  • 田川 博章, 西条 宏之, 川辺 勝也, 遠藤 貴之, 橘 千里, 沖 しげみ, 水崎 純一郎
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1253-1260
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    熱化学水素製造法における酸素発生反応として金属硫酸塩の熱分解を取り上げ, その結果をもとに金属-硫黄-ヨウ素系の熱化学サイクルの構成について検討した。硫酸塩の熱分解開始温度, 分解速度を測定し, 熱分解のしやすさが標準分解 Gibbs エネルギーと密接な関係にあることを明らかにした。熱分解速度の大きさは Fe2(SO4)3>CuSO4>CoSO4>NiSO4>ZnSO4>CdSO4 の順である。酸化物をふたたび硫酸塩に変える方法として, 銅と鉄の酸化物の硫酸への溶解のしやすさを測定し, 機構を明らかにした。さらに, 金属ヨウ化物の加水分解の可能性について検討した。熱分解速度の大きい銅, 鉄の硫酸塩を組み込んだサイクルの可能性を実験的に調べた。
  • 八代 仁, 丹野 和夫
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1261-1266
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らが提案した硝酸カリウム-ヨウ素系ハイブリッド水素製造サイクルに関連して, 硝酸カリウムの熱分解を, 酸素の分離と窒素副生の二つの観点から 850~1100K で検討した。
    硝酸カリウムとヨウ素との反応 (1000K) に先立ち, 硝酸カリウムを平滑なアルミナ管中アルゴン気流下 925K で1時間保持することにより, サイクルとして必要な水の分解に相当する量の酸素 (0.25mol/mol-KNO3) をあらかじめ分離することができる。
    平滑なアルミナ管中では, 1100K までの硝酸カリウムの熱分解によって生成する気体は, 酸素と一酸化窒素であるが, 白金や金およびステンレス鋼のような以前の研究で反応器として用いられてきた金属あるいは酸化マグネシウムのような比較的塩基性の高い酸化物が存在すると, 一酸化窒素のほかに窒素が副生する。この場合, これらの金属や酸化物は, 窒素生成に対して触媒として作用すると考えられる。一方, 酸化チタン (IV) や二酸化ケイ素のような酸性度の高い酸化物が存在すると, 窒素は副生しないがそれら自身が硝酸カリウムと反応して複酸化物を生成する。結局, ヨウ素とも硝酸カリウムとも反応性がなく, 硝酸カリウムの熱分解時に窒素がほとんど生成しない酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウム (IV) のような中程度の酸牲度の酸化物が, 体水素製造サイクルの熱化学反応容器材質として最適であると結論される。
  • 曽 維平, 松田 仁樹, 架谷 昌信
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1267-1274
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高温化学熱輸送法の基礎研究として, SO2/SO3 系可逆熱化学反応を熱変換, 熱輸送媒体とする熱輸送実験を密閉系気体循環反応装置を用いて行なった。実験は, 熱変換過程における発熱部および吸熱部白金触媒粒子充填層における反応気体濃度変化ならびに反応にともなう層内温度変化を測定し, 実際に熱輸送が連続的に行なえることを確かめた。さらに, 反応気体循環速度および反応気体組成の SO2/SO3 系反応ならびに触媒層温度におよぼす影響を検討した。その結果, 本実験条件下では, 触媒層温度に対するほぼ平衡組成の反応ガスが循環され, SO2 の酸化反癒および SO3 の脱酸素反応のいずれの場合も触媒層は入口近傍でそれぞれ極大および極小温度を示し, これらの温度は反応気体モル流量の増加とともに増大することが認められた。
  • 伊藤 滋, 三浦 俊信, 米田 登
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1275-1280
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,高温側に NiCl2・6NH3, 低温に NH4NO3・nNH3 (n>0.9) を用いたケミカルヒートポンプについて, その蓄熱・放熱特性を調べた。このケミカルヒートポンプの特徴は, 低温側に液状のアンモニア化物である NH4NO3・nNH3 を用いたところにある。すなわち, 一般に低温側物質は低温ゆえに反応速度が遅いという欠点があるが, NH4NO3・nNH3 は液状であるため外部からの熱の伝達が速く, 放熱時においてすみやかに NH3 ガスを解離できる。本報では, まず NH4NO3・nNH3 の平衡状態図を作製し, ついで小型システム (理論発熱量 24kJ) について NH4NO3・nNH3 からの NH3 の解離が速いことを確認した。その後, NiCl2 2.06モル, NH4NO3 8.46 モルを用いて理論発熱量 520kJ のベンチスケールシステムを作製した。そして, 蓄熱時には高温側物質 NiCl2・6NH3 を 195℃ で加熱し, 発生する NH3 ガスを 0℃ で NH4NO3・1.4NH3 に吸収させた。他方, 放熱時には NH4NO3・2.4NH3 から NH3 ガスを 0℃ で解離させ, この NH3 を NiCl2・2NH3 と反応させて蓄えた熱を放出させた。その結果, 蓄熱は8時間かかって行なわれたが, 放熱は2時間以内の短時間で終了し, 理論発熱量の75%, 388kJ の熱量を取りだすことができた。この熱量は 20 回のくり返し実験ののちもほぼ同じ値であった。
  • 森脇 良夫, 蒲生 孝治, 竹下 功, 岩城 勉
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1282-1288
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Ti(Zr)-Mn系をベースとする C14 (MgZn2) 型 Laves 相水素吸蔵合金の水素平衡圧力の制御幅, およびヒステリシス, プラトー特性の改善を合金組成や製造法を検討することによってはかった。その結果, おもに Ti と Zr の配合比を変えることにより, 平衡圧力を広い範囲, たとえば 20℃ での平衡圧力制御範囲としては 10~108 Pa (これは 1.O13×105 Pa の水素平衡圧力を示す温度幅として -50~+250℃ に対応する) で連続的に制御できることがわかった。また, ヒステリシス, プラトー特性は, Mnの一部を Cr, Cu, Ni などで置換すること, および 1000~1200℃ での高温熱処理による合金の均質化などが有効であった。
    また, この合金系は水素化反応速度も La-Ni 系や Ti-Fe 系合金と比較するときわめて速く, かつ密閉系でのサイクル寿命試験でもまったく性能低下が認められなかった。
    これらの結果をもとに, 平衡圧力の異なる低温用, 中温用, 高温用の3種合金を選定し, 高温廃熱の有効利用を目的に設計した低圧作動二重効用ヒートポンプシステムへ適用した。すなわち, 低温用, 中温用, 高温用の3種類の合金を用いて, 低温用と高温用で第1の, また低温用と中温用で第2のヒートポンプサイクルを形成し, 高温廃熱の入熱で, 高温用合金を加熱し, これによって二つのサイクルの低温用合金の吸熱によって冷却出力を, 同じく低温用と中温用の発熱で暖房出力を得られるようにした。そして第1のヒートポンプサイクルの高温用合金の水素吸蔵時の発熱を, 第2のヒートポンプサイクルの中温用合金を加熱する熱源とすることにより二重効用化をはかった。その結果, 出力の温度レベルなどに改良の余地があるものの, これまでにない高い成績係数 (冷:O.65, 暖:1.78) が達成できた。
  • 竹原 善一郎, 林 秀考, 見立 武仁
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1289-1291
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    In order to improve the efficiency of electrolysis in the hybrid sulfur cycle for hydrogen production, the feasibility of molten salt electrolysis for the electrochemical step has been investigated, The process designed and examined in this paper is concerned with SO2 electrooxidation in the hydrogen sulfate melts, which is related to the SO2 depolarized process developed by Westinghouse Electric Corporation. Using a porous carbon anode, the electrolysis was performed at the cell voltage of 1.2 V at 100 A. m-2. It is expected that the efficiency of the electrolysis will be improved by modification of gas (SO2 and H2O)supplying method.
  • 山下 勝, 小島 管弘, 野田 道雄, 鈴木 實, 斉藤 泰和
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1292-1293
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Pretreatment conditions of nickel fine-particle catalysts have been studied by changing the temperatures of hydrogen reduction. The catalysts were used for an endothermic lowtemperature reaction in a newly-proposed chemical heat pump. Surface oxides of the catalyst were removed by hydrogen between 150 and 180°C according to TG analysis (Fig.1). Dehydrogenation rates of 2-propanol without acetone (82.4°C) were relatively high for the catalysts reduced at high pretreatment temperatures, whereas those of 2-propanol containing 5.5 % acetone (80.0°C) became rather unfavored (Table 1). Proper pretreatment conditions for high suspension stability and catalytic activity at high acetone concentrations are important for improving heat pump performance.
  • 杉岡 正敏, 金塚 高次
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1294-1296
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The catalytic adtivities, promotive effect and carrier effect of sulfided Mo based hydrodesulfurization catalysts and supported MoS2 catalysts in the decomposition of hydrogen sulfide were examined at 773 K using a closed circulation system. Sulfided CoMo/Al2O3 catalyst and MoS2 catalyst supported on γ-Al2O3 showed the highest activities among the Mo based hydrodesulfurization catalysts and supported MoS2 catalysts, respectively. Cobalt sulfid e in sulfided CoMo/Al2O3 catalyst acted as the promoter for Mo/Al2O3 catalyst, whereas nickel sulfide in sulfided NiMo/Al2O3 catalyst acted as desulfurization reagent for hydrogen sulfide. Furthermore, acid properties of carriers in supported MoS2 catalysts was supposed to play an important role for the decomposition of hydrogen sulfide.
  • 内田 勇, 仁科 辰夫
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1297-1307
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    溶融アルカリ炭酸壇中の水素電極反応と酸素電極反応の速度論的および機構論的検討を行なった。速度論的パラメーターを交流インピーダンス法, クーロスタット法, ポテンシャルステップ法, およびクロノクーロメトリー法で測定し, とくに交換電流密度に注目した比較検討を種々の電極に関して行ない, 両反応に対する Li/k 混合炭酸塩中, 650℃ での速度論的特徴を明らかにした。また, 反応機構を明らかにするため, 水素酸化反応に対してはクロノクーロメトリーによる化学量論数 (ν) の決定を, 酸素還元反応に対しては反応次数の解析を行なった。前者については, Ni, Pt, Ir, Au, および Ag 電極上で ν ≧2 の結果が得られ, CEC 機構 ; H2+2M〓2MH, 2MH+2CO32-→2M+2CO2+2OH-+2e, 2OH-+CO2〓CO32-+H2O を支持する結果が得られた。n/ν=1 としたときの Allen-Hicking プロットは良好な直線関係を示し, 妥当な交換電流密度を与える。ここで調べられた電極は, したがって, 同一の律速過程をもち, かつ交換電流密度に大きな差のないことが示された。後者については, 交流法で求められた Warburg 係数の酸素および二酸化炭素のガス分圧依存性, すなわち反応次数の解析から, Li/K 塩中ではスーパーオキシドパスを経由すること, および物質移動過程はスーパーオキシドイオンと溶存二酸化炭素との混合拡散系であることが明らかとなった。
  • 渡辺 政廣, 本尾 哲
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1308-1317
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    燃料電池の実用化において, 高性能ガス拡散電極は非常に重要である。その設計の基本的思想とそれによる電極作成法および作成した電極の評価方法を述べた。触媒層形成法として一種, 二種粉末ホヅトプレス法を開発した。それによって作成された電極は従来法にくらべ活性, 触媒利用率とも約3倍の値が得られた。またオス透過性, はっ水性のいずれも優れるガス供給層の製法を提案した。この材料を触媒層中のガスネットワークに用いれば, 電極の高性能, 長寿命化が図れるであろう。実験的解析によりそれらの内部構造と活性の関係が以前より明瞭に理解されるようになった。また, 今より高活性触媒を得るには,高比表面積の触媒担体の使用が重要であることを示した。
  • 八尋 秀典, 瀬戸口 稔彦, 江口 浩一, 荒井 弘通
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1318-1323
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高イオン導電体である酸化セリウム系酸化物固溶体を用いて, 水素一酸素燃料電池を構成し, 発電特牲および出力向上の方法について検討した。種々の酸化セリウム系酸化物固溶体の発電特性を測定した結果, (CeO2)0.8(SMO1.5)0.2 試料においてもっとも高い電流密度が得られた。H2,Pt/(CeO2)0.8(SmO1.5)0.2/Pt,O2 で示される燃料電池の過電圧は, 電解質の抵抗過電圧と空気極の活性過電圧の和にほぼ等しくなった。空気極の過電圧は銀や La0.6Sr0.4CoO3 電極を用いることにより白金電極にくらべて低下し, 低温ほど I-V 特性に大きな差が現われた。酸化セリウム (IV) は700℃ で 10-12atm 以下の酸素分圧で還元により電子伝導性が現われる。酸化セリウムの燃料極側に耐還元材料として安定化ジルコニアをイオンプレーティング法でコーティングした電解質を用いることにより還元が抑制され, 開放電圧は増加した。また, 燃料電池の耐久試験の結果, コーティング試料は無コーティング試料にくらべて, 20時間作動しても開放電圧が低下せず, 耐久性が向上した。
  • 山本 治, 武田 保雄, 菅野 了次, 富田 善之
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1324-1328
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高温固体電解質燃料電池の酸素極として注目されるペロブスカイト型酸化物 La1-xSrxMO3 (M=Mn,Fe,Co) の分極特性を検討した。電極はイットリア安定化ジルコニア板上に交流スパッター法により約2μmの膜厚に形成した。電極抵抗と温度あるいは酸素分圧との依存性を測定し電極反応 (酸素還元) の律速過程を調べた。その結果, Co 系ペロブスカイトは電荷移動, Fe 系で酸素分子の解離 Mn 系で酸化物イオンの拡散がそれぞれ律速であると考えられた。Co 系ぺロプスカイトはよい酸素還元特性を示すがそれは高い酸素分子の解離能力によると推論された。
  • 山崎 陽太郎, 並河 建, 道畑 日出夫
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1329-1333
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    可搬型燃料電池の開発を目標として安定化ジルコニアを薄膜化し, 金属支持体上にプレーナー型薄膜セルを作製した。発電実験をくり返し行ない, 得られた結果をもとに, セルの薄膜化にともなう問題点を解析した。初期に試作した薄膜セルは電解質と基板との間の熱膨張の違いから生ずる応力によって損傷を受けたが, 電解質膜の支持体に低熱膨張合金を用い, 電解質膜と支持体の間に多孔性ニッケル層を挿入することによって, この障害が解消できた。正電極と電解質界面における固相反応を抑制することおよび, 燃料による電解質膜の還元とこれにともなう電子伝導の増加を防ぐことがつぎの研究課題である。本研究で改良をつづけているプレーナー型薄膜セルの積層法および温度制御法についても検討を行なう。
  • 渡辺 隆夫, 伊崎 慶之
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1334-1339
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    溶融炭酸塩型燃料電池のガスシール状態と内部電流リーク状態を診断するため, 質量収支を用いた基本動作状態の評価手法について検討した。本手法では元素質量収支をとることとし, そのために必要な排出ガス中のガス組成を与えるために, ドライベースガス分析値から簡便かつ正確に水分量を補正する手法を開発した。これらの手法に基づく評衝プログラムの解析結果によれば, 推定温度は実運転温度に一致し, その妥当性が明らかになった。本手法を用いれば, 従来不活性ガスを用いねばならなかったり, 定性的評価にとどまっていたガスリーク量, 内部電流リーク量について, 供給ガス組成や発電状態を問わず, さらには高圧下においても, その種別ごとに定量的評価が可能である。
  • 小関 和雄, 春藤 泰之, 西原 啓徳, 丸山 晋一, 仲西 恒雄, 小林 喬
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1340-1344
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    抄紙法を用いて作製した溶融炭酸塩型燃料電池用電解質板について, その電解質板を形成するマトリックスの気孔率と電池の I-V 特性, 寿命特性, および電解質板強度との関係を検討した。その結果, 気孔率が 60~70% の範囲で良好な I-V 特性, 寿命特性が得られ, 電解質板強度については 70% 程度のものが割れにくいことがわかった。これらの理由について, I-V 特性, 寿命特性は気孔率と相関のある電解質板の厚さ方向の収縮率が関係し, 電解質板強度はやはり気孔率と相関のある曲げ強度, 曲げ弾性率および線膨張率が関係あると考察した。さらに気孔率 70% 程度のマトリックスを用いて電極面積 200cm2 の単セルを組み, 耐熱サイクル試験を行なった。その結果, 25 回の熱サイクルを含む 1800 時間の試験において,特性の低下がないことを確認した。
  • 河西 英一, 鈴木 彰, 佐藤 誠二
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1345-1350
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    溶融炭酸塩型燃料電池のカソード材料は, 現在 Li がドープされた NiOが広く用いられているが, これは長時間の使用中, 徐々に電解質中へ溶出する。著者らは並流タイプの燃料電池において, この現象を検討した。その結果 Ni の溶出量または Ni の析出量とカソードガス中の CO2 分圧の影響を報告例のある直交流と同様, 並流においても確認した。さらに電池温度の溶出量に対する影響を検討すると低温側で溶出量の増大傾向が見られた。これは太田らの報告した NiO の平衡溶解度の温度依存性とよい一致を示したら水素分圧の影響は, 確認できなかった。溶出量の時間に対する相関は時間の平方根に対してよい直線相関が見られた。また, これらの影響を補正した上で, カソード中の炭酸塩の含有率が溶出量に関与する傾向も認められた。以上 NiO の溶出に関しては, ガス組成, 温度などの運転条件や, 電池の形態が密接に関与することが示唆された。これらのことからカソードの長寿命化に対して, より最適な条件への指針が得られると期待される。
  • 太田 健一郎, 光島 重徳, 神谷 信行
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1351-1356
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    現在, 溶融炭酸塩型燃料電池 (MCFC) はカソード材料として用いられている酸化ニッケルの溶融炭酸塩中への溶解, 電解質中への析出のため, 長期の安定運転は困難なものとなっており, より安定なカソード材料の開発が望まれている。本研究では MCFC のカソード材料の安定性の評価のため溶解度を取り上げ, 酸化ニッケルの酸化物固溶体であるニッケルフェライト (NiδFe3-δO4) について Li:K=62:38mol% の二元系共晶溶融炭酸塩中において, 二酸化炭素雰囲気 (ナルゴンバランス,0.1~1atm), 温度範囲 873~1023K で試料組成 δ=O.33, 0.53, 0.75, 1.OO について測定した。
    ニッケルフェライト中の鉄, ニッケルともに二酸化炭素分圧が高くなると溶解度が大きくなる傾向を示し, 酸性溶解機構が主であると思われる。また, 温度依存についてはニッケルは温度が高くなると溶解度が小さくなった。鉄の溶解度は低ニッケルフェライトでは温度が高くなると小さくなり, 高ニッケルフェライトでは大きくなった。
    溶解度の値はどの組成でも酸化ニッケルと比較して非常に小さく (1/3~1/18), 酸化ニッケルより安定なカソード材料といえる。しかし, ニッケルフェライトは溶融炭酸塩と反応し, 反応生成物は導電性が悪いため, 実用にあたってさらに改良が必要である。
  • 井出 正裕, 粂田 政男
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1357-1362
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    かねてから研究開発を行なっている空冷式リン酸型燃料電泡の電池構造, 基本特性および現在の開発状況について概論した。電池構造としては, DIGAS 冷却方式, SGC 方式の二つの冷却方式について検討しており, 単電池の主要部品のカーボンプレートには安価なモールド方式により成型したものを使用している。また電池基本特性試験の結果から, 電流密度, 反応ガス利用率, 冷却空気入口温度などの最適な運転条件の評緬を行なった。そしてこれらの成果に基づいた燃料電池システムの実証例として, 50kW 発電システム, 200kW コージェネレーション発電プラントの概要について論述した。
  • 大川原 和美, 岡本 経宏, 萩原 明房, 船橋 信之
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1363-1367
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本論文では, 東京電力株式会社薪東京火力発電所構内に設置した 220kW 燃料電池プラントの発電実験結果の中間成果について報告する。本プラントは, 常圧型空冷式燃料電池本体を中心に燃料処理装置, 空気供給装置, 電池冷却装置, 直流交流変換装置および熱供給装置から構成されており, 空冷式燃料電池および熱供給の実証と実用機開発のためのデータ収集をおもな目的としている。実験は開始したばかりであるが, 良好な電池 V-I 特性, 一様なセル電圧など電池の初期特性として十分な結果が得られており, また, プラント冷機起動特性も手動による運転操作ではあるが, 設計値どおりの結果が得られ, 全自動運転とすることによって計画値の4時間以内にできる見通しを得た。
  • 幹 淳, 魚住 昇平, 堤 泰行, 嶽本 俊明
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1368-1374
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リン酸型燃料電池発電プラントにおいて電池性能を長期にわたって安定に維持するために実施する保全運転時に, カソード側にアノード供給ガスの主成分である水素が移動したり, カソード部でこれが新たに生成される現象について, 実規模のセルを用いて実験的に調べ考察を加えた。その結果, カソードガス圧がアノードより高い逆差圧下においても, シール部の微細なボアなどを通じて濃度勾配に起因する水素の拡散移動が生ずること, また, 水素の濃度勾配が存在する状態でカソード,アノード間を抵抗を通して短絡すると, 濃淡電池の電極反応にしたがって, カソード側に水素が生成され水素濃度が上昇することを確認した。とくに, 後者による水素生成量は負荷電流の増加にしたがって直線的に増加し, 二電子反応である濃淡電池の電極反応にしたがって求められる理論値とほぼ一致する。濃淡電池の理論起電力は Nernst の式から算出でき, 実験値とよい一致を示すことを確認した。実際の電池では拡散による水素移動量に比較して濃淡電池による生成量が支配的であり, カソードに吸着, 残存する酸素を電気化学的に除去する保全運転時には, カソード側へ水素が移動, 生成しないように, 濃淡電池の起電力までセル電圧が低下した時点で極問を電気的に開放することが重要である。
  • 見城 忠男, 稲葉 公男, 山下 秀一, 木村 一史
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1375-1383
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リン酸燃料電池の作動温度付近 (約200℃) で使用可能なプロトン導電性固体電解質の開発を目的として, ポリリン酸の固体化とその燃料電池への応用を試みた。まず, リン酸の脱水縮合体であるメタリン酸 (HPO3)m(200℃ では粘稠な液体である) を従来のリン酸電解質にかえて用いたところ, 分極には大きな違いがなかったが限界電流がいちじるしく減少した。電池端子問の容量測定と交流抵抗の測定結果から, この減少は電極-電解質問の密着性 (または電極のぬれ) が悪いためであることがわかった。リン酸とケイ酸 SiO2・nH20 を 3:1 の重量比で混合・加熱したところ, 固体化し 200℃ で比抵抗 40Ωcm の値をもつ固体電解質が得られた。これをディスク状に加圧成形したのち, テフロンで結着したガス拡散電極を電解質の両側に加圧して圧着した。この圧着により電極と電解質との密着がたもたれ, メタリン酸電解質にくらべて限界電流がいちじるしく増大した。水素電極には通電効果が見られ, 高電流域でかえって分極が減少しリン酸電池の分極に近い値が得られた。しかしながら酸素極の分極はかなり大きく, 電解質の固体化にともなう酸素極の性能低下が今後の問題である。
  • 山下 正通, 田中 淳司, 竹村 英昭
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1384-1390
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    超酸の一つであるトリフルオロメタンスルホン酸 (TFMSA, triflic acid) を 85%-リン酸中に添加することにより, そのイオン導電性および水素イオン活量の増加が期待される。しかも, TFMSA のような含フッ素化合物は, 一搬に, 酸素の溶解度およびその拡散係数を増大させることが知られている。すなわち, 酸度 (Hammett の酸度関数 H0)-14.5 の一塩基酸である TFMSA を燃料電池用酸素極の電解質として, 濃リン酸溶液中に添加することにより, 高性能の常温型燃料電池の開発が可能となる。そこで, 本研究では, これら TFMSA の性質を踏まえて, TFMSA-85% リン酸混合溶液系の化学種の分析をレーザー-ラマンスペクトル法で行ない, その電離平衡状態を調べ, ついで, この混合溶液中での白金電極上における酸素のカソード反応を回転ディスク電極法により検討した。その結果, 混合溶液中の TFMSA のモル分率が O.45 以下では TFMSA がすべてイオンに電離しており, 酸素に対する還元電流はそのモル分率の増大とともに大きくなり, 平衡電位も貴にシフトすることがわかった。これらから, TFMSA をリン酸中に添加することにより, 酸素のカソード反応を改善できることが確認できた。
  • 本地 章夫, 森 利克, 菱沼 孝夫
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1391-1396
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リン酸型燃料電池に使用する触媒担体について, 3種の炭素粉末の酸素および水蒸気に対する反応性を調べ, 炭素粉末の安定性を評価した。また, 白金を担持した触媒の酸素還元反応に対する活性を, 190℃ の 98wt% リン酸中で測定した。黒鉛結晶子め層間隔が小さく, かつ結晶子径が大きい炭素粉末は, 酸素および水蒸気との反応における速度定数が小さく, 安定であることが明らかになった。アセチレンブラックであるデンカブラック (電気化学工業製) は, ファーネスブラックである Regal 660R および Vulcan XC-72R (いずれも Cabot Corp. 製) にくらべて, 黒鉛結晶子の層間隔が小さく, かつ結晶子径が大きかった。触媒活性においても, デンカブラックを担体とする触媒が高活性を示した。白金粒子径は変わらないが, 白金粒子の分散性が他の炭素粉末にくらべて高いことが一因と考えられた。
  • 小林 喬, 田島 博之, 小関 和雄, 井原 卓郎, 渡辺 俊二
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1397-1403
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルカリ型燃料電池酸素 (空気) 電極の低コスト化を図るために, 銀および白金触媒をそれぞれ炭素粉末に担持することにより使用量の低減を検討した。
    銀については担持量と担体について検討し, 電極特性をよくするためには銀が炭素のほぼ全表面をおおうこと, したがって, 銀付着面積が大きくとれる形状で, 比表面積の大きい炭素を選ぶこと, また耐食性が重要であることを示した。これらの結果に基づいて開発した 50wt% Ag-コロイド状黒鉛電極 (9mg Ag/cm2) と 66.7wt% Ag・ファーネスブラックA電極 (6mg Ag/cm2) は空気を使用し 100mA/cm2 の電流密度で -80=mV (vs. Hg/HgO) の電位を示し, 5000 時間の連続放電時の電位低下率は数 μV/h であった。
    白金については耐食性の高いアセチレンブラックを主対象に, 担持量を変えて検討し, 銀触媒と同程度の特性を得るためには触媒層 1cm2×1μm あたり 14~20cm2 の Pt 表面積と 12μm 以上の厚さが必要な結果を得た。開発した 0.3mg Pt/cm2 のアセチレンブラック電極は銀触媒と同等以上の特性を示した。また, 300mA/cm2, 3000 時間の連続放電において電位は低下しなかった。
  • 山本 靖之, 田中 裕敏, 金木 則明, 竹内 隆男, 原 弘
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1404-1408
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アノードとカソードが同心円筒状の二重管型流動層電梅で構成されている流動層燃料電池を作成し, 電解液と触媒を反応ガスによって流動させる流動層酸素極の特性を検討した。
    触媒量の増加は電極特性を向上ざせるが, 限界有効触媒量が存在した。また反応ガス空塔速度においても同様の限界有効ガス空塔速度が存在するが, 触媒量が少ない場合はガス空塔速度増加の効果は非常に小さかった。
    流動層電極反応に対して電解液相と触媒粒子相の二相に分けた二相モデルの解析から, 触媒量の増加は集電面と触媒粒子の衝突頻度の増加により, 触媒の有効比抵抗 ρm を減少させ, 電子授受の電子移動有効距離 l は触媒量によらず約 8.0×10-4m の集電体近傍であることが示唆された。
  • 田中 裕敏, 匹田 智久, 坂井 宏光, 金木 則明, 竹内 隆男, 原 弘
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1409-1412
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルカリ型水素-酸素燃料電池の水素極についての研究を流動層で行なった。装置はアクリル樹脂製で直径 2.5cm, 高さ 30cm の円筒状であり, 装置内には集電体として装置と同心円の直径 1.5cm, 高さ 5cm のニッケル網が設置されている。操作は装置内に電解液と粒状触媒を入れ, 装置下方から水素ガスを吹き込むことによって触媒を流動させるきわめて簡単な装置である。本報文では, 本装置における操作条件である触媒の粒径, 触媒量および水素ガス空塔速度を検討し, 最良の電極特性が得られる条件を写真観察から決定した。その条件は流動層底部から 5cm 以内の高さで集電体内部に激しい渦状の流動状態が形成されるときに得られる。渦状流れの実現にに触媒粒径, 触媒量および水素ガス空塔速度をそれぞれ選択する必要があった。さらに, 流動層電極の触媒として, 8種の水素吸蔵合金について検討した結果, CaNi5 が触媒としてもっとも優れていた。水素吸蔵合金はオートクレープ中で水素ガスにより吸脱蔵を操作をくり返し, 活性化する必要があるが, CaNi5 は活性化を施さないで触媒としての特性が得られ, そのため実験操作が簡略化された。
  • 荒又 明子
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1413-1418
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メタノール燃料電池のアノード触媒の性能向上をはかるために電極を固体高分子電解質 (SPE) に埋め込むとその SPE が電極マトリックス修飾体として働くばかりでなく, 電池のアノード室とカソード室の隔膜が電極となるため電池内での溶液抵抗による電位降下なしのセルを構成することができることになる。Pt を異種金属の Sn や Ru で修飾すると活性が増大する。しかし, Pt 自身の最大活性についての知見がないままになっているので, Pt 上の活性変化をトランジェント法で観測した結果, Pt の最大活性は白金の真の表面積あたり 23℃, O.6V vs. RHE で 5mA・cm-2以上であると見積った。
    Pt を SPE に埋め込んだ Pt-SPE 電極は活性の保持性に優れているので, これをさらに共析電着により Sn や Ru で修飾すると活性の増加が認められた。ここでもう一段高活性な電極作製をめざして Pt 合金-SPE 電極を作製したところ, 内一部分アモルファス化した Pt 合金が SPE の中に生成し, それのメタノール酸化反応に対する活性は結晶化した合金より高かった。作製された電極のうちでは PtRuSn 合金-SPE が一番高活性で, この電極の 1mol・dm-3 CH3OH+0.5mo1・dm-3 H2SO4溶液中の 60℃, 0.4V における見かけ表面積あたりの定常電流密度の測定値は 50mA・cm-2であった。
  • 上原 斎, 川見 洋二, 竹中 啓恭, 石川 博, 石井 英一
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1419-1425
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Ir-Pt/Nafion 117/Pt-Ir の電極一膜接合体を用いる電解槽 (電極面積50cm2) を作製し, 固体高分子電解質電解法による HBr 電解を検討した。槽電圧は, HBr と Br2 濃度および温度の電解条件変化に対して, これらによる理論分解電圧の変化にもっとも支配される特徴を示し,また, 10A/dm2以上でほぼ直線的に上昇する電流密度依存性を有していた。陽陰両極反応の過電圧には HBr および Br2 濃度依存性が認められず, 100A/dm22 でのそれらの合計が 25℃ で約 O.21V, 50℃ で約 O.18V であった。セル抵抗は Nafion 117 の膜抵抗が支配的で, 9.5mol/kg の HBr 濃度では 25℃ で約 0.31Ω・cm2, 50℃ で約0.25Ω・cm2 であり, HBr 濃度の減少とともに低下した。電気浸透現象により希薄な HBr 水溶液か陰極へ輸送されるため, 陰極液を外部供給しない方法での電解も可能であった。この電解では陰極液濃度低下による膜電位発生に対応する槽電圧上昇が起きた。陽極触媒無接合でも, 100A/dm2 で槽電圧が約 0.05V 上昇するのみであった。陽極触媒の膜への接合が HB r電解では必ずしも要求されないとみなされた。一方, 電流効率は 25℃, 40A/dm2 以上で 97% であった。これ以下の電流密度と 50℃ では電流効率が若干低下する傾向を示した。
  • 町田 憲一, 福岡 淳, 市川 勝, 延与 三知夫
    1988 年 1988 巻 8 号 p. 1426-1432
    発行日: 1988/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    単一ならびに複合 Pt カルボニル錯体, [Pt3(CO)6]n2M(n=3,5), [PtCl2(SnCl3)2]2M, [Pt3Sn8Cl20]4M, および [Pt3Fe3(CO)15]2M(M=Na+,NMe4+,NEt4+,NMe3(CH2ph)+), あるいは Ru カルボニル錯体 [HRu3(CO)11]Mを, 第四級アンモニウム塩構造を末端にもつシリル化剤により修飾したグラファイト担体 (C) あるいは陰イオン交換膜にイオン交換担持し, これらのメタノール陽極酸化特性を調べた。得られたクラスター担持電極のうち Pt9/C および Pt15/C はメタノール酸化に対し良好な触媒特性を示し, さらにこれらの比活性は通常の Pt 電極のそれよりも 0.5 ないし1ケタほど高く, Pt の発現ならびに高分散担持による使用 Pt 量低減の可能性が示された。これに対し, Ptの高い比活性クラスターサイズがさらに小さい場合 (PtSn2/C,Pt3Sn8/C および Pt3Fe3/C) では, 逆に比活性の低下が見られ, メタノールの陽極酸化反応に対しては Pt の粒子サイズの効果が存在することが明らかとなった。
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